JP2018132092A - 熱伸縮吸収ねじ締結機構 - Google Patents

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裕 道脇
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Abstract

【課題】ねじ締結構造において、温度変化が生じても締結力を高度に維持できるようにする。【解決手段】熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雄ねじ体10側において締結面を構成する雄ねじ側座面OZと、雌ねじ体100側において締結面を構成する雌ねじ側座面MZと、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZの座面間距離を維持する構造体の一部を構成する主軸体Sと、座面間距離を維持する構造体における主軸体Sを除いた残部の少なくとも一部を構成する熱伸縮吸収部Xと、を備えるようにし、更に、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xは、互いに線膨張率の異なる材料で構成されるようにした。【選択図】図2

Description

本発明は、雄ねじ部と雌ねじ部を利用したねじ締結機構に関する。
締結機構の一つとして、ボルト等の所謂雄ねじ体と、ナット等の所謂雌ねじ体を用いるものが存在する。このねじ体によるねじ締結機構では、締結強度を高める目的で、共通の雄ねじ体に対して、同一種類の二つの雌ねじ体を互いに当接させて螺合させる、所謂ダブルナット構造を採用する場合がある。
更に、ねじ締結機構に関して、一つの雄ねじ体に対して、リード角及び/又はリード方向が相異なる二種類の螺旋溝(例えば右螺旋溝による雄ねじ部と左螺旋溝による雄ねじ部)を形成し、この二種類の螺旋溝に対して、ダブルナットの如く、二種類の雌ねじ体(例えば右ねじ構造の右雌ねじ体と左ねじ構造の左雌ねじ体)を別々に螺合させる構造がある。何らかの係合手段により、二種類の雌ねじ体の相対回転を抑止すれば、リード角及び/又はリード方向が相異なることによる軸方向干渉作用又は軸方向離反作用により、雄ねじとの間で機械的な緩み止め効果を提供できる(特許文献1参照)。
特許5406168号公報
ねじ締結機構を、温度変化の大きい環境に配置する場合、この温度変化によって熱膨張或いは熱収縮が生じ、構造体の軸方向の長さが変化する。例えば、温度上昇時、被締結部材の軸方向の膨張量と比較して、雄ねじ体の軸部の軸方向の膨張量が大きいと、ねじ締結機構による被締結部材に対する軸力が低下したり、両者間に隙間が形成されてしまい、被締結部材がガタついたり、ねじ締結機構が緩んだりするという問題があった。特に、このような問題が生じることからその対策として、従来、温度変化のある環境下では、被締結部材と締結部材とは、熱膨張率を揃えるために、同材料が選択されるのが一般的である。しかしながら、実際の使用上にあっては、温度変化が生じると、瞬く間に締結力が低下して締結状態が緩んでしまうという問題が有った。また、被締結部材と締結部材とでは、機械的強度等の諸制約条件から必ずしも材料を同一に設定することが出来ず、両者の熱膨張率の差や熱膨張量の差から温度変化に際して、ねじ締結機構が緩んでしまうという問題も有った。
反対に例えば、温度下降時、被締結部材の軸方向の収縮量と比較して、雄ねじ体の軸部の軸方向の収縮量が大きいと、ねじ締結機構による被締結部材の締結力が過剰となり、被締結部材やねじ締結機構が破損したり、継時劣化が生じたりするという問題があった。逆に、被締結部材の軸方向の収縮量と比較して、雄ねじ体の軸部の軸方向の収縮量が小さいと、ねじ締結機構による被締結部材に対する締結力が過小となり、両者間に隙間が生じたり、ねじ締結機構が緩んだりするという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、例えば、温度変化の大きい環境においても、締結力を高度に維持する技術思想を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は、雄ねじ体と、該雄ねじ体と螺合する雌ねじ部による熱伸縮吸収ねじ締結機構であって、上記雄ねじ体側において締結面を構成する雄ねじ側座面と、上記雌ねじ体側において締結面を構成する雌ねじ側座面と、軸方向に延び、上記雄ねじ側座面と上記雌ねじ側座面の座面間距離を維持する構造体の一部を構成する主軸体と、軸方向に延び、上記座面間距離を維持する構造体における前記主軸体を除いた残部の少なくとも一部を構成する熱伸縮吸収部と、を備え、上記主軸体と上記熱伸縮吸収部は、互いに線膨張率の異なる材料で構成されることを特徴とする、熱伸縮吸収ねじ締結機構である。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、所定の温度変化に基づいて前記主軸体が軸方向に伸縮することで前記座面間距離を変化させる量を主軸体側変化量と定義し、上記所定の温度変化に基づいて前記熱伸縮吸収部が軸方向に伸縮することで上記座面間距離を変化させる量を吸収側変化量と定義する際に、上記主軸体側変化量の少なくとも一部を、上記吸収側変化量が相殺することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記吸収側変化量が、前記主軸体側変化量の全部を相殺することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、所定の温度変化に基づいて前記主軸体が軸方向に伸縮することで前記座面間距離を変化させる量を主軸体側変化量と定義し、上記所定の温度変化に基づいて前記熱伸縮吸収部が軸方向に伸縮することで上記座面間距離を変化させる量を吸収側変化量と定義し、上記所定の温度変化に基づいて、前記雄ねじ側座面と前記雌ねじ側座面の間に配置される被締結部材の被挟持間距離の変化量を被締結側変化量と定義し、上記主軸体側変化量から上記被締側変化量を差し引いた値を相対変化量と定義する際に、上記相対変化量の少なくとも一部を、上記吸収側変化量が相殺することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記吸収側変化量が、前記相対変化量の全部を相殺することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