JP2018131681A - ニッケルペースト及びその製造方法、並びにニッケル有機スラリー及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニッケル微粒子の凝集がなく分散しており、積層セラミックコンデンサの内部電極用の材料として好適に用いることができるニッケルペースト及びその製造方法を提供すること。【解決手段】本発明に係るニッケルペーストの製造方法は、液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、分散処理を施した有機スラリーをペースト化するペースト化工程と、を有する。水スラリー製造工程において、ニッケル微粒子に、水スラリー中の水含有量が30質量%以上90質量%以下となるように水を添加することが好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極用の材料として好適に用いることができるニッケルペースト及びその製造方法、並びにそのニッケルペーストの原料として用いることができるニッケル有機スラリー及びその製造方法に関する。
一般に、積層セラミックコンデンサ(以下、「MLCC」ともいう)の内部電極に用いられるニッケルペーストは、ビヒクル中にニッケル粉を混練して製造され、多くのニッケル粉の凝集体を含んでいる。ニッケル粉の製造プロセスでは、その最終段階に、ニッケル粉の製造方法(気相法、液相法)を問わずに乾燥工程を有するのが通常であり、この乾燥工程における乾燥処理がニッケル粒子の凝集を促すことから、得られるニッケル粉には乾燥時に生じた凝集体が含まれていることが一般的である。
近年のMLCCは、小型で大容量化を達成させるために、内部電極層を伴ったセラミックグリーンシートの積層数を、数百から1000層程度にまで増加させることが要求されている。このため、内部電極層の厚みを従来の数ミクロンレベルからサブミクロンレベルに薄層化する検討がなされており、それに伴い、内部電極用の電極材料のニッケル粉の小粒径化が進められている。
しかしながら、小粒径になるほどニッケル粉の表面積は大きくなり、それに伴い表面エネルギーが大きくなって、凝集体を形成し易くなる。また、ニッケル超微粉等の金属超微粉は、分散性が悪く、凝集体が存在するようになると、セラミックコンデンサ製造時における焼成工程でニッケル粉が焼結する際にセラミックシート層を突き抜けてしまい、電極が短絡した不良品となる。また、たとえセラミックシート層を突き抜けない場合であっても、電極間距離が短くなることで部分的な電流集中が発生するため、積層セラミックコンデンサの寿命劣化の原因となっていた。このように、MLCCにおいては、凝集体を含めた粗大粒子が少ないニッケルペーストを製造し、表面に凹凸がなく平滑な内部電極を得ることが重要となっている。
現在、熱CVD(化学気相成長)法やプラズマCVD法等の気相法では、得られる粒子径がばらばらであり(例えば特許文献1の図面を参照)、平均粒径が100nm以下のニッケルナノ粒子を分級する技術は未完成である。また、分級の精度も満足できるものではなく、100nmを超える粗大粒子を完全に除去することができていないことから、粗大粒子による電極層同士のショートによる不良が問題となっている。
一方、液相法で合成されるニッケルナノ粒子は、気相法で合成されるものより粒度分布が狭いため、上述した内部電極用の材料としての用途に適している。
しかしながら、液相法により、分級しなくても粒度分布が狭く、100nm以下のニッケルナノ粒子を合成できるとしても、粒径が小さくなることでその表面積が大きくなるため、大気雰囲気に触れることで異常発熱を起こすおそれがある。また、発熱することで酸化ニッケルが生成され、強固な凝集体にもなってしまう。一方、水スラリー中でニッケルナノ粒子の表面の酸化処理を行うと、粒子表面の酸化と同時に水酸化ニッケルが生成されてしまい、ニッケルペーストにしたときの電気特性の悪化を招くため、MLCCの内部電極用の材料としては好ましくない。
このような挙動は、取扱いが難しい上に製品不良を引き起こす可能性が懸念されており、したがって、液相法で合成されるニッケルナノ粒子については、粒子表面状態の改善が望まれている。
なお、特許文献2には、ニッケル粒子の表面の酸化処理についての技術が開示されており、液相法で作製したニッケル粉を純水に添加してスラリー化してから、過酸化水素で酸化することの技術事項が開示されている。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、ニッケル微粒子の凝集がなく分散しており、積層セラミックコンデンサの内部電極用の材料として好適に用いることができるニッケルペースト及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ニッケル微粒子を含む水スラリーを有機溶剤により置換し、得られた有機溶剤のスラリーに対して高圧分散処理を施すことにより、ニッケル微粒子の凝集を防止し、ニッケル微粒子が分散したニッケルペーストが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、前記水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、該有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、前記有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、分散処理を施した前記有機スラリーをペースト化するペースト化工程と、を有するニッケルペーストの製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記水スラリー製造工程において、前記ニッケル微粒子に、前記水スラリー中の水含有量が30質量%以上90質量%以下となるように水を添加する請求項1に記載のニッケルペーストの製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記有機スラリー製造工程において、前記水スラリーに、前記ニッケル微粒子100質量%に対して10質量%以上70質量%以下の有機溶剤を添加するニッケルペーストの製造方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記有機スラリー製造工程において、前記水スラリーに、前記ニッケル微粒子100質量%に対して0.1質量%以上3質量%以下の分散移行促進剤を添加するニッケルペーストの製造方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記高圧分散工程において、酸化剤の存在下で分散処理を施すニッケルペーストの製造方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記高圧分散工程後に、前記ニッケル微粒子に酸化処理を施すニッケルペーストの製造方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記有機スラリー製造工程において、油中水滴型エマルション型の有機スラリーを製造するニッケルペーストの製造方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、有機スラリー製造工程において得られる有機スラリー中の水含有量は、3質量%以下であるニッケルペーストの製造方法である。
(9)本発明の第9の発明は、液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、前記水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、該有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、前記有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、を有するニッケル有機スラリーの製造方法である。
(10)本発明の第10の発明は、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケルペーストであって、前記ニッケルペーストをアプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上に塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、作成した膜厚3μmの乾燥膜について、光干渉式表面形状測定装置を用いて測定した場合の表面粗さが0.06μm以下であるニッケルペーストである。
(11)本発明の第11の発明は、第10の発明において、前記ニッケルペーストを膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ得られた乾燥膜を直径40mmの円板状に切断し、厚み及び質量を測定し、該厚み及び該質量より算出した乾燥膜密度が5g/cm3以上であるニッケルペーストである。
(12)本発明の第12の発明は、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケル有機スラリーであって、前記ニッケル有機スラリー中に含まれる粒子のメジアン径(D50)が700nm以下であるニッケル有機スラリーである。
