以下に、図1〜図30を参照しながら、本発明に係る虚像光学系および虚像表示装置の実施の形態を詳細に説明する。また、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施の形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
(第1の実施の形態)
<虚像表示装置の全体構成>
図1は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図2は、第1の実施の形態に係る虚像光学系の一例を示す斜視図である。図3は、第1の実施の形態に係る虚像光学系の一例を示す正面図である。図1〜図3を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1は、虚像光学系2と、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2は、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2は、導光部材100(第1導光部材)と、導光部材200(第2導光部材)と、を有する。
コリメート光学系300は、複数の光学レンズおよび絞り等から構成され、画像表示素子400から出射される画像情報を含む光線(以下、単に「画像光」と称する場合がある)を、画像表示素子400の各位置に応じた方向に角度変換し、かつ、平行化する光学系である。コリメート光学系300の平行化の動作の詳細は、図7で後述する。
画像表示素子400は、ライトガイドである虚像光学系2を通じて表示する虚像の基となる画像の画像光を出射するデバイスである。画像表示素子400として、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)または液晶表示装置等の種々の表示素子を適用することができる。なお、画像表示素子400として、画像等の情報を表示できるものであれば、例えば、多数の微小鏡面(マイクロミラー)を平面に配列したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスであるDMD(Digital Mirror Device)、または、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)を適用することができる。この場合、画像表示素子400を照射する光源として、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、または、放電ランプ等を用いることができる。
導光部材100は、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。以下、導光部材100の面に関して、ユーザから見て手前側、すなわち、図1において下側の面を「後面」とし、ユーザから見て奥側、すなわち、図1において上側の面を「前面」として説明する。導光部材100は、光線入射部101と、反射部102と、導光部103と、取り出し部104と、光線射出部105と、再帰反射部106と、を有する。
光線入射部101は、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像光が入射する後面側の部位である。反射部102は、光線入射部101から入射した画像光の光線を反射する部位である。光線入射部101および反射部102の詳細は、図4で後述する。
導光部103は、反射部102により反射された光線を全反射させながら導光する部位である。
取り出し部104は、導光部103により導光され、再帰反射部106により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材100の外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。光線射出部105は、取り出し部104により導光部材100の外側に取り出すために反射された光線を、導光部材100の外部に射出させる後面側の部位である。取り出し部104および光線射出部105の詳細は、図5で後述する。
再帰反射部106は、図2および図3に示すように、導光部103とは反対側の取り出し部104の端部に形成され、導光部103により導光された光線を反射して進行方向を反転させる部位である。以下、再帰反射部106により反射された光を「再帰光」と称する場合がある。これは、後述する再帰反射部206についても同様である。再帰反射部106の詳細は、図8〜図10で後述する。
導光部材200は、導光部材100と同様に、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材200は、図1および図2に示すように、導光部材100の導光部103の前面側に、所定のエアギャップを介して、後述する光線射出部205が導光部103に対向するように配置されている。導光部材200は、光線入射部201と、反射部202と、導光部203と、取り出し部204と、光線射出部205と、再帰反射部206と、を有する。
光線入射部201は、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像光が入射する後面側の部位である。光線入射部201に入射する画像光は、図11で後述するように、導光部材100の導光部103を透過した光である。反射部202は、光線入射部201から入射した画像光の光線を反射する部位である。光線入射部201および反射部202の詳細は、図4で後述する。
導光部203は、反射部202により反射された光線を全反射させながら導光する部位である。
取り出し部204は、導光部203により導光され、再帰反射部206により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材200の外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。光線射出部205は、取り出し部204により導光部材200の外側に取り出すために反射された光線を、導光部材200の外部に射出させる後面側の部位である。取り出し部204および光線射出部205の詳細は、図6で後述する。
再帰反射部206は、図2および図3に示すように、導光部203とは反対側の取り出し部204の端部に形成され、導光部203により導光された光線を反射して進行方向を反転させる部位である。再帰反射部206の詳細は、図8〜図10で後述する。
<光線入射部および反射部について>
図4は、第1の実施の形態に係る虚像光学系の2つの導光部材の入射部の近傍の拡大図である。図4を参照しながら、導光部材100の光線入射部101および反射部102、ならびに、導光部材200の光線入射部201および反射部202について説明する。
図4に示すように、導光部材100の反射部102は、導光部材100の後面側の部位である光線入射部101に対して、所定の角度θ1の面となるように形成されている。また、導光部材200の反射部202は、導光部材200の後面側の部位である光線入射部201に対して、所定の角度θ2の面となるように形成されている。
また、画像表示素子400からの画像光を効率的に導光部材100および導光部材200に入射させるために、図4に示すように、光線入射部101と光線入射部201とは(すなわち、導光部材100の先端部と、導光部材200の先端部とは)、導光部材100(または導光部材200)の導光方向にずれて配置されている。これによって、画像光は、図4に示すように、光線入射部101に入射すると共に、導光部材100の導光部103を透過して、光線入射部201に入射することができる。
また、反射部102および反射部202は、反射コートが施されている。これによって、光線入射部101から入射した画像光は、反射部102により反射され、光線入射部201から入射した画像光は、反射部202により反射される。ここで、反射部102および反射部202に施される反射コートとしては、例えば、アルミニウム、銀、または誘電体コート等の反射率が高いミラーコートを適用することが望ましい。
また、上述した光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1、および、光線入射部201と反射部202とがなす角度θ2は、θ1<θ2の関係となっている。これによって、光線入射部101および光線入射部201に、同一の入射角で画像光が入射した場合、画像光は、それぞれ反射部102および反射部202で反射された後、導光部103および導光部203を異なる全反射角で反射を繰り返しながら導光することになる。このように、全反射角が異なるθ1<θ2の関係となるようにすると、導光部材100および導光部材200を同一の材料で成型することが可能となる。このように、θ1<θ2の関係とすることによる導光部材100および導光部材200の機能については、図12および図13で後述する。
<取り出し部および光線射出部について>
図5は、第1の実施の形態に係る虚像光学系の一方の導光部材の取り出し部の拡大図である。図6は、第1の実施の形態に係る虚像光学系の他方の導光部材の取り出し部の拡大図である。図5および図6を参照しながら、導光部材100の取り出し部104および光線射出部105、ならびに、導光部材200の取り出し部204および光線射出部205について説明する。
図5に示すように、導光部材100の取り出し部104は、光線射出部105の面(後面)に対して所定の角度θ1に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)と、が交互に並んで形成されている。第1面107aおよび第2面107bは、取り出し部104において、それぞれ少なくとも1以上が形成されている。したがって、図5に示すように、導光部材100の取り出し部104および光線射出部105に対応する部分は、導光部103から再帰反射部106へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第2面107bは、必ずしも、光線射出部105の面に平行である必要はない。
第1面107aは、導光部材100の内部に入射して導光され、再帰反射部106により反射された再帰光を、光線射出部105に向かう方向に反射することによって、光線射出部105から射出させる機能を担う平面である。第1面107aの光線射出部105に対する傾斜角は、上述した光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一であり、例えば、20度〜35度の範囲に設定することが好ましい。このように、第1面107aの傾斜角を、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一とすることによって、コリメート光学系300の配置の調整等が容易となる。
