(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る映像表示システム10は、図1に示すように、例えば、空港施設、店舗、駅、及びホテル等、複数の人が出入りする施設に導入され、施設のユーザに対して映像Im1を表示するためのシステムである。
ここでいう「店舗」は、例えば、スーパーマーケット、百貨店、コンビニエンスストア、家電量販店、衣料品店、又はホームセンター等の小売店の店舗である。また、映像表示システムは、ショッピングモール又はショッピングセンターのように、複数の店舗(テナント)が入った施設に導入されてもよい。
本実施形態では、映像表示システム10が空港施設に導入される場合を例に説明する。この映像表示システム10は、施設(ここでは空港施設)の床面F1等の投影面に、映像Im1を投影することによって、映像Im1を表示する。ここでいう「映像」は、図形、コンピュータグラフィックス、写真、文字、数字、及び記号等の少なくとも1つの要素を含む映像であって、2つ以上の要素の組み合わせを含む映像であってもよい。さらに、「映像」は、モノクロ映像及びカラー映像のいずれでもよく、静止画及び動画のいずれでもよい。映像表示システム10によって表示(投影)される映像Im1は、例えば、広告又は案内等のための映像である。すなわち、映像Im1は、一例として、文字のみからなる広告用の映像、又は矢印等の記号のみからなる案内用の映像等である。
さらに、本実施形態では、映像表示システム10は、自律走行が可能なロボットである。そのため、映像表示システム10は、空港施設内を移動し、空港施設内の様々な場所において、投影面(例えば床面F1)に映像Im1を投影することが可能である。したがって、本実施形態に係る映像表示システム10によれば、空港施設の不特定のユーザに対して、例えば、広告又は案内のための情報を提示することが可能である。
(2)構成
以下、本実施形態に係る映像表示システム10の構成について詳しく説明する。
映像表示システム10は、図1及び図2に示すように、本体部1と、投影部2と、検知部3と、を備える。また、本実施形態では、映像表示システム10は、制御回路4と、駆動部5と、搬送部6と、ヒューマンマシンインタフェース7(HMI:Human Machine Interface)と、を更に備える。本実形態では、投影部2、検知部3、制御回路4、駆動部5、搬送部6、及びヒューマンマシンインタフェース7は、いずれも本体部1に搭載されている。
本体部1は、自律走行が可能なロボットである。本体部1は、投影面となる床面F1上を移動可能に構成されている。本体部1は、空港施設内に1台以上あればよく、空港施設の規模等に応じて複数台設けられていてもよい。本実施形態では、映像表示システム10の構成要素が全て本体部1に備わっており、個々の本体部1が独立した映像表示システム10を構成するので、本体部1が空港施設内に複数台あれば、空港施設内に複数の映像表示システム10が存在することになる。
本体部1は、図1に示すように、基台11と、一対の支柱12と、操作盤13と、を備えている。
基台11は、例えば、複数(例えば4つ)の車輪14(図1では1つの車輪のみを図示する)を有する。基台11の平面視の形状はV字状である。本実施形態では、基台11の(V字の)頂点部を本体部1の前端部とし、基台11の(V字の)二股に分かれた側の端部を本体部1の後端部として説明する。図1中の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。また、これらの方向は映像表示システム10の使用時の方向を限定する趣旨ではない。
複数の車輪14の各々は、例えば、オムニホイール等の全方向移動型車輪である。駆動部5は、これら複数の車輪14をそれぞれ駆動する電動モータ、及び電動モータを駆動するドライバ回路等を含んでいる。駆動部5が、これら複数の車輪14の各々を個別に駆動することにより、基台11は全方向に移動可能となる。つまり、本体部1は、駆動部5によって駆動されて、空港施設の床面F1上を、前、後、左、右の全方位に移動可能である。駆動部5は、制御回路4(後述する移動制御部41及び自律制御部43)から入力される制御信号に基づいて、複数の車輪14の各々を制御信号に応じた回転方向及び回転速度で駆動する。
基台11の前端部の上面には、後述する台車100(図9参照)を搬送するための搬送部6が設けられている。搬送部6は、本実施形態では、一例として、台車100の後部を持ち上げることにより、台車100を保持する機構である。
一対の支柱12は、基台11の後端部から上方に突出する。支柱12の上端部は、鉛直方向に対して傾斜している。操作盤13は、一対の支柱12の上端部間に跨るようにして、一対の支柱12にて支持されている。操作盤13には、例えば、タッチパネルディスプレイからなるヒューマンマシンインタフェース7が配置されている。ヒューマンマシンインタフェース7は、ユーザに対して表示及び音声等により情報を提示する出力部、ユーザからの入力を受け付ける入力部を兼ねている。
ここで、基台11の前端部及び後端部には、基台11の側方に向けて開放された3つの開口部111が形成されている。これら3つの開口部111の各々の内部には、基台11の側方に露出する形で、センサユニット311が配置されている。さらに、基台11の上面にも、センサユニット311が2つ配置されている(図7A参照)。これら計5つのセンサユニット311は、測域センサ(Laser Range Scanner)31を構成する。測域センサ31は、複数(ここでは5つ)のセンサユニット311の各々から、レーザ光等の光を出射し、光の出射から反射光を受光するまでの時間に基づいて、本体部1の周辺に設定される検知エリア内の物体の有無、及び物体までの距離を測定する。測域センサ31は、複数(ここでは5つ)のセンサユニット311の各々からのレーザ光の照射方向を、床面F1と平行な平面内で連続的に変化させることによって、本体部1から見て360度の略全方位について物体の検知が可能である。
また、操作盤13の上端部には、カメラ32が設けられている。カメラ32は、例えば、撮像素子とレンズ又は反射鏡等の光学系とを組み合わせて、全周方向を撮像可能に構成された全周カメラである。カメラ32は、本体部1において最も高い部位に配置されているので、本体部1自身による死角を少なくして、広範囲の画像を撮像することができる。つまり、カメラ32では、本体部1から見て360度の略全方位を撮像することが可能である。
また、本体部1に搭載された各部(後述する投影部2及び検知部3等を含む)の動作用電力は、本体部1に搭載されている充電式の電池15(図1参照)により確保される。電池15は、一例として、一対の支柱12の各々に設けられている。
投影部2は、本体部1に搭載されている。投影部2は、本体部1の周囲に存在する投影面(例えば床面F1)に映像を投影するように構成されている。ここで、投影面は、本体部1の周囲、つまり本体部1の周りであって、少なくとも本体部1(投影部2)からの光が届く範囲、言い換えれば本体部1から視認可能な範囲に存在していればよく、本体部1の至近距離に存在する面に限らない。本体部1(投影部2)からの光が届く範囲にあれば、例えば、本体部1から数十〔m〕離れた位置にある天井面C1(図3参照)、壁面等であっても、本体部1の周囲に存在する投影面になり得る。本実施形態では、投影部2は、操作盤13の下端部に配置されており、一例として、本体部1の後方に向けて映像Im1を投影する。つまり、投影部2が床面F1に映像Im1を投影する場合には、本体部1の後方の床面F1に映像Im1が投影される。