本発明によれば、ニッケル微粒子の凝集がなく分散しており、積層セラミックコンデンサの内部電極用の材料として好適に用いることができるニッケルペースト及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。
≪1.ニッケルペーストの製造方法≫
ニッケル有機スラリー及びニッケルペーストの製造方法について説明する。
ニッケル有機スラリー及びニッケルペーストの製造方法について説明する。
本実施の形態に係るニッケル微粒子の製造方法は、液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、分散処理を施した有機スラリーをペースト化するペースト化工程とを有することを特徴としている。
以下では、より具体的に、この製造方法を、下記(A)工程〜(D)工程に分けてそれぞれ詳細に説明する。すなわち、図1に示すように、このニッケルペーストの製造方法は、水スラリー製造工程(A)、有機スラリー製造工程(B)、高圧分散工程(C)、ペースト化工程(D)を有しており、このうち有機スラリー製造工程(B)は、解砕混合処理工程(B−1)と評価工程(B−2)を有している。
(A)水スラリー製造工程
先ず、出発原料となる、平均粒径100nm未満のニッケルナノ粒子(ニッケル微粒子)を作製する。本実施の形態においては、液相法によりニッケル微粒子を作製し、そのニッケル微粒子を純水に添加してニッケル微粒子の水スラリーとする。
先ず、出発原料となる、平均粒径100nm未満のニッケルナノ粒子(ニッケル微粒子)を作製する。本実施の形態においては、液相法によりニッケル微粒子を作製し、そのニッケル微粒子を純水に添加してニッケル微粒子の水スラリーとする。
具体的に、液相法としては、ニッケル塩化合物を含有するニッケル塩溶液に対してヒドラジン等の還元剤を用いた湿式還元法等を挙げることができる。なお、液相法により作製したニッケル微粒子の水スラリーとしては、住友金属鉱山株式会社製のニッケル微粒子水スラリーである、規格名:NR707(湿式還元法によるニッケル超微微粒子、平均粒径70nm)等が市販されており、有効に用いることができる。
水の添加量としては特に限定されないが、水スラリー中の水含有量が30質量%以上90質量%以下となるように添加することが好ましく、35質量%以上85質量%以下となるように添加することがより好ましく、35質量%以上75質量%以下となるように添加することがさらに好ましく、40質量%以上60質量%以下となることが特に好ましい。水含有量が30質量%以上90質量%以下となるように水を添加することにより、水スラリーを効率的に製造することができる。また、水含有量が80質量%以下となるように水を添加することにより、有機スラリー製造工程に要する時間を短縮することができる。
(B)有機スラリー製造工程
(B−1)解砕混合処理工程
次に、得られたニッケル微粒子の水スラリーに対して有機溶剤を添加して置換処理を施し、ニッケル微粒子が有機溶剤中に分散した「ニッケル有機スラリー」(以下、「有機スラリー」ということもある。)を生成させる。
(B−1)解砕混合処理工程
次に、得られたニッケル微粒子の水スラリーに対して有機溶剤を添加して置換処理を施し、ニッケル微粒子が有機溶剤中に分散した「ニッケル有機スラリー」(以下、「有機スラリー」ということもある。)を生成させる。
具体的に、有機溶剤による置換処理は、ニッケル微粒子の水スラリーに対して所定量の有機溶剤及び分散移行剤を添加し、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ボールミル、乳鉢、自動乳鉢、プラネタリーミキサー等を用いてニッケル微粒子を解砕するとともに、水スラリーと、有機溶剤と、分散移行剤とを混合する。これにより、ニッケル水スラリーからニッケル有機スラリーに置換させる。
ニッケル水スラリーは、有機溶剤と分散移行促進剤(油分)を添加しただけではニッケル水スラリーと油分が分離した状態であるが、例えばエクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製)で周速10m/sの回転速度で攪拌する解砕混合処理を行うことで、ニッケル微粒子表面に分散移行促進剤が吸着し、有機溶剤に分散させることができる。すなわち、ニッケル水スラリーのニッケル微粒子の表面は親水性であることから、分散移行促進剤により表面を親油性に改質することで、ニッケル微粒子を水相から油相へ移動させる。このように、油相にニッケル微粒子を含んだ油中水滴(W/O)型エマルションへ変化させることでニッケル微粒子を水と分離することができる。
なお、本発明において「油中水滴(W/O)型」とは、油相に、3質量%以下の残留水分を含むニッケル微粒子が分散している状態をいい、残留水分が全く含まれない状態(0質量%)をも包含する概念である。
このように、油中水滴(W/O)型エマルションは、油相に、3質量%以下の残留水分を含み得るものであれば特に限定されない。含有量としては、1質量%以下であることが好ましい。
このようにして、ニッケル微粒子が前記解砕混合処理により油中水滴(W/O)型に転相した後、減圧濾過や遠心分離等で水を除去することにより、ニッケル微粒子が有機溶剤中に分散したニッケル有機スラリーが得られる。
[有機溶剤]
有機溶剤としては、ニッケル水スラリーを有機溶剤のスラリーに置換可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、イソボルニルプロピオナート、イソボルニルイソブチレート、ミネラルスピリット、0号ソルベント、ブチルカルビトール、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ヘキサン、エタノール、ノナン、ノナノール、デカノール等が挙げられる。さらには、CnH2n+2、CnH2n、CnH2n−2で示される脂肪族炭化水素、CnH2n−6で示される芳香族炭化水素等を用いることもでき、具体的には、ジメチルオクタン、エチルメチルシクロヘキサン、メチルプロピルシクロヘプタン、トリメチルヘキサン、ブチルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、メチルノナン、エチルメチルヘプタン、トリメチルデカン、ペンチルシクロヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
有機溶剤としては、ニッケル水スラリーを有機溶剤のスラリーに置換可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、イソボルニルプロピオナート、イソボルニルイソブチレート、ミネラルスピリット、0号ソルベント、ブチルカルビトール、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ヘキサン、エタノール、ノナン、ノナノール、デカノール等が挙げられる。さらには、CnH2n+2、CnH2n、CnH2n−2で示される脂肪族炭化水素、CnH2n−6で示される芳香族炭化水素等を用いることもでき、具体的には、ジメチルオクタン、エチルメチルシクロヘキサン、メチルプロピルシクロヘプタン、トリメチルヘキサン、ブチルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、メチルノナン、エチルメチルヘプタン、トリメチルデカン、ペンチルシクロヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トルエン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併せて用いることができる。
有機溶剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル微粒子100質量%に対して10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、15質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上65質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。有機溶剤の添加量が10質量%以上70質量%以下であることにより、効率的にニッケル有機スラリーを製造することができる。
[分散移行促進剤]
分散移行促進剤としては、界面活性剤又は高分子構造を有する分散剤を使用することができる。ここで、ニッケル微粒子の表面は、塩基性の性質を有しているため、分散移行促進剤としては、陰イオン型界面活性剤構造を有するものやカルボン酸等の官能基(酸基)を備えた高分子構造を有するものを用いることができる。すなわち、このような構造を有する分散移行促進剤は、ニッケル微粒子の表面に効率的に吸着し、ニッケル微粒子表面を親油性に改質することで、ニッケル微粒子を水相から油相へ移動させることができる。また、ニッケルペースト中での分散性を向上させることもできる。