また、第1面107aには、反射率が10%以上の反射コートが施されている。これによって、画像光を効率よくユーザの眼500の方向に光線射出部105から射出させることができ、輝度の高い虚像を形成することが可能となる。また、この反射コートの反射率が10%に近い場合、虚像の視認と、外界の観察とを同時に行うことができるので、シースルー性が良好な虚像表示装置1を得ることができる。
第2面107bは、導光部材100の内部に入射して、導光部103で導光された画像光を、さらに再帰反射部106へ向かう方向に導光させるための反射面としての機能を担う面である。また、第2面107bは、光線射出部105の面(後面)と平行な平面となっている。これによって、導光部材100の前面および後面からの外部の光を透過させる透過面として機能するので、シースルー性が確保される。
ここで、仮に、第2面107bを光線射出部105に対して傾斜させた場合、導光部103で導光された画像光が、第2面107bで反射される反射角と、光線射出部105で反射される反射角とが一致せず、変化することになる。この場合、光線入射部101に入射する光線と光線入射部101の面の法線とのなす角で定義される入射角と、光線射出部105から射出される光線と光線射出部105の面の法線とのなす角で定義される射出角とが、同一の角度とならない。したがって、第1面107aで反射され、光線射出部105から射出された画像光は、光線入射部101の入射角と異なる方向に射出されることになり、思わしくない虚像が形成されてしまう。したがって、上述のように、本実施の形態では、第2面107bは、光線射出部105の面と平行となるように形成されている。
また、取り出し部104に形成された複数の第1面107aの間隔は、図2および図3に示すように、導光部103から再帰反射部106へ向かう方向に密から粗となるように形成されている。第1面107aによる反射対象となる光線は、上述のように再帰反射部106で反射された再帰光であるので、再帰反射部106で反射されたばかりの再帰光は、まだ、第1面107aにより反射されておらず、再帰反射部106近傍の再帰光の光量は大きい。したがって、再帰反射部106近傍の第1面107aでは、再帰光の光線が反射される確率が高い。一方、再帰反射部106から離れた、すなわち、導光部103に近い第1面107aでは、再帰反射部106に反射された再帰光のうち多くは、再帰反射部106近傍の第1面107aによって反射され光線射出部105から射出されているので、再帰反射部106から離れた場所の再帰光の光量は小さい。したがって、再帰反射部106から離れた第1面107aでは、再帰光の光線が反射される確率が、再帰反射部106近傍の第1面107aよりも低い。よって、上述のように、第1面107aの間隔を、導光部103から再帰反射部106へ向かう方向に密から粗となるように形成することによって、再帰光がバランスよく第1面107aによって反射され、光線射出部105から射出されるので、光量ムラの少ない虚像を形成することができる。
なお、上述のように、第1面107aの間隔を、導光部103から再帰反射部106へ向かう方向に密から粗となるように形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、複数の第1面107aの間隔のうち、少なくとも1つの間隔が異なる長さであるものとしてもよい。すなわち、導光部103で導光される画像光の性質によって、第1面107aのそれぞれの間隔を設定することによって、光量ムラの少ない虚像を形成することができる。
図6に示すように、導光部材200の取り出し部204は、光線射出部205の面(後面)に対して所定の角度θ2に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)と、が交互に並んで形成されている。第1面207aおよび第2面207bは、取り出し部204において、それぞれ少なくとも1以上が形成されている。したがって、図6に示すように、導光部材200の取り出し部204および光線射出部205に対応する部分は、導光部203から再帰反射部206へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第2面107bは、必ずしも、光線射出部105の面に平行である必要はない。
第1面207aは、導光部材200の内部に入射して導光され、再帰反射部206により反射された再帰光を、光線射出部205に向かう方向に反射することによって、光線射出部205から射出させる機能を担う平面である。第1面207aの光線射出部205に対する傾斜角は、上述した光線入射部201と反射部202とがなす角度θ2と同一であり、例えば、20度〜35度の範囲に設定することが好ましい。このように、第1面207aの傾斜角を、光線入射部201と反射部202とがなす角度θ2と同一とすることによって、コリメート光学系300の配置の調整等が容易となる。
また、第1面207aには、取り出し部104の第1面107aと同様の反射コートが施されている。また、取り出し部204に形成された複数の第1面207aの間隔は、第1面107aと同様に、導光部203から再帰反射部206へ向かう方向に密から粗となるように形成されている。なお、第1面207aの間隔を、導光部203から再帰反射部206へ向かう方向に密から粗となるように形成することに限定されるものではなく、複数の第1面207aの間隔のうち、少なくとも1つの間隔が異なる長さであるものとしてもよい。
第2面207bは、導光部材200の内部に入射して、導光部203を導光された画像光を、さらに再帰反射部206へ向かう方向に導光させるための反射面としての機能を担う面である。また、第2面207bは、光線射出部205の面(後面)と平行な平面となっている。これによって、導光部材200の前面および後面からの外部の光を透過させる透過面として機能するので、シースルー性が確保される。
また、図5および図6に示すように、導光部材100および導光部材200は、導光部103と導光部203とがエアギャップ3を介して近接するように配置されている。これによって、虚像光学系2全体の厚みを薄くすることができる。この場合、導光部材100および導光部材200は、周縁部分で接着剤または治具により固定されることによってエアギャップ3が形成される。接着剤によって固定される場合、マイクロボール型の接着剤によって固定されエアギャップ3が形成される。エアギャップ3の大きさは、0.1[mm]〜0.5[mm]程度が好ましい。ここで、エアギャップ3が大きくなると、光線入射部101と光線入射部201との間隔も大きくなるため、コリメート光学系300からの画像光を効率的に入射させることが困難になる。なお、導光部103と導光部203との間にエアギャップ3を形成するものとしたが、必ずしもエアギャップ3を形成する必要はない。エアギャップ3を形成しない場合、すなわち、導光部103と導光部203とを密着させる場合、例えば、反射透過層を介して密着させるものとしてもよい。
また、導光部103と導光部203との間にエアギャップ3を形成することによって、図6に示すように、導光部103と光線射出部205との間にエアギャップ3が形成されて、導光部103および光線射出部205は近接して配置されることになる。これによって、光線射出部205から射出された光線が射出角を保持したまま眼500の方向に射出されることが可能となる。ここで、仮に、導光部103が、光線射出部205と近接して配置されない場合、光線射出部205から射出された光線の一部が、例えば、導光部材100の取り出し部104の前面側における第1面107aで反射されて迷光となってしまう。
<コリメート光学系の動作>
図7は、コリメート光学系の光線の平行化の動作を説明する図である。図7を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1のコリメート光学系300の動作について説明する。なお、図7においては、コリメート光学系300の動作を簡潔に説明するため、コリメート光学系300を模式的に図示している。
図7に示すように、画像表示素子400における各素子からは、少なくとも所定の角度範囲のあらゆる方向に向かって、すなわち、拡散して画像光が出射する。例えば、画像表示素子400の中央付近の素子から出射した画像光は、図7に示すように、紙面視の下から上に向かって拡散しながらコリメート光学系300に入射する。コリメート光学系300に入射した画像光は、コリメート光学系300によって角度変換され、かつ、平行化されて、紙面視の下から上に向かう平行光として出射する。
また、画像表示素子400のうち、図7の紙面視左側半分の部分を左側表示素子400aと称するものとすると、左側表示素子400aにおける特定の素子から出射した画像光は、図7に示すように、拡散しながらコリメート光学系300に入射する。コリメート光学系300に入射した画像光は、コリメート光学系300によって角度変換され、かつ、平行化されて、紙面視の左下から右上に向かう平行光として出射する。
また、画像表示素子400のうち、図7の紙面視右側半分の部分を右側表示素子400bと称するものとすると、右側表示素子400bにおける特定の素子から出射した画像光は、図7に示すように、拡散しながらコリメート光学系300に入射する。コリメート光学系300に入射した画像光は、コリメート光学系300によって角度変換され、かつ、平行化されて、紙面視の右下から左上に向かう平行光として出射する。
以上のように、画像表示素子400のそれぞれの素子から出射した画像光は、コリメート光学系300によって、その素子の位置に応じた方向に角度変換され、かつ、平行化されて、光線入射部101および光線入射部201に入射する。
<再帰反射部について>
図8は、再帰反射部が設けられていない導光部材における光線の発散動作を説明する図である。図9は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置の導光部材の再帰光の収束動作を説明する図である。図10は、再帰反射部での光線の反射動作を説明する図である。図8〜図10を参照しながら、導光部材100の再帰反射部106、および、導光部材200の再帰反射部206について説明する。
