以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるレーザ加工機100の正面図である。なお、図1には、レーザ加工機100が設置される空間の直交座標系を互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を用いて図示する。図2以降においても同様である。
図1に示すように、レーザ加工機100は、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2(図4(b)参照)を軸方向に突き合わせて、芯出しを行うと共に、突き合わせ部分のレーザによる全周または周の一部の溶接を行う装置であり、基台110と、その基台110に搭載される加工ヘッド120及びXYステージ130と、そのXYステージ130に搭載され第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2(図4(b)参照)を保持する保持駆動機構Mと、各部位の動作を制御する制御装置(図示せず)を主に備える。
なお、本実施形態では、軸方向に突き合わせた第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2(図5(b)参照)の突き合わせ部分にレーザによる全周溶接を施す場合を一例として説明するが、かかる溶接は周の一部を溶接する部分溶接であっても良い。
基台110には、上面からフレーム111が立設され、そのフレーム111の正面側に加工ヘッド120が配設される。加工ヘッド120は、レーザを照射する部位であり、上下方向(図1Z軸方向)に沿って変位(昇降)可能に形成される。このZ軸方向に沿った変位により、保持駆動機構M(第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2)に対する加工ヘッド120のZ軸方向位置が調整可能とされる。
XYステージ130は、基台110に対して奥行方向(図1X軸方向)に変位可能に形成される第1ステージ131と、その第1ステージ131に対して幅方向(図1Y軸方向)に変位可能に形成される第2ステージ132とを備え、第2ステージ132に保持駆動機構Mが搭載される。よって、両ステージ131,132の変位により、加工ヘッド120に対する保持駆動機構M(第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2)の水平位置(X軸方向位置およびY軸方向位置)が調整可能とされる。
保持駆動機構Mは、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の芯出し及び全周溶接を行うための機構であり、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2を軸方向へ突き合わせると共に回転させることが可能に構成される。この保持駆動機構Mの詳細構成について、図2を参照して説明する。
図2は、保持駆動機構Mの斜視図である。図2に示すように、保持駆動機構Mは、主軸装置150と、その主軸装置150に保持される第1治具J1と、押し込み装置160と、その押し込み装置160に保持される第2治具J2と、ワーク受け170と、芯出し治具J3とを主に備える。
主軸装置150は、XYステージ130の第2ステージ132に固定される主軸台151と、その主軸台151に回転可能に軸支される主軸(図示せず)と、その主軸に回転駆動力を付与する駆動モータ152と、主軸に同芯に連結されるコレットチャック153と、を主に備え、駆動モータ152により主軸が駆動されることで、コレットチャック153が回転される。
なお、以下においては、主軸装置150の主軸の軸を「基準軸O」と称す(図4(a)参照)。本実施形態では、基準軸OとY軸とが平行とされる。また、コレットチャック153は、駆動モータ152とは別の駆動源(図示せず)から付与される駆動力により開閉可能に形成され、その開閉動作が制御装置により制御される。駆動源としては、例えば、モータやエアシリンダなどが例示される。
第1治具J1は、第1被溶接物W1に軸方向に突き合わされる治具であり(図5参照)、円筒状に形成されると共に、軸方向基端側が主軸装置150のコレットチャック153に保持される。なお、コレットチャック153に保持された第1治具J1は、基準軸Oと同芯とされる。また、第1治具J1は、第1被溶接物W1に対応する寸法(内径および外径)に設定され、その軸方向先端側の端面が第1被溶接物W1の端面W1a(図4(b)参照)に当接(突き合わせ)可能とされる。本実施形態では、第1治具J1の軸方向先端側の端面が軸(基準軸O)に垂直な平坦面とされる。
押し込み装置160は、XYステージ130の第2ステージ132にスライド変位可能に配設されるスライド台161と、そのスライド台161をスライド駆動するスライド駆動部162と、そのスライド駆動部162によりスライド変位されたスライド台161のスライド位置(Y軸方向座標)を検出する検出センサ(図示せず)と、スライド台161に回転可能に軸支され第2治具J2を保持するチャック163とを主に備える。
スライド駆動部162は、電気駆動式のサーボモータと、そのサーボモータにより駆動されるボールスプライン式の直動機構とを備え、その直動機構の直動を利用して、スライド台161をスライド変位させる。これにより、後述する押し込み工程において、スライド台161(第2治具J2)のY軸方向座標の位置精度と、軸方向への押し込み力の調整精度とを同時に達成できる。
チャック163は、基準軸O(即ち、主軸装置150のコレットチャック153の軸)と同芯となる位置に配設され、スライド台161は、基準軸Oに沿ってスライド変位可能に形成される。即ち、スライド台161がスライド駆動部162によりスライド変位される際には、コレットチャック153とチャック163とが常に同芯に維持される。