分散移行促進剤としては、界面活性剤又は高分子構造を有する分散剤を使用することができる。ここで、ニッケル微粒子の表面は、塩基性の性質を有しているため、分散移行促進剤としては、陰イオン型界面活性剤構造を有するものやカルボン酸等の官能基(酸基)を備えた高分子構造を有するものを用いることができる。すなわち、このような構造を有する分散移行促進剤は、ニッケル微粒子の表面に効率的に吸着し、ニッケル微粒子表面を親油性に改質することで、ニッケル微粒子を水相から油相へ移動させることができる。また、ニッケルペースト中での分散性を向上させることもできる。
(陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤)
具体的に、陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤としては、例えば、下記一般式に示す特定構造を有する(1)〜(3)の化合物のうちのいずれかを用いることができる。
具体的に、陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤としては、例えば、下記一般式に示す特定構造を有する(1)〜(3)の化合物のうちのいずれかを用いることができる。
ここで、上記一般式(1)、(2)に示す化合物に関して、式中の「n」は10〜20の整数である。nの数が10より小さいと、親水性が強くなり、ニッケルペーストの作製における混練時に水が抜け難くなる可能性がある。一方で、nの数が20より大きいと、親油性になって水を除去しやすくなるものの、有機溶剤に溶け難く効率的にニッケル微粒子の表面をコーティングできない可能性がある。
例えば、上記一般式(1)に示す化合物であって、n=10の場合の構造式で表される化合物は、具体的には下記構造式(1−1)のような化合物である。この構造式(1−1)で表される化合物は、化学名が「ラウロイルサルコシン」(分子式=C15H29NO3、CAS No.=97−78−9)であり、市販されている界面活性剤である。
またその他の化合物として、化学名「ラウロイルメチル−β−アラニン」(構造式:下記(2−1)、分子式:C16H31NO3、CAS No.21539−57−1)や、化学名「ミリストイルメチル−β−アラニン」(構造式:下記(2−2)、分子式:C18H35NO3、CAS No.21539−71−9)等が具体的に挙げられる。また、ココイルサルコシネート(一般式(1)、分子式:C16H31NO3)、ミリストイルサルコシネート(一般式(1)、分子式:C17H33NO3)、パルミトイルサルコシン(一般式(1)、分子式:C19H37NO3)、ステアロイルサルコシン(一般式(1)、分子式:C21H41NO3)等を例示することができる。
また、上記一般式(3)に示す化合物に関して、式中の「m」、「n」は、m+n=12〜20の関係を満たす。m+nが12より小さいと、親油性が不足して水の分離が不十分となる可能性がある。一方で、m+nが20より大きいと、有機溶剤に溶解し難くなる可能性がある。
具体的に、上記一般式(3)で表される化合物としては、分子式がC21H39NO3であって下記(3−1)の構造式(但し、一般式(3)中でm=7、n=7のもの)で示される化学名「N−オレイル−N−メチルグリシン」(以下、「オレオイルザルコシン」ともいう。)、また分子式がC19H35NO3(但し、一般式(3)中でm=7、n=5のもの)である化学名「N−パルミトレイン−N−メチルグリシン」、また分子式がC21H39NO3(但し、一般式(3)中でm=9、n=5のもの)である化学名「N−バクセン−N−メチルグリシン」、また分子式がC27H51NO3(但し、一般式(3)中でm=13、n=7のもの)である化学名「N−ネルボン−N−メチルグリシン」等を挙げることができる。
(高分子構造を有する分散移行促進剤)
また、高分子構造を有する分散移行促進剤としては、例えば、その末端に、あるいは分子中に、カルボン酸等の官能基(酸基)を備えた高分子構造を有する分散移行促進剤を使用することができる。
また、高分子構造を有する分散移行促進剤としては、例えば、その末端に、あるいは分子中に、カルボン酸等の官能基(酸基)を備えた高分子構造を有する分散移行促進剤を使用することができる。
具体的には、末端にカルボン酸等の官能基(酸基)を備えた高分子構造を有する分散移行促進剤として、例えば、ウレタン系高分子分散剤等を挙げることができる。なお、ウレタン系高分子分散剤としては、商品名:Solsperse55000(平均分子量55000)、商品名:Solsperse36000(平均分子量36000)、商品名:Solsperse21000(平均分子量21000)等が市販されており(いずれも日本ルーブリゾール社製)、好適に使用することができる。また、シングルカルボン酸タイプの商品名:Solsperse3000(日本ルーブリゾール社製)も有効に用いることができる。
また、分散移行促進剤の構造としては、特に限定されないが、櫛形のポリマーであることが特に好ましい。櫛形の構造を有する分散移行促進剤は、アンカー部にカルボン酸基を、グラフト部にポリオキシアルキレン基を有し、その組成により疎水性と親水性のバランスが異なるような構造となっている。なお、櫛形ポリマーである高分子分散剤として、例えば、日油株式会社製のマリアリムAWCシリーズ、SCシリーズが市販されている。
分散移行促進剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば、ニッケル微粒子100質量%に対して0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。分散移行促進剤の添加量が0.1質量%以上3質量%以下であることにより、効率的にニッケル有機スラリーを製造することができる。
解砕混合処理時間は、特に限定されず、使用する装置等により適宜設定することができるが、例えば1〜5分で処理することが好ましい。
(B−2)評価工程
必須の態様ではないが、評価工程において、解砕混合処理工程で得られたニッケル有機スラリーについて、相転移の挙動とニッケル有機スラリー中の残留水分の確認を行う。
必須の態様ではないが、評価工程において、解砕混合処理工程で得られたニッケル有機スラリーについて、相転移の挙動とニッケル有機スラリー中の残留水分の確認を行う。
ニッケル水スラリーの相転移の挙動は、熱質量測定で確認することができる。具体的には、熱分析装置(Bruker AXS製:TG−DTA2010SA)で、温度範囲20〜300℃、昇温速度10℃/minで測定を行う。得られた熱プロファイルで、150℃付近までの重量減少に変曲点が無い場合は、ニッケル微粒子が水相から油相に移動し、油中水滴(W/O)型エマルションに転相していると判断することができる。一方で、150℃付近までに変曲点(2段階)がある場合は、ニッケル微粒子が完全に油相に移動しておらず油中水滴(W/O)型エマルションを形成していないと判断することができる。
ニッケル有機スラリーの残留水分率は、電量滴定式カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製)を用い、ニッケル有機スラリーの180℃における残留水分率を測定し、例えば残留水分率が1質量%以下のものを後の工程で使用することが好ましい。
(C)高圧分散工程
高圧分散工程では、有機スラリー製造工程にて得られたニッケル有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理(高圧分散処理)を施す。このように、所定の圧力下で有機スラリーに対して分散処理を施すことで、ニッケル微粒子を含むニッケル有機スラリー中に残存している凝集体(フロック)を効率的に解砕することができ、スラリー中の分散性を高めることができる。
高圧分散工程では、有機スラリー製造工程にて得られたニッケル有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理(高圧分散処理)を施す。このように、所定の圧力下で有機スラリーに対して分散処理を施すことで、ニッケル微粒子を含むニッケル有機スラリー中に残存している凝集体(フロック)を効率的に解砕することができ、スラリー中の分散性を高めることができる。
高圧分散処理における圧力は100MPa以上である。また、100MPa以上200MPa以下であることが好ましい。圧力が100MPa未満であると、微粒子の分散が不十分となるおそれがある。一方で、圧力が200MPa以下であることにより、装置コスト及び運用コストを抑制することができる。
高圧分散処理は、圧力を印加しながら湿式処理を行うことができる装置を用いて行うことができ、例えば湿式微粒化装置、高圧乳化装置等を使用することができる。
分散処理条件としては、ニッケル有機スラリーの濃度や装置のチャンバーノズル径、圧力、パス回数等について適宜選択することができる。例えば、アルティマイザーシステムHJP25005の場合、チャンバーノズル径φ0.12mm、圧力100MPa、パス回数5回で分散性の高い(高分散の)有機スラリーを得ることができる。
高圧分散処理を施すに際しては、処理対象のニッケル有機スラリーを有機溶剤で希釈して用いてもよい。希釈に用いる有機溶剤としては、ニッケル有機スラリーを希釈可能なものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル有機スラリーの分散媒として用いた有機溶剤と同様のものを用いることができる。