記相殺により、前記雄ねじ側座面と前記雌ねじ側座面による締結時における締結力を一定範囲内に保持することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ側座面及び前記雌ねじ側座面の少なくとも一方を提供することを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の少なくとも一方に一体に設けられることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の一方が前記主軸体を兼ねており、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の他方が前記熱伸縮吸収部を兼ねており、前記雄ねじ体と前記雌ねじ体が互いに線膨張率の異なる材料で構成されることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体と別体に設けられることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雄ねじ体に挟持される座体を兼ねることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部は、前記主軸体の周囲に環状に配置されることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記熱伸縮吸収部の少なくとも一部は、前記主軸体に対して径方向に間隔を空けて配置され、上記熱伸縮吸収部は、上記間隔を利用して、上記主軸体に対して軸方向に相対変位可能となることを特徴とする。
上記熱伸縮吸収ねじ締結機構に関連して、前記主軸体における軸方向の距離と比較して、前記熱伸縮吸収部の軸方向の距離が小さくなっており、前記主軸体の線膨張率と比較して、前記熱伸縮吸収部の線膨張率が大きいことを特徴とする。
上記目的を達成する本発明は、雄ねじ体と、熱伸縮吸収部とを備える熱伸縮吸収ねじ締結機構であって、上記雄ねじ体は、雌ねじ部と螺合し得る雄ねじ部を有する軸部を備え、上記熱伸縮吸収部は、上記雄ねじ体と相異なる線膨張率の材料で構成され、締結時において、上記軸部の熱膨張及び/又は熱収縮に際して上記軸部の軸方向に作用する軸力を受け得る座面を有し、上記軸部と軸方向に並列又は直列に併設され、上記雄ねじ体の軸方向における熱膨張量及び/又は熱収縮量の一部又は全部を、上記熱伸縮吸収部の軸方向における熱膨張量及び/又は熱収縮量によって吸収することで、上記雄ねじ体による締結時における締結力を一定範囲内に保持することを特徴とする熱伸縮吸収ねじ締結機構である。
本発明によれば、例えば、ねじ締結機構として、温度変化の大きい環境下においても、締結力を高度に維持することが可能となる。
(A)及び(B)は、本発明の第一実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図である。 同熱伸縮吸収ねじ締結機構における、(A)は温度変化前の正面部分断面図であり、(B)は温度変化後の正面部分断面図である。 同熱伸縮吸収ねじ締結機構における、(A)は温度変化前の正面部分断面図であり、(B)は温度変化後の正面部分断面図である。 同熱伸縮吸収ねじ締結機構における、(A)は温度変化前の正面部分断面図であり、(B)は温度変化後の正面部分断面図である。 (A)は第二実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図、(B)は第三実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図、(C)は第四実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図、(D)は第五実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図、(E)は第六実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図である。 (A)は第七実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の平面図であり、(B)は同熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図である。 第八実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構における、(A)は温度変化前の正面部分断面図であり、(B)は温度変化後の正面部分断面図である。 第九実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の正面部分断面図である。 第九実施形態の変形例に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構の一部を拡大して示す(A)正面図であり、(B)平面図である。 同熱伸縮吸収ねじ締結機構の一部を拡大して示す(A)正面断面図であり、(B)側面断面図である。 (A)は同熱伸縮吸収ねじ締結機構の雌ねじ体の正面断面図であり、(B)は同雌ねじ体と螺旋方向が逆となる第二雌ねじ体の正面断面図である。 同熱伸縮吸収ねじ締結機構の雄ねじ体の軸部の(A)正面図、(B)ねじ山のみの断面図、(C)平面図である。 同雄ねじ体の軸部の(A)側面図、(B)ねじ山のみの断面図、(C)平面図である。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第一実施形態>
図1(A)に本第一実施形態に係る熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雌ねじ体100を雄ねじ体10に螺合させることで、被締結部材Hを締結する。この際、雌ねじ体100と被締結部材Hの間に、筒状(スリーブ状)の座体50が配置される。
雄ねじ体10は、所謂六角ボルトとなっており、軸部12における基部側から軸端に向かって、雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部13が設けられる。軸部12の基端部には六角形状の頭部20が設けられる。勿論、六角ボルト状に限らず、頭部20の形状は円筒状、周面にローレットを有する形状、四角形状、星型形状など任意に適宜設定可能である。頭部20における被締結部材H側の端面30は、被締結部材Hと当接する雄ねじ側座面OZを構成する。