ここにおいて、投影面は、少なくとも第1面及び第2面を含む複数の面から選択される。第1面及び第2面は互いに面の向きが異なる面である。本実施形態では、一例として、第1面が空港施設の床面F1、第2面が空港施設の天井面C1であると仮定する。すなわち、投影部2からの映像Im1が投影される投影面には、少なくとも上方を向いた床面F1(第1面)、及び下方(鉛直方向)を向いた天井面C1(第2面)が含まれている。投影部2の動作モードは、第1面(床面F1)に映像Im1を投影する第1モードと、第2面(天井面C1)に映像Im1を投影する第2モードと、を有する。具体的には、投影部2は、モータ等の動力により投影部2の仰俯角を機械的に変化させる首振機構を有し、映像Im1(光)を出射する光学系(投影レンズ)の向きを上下方向に調節可能に構成されている。これにより、投影部2は、第1モードで動作中には光学系を下方に向けて、投影面としての床面F1に映像Im1を投影し、第2モードで動作中には光学系を上方に向けて、投影面としての天井面C1に映像Im1を投影する。
詳しくは「(3.1)基本動作」の欄で説明するが、映像表示システム10は、基本的には投影部2を第1モードで動作させて、投影面としての床面F1(第1面)に映像Im1を投影する。そのため、以下では、特に断りが無い限り、投影面は床面F1であることとして説明する。一方、映像表示システム10は、所定の切替条件を満たした場合、投影部2を第2モードで動作させることにより、投影面としての天井面C1(第2面)に映像Im1を投影する。ただし、投影面は、床面F1及び天井面C1に限らず、例えば、壁面を含んでいてもよい。
検知部3は、投影面(床面F1)において、映像Im1を投影するための対象領域A1の状態を検知するように構成されている。ここで、検知部3は、少なくとも対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態か否かを検知する。ここでいう「対象領域」は、投影面のうちで投影部2から映像Im1が投影される領域を意味する。つまり、投影面のうちの対象領域A1が、実際に映像Im1が投影されるスクリーンとして機能し、投影面であっても対象領域A1以外の領域には投影部2からの映像Im1は投影されない。例えば、平面状の投影面に映像Im1を投影する場合、投影面上において、投影される映像Im1が収まるサイズの平面領域があれば、この平面領域が対象領域A1を構成する。
検知部3は、このような対象領域A1が、本体部1から見通せる状態にあれば、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあると判断する。一方、本体部1と対象領域A1との間に何らかの障害物(人、小動物等の生物を含む)が存在し、対象領域A1が本体部1から見通せない状態にあれば、検知部3は、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないと判断する。対象領域A1上に物体が存在する、又は対象領域A1の一部に凸部若しくは凹部があって、映像Im1を投影するための平面領域(空きスペース)が確保されない場合にも、検知部3は、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないと判断する。よって、一例として、本体部1の周囲に人だかりができている場合等、映像Im1を投影するのに十分なスペースを本体部1の周囲の投影面(床面F1)上に確保できない状況であれば、対象領域A1の状態は映像Im1を投影可能な状態にないことがある。
対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合には、映像表示システム10は、例えば、投影部2にて別の場所に映像Im1を投影したり、映像Im1の投影を中断したりすることが可能である。また、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合に、映像表示システム10は、投影部2にて投影する映像Im1の大きさ又は形状等を変化させて、映像Im1を投影することも可能である。検知部3の検知結果に応じた、映像表示システム10の動作については、「(3.2)検知動作」の欄で詳しく説明する。
本実施形態では、検知部3は、上述した測域センサ31及びカメラ32を含んでいる。つまり、検知部3は、測域センサ31で計測された本体部1の周辺の物体(人、小動物等の生物を含む)の有無、及び物体までの距離等の情報、さらに、カメラ32で撮像された本体部1の周辺の画像情報を利用可能である。検知部3は、これらの情報に基づいて、投影面(床面F1)において、映像Im1を投影するための対象領域A1を検知する。
一例として、床面F1において本体部1の1.5〔m〕後方の地点を中心とする、半径0.5〔m〕の円形領域を対象領域A1とする場合、検知部3は、対象領域A1上、及び本体部1と対象領域A1との間の空間について、物体の有無を判断する。この空間に物体が存在しない場合、つまり、投影部2から対象領域A1が見通せる状態にある場合には、検知部3にて、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあることが検知される。一方、この空間に物体が存在する場合、つまり、投影部2から対象領域A1が見通せない状態にある場合には、検知部3にて、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知される。
制御回路4は、移動制御部41と、投影制御部42と、自律制御部43と、映像生成部44と、視線誘導部45と、を有している。本実施形態では、制御回路4は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、移動制御部41、投影制御部42、自律制御部43、映像生成部44、及び視線誘導部45等の機能が実現される。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
移動制御部41は、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合に、本体部1を移動させて対象領域A1の状態を映像Im1を投影可能な状態とするように、検知部3の検知結果に応じて、本体部1を制御する。すなわち、移動制御部41は、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知される場合、対象面(床面F1)上の別の場所に対象領域A1を確保するように、本体部1自体を移動させる。具体的には、移動制御部41は、検知部3の検知結果を受けて、駆動部5に対して制御信号を出力し、制御信号により駆動部5を制御する。これにより、複数の車輪14が駆動部5にて駆動され、本体部1は、床面F1上を制御信号に従って移動する。ここで、移動制御部41は、検知部3の検知結果から、制御後の対象領域A1の状態を確認し、制御後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態となるように、本体部1の移動経路も含めて、駆動部5の制御内容を決定することが好ましい。
投影制御部42は、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合に、映像Im1の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つを変化させて、対象領域A1を確保するように、検知部3の検知結果に応じて、投影部2を制御する。すなわち、投影制御部42は、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知される場合、対象面(床面F1)上の物体(障害物)を避けて対象領域A1を設定するように、投影される映像Im1を変形及び/又は移動させる。具体的には、投影制御部42は、検知部3の検知結果を受けて、投影部2に対して制御信号を出力し、制御信号により投影部2の光学系及び/又は駆動系を制御する。ここで、投影制御部42は、検知部3の検知結果から、制御後の対象領域A1の状態を確認し、制御後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態となるように、投影部2の制御内容を決定することが好ましい。