図9に示すように、再帰反射部106は、導光部103とは反対側の取り出し部104の端部に形成された部位であり、導光部材100の一の側面に対して角度θsで傾斜する第1傾斜面106aと、第1傾斜面106aに対して角度θpで傾斜する第2傾斜面106bと、が連続して形成された部位である。すなわち、再帰反射部106は、導光部103とは反対側の取り出し部104の端部に、複数の屋根形の形状物(全反射面)が連続して形成された部位である。第1傾斜面106aおよび第2傾斜面106bは、互いに略等しい形状および面積を有する平面である。
また、導光部材100の側面と第1傾斜面106aとのなす角度θsは、135度であり、第1傾斜面106aと第2傾斜面106bとのなす角度θpは、90度となるように形成されている。したがって、再帰反射部106は、頂角が90度である屋根形の複数の形状物で構成されている。
再帰反射部106に到達した画像光を良好に反射させるために、第1傾斜面106aおよび第2傾斜面106bには、反射率の高い反射コートを施すことが好ましい。また、この反射コートの反射率は、70%以上であることが望ましい。
なお、導光部材200に形成された再帰反射部206の構成も、上述した再帰反射部106の構成と同様である。
次に、導光部材内で導光される画像光の進行状態の詳細について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、再帰反射部106が設けられていない参考例としての導光部材に画像光が入射されている状態を示している。この参考例としての導光部材は、再帰反射部106を有しない点、および、取り出し部104の第1面107aが逆向き、すなわち、光線入射部101と対向する向きに形成されている点で、上述の本実施の形態の導光部材100の構成とは異なっている。
画像表示素子400から出射された画像光は、コリメート光学系300を通過することにより平行光とされた状態で、図8に示すように、導光部材の光線入射部101から入射して、導光部材内を進行する。光線入射部101から入射した画像光は、導光部材内を全反射することにより、図8に示すように、発散光となって導光部材内を進行する。この画像光の発散の度合いは、導光部材内を進行した光になるほど顕著になる。したがって、導光部材内を進行する画像光は、垂直視野方向に広がって進行する。
図8に示す導光部材では、取り出し部104の第1面107aから画像光を取り出そうとすると、発散光のまま取り出すことになるので、光線射出部105から射出されユーザの眼に入ってゆく画像光は、垂直視野方向に発散するものとなる。このため、発散角度の大きい画像周辺部等の画像光がユーザの眼に入らず、観察される虚像が欠けることになる。
次に、本実施の形態の導光部材100内で画像光が導光される状態を図9および図10に示す。ここで、図9は、導光部材100の前面側(正面)から表した図であり、図10は、再帰反射部106における画像光の反射動作を説明するために再帰反射部106を拡大して示した図である。また、図9および図10では、説明を簡潔にするため、画像表示素子400から出射された1本の光線600のみを抽出して示している。
画像表示素子400から出射された画像光は、コリメート光学系300を通過して平行光とされた状態で、図9に示すように、導光部材100の光線入射部101から入射して導光部材100内を進行する。導光部材100の光線入射部101から入射した画像光(光線600)は、導光部材100内を全反射することにより、発散光となって導光部材100内を進行する。すなわち、光線入射部101から入射した画像光は、再帰反射部106に達するまでは、図8で上述した例と同様に、発散光として導光部材100内を進行する。
そして、導光部材100内を進行する画像光は、再帰反射部106で反射することにより、進行方向すなわち導光する方向が反転する。ここで、画像光(光線600)は、図10に示すように、再帰反射部106を構成する第1傾斜面106aおよび第2傾斜面106bの両面で反射して、前面側から見た入射光と反射光(再帰光)が平行になると共に、収束光となって導光部材100内を、反射前とは逆方向に進行する。さらに、再帰光は、取り出し部104の第1面107aで反射して、収束光として光線射出部105から射出され、ユーザの眼500の方向に導かれる。このように、本実施の形態の導光部材100によれば、画像光が収束光として射出され、ユーザの眼500に導かれるので、広角でも虚像が欠けずに良好に観察することができる。
<画像光の光路について>
図11は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置において画像表示素子上の同一位置から出射した画像光の光路を説明する図である。図12は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置において左側表示素子から出射した光線の挙動を説明する図である。図13は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置において右側表示素子から出射した光線の挙動を説明する図である。図11〜図13を参照しながら、本実施の形態の虚像光学系2の画像光の光路について説明する。
図11に示すように、画像表示素子400のある位置の素子から出射した画像光は、コリメート光学系300により平行光に変換され、導光部材100の光線入射部101、および、導光部材200の光線入射部201に入射する。光線入射部101および光線入射部201に入射した画像光は、それぞれ反射部102および反射部202で反射され、導光部103および導光部203を、異なる反射角(全反射角)で導光される。ここで、導光部103、203における反射角(全反射角)とは、導光される光線と、光線射出部105、205の面の法線とのなす角である。導光部103により導光された画像光は、再帰反射部106で反射されて再帰光となり、取り出し部104により取り出され、光線射出部105から外部に射出される。また、導光部203により導光された画像光は、再帰反射部206で反射されて再帰光となり、取り出し部204により取り出され、光線射出部205から外部に射出される。
このとき、図4および図5で上述したように、光線入射部101と反射部102とがなす角度と、取り出し部104の第1面107aの光線射出部105に対する傾斜角とは、共に角度θ1であるため、図11に示すように、光線入射部101へ入射する画像光の入射角と、光線射出部105から射出される画像光の射出角とは等しい。一方、図4および図6で上述したように、光線入射部201と反射部202とがなす角度と、取り出し部204の第1面207aの光線射出部205に対する傾斜角とは、共に角度θ2であるため、図11に示すように、光線入射部201へ入射する画像光の入射角と、光線射出部205から射出される画像光の射出角とは等しい。また、光線入射部101および光線入射部201へそれぞれ入射する画像光は、コリメート光学系300により平行光となっているので、図11に示すように、光線入射部101へ入射する画像光の入射角と、光線入射部201へ入射する画像光の入射角とは等しい。したがって、光線射出部105から射出される画像光の射出角と、光線射出部205から射出される画像光の射出角とは等しくなる。
また、一般に、導光部103、203で導光される画像光の全反射角を小さく設定することが望ましい。これによって、取り出し部104の第1面107a、および、取り出し部204の第1面207aで反射される確率が高くなり効率的に画像光を取り出すことができるため、光量ムラの少ない虚像を得ることができる。
また、画像光を導光してユーザの眼に到達することができる光線は、導光部103、203を全反射により導光される光線のみである。すなわち、得られる虚像の視野角は、導光部材100、200の材料特性で決定されることになる。ここで、導光部材100と導光部材200とで、虚像の形成を分担し、各虚像の分担範囲で、各々の全反射条件を満たすように設定することによって、広視野角の虚像を形成することが可能となる。このように、導光部材100と導光部材200とで、虚像の形成を分担するために、上述したように、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1(取り出し部104の第1面107aの光線射出部105に対する傾斜角)を、光線入射部201と反射部202とがなす角度θ2(取り出し部204の第1面207aの光線射出部205に対する傾斜角)よりも小さくしている。これによって、同一の入射角で光線入射部101、201に入射した画像光について、導光部203で導光される光線の反射角は、導光部103で導光される光線の反射角よりも大きくなる。ここで、光線入射部101、201への入射角、および、光線射出部105、205からの射出角について、光線入射部101、201の面、および光線射出部105、205の面の法線に対して、右側に振れる角度を正の角度とし、左側に振れる角度を負の角度とする。
この場合、導光部材100については、θ1<θ2なので、光線入射部101への画像光の入射角が光線入射部101の面の法線に対して右に振れ過ぎると、導光部103での画像光の反射角が小さくなって臨界角よりも小さくなり、全反射せず画像光の一部が外部に逃げてしまう。そこで、例えば、入射角が法線に対して左側に振れた角度、すなわち、負の角度とすることによって、導光部103で全反射する程度の大きさの反射角とすることができる。すなわち、導光部材100は、画像表示素子400の左側表示素子400aから出射した画像光を導光させて、虚像を形成することに適している。図12は、左側表示素子400aから出射した画像光が、導光部材100により導光されて射出され、眼500において紙面視左側の網膜に結像している状態を示している。
一方、導光部材200については、θ1<θ2なので、光線入射部201への画像光の入射角が光線入射部201の面の法線に対して左側に振れ過ぎると、導光部203での全反射角が大きくなり、取り出し部204で画像光を取り出しにくくなる。そこで、例えば、入射角が法線に対して右側に振れた角度、すなわち、正の角度とすることによって、導光部203での全反射角を小さくすることができ、取り出し部204で効率的に画像光を取り出すことができる。すなわち、導光部材200は、画像表示素子400の右側表示素子400bから出射した画像光を導光させて、虚像を形成することに適している。図13は、右側表示素子400bから出射した画像光が、導光部材200により導光されて射出され、眼500において紙面視右側の網膜に結像している状態を示している。