ここで、高圧分散工程又はその後段においては、ニッケル有機スラリーに対して、酸化剤を添加することができる。このように高圧分散処理中又はその処理後に酸化剤を添加することで、有機スラリー中に分散したニッケル微粒子に対して、酸化剤による酸化処理を施すことができる。このような酸化処理により、ニッケル微粒子の表面に酸化ニッケルを含む酸化膜を生成させることができる。そして、この酸化膜により、ニッケル微粒子同士の凝集をより効率的に防ぐことができる。また、高圧分散処理中に酸化剤を添加することで、解砕されたニッケル微粒子の活性な面(新生面)を直ぐに酸化させ再凝集を防ぐことができる。これにより、シャープな粒度分布を有するニッケル微粒子が得ることができ、また、高圧分散処理回数を減らすこともできる。
酸化剤としては、特に限定されず、過酸化水素、オゾン等を用いることができるが、溶液状であるため低コストで且つ扱いやすいという観点から過酸化水素を用いることが好ましい。
具体的に、この酸化処理では、ニッケル有機スラリーに過酸化水素等の酸化剤を少しずつ添加して撹拌することによって行う。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる場合、過酸化水素水を添加して用いることができる。その添加量としては、ニッケル有機溶剤スラリー中に存在するニッケル微粒子1gに対して、過酸化水素を0.01g以上20g以下の割合で添加することが好ましく、0.05g以上15g以下の割合で添加することがより好ましく、0.1g以上10g以下の割合で添加することがさらに好ましい。なお、このような過酸化水素の量は、過酸化水素水に含まれる量を換算して算出することができる。
また、酸化剤としてオゾン等の気体を用いる場合、スラリーにバブリングをすることにより、スラリーに酸化剤を供給することもできる。例えば、酸化剤としてオゾンを用いる場合、オゾン発生量としては、特に限定されず、例えば10mg/hr以上300mg/hr以下であることが好ましい。オゾン発生量が10mg/hr以上であることにより、ニッケル表面の酸化のために十分な量のオゾンを供給することができる。一方で、オゾン発生量が300mg/hr以下であることにより、オゾンを発生するための装置や電力等のコストを抑制することができる。また、バブリング処理を施す時間としては、特に限定されず、例えば5分以上120分以下であることが好ましい。なお、オゾンは、例えばオゾン発生器により発生させることができる。
酸化剤の添加方法としては、特に限定されず、例えば粉末状や溶液状として有機スラリーに添加することができる。また、添加時期としても、有機スラリー製造工程の後で、ペースト化工程の前であれば、特に限定されない。複数回に分けて高圧分散処理を施す場合、最初から酸化剤の存在下で高圧分散処理を施すことも、酸化剤の非存在下で高圧分散処理を施した後、途中から酸化剤を添加して高圧入荷処理を施すことも、複数回の高圧分散処理が全て終了した後に酸化剤を添加して酸化させることもできる。
また、高圧分散工程においては、ニッケル有機スラリーに対して、分散剤を添加することができる。このようにニッケル有機スラリーに対して、分散剤を添加することにより、ニッケル微粒子の分散性を高めることができ、より高分散の有機スラリーを得ることができる。なお、分散剤は単独で用いてもよいし、上述した酸化剤と併せて用いてもよい。
分散剤としては、ニッケル微粒子を有機溶剤に分散し得るものであれば特に限定されず、例えば、上述した分散移行促進剤と同様のものを用いることができる。具体的には、例えば、上記一般式に示す特定構造を有する(1)〜(3)の陰イオン型界面活性剤構造を有する分散剤(ただし、上記一般式(1)、(2)に示す化合物に関して、式中の「n」は10〜20の整数である。また、一般式(3)に示す化合物に関して、式中の「m」、「n」は、m+n=12〜20の関係を満たす。)や、高分子構造を有する分散剤を用いることができる。
より具体的には、上記一般式(1)に示す陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤として、例えば、ラウロイルサルコシン、ココイルサルコシネート、ミリストイルサルコシネート、パルミトイルサルコシン、ステアロイルサルコシン等が挙げられる。また、上記一般式(2)に示す陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤として、例えば、ラウロイルメチル−β−アラニン、ミリストイルメチル−β−アラニン等が挙げられる。さらに、上記一般式(3)に示す陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤として、例えば、オレオイルザルコシン、N−パルミトレイン−N−メチルグリシン、N−バクセン−N−メチルグリシン、N−ネルボン−N−メチルグリシン等が挙げられる。
また、高分子構造を有する分散剤としては、例えば、ウレタン系高分子分散剤等を挙げることができる。
分散剤の添加量としては、特に限定されず、例えばニッケル微粒子100質量%に対し、0.01質量%以上5.5質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上4.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上4質量%以下であることが特に好ましい。分散剤の添加量が、0.01質量%以上であることにより、ニッケル微粒子の分散性を高め、凝集を抑制することができる。また、分散剤の添加量が5.5質量%以下であることにより、ニッケルペーストの粘度がより適切なものとなり、操作性の良いニッケルペーストを得ることができる。
分散剤の添加方法としては、特に限定されず、例えば粉末状や溶液状として有機スラリーに添加することができる、また、添加時期としても、有機スラリー製造工程の後で、分散処理を施す前であれば、特に限定されず、上述した分散剤の添加と同時又は分散剤の前後いずれであってもよい。
(D)ペースト化工程
ペースト化工程においては、高圧分散工程にて分散処理を施したニッケル有機スラリーをペースト化する。具体的には、ニッケル微粒子が分散した高分散の有機スラリーに対して、例えば有機溶剤と樹脂からなる有機ビヒクルを添加し、混練することによりニッケルペーストを製造することができる。
ペースト化工程においては、高圧分散工程にて分散処理を施したニッケル有機スラリーをペースト化する。具体的には、ニッケル微粒子が分散した高分散の有機スラリーに対して、例えば有機溶剤と樹脂からなる有機ビヒクルを添加し、混練することによりニッケルペーストを製造することができる。
原料のニッケル有機スラリーは、ペースト組成に応じて濃縮して使用することもできる。ニッケル有機スラリーの濃縮方法としては、遠心分離機やエバポレーター等により有機溶剤を除去する等、公知の技術を使用することができる。
≪2.ニッケルペースト≫
本実施の形態に係るニッケルペーストは、上述した製造方法により得られるものであり、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有する。そして、このニッケルペーストにおいては、当該ニッケルペーストを用いて形成される乾燥膜に対し、光干渉式表面形状測定装置を用いて測定した場合の表面粗さが0.06μm以下である。
本実施の形態に係るニッケルペーストは、上述した製造方法により得られるものであり、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有する。そして、このニッケルペーストにおいては、当該ニッケルペーストを用いて形成される乾燥膜に対し、光干渉式表面形状測定装置を用いて測定した場合の表面粗さが0.06μm以下である。
具体的に、乾燥膜の表面粗さは、アプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上に塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、作成した膜厚3μmの乾燥膜について、光干渉式表面形状測定装置を用いて測定することができる。このような表面粗さとしては、0.05以下μmであることが好ましく、0.04μm以下であることがより好ましい。また、同様にして測定した乾燥膜の表面粗さの最大値(Ra(Max))としては、0.39μm以下であることが好ましく、0.37μm以下であることがより好ましく、0.35μm以下であることがさらに好ましい。
このようなニッケルペーストでは、自動車や携帯電話等の形態機器に搭載される積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極に用いられる材料として好適に用いることができる。また、このようなニッケルペーストによれば、凝集体を含めた粗大粒子が極めて少ないことから、内部電極の表面に凹凸がなく平滑であるため、MLCCの内部電極層の層同士のショート等の発生を防ぐことができる。さらに、このようなニッケルペーストによれば、ニッケル微粒子が密に集合することができ、そのようにして密に集合された状態で焼結されることにより、得られる乾燥膜の密度は高い。