自律制御部43は、本体部1が自律的に移動するように本体部1を制御する。具体的には、自律制御部43は、駆動部5に対して制御信号を出力し、制御信号により駆動部5を制御する。これにより、複数の車輪14が駆動部5にて駆動され、本体部1は、床面F1上を制御信号に従って移動する。自律制御部43は、例えば、ジャイロセンサ、及びGPS(Global Positioning System)の出力を用いて、本体部1の現在位置を推定する。自律制御部43による本体部1の現在位置の推定には、例えば、カメラ32で撮像された本体部1の周辺の画像情報等が更に用いられてもよい。自律制御部43は、少なくとも、本体部1の現在位置に基づいて、目的地までの本体部1の移動経路を決定し(経路計画)、この移動経路に沿って本体部1が移動するように本体部1(駆動部5)を制御する。ここで、自律制御部43は、検知部3の検知結果を用いて、本体部1(駆動部5)の制御を行うことが好ましい。これにより、本体部1の自律走行が実現される。
映像生成部44は、投影部2にて投影される映像Im1を生成する。ここでは、一例として、映像Im1は、図形及び文字の組み合わせからなる広告用の映像(静止画)であることと仮定する。さらに、本実施形態では、映像生成部44は、映像Im1が、本体部1の現在の位置に関連する内容と、本体部1の移動経路に関連する内容と、本体部1の姿勢に関連する内容との少なくとも1つを表すように、自律制御部43に連動して映像Im1を生成する。ここでいう本体部1の「姿勢」は、本体部1自体の向き及び投影部2が映像Im1を投影する向き等を含んでいる。
一例として、映像生成部44で生成される映像Im1は、免税店Xの前では免税店Xに関する広告、免税店Yの前では免税店Yに関する広告となるように、本体部1の現在位置に関連して内容が変化する。さらに、映像生成部44は、本体部1の周辺に存在する人の属性情報(例えば年齢層及び性別等)に応じて、生成する映像Im1の内容を決定するリコメンド(recommend)機能を有していてもよい。
視線誘導部45は、投影部2によって投影される映像Im1に人の視線を誘導するための情報(以下、「誘導情報」ともいう)の提示を行う。視線誘導部45は、少なくとも投影部2の動作モードが第2モードである場合に、第2面(天井面C1)に視線を誘導するための誘導情報を提示するように構成されている。一例として、視線誘導部45は、本体部1の一対の支柱12の側面に設けられた発光部121(図7B参照)を制御することにより、誘導情報の提示を行う。視線誘導部45は、ヒューマンマシンインタフェース7又はその他のディスプレイにて、誘導情報を表示してもよいし、音声によって誘導情報を提示してもよい。
また、映像表示システム10は、本体部1の周辺に存在する人の属性情報(例えば国籍等)に応じて、生成する映像Im1中の言語を決定するように構成されていることが好ましい。具体的には、映像生成部44は、本体部1の周辺に存在する人の属性情報(例えば国籍等)に応じて、生成する映像Im1中の言語を決定する言語切替機能を有している。これにより、一例として、本体部1の周辺に英語圏の人が多く存在する場合には、映像Im1中の言語が英語となり、本体部1の周辺に日本語圏の人が多く存在する場合には、映像Im1中の言語が日本語となる。リコメンド機能及び言語切替機能を実現するために、映像生成部44は、例えば、カメラ32で撮像された本体部1の周辺の画像情報等を用いてもよい。さらには、空港施設における本体部1の現在位置(例えば、到着ロビー又は出発ロビー)が既知であれば、到着便の出発地、又は出発便の目的地等の情報により、本体部1の周辺の人の国籍が推定可能である。したがって、映像表示システム10は、これら到着便の出発地、又は出発便の目的地等の情報を、属性情報として、言語切替機能に利用することも可能である。これら到着便の出発地、又は出発便の目的地等の情報は、例えば、本体部1が空港施設の管理システム等から通信により随時取得してもよいし、本体部1に予め記憶されている発着便スケジュールから判断してもよい。
また、上記言語切替機能と同様の言語の切り替えは、ヒューマンマシンインタフェース7についても適用可能である。すなわち、ヒューマンマシンインタフェース7がユーザに対して提示する表示及び音声等の情報、及びヒューマンマシンインタフェース7がユーザからの入力を受け付ける情報の言語は、本体部1の周辺に存在する人の属性情報に応じて決定されてもよい。さらに、視線誘導部45にて提示される誘導情報についても、上記言語切替機能と同様の言語の切り替えを適用可能である。
また、映像表示システム10は、上記以外の構成、例えば、電池15の充電回路、又は通信部等を適宜備えている。通信部は、本体部1に搭載されており、例えば、電波を用いた無線通信により、本体部1の外部の通信装置と双方向に通信を行う。
(3)動作
以下、本実施形態に係る映像表示システム10の動作について説明する。
(3.1)基本動作
映像表示システム10は、定常時には、基本動作として、図3に示すように、投影部2を第1モードで動作させて、投影面としての床面F1(第1面)に映像Im1を投影する。本体部1は、自律走行可能に構成されているので、空港施設内の様々な場所で、床面F1に映像Im1を投影することができる。このとき、床面F1において映像Im1が投影される領域が対象領域A1となる。ここでは一例として、床面F1において本体部1の1.5〔m〕後方の地点を中心とする、半径0.5〔m〕の円形領域を対象領域A1とし、対象領域A1に画面形状が円形状の映像Im1を表示する場合を例示する。
さらに、投影部2は、本体部1が定位置に停止した状態で映像Im1を投影する構成に限らず、本体部1の移動(自律走行)中に、映像Im1を投影してもよい。本体部1の移動中に映像Im1が投影される場合、本体部1の移動に伴って、対象領域A1が床面F1上を移動することになる。
これにより、特定の人だけでなく、本体部1の周辺に位置する、つまり本体部1を取り巻くように位置する不特定の人から見えやすい映像を表示することが可能である。特に、表示される映像Im1が例えば広告等の映像である場合、少しでも多くの人の目に触れるように、特定の人だけでなく、不特定の人から見えやすい映像Im1を表示することが好ましい。
映像表示システム10は、映像Im1を常時表示(投影)する必要はなく、例えば、所定の時間帯、所定の場所に本体部1が存在する場合、又は本体部1の周辺に人が存在する場合等、特定の条件を満たす場合にのみ、映像Im1を表示してもよい。
(3.2)検知動作
次に、検知部3の検知結果に応じた、映像表示システム10の動作について説明する。
すなわち、例えば、床面F1において本体部1の後方に円形領域からなる対象領域A1が、本体部1から見通せる場合、検知部3にて、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあることが検知される。この場合、投影部2は「(3.1)基本動作」で説明したように、床面F1上の対象領域A1に映像Im1を投影する。
一方、例えば、図4に示すように、床面F1において本体部1の後方に円形領域からなる対象領域A1上に人H1が存在する場合、本体部1から対象領域A1を見通せず、検知部3にて、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知される。この場合、そのままの状態で投影部2が対象領域A1に映像Im1を投影しようとしても、投影部2からの光が対象領域A1上の人H1の足に遮られ、対象領域A1に映像Im1を投影することができない。図4では、投影部2が投影しようとしている映像Im1を想像線(二点鎖線)で表記している。検知部3での対象領域A1の状態の検知は、投影部2から映像Im1が投影されている状態で行われてもよいし、投影部2から映像Im1が投影される前に行われてもよい。本実施形態では一例として、投影部2から映像Im1が投影されている状態で、検知部3での対象領域A1の状態の検知が定期的に(例えば、1秒間隔で)行われることとする。