雌ねじ体100は、筒状部材106で構成される。筒状部材106は、所謂六角ナット状を成しており、中心に貫通孔部106aを有する。勿論、雌ねじ体100の概形は、六角ナット状に限らず、円筒状、周面にローレットを有する形状、四角形状、星型形状など任意に適宜設定可能である。貫通孔部106aには、雄ねじ部13と螺合可能な雌ねじ螺旋条114が形成される。雌ねじ体100は、被締結部材H側に対向する内側端面112を有する。この内側端面112は、座体50と当接する。
座体50は筒状となっており、雄ねじ体10の軸部12が挿入される。座体50の軸方向の両端には、雌ねじ体100側に対向する外側端面64と、頭部20側(又は被締結部材H側)に対向する内側端面62を有する。内側端面62は、被締結部材Hと当接する雌ねじ側座面MZとなる。
被締結部材Hは、雄ねじ側座面OZと当接する雄ねじ側被締結面OHと、雌ねじ側座面MZと当接する雌ねじ側被締結面MHを有する。被締結部材Hにおいて、雄ねじ側被締結面OHと雌ねじ側被締結面MHの距離を、被挟持間距離Qと定義する。また、熱伸縮吸収ねじ締結機構1における、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZの距離を、座面間距離Pと定義する。
雄ねじ体10と雌ねじ体100は、例えば、同じ材料が用いられることで、線膨張率は互いに一致する。一方、座体50の線膨張率は、雄ねじ体10と雌ねじ体100の線膨張率と異なる。また、雄ねじ体10と雌ねじ体100の線膨張率は、被締結部材Hの線膨張率と異なる。更に、座体50の線膨張率は、被締結部材Hの線膨張率と異なる。これらの線膨張率の関係は後述する。
次に、図1(B)を参照して、熱伸縮吸収ねじ締結機構1における構造体の締結時の応力状態について説明する。雌ねじ側座面MZにおいて、締結時の被締結部材Hから受ける反力MEは、座体50を経て、雌ねじ体100と雄ねじ体10の螺合領域Rに伝達する。なお、ここでは定義上、螺合領域Rの軸方向の仮想基準点RCまで反力MEが伝達すると仮定する。雌ねじ側座面MZから仮想基準点RCまでの応力伝達経路を、雌ねじ側応力伝達経路MKと定義する。なお、仮想基準点RCは、雌ねじ部の内部位置又は雌ねじ部に対する雄ねじ部の掛かり境界Rin,Routの周辺近傍位置(例えば、軸方向内側の掛かり境界Rinの周辺近傍位置)と設定し得、軸方向における熱伸縮の仮想的な基準点と定義する。
一方、頭部20における雄ねじ側座面OZにおいて、締結時の被締結部材Hから受ける反力OEは、そのまま軸部12の基部に伝達し、軸部12を経て螺合領域Rの仮想基準点RCまで伝達する。雄ねじ側座面OZから仮想基準点RCまでの応力伝達経路を、雄ねじ側応力伝達経路OKと定義する。これらの両経路MK、OKが、構造体の基本構造となる。
従って、熱伸縮吸収ねじ締結機構1の構造体は、雌ねじ側応力伝達経路MKと雄ねじ側応力伝達経路OKを組み合わせた全経路において、所望の剛性を確保する。この構造体によって、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZの座面間距離Pを維持できる。
本実施形態では、この構造体の一部であって軸方向に延びる軸部12における、雄ねじ側座面OZから仮想基準点RCまでの範囲を主軸体Sと定義する。この主軸体Sは、主として、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZの座面間距離Pを確保するための剛性体となる。また、主軸体Sを除いた構造体の一部であって、軸方向に延びる座体50の全体を、熱伸縮吸収部Xと定義する。主軸体Sと熱伸縮吸収部Xは、互いに線膨張率の異なる材料で構成される。主軸体Sが温度変化する際の伸縮によって、雄ねじ側座面OZ又は雌ねじ側座面MZが、被締結部材Hから離反したり、反対に過剰に押圧したりする悪影響を、熱伸縮吸収部Xが自ら伸縮することによって積極的に低減する。
本実施形態では、熱伸縮吸収部Xが、雄ねじ体10及び雌ねじ体100から別体となっている。この熱伸縮吸収部Xは、座体50を兼ねることで、雌ねじ側座面MZを提供する。更に、熱伸縮吸収部Xは、主軸体Sの周囲において、隙間Wを空けた状態で環状に配置され、主軸体Sに対して軸方向に相対変位可能(互いに独立して伸縮可能)となっている。つまり、本実施形態では、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xが、軸方向に重畳する範囲に配置されることになる。
次に、図2を参照して、熱伸縮吸収ねじ締結機構1において、各部材の線膨張率や伸縮量の相関について詳細に説明する。なお、距離の変化量は、距離が延びる方を正値、距離が縮む方を負値として説明する。
図2に示すように、主軸体Sの線膨張率をαs、軸方向長をSLと定義し、熱伸縮吸収部Xの線膨張率をαx、軸方向長をXLと定義し、被締結部材Hの線膨張率をαh、軸方向長をHLと定義する。また、周囲環境や内部環境に生じる所定の温度変化(所定のエネルギー量の熱供給又は熱放出によって生じる温度変化)dTによって、主軸体Sに生じる温度変化をdTs、熱伸縮吸収部Xに生じる温度変化をdTx、被締結部材Hに生じる温度変化dThと定義する。なお、被締結部材Hを含む熱伸縮吸収ねじ締結機構1を取り囲む雰囲気全体に対して、温度変化dTが生じる場合、長期的には、各部材の温度変化dTs、dTx、dThは互いに一致すると考えられる。一方、実際の現場にように、例えば被締結部材Hが加熱炉等の場合、被締結部材Hに供給される熱が、主軸体Sや熱伸縮吸収部Xに徐々に伝達していくと同時に、これらの部材から外部に熱が放出されるため、各部材の温度変化dTs、dTx、dThが互いに不一致の状態で平衡する場合もある。また、ここでは、各部材の温度変化dTs、dTx、dThが異なる場合を想定し、以下の関係式を導くようにしているが、便宜上、各部材の温度変化dTs、dTx、dThの平均値dTpを、全部材に共通な仮想温度変化と定義して各関係式に代入しても良い。
また、所定の温度変化dTsに基づいて主軸体Sが軸方向に伸縮し、座面間距離Pを変化させ得る量を主軸体側変化量d(Ps)と定義する。上記所定の温度変化dTxに基づいて熱伸縮吸収部Xが軸方向に伸縮し、座面間距離Pを変化させ得る量を吸収側変化量d(Px)と定義する。上記所定の温度変化dThに基づいて、被締結部材Hの軸方向長HL(被挟持間距離Q)の変化量を被締結側変化量d(Ph)と定義する。これらは以下の関係式が成立する。