このようなニッケルペーストより形成される乾燥膜のグロス値としては、150以上であることが好ましく、155以上であることがより好ましく、160以上であることがさらに好ましく、170以上であることがさらに好ましい。このグロス値は、ニッケルペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷した後、120℃で40分間、空気中で乾燥させて乾燥膜とし、その乾燥膜を直径40mmの円板状に切断し得られた試験膜に対して、入射角45°として、JIS Z−8741に準拠して携帯型分光測色計により測定することにより得られる値である。そして、このグロス値は、ニッケルペーストの分散性が良好で、形成される乾燥膜の表面が平滑であるほど、高くなる。
また、このようなニッケルペーストより形成される乾燥膜の密度としては、5g/cm3以上であることが好ましい。乾燥膜密度は、PETフィルム上に膜厚が30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、直径40mmの円盤状に切断し、その厚みと質量を測定し、算出される値である。
ニッケルペーストの粘度としては、回転数10rpmで測定した粘度が、20Pa・s以上60Pa・s以下であることが好ましい。なお、「粘度」とは、例えばB型粘度計で測定できる値をいう。
[ニッケル微粒子]
ニッケル微粒子は、当該ニッケルペーストの構成成分である。このようなニッケル微粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の用途として好適に用いることができる。
ニッケル微粒子は、当該ニッケルペーストの構成成分である。このようなニッケル微粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の用途として好適に用いることができる。
また、このようなニッケル微粒子は、例えばニッケル塩溶液に対してヒドラジン等の還元剤を用いた湿式還元法等のいわゆる液相法によって製造することができる。
ニッケル微粒子の粒径としては、平均粒径が100nm未満の超微粒のものであることが好ましい。平均粒子が100nm未満のニッケル微粒子を用いることにより、例えばMLCCの内部電極として近年要求される薄層化に対応することができるニッケルペーストを製造することができる。
ニッケル微粒子は、その粒子表面に厚さ(膜厚)1nm以上、より好ましくは5nm以上の酸化膜(酸化ニッケル)を備えることができる。粒子表面の酸化膜の厚さについては、用途に応じて適宜設定することができる。MLCC用としては、後工程に還元雰囲気での熱処理工程があるため特に限定されないが、例えば導電性に影響が生じない程度であれば20nm以下程度とすることができる。このような酸化膜により、平均粒径100nm以下の小粒径のものであっても、粒子同士の凝集をより効果的に防ぐことができ、凝集体の生成を防ぐことができる。
ニッケル微粒子の含有量としては、特に限定されず、例えば、ニッケル微粒子の質量と有機溶剤の質量の比(ニッケル微粒子:有機溶剤)が10〜90:90〜10であることが好ましい。
[分散移行促進剤]
分散移行促進剤は、ニッケル微粒子の表面に吸着してコートされ、ニッケルペースト中での分散性を向上させるように作用する。この分散移行促進剤としては、上述した陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤又は高分子構造を有する分散移行促進剤を使用することができる。ここで、ニッケル微粒子の表面は、塩基性の性質を有している。そのため、分散移行促進剤として陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤や高分子構造を有する分散移行促進剤を用いることによって、ニッケル微粒子の表面に効率的に吸着させることができ、分散性を向上させることができる。
分散移行促進剤は、ニッケル微粒子の表面に吸着してコートされ、ニッケルペースト中での分散性を向上させるように作用する。この分散移行促進剤としては、上述した陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤又は高分子構造を有する分散移行促進剤を使用することができる。ここで、ニッケル微粒子の表面は、塩基性の性質を有している。そのため、分散移行促進剤として陰イオン型界面活性剤構造を有する分散移行促進剤や高分子構造を有する分散移行促進剤を用いることによって、ニッケル微粒子の表面に効率的に吸着させることができ、分散性を向上させることができる。
本実施の形態に係るニッケルペーストにおいて、この分散移行促進剤の含有量としては、ニッケル粉100質量%に対して0.16質量%以上3.0質量%以下の範囲であることが好ましい。分散移行促進剤の含有量がニッケル微粒子100質量%に対して0.16質量%以上であることにより、ニッケル微粒子に対する吸着量を高めることができ、結果としてニッケル微粒子の分散性をより高めることができる。一方で、分散移行促進剤の含有量が3.0質量%以下であることにより、分散移行促進剤の量の増加に伴うニッケルペーストの粘度の変化を防止することができる。
[ビヒクル]
ニッケルペーストはビヒクルを含有させることができる。ビヒクルは、原料のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解させて得られるものである。このようなニッケルペーストでは、上述した分散移行促進剤を含有するとともに、特定のバインダー樹脂を含むビヒクルを含有させていることにより、ニッケル微粒子の表面に吸着した分散移行促進剤とビヒクルに含まれるバインダー樹脂とにより、そのニッケル微粒子の分散性を効果的に向上させることができ、ニッケル超微粒子を極めて凝集の少ない状態で分散させることができる。
ニッケルペーストはビヒクルを含有させることができる。ビヒクルは、原料のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解させて得られるものである。このようなニッケルペーストでは、上述した分散移行促進剤を含有するとともに、特定のバインダー樹脂を含むビヒクルを含有させていることにより、ニッケル微粒子の表面に吸着した分散移行促進剤とビヒクルに含まれるバインダー樹脂とにより、そのニッケル微粒子の分散性を効果的に向上させることができ、ニッケル超微粒子を極めて凝集の少ない状態で分散させることができる。
具体的に、バインダー樹脂としては、例えば、セルロース構造、セルロースエステル構造、及びセルロースエーテル構造から選ばれる構造を有し、カルボキシル基等の官能基(酸基)が導入されているものの、少なくとも1種類を用いることができる。
このように、バインダー樹脂としては、例えばカルボン酸等の官能基(酸基)が導入されたものであることが好ましく、その酸量が20μmol/g以上300μmol/g以下であるバインダー樹脂であることが好ましい。酸量が20μmol/g以上であることにより、ニッケル微粒子に対する吸着量を高めることができ、その結果としてニッケル微粒子の分散性をより高めることができる。一方で、バインダー樹脂の酸量が300μmol/g以下であることにより、作製するニッケルペーストの粘度の上昇を抑え、例えばMLCCの内部電極としてハンドリングの良い粘度を得ることができる。
ビヒクル中のバインダー樹脂の濃度としては、特に限定されないが、5質量%以上であることが好ましい。ビヒクルにおけるバインダー樹脂の濃度が5質量%以上であることにより、粘度の低下を抑制させることができる。
有機溶剤としては、上述したバインダー樹脂を溶解するものであれば特に限定されず、導電ペーストの用途に通常使用されているものを用いることができる。例えば、ニッケル有機スラリーの分散媒として上述した有機溶剤と同様のものを用いることができる。
[その他]
なお、本実施の形態に係るニッケルペーストには、その作用を損なわせない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、ニッケル微粒子の分散性をより向上させるための分散剤や、粘度を調整するための粘度調整剤、チクソ性を高めるためのレオロジーコントロール剤等を添加することができる。また、例えば、チタン酸バリウム等の誘電体等各種材料を共材として添加することもできる。
なお、本実施の形態に係るニッケルペーストには、その作用を損なわせない範囲で、必要に応じて種々の添加剤を含有させることができる。具体的には、ニッケル微粒子の分散性をより向上させるための分散剤や、粘度を調整するための粘度調整剤、チクソ性を高めるためのレオロジーコントロール剤等を添加することができる。また、例えば、チタン酸バリウム等の誘電体等各種材料を共材として添加することもできる。
≪3.ニッケル有機スラリー≫
本実施の形態に係るニッケル有機スラリーは、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケル有機スラリーであって、ニッケル有機スラリー中に含まれる粒子のメジアン径(D50)が700nm以下である。なお、このようなニッケル有機スラリーは、例えば、上述したようなニッケル有機スラリーの製造方法により得ることができる。
