JP2018134106A - 醤油様調味料 - Google Patents

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仲原 丈晴
Takeharu Nakahara
丈晴 仲原
洋平 篠崎
Yohei Shinozaki
洋平 篠崎
一樹 志賀
Kazuki Shiga
一樹 志賀
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Abstract

【課題】醤油の味と香りを有し、糖アルコールに由来する独特のコクやまろやかさをも有した、アレルギー物質を含む食物を原料に使用しない醤油様調味料を提供する。【解決手段】エンドウマメを原料として製麹した後に、食塩水と、必要によりアレルゲンを含まない食物由来のタンパク質と共に仕込み、乳酸菌と酵母によって発酵、熟成、圧搾することにより醤油様調味料であって、前記エンドウマメが、青エンドウ又は黄エンドウである、醤油様調味料により解決する。【選択図】なし

Description

原材料としてアレルギー物質を含む食物を全く使用せずに得られる醤油様調味料に関する。
近年、世界中でアレルギー物質(以下、アレルゲンという)を含む食物に起因する健康危害(以下、食物アレルギーという)が散見されている。食物アレルギーは、食物に含まれるある種の物質・成分に対して体内の免疫システムが反応することにより生じる。現在のところ根本的な治療法が無いため、アレルゲンを含む食物を摂取しないことが、食物アレルギーを防ぐための最も確実な方法である。アレルギー症状は生命を脅かす可能性さえあるため、食物中に含まれるアレルゲンを含む原材料が表示されることが、アレルギー患者にとって欠かせない。
こうした背景を受け、1999年のFAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)総会においては、アレルゲンとして知られている8種の原材料を含む食品について、それを含む旨を表示することで合意され、加盟国において、各国の制度に適した具体的な表示方法を検討することが求められることになった。
日本国内では、過去の健康障害等の程度、頻度を考慮して、重篤なアレルギー症状を引き起こした実績のある特定の原材料25品目を含む場合、その原材料を表示することが厚生労働省により定められた。
日本の伝統的な発酵調味料であり、日本の食生活に欠かせない醤油は、大豆と小麦とで作った麹と食塩水を原料として発酵・醸造することにより得られるが、大豆と小麦は共に日本国内・コーデックスにおいて、アレルゲンを含む食物として定められている。
醤油において、原材料は麹の酵素によって分解されているため、アレルゲンは減少していると考えられるものの、大豆または小麦のアレルギー患者は、健康障害の程度によっては醤油を使用することができなかった。特に小麦など、グルテンを含む穀類は、セリアック病患者に重篤な症状を引き起こすことが知られており、世界中でグルテンフリー食品の開発が求められている。このように、アレルゲンを含む食物を全く使用せず(以下、アレルゲンフリーという)に、醤油の味、香りを有する代替調味料が強く求められてきた。
こうした要望に応え、大豆および小麦を使用せず、空豆を用いて麹を製造し、塩水を加えて発酵熟成させる方法(例えば、特許文献1参照)や、マスタードシードとコーンの混合物を用いて麹を製造し、塩水を加えて発酵熟成させる方法(例えば、特許文献2参照)、雑穀を主体とした醤油様の調味液の製造方法(例えば、特許文献3参照)、荏胡麻を原料とした発酵調味料の製造方法(例えば、特許文献4参照)、魚醤油の製造方法(例えば、特許文献5参照)、トマトを原料とした醤油様調味料の製造方法(例えば、特許文献6参照)が開示されている。空豆は、アレルゲンを含む食物とはされていないが、地中海沿岸各地、北アフリカ、中央アジアにおいて空豆中毒症(Favism)を引き起こすことが問題視されている(例えば、非特許文献1参照)。また醤油様調味料とした後も、特有の空豆の風味を有するため、用途によっては醤油の代替とすることが難しい場合もある。マスタードシードとコーンの混合物を用いた方法では、香辛料原料であるマスタードシードに由来する風味が未だ残り、また旨味や香気も不足している。雑穀を主体とした調味液、荏胡麻を原料とした発酵調味液は、それぞれ原料を安価かつ安定的に入手することが難しく、特有の風味もあり、醤油の代替調味料とすることは難しい。魚醤油は大豆・小麦を使用していないが、通常の醤油とは風味が大きく異なり、代替調味料として使うことは難しい。また、種類によっては魚自体がアレルゲンを含む食物とされているため、アレルゲンフリーの醤油様調味料としては不適であった。