d(Ps)=dTs×αs×SL
d(Px)=dTx×αx×XL
d(Ph) =dTh×αh×HL
また、主軸体側変化量d(Ps)から上記被締側変化量d(Ph)を差し引いた値を、相対変化量d(Ps−Ph)と定義する。本実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1では、吸収側変化量d(Px)は、相対変化量d(Ps−Ph)の少なくとも一部を相殺する。ここで言う「相殺」とは、本第一実施形態のように主軸体Sと熱伸縮吸収部Xが並列する場合、相対変化量d(Ps−Ph)が正値の時に吸収側変化量d(Px)も正値となり、相対変化量d(Ps−Ph)が負値の時に吸収側変化量d(Px)も負値となることを意味する。なお、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xが直列する場合(具体的には、図5(D)の第五実施形態を参照)における「相殺」とは、相対変化量d(Ps−Ph)が正値の時に吸収側変化量d(Px)が負値となり、相対変化量d(Ps−Ph)が負値の時に吸収側変化量d(Px)が正値となることを意味する。この熱伸縮による変化量の「相殺」という言葉は、変化量の「吸収」と表現することも可能である。勿論、熱伸縮による「変化量」は、「変位量」と読み替えることも可能である。
なお、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xが並列状態となる第一実施形態の場合、より好ましくは、吸収側変化量d(Px)が以下の関係を満たすようにする。
相対変化量d(Ps−Ph)>0の場合 d(Px)≧d(Ps−Ph)>0
相対変化量d(Ps−Oh)<0の場合 0>d(Px)≧d(Ps−Ph)
このようにすると、相対変化量d(Ps−Ph)よりも、吸収側変化量d(Px)が大きくなるので、相対変化量d(Ps−Ph)の全てを相殺できることになる。結果、締結力の低下を抑制することができ、熱伸縮吸収ねじ締結機構1の緩みを抑制することが出来る。
次に、線膨張率等の具体的な設定例について説明する。第一設定例として、図2(A)に、温度変化が生じる前の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示し、図2(B)に、温度変化dT>0、dTs>0、dTx>0、dTh>0が生じた後の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。ここでは、以下の関係が成立している。
SL>HL>XL
αx>αs>αh>0
d(Ps)>d(Ph)>0
d(Px)≧d(Ps)−d(Ph)(=d(Ps−Ph))
即ち、温度上昇dTs、dThが生じることにより、初期長SLの主軸体Sが軸方向にd(Ps)延びると共に、初期長HLの被締結部材Hが軸方向にd(H)延びる。主軸体側変化量d(Ps)は、被締結側変化量d(Ph)よりも大きいので、相対変化量d(Ps−Ph)も正値となる。
一方、初期長XLの熱伸縮吸収部Xが、温度上昇dTxが生じることにより、軸方向にd(Px)延びる。この熱伸縮吸収部Xの吸収側変位量d(Px)が、相対変化量d(Ps−Ph)を埋め合わせることができる(全てを相殺できる)。結果、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZが、被締結部材Hから離反しないで済む。
なお、仮に各部位の温度上昇dTs、dTh、dTxが一致することを前提として、上記第一設定例の条件を、線膨張率と長さで簡潔に説明すると以下通りになる。
αx×XL≧(αs×SL)−(αh×HL)>0
次に第二設定例として、図3(A)に、温度変化が生じる前の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示し、図3(B)に、温度変化dT>0、dTs>0、dTx>0、dTh>0が生じた後の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。ここでは、被締結部材Hが温度変化dThによっても伸縮しない場合(線膨張率αh=0)を想定しており、以下の関係が成立する。
SL>XL
αx>αs>0
d(Px)≧d(Ps)>0
即ち、温度上昇dTsが生じることにより、初期長SLの主軸体Sが軸方向にd(Ps)延びる。一方、初期長XLの熱伸縮吸収部Xが、温度上昇dTxが生じることにより、軸方向にd(Px)延びる。熱伸縮吸収部Xの線膨張率αxは、主軸体Sよりも大きく設定されることで、熱伸縮吸収部Xの吸収側変位量d(Px)の方が大きくなり、主軸体側変化量d(Ps)を埋め合わせることができる(全てを相殺できる)。結果、雄ねじ側座面OZと雌ねじ側座面MZが、被締結部材Hから離反しないで済む。
なお、仮に各部位の温度上昇dTs、dTh、dTxが一致することを前提として、上記第二設定例の条件を、線膨張率と長さから簡潔に説明すると以下通りになる。
αx×XL≧αs×SL>0
次に第三設定例として、図4(A)に、温度変化が生じる前の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示し、図4(B)に、温度変化dT>0、dTs>0、dTx>0、dTh>0が生じた後の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。ここでは、熱伸縮吸収部Xが所謂負膨張体(線膨張率αxが負値)となっており、以下の関係が成立している。
SL>HL>XL
αs>αh>0>αx
d(Ph)>d(Ps)>0
0>d(Px)≧d(Ps)−d(Ph)(=d(Ps−Ph))
即ち、温度上昇dTs、dThが生じることにより、初期長SLの主軸体Sが軸方向にd(Ps)延びると共に、初期長HLの被締結部材Hが軸方向にd(Ph)延びる。主軸体側変化量d(Ps)は、被締結側変化量d(Ph)よりも小さいので、相対変化量d(Ps−Ph)が負値となる。
一方、初期長XLの熱伸縮吸収部Xは、温度上昇dTxが生じることにより、軸方向に|d(Px)|だけ縮む(吸収側変化量d(Px)が負値となる)。この熱伸縮吸収部Xの吸収側変位量d(Px)によって、同じく負値となる相対変化量d(Ps−H)を埋め合わせることができる(全てを相殺できる)。結果、熱伸縮吸収ねじ締結機構1に生じる内部応力(締結力)が、過剰となる状態を回避できる。