以上のことから、θ1<θ2とすることによって、画像表示素子400の左側表示素子400aから出射される画像光は、導光部材100によって虚像として形成され、右側表示素子400bから出射される画像光は、導光部材200によって虚像として形成される。これによって、広視野角の虚像を形成することが可能となり、光利用効率を向上させ、光量ムラの少ない虚像を得ることができる。
なお、上述のように、厳密に画像表示素子400の左側半分(左側表示素子400a)を導光部材100に対して、右側半分(右側表示素子400b)を導光部材200に対して、虚像の形成を分担させる必要はない。すなわち、導光部材100、200のそれぞれの大きさおよび材料特性等に応じて、画像表示素子400から出射される画像光のうち少なくとも一部を導光部材100に分担し、残りを導光部材200に分担させるものとしてもよい。
以上のように、本実施の形態に係る虚像表示装置1では、導光部材100、200を、θ1<θ2となるように構成することによって、導光部103、203での全反射角をそれぞれ異なるようにしている。これによって、導光部材100と導光部材200とで、画像表示素子400から出射される画像光に対応する虚像の形成を分担することができるので、広視野角の虚像を形成することが可能となり、光利用効率を向上させ、光量ムラの少ない虚像を得ることができる。
また、取り出し部104に形成された複数の第1面107aの間隔、および、取り出し部204に形成された複数の第1面207aの間隔を、それぞれ導光部103、203から再帰反射部106、206へ向かう方向に密から粗となるように形成している。これによって、再帰光がバランスよく第1面107a、207aによってそれぞれ反射され、光線射出部105、205から射出されるので、光量ムラの少ない虚像を形成することができる。
なお、図1等に示すように、虚像光学系2は、導光部材100および導光部材200の2つの導光部材で構成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の導光部材によって構成されるものとしてもよい。この場合、それぞれの導光部材において、光線入射部と反射部とのなす角度をそれぞれ異なるものとし、画像表示素子400から出射される画像光について虚像の形成の役割を分担させるようにすればよい。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施の形態では、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と、光線入射部201と反射部202とがなす角度θ2とを異なるもの(θ1<θ2)とした場合の動作について説明した。本実施の形態では、2つの導光部材の屈折率を異ならせることによって、導光される画像光の反射角を異ならせる構成について説明する。
<虚像表示装置の全体構成>
図14は、第2の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図14を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1aの全体構成について説明する。
図14に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1aは、虚像光学系2aと、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2aは、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2aは、導光部材100と、導光部材200aと、を有する。
なお、コリメート光学系300、画像表示素子400、および導光部材100の構成および動作は、上述の第1の実施の形態と同様である。
導光部材200aは、導光部材100と同様に、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材200aは、導光部材100の導光部103の前面側に、所定のエアギャップを介して、後述する光線射出部205が導光部103に対向するように配置されている。導光部材100の屈折率をn1とした場合、導光部材200aは、屈折率n1よりも大きい屈折率n2である部材によって構成されている。導光部材200aは、光線入射部201と、反射部202aと、導光部203と、取り出し部204aと、光線射出部205と、再帰反射部206と、を有する。
光線入射部201は、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像光が入射する後面側の部位である。光線入射部201に入射する画像光は、導光部材100の導光部103を透過した光である。反射部202aは、光線入射部201から入射した画像光の光線を反射する部位である。本実施の形態では、光線入射部201と反射部202aとがなす角度は、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一であるものとして説明する。
導光部203は、反射部202aにより反射された光線を全反射させながら導光する部位である。
取り出し部204aは、導光部203により導光され、再帰反射部206により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材200aの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。光線射出部205は、取り出し部204aにより導光部材200aの外側に取り出すために反射された光線を、導光部材200aの外部に射出させる後面側の部位である。本実施の形態では、取り出し部204aの第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)の光線射出部205に対する傾斜角は、上述した光線入射部201と反射部202aとがなす角度θ1と同一である。
再帰反射部206は、導光部203とは反対側の取り出し部204aの端部に形成され、導光部203により導光された光線を反射して進行方向を反転させる部位である。
<画像光の光路について>
図15は、第2の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材において屈折率の違いによる全反射角の違いを説明する図である。図15を参照しながら、本実施の形態の虚像光学系2aの画像光の光路について説明する。
図15に示すように、屈折率n2の導光部材200aにおいて、画像光の光線601は、光線入射部201に入射し、屈折率n2に基づく屈折により光線602に屈折されて、反射部202aへ向かう。光線602は、光線入射部201となす角が角度θ1である反射部202aによって反射された後、光線603となって導光部203で導光される。
次に、導光部材200aが屈折率n2ではなく、導光部材100の屈折率と同一の屈折率n1(<n2)の部材で構成されているものと仮定する。この場合、画像光の光線601は、光線入射部201へ入射し、屈折率n2に基づく屈折効果よりも小さい屈折率n1に基づく屈折により光線611に屈折されて、反射部202aへ向かう。光線611は、反射部202aによって反射された後、光線612となって導光部203で導光されるが、図15に示すように、光線603より小さい反射角によって導光される。
そして、光線601が第1の実施の形態の導光部材200に入射した場合を考える。すなわち、光線入射部201と反射部202とがなす角は角度θ2(>θ1)である。そして、導光部材200の屈折率をn1とする。この場合、画像光の光線601は、屈折率n1に基づく屈折により光線611に屈折されて、反射部202へ向かう。光線611は、光線入射部201となす角が角度θ2である反射部202によって反射された後、光線613となって導光部203で導光される。図15においては説明を簡潔にするために、光線613と光線603とが重なるものとしている。すなわち、光線613は、上述の光線603と同様の反射角によって導光部203で導光される。つまり、本実施の形態における屈折率がn2(>n1)の部材で構成され、かつ、光線入射部201と反射部202とがなす角を、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一とする導光部材200aは、入射する画像光の光線601に対して、第1の実施の形態の導光部材200と同様の効果を与える。
以上のように、本実施の形態に係る虚像表示装置1aでは、導光部材100、200aを、光線入射部101と反射部102とがなす角と、光線入射部201と反射部202aとがなす角とを同一とし、導光部材100、200aの屈折率がn1<n2となるように構成することによって、導光部103、203での全反射角をそれぞれ異なるようにしている。これによって、導光部材100と導光部材200aとで、画像表示素子400から出射される画像光に対応する虚像の形成を分担することができ、広視野角の虚像を形成することが可能となり、光利用効率を向上させ、光量ムラの少ない虚像を得ることができる。
なお、本実施の形態のように、導光部材100、200aの屈折率を異ならせる(n1<n2)場合、必ずしも、光線入射部101と反射部102とがなす角と、光線入射部201と反射部202aとがなす角とを同一とする必要はなく、導光部材100、200aのそれぞれの大きさおよび材料特性等に応じた角度としてもよい。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施の形態では、取り出し部104(204)が、光線射出部105(205)の面に対して所定の角度に傾斜した第1面107a(207a)と、第1面107a(207a)に対して導光方向に連続し、光線射出部105(205)の面に平行な第2面107b(207b)とが、交互に並んで形成される構成について説明した。本実施の形態では、取り出し部が、第1面107a(207a)および第2面107b(207b)の他、第3面を有する構成について説明する。
<取り出し部および光線射出部について>
図16は、第3の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図17は、第3の実施の形態に係る虚像光学系が迷光の発生を抑制する動作を説明する図である。図16および図17を参照しながら、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100bの取り出し部104bおよび光線射出部105、ならびに、導光部材200bの取り出し部204bおよび光線射出部205について説明する。
