以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。なお、本実施形態の車両には、本発明を適用した油圧制御装置が備えられている。
図1に示すとおり、本実施形態の車両10は、所謂1モータタイプのハイブリッド車両であり、この車両10には、第1の動力源としての内燃機関(以下、エンジンとよぶ。)12と、第2の動力源としての回転電機(以下、モータとよぶ。)16とが備えられている。なお、モータ16は、エンジン12の下流側、即ち、動力伝達経路における車輪(駆動輪W)側に設けられている。エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関である。このエンジン12の出力軸であるクランクシャフト13は、エンジン切り離しクラッチ14(本発明のクラッチに相当)を介して、モータ16の回転軸17における軸端17a側に解放可能に連結されている。そのため、エンジン切り離しクラッチ14が係合状態にされると、エンジン12とモータ16とが直列に連結されるようになっている。モータ16は、例えば、三相交流回転電機であり、不図示のバッテリから電力の供給を受けて、車両10を走行させるための動力を発生する。このモータ16は、電力を発電する発電機として、また、エンジン12を始動させるスタータとしても機能する。エンジン切り離しクラッチ14は、エンジン12とモータ16との間の動力の伝達状態を切り換えるための装置であり、後述する油圧制御装置60の行う油圧制御により、エンジンの出力軸とモータの回転軸とを連結して動力の伝達を可能とする係合状態と、その連結を解放して動力の伝達を遮断する解放状態とのいずれかとなるように作動する。なお、エンジン切り離しクラッチ14には多板式の摩擦クラッチなどを用いることができる。
動力源としてのエンジン12とモータ16との下流側には変速機30が備えられている。そして、モータ16と変速機30との間にはトルクコンバータ20が設けられている。トルクコンバータ20は、モータ16の回転軸17における軸端17b側に連結されて動力が入力されるポンプインペラ20aと、変速機30の入力軸31に連結されて動力を出力するタービンランナ20bと、これらの間に設けられてワンウェイクラッチを備えるステータ20cと、によって構成されている。また、トルクコンバータ20には、ロックアップクラッチ22が設けられており、これが係合状態にされると、トルクコンバータ20内に充填された作動油を介することなく、動力源から出力された動力が変速機30に直接伝達されるようになる。変速機30は、有段の自動変速機として構成されており、遊星歯車などによる歯車機構、および当該機構に含まれる回転要素の係合または解放を行うクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素を備えている(何れも不図示)。変速機30では、これらの摩擦係合要素がそれぞれ係合状態または解放状態に作動させられることで、複数の変速段のうちから所定の変速段の変速比が形成される。なお、変速機30は無段の自動変速機で構成してもよい。
そして、変速機30の出力軸(不図示)は、プロペラシャフト33の一端に連結されており、さらに、このプロペラシャフト33の他端には終減速機40が接続され、その終減速機40を介して駆動輪Wが接続されている。
本実施形態の車両10では、このような動力伝達系の構成により、動力源から回転軸17を介して出力された動力が、変速機30により所定の変速比で変速されてプロペラシャフト33に伝達され、このプロペラシャフト33に伝達された動力が終減速機40を介して駆動輪Wに伝達されることで車両が走行するようになっている。