なお、仮に各部位の温度上昇dTs、dTh、dTxが一致することを前提として、上記第三設定例の条件を、線膨張率と長さから簡潔に説明すると以下通りになる。
0>αx×XL≧(αs×SL)−(αh×HL)
上記第一設定例から第三設定例のように設計すれば、温度変化dT、dTs、dTh、dTxが生じても、熱伸縮吸収ねじ締結機構1の締結力の変動を抑制することが可能となり、その結果、ねじが緩むことも抑制される。また、熱伸縮吸収ねじ締結機構1に作用する内部応力も変動も抑制されるので、長寿命化を実現できる。
<第二実施形態>
図5(A)に第二実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、第一実施形態と比較して、同実施形態の座体が、雌ねじ体100に一体化される構造となっている。
具体的に熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雄ねじ体10及び雌ねじ体100によって、被締結部材Hを締結する。雌ねじ体100における貫通孔部106aの一部に雌ねじ螺旋条114が形成されており、この雌ねじ螺旋条114よりも被締結部材H側は、雄ねじ部13から離反した筒状領域111となる。また、雌ねじ体100の内側端面112が、被締結部材Hと当接する雌ねじ側座面MZとなる。
本第二実施形態では、雌ねじ体100と雄ねじ体10が、互いに異なる線膨張率に設定される。また、雌ねじ体100において、雌ねじ側座面MZから仮想基準点RCまでの雌ねじ側応力伝達経路MKを構成する部分が、熱伸縮吸収部Xに定義される。また、雄ねじ体10の軸部12における、雄ねじ側座面OZから仮想基準点RCまでの範囲が主軸体Sと定義される。なお、熱伸縮吸収部Xと主軸体Sと被締結部材Hの各長さや各線膨張率の設定思想は、第一実施形態と同様となるので、ここでの説明を省略する。
この第二実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1によれば、別体の座体を用いる必要がないので、部品点数を削減することが可能となる。
<第三実施形態>
図5(B)に第三実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、第一実施形態と比較して、座体50が、雄ねじ体10と被締結部材Hの間に配置される。座体50は筒状となっており、雄ねじ体10の雄ねじ部13が挿入される。座体50の軸方向の両端には、雌ねじ体100側(被締結部材H側)に対向する内側端面62と、頭部20側に対向する外側端面64を有する。内側端面62は、被締結部材Hと当接する雄ねじ側座面OZとなる。
本第三実施形態では、構造体の一部であって軸方向に延びる軸部12における、頭部20の端面30から仮想基準点RCまでの範囲を主軸体Sと定義できる。また、主軸体Sを除いた構造体の一部であって、軸方向に延びる座体50の全体を熱伸縮吸収部Xと定義できる。
主軸体Sと熱伸縮吸収部Xは、互いに線膨張率の異なる材料で構成される。なお、熱伸縮吸収部Xと主軸体Sと被締結部材Hの各長さや各線膨張率の設定思想は、第一実施形態と同様に行えば良いので、ここでの説明を省略する。
第一実施形態や第三実施形態では、一つの座体50を用いる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、第一実施形態の座体と第三実施形態の座体の双方を同時に採用してもよい。
<第四実施形態>
図5(C)に第四実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、第三実施形態と比較して、雌ねじ体100側の構造が異なっている。従って、ここでは雌ねじ体100の構造を中心に説明する。
雌ねじ体100は、六角形状の雌ねじ頭部120と、この雌ねじ頭部120から軸方向に延びる雌ねじ軸部130を有する。雌ねじ軸部130の先端側は円筒構造となっており、その内周面に、雄ねじ部13と螺合可能な雌ねじ螺旋条114が形成される。雌ねじ軸部130の大半は、被締結部材H内に挿入され得る。
雌ねじ頭部120は、雄ねじ体10の頭部20側(又は被締結部材H側)に対向する内側端面112を有する。この内側端面112は、被締結部材Hと当接する雌ねじ側座面MZを構成する。
一方、雄ねじ体10の軸部12は、第三実施形態よりも短く設定されており、その雄ねじ部13が、雌ねじ軸部130の雌ねじ螺旋条114と螺合する。
本第四実施形態では、雄ねじ体10の軸部12における、頭部20の端面30から仮想基準点RCまでの範囲と、雌ねじ体100の雌ねじ軸部130における、雌ねじ頭部120の内側端面112から仮想基準点RCまでの範囲の双方を合わせた領域が主軸体Sと定義される。即ち、主軸体Sは、雌ねじ体100の雌ねじ軸部130と雄ねじ体10の軸部12を組み合わせた部分となる。なお、座体50の全体が熱伸縮吸収部Xと定義される。
以上の結果、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xは、互いに線膨張率の異なる材料で構成されることになる。なお、熱伸縮吸収部Xと主軸体Sと被締結部材Hの各長さや各線膨張率の設定思想は、第一実施形態と同様に行えば良いので、ここでの説明を省略する。また、ここでは座体50を、雄ねじ体10の頭部20側に配置したが、雌ねじ頭部120側に配置してもよい。
<第五実施形態>
図5(D)に第五実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、第四実施形態と比較して、同実施形態の座体を省略した構造となっている。
具体的に、この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雄ねじ体10の頭部20と、雌ねじ体100の雌ねじ頭部120によって、被締結部材Hが挟持される。
この第五実施形態では、雌ねじ体100と雄ねじ体10が、互いに異なる線膨張率に設定される。また、雌ねじ体100の雌ねじ軸部130において、雌ねじ側座面MZから仮想基準点RCまでの雌ねじ側応力伝達経路MKを構成する部分が主軸体Sと定義される。一方、雄ねじ体10の軸部12において、雄ねじ側座面OZから仮想基準点RCまでの雄ねじ側応力伝達経路OKを構成する範囲が熱伸縮吸収部Xと定義される。従って、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xが直列となっている。