図16に示すように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100b(第1導光部材)の取り出し部104bは、光線射出部105の面(後面)に対して、所定の角度(例えば、上述の角度θ1)に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に対して第1面107aとは逆に傾斜した第3面107c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面107cに連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。図16に示すように、導光部材100bの取り出し部104bおよび光線射出部105に対応する部分は、導光部103から再帰反射部106へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第1面107aおよび第2面107bの構成および機能は、上述の第1の実施の形態で説明した通りである。
第3面107cは、透過面となっており、第2面107bで反射して伝搬する光線のうち、迷光となり得る光線を射出するための機能を有する平面である。
また、第3面107cは、上述のように、光線射出部105の面に対して第1面107aとは逆に傾斜しているので、第1の実施の形態における第1面107aと比較して、面積を広く取ることができる。したがって、再帰反射部106からの再帰光が第1面107aで反射される確率を、第1の実施の形態と比較して向上させることができるので、輝度の高い虚像を形成することができる。
また、上述のように、第3面107cを有することにより、第1の実施の形態における第1面107aと比較して、面積を広く取ることができるため、迷光の発生を抑制することができる。具体的には、例えば、図17に示すように、第3面107cが形成されていないものとし、第2面107bが点線で示される部分まで延設されているものとすると、再帰光である光線621は、点線で示される第2面107bで反射して光線623となり、この光線623が、第1面107aで反射されると迷光となってしまう。しかし、本実施の形態のように、第3面107cを設け、第1面107aの面積を広く取るようにすると、上述の再帰光の光線621は、第2面107bではなく、第1面107aで反射して光線622となり、光線射出部105から射出することができる。このようにして、迷光の発生を抑制することができる。
ここで、第3面107cの光線射出部105に対する角度は0度よりも大きく、かつ、90度以下の範囲とされる。角度が0度になると、第3面107cは、第2面107bと同一面、すなわち、第2面107bの一部になるため、上述の第1の実施の形態と同じ構成になる。また、この角度は、生産性を考慮すると45度〜90度の範囲とすることが望ましい。
図16に示すように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材200b(第2導光部材)の取り出し部204bは、光線射出部205の面(後面)に対して、所定の角度(例えば、上述の角度θ2)に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に対して第1面207aとは逆に傾斜した第3面207c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面207cに連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。図16に示すように、導光部材200bの取り出し部204bおよび光線射出部205に対応する部分は、導光部203から再帰反射部206へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第1面207aおよび第2面207bの構成および機能は、上述の第1の実施の形態で説明した通りである。また、第3面207cの構成および機能は、上述の第3面107cと同様である。
以上のように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100b(200b)では、取り出し部104b(204b)に、第1面107a(207a)に対して導光方向に連続し、光線射出部105(205)の面に対して第1面107a(207a)とは逆に傾斜した第3面107c(207c)を有するものとしている。これによって、第1の実施の形態における第1面107a(207a)と比較して、面積を広く取ることができるので、再帰反射部106(206)からの再帰光が第1面107a(207a)で反射される確率を、第1の実施の形態と比較して向上させることができ、輝度の高い虚像を形成することができ、さらには、迷光の発生を抑制した良好な虚像を得ることができる。
なお、図17に示す例では、取り出し部104bおよび取り出し部204b共に、第3面(第3面107c、207c)を有するものとしたが、これに限定されるものではなく、取り出し部104bおよび取り出し部204bのうち、少なくともいずれかが、第3面を有する構成であるものとしてもよい。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る虚像表示装置について、第3の実施の形態に係る虚像表示装置と相違する点を中心に説明する。第3の実施の形態では、取り出し部104b(204b)が、第1面107a(207a)、第2面107b(207b)、および第3面107c(207c)を有する構成について説明した。本実施の形態では、取り出し部が、第1面107a(207a)、第2面107b(207b)、および第3面107c(207c)の他、第4面を有する構成について説明する。
<取り出し部および光線射出部について>
図18は、第4の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図18を参照しながら、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100cの取り出し部104cおよび光線射出部105、ならびに、導光部材200cの取り出し部204cおよび光線射出部205について説明する。
図18に示すように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100c(第1導光部材)の取り出し部104cは、光線射出部105の面(後面)に対して、所定の角度(例えば、上述の角度θ1)に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に平行な第4面107dと、第4面107dに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に対して第1面107aとは逆に傾斜した第3面107c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面107cに連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。図18に示すように、導光部材100cの取り出し部104cおよび光線射出部105に対応する部分は、導光部103から再帰反射部106へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第1面107a、第2面107bおよび第3面107cの構成および機能は、上述の第3の実施の形態で説明した通りである。
第4面107dは、第3面107cを設けることによるシースルー性の低下を抑制して、シースルー性を保持するための機能を有する平面である。
図18に示すように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材200c(第2導光部材)の取り出し部204cは、光線射出部205の面(後面)に対して、所定の角度(例えば、上述の角度θ2)に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に平行な第4面207dと、第4面207dに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に対して第1面207aとは逆に傾斜した第3面207c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面207cに連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。図18に示すように、導光部材200cの取り出し部204cおよび光線射出部205に対応する部分は、導光部203から再帰反射部206へ向かうにしたがって、肉厚となる構造となっている。なお、第1面207a、第2面207bおよび第3面207cの構成および機能は、上述の第3の実施の形態で説明した通りである。また、第4面207dの構成および機能は、上述の第4面107dと同様である。
以上のように、本実施の形態に係る虚像光学系の導光部材100c(200c)では、取り出し部104c(204c)に、第1面107a(207a)と、第3面107c(207c)との間に、光線射出部105(205)の面に平行な第4面107d(207d)を設けるものとしている。これによって、第3の実施の形態と比較して、外角を観察したときの歪みを低減させ、良好なシースルー性を保持することができる。ただし、第3面107c(207c)を有するので、第3の実施の形態と同様の効果を奏するのは言うまでもない。
なお、図18に示す例では、取り出し部104cおよび取り出し部204c共に、第4面(第4面107d、207d)を有するものとしたが、これに限定されるものではなく、取り出し部104cおよび取り出し部204cのうち、少なくともいずれかが、第4面を有する構成であるものとしてもよい。
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施の形態では、導光部103(203)から再帰反射部106(206)に向かうにしたがって導光部材100(200)が肉厚となる構成について説明した。本実施の形態では、肉厚とならない構成の一例について説明する。
<虚像表示装置の全体構成>
図19は、第5の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図19を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1dの全体構成について説明する。