本実施形態に係る映像表示システム10では、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合の動作として、複数パターンの動作が可能である。そこで、以下に、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合の映像表示システム10の動作である、移動制御部41の動作、投影制御部42の動作、及び投影部2の動作モードの切り替え、の各々について説明する。
(3.2.1)移動制御部
まず、移動制御部41の動作について説明する。
対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知部3にて検知された場合、移動制御部41は、例えば、図5Aに示すように、本体部1を移動させて対象領域A1を確保する。図5Aでは、移動前の本体部1及び映像Im1を想像線(二点鎖線)で表記している。また、図5Aでは、本体部1の移動の向きを矢印で表記しているが、この矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
ここでは、移動制御部41は、検知部3の検知結果から、制御後の対象領域A1の状態を確認し、制御後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態となるように、本体部1の移動経路も含めて、駆動部5の制御内容を決定する。一例として、移動制御部41が、本体部1と本体部1の周辺の物体との現在の位置関係から、本体部1が現在の位置から左前方に1.2〔m〕移動すれば対象領域A1が確保できる、と判断した場合を想定する。この場合、移動制御部41は、図5Aに示すように、図4の状態から、本体部1を左前方に1.2〔m〕移動させることにより、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保される。つまり、本体部1が移動すれば、これに伴って、床面F1上を対象領域A1も移動する。そして、移動後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあれば、結果的に、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保されることになる。
(3.2.2)投影制御部
次に、投影制御部42の動作について説明する。
対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知部3にて検知された場合、投影制御部42は、例えば、図5Bに示すように、映像Im1の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つを変化させて、対象領域A1を確保する。図5Bでは、変化前の映像Im1を想像線(二点鎖線)で表記している。また、図5Bでは、映像Im1の大きさが変化する向きを矢印で表記しているが、この矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
ここでは、投影制御部42は、検知部3の検知結果から、制御後の対象領域A1の状態を確認し、制御後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態となるように、投影部2の制御内容を決定する。一例として、投影制御部42が、本体部1と本体部1の周辺の物体との現在の位置関係から、投影部2が投影する映像Im1を1/2のサイズに縮小すれば対象領域A1が確保できる、と判断した場合を想定する。この場合、投影制御部42は、図5Bに示すように、図4の状態から、映像Im1を1/2のサイズに縮小させることにより、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保される。つまり、投影部2が投影する映像Im1の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つが変化すれば、これに伴って、映像Im1を投影するための対象領域A1の大きさ、形状、及び位置の少なくとも1つも変化する。そして、変化後の対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあれば、結果的に、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保されることになる。
また、映像Im1の形状を変化させる場合の具体例として、投影制御部42は、例えば、本体部1の前後方向に長い映像Im1を、本体部1の左右方向に長い映像Im1に変化させることも可能である。投影制御部42は、円形状の映像Im1を、長方形状の映像Im1に変化させること等も可能である。
(3.2.3)動作モードの切り替え
次に、投影部2の動作モードの切り替えについて説明する。
対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知部3にて検知された場合、投影部2は、図6に示すように、床面F1を投影面とする第1モードから天井面C1を投影面とする第2モードに動作モードを切り替えて、対象領域A1を確保する。図6では、動作モードの切り替え前の映像Im1を想像線(二点鎖線)で表記している。また、図6では、映像Im1の投影方向が変化する向きを矢印で表記しているが、この矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
すなわち、映像表示システム10は、基本的には投影部2を第1モードで動作させて、投影面としての床面F1(第1面)に映像Im1を投影している。この状態で、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知部3にて検知されると、映像表示システム10は、投影部2の動作モードを第2モードに切り替えて、投影面としての天井面C1(第2面)に映像Im1を投影する。要するに、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないこと、を所定の切替条件とし、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知部3にて検知されると、投影部2は、切替条件を満たしたこととして動作モードを切り替える。したがって、投影面が床面F1から天井面C1に変更されることになり、変更後の投影面(天井面C1)において対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあれば、結果的に、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保されることになる。
ところで、投影部2の動作モードが急に切り替わり、投影面が床面F1(第1面)から天井面C1(第2面)に切り替わると、天井面C1に映像Im1が投影されていることに、本体部1の周辺の人が気付きにくいことが考えられる。そこで、本実施形態では、視線誘導部45が、少なくとも投影部2の動作モードが第2モードである場合に、第2面(天井面C1)に視線を誘導するための誘導情報を提示する。
具体的には、投影部2の動作モードが第1モードである間は、図7Aに示すように、視線誘導部45は特に誘導情報の提示(表示)を行わない。これに対して、投影部2の動作モードが第2モードである間については、視線誘導部45は、図7Bに示すように、第2面(天井面C1)に投影される映像Im1に人の視線を誘導するための誘導情報を発光部121にて提示(表示)する。図7Bの例では、本体部1の一対の支柱12の各側面に、複数の発光部121が設けられている。複数の発光部121の各々は、第2面(天井面C1)を指し示すように、上方に向いた矢印の形状に構成されている。