特に本実施形態では、螺合領域Rの仮想基準点RCが、被締結部材Hの内部に配置されており、主軸体Sの軸方向長さSLが、熱伸縮吸収部Xの軸方向長さXLよりも大きい。例えば、被締結部材Hの線膨張率が0となる場合を前提とすれば、線膨張率等は以下の関係となる。
HL>SL>XL
αs>0>αx
d(Ps)>0
d(Px)<0
|d(Px)|≧d(Ps)
また例えば、被締結部材Hの線膨張率が正値となり、かつ、相対変化量d(Ps−Ph)が正値となる場合を前提とすれば、線膨張率等は以下の関係となる。
HL>SL>XL
αs>0
αh>0
0>αx
d(Ps)>d(Ph)>0
d(Px)<0
|d(Px)|≧d(Ps)−d(Ph)
また例えば、被締結部材Hの線膨張率が正値となり、かつ、相対変化量d(Ps−Ph)が負値となる場合を前提とすれば、線膨張率等は以下の関係となる。
HL>SL>XL
αs>0
αh>0
αx>0
d(Ph)>d(Ps)>0
d(Px)>0
d(Px)≧|d(Ps)−d(Ph)|
なお、熱伸縮吸収ねじ締結機構1に関して、仮に、雌ねじ側座面MZから仮想基準点RCまでの距離が、雄ねじ側座面OZから仮想基準点RCまでの距離よりも小さい場合は、雌ねじ軸部130側を熱伸縮吸収部Xと定義し、雄ねじ10の軸部12側を主軸体Sと定義してもよい。
<第六実施形態>
図5(E)に第六実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雄ねじ体10と雌側構造体Yを備える。雌側構造体Yは、雌ねじ体100と被締結部材Hを一体的に有する。第三実施形態と同様に、雄ねじ体10と雌側構造体Yの間には、座体50が配置されている。
雌側構造体Yには、貫通又は有底の穴が形成されており、穴の奥側(底面側)の内周面に、雌ねじ螺旋条114が形成される。この雌ねじ螺旋条114は、雄ねじ体10の雄ねじ部13と螺合する。従って、雌側構造体Yにおいて、螺合領域Rの仮想基準点RCから一方の面(表面)までの領域は、仮想的な被締結部材Hと定義できる。一方、螺合領域Rの仮想基準点RCから他方の面(裏面)までの領域が、実質的な雌ねじ体100と定義できる。
座体50は筒状となっており、雄ねじ体10の雄ねじ部13が挿入される。座体50の内側端面62は、雌ねじ体100(被締結部材H)と当接する雄ねじ側座面OZとなる。また、被締結部材Hと雌ねじ体100の境界は、仮想的な雌ねじ側座面MZとなる。従って、ここでは、雌ねじ体100と被締結部材Hの線膨張率が一致する。また、雌側構造体Yと雄ねじ体10の線膨張率が互いに異なることで、温度変化時に、伸び量に差が生じるようになっている。また、座体50の線膨張率は、雌側構造体Yと雄ねじ体10の双方と異なるように設定される。
本第六実施形態では、構造体の一部であって軸方向に延びる軸部12における、頭部20の端面30から仮想基準点RCまでの範囲を主軸体Sと定義できる。また、主軸体Sを除いた構造体の一部であって、軸方向に延びる座体50の全体を熱伸縮吸収部Xと定義できる。結果、主軸体Sと熱伸縮吸収部Xは、互いに線膨張率の異なる材料で構成されることになる。なお、熱伸縮吸収部Xと主軸体Sと被締結部材Hの各長さや各線膨張率の設定思想は、第一実施形態と同様に行えば良いので、ここでの説明を省略する。
<第七実施形態>
図6に第七実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雌ねじ体100と被締結部材Hの間に配置される第一座体50Aと、雄ねじ体10と被締結部材Hの間に配置される第二座体50Bを備える。第一及び第二座体50A、50Bは径方向に拡張されており、第一座体50Aの雌ねじ側座面MZと、第二座体50Bの雄ねじ側座面OZによって、被締結部材Hが挟持される。なお、本実施形態では、被締結部材Hが、雄ねじ体10の軸部12から径方向に離れた位置(オフセットされる位置)に配置される。第一座体50A及び第二座体50Bの線膨張率は、雄ねじ体10及び雌ねじ体100と異なる。
本第七実施形態では、構造体の一部であって軸方向に延びる軸部12における、頭部20の端面30から仮想基準点RCまでの範囲を主軸体Sと定義する。また、主軸体Sを除いた構造体の一部であって、第一座体50Aの全体を第一熱伸縮吸収部XAと定義する。更に主軸体Sを除いた構造体の一部であって、第二座体50Bの全体を第二熱伸縮吸収部XBと定義する。結果、主軸体Sと、第一及び第二熱伸縮吸収部XA、XBは、互いに線膨張率の異なる材料で構成される。なお、第一及び第二熱伸縮吸収部XA、XBと、主軸体Sと、被締結部材Hの各長さや各線膨張率の設定思想は、第一実施形態と同様に行えば良いので、ここでの説明を省略する。
<第八実施形態>
図7に第八実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。この熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、雌ねじ体100と被締結部材Hの間に配置される筒状の座体50を備える。
雌ねじ体100の外周面には、座体50の外側端面64と軸方向に係合可能な段部140が形成される。この段部140によって、座体50は、雌ねじ体100の外周面に固定される。なお、座体50の軸方向長さは、雌ねじ体100の軸方向長さよりも小さく設定される。
図7(A)に示すように、温度変化dTが生じる前は、座体50の内側端面62は、被締結部材Hと当接しないか、或いは、接触していたとしても軸力を生じない。雌ねじ体100の内側端面112が雌ねじ側座面MZとなっており、所望の締結力を被締結部材Hに付与する。
図7(B)に示すように、温度変化dTが生じた後は、雄ねじ体10の軸部12が軸方向に膨張し、雌ねじ体100の内側端面112が、被締結部材Hから離反する。同時に、熱膨張率の絶対値の大きい座体50(熱伸縮吸収部X)が軸方向に膨張して、その内側端面62が被締結部材Hと当接する。即ち、正又は負の温度変化dTが生じることにより、座体50の内側端面62が、雌ねじ側座面MZを押圧して、所望の軸力を発生させて締結力を被締結部材Hに付与する。