図19に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1dは、虚像光学系2dと、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2dは、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2dは、導光部材100d(第1導光部材)と、導光部材200d(第2導光部材)と、を有する。
なお、コリメート光学系300および画像表示素子400の構成および動作は、上述の第1の実施の形態と同様である。
導光部材100dは、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材100dは、光線入射部101と、反射部102と、導光部103と、取り出し部104dと、光線射出部105と、再帰反射部106と、を有する。なお、光線入射部101、反射部102、導光部103、光線射出部105および再帰反射部106の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部104dは、導光部103により導光され、再帰反射部106により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材100dの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部104dの詳細は、図20で後述する。
導光部材200dは、導光部材100dと同様に、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材200dは、図19に示すように、導光部材100dの導光部103の前面側に、所定のエアギャップを介して、後述する光線射出部205が導光部103に対向するように配置されている。導光部材200dは、光線入射部201と、反射部202と、導光部203と、取り出し部204dと、光線射出部205と、再帰反射部206と、を有する。なお、光線入射部201、反射部202、導光部203、光線射出部205および再帰反射部206の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部204dは、導光部203により導光され、再帰反射部206により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材200dの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部204dの詳細は、図20で後述する。
<取り出し部および光線射出部について>
図20は、第5の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図20を参照しながら、導光部材100dの取り出し部104dおよび光線射出部105、ならびに、導光部材200dの取り出し部204dおよび光線射出部205について説明する。
図20に示すように、導光部材100dの取り出し部104dは、光線射出部105の面(後面)に対して所定の角度(例えば、角度θ1)に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)と、第2面107bに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に対して垂直に光線射出部105に向かって形成された第3面107c(第3の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。すなわち、第1面107aおよび第3面107cは、第2面107bに対して凹陥するように形成されている。また、複数の第2面107bは、同一平面上に形成されている。このような取り出し部104dの構成によって、第1の実施の形態の取り出し部104と同様に、第1面107aにおける反射によって再帰光を取り出し、光線射出部105から射出させることができる。
また、図20に示すように、導光部材200dの取り出し部204dは、光線射出部205の面(後面)に対して所定の角度(例えば、角度θ2)に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)と、第2面207bに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に対して垂直に光線射出部205に向かって形成された第3面207c(第3の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。すなわち、第1面207aおよび第3面207cは、第2面207bに対して凹陥するように形成されている。また、複数の第2面207bは、同一平面上に形成されている。このような取り出し部204dの構成によって、第1の実施の形態の取り出し部204と同様に、第1面207aにおける反射によって再帰光を取り出し、光線射出部205から射出させることができる。
以上のような虚像光学系2dの構成によって、第1の実施の形態の導光部材100(200)と比較して、導光部材100d(200d)を薄型化することが可能となり、軽量な虚像表示装置1dを得ることができる。
なお、複数の第2面107b(207b)は、同一平面上に形成されているものとしたが、必ずしもすべての第2面107b(207b)が同一平面上に形成される必要はない。また、例えば、第1の実施の形態の取り出し部104(204)の第1面107a(207a)および第2面107b(207b)の構成と組み合わせた構成としてもよい。
また、第3面107c(207c)は、光線射出部105(205)の面に対して垂直に光線射出部105(205)に向かって形成されるものとしているが、必ずしも垂直である必要はなく、第2面107b(207b)から光線射出部105(205)に向かって形成されているものとすればよい。
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施の形態では、導光部103(203)から再帰反射部106(206)に向かうにしたがって導光部材100(200)が肉厚となる構成について説明した。本実施の形態では、肉厚とならない構成の他の例について説明する。
<虚像表示装置の全体構成>
図21は、第6の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図21を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1eの全体構成について説明する。
図21に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1eは、虚像光学系2eと、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2eは、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2eは、導光部材100e(第1導光部材)と、導光部材200e(第2導光部材)と、を有する。
なお、コリメート光学系300および画像表示素子400の構成および動作は、上述の第1の実施の形態と同様である。
導光部材100eは、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材100eは、光線入射部101と、反射部102と、導光部103と、取り出し部104eと、光線射出部105と、再帰反射部106と、を有する。なお、光線入射部101、反射部102、導光部103、光線射出部105および再帰反射部106の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部104eは、導光部103により導光され、再帰反射部106により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材100eの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部104eの詳細は、図22で後述する。
導光部材200eは、導光部材100eと同様に、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材200eは、図21に示すように、導光部材100eの導光部103の前面側に、所定のエアギャップを介して、後述する光線射出部205が導光部103に対向するように配置されている。導光部材200eは、光線入射部201と、反射部202と、導光部203と、取り出し部204eと、光線射出部205と、再帰反射部206と、を有する。なお、光線入射部201、反射部202、導光部203、光線射出部205および再帰反射部206の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部204eは、導光部203により導光され、再帰反射部206により反射されて進行方向が反転された光線を、導光部材200eの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部204eの詳細は、図22で後述する。
<取り出し部および光線射出部について>
図22は、第6の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図22を参照しながら、導光部材100eの取り出し部104eおよび光線射出部105、ならびに、導光部材200eの取り出し部204eおよび光線射出部205について説明する。
図22に示すように、導光部材100eの取り出し部104eは、光線射出部105の面(後面)に対して所定の角度(例えば、角度θ1)に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に対して垂直に光線射出部105に向かって形成された第3面107c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面107cに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。すなわち、第1面107aおよび第3面107cは、第2面107bに対して突起するように形成されている。また、複数の第2面107bは、同一平面上に形成されている。このような取り出し部104eの構成によって、第1の実施の形態の取り出し部104と同様に、第1面107aにおける反射によって再帰光を取り出し、光線射出部105から射出させることができる。