1モータタイプのハイブリッド車両である車両10では、その動力伝達系が、車両の走行状態などに応じて次のように制御される。車両の発進時や低速走行時には、エンジン切り離しクラッチ14が解放状態にされるとともに、エンジン12が停止状態とされ、モータ16の動力のみが駆動輪Wに伝達される。これにより、車両10は、モータ16の動力のみによって走行するEV走行を行うようになる。そして、モータ16の動力のみによって走行可能な速度の上限を超えた時には、エンジン切り離しクラッチ14が係合状態にされ、これによりエンジン12がモータ16によるクランキングによって始動される。この後、車両10は、エンジン12の動力によって走行するエンジン走行を行うようになる。なお、車両10は、このエンジン走行中にモータ16から動力を出力させることにより、エンジン12とモータ16との双方の動力によって走行する、所謂トルクアシスト走行を行うこともできる。また、車両の減速時には、エンジン切り離しクラッチ14が解放状態にされるとともに、エンジン12が停止状態とされる。このときモータ16は、駆動輪Wの回転が動力伝達経路の下流側から伝達されることにより回転駆動されて発電する状態となる。これにより、車両10では、回生ブレーキが働くようになる。モータ16によって発電された電力はバッテリに蓄えられる。そして、車両の停止時には、車両10では、エンジン12およびモータ16はいずれも停止状態とされ、エンジン切り離しクラッチ14も解放状態にされる。
次に、本実施形態の車両10における油圧制御系の構成について説明する。
本実施形態の車両10は、作動油の供給源としての機械式オイルポンプ(MOP)50を備えている。MOP50は、トルクコンバータ20のポンプインペラ20aに連結されており、動力源から出力される動力によりそのポンプインペラ20aが回転するのに伴って作動するように構成されている。また、このMOP50に加えて、本実施形態の車両10では、不図示の電動オイルポンプ(EOP)を備えている。EOPは、エンジン12およびモータ16が停止状態にされている場合など、作動油がMOP50から供給されない場合に作動するように構成されている。MOP50およびEOPは、いずれも、不図示のオイルパンに貯留されたオイルを不図示のストレーナによって吸引し、その吸引したオイルを油圧制御装置60に作動油として供給するように構成されている。
油圧制御装置60は、制御の主体としてのコントロールバルブ(不図示)を含み、車両を統括制御する制御装置(ECU:Electric Control Unit)70によって制御される。なお、コントロールバルブは、本実施形態の車両10では変速機30の底部に設けられており、そのバルブボディに、油圧回路が形成されているとともに、複数のバルブ等が納められている。油圧制御装置60は、このコントロールバルブの油圧回路や複数のバルブによって、作動油の圧力制御や流量制御を行う。具体的には、油圧制御装置60は、MOP50またはEOPから供給される作動油を、その油圧回路や複数のバルブによって調圧するとともに、その調圧後の油圧を車両の各部、例えば、エンジン切り離しクラッチ14、トルクコンバータ20、ロックアップクラッチ22、変速機30の摩擦係合要素、などに作動油圧として供給する。また、油圧制御装置60は、それら車両の各部に対する作動油圧の供給/非供給の切換えを行う。油圧制御装置60は、これらの動作を、ECU70からの制御信号に基づいて行うように構成されている。
この油圧制御装置60が行う油圧制御によって、その制御対象の1つである例えばエンジン切り離しクラッチ14は、その状態が、係合状態または解放状態のいずれかとなるように作動させられる。具体的には、エンジン切り離しクラッチ14は、油圧制御装置60によってその油圧サーボ(不図示)に作動油圧が供給されることで油圧サーボのピストン(不図示)が移動する。これによりクラッチの入力側回転部材と出力側回転部材とが圧接されて摩擦係合することで係合状態となる。また、エンジン切り離しクラッチ14は、油圧制御装置60によって油圧サーボから作動油圧が排出させられることで油圧サーボのリターンスプリング(不図示)の付勢力によりピストンが元の位置側に移動する。これによりクラッチの入力側回転部材と出力側回転部材とが引離されて摩擦係合が解放されることで解放状態となる。
ところで、従来の油圧制御装置では、既述のとおり、リニアソレノイドバルブのみによって、エンジン切り離しクラッチ14の係合または解放の油圧制御を行っている。この場合、エンジン切り離しクラッチ14に対して要求される係合圧(クラッチ係合トルク)の全ての範囲を制御するには、リニアソレノイドバルブの制御油圧の範囲を大きく設定する必要がある。そのため、クラッチ係合トルクの範囲のうちの低トルク(低係合圧)領域、つまり、モータによるエンジン始動の際に使用されるクラッチの係合圧領域を最も精度よく制御することができなかった。