第2治具J2は、第2被溶接物W2に軸方向に突き合わされる治具であり(図5参照)、円筒状に形成されると共に、軸方向基端側が押し込み装置160のチャック163に保持される。なお、チャック163に保持された第2治具J2は、基準軸Oと同芯とされる。また、第2治具J2は、第2被溶接物W2に対応する寸法(内径および外径)に設定され、その軸方向先端側の端面が第2被溶接物W2の端面W2b(図4(b)参照)に当接(突き合わせ)可能とされる。本実施形態では、第2治具J2の軸方向先端側の端面が軸(基準軸O)に垂直な平坦面とされる。
ワーク受け170は、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2が載置される部材であり、主軸装置150と押し込み装置160との対向間に配設され、XYステージ130の第2ステージ132に固定される。ワーク受け170の上面は、各治具J1,J2の軸方向に沿って延設されると共に下方に窪む断面V字状の面として形成され、このV字状の面が、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の載置面とされる。
ワーク受け170の両側の側面には、断面コ字状に凹設される凹溝170a(図5参照)が上下方向(図2Z軸方向)に沿って延設され、この凹溝170aにより載置面(ワーク受け170の上面)の側縁が切り欠かれる。これにより、後述する芯出し治具J3の各ローラLR1,LR2が、凹溝170aに沿ってZ軸方向に変位可能とされると共に、切り欠かれた部分から載置面を越えて上方に突出可能とされる(図3(a)及び図3(c)参照)。
芯出し治具J3は、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の芯出しを行うための治具であり、第1治具J1及び第2治具J2の対向間に配設され、後述する各ローラUR1〜LR2を芯出し位置または退避位置に配置可能に形成される。この芯出し治具J3の詳細構成について、図3及び図4(a)を参照して説明する。
図3(a)は、各ローラUR1〜LR2が芯出し位置に配置された状態における芯出し治具J3の側面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb方向視における芯出し治具J3の部分拡大正面図である。また、図3(c)は、各ローラUR1〜LR2が退避位置に配置された状態における芯出し治具J3の側面図である。なお、図3(a)及び図3(c)は、基準軸O方向視に対応する。
図3(a)から図3(c)に示すように、芯出し治具J3は、上芯出し部180と、下芯出し部190とから構成される。上芯出し部180は、上支持体181と、その上支持体181の長手方向先端側(図3(a)左側)の下面に着脱可能に配設される上本体部182と、その上本体部182の両側にそれぞれ配設され基準軸Oへ向けて突出される一対の上突出部183と、それら一対の上突出部183の突出先端側にそれぞれ配設される上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2と、上支持体181に回転駆動力を付与するロータリアクチュエータ184とを主に備える。
上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2は、芯出し位置(図3(a)参照)に配置された状態において、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の外周側に配置される部位であり、それぞれ円柱形状に(即ち、円柱状のローラとして)形成されると共に、上突出部183に支持軸183aを介して回転可能に軸支される。
ロータリアクチュエータ184は、その回転駆動軸184aをZ軸方向に沿わせた姿勢でXYステージ130の第2ステージ132(図2参照)に配設され、回転駆動軸184aを上支持体181の長手方向基端側(図3(a)右側)に連結させる。よって、回転駆動軸184aの回転に伴い、上支持体181が回転され、上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2が芯出し位置(図3(a)参照)又は退避位置(図3(c)参照)に配置される。
具体的には、上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2が芯出し位置に配置された状態では、上支持体181がその長手方向をX軸方向に沿わせた姿勢とされ、支持軸183aが基準軸Oに平行とされる(図3(a)参照)。即ち、上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2の回転軸が基準軸Oと平行とされる。
一方、上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2が退避位置に配置された状態では、上支持体181がその長手方向をY軸方向に沿わせた姿勢とされる。これにより、上支持体181や上本体部182などがワーク受け170の側方に退避され、かかるワーク受け170の上方に加工ヘッド120を配置するためのスペースを確保できる。
下芯出し部190は、下支持体191と、その下支持体191の長手方向両側(図3(a)左側および右側)の上面にそれぞれ着脱可能に配設される第1及び第2の下本体部192と、それら各下本体部192の両側にそれぞれ配設され基準軸Oへ向けて突出される一対の下突出部193と、それら一対の下突出部193の突出先端側にそれぞれ配設される下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2と、下支持体191にスライド駆動力を付与する駆動シリンダ194とを主に備える。