マメ科植物エンドウ(Pisum sativum L.)は古来より広く栽培され、その種子であるエンドウマメは、煎り豆や煮豆、うぐいす餡、サラダやシチューの具材、スナック菓子の原料などとして、世界中で広く食されている。そのためエンドウマメは、食品原料として安価かつ安定的に入手可能である。エンドウマメは、前述の日本国内およびコーデックスで指定されたアレルゲンを含む特定原材料に指定されておらず、エンドウマメを原料とした食品は、大豆や小麦に対するアレルギーを有する患者も安心して摂取することが可能である。
一方、エンドウマメを発酵調味料の原料に用いる技術は、これまでほとんど開示されていなかった。近年、エンドウマメ由来のタンパク質にプロテアーゼ製剤を作用させ、限外濾過膜で濾過することにより、水溶性に優れた滋養剤を提供する方法(特許文献7)や、エンドウマメ由来のタンパク質を加水分解し、乳酸菌で発酵させることにより塩味増強作用を有する食品素材を得る方法(特許文献8)が開示されているが、エンドウマメを通常の醤油原料の大豆・小麦の代わりに用いて製麹し、食塩存在下で仕込み、乳酸菌と酵母によって発酵・熟成させることにより、アレルゲンを含む食物を全く使用せず、醤油の味、香りを有する醤油様調味料を得ようとする試みはこれまでなされていなかった。
ところで、糖アルコールは低カロリーで甘味を呈するため、市販され甘味料として広く用いられている。糖アルコールの一種であるマンニトールは昆布の呈味成分の一つとして独特の旨味やまろやかさを呈することが知られており(例えば、特許文献9参照)、アラビトールは、キノコ子実体に存在し、コクやまろやかさを付与する成分であることが知られている(例えば、特許文献10参照)。このような呈味効果を期待して、醤油を含有する液体調味料に糖アルコール類を添加する技術が開示されているが(例えば、特許文献11,12参照)、近年の天然志向、無添加志向の中で、食品添加物として使用することに対するネガティブイメージが存在するという問題があった。これまでに、天然の食品素材(特に、アレルゲンを含まないエンドウマメのような食物)を原料として発酵・熟成させて得られる醤油様調味料から、これらの成分を見出したとの報告は無かった。
特開2006−122002号公報 特開2008−237183号公報 特開平8−196232号公報 特開2009−171959号公報 特開2005−261349号公報 特開2012−187096号公報 特表平6−505162号公報 国際公開第08/122138号 特開2006−75101号公報 特開2007−259821号公報 特開2000−125806号公報 特開平11−285358号公報
「Food allergy: adverse reactions to food and food additives」,Wiley−Blackwell,2003年,p.485
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、醤油の味と香りを有し、糖アルコールに由来する独特のコクやまろやかさをも有した、アレルギー物質を含む食物を原料に使用しない醤油様調味料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、大豆や小麦をはじめとするアレルゲンを含む食物を全く使用せずとも、驚くべきことに、エンドウマメに麹菌を植菌して製麹し、食塩存在下で醤油と同様に仕込み、乳酸菌と酵母により発酵、熟成、圧搾することにより、醤油の味や香りと、糖アルコールに由来するコクやまろやかさを有した醤油様調味料を得られることを見出した。特に、仕込み時にアレルゲンを含まない食物由来の粗精製タンパク質を添加することにより、可溶性総窒素(TN)や遊離アミノ酸、ペプチドが増加し、旨味とコクに優れ、つけかけ用途から調理に至るまで幅広く醤油の代替調味料として使用可能な醤油様調味料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
1)エンドウマメに麹菌を植菌して製麹した後、食塩存在下で仕込み、乳酸菌と酵母により発酵・熟成させて得られる醤油様調味料、
2)仕込み時にアレルゲンを含まない食物由来の粗精製タンパク質を添加することを特徴とする上記1)に記載の醤油様調味料、
3)アラビトール 2mg/mL以上;