なお、ここでは雌ねじ体100の外周面に段部140を形成して、座体50を配置される場合を例示したが、内周側に段部140を設けて座体50を配置してもよい。同様に、雄ねじ体10の頭部20に段部を設けて、座体50を配置することもできる。
<第九実施形態>
図8に第九実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1を示す。熱伸縮吸収ねじ締結機構1は、第一実施形態と同様に、雌ねじ体100と被締結部材Hの間に筒状の座体50が配置される。第一実施形態と異なる点として、本実施形態では、雌ねじ体100の軸方向外側に隣接する第二雌ねじ体101が、雄ねじ体10と螺合している。このダブルナット構造により、緩みを防止する構造としている。
雌ねじ体100の外側端面113には、環状突起150が形成される。一方、第二雌ねじ体101の内側端面には、環状突起150を収容する環状凹部160が形成される。更に、雌ねじ体100の熱膨張率は、第二雌ねじ体101の熱膨張率よりも大きく設定される。このようにすると、温度変化(温度上昇)dTが生じた場合に、環状凹部160と比較して、環状突起150が径方向に膨張(拡径)する。結果、環状突起150の外周面と環状凹部160の内周面の熱膨張による径差によって嵌合して摩擦力が増大し、両者の相対回転が抑制される。
なお、この第九実施形態の熱伸縮吸収ねじ締結機構1の変形例として、雄ねじ体10の軸部12に対して、リード角及び/又はリード方向が相異なる二種類の螺旋溝(例えば右螺旋溝による雄ねじ部と左螺旋溝による雄ねじ部、或いは、並目の右螺旋溝と細目の右螺旋溝とを重畳形成して成る雄ねじ部)を形成し、この二種類の螺旋溝に対して、ダブルナットの如く、二種類の雌ねじ体(例えば、右雌ねじ体と左雌ねじ体、或いは、並目の右ねじ構造の並目右雌ねじ体と細目の右ねじ構造の細目右雌ねじ体)を別々に螺合させる構造を採用してもよい。
具体的に図9に示すように、雄ねじ体10の雄ねじ部13に、対応した右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される右ねじと成る第一螺旋溝14と、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二螺旋溝15との二種類の雄ねじ螺旋溝が、雄ねじ体10の軸方向における同一領域上に重複して形成される。なお、当該重複部分以外に、一方の向きの螺旋溝が形成されて成る片螺旋溝領域を設けてもよい。
第一螺旋溝14は、これに対応する雌ねじ体100の右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条と螺合可能であり、第二螺旋溝15は、これに対応する雌ねじ体101(これは、上記右ねじを有する雌ねじ体と別体の場合を含む)の左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条と螺合可能となる。
雄ねじ部13には、図12(C)及び図13(C)に示すように、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向において周方向に延びる略三日月状の条状を成すねじ山Gが、雄ねじ部13の直径方向における一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に設けられる。即ち、このねじ山Gは、その稜線が軸に対して垂直に延びており、ねじ山Gの高さは、周方向中央が高くなり、周方向両端が次第に低くなるように変化する。ねじ山Gをこのように構成することで、右回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造(図12(A)の矢印14参照)及び左回りに旋回する仮想的な螺旋溝構造(図12(A)の矢印15参照)の二種類の螺旋溝を、ねじ山Gの間に形成することが出来る。
本実施形態では、第一螺旋溝14及び第二螺旋溝15の二種類の雄ねじ螺旋溝を、雄ねじ部13に重畳形成している。従って、雄ねじ部13は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部13の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
図9〜図13に示すように、雌ねじ体100の貫通孔部106aには、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋条114が形成される。即ち、雌ねじ体100の筒状部材106の第一雌ねじ螺旋条114は、雄ねじ体10の雄ねじ部13における第一螺旋溝14と螺合する。一方、雌ねじ体101の貫通孔部106aには、左ねじとしての第二雌ねじ螺旋条115が形成される。第二雌ねじ螺旋条115は、雄ねじ体10の雄ねじ部13における第二螺旋溝15と螺合する。
このように、リード角及び/又はリード方向が相異なる二種類の雌ねじ体100、101を、ダブルナットの如く、雄ねじ体10に螺合させると、互いの雌ねじ体100、101が相対回転しない限り、回転緩みし得ない。特に、図8で示すように、環状突起150と環状凹部160を熱膨張径差による嵌合によって摩擦係合させれば、当該締結系が温度変化に曝されても極めて緩みにくい状態となる。
なお、上記実施形態において、熱伸縮吸収部Xを構成する材料は特に限定されないが、一般的に広く普及している鉄や鋼よりも線膨張率の絶対値が大きい材料が好ましく、例えば、銅や銅を含有する合金、アルミニウムやアルミニウムを含有する合金、ステンレス鋼、或いは、金属に限らず、合成樹脂や合成樹脂の強化材料、天然ゴムや合成ゴム、又はこれらと金属材料との複合構造等を採用することが可能である。
また、本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
1 熱伸縮吸収ねじ締結機構
10 雄ねじ体
12 軸部
20 頭部
30 端面
50 座体
62 内側端面
64 外側端面
100 雌ねじ体
106 筒状部材
106a 貫通孔部
111 筒状領域
112 内側端面
113 外側端面
114 螺旋条
120 頭部
130 軸部
140 段部
150 環状突起
160 環状凹部
H 被締結部材
S 主軸体
W 隙間
X 熱伸縮吸収部

Claims (15)

  1. 雄ねじ体と、該雄ねじ体と螺合する雌ねじ部による熱伸縮吸収ねじ締結機構であって、
    上記雄ねじ体側において締結面を構成する雄ねじ側座面と、