下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2は、芯出し位置(図3(a)参照)に配置された状態において、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の外周側に配置される部位であり、それぞれ円柱形状に(即ち、円柱状のローラとして)形成されると共に、下突出部193に支持軸193aを介して回転可能に軸支される。支持軸193aは、基準軸Oに平行とされる。よって、下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2の回転軸は基準軸Oと平行とされる。
なお、下第1ローラLR1は上第1ローラUR1と、下第2ローラLR2は上第2ローラUR2と、それぞれ同形状(外径および軸方向寸法が同一)に形成される。また、本実施形態では、下第1ローラLR1及び上第1ローラUR1が下第2ローラLR2及び上第2ローラUR2と同形状とされる。
駆動シリンダ194は、そのピストンロッド(図示せず)をZ軸方向に沿わせた姿勢でXYステージ130の第2ステージ132(図2参照)に配設され、ピストンロッドを下支持体191に連結させる。よって、ピストンロッドの伸縮に伴い、下支持体191が昇降され、下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2が芯出し位置(図3(a)参照)又は退避位置(図3(c)参照)に配置される。
図4(a)は、芯出し治具J3の部分拡大模式図であり、図3(a)に対応する。即ち、図4(a)は、各ローラUR1〜LR2が芯出し位置に配置された状態における芯出し治具J3の基準軸O方向視に対応する。
図4(a)に示すように、各ローラUR1〜LR2が芯出し位置に配置されると、それら各ローラUR1〜LR2は、その外周面が仮想円筒面ICに外接される。ここで、仮想円筒面ICとは、基準軸Oと同芯の仮想的な円筒面であり、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の外径と同径に設定される。
よって、後述するように、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2が芯ずれや傾斜している場合でも、それら両被溶接物W1,W2を回転させ、各ローラUR1〜LR2に当接させることで、芯ずれや傾斜を矯正して、両被溶接物W1,W2を仮想円筒面に一致する姿勢とする(即ち、芯出しする)ことができる。
ここで、各ローラUR1〜LR2が芯出し位置に配置されると、それら各ローラUR1〜LR2は、周方向等間隔(本実施形態では、120°間隔)に配設されると共に、軸方向の配設位置が一致される。
即ち、基準軸O方向視において、上第1ローラUR1と一対の下第1ローラLR1とが周方向等間隔(120°間隔)に配設されると共に、上第2ローラUR2と一対の下第2ローラLR2とが周方向等間隔(120°間隔)に配設される。
また、基準軸O直角方向視において(図3(b)参照)、上第1ローラUR1と一対の下第1ローラLR1との基準軸O(Y軸)方向位置(図4(a)紙面垂直方向位置、又は、図3(b)左右方向位置)が一致されると共に、上第2ローラUR2と一対の下第2ローラLR2との基準軸O(Y軸)方向位置が一致される。
これにより、後述するように、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2を回転させ、各ローラUR1〜LR2に当接させることで、芯ずれや傾斜を矯正する場合には、各ローラUR1〜LR2の反力を両被溶接物W1,W2に均等に作用させることができる。その結果、両被溶接物W1,W2の基準軸Oに対する傾きを抑制でき、その芯出し精度を確保できる。
また、レーザ加工機100には、上本体部182、上突出部183及び各ローラUR1,UR2からなる上ユニットと、下本体部192、下突出部193及び各ローラLR1,LR2からなる下ユニットとがそれぞれ複数種類準備されている。
これら各種類の上ユニット及び下ユニットは、その寸法(各ローラUR1〜LR2の基準軸Oからの離間寸法、或いは、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1と上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2との軸方向の離間寸法)を、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の寸法に対応させて、それぞれ異なる寸法に設定される。よって、溶接対象となる第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の寸法に応じた上ユニット及び下ユニットを選択することで、その溶接対象に対応する仮想円筒面ICに各ローラUR1〜LR2を外接させることができる。
図4(b)は、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の断面図であり、両被溶接物W1,W2のそれぞれの軸を含む仮想面で切断した断面に対応する。
図4(b)に示すように、第1被溶接物W1は、軸方向一側および他側(図4(b)左側および右側)に端面W1a,W1bを有する薄肉の円筒形状に形成される。端面W1aには、第1治具J1の軸方向先端側の端面が突き合わされる(図5参照)。本実施形態では、端面W1a,W1bは、軸に垂直な平坦面として形成される。
第2被溶接物W2は、軸方向一側および他側(図4(b)左側および右側)に端面W2a,W2bを有する円盤形状に形成される。端面W2aには、第1被溶接物W1の端面W1bが突き合わされ、端面W2bには、第2治具J2の軸方向先端側の端面が突き合わされる(図5参照)。本実施形態では、端面W2a,W2bは、軸に垂直な平坦面として形成される。