本実施の形態に係るニッケル有機スラリーは、少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケル有機スラリーであって、ニッケル有機スラリー中に含まれる粒子のメジアン径(D50)が700nm以下である。なお、このようなニッケル有機スラリーは、例えば、上述したようなニッケル有機スラリーの製造方法により得ることができる。
また、メジアン径としては、特に限定されないが、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、400nm以下であることがさらに好ましく、300nm以下であることが特に好ましい。メジアン径が小さいほど、乾燥膜の表面粗さが小さく、且つ乾燥膜密度が高くなり、MLCCの内部電極に用いられる材料として好適なものとなる。
このようなニッケル有機スラリーは、上述したようなニッケルペーストを製造するための原料として用いることができる。
以下では、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
≪評価方法≫
下記の実施例及び比較例に示す作製条件にて得られたニッケルペーストについて、以下の評価方法により評価を行った。
下記の実施例及び比較例に示す作製条件にて得られたニッケルペーストについて、以下の評価方法により評価を行った。
[粘度の評価]
作製したペーストをブルックフィールド社製粘度計にて、10rpmの粘度を測定し、20〜60Pa・sとなるものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)と評価した。
作製したペーストをブルックフィールド社製粘度計にて、10rpmの粘度を測定し、20〜60Pa・sとなるものを○(良好)、それ以外のものを×(不良)と評価した。
[表面粗さ(Ra)]
アプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上にNiペーストを塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、膜厚約3μmの乾燥膜を作製する。
アプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上にNiペーストを塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、膜厚約3μmの乾燥膜を作製する。
この乾燥膜について、位相シフト干渉方式による光学的な方法によって、表面の突起を測定した。具体的には、特定波長領域に限定された光源から光を、試料及びリファレンス鏡に照射し、試料及びリファレンス鏡に照射した光の干渉縞により表面状態を観察するもので、さらに言えば、試料を1/4波長ごとに光が照射される方向に移動させて光の干渉縞から表面状態を観察するものである。この乾燥膜の表面粗さは、光干渉式表面形状測定装置(日東光器株式会社製WYKO−NT1100)を用いて測定した。
[乾燥膜密度(DFD)]
乾燥膜密度は、ニッケルペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、直径40mmの円板状に切断し、その厚みと質量を測定し、算出した。
乾燥膜密度は、ニッケルペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、直径40mmの円板状に切断し、その厚みと質量を測定し、算出した。
[グロス測定(光沢度測定)]
グロスは、ニッケルペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、直径40mmの円板状に切断し得られた乾燥膜を、携帯型分光測色計(株式会社東洋精機製作所製BYKガードナー・スペクトローガイド45/0)を用いて測定した。グロス値が150以上を○(良好)、150未満を×(不良)と評価した。
グロスは、ニッケルペーストをPETフィルム上に5×10cmの面積で膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ、直径40mmの円板状に切断し得られた乾燥膜を、携帯型分光測色計(株式会社東洋精機製作所製BYKガードナー・スペクトローガイド45/0)を用いて測定した。グロス値が150以上を○(良好)、150未満を×(不良)と評価した。
[実施例1]
<(A)ニッケル水スラリー製造工程>
先ず、住友金属鉱山株式会社製のニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)(規格名:NR707、湿式還元法によるNi微粒子、平均粒径70nm)を出発原料として準備した。
<(A)ニッケル水スラリー製造工程>
先ず、住友金属鉱山株式会社製のニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)(規格名:NR707、湿式還元法によるNi微粒子、平均粒径70nm)を出発原料として準備した。
<(B)有機スラリー製造工程>
〔(B−1)解砕混合処理工程〕
次に、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を30g(ニッケル微粒子に対して30質量%)、分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を1g(ニッケル微粒子に対して1質量%)添加し軽く混ぜた後、エクセルオートホモジナイザー(日本精機社製)で周速10m/sの回転速度で2分間撹拌した。その後、撹拌処理したスラリーを減圧濾過で水とニッケル有機スラリーに分離し、ニッケル有機スラリーを得た。
〔(B−1)解砕混合処理工程〕
次に、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を30g(ニッケル微粒子に対して30質量%)、分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を1g(ニッケル微粒子に対して1質量%)添加し軽く混ぜた後、エクセルオートホモジナイザー(日本精機社製)で周速10m/sの回転速度で2分間撹拌した。その後、撹拌処理したスラリーを減圧濾過で水とニッケル有機スラリーに分離し、ニッケル有機スラリーを得た。
〔(B−2)評価工程〕
次に、得られたニッケル有機スラリーについて、転相状態と残存水分量を確認した。
転相状態は、熱質量測定TG−DTA2010SA(Bruker AXS製)により、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minとし20℃から300℃まで測定を行った。その結果、150℃までの減少に変曲点は無く、油中水滴(W/O)型エマルションであることを確認した。
次に、得られたニッケル有機スラリーについて、転相状態と残存水分量を確認した。
転相状態は、熱質量測定TG−DTA2010SA(Bruker AXS製)により、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minとし20℃から300℃まで測定を行った。その結果、150℃までの減少に変曲点は無く、油中水滴(W/O)型エマルションであることを確認した。
残留水分量は、電量滴定式カールフィッシャー水分計(京都電子工業製)により、測定した。窒素雰囲気下、180℃で、20分間保持し残留水分量を測定した。その結果、残留水分を測定した結果、0.75質量%と極めて少なかった。
<(C)高圧分散工程>
得られたニッケル有機スラリーにターピネオールを添加し3倍に希釈し、アルティマイザーシステムHJP25005(スギノマシン社製)を用いて分散処理を行った。チャンバーノズル径φ0.12mm、圧力150MPaで、3倍に希釈したニッケル有機スラリーを全量処理することをパス回数1回として、パス回数5回処理を行い、高分散のニッケル有機スラリーを得た。その結果、レーザー回折散乱法を用いて測定した個数基準のメジアン径(D50)が200nmであった。
得られたニッケル有機スラリーにターピネオールを添加し3倍に希釈し、アルティマイザーシステムHJP25005(スギノマシン社製)を用いて分散処理を行った。チャンバーノズル径φ0.12mm、圧力150MPaで、3倍に希釈したニッケル有機スラリーを全量処理することをパス回数1回として、パス回数5回処理を行い、高分散のニッケル有機スラリーを得た。その結果、レーザー回折散乱法を用いて測定した個数基準のメジアン径(D50)が200nmであった。
<(D)ペースト化工程>
得られた高分散のニッケル有機スラリーを、エバポレーターを用いて溶剤の量を1/3に濃縮した。ニッケルペーストの組成が、ニッケル微粒子46.8質量%、共材(チタン酸バリウム)10.5質量%、エチルセルロース3.5質量%、溶剤39.2質量%となるように、濃縮後のニッケル有機スラリーに、10質量%に調整した有機ビヒクル(エチルセルロース:ターピネオール=10:90)と共材を添加し、3本ロールで分散し、0号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を添加し、粘度調整を行い、ニッケルペーストを作製した。なお、0号ソルベントは飽和炭化水素を99体積%以上含み、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンを主成分として含むものである。