したがって、投影部2の動作モードが第1モードから第2モードに切り替わると、発光部121が点灯して、第2面(天井面C1)に投影される映像Im1に人の視線を誘導できる。視線誘導部45は、上下方向に並ぶ複数の発光部121を下方から順次点灯させる連鎖式点灯(シーケンシャル点灯)により、誘導情報を提示(表示)してもよい。
(3.2.4)小括
上述のように、映像表示システム10では、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合、移動制御部41の動作、投影制御部42の動作、及び投影部2の動作モードの切り替え、の少なくとも1つが実行される。これにより、映像Im1を投影するための対象領域A1が確保されることになる。
例えば、本体部1の周囲に存在する床面F1を投影面として映像Im1を投影する場合には、専用のスクリーンに映像を投影する投影する場合と異なり、床面F1上に存在する人の数及び位置等が変化し、投影面(床面F1)の状態が変化することが往々にある。そのため、投影面上に十分な対象領域A1を確保できない場合には、対象領域A1に投影される映像Im1の少なくとも一部が欠けたり、歪んだりして、正常な映像Im1が表示されないことがある。
本実施形態に係る映像表示システム10では、本体部1の周囲に存在する投影面(床面F1等)において、映像Im1を投影するための対象領域A1の状態を検知部3にて検知している。そのため、一例として、本体部1の周囲に人だかりができている場合等、床面F1からなる投影面において映像Im1を投影するのに十分な対象領域A1を確保できない場合、映像表示システム10は、別の場所に映像Im1を投影する等の措置をとることができる。したがって、本実施形態に係る映像表示システム10によれば、不特定の人から、より一層見えやすい映像を表示することができる。
ところで、対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にない場合の動作として、上述のように複数パターン(ここでは3パターン)の動作がある場合、これら複数パターンの動作には、優先順位が設定されていることが好ましい。本実施形態では一例として、移動制御部41の動作、投影制御部42の動作、及び投影部2の動作モードの切り替え、の順に優先順位が低くなることと仮定する。この場合における映像表示システム10の映像Im1の投影時の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
すなわち、映像表示システム10は、映像Im1の投影動作が開始すると、まず投影部2を第1モードで動作させ、投影面である床面F1(第1面)への映像Im1の投影を開始する(S1)。この状態において、映像表示システム10は、映像Im1が投影される対象領域A1の状態を検知部3にて検知する(S2)。このとき、検知部3で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態にあれば(S2:Yes)、投影部2は、映像Im1の投影を継続する(S9)。
ステップS2で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態になければ(S2:No)、移動制御部41が本体部1を移動させて対象領域A1を確保する(S3)。その後、映像表示システム10は、映像Im1が投影される対象領域A1の状態を検知部3にて検知する(S4)。このとき、検知部3で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態にあれば(S4:Yes)、投影部2は、映像Im1の投影を継続する(S9)。
ステップS4で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態になければ(S4:No)、投影制御部42が映像Im1の大きさ及び/又は形状を変化させて、対象領域A1を確保する(S5)。つまり、投影制御部42は、映像Im1の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つ(ここでは、映像Im1の大きさ及び/又は形状とする)を変化させる。その後、映像表示システム10は、映像Im1が投影される対象領域A1の状態を検知部3にて検知する(S6)。このとき、検知部3で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態にあれば(S6:Yes)、投影部2は、映像Im1の投影を継続する(S9)。
ステップS6で検知される対象領域A1の状態が、映像Im1を投影可能な状態になければ(S6:No)、投影部2は動作モードを第1モードから第2モードに切り替える(S7)。つまり、投影部2は、投影面である天井面C1(第2面)への映像Im1の投影を開始する。このとき、視線誘導部45が、天井面C1に視線を誘導するための誘導情報を提示(表示)することにより、本体部1の周辺の人の視線を天井面C1に投影された映像Im1に誘導(視線誘導)する(S8)。そして、投影部2は、映像Im1の投影を継続する(S9)。
映像表示システム10は、映像Im1の投影動作を継続中は、上記S1〜S9の処理を定期的に繰り返し行う。
ただし、図8のフローチャートは映像表示システム10の動作の一例に過ぎず、移動制御部41の動作、投影制御部42の動作、及び投影部2の動作モードの切り替え、の優先順位は適宜変更可能である。例えば、投影制御部42の動作、移動制御部41の動作、及び投影部2の動作モードの切り替え、の順に優先順位が低くなってもよい。
(3.3)台車搬送動作
本実施形態に係る映像表示システム10は、図9に示すように、本体部1にて台車100(カート、荷車)を搬送する機能を有している。要するに、映像表示システム10は、映像Im1の表示(投影)と、台車100の搬送と、の2つの機能を有している。本実施形態では、映像表示システム10が空港施設で使用されることを想定しているため、搬送対象となる台車100は、例えば、空港施設で使用されている手荷物用の荷物カートである。
本実施形態では、図9に示すように、本体部1に設けられた搬送部6が、一例として、台車100の後部を持ち上げることにより、台車100を保持するように構成されている。図9の例では、本体部1の前方に位置する台車100を、本体部1が後方から押すようにして搬送する。したがって、映像表示システム10では、搬送部6が台車100を保持した状態で、本体部1が自律走行することにより、台車100の搬送を行うことが可能である。
台車100の搬送動作には、大別して、使用されていない台車100を所定の場所に搬送する回収モードと、台車100のユーザを追従して台車100を搬送する追従モードと、の2つの動作モードがある。回収モード及び追従モードのいずれであっても、本体部1は、自律制御部43により制御され、自律的に移動する。追従モードにおいては、自律制御部43は、検知部3の検知結果等を利用して、先行するユーザの後を追いかけるように本体部1を移動させる。
回収モードにおいては、本体部1は、例えば、空港施設又は駐車場等に放置されている台車100を、カート置場等の所定の場所に搬送する。これにより、台車100の回収に掛かる人(空港職員等)の手間を低減できる。追従モードにおいては、本体部1は、台車100のユーザの動きに追従するように移動し、台車100のユーザの代わりに台車100を運ぶ。これにより、例えば、子供を抱えている、又は両手に荷物を持っている等、両手が塞がっている状態のユーザに代えて、台車100を搬送することができ、ユーザにとっての利便性が向上する。
ところで、本実施形態に係る映像表示システム10では、投影部2は、少なくとも搬送部6(本体部1)が台車100の搬送を行っていない待機期間において、対象領域A1に映像Im1を投影するように構成されている。