なお、本実施形態では、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の突き合わせ部分(端面W1b,W2a)が全周溶接されることで、第1被溶接物W1の軸方向他側の開口が第2被溶接物W2により閉封され、収容物を収納する容器を構成する。
次いで、図5を参照して、レーザ加工機100による第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の芯出し方法および全周溶接方法について説明する。
図5(a)は、配置工程におけるレーザ加工機100の部分拡大上面図であり、図5(b)は、押し込み工程におけるレーザ加工機100の部分拡大上面図である。なお、図5では、レーザ加工機100の構成として各治具J1,J2及びワーク受け170のみが図示されると共に、各治具J1,J2及び各被溶接物W1,W2が断面視される。
ここで、レーザ加工機100は、初期状態では、芯出し治具J3が退避位置に配置されると共に(図3(c)参照)、第2治具J2が後退され(図5(a)参照)、コレットチャック153(図2参照)が開放されている。
レーザ加工機100による第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の芯出し及び全周溶接は、初期状態において、まず、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2を所定位置に配置する(配置工程)。具体的には、載置台170の載置面に載置する。
配置工程の後は、押し込み装置160をスライド変位させ、第2治具J2を前進させる(押し込み工程)。これにより、図5(b)に示すように、第2治具J2により第2被溶接物W2が軸方向に押し込まれ、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の端面W1b,W2aが突き合わされる。
なお、コレットチャック153には、第1治具J1の軸方向基端側の端面に当接する定寸ストッパ(図示せず)が配設されており、かかる定寸ストッパにより第1治具J1の押し込み方向(基準軸O方向)への変位が規制される。即ち、押し込み装置160により押し込まれた第1治具J1の軸方向位置(Y軸方向座標)が一定位置に規定される。
この場合、レーザ加工機100の制御装置は、押し込み装置160の検出センサの検出値を取得し、スライド台161のスライド位置(Y軸方向座標)が目標位置(目標座標)に一致するかを確認する。
検出値に基づくスライド位置が、目標位置に達していない、或いは、目標位置を越えている場合には、次に示す不具合が発生している恐れがあるため、音声の出力や表示装置への表示により、作業者への報知を行い、工程を中断する。
不具合としては、第1治具J1と第1被溶接物W1との突き合わせ部分、第1被溶接物W1と第2被溶接物W2との突き合わせ部分、又は、第2被溶接物W2と第2治具J2との突き合わせ部分のいずれか(又は全部)に異物が噛み込まれている不具合、配置工程において作業者に配置された部品(第1被溶接物W1又は第2被溶接物W2)が間違った部品である不具合、或いは、部品(第1被溶接物W1又は第2被溶接物W2)の寸法公差が規格から外れている不具合等が想定される。
押し込み工程の後は、芯出し治具J3の上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2と、下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2とを芯出し位置に配置し(図3(a)及び図4(a)参照)、コレットチャック153(図2参照)を閉じた後、主軸装置150(図2参照)の主軸を回転させる(回転工程)。これにより、第1治具J1の回転に伴って、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2と第2治具J2とがそれぞれ回転される。
よって、第1被溶接物W1及び(又は)第2被溶接物W2が基準軸Oに対して芯ずれや傾斜している場合には、第1被溶接物W1及び(又は)第2被溶接物W2の外周面に、芯出し治具J3の各ローラ(上第1ローラUR1、上第2ローラUR2、下第1ローラLR1、下第2ローラLR2)の一部または全部が当接されることで、第1被溶接物W1及び(又は)第2被溶接物W2を、第1治具J1及び第2治具J2に対して変位させることができ、それら両被溶接物W1,W2の位置をその外周面が仮想円筒面ICに一致する位置(即ち、芯出しされた位置)に矯正することができる(図4(a)参照)。
即ち、各被溶接物W1,W2は、その外周面に各ローラUR1〜LR2が当接されつつ回転されることで、自身の軸を基準軸Oに近づける方向への力を各ローラUR1〜LR2から受け、端面W1a,W2bを各治具J1,J2の端面に対して摺動させる、又は、端面W1b,W2aどうしを摺動させることで、外周面が仮想円筒面ICに一致する位置に配置される。
この場合、本実施形態では、各ローラUR1〜LR2が基準軸Oに平行な支持軸183a,193aに回転可能に軸支される円柱状のローラとして形成されので、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の回転に伴って、各ローラUR1〜LR2を回転(従動)させることができる。よって、摺動抵抗を抑制して、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の回転を安定化させることができ、その芯出し精度を確保できる。また、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の外周面が傷付くことを抑制できる。