そこで、本実施形態の車両10では、油圧制御装置60の各制御対象を油圧制御する回路のうち、エンジン切り離しクラッチ14を制御するための回路を以下のような構成としている。この回路について、その概略を示した図2を参照して説明する。
図2に示すとおり、エンジン切り離しクラッチ14を制御するための油圧制御装置60内の回路は、リニアソレノイドバルブ(以下、SLVとよぶ。)1およびON/OFFソレノイドバルブ(以下、SCVとよぶ。)2と、切替えバルブ3とを有している。
SLV1(本発明の第1のソレノイドバルブに相当)は、ECU70による電気的制御により通電状態にされた場合には、弁が開くことで入力ポート1aと出力ポート1bとが接続された状態(出力状態)となる。この出力状態において、SLV1は、入力ポート1aに入力される作動油圧(元圧)を、ECU70による制御によって要求される油圧とするように調圧するとともに、その調圧後の油圧を出力ポート1bから出力する。つまり、この場合、入力の作動油圧(元圧)は、ECU70による制御によって要求されるエンジン切り離しクラッチ14の係合圧に応じた油圧となるように調圧される。なお、このSLV1による調圧は、ECU70によりSLV1の弁の開度が電気的に制御されることによって行われる。また、SLV1は、ECU70による制御により非通電状態にされた場合には、弁が閉じることで入力ポート1aと出力ポート1bとが遮断された状態(非出力状態)となり、出力ポート1bからの油圧の出力が停止される。即ち、SLV1は、非通電時には非出力状態となる、所謂ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブによって構成されている。なお、SLV1は、非出力状態では、出力ポート1bとドレンポート1cとが接続され、エンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボから油圧が排出されるときに出力ポート1bに入力されるその排出油圧がドレンポート1cから出力(排出)されるように構成されている。
SCV2(本発明の第2のソレノイドバルブに相当)は、ECU70による電気的制御により通電状態にされた場合には、弁が閉じることで入力ポート2aと出力ポート2bとが遮断された状態(非出力状態)となり、出力ポート2bからの油圧の出力が停止される。また、SCV2は、ECU70による制御により非通電状態にされた場合には、弁が開くことで入力ポート2aと出力ポート2bとが接続された状態(出力状態)となる。この出力状態において、SCV2は、入力ポート2aに作動油圧(元圧)が入力されると、その作動油圧(元圧)をそのまま出力ポート2bから出力する。即ち、SCV2は、非通電時には出力状態となる、所謂ノーマルオープンタイプのON/OFFソレノイドバルブによって構成されている。
切替えバルブ3は、チェックボール31を有しており、第2入力ポート3bに油圧が入力されない状態では、このチェックボール31が不図示のばね等の弾性力によってその第2入力ポート3bを塞ぐように構成されている。即ち、この状態の切替えバルブ3では、第1入力ポート3aに入力される油圧が出力ポート3cから出力されるようになっている。また、切替えバルブ3では、入力ポートに油圧が入力されない状態で、エンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボから油圧が排出されると、その油圧は出力ポート3cに入力されて、第1入力ポート3aから出力(排出)されるようになっている。そして、第2入力ポート3bに油圧が入力されて、その油圧によりチェックボール31が移動して第1入力ポート3aを塞ぐようになると、その第2入力ポート3bに入力された油圧が出力ポート3cから出力されるようになる。
この回路では、SLV1およびSCV2が通電状態に制御されると、SCV2が非出力状態となるため、元圧生成部4の生成した元圧は油路pb0を介して出力状態のSLV1の入力ポート1aに入力される。なお、元圧生成部4は、エンジン切り離しクラッチ14を係合させるための作動油圧の元圧を生成する。本実施形態においては、元圧生成部4は元圧としてライン圧を生成する。元圧が入力ポート1aに入力されると、SLV1は、入力の元圧(油圧)を、ECU70による電気的制御によって要求される油圧とするように調圧するとともに、その調圧後の油圧を出力ポート1bから出力する。このSLV1が出力した油圧は油路pb1を介して切替えバルブ3の第1入力ポート3aに入力される。切替えバルブ3では、この場合、第2入力ポート3bには油圧が入力されないため、その第1入力ポート3aに入力された油圧が出力ポート3cから出力される。そして、この切替えバルブ3が出力した油圧(SLV1による調圧後の油圧)が、油路pcを介してエンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボに作動油圧として供給される。