すなわち、上述したように、本体部1が台車100を搬送する機能を有する場合でも、本体部1は、常に台車100を搬送するのではなく、搬送対象となる台車100が無ければ台車100の搬送は行われない。本実施形態では、このように搬送部6(本体部1)が台車100の搬送を行っていない待機期間において、本体部1を有効に利用するべく、本体部1に搭載された投影部2にて映像Im1を投影する。これにより、台車100の搬送を行っている搬送期間は勿論のこと、台車100の搬送を行っていない待機期間についても、空港施設内を自律移動する本体部1を有効に利用することができる。
ただし、投影部2は、少なくとも待機期間に映像Im1を投影すればよく、待機期間にのみ映像Im1を投影してもよいし、待機期間及び搬送期間の両方において映像Im1を投影してもよい。
(3.4)案内動作
本実施形態に係る映像表示システム10は、本体部1にて、空港施設のユーザに対する案内(道案内等)を行う機能を有している。すなわち、本体部1がユーザに先行して目的地までの移動経路を移動し、かつ投影部2にて案内用の映像Im1を投影することにより、映像表示システム10は、本体部1の後ろを歩くユーザを目的地まで案内することが可能である。
この場合、本体部1は、自律制御部43により制御され、自律的に移動する。例えば、ヒューマンマシンインタフェース7にてユーザが所望する目的地が入力されると、自律制御部43は、目的地までの移動経路を決定する(経路計画)。自律制御部43は、経路計画で決定された移動経路に沿って本体部1が移動するように本体部1(駆動部5)を制御する。
このとき、映像生成部44は、経路計画で決定された移動経路に関連する内容の映像Im1を生成することが好ましい。具体例としては、映像生成部44は、「次の角で右折」、及び「50〔m〕直進」等のテキスト文を含む映像Im1を生成する。
また、映像生成部44で生成される映像Im1は、本体部1の姿勢に関連して内容が変化してもよい。例えば、本体部1の移動経路を映像Im1中の矢印にて示すような場合、進行方向に対して本体部1がどの方向を向いているかによって、ユーザからの矢印の見え方が変わることがある。具体例として、映像Im1の矢印が直進を示す場合、本体部1が進行方向に対して右方を向くと、ユーザからは矢印が直進ではなく右折を示しているように見える。このような場合、映像生成部44で生成される映像Im1は、例えば、本体部1の向きによって内容が変更される等、本体部1の姿勢に関連する内容であることが好ましい。
(4)変形例
実施形態1は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、映像表示システム10と同様の機能は、映像表示方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した記録媒体等で具現化されてもよい。
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
実施形態1では、投影部2が床面F1等の建造物の構造面を投影面とする場合について説明したが、この例に限らず、投影面は本体部1の周囲に存在する面であればよい。例えば、投影部2は、屋外の地面(地表面)、又は建造物の外壁面等を投影面として、投影面に映像Im1を投影してもよい。また、投影面は、平面に限らず、例えば、湾曲面等、所定の凹凸を有する立体面であってもよい。投影面が立体面である場合には、投影部2は、3Dプロジェクションマッピング技術を用いて、投影面に3次元映像を投影することが可能である。さらに、投影部2は、専用のスクリーンの表面を投影面として、スクリーンの表面に映像を投影してもよい。
また、映像表示システム10は、検知部3に含まれるカメラ32の検知結果を用いて、対象領域A1の状態について更に多様な検知を行うように構成されていてもよい。例えば、検知部3は、カメラ32で撮像された画像から、対象領域A1の色、光の反射率、又は表面粗さ等を判断して、対象領域A1の状態が映像Im1の投影に適した状態にあるか否かを判断してもよい。具体例として、対象領域A1が投影する映像Im1と同系色である場合、又は対象領域A1の光の反射率が規定値以下である場合等には、検知部3は、対象領域A1の状態が映像Im1の投影に適した状態にないと判断してもよい。さらに、検知部3は、カメラ32で撮像された画像を、映像生成部44で生成された映像Im1と比較することにより、実際に対象領域A1に投影された映像Im1の歪み等を検出し、対象領域A1の状態を検知してもよい。
また、投影部2は、検知部3のカメラ32で撮像された画像から抽出される、対象領域A1の色、又は光の反射率等の情報に応じて、投影する映像Im1の色合い及び/又は明るさ等を変化させてもよい。
また、投影部2は、本体部1の後方に向けて映像Im1を投影する構成に限らず、例えば、本体部1の前方に向けて映像Im1を投影してもよい。投影部2は、一対の支柱12の各側面に設けられていてもよく、この場合、本体部1の左方及び右方に向けて映像Im1を投影可能である。この構成では、台車搬送動作の追従モードのように本体部1が台車100のユーザを追従する場合、及び上述した案内動作のように本体部1がユーザに先行して移動する場合のいずれでも、ユーザから映像Im1が見えやすくなる。
また、映像表示システム10は、実施形態1のように、全ての構成要素を本体部1に一体に有する構成に限らず、一部の構成要素が分散して設けられていてもよい。例えば、投影部2と検知部3とが1つの筐体(本体部1)内に集約されていることは映像表示システム10に必須の構成ではなく、映像表示システム10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、例えば、検知部3等の個々の構成要素についても、1つの筐体内に集約されていることは映像表示システム10に必須の構成ではなく、個々の構成要素が複数の筐体に分散して設けられていてもよい。
映像表示システム10の一部の構成要素が分散して設けられる具体例として、本体部1から検知部3が省略され、施設(空港施設)に設けられた監視カメラが検知部3を構成してもよい。この場合でも、例えば、施設側の検知部3(監視カメラ)と本体部1との間で通信することにより、検知部3の検知結果を受けて本体部1は実施形態1と同様の動作を実現できる。また、映像表示システム10が複数の本体部1を備える場合、車両と車両との間(車車間)で直接的に通信する、いわゆるV2V(Vehicle to Vehicle)の通信技術を、複数の本体部1に適用してもよい。これにより、ある本体部1は、周辺に存在する他の本体部1から検知部3の検知結果を受信し、自身の検知部3の検知結果と併せて、対象領域A1の状態の検知に用いることができる。また、複数の本体部1が連携して、1つの映像Im1を投影することも可能である。
また、検知部3は、測域センサ31及びカメラ32の2種類のセンサを有する構成に限らず、1種類のセンサのみ、又は3種類以上のセンサを有していてもよい。さらに、検知部3は、測域センサ31及びカメラ32のように光学的に物体を検知するセンサに限らず、例えば、ToF(Time-of-Flight)方式の距離画像カメラ、超音波を検知に用いるソナーセンサ、電波を検知に用いるレーダ等を、有していてもよい。
また、視線誘導部45は、少なくとも投影部2の動作モードが第2モードである場合に誘導情報を提示すればよく、投影部2の動作モードが第1モードである場合にも誘導情報を提示する構成であってもよい。この場合、投影部2の動作モードが第1モードである間は、視線誘導部45は、第1面(床面F1)に視線を誘導するための誘導情報を提示する。
また、映像生成部44は投影制御部42によって制御されてもよい。この場合、投影制御部42は、投影部2が投影する映像Im1の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つを、映像生成部44にてソフトウェア的に変更することができる。さらに、投影制御部42が映像Im1の大きさ及び/又は形状を変化させる場合、映像生成部44が生成する映像Im1の内容も、映像Im1の大きさ及び/又は形状と併せて変更してもよい。