また、図22に示すように、導光部材200eの取り出し部204eは、光線射出部205の面(後面)に対して所定の角度(例えば、角度θ2)に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に対して垂直に光線射出部205に向かって形成された第3面207c(第3の傾きを有する面の一例)と、第3面207cに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)と、が繰り返し並んで形成されている。すなわち、第1面207aおよび第3面207cは、第2面207bに対して突起するように形成されている。また、複数の第2面207bは、同一平面上に形成されている。このような取り出し部204eの構成によって、第1の実施の形態の取り出し部204と同様に、第1面207aにおける反射によって再帰光を取り出し、光線射出部205から射出させることができる。
以上のような虚像光学系2eの構成によって、第1の実施の形態の導光部材100(200)と比較して、導光部材100e(200e)を薄型化することが可能となり、軽量な虚像表示装置1eを得ることができる。
なお、複数の第2面107b(207b)は、同一平面上に形成されているものとしたが、必ずしもすべての第2面107b(207b)が同一平面上に形成される必要はない。また、例えば、第1の実施の形態の取り出し部104(204)の第1面107a(207a)および第2面107b(207b)の構成と組み合わせた構成としてもよい。
また、第3面107c(207c)は、光線射出部105(205)の面に対して垂直に光線射出部105(205)に向かって形成されるものとしているが、必ずしも垂直である必要はなく、第1面107a(207a)から光線射出部105(205)に向かって形成されているものとすればよい。
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施の形態では、導光部103(203)により導光された画像光を再帰反射部106(206)により反射させ、再帰光を取り出し部104(204)によって取り出して、光線射出部105(205)から射出させる構成について説明した。本実施の形態では、導光部103(203)により導光された画像光を、直接、取り出し部によって取り出して、光線射出部105(205)から射出させる構成について説明する。
<虚像表示装置の全体構成>
図23は、第7の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図23を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1fの全体構成について説明する。
図23に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1fは、虚像光学系2fと、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2fは、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2fは、導光部材100f(第1導光部材)と、導光部材200f(第2導光部材)と、を有する。
なお、コリメート光学系300および画像表示素子400の構成および動作は、上述の第1の実施の形態と同様である。
導光部材100fは、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材100fは、光線入射部101と、反射部102と、導光部103と、取り出し部104fと、光線射出部105と、を有する。したがって、導光部材100fは、第1の実施の形態の再帰反射部106のような部位は有さない。なお、光線入射部101、反射部102、導光部103および光線射出部105の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部104fは、導光部103により導光された画像光の光線を、導光部材100fの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部104fの詳細は、図24で後述する。
導光部材200fは、導光部材100fと同様に、画像表示素子400から出射され、コリメート光学系300により平行化された画像情報を含む画像光を導光して、人間の眼500に射出させるライトガイドである。導光部材200fは、図23に示すように、導光部材100fの導光部103の前面側に、所定のエアギャップを介して、後述する光線射出部205が導光部103に対向するように配置されている。導光部材200fは、光線入射部201と、反射部202と、導光部203と、取り出し部204fと、光線射出部205と、を有する。したがって、導光部材200fは、第1の実施の形態の再帰反射部206のような部位は有さない。なお、光線入射部201、反射部202、導光部203および光線射出部205の機能は、第1の実施の形態と同様である。
取り出し部204fは、導光部203により導光された画像光の光線を、導光部材200fの外側に取り出すために反射させる前面側の部位である。取り出し部204fの詳細は、図24で後述する。
<取り出し部および光線射出部について>
図24は、第7の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図24を参照しながら、導光部材100fの取り出し部104fおよび光線射出部105、ならびに、導光部材200fの取り出し部204fおよび光線射出部205について説明する。
図24に示すように、導光部材100fの取り出し部104fは、光線射出部105の面(後面)に対して所定の角度θ1だけ反射部102とは逆に傾斜した第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面107aに対して導光方向に連続し、光線射出部105の面に平行な第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)とが、交互に並んで形成されている。したがって、図24に示すように、導光部材100fの取り出し部104fおよび光線射出部105に対応する部分は、導光部103で導光される画像光の導光方向に向かうにしたがって、薄くなる構造となっている。
第1面107aは、導光部材100fの内部に入射して導光された画像光を、直接、光線射出部105に向かう方向に反射することによって、光線射出部105から射出させる機能を担う平面である。第1面107aの光線射出部105に対する傾斜角は、上述した光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一であり、例えば、20度〜35度の範囲に設定することが好ましい。このように、第1面107aの傾斜角を、光線入射部101と反射部102とがなす角度θ1と同一とすることによって、コリメート光学系300の配置の調整等が容易となる。ただし、第1面107aは、光線射出部105に対して、反射部102の光線入射部101に対する傾斜とは逆に傾斜している。また、第1面107aには、第1の実施の形態と同様の反射コートが施されている。
第2面107bは、導光部材100fの内部に入射して、導光部103を導光された画像光を、さらに、取り出し部104fと光線射出部105とに挟まれる部位内を導光させるための反射面としての機能を担う面である。また、第2面107bは、光線射出部105の面(後面)と平行な平面となっている。これによって、導光部材100fの前面および後面からの外部の光を透過させる透過面として機能するので、シースルー性が確保される。
また、取り出し部104fに形成された複数の第1面107aの間隔は、導光部103で導光される画像光の導光方向に粗から密となるように形成されている。第1面107aによる反射対象となる光線は、上述のように導光部103で導光される画像光であるので、導光部103から、取り出し部104fと光線射出部105とで挟まれる部位内に導光された画像光は、まだ、第1面107aにより反射されておらず、導光部103近傍の画像光の光量は大きい。したがって、導光部103近傍の第1面107aでは、画像光の光線が反射される確率が高い。一方、導光部103から離れた第1面107aでは、導光部103から、取り出し部104fと光線射出部105とで挟まれる部位内に導光された画像光のうち多くは、導光部103近傍の第1面107aによって反射され光線射出部105から射出されているので、導光部103から離れた場所の画像光の光量は小さい。したがって、導光部103から離れた第1面107aでは、画像光の光線が反射される確率が、導光部103近傍の第1面107aよりも低い。よって、上述のように、第1面107aの間隔を、導光部103で導光される画像光の導光方向に粗から密となるように形成することによって、画像光がバランスよく第1面107aによって反射され、光線射出部105から射出されるので、光量ムラの少ない虚像を形成することができる。
なお、上述のように、第1面107aの間隔を、導光部103で導光される画像光の導光方向に粗から密となるように形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、複数の第1面107aの間隔のうち、少なくとも1つの間隔が異なる長さであるものとしてもよい。すなわち、導光部103で導光される画像光の性質によって、第1面107aのそれぞれの間隔を設定することによって、光量ムラの少ない虚像を形成することができる。
導光部材200fの取り出し部204fは、光線射出部205の面(後面)に対して所定の角度θ2だけ反射部202とは逆に傾斜した第1面207a(第1の傾きを有する面の一例)と、第1面207aに対して導光方向に連続し、光線射出部205の面に平行な第2面207b(第2の傾きを有する面の一例)とが、交互に並んで形成されている。したがって、図24に示す導光部材100fと同様に、導光部材200fの取り出し部204fおよび光線射出部205に対応する部分は、導光部203で導光される画像光の導光方向に向かうにしたがって、薄くなる構造となっている。なお、取り出し部204fの第1面207aおよび第2面207bの機能は、それぞれ、上述の取り出し部104fの第1面107aおよび第2面107bと同様である。
<画像光の光路について>
図25は、第7の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材における光線の光路を説明する図である。図25を参照しながら、本実施の形態の虚像光学系2fの画像光の光路について説明する。なお、図25では、導光部材100fにおける画像光の光路に着目して説明する。