また、この回路では、SLV1およびSCV2が非通電状態に制御されると、SLV1が非出力状態となるため、元圧生成部4の生成した元圧は油路pa0を介して出力状態のSCV2の入力ポート2aに入力される。元圧が入力ポート2aに入力されると、SCV2は、入力の元圧(油圧)をそのまま出力ポート2bから出力する。このSCV2が出力した油圧は油路pa1を介して切替えバルブ3の第2入力ポート3bに入力される。切替えバルブ3では、この場合、第1入力ポート3aには油圧が入力されないことから、第2入力ポート3bに入力された油圧によりチェックボール31が移動して第1入力ポート3aを塞ぐようになり、その結果、その第2入力ポート3bに入力された油圧が出力ポート3cから出力される。そして、この切替えバルブ3が出力した油圧(元圧)が、油路pcを介してエンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボに作動油圧として供給される。
ここで、エンジン切り離しクラッチ14の係合圧(クラッチ係合トルク)であるが、図3の(a)のグラフに示すとおり、これを制御するにおいては、クラッチがエンジンの出力トルクを伝達しない解放状態の「0(ゼロ)」からエンジンの最大出力トルクを伝達する係合状態の「K」までのクラッチ係合トルク(縦軸)の範囲を制御することが要求される。そのため、従来の油圧制御装置では、一つのリニアソレノイドバルブのみでクラッチの係合の制御を行うことから、当該リニアソレノイドバルブの制御油圧の範囲が大きく設定されていた。
しかし、クラッチの係合の制御においては、車両でのショック発生の低減等の観点から、クラッチの係合に使用するクラッチ係合トルクの範囲(領域)のうち、モータによってエンジンを始動する際の低トルク(低係合圧)領域を最も精度よく制御することが要求される。つまり、図3の(b)のグラフに示すとおり、その低トルク領域としてのクラッチ係合トルク(縦軸)の「0(ゼロ)」から所定値「H」までの領域を最も精度よく制御することが要求される。そのため、本実施形態における上記の回路では、その低トルク領域をSLV1によって制御し、それを超えたエンジンの最大出力トルク「K」までの領域をSCV2によって制御するようにしている。つまり、クラッチに対する要求係合圧が所定の低係合圧(低トルク)領域に含まれる場合は、SLV1が作動することにより、その要求係合圧に応じて調圧された調圧後の油圧がクラッチの油圧サーボに供給される。一方、クラッチに対する要求係合圧がその所定の低係合圧領域に含まれない場合は、SCV2が作動することにより、入力の油圧がそのままクラッチの油圧サーボに供給される。これにより、上記の回路では、従来と比べて相対的に、SLV1の制御すべきクラッチ係合トルクの範囲を小さくすることができるので、SLV1の制御油圧の範囲を大きくすることが可能となる。そのため、エンジン始動の際に使用されるクラッチの係合圧領域の低トルク領域に対する(油圧)制御の精度を向上させることができる。なお、上記の所定値「H」は、エンジンの始動制御や、例えば変速機の故障時などにおける非常時回避運転等に必要となるエンジントルクを考慮して決定する。
また、上記の回路では、SLV1およびSCV2が非通電状態とされたときには、SCV2の出力ポート2bから出力されて切替えバルブ3の第2入力ポート3bに入力された油圧(元圧)がその出力ポート3cから出力されて供給されることによりエンジン切り離しクラッチ14が係合状態とさせられる。つまり、上記の回路では、エンジン切り離しクラッチ14が係合状態とされたときにはSLV1およびSCV2に通電する必要がないので電力の消費を低減させることができる。
また、上記の回路では、故障の発生によってSLV1を開弁させることができなくなった場合には、SCV2を非通電状態に制御することでエンジン切り離しクラッチ14を係合状態とさせることができる。