また、本体部1は、床面F1上を走行する構成に限らず、例えば、ドローンのように飛行により移動する構成であってもよい。
また、第1面が床面F1、第2面が天井面C1である場合について例示したが、これに限らず、例えば、第1面が天井面C1又は壁面、第2面が床面F1又は壁面であってもよい。さらに投影面は、少なくとも第1面及び第2面を含む複数の面から選択されればよく、3つ以上の面を含む複数の面から選択されてもよい。また、投影面は、第1面及び第2面を含む複数の面から選択されればよく、投影面が択一的に選択される構成に限らず、複数の面が同時に投影面として選択されてもよい。この場合、投影面となる複数の面に、投影部2からの映像Im1が同時に投影されることになる。この場合、映像Im1を投影する複数の面に対応して、投影部2が複数設けられてもよい。
また、実施形態1では、車輪14がオムニホイールである場合について説明したが、この構成に限らず、車輪14はメカナムホイール等であってもよいし、全方向移動型車輪でなくてもよい。
また、映像表示システム10は空港施設に限らず、例えば、店舗、駅、及びホテル等の施設に適用されてもよい。
上述した種々の変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
(実施形態2)
本実施形態に係る映像表示システム10Aは、図10に示すように、時間計測部46を更に備える点で、実施形態1に係る映像表示システム10と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略することもある。
時間計測部46は、検知部3により対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあると判断された累計時間を計測する。ここでいう「累計時間」は、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にあることが細切れで検知された場合には、これらの細切れの時間を合計(累計)した時間である。言い換えれば、投影部2が映像Im1を投影した総時間から、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知された時間を差し引いた時間が、累計時間として時間計測部46で計測される。本実施形態では、時間計測部46は、本体部1Aの制御回路4Aに設けられている。
時間計測部46で計測された累計時間を表す時間情報は、例えば、本体部1Aに搭載されている通信部から、本体部1Aの外部の管理装置に送信される。例えば、映像Im1が広告用の映像である場合には、累計時間は、広告主に対する課金計算に用いることができる。すなわち、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知された期間については、対象領域A1に投影される映像Im1の少なくとも一部が欠けたり、歪んだりして、正常な映像Im1が表示されない期間である。そのため、このような期間については課金の対象から外し、実質的に広告が表示された期間のみを課金対象とすることが好ましい。
要するに、本実施形態に係る映像表示システム10Aでは、実質的に映像Im1が表示された時間の長さに応じて課金等の措置をとることができる。したがって、検知部3にて対象領域A1の状態が映像Im1を投影可能な状態にないことが検知された場合に、別の場所に映像Im1を投影する等の措置をとることは必須ではない。検知部3の検知結果を課金等に反映させることにより、映像表示システム10Aのユーザ(広告主等)に対して、平等なサービスを提供することができる。
また、時間計測部46は、本体部1Aとは別に設けられていてもよい。例えば、本体部1Aの通信部と通信可能な管理装置等に時間計測部46が設けられていてもよい。この場合、本体部1Aの外部で累計時間を管理することが容易になる。
また、累計時間は、課金計算のためだけでなく、例えば、本体部1の稼働時間の管理等に用いられてもよい。
実施形態2に係る映像表示システム10Aの構成(変形例を含む)は、実施形態1(変形例を含む)の構成と適宜組み合わせ可能である。
上記各実施形態で示した図面は、映像表示システム10(10A)の一例を説明するための概念図に過ぎず、実際の態様とは、各部の形状、サイズ、及び位置関係等が適宜異なることもある。
(まとめ)
以上説明したように、本発明の第1の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、本体部(1,1A)と、投影部(2)と、検知部(3)と、を備える。本体部(1,1A)は、移動可能である。投影部(2)は、本体部(1,1A)に搭載されており、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面に映像(Im1)を投影する。検知部(3)は、投影面において、映像(Im1)を投影するための対象領域(A1)の状態を検知する。
この構成によれば、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面に映像(Im1)が投影されるので、特定の人だけでなく、本体部(1,1A)の周辺に位置する不特定の人から見えやすい映像(Im1)を表示することができる、という利点がある。しかも、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面において、映像(Im1)を投影するための対象領域(A1)の状態を検知部(3)にて検知している。例えば、本体部(1,1A)の周囲に人だかりができている場合等、投影面において映像(Im1)を投影するのに十分な対象領域(A1)を確保できない場合、映像表示システム(10,10A)は、別の場所に映像(Im1)を投影する等の措置をとれる。したがって、本態様によれば、不特定の人から、より一層見えやすい映像(Im1)を表示することができる。
本発明の第2の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1の態様において、移動制御部(41)を更に備える。移動制御部(41)は、対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にない場合には、本体部(1,1A)を移動させて対象領域(A1)を確保するように、検知部(3)の検知結果に応じて、本体部(1,1A)を制御する。
この構成によれば、例えば、本体部(1,1A)が人混みの中にある場合等で、対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にない場合に、本体部(1,1A)ごと移動することで、空きスペースに映像(Im1)の表示が可能になる。さらに、本体部(1,1A)が人混みを避けるように移動して映像(Im1)を投影可能すれば、映像(Im1)を見る人を、人混みから離れた場所へと誘導することにもつながる。その結果、映像表示システム(10,10A)は、空港施設等の施設内において、本来、あまり人が集まらない場所へと人を誘導することができ、施設内での人の分布の偏りを緩和し、施設内での人の流れをスムーズにすることにも寄与する。
本発明の第3の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1又は2の態様において、投影制御部(42)を更に備える。投影制御部(42)は、対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にない場合には、映像(Im1)の大きさ、形状、及び投影方向の少なくとも1つを変化させて、対象領域(A1)を確保するように、検知部(3)の検知結果に応じて、投影部(2)を制御する。
この構成によれば、対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にない場合に、例えば、映像(Im1)を縮小等することで、本体部(1,1A)の移動経路が確保できなくても、映像(Im1)の表示が可能になる。