回転工程により第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の芯出しを行った後は、芯出し治具J3の上第1ローラUR1及び上第2ローラUR2と、下第1ローラLR1及び下第2ローラLR2とをそれぞれ退避位置(図3(c))に配置する(退避工程)。
退避工程により上支持体181及び上ユニット(上本体部182、上突出部183及び各ローラUR1,UR2)が第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の側方へ退避され、これら両被溶接物W1,W2の突き合わせ部分の上方に空間が形成されるので(図3(c)参照)、次いで、加工ヘッド120(図1参照)をレーザ加工可能な位置に配置し、レーザを照射しつつ、主軸装置150(図2参照)の主軸を回転させる(溶接工程)。これにより、両被溶接物W1,W2の突き合わせ部分の全周溶接が行われる。
溶接工程の後は、押し込み装置160をスライド変位させ、第2治具J2を後退させると共に(図5(a)参照)、コレットチャック153(図2参照)を開放する(解除工程)。これにより、全周溶接された第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2が取り外し可能とされる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上本体部182、上突出部183及び各ローラUR1,UR2からなる上ユニットと、下本体部192、下突出部193及び各ローラLR1,LR2からなる下ユニットとの個数が合計3個とされる場合を説明したが、かかる合計の個数は、2個であっても良く、4個以上であっても良い。
上記実施形態では、第1被溶接物W1が円筒形状とされると共に第2被溶接物W2が円盤形状とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸方向端面どうしを突き合わせてその突き合わせ部分を全周または周の一部を溶接するものであれば、任意の他の形状を採用可能である。例えば、両被溶接物W1,W2の両者が円筒形状であっても良い。
上記実施形態では、各ローラUR1〜LR2が支持軸183a,193aに回転可能に軸支される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各ローラUR1〜LR2の一部または全部が回転不能に上突出部183又は下突出部193に固定されていても良い。
回転不能に固定されるもの(各ローラUR1〜LR2)は、円柱形状である必要はなく、任意の他の形状を採用できる。但し、この場合には、少なくとも第1被溶接物W1又は第2被溶接物W2の外周面に対面する側の形状(基準軸Oに直交する仮想面で切断した断面形状)が、仮想円筒面ICに外接する円弧形状、又は、仮想円筒面ICに接する直線形状であることが好ましい。摺動抵抗を抑制して、両被溶接物W1,W2の回転を安定化できると共に、接触面積を小さくして、両被溶接物W1,W2の外周面が傷付くことを抑制できるからである。
なお、この場合、各ローラUR1〜LR2と各突出部183,193とは別体(別部品)である必要はなく、一体(例えば、一の素材から削り出した一部品)であっても良い。
上記実施形態では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1が外接する仮想円筒面ICの外径と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2が外接する仮想円筒面ICの外径とが同一とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら両仮想円筒面ICは、同芯であれば、異なる外径に設定されていても良い。即ち、第1被溶接物W1における上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1が対面する部分の外径と、第2被溶接物W2にける上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2が対面する部分の外径とが異なる外径であっても良い。
ここで、図6(a)から図6(d)を参照して、第1から第4の変形例について説明する。図6(a)、図6(b)、図6(c)及び図6(d)は、それぞれ第1、第2、第3及び第4の変形例におけるレーザ加工機の模式図であり、上述した回転工程における状態が主要な構成のみを用いて模式的に図示される。なお、上記実施形態と異なる構成のみを説明し、同一の構成についてはその説明を省略する。
まず、第1の変形例について説明する。上記実施形態では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1が、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2と同形状とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、両者が異なる形状であっても良い。例えば、図6(a)に示すように、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の軸方向寸法S1と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の軸方向寸法S2とが異なる寸法であっても良い。
この場合、図6(a)に示すように、軸方向寸法が大きい第1被溶接物W1の外周面に対面する上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の軸方向寸法S1が、軸方向寸法が小さい第2被溶接物W2の外周面に対面する上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の軸方向寸法S2よりも大きくされることが好ましい(S2<S1)。芯出し精度を確保しやすくできるからである。