なお、上記の元圧生成部4は、MOP50またはEOPから供給された作動油を調圧してエンジン切り離しクラッチ14を係合させるための作動油圧の元圧を生成する部分であり、本実施形態ではライン圧を生成するレギュレータバルブによって構成した。しかし、セカンダリ圧をその作動油圧の元圧とする場合には、プライマリレギュレータバルブおよびセカンダリレギュレータバルブによって元圧生成部4を構成するようにしても良い。
また、上記の回路の説明では、図3の(b)のグラフに示すクラッチ係合トルク(縦軸)の「0(ゼロ)」から所定値「H」までの領域(所定の低係合圧領域)をSLV1によって制御し、それを超えたエンジンの最大出力トルク「K」までの領域をSCV2によって制御することを説明した。しかし、クラッチを係合させる際のショックの発生を低減させる観点からは、SLV1によって所定値「H」までの領域を制御している途中の、例えば、図3の(b)のグラフでのSLV1からの出力圧(出力油圧)が「N」となった時点(横軸)で、SCV2を通電状態から非通電状態にするように制御するのが好ましい。
次に、本実施形態の別形態について説明する。この別形態は、上記で説明したエンジン切り離しクラッチ14を制御するための油圧制御装置60内の回路を変更したものである。よって、以下では、本実施形態との相違点となるその回路についてのみ説明することとする。なお、以下の説明では、上記本実施形態の説明において既に説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素には、同様の符号を付して重複説明を省略する。ただし、上記本実施形態において説明されたような修正および変更は、矛盾しない限り、この別形態にも同様に適用される。
以下、この別形態の回路について、その概略を示した図4を参照して説明する。
図4に示すとおり、この別形態の回路は、リニアソレノイドバルブ(以下、SLVとよぶ。)1およびON/OFFソレノイドバルブ(以下、SCVとよぶ。)2と、切替えバルブ3’と、減圧バルブ5とを有している。
SLV1(本発明の第1のソレノイドバルブに相当)は、上記本実施形態と同一の機能を有するものである。即ち、ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブによって構成され、入力ポート1a、出力ポート1bおよびドレンポート1cを備えている。
SCV2(本発明の第2のソレノイドバルブに相当)も、上記本実施形態と同一の機能を有するものである。即ち、ノーマルオープンタイプのON/OFFソレノイドバルブによって構成され、入力ポート2aおよび出力ポート2bを備えている。
切替えバルブ3’は、可動バルブ31’を有し、また、第1入力ポート3a’、第2入力ポート3b’、出力ポート3c’および押圧ポート3d’を備え、押圧ポート3d’に入力される油圧および可動バルブ31’に取付けられたばねの弾性力の作用によって2つの入力ポートと1つの出力ポートとの間の接続を切替えるように作動する。切替えバルブ3’は、押圧ポート3d’に油圧が入力されない状態では、ばねの弾性力によって可動バルブ31’が図中の上方側へ移動させられており、これにより第1入力ポート3a’と出力ポート3c’とが、可動バルブ31’に設けられた油路31a’を介して接続された状態となる。また、切替えバルブ3’は、押圧ポート3d’に油圧が入力されると、ばねが縮むとともに可動バルブ31’が図中の下方側へ移動させられて、これにより第2入力ポート3b’と出力ポート3c’とが、可動バルブ31’に設けられた油路31b’を介して接続された状態となる。
減圧バルブ5は、入力ポート5a、出力ポート5bおよびドレンポート5cを備え、入力ポート5aに入力された油圧を出力ポート5bから出力する際、入力の油圧が所定圧を超えると、その超えたぶんの圧力をドレンポート5cから排出することで、出力ポート5bから出力される油圧が所定圧以下となるように作動する。