マンニトール 2mg/mL以上;
エリスリトール 1mg/mL以上;
ソルビトール 0.3mg/mL以上;および
ガラクチトール 0.03mg/mL以上;
からなる群から選択される1または複数の成分を含有する醤油様調味料、
に関する。
本発明によれば、大豆や小麦のアレルギー患者だけでなく、日本国内で定められている25品目の食物や、コーデックスで定められている8種の食物の、いずれかのアレルギーが気になる消費者であっても、安心して醤油の味や香りを有する醤油の代替調味料として、本発明品を調理時の味付けや、直接食品につけたりかけたりする用途に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書における「醤油様調味料」とは、日本農林規格に定める「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料をいう。「しょうゆ」と同様の用途で用いられれば、醤油麹に由来する原料(例えば、大豆や小麦)が、醤油様調味料に使用されていなくてもよい。醤油様調味料には、果汁・野菜汁、エキス類、だし類、糖類、調味料、酒類、発酵調味料、酸味料、香料等の副原料が混合されていてもよい。また本明細書で記載する「醤油」は、日本農林規格の「しょうゆ」と同一の概念である。
本明細書における「アレルギー物質(アレルゲン)を含む食物」とは、2012年11月現在、日本国内で定められている25品目の食物(卵、乳、小麦、そば、落花生、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、バナナ、やまいも、りんご、ゼラチン)およびコーデックスで定められている8種の食物(グルテンを含む穀類として小麦、ライ麦、大麦、オート麦、スペルト小麦、それらの雑種、およびそれらの製品。甲殻類およびその製品。卵および卵製品。魚および魚製品。落花生、大豆、およびそれらの製品。乳類および乳製品(ラクトースを含む)。木の実及びその製品。亜硫酸塩から成る、あるいは亜硫酸塩を10mg/kg以上含む食品。)である。
本明細書におけるエンドウマメは、分類上エンドウに属する品種であればいずれでもよく、例えば、青エンドウ、黄エンドウ、赤エンドウ、サヤエンドウ、スナップエンドウなどが挙げられる。醤油に近い品質の調味液を得るためには、硬莢種の青エンドウ、黄エンドウなどを用いるのが好ましい。
通常、醤油麹の製造(製麹)の前に、大豆のタンパク質を変性させるために原料処理を行うが、本発明のエンドウマメも、大豆と同様の方法で原料処理することが可能である。工業的に広く行われている方法として、適切な粒度に割砕した後、加圧蒸煮や加熱膨化処理する方法などが挙げられる。圧力や温度の処理条件は大豆に準じればよい。
エンドウマメ麹の製麹は、通常の醤油麹と同様に行うことができ、伝統的な板蓋(麹蓋)による製麹や、工業的に広く行われている通風製麹装置を用いた方法などが可能である。上記原料処理を行ったエンドウマメの水分と温度を調整し、麹菌の分生子を接種し、25〜45℃、湿度85〜95%で、12〜240時間培養してエンドウマメ麹を得ることができる。製麹の途中で適宜、温度の調節のために手入れを行う。また、アレルゲンを含まない米などの穀物を添加し、粉合わせした後、製麹することもできる。製麹に使用する麹菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・タマリ(Aspergillus tamarii)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)などを挙げることができるが、古来より醤油や味噌などの醸造に利用されてきた安全な微生物であり、わが国の産業において利用頻度の高い菌である点で、アスペルギルス・オリゼまたはアスペルギルス・ソーヤが好ましい。
次に、上記エンドウマメ麹を醤油醸造における通常の仕込み割合にて適当濃度の食塩水とともに仕込み、諸味を得る。諸味液汁の食塩濃度は、発酵中に危害微生物の生育を充分に阻止できる濃度であればよく、仕込み温度にもよって変わるが0.5〜19%程度が好ましい。適宜、諸味に醤油乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)と醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxiiやCandida verstilis等)を添加して、乳酸発酵と酵母発酵を行う。醤油醸造の常法に従い15〜35℃で適宜攪拌しながら3〜6カ月間、あるいは、既知の低塩高温分解法に従い35〜55℃で適宜攪拌しながら1日〜2ヶ月間、発酵熟成を行ない、醤油の風味を有した熟成諸味を得る。