得られた高分散のニッケル有機スラリーを、エバポレーターを用いて溶剤の量を1/3に濃縮した。ニッケルペーストの組成が、ニッケル微粒子46.8質量%、共材(チタン酸バリウム)10.5質量%、エチルセルロース3.5質量%、溶剤39.2質量%となるように、濃縮後のニッケル有機スラリーに、10質量%に調整した有機ビヒクル(エチルセルロース:ターピネオール=10:90)と共材を添加し、3本ロールで分散し、0号ソルベント(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)を添加し、粘度調整を行い、ニッケルペーストを作製した。なお、0号ソルベントは飽和炭化水素を99体積%以上含み、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンを主成分として含むものである。
[実施例2]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を0.5g(ニッケル微粒子に対して0.5質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を0.5g(ニッケル微粒子に対して0.5質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例3]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を3g(ニッケル微粒子に対して3質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に分散移行促進剤としてオレオイルザルコシン(日油株式会社製)を3g(ニッケル微粒子に対して3質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例4]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を25g(ニッケル微粒子に対して25質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を25g(ニッケル微粒子に対して25質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例5]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を40g(ニッケル微粒子に対して40質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を40g(ニッケル微粒子に対して40質量%)添加したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例6]
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分40質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分40質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例7]
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分60質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分60質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例8]
高圧分散工程において、圧力200MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
高圧分散工程において、圧力200MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例9]
高圧分散工程において、圧力245MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
高圧分散工程において、圧力245MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例10]
高圧分散工程において、パス回数20回処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
高圧分散工程において、パス回数20回処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例11]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を10g(ニッケル微粒子に対して10質量%)添加したこと、及びエクセルオートホモジナイザーで32分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を10g(ニッケル微粒子に対して10質量%)添加したこと、及びエクセルオートホモジナイザーで32分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例12]
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を90g(ニッケル微粒子に対して90質量%)添加したこと、及びエクセルオートホモジナイザーで42分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分50質量%)に有機溶剤としてターピネオール(日本香料株式会社製)を90g(ニッケル微粒子に対して90質量%)添加したこと、及びエクセルオートホモジナイザーで42分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例13]
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分30質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分30質量%)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例14]
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分90質量%)を用いたこと、及びエクセルオートホモジナイザーで62分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
出発原料として、ニッケル微粒子水スラリー200g(水分90質量%)を用いたこと、及びエクセルオートホモジナイザーで62分撹拌したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例15]
分散移行促進剤として、親水基としてリン酸基を有し、親油基としてポリアミドを有する高分子分散剤(商品名:Solsperse36000、日本ルーブリゾール社製)を用いたこと以外、実施例3と同様にしてニッケルペーストを作製した。
分散移行促進剤として、親水基としてリン酸基を有し、親油基としてポリアミドを有する高分子分散剤(商品名:Solsperse36000、日本ルーブリゾール社製)を用いたこと以外、実施例3と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例16]
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し0.1mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し0.1mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例17]
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し1mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し1mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例18]
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し5mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し5mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例19]
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして10分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして10分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例20]