次いで、第2の変形例について説明する。上記実施形態では、両被溶接物W1,W2の突き合わせ部分からの軸方向に沿った離間寸法が、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2とで同寸法とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図6(b)に示すように、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の離間寸法L1と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の離間寸法L2とが異なる寸法であっても良い。
この場合、図6(b)に示すように、軸方向寸法が大きい第1被溶接物W1の外周面に対面する上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の離間寸法L1が、軸方向寸法が小さい第2被溶接物W2の外周面に対面する上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の離間寸法L2よりも大きくされることが好ましい(L2<L1)。芯出し精度を確保しやすくできるからである。
なお、第2の変形例では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を軸支する上突出部183及び下突出部193が上本体部182及び下本体部192から離間する方向へ屈曲して形成され、屈曲された先端側に上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1が軸支されることで、離間寸法L1が離間寸法L2よりも大きくされる。
次いで、第3の変形例について説明する。上記実施形態では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の配設個数と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の配設個数とが同数とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図6(c)に示すように、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の配設個数と、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の配設個数とが異なる数であっても良い。
この場合、図6(c)に示すように、軸方向寸法が大きい第1被溶接物W1の外周面に対面する上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1の配設個数が、軸方向寸法が小さい第2被溶接物W2の外周面に対面する上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2の配設個数よりも多くされることが好ましい。芯出し精度を確保しやすくできるからである。
なお、第3の変形例では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を軸支する上突出部183及び下突出部193が上本体部182及び下本体部192から離間する方向へ屈曲して形成され、その離間する方向に延びる部分に複数の上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1がそれぞれ軸支される。
次いで、第4の変形例について説明する。上記実施形態では、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1が第1被溶接物W1の外周側に、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2が第2被溶接物W2の外周側に、それぞれ配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図6(d)に示すように、上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を、第1被溶接物W1と第2被溶接物W2との突き合わせ部分の外周側に配設しても良い。即ち、各ローラUR1,LR1のそれぞれが第1被溶接物W1と第2被溶接物W2との両者に当接可能に配設される。
このように、突き合わせ部分に上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を配設することで、第1被溶接物W1及び第2被溶接物W2の溶接する部分(突き合わせ部分)を、その外周面が仮想円筒面ICに一致する位置(即ち、芯出しされた位置)に確実に矯正することができる。その結果、芯出し精度の向上を図ることができる。
また、第4の変形例では、上記実施形態における上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2を省略できる。よって、その分、部品コストを低減できる。なお、上記実施形態における上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を省略して、上第2ローラUR2及び下第2ローラLR2を、第1被溶接物W1と第2被溶接物W2との突き合わせ部分の外周側に配設しても良い。
上記各変形例のうちの一の変形例を、他の変形例と組み合わせても良い。例えば、第1の変形例における上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1を、第2の変形例または第3の変形例における上第1ローラUR1及び下第1ローラLR1に置き換えても良い。