この別形態の回路では、SLV1およびSCV2が通電状態に制御されると、SCV2が非出力状態となるため、元圧生成部4の生成した元圧は油路pf0および油路pf1を介して出力状態のSLV1の入力ポート1aに入力される。元圧が入力ポート1aに入力されると、SLV1は、入力の元圧(油圧)を、ECU70による電気的制御によって要求される油圧とするように調圧するとともに、その調圧後の油圧を出力ポート1bから出力する。このSLV1が出力した油圧は油路pf2を介して切替えバルブ3’の第1入力ポート3a’に入力される。切替えバルブ3’では、この場合、押圧ポート3d’に油圧が入力されない状態となっているため、その第1入力ポート3a’に入力された油圧が出力ポート3c’から出力される。そして、この切替えバルブ3’が出力した油圧(SLV1による調圧後の油圧)が、油路phを介してエンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボに作動油圧として供給される。
また、この別形態の回路では、SLV1およびSCV2が非通電状態に制御されると、SLV1が非出力状態となるため、元圧生成部4の生成した元圧は油路pe0を介して減圧バルブ5の入力ポート5aに入力される。減圧バルブ5では、その入力の元圧が必要に応じて減圧される。そして、その減圧バルブ5の出力ポート5bから出力される減圧後の油圧(場合によっては元圧)が、油路pe1を介して出力状態のSCV2の入力ポート2aに入力される。減圧後の油圧(場合によっては元圧)が入力ポート2aに入力されると、SCV2は、入力された油圧をそのまま出力ポート2bから出力する。このSCV2が出力した油圧は油路pe2を介して切替えバルブ3’の押圧ポート3d’に入力される。この押圧ポート3d’に対する油圧の入力により、切替えバルブ3’では、可動バルブ31’が図中の下方側へ移動させられて、第2入力ポート3b’と出力ポート3c’とが接続された状態となる。そして、このように切替えバルブ3’によって油圧経路が切替えられることにより、元圧生成部4の生成した元圧が、上記の油路pe0から分岐されて当該油路pe0側の油圧経路と並列に設けられた油路pf0、油路pg、可動バルブ31’の油路31b’および油路phを介して、エンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボに作動油圧として供給される。
このように、別形態の回路においても、上記本実施形態と同様に、クラッチ係合トルクの低トルク(低係合圧)領域をSLV1によって制御し、それを超えたエンジンの最大出力トルクまでの領域をSCV2によって制御するようにしている。そのため、この別形態の回路においても、上記本実施形態と同様に、従来と比べて相対的に、SLV1の制御すべきクラッチ係合トルクの範囲を小さくすることができるので、SLV1の制御油圧の範囲を大きくすることが可能となる。これにより、エンジン始動の際に使用されるクラッチの係合圧領域の低トルク領域に対する(油圧)制御の精度を向上させることができる。
また、別形態の回路では、SLV1およびSCV2が非通電状態とされたときには、SCV2から油圧が出力されることで、切替えバルブ3’による油圧経路の切替えが行われて、元圧生成部4の生成した元圧がエンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボに作動油圧として供給される。つまり、この別形態の回路においても、上記本実施形態と同様に、エンジン切り離しクラッチ14が係合状態とされたときにはSLV1およびSCV2に通電する必要がないので電力の消費を低減させることができる。
また、この別形態の回路においても、故障の発生によってSLV1を開弁させることができなくなった場合には、SCV2を非通電状態に制御することでエンジン切り離しクラッチ14を係合状態とさせることができる。
なお、上記のように、SCV2は、別形態の回路において切替えバルブ3’の可動バルブ31’を制御するためのみに用いられている。この場合、エンジン切り離しクラッチ14の油圧サーボへの油圧供給のために直接的に用いられる場合と比べて、SCV2の容量および出力油圧を小さくすることができるので、SCV2に係る部品コストを低減させることができる。
また、この別形態の回路においても、クラッチを係合させる際のショックの発生を低減させる観点から、SLV1によって所定値「H」までの領域を制御している途中の、例えば、図3の(b)のグラフでのSLV1からの出力圧(出力油圧)が「N」となった時点(横軸)で、SCV2を通電状態から非通電状態にするように制御するのが好ましい。