本発明の第4の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1〜3のいずれかの態様において、本体部(1,1A)は、台車(100)を搬送するための搬送部(6)を有する。投影部(2)は、少なくとも搬送部(6)が台車(100)の搬送を行っていない待機期間において、対象領域(A1)に映像(Im1)を投影するように構成されている。
この構成によれば、搬送部(6)が台車(100)の搬送を行っていない空き時間(待機期間)を利用して、本体部(1,1A)に搭載された投影部(2)にて映像(Im1)を投影することが可能である。これにより、台車(100)の搬送を行っている期間は勿論のこと、台車(100)の搬送を行っていない待機期間についても、本体部(1,1A)を有効に利用することができる。
本発明の第5の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1〜4のいずれかの態様において、投影面は、互いに面の向きが異なる第1面及び第2面を含む複数の面から選択される。投影部(2)の動作モードは、第1面に映像(Im1)を投影する第1モードと、第2面に映像(Im1)を投影する第2モードと、を有する。
この構成によれば、投影部(2)は、動作モードによって、互いに面の向きが異なる第1面及び第2面のいずれに映像(Im1)を投影するかを切り替えることができる。したがって、例えば、対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にない場合に、投影部(2)が、映像(Im1)の投影先を第1面及び第2面間で切り替えて、空きスペースに映像(Im1)の表示が可能になる。
本発明の第6の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第5の態様において、投影部(2)によって投影される映像(Im1)に人の視線を誘導するための情報の提示を行う視線誘導部(45)を更に備える。視線誘導部(45)は、少なくとも投影部(2)の動作モードが第2モードである場合に、第2面に視線を誘導するための情報を提示するように構成されている。
この構成によれば、少なくとも第2面に映像(Im1)が投影されている際に、映像(Im1)に人の視線を向けさせることができる。したがって、例えば、映像(Im1)の投影先が第1面から第2面に切り替わった場合でも、本体部(1,1A)の周辺に位置する不特定の人から見えやすい映像(Im1)を表示することができる、という利点がある。
本発明の第7の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1〜6のいずれかの態様において、本体部(1,1A)が自律的に移動するように本体部(1,1A)を制御する自律制御部(43)を更に備える。
この構成によれば、本体部(1,1A)が自律的に移動するので、本体部(1,1A)の操作に掛かる人手を省略できる。
本発明の第8の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第7の態様において、映像生成部(44)を更に備える。映像生成部(44)は、映像(Im1)が、本体部(1,1A)の現在の位置に関連する内容と、本体部(1,1A)の移動経路に関連する内容と、本体部(1,1A)の姿勢に関連する内容との少なくとも1つを表すように、自律制御部(43)に連動して映像(Im1)を生成する。
この構成によれば、本体部(1,1A)の現在の位置、本体部(1,1A)の移動経路、及び本体部(1,1A)の姿勢の少なくとも1つに関連して好適な映像(Im1)を表示することができる。
本発明の第9の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1〜8のいずれかの態様において、検知部(3)により対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にあると判断された累計時間を計測する時間計測部(46)を更に備える。
この構成によれば、対象領域(A1)に投影される映像(Im1)の少なくとも一部が欠けたり、歪んだりして、正常な映像(Im1)が表示されない期間を除き、実質的に映像(Im1)が表示された時間を計測することができる。
本発明の第10の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、第1〜9のいずれかの態様において、前記本体部(1,1A)の周辺に存在する人の属性情報に応じて、前記映像(Im1)中の言語を決定するように構成されている。
この構成によれば、例えば、本体部(1,1A)の周辺に存在する人の国籍等の属性情報に応じて、映像(Im1)中の言語が決定されるので、映像(Im1)を見る人に合わせた言語を自動的に選択することができる。
第4の態様については、それ単独でも実施し得る態様であって、第1〜3のいずれかの態様を前提とすることは必須ではない。すなわち、第4の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、移動可能な本体部(1,1A)と、本体部(1,1A)に搭載されており、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面に映像(Im1)を投影する投影部(2)と、を備える。本体部(1,1A)は、台車(100)を搬送するための搬送部(6)を有し、投影部(2)は、少なくとも搬送部(6)が台車(100)の搬送を行っていない待機期間において、映像(Im1)を投影するように構成されている。
第6の態様については、それ単独でも実施し得る態様であって、第1〜5のいずれかの態様を前提とすることは必須ではない。すなわち、第6の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、移動可能な本体部(1,1A)と、本体部(1,1A)に搭載されており、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面に映像(Im1)を投影する投影部(2)と、を備える。投影面は、互いに面の向きが異なる第1面及び第2面を含む複数の面から選択される。投影部(2)の動作モードは、第1面に映像(Im1)を投影する第1モードと、第2面に映像(Im1)を投影する第2モードと、を有する。この映像表示システム(10,10A)は、投影部(2)によって投影される映像(Im1)に人の視線を誘導するための情報の提示を行う視線誘導部(45)を更に備える。視線誘導部(45)は、少なくとも投影部(2)の動作モードが第2モードである場合に、第2面に視線を誘導するための情報を提示するように構成されている。
第9の態様については、それ単独でも実施し得る態様であって、第1〜8のいずれかの態様を前提とすることは必須ではない。すなわち、第9の態様に係る映像表示システム(10,10A)は、本体部(1,1A)と、投影部(2)と、検知部(3)と、を備える。投影部(2)は、本体部(1,1A)に搭載されており、本体部(1,1A)の周囲に存在する投影面に映像(Im1)を投影する。検知部(3)は、投影面において、映像(Im1)を投影するための対象領域(A1)の状態を検知する。この映像表示システム(10,10A)は、検知部(3)により対象領域(A1)の状態が映像(Im1)を投影可能な状態にあると判断された累計時間を計測する時間計測部(46)を更に備える。この場合、映像表示システム(10,10A)において、本体部(1,1A)が移動可能であることは必須の構成ではなく、例えば、本体部(1,1A)が定位置に固定されてもよい。
第2〜10の態様に係る構成については、映像表示システム(10,10A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。