    上記雌ねじ体側において締結面を構成する雌ねじ側座面と、
    軸方向に延び、上記雄ねじ側座面と上記雌ねじ側座面の座面間距離を維持する構造体の一部を構成する主軸体と、
    軸方向に延び、上記座面間距離を維持する構造体における前記主軸体を除いた残部の少なくとも一部を構成する熱伸縮吸収部と、を備え、
    上記主軸体と上記熱伸縮吸収部は、互いに線膨張率の異なる材料で構成されることを特徴とする、
    熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  2. 所定の温度変化に基づいて前記主軸体が軸方向に伸縮することで前記座面間距離を変化させる量を主軸体側変化量と定義し、
    上記所定の温度変化に基づいて前記熱伸縮吸収部が軸方向に伸縮することで上記座面間距離を変化させる量を吸収側変化量と定義する際に、
    上記主軸体側変化量の少なくとも一部を、上記吸収側変化量が相殺することを特徴とする、
    請求項1に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  3. 前記吸収側変化量が、前記主軸体側変化量の全部を相殺することを特徴とする、
    請求項2に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  4. 所定の温度変化に基づいて前記主軸体が軸方向に伸縮することで前記座面間距離を変化させる量を主軸体側変化量と定義し、
    上記所定の温度変化に基づいて前記熱伸縮吸収部が軸方向に伸縮することで上記座面間距離を変化させる量を吸収側変化量と定義し、
    上記所定の温度変化に基づいて、前記雄ねじ側座面と前記雌ねじ側座面の間に配置される被締結部材の被挟持間距離の変化量を被締結側変化量と定義し、
    上記主軸体側変化量から上記被締側変化量を差し引いた値を相対変化量と定義する際に、
    上記相対変化量の少なくとも一部を、上記吸収側変化量が相殺することを特徴とする、
    請求項1に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  5. 前記吸収側変化量が、前記相対変化量の全部を相殺することを特徴とする、
    請求項4に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  6. 前記相殺により、前記雄ねじ側座面と前記雌ねじ側座面による締結時における締結力を一定範囲内に保持することを特徴とする、
    請求項2乃至5のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  7. 前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ側座面及び前記雌ねじ側座面の少なくとも一方を提供することを特徴とする、
    請求項1乃至6のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  8. 前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の少なくとも一方に一体に設けられることを特徴とする、
    請求項1乃至7のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  9. 前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の一方が前記主軸体を兼ねており、
    前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体の他方が前記熱伸縮吸収部を兼ねており、
    前記雄ねじ体と前記雌ねじ体が互いに線膨張率の異なる材料で構成されることを特徴とする、
    請求項8に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  10. 前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雌ねじ体と別体に設けられることを特徴とする、
    請求項1乃至7のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  11. 前記熱伸縮吸収部は、前記雄ねじ体及び前記雄ねじ体に挟持される座体を兼ねることを特徴とする、
    請求項10に記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  12. 前記熱伸縮吸収部は、前記主軸体の周囲に環状に配置されることを特徴とする、
    請求項1乃至11のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  13. 前記熱伸縮吸収部の少なくとも一部は、前記主軸体に対して径方向に間隔を空けて配置され、
    上記熱伸縮吸収部は、上記間隔を利用して、上記主軸体に対して軸方向に相対変位可能となることを特徴とする、
    請求項1乃至12のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  14. 前記主軸体における軸方向の距離と比較して、前記熱伸縮吸収部の軸方向の距離が小さくなっており、
    前記主軸体の線膨張率と比較して、前記熱伸縮吸収部の線膨張率が大きいことを特徴とする、
    請求項1乃至13のいずれかに記載の熱伸縮吸収ねじ締結機構。
  15. 雄ねじ体と、熱伸縮吸収部とを備える熱伸縮吸収ねじ締結機構であって、
    上記雄ねじ体は、雌ねじ部と螺合し得る雄ねじ部を有する軸部を備え、
    上記熱伸縮吸収部は、上記雄ねじ体と相異なる線膨張率の材料で構成され、締結時において、上記軸部の熱膨張及び/又は熱収縮に際して上記軸部の軸方向に作用する軸力を受け得る座面を有し、上記軸部と軸方向に並列又は直列に併設され、
    上記雄ねじ体の軸方向における熱膨張量及び/又は熱収縮量の一部又は全部を、上記熱伸縮吸収部の軸方向における熱膨張量及び/又は熱収縮量によって吸収することで、上記雄ねじ体による締結時における締結力を一定範囲内に保持することを特徴とする熱伸縮吸収ねじ締結機構。
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