上記のように仕込んで得た諸味からも、醤油の香りと旨味を有した良好な調味液が得られるが、仕込みの際に、アレルゲンを含まない原料からタンパク質成分を抽出・粗精製・濃縮して得られた粗精製タンパク質を添加すると、発酵・熟成後に得られる調味液の可溶性総窒素(TN)や遊離アミノ酸、ペプチドが増加し、さらに高品質の醤油に匹敵する良好な調味液となる。アレルゲンを含まない原料由来の粗精製タンパク質であれば特に限定されないが、例えば、エンドウマメ、じゃがいも、とうもろこし、米等に由来するものが挙げられる。この中でも、エンドウマメ由来のタンパク質が好ましい。エンドウマメ由来のタンパク質としては、例えば、Emvital E7(商品名、Emsland社製)、PP−CS(商品名、オルガノフードテック社製)、Nutralys F85F(商品名、Roquette社製)などが一般的に入手可能である。エンドウマメ由来タンパク質の添加量としては、風味やタンパク分解率の面から、エンドウマメ麹に対し5〜100重量%が好ましい。
熟成諸味から固形分を除去し、清澄な醤油様の発酵液を得る方法としては、ナイロンなどの合成繊維でできた濾布で諸味を包み、加圧する厚揚げ方式や、濾過板と圧搾板に張った濾布の中に諸味を入れ、圧縮空気等で加圧するフィルタープレス方式等の周知の方法を用いることができる。
得られた醤油様調味料は、清澄化を行ってもよい。清澄化方法は、制限なく従来公知の膜処理、珪藻土ろ過、遠心分離、凝集法、沈降法などを用いることができる。
醤油様調味料として味を調えるために、本発明の調味液に呈味成分を添加する場合は、アレルゲンを含まない食物であれば特に限定されず、アミノ酸、酵母エキス、核酸、有機酸、タンパク質加水分解物、糖類、甜菜糖、野菜エキス類、肉エキス類、魚醤、酒類、みりん、アルコール、増粘剤、乳化剤、無機塩類などを添加してもよい。これら呈味成分は、単独または組み合わせて添加することができる。
得られた醤油様調味料は、殺菌または除菌を行ってもよい。殺菌の場合は、火入れと呼ばれる加熱殺菌工程を経る。火入れは公知の醤油製成過程で行なわれている加熱条件を用いればよい。好ましくは80〜85℃で20〜60分間、もしくは110〜120℃で5〜20秒間加熱し、その後冷却する。加熱によって澱が生じることがあるため、数日間静置した後、澱から上清を分離して醤油様調味料が得られる。また、除菌の場合は、公知のMF膜によるろ過・除菌等を行い、ろ過物を醤油様調味料として得る。
本発明の醤油様調味料は、日本農林規格の「しょうゆ」と同様の使い方ができ、また任意の飲食品に配合することができる。例えば、つゆ、たれ、ぽんず、ドレッシング、スープ、ソース、惣菜のもと等の食品に添加して用いることができる。
本発明の醤油様調味料に旨味やまろやかさを付与するために含まれる糖アルコールとしては、例えば、アラビトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、ガラクチトール、スレイトール、キシリトール、リビトール、イジトール、ボレミトール、ペルセイトール、イノシトール、ケルシトール等が挙げられるが、特にアラビトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、ガラクチトールが好ましい。また、それらの含有量としては、0.01mg/mL以上が好ましい。より具体的には、それぞれの糖アルコールについて、アラビトール2mg/mL以上、マンニトール2mg/mL以上、エリスリトール1mg/mL以上、ソルビトール0.3mg/mL以上、ガラクチトール0.03mg/mL以上が好ましい。これらはそれぞれ単独で含有されてもよいし、2以上の組み合わせで含有されてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
<エンドウマメ発酵調味料の調製>