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして20分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして20分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例21]
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして30分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして30分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例22]
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し10mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数4回目終了後5回目開始前に、過酸化水素の添加量が、有機スラリー中のニッケル1gに対し10mlとなるように、85〜98質量%の過酸化水素水を添加してパス回数5回目の処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[実施例23]
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして30分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
パス回数5回目終了後に、有機スラリー1Lに対して130mg/hrとなるようにオゾン発生器を用いてオゾンを発生させ、このオゾンで有機スラリーをバブリングして30分酸化処理を施したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[比較例1]
有機スラリー製造工程において、分散移行促進剤を使用しなかったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリー製造工程において、分散移行促進剤を使用しなかったこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[比較例2]
有機スラリーに高圧分散処理を施さなかった(パス回数0回)こと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
有機スラリーに高圧分散処理を施さなかった(パス回数0回)こと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
[比較例3]
高圧分散工程において、圧力50MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
高圧分散工程において、圧力50MPaで、ニッケル有機スラリーを処理したこと以外、実施例1と同様にしてニッケルペーストを作製した。
表1に、実施例1〜23及び比較例1〜3におけるニッケルペーストの製造条件を示す。また、表2に、実施例1〜23及び比較例1〜3において得られたニッケルペーストの粘度、乾燥膜密度、表面粗さを測定した結果を示す。
以上の結果、有機スラリーに対し、高圧分散処理を施すことにより、高圧分散処理を施していない場合に比べ、ニッケル微粒子の粒径(D50)が小さく、凝集が少ないニッケルペーストを得ることができることが分かった。また、得られる乾燥膜表面のグロス値がより高い値を示したことから、ニッケル微粒子の分散性が極めて良好であることが分かった。
特に、有機スラリーに対し、酸化剤を加えた場合(実施例16〜23)にはニッケル微粒子の粒径(D50)が150nmと極めて小さく、より凝集が少ないニッケルペーストを得ることができることが分かった。
Claims (12)
- 液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、
前記水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、該有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、
前記有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、
分散処理を施した前記有機スラリーをペースト化するペースト化工程と、を有する
ニッケルペーストの製造方法。 - 前記水スラリー製造工程において、前記ニッケル微粒子に、前記水スラリー中の水含有量が30質量%以上90質量%以下となるように水を添加する
請求項1に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 前記有機スラリー製造工程において、前記水スラリーに、前記ニッケル微粒子100質量%に対して10質量%以上70質量%以下の有機溶剤を添加する
請求項1又は2に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 前記有機スラリー製造工程において、前記水スラリーに、前記ニッケル微粒子100質量%に対して0.1質量%以上3質量%以下の分散移行促進剤を添加する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 前記高圧分散工程において、酸化剤の存在下で分散処理を施す
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 前記高圧分散工程後に、前記ニッケル微粒子に酸化処理を施す
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 前記有機スラリー製造工程において、油中水滴型エマルション型の有機スラリーを製造する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 有機スラリー製造工程において得られる有機スラリー中の水含有量は、3質量%以下である
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のニッケルペーストの製造方法。 - 液相法により作製した粒径100nm未満のニッケル微粒子に水を添加して水スラリーを製造する水スラリー製造工程と、
前記水スラリーに、有機溶剤と分散移行促進剤を添加して、該有機溶剤のスラリーに置換して有機スラリーを製造する有機スラリー製造工程と、
前記有機スラリーに、100MPa以上の圧力下で分散処理を施す高圧分散工程と、を有する
ニッケル有機スラリーの製造方法。 - 少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケルペーストであって、
前記ニッケルペーストをアプリケーター(ギャップ厚5μm)を用いてガラス基板上に塗布後、120℃で5分間、空気中で乾燥させ、作成した膜厚3μmの乾燥膜について、光干渉式表面形状測定装置を用いて測定した場合の表面粗さが0.06μm以下である
ニッケルペースト。 - 前記ニッケルペーストを膜厚30μmとなるように印刷後、120℃で40分間、空気中で乾燥させ得られた乾燥膜を直径40mmの円板状に切断し、厚み及び質量を測定し、該厚み及び該質量より算出した乾燥膜密度が5g/cm3以上である
請求項10に記載のニッケルペースト。 - 少なくとも、ニッケル微粒子と、分散移行促進剤とを含有するニッケル有機スラリーであって、
前記ニッケル有機スラリー中に含まれる粒子のメジアン径(D50)が700nm以下である
ニッケル有機スラリー。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017024855 | 2017-02-14 | ||
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JP2017120822A Pending JP2018131681A (ja) | 2017-02-14 | 2017-06-20 | ニッケルペースト及びその製造方法、並びにニッケル有機スラリー及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2018131681A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023100503A1 (ja) * | 2021-12-01 | 2023-06-08 | 株式会社村田製作所 | 電子部品用ペースト |
-
2017
- 2017-06-20 JP JP2017120822A patent/JP2018131681A/ja active Pending
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WO2023100503A1 (ja) * | 2021-12-01 | 2023-06-08 | 株式会社村田製作所 | 電子部品用ペースト |
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