図25に示すように、導光部材100fにおいて、画像光の光線631は、入射角θinで光線入射部101に入射して、反射部102で反射され、導光部103で導光される。ここで、図25に示す例では、入射角θinは、正の角度とする。そして、導光部103により導光された画像光の光線632は、取り出し部104fの第1面107aにおける反射により取り出されて、光線射出部105から射出角θoutで外部に射出される。ここで、第1面107aの光線射出部105に対する傾斜は、反射部102の光線入射部101に対する傾斜とは逆なので、射出角θoutは、負の角度であり、かつ、絶対値が入射角θinと同一の角度となる。したがって、本実施の形態に係る虚像表示装置1fの場合、ユーザが虚像を正常に視認するためには、画像表示素子400は、ユーザが視認すべき虚像とは左右が反転した画像を出射する必要がある。
以上のような本実施の形態に係る虚像光学系2fの構成によって、第1の実施の形態に係る虚像光学系2と同様の効果を奏する。
また、上述のように、本実施の形態の導光部材100f(導光部材200f)は、第1の実施の形態の再帰反射部106(206)に相当する部位を有さない構成としている。これによって、当該部位を成型する必要がないため、導光部材100f(200f)全体の成型が容易となる。
また、導光部材100f(200f)の取り出し部104f(204f)および光線射出部105(205)に対応する部分は、導光部103(203)で導光される画像光の導光方向に向かうにしたがって、薄くなる構造となっている。これによって、虚像光学系2f全体を薄型化することができる。
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態に係る虚像表示装置について、第1の実施の形態に係る虚像表示装置1と相違する点を中心に説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態に係る虚像光学系2の取り出し部104および取り出し部204の前面側にそれぞれ光学部材を配置した構成について説明する。
<虚像表示装置の全体構成>
図26は、第8の実施の形態に係る虚像表示装置の全体構成の一例を示す図である。図26を参照しながら、本実施の形態に係る虚像表示装置1gの全体構成について説明する。
図26に示すように、本実施の形態に係る虚像表示装置1gは、虚像光学系2gと、コリメート光学系300と、画像表示素子400と、を有する。
虚像光学系2gは、コリメート光学系300から出射した光線を内部に導光させ、後述する光線射出部105、205から人間の眼500に向けて射出させるライトガイドである。虚像光学系2gは、導光部材100(第1導光部材)と、光学部材108と、導光部材200(第2導光部材)と、光学部材208と、を有する。すなわち、虚像光学系2gは、第1の実施の形態に係る虚像光学系2に対して、光学部材108、208を追加した構成と同一である。
なお、コリメート光学系300および画像表示素子400の構成および動作は、上述の第1の実施の形態と同様である。
光学部材108は、導光部材100の光線射出部105と平行な前面109と、導光部材100の取り出し部104の面に対向配置される傾斜部と、を有する部材である。
光学部材208は、導光部材200の光線射出部205と平行な前面209と、導光部材200の取り出し部204の面に対向配置される傾斜部と、を有する部材である。
<取り出し部および光線射出部について>
図27は、第8の実施の形態に係る虚像光学系の導光部材の取り出し部の拡大図である。図27を参照しながら、導光部材100(200)の取り出し部104(204)、光線射出部105(205)、および取り出し部104(204)に対向配置される光学部材108(208)について説明する。
図27に示すように、光学部材108は、傾斜部が、導光部材100の取り出し部104に空気層、すなわち、エアギャップ4を介して近接配置されている。本実施の形態では、導光部材100の取り出し部104の端縁と、光学部材108の傾斜部の端縁とを、マイクロボール型の接着剤等を用いて接着している。このようにすることで、取り出し部104と傾斜部とのエアギャップ4を等間隔とすることが可能となり、シースルー性をより高めることができる。
光学部材108の傾斜部は、導光部材100の取り出し部104に対向した部位に、前面109に対して角度θ1’を有する第5面110aと、前面109に平行な第6面110bと、が交互に配置されている。
前面109は、導光部材100の光線射出部105と平行な面である。また、第6面110bは、前面109と平行である。したがって、第6面110bは、導光部材100の光線射出部105、および取り出し部104の第2面107b(第2の傾きを有する面の一例)それぞれと平行である。このような設定とすることで、虚像光学系2gのシースルー性を高めることができる。
また、前面109に対する第5面110aの角度θ1’を、上述した角度θ1、すなわち、光線射出部105に対する第1面107a(第1の傾きを有する面の一例)の角度と等しい角度に設定することが好ましい。この場合、光学部材108の第5面110aが導光部材100の第1面107aと平行となり、虚像光学系2gのシースルー性をより高めることが可能になる。
また、虚像光学系2gのシースルー性を確保するために、導光部材100と光学部材108とが、同一の材料で作られていることが望ましい。
なお、光学部材208の構造、および、導光部材200と光学部材208との配置関係は、それぞれ上述の光学部材108の構造、および、導光部材100と光学部材108との配置関係と同様である。
<HMDへの適用>
図28は、第8の実施の形態に係る虚像表示装置をHMDに適用した例を示す図である。図28を参照しながら、本実施の形態に係る虚像光学系2gをHMDに適用した例について説明する。
図28(a)に示す例は、1つの虚像光学系2gを両眼用のHMDに適用した場合であ
り、光線入射部101、201をユーザの右側に配置している。虚像光学系2gは、ユーザの耳に掛けられるツルとしての役割を担うフレーム部700に固定される。なお、図28では、フレーム部700を簡略化して示しているが、フレーム部700は、虚像光学系2gの両端側のみならず、上側縁および下側縁を覆う形状とするものとしてもよい。
図28(b)に示す例は、虚像光学系2gを小型化して単眼用のHMDに適用した場合であり、2つの虚像光学系2gをユーザの左右各々の眼の位置に対応させて配置している。図28(c)に示す例は、虚像光学系2gを小型化して単眼用のHMDに適用した場合であり、1つの虚像光学系2gをユーザの右眼の位置に対応させて配置している。なお、1つの虚像光学系2gをユーザの左眼の位置に対応させて配置してもよいのは、言うまでもない。
なお、図28ではコリメート光学系300および画像表示素子400の図示を省略しているが、これらは、例えば、フレーム部700に取り付けるものとすればよい。すなわち、図28(a)および図28(c)に示す例では、コリメート光学系300および画像表示素子400を、右眼側のフレーム部700に取り付け、図28(b)に示す例では、これらを、左右両方のフレーム部700に取り付けるものとすればよい。
また、図28に示す例では、虚像光学系2gを眼鏡型のHMDに適用した場合を示しているが、他の種類のHMDにも適用可能であり、さらには、HUD(Head−Up Display)にも適用できる。
また、図28に示す例では、虚像光学系2gをHMDに適用した場合を示しているが、上述の第1の実施の形態〜第7の実施の形態それぞれに係る虚像光学系をHMDに適用できるのは言うまでもない。
図29は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置についての実施例1を説明する図である。図29に示す本実施例では、第1の実施の形態に係る虚像光学系2についての寸法、角度および屈折率等を、以下の数値に設定した。
・導光部材肉厚:最薄部1.93mm、最厚部4.41mm
・導光部材長さ:50mm
・導光部材幅:30mm
・θ1=25度
・θ2=36.5度
・屈折率(n1)=1.53(材質:プラスチック)
・屈折率(n2)=1.53(材質:プラスチック)
・水平視野角:50度、垂直視野角:30度
・コリメータレンズ焦点距離:7.5mm
・アイボックス:5mm以上
・アイレリーフ:15mm以上
ここで、虚像として確認できる視野の幅を「アイボックス」と称し、虚像が確認できる光線射出部105(205)から眼球までの距離を「アイレリーフ」と称している。
本実施例では、導光部材100の光線射出部105の第1面107aと光線射出部105とのなす角度θ1と、導光部材200の光線射出部205の第1面207aと光線射出部205とのなす角度θ2とが異なる値をとっている。これによって、光線入射部101および光線入射部201からそれぞれ入射する光線は、導光部103および導光部203を異なる反射角で導光される。角度θ1と角度θ2とを異なる角度に設定することで、導光部材100および導光部材200を同一の材料で成型することが可能である。さらに、導光部材100および導光部材200は、低屈折率のプラスチックでの成型が可能であるため、安価かつ軽量な虚像表示装置1を得ることができる。
図30は、第2の実施の形態に係る虚像表示装置についての実施例2を説明する図である。図30に示す本実施例では、第2の実施の形態に係る虚像光学系2aについての寸法、角度および屈折率等を、以下の数値に設定した。
・導光部材肉厚:最薄部1.40mm、最厚部4.40mm
・導光部材長さ:50mm
・導光部材幅:30mm
・θ1=28度
・θ2=28度
・屈折率(n1)=1.53(材質:プラスチック)
・屈折率(n2)=1.64(材質:プラスチック)
・水平視野角:50度、垂直視野角:30度
・コリメータレンズ焦点距離:7.5mm
・アイボックス:5mm以上
・アイレリーフ:15mm以上
本実施例では、導光部材100に低屈折率のプラスチックを用い、導光部材200に高屈折率のプラスチックを用いている。これによって、光線入射部101および光線入射部201から、それぞれ、導光部材100および導光部材200に入射する光線は、導光部103および導光部203を異なる反射角で導光される。さらに、本実施例では角度θ1と角度θ2とを同角度に設定することで、導光部材100と導光部材200とで同一の金型を用いて成型することができ、低コスト化が可能となる。