エンドウマメ(カナダ産、黄エンドウマメ)1.5kgを割砕機で割砕し、1Lの水を加えて混合し、オートクレーブで121℃・3分間蒸煮した。放置して40℃以下まで冷ました後、2gの種麹を混合し、板蓋に載せて恒温恒湿機内(温度30℃、湿度95%)で3日間製麹した(試作例1)。また、エンドウマメに対し20%重量のα化米粉を混合してから種麹を植菌した試験区も調製した(試作例2)。製麹中、麹菌の生育に応じて手入れを行った。得られた麹に2Lの食塩水を加え、よく攪拌し、諸味とした。このとき諸味の食塩濃度は17%w/vであった。諸味は通常の濃口醤油と同様の仕込み管理を行い、乳酸発酵と酵母発酵を経て熟成させた。仕込んでから6ヶ月後に、ナイロン製の濾布に諸味を入れ、おもりを載せて圧搾を行った。さらに、醤油製造の定法にしたがって珪藻土濾過、火入れ、オリ引きを行い、エンドウマメ発酵調味料(試作例1,2)を得た。
<一般成分分析>
醤油の一般成分は、しょうゆ試験法(財団法人、日本醤油研究所編、昭和60年(1985年)3月1日発行)記載の方法に従い分析を行った。HEMF等の香気成分は、ガスクロマトグラフィー法(Journal of Agricultural and Food Chemistry Vol.39,934(1991)参照)にて分析定量した。結果を表1に示す。なお、対照として大豆と小麦を原料に使用した通常の濃口醤油市販品(キッコーマン社製)を分析した。
得られたエンドウマメ発酵調味料は、通常の濃口醤油のような外観と風味を有し、呈味性の面でも好ましい醤油様調味料となった。表1の分析値から、呈味に関与する成分が通常の濃口醤油と同程度に含有されていることがわかった。また、醤油の香りの特徴香成分として知られるHEMFも充分量含有されていることが明らかとなった。
<エンドウマメタンパク質を添加したエンドウマメ発酵調味料の調製>
実施例1と同様に製麹を行い、得られたエンドウマメ麹とエンドウマメタンパク質(Emsland社製)を重量比で90:10(試作例3)、80:20(試作例4)、50:50(試作例5)の割合で混合し、実施例1と同様に仕込み、発酵熟成させた後、圧搾、火入れを行い、エンドウマメ発酵調味料(試作例3〜5)を得た。実施例1と同様に分析を行った結果を表2に示す。
TNについては、エンドウマメ麹のみで仕込んだ試作例1ではJAS上級規格醤油に相当する1.4であったが(表1参照)、表2の結果から、仕込み時にエンドウマメタンパク質を加えた試作例3では、JAS特級規格醤油に相当する1.65となった。また、醤油様調味料の旨味に寄与が大きいグルタミン酸についても、0.9から1.2に向上した。さらに、エンドウマメタンパク質の添加量を増やすことによって、その量に応じてTNとグルタミン酸が向上し、旨味が顕著に強く感じられた。一方、近年は加工用原料として使用する場合に色の淡い醤油のニーズが高まっているが、エンドウマメを原料とした場合に色が淡くなり、米(表1参照)やエンドウマメタンパク質(表2参照)を加えることでさらに色が淡い醤油様調味料が得られることがわかった。エンドウマメタンパク質にも特定アレルゲンが含まれていないため、その添加により、アレルゲンフリー醤油様調味料としての特長を有したまま、旨味や色などの品質を向上させることが可能になった。
<官能評価>
各試験品の官能評価は、訓練され識別能力を有するパネル5名により、前述の試作例1と試作例4の味と香りについて、旨味および醤油らしさの強度をセマンティック・ディファレンシャル法で評価した。試作例1および4を原液のまま、内容を明かさずブラインドで提示し、香りを嗅いだ後、0.2mLを喫食することで比較を行った。評定尺度は下記の基準に従い、パネリスト間の平均評定を算出した。
(評定尺度)
1.かなり弱く感じられるか、ほとんど感じられない
2.やや弱く感じられる
3.感じられる
4.やや強く感じられる
5.かなり強く感じられる
表3の官能評価結果より、試作例1,4のいずれも、かなり強い旨味と、醤油らしさを有することが分かる。醤油らしい味に関しては、pH、グルタミン酸の旨味、発酵・熟成により生じた有機酸、その他メイラード反応によって生じた色素成分などが通常の大豆小麦醤油と近い量含まれていることが寄与していると考えられる。また、醤油らしい香りに関しては、HEMFをはじめとして、発酵で生み出される醤油の特徴的な香気成分が通常の大豆小麦醤油と近い量含まれていることが寄与していると考えられる。さらに、エンドウマメタンパク質を添加した試作例4では、より旨味が強まることが確認された。なお、パネルのコメントとして、「試作例1も4もブラインドテイスティングを行うと、通常醤油と区別がつかないほど醤油らしい」というコメントがあった。
<糖アルコールの抽出と誘導体化>
各試料2μLをそれぞれマイクロチューブに移し、メタノール:水:クロロホルム (5:2:2)の混合溶液1000μLと、内部標準物質として0.2mg/mLのリビトール(和光純薬工業社製)60μLを加え、撹拌した。撹拌後、16,000×g、4℃で3分間遠心分離を行い、その上清900μLを回収し、別のマイクロチューブに移した。そこに400μLの蒸留水を加え、撹拌し、再度同様の遠心分離を行った。その上清をさらに別のマイクロチューブに900μL移し、遠心濃縮機で200μL以下になるまで濃縮した。その後、凍結乾燥機を用いて乾固体を得た。次に、乾固体を20mg/mLのメトキシアミン塩酸塩(シグマ・アルドリッチ社製)を含む無水ピリジン(和光純薬工業社製)100μLに溶解し、30℃で90分間撹拌しながら保持した。その後、50μLのN−メチルーN−トリメチルシリル−トリフルオロ−アセトアミド(ジーエルサイエンス社製)を加え、37℃、30分間反応させトリメチルシリル化を行い、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)用サンプルとした。
<GC/MS分析>
GC/MS分析は7890A−5975C(アジレントテクノロジーズ社製)を使用し、標準品として、アラビトール、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、ガラクチトール(いずれも和光純薬工業社製)を同様に誘導体化して測定し、得られた検量線から定量を行った。装置条件は以下のとおりとした。

カラム:CP−SIL 8CB−MS
(30 mm × 0.25 mm、アジレント・テクノロジー社製)
昇温条件:80℃ 2分保持後、80〜320℃、15℃/分、
320℃ 6分保持
キャリアガス及び流量:ヘリウムガス、1mL/分
注入温度:230℃
表4の結果から、エンドウマメ発酵調味料では通常濃口醤油より約2〜10倍の糖アルコールが含有されていることがわかった。これらの糖アルコールは独特の旨味やまろやかさを呈することが知られているため、エンドウマメ発酵調味料の味にも好ましい特長を与えていると考えられる。
これらの糖アルコール類を食品添加物として配合すると、近年の天然志向、無添加志向のニーズに合致しない場合がある。本発明のエンドウマメ発酵調味料は、天然の食品素材(特に、アレルゲンを含まないエンドウマメのような食物)を原料として発酵・熟成させることにより得られるため、食品添加物を使用することなく、これらの有用な成分を著量含有させることができる。
以上の結果より、エンドウマメ、さらに必要によりアレルゲンを含まない食物由来の粗精製タンパク質を加えて発酵・熟成させることで、アレルギー物質を含む食物を全く使用せずに、醤油の好ましい味と香りを有する醤油様調味料が得られた。さらに、通常醤油よりも著量含有する糖アルコールによる独特の旨味やコクを付与できる調味料となった。本発明における醤油様調味料は、従来の和食用途においても醤油と同様に使用することが可能であり、また中華や洋食用途などにも幅広く使用でき、アレルギー患者の食生活のQOL向上に寄与すると期待される。

Claims (3)

  1. エンドウマメに麹菌を植菌して製麹した後、食塩存在下で仕込み、乳酸菌と酵母により発酵・熟成させて得られる醤油様調味料であって
    前記エンドウマメが、青エンドウ又は黄エンドウである、
    醤油様調味料。
  2. 仕込み時にアレルゲン(2012年11月現在、日本国内で定められている25品目の食物(卵、乳、小麦、そば、落花生、あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、バナナ、やまいも、りんご、ゼラチン)およびコーデックスで定められている8種の食物(グルテンを含む穀類として小麦、ライ麦、大麦、オート麦、スペルト小麦、それらの雑種、およびそれらの製品。甲殻類およびその製品。卵および卵製品。魚および魚製品。落花生、大豆、およびそれらの製品。乳類および乳製品(ラクトースを含む)。木の実及びその製品。亜硫酸塩から成る、あるいは亜硫酸塩を10mg/kg以上含む食品。))を含まない食物由来の粗精製タンパク質を添加することを特徴とする請求項1記載の醤油様調味料。
  3. さらに、
    アラビトール 2mg/mL以上;
    マンニトール 2mg/mL以上;
    エリスリトール 1mg/mL以上;
    ソルビトール 0.3mg/mL以上;および
    ガラクチトール 0.03mg/mL以上;
    からなる群から選択される1または複数の成分を含有する、請求項1又は2に記載の醤油様調味料。
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