以下に説明する実施形態は、本発明の種々の実施形態の一つに過ぎない。本発明の実施形態は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外も含み得る。また、下記の実施形態は、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(1)概要
本実施形態に係る搬送システム100は、図1などに示すように、例えば空港施設で使用される手荷物用の荷物カート10を運ぶ複数(図1では2つ)の搬送装置1A,1Bを備えている。以下の説明において、個々の搬送装置についての内容を説明する場合は搬送装置1A,1Bと記載し、搬送装置1A,1Bに共通する内容を説明する場合は搬送装置1と記載する。
空港施設には、空港施設の利用者が荷物を運ぶために使用する荷物カート10が用意されている。利用者は、荷物カート10に荷物を載せて、目的地(例えば出発前の利用者の場合は手荷物検査場など、到着後の利用者の場合は建物の出口、バスなどの乗り場、駐車場など)まで荷物を運ぶことができる。利用者は、荷物カート10の利用を終えると、使い終わった荷物カート10をカート置き場に移動させるか、その場に放置する。また、利用者が荷物カート10をカート置き場の近くまで移動させるが、カート置き場からはみ出して置かれる場合もある。また、複数のカート置き場のうち特定のカート置き場に荷物カート10が集中して置かれる場合があり、このような場合には、多数の荷物カート10が置かれているカート置き場から、少数の荷物カート10しか置かれていないカート置き場へ荷物カート10を移動させる必要がある。特に空港施設では、出発口と到着口とが離れている場合があり、飛行機の発着のタイミングなどで人の流れが一方向に偏るため、荷物カート10を移動させる必要がある。
本実施形態の搬送装置1は、自律走行が可能なロボットである。搬送装置1は、例えば駐車場などのカート置き場に置かれている荷物カート10を集めて建物内のカート置き場まで移動させる作業や、カート置き場以外の場所に放置されている荷物カート10を集めて、所定のカート置き場まで移動させる作業を行う。
つまり、搬送装置1は、使用されていない荷物カート10を集めて所定の場所まで移動させる作業や、荷物カート10をユーザが使う頻度が高いカート置き場に他のカート置き場から移動させる作業などを無人で行う。
(2)詳細
(2.1)構成
搬送システム100は、荷物カート10を運ぶ作業を少なくとも行う搬送装置1を備えている(図1〜図3など参照)。以下では、図2などにおいて「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の矢印で示す通りに各方向を規定する。ただし、これらの方向は搬送装置1の使用時の方向を規定する趣旨ではない。図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
先ず、搬送装置1が移動させる荷物カート10(台車)について、図1、図2などを参照しながら説明する。荷物カート10は、金属製のパイプで組み立てられた第1フレーム110を備えている。第1フレーム110の前部の左右には、走行面50における任意の方向に移動可能な一対の車輪112が取り付けられている。第1フレーム110の後部の左右には、一対の車輪113が取り付けられている。ここにおいて、一対の車輪112と一対の車輪113とが並んでいる方向を荷物カート10の前後方向として説明する。
第1フレーム110の後部の左右からは一対の第2フレーム114が上側に向かって突出している。一対の第2フレーム114の上部には、U型のハンドル111の両端がそれぞれ取り付けられている。第1フレーム110の前部には、前方に突出する差込部115が設けられている。差込部115は、例えばU型に曲げられた金属棒からなり、差込部115の両端は第1フレーム110の前部に溶接などの方法で結合されている。
空港施設においては複数の荷物カート10が使用される。同じタイプの複数の荷物カート10は、前後方向において一部が重なるように連ねられる。すなわち、前側の荷物カート10の第2フレーム114,114の間に、別の荷物カート10の前側を後側から挿入することで、前側の荷物カート10と後側の荷物カート10とが前後方向において重なるように連ねられる(図1、図6など参照)。
次に、搬送装置1A,1Bについて図1〜図4などを参照して説明する。本実施形態の搬送システム100は2つの搬送装置1A、1Bを備えているが、2つの搬送装置1A,1Bの種類は同じである。なお、搬送システム100は3つ以上の搬送装置1を備えてもよく、搬送対象の荷物カート10の台数や搬送システム100が適用される施設の規模などに応じて、搬送装置1の数は適宜変更が可能である。
搬送装置1は、4つの全方向移動型車輪5を有する基台2を備えている。基台2の平面視の形状はV型である。基台2は、走行面50における任意の方向に移動が可能であるが、4つの全方向移動型車輪5が2個ずつに分かれて並んでいる方向を、基台2の前後方向として説明する。基台2の前部は、前側にいくにつれて左右方向の寸法が小さくなっている。基台2の後部には、左右方向の中央に凹部8が設けられている。基台2の後部は、凹部8によって左右方向において2つに分かれている。
4つの全方向移動型車輪5は例えばオムニホイールであり、4つの全方向移動型車輪5は基台2の前後に2個ずつ配置されている。基台2の移動方向及び移動速度に応じて、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度が個別に制御されており、基台2は全方向に移動可能である。
基台2の前部の上面には、図2及び図3に示すように、荷物カート10の第1フレーム110の一部を載せる載置台22が設けられている。載置台22は、昇降台221と、一対の支持枠222とを備える。
昇降台221は、基台2の上面と面一になる位置と、基台2の上面から上側に突き出た位置との間で、上下方向において移動可能である。昇降台221を上下方向に移動させる機構は、例えば昇降台221に上下方向に沿って設けられたラックと、ラックに噛み合うピニオンギアとで構成され、ピニオンギアの回転に応じて昇降台221が上側又は下側に移動する。
一対の支持枠222は昇降台221の左右に配置されている。一対の支持枠222は金属製の棒を逆U型に折り曲げて形成されている。支持枠222の中央部には、第1フレーム110の横桟116が嵌まる凹部223が設けられている(図2及び図8参照)。支持枠222は、中央部の両端からそれぞれ下向きに突出する一対の脚部を有しており、一対の脚部が昇降台221にそれぞれ固定されている。
基台2の後部において左右方向に2つに分かれた部位からは、それぞれ上側に突出する2つの支柱3,3が設けられている。支柱3,3の上部は、鉛直方向に対して斜めに傾斜しており、支柱3,3の上部は直方体状の表示装置4で連結されている。ここにおいて、基台2及び支柱3,3などから搬送装置1の本体部9が構成される。
表示装置4の上側面にはタッチパネル351が配置されている。タッチパネル351は、薄型のディスプレイ装置と、タッチパッドとを組み合わせて構成される。この種のディスプレイ装置には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどがある。タッチパッドは抵抗膜方式、静電容量方式などの入力装置である。
表示装置4の上部には、左右方向の中央に、全周カメラ32が設けられている。全周カメラ32は、撮像素子と反射鏡のような光学系とを組み合わせて、全周方向の画像を撮像可能なカメラである。全周カメラ32は、搬送装置1において最も高い部位に取り付けられている。したがって、全周カメラ32の視野に支柱3や表示装置4などが映り込みにくくなり、全周カメラ32は広範囲の画像を撮像することができる。
左右の支柱3の前側には、搬送装置1の電源であるバッテリが配置されている。左右の支柱3の前側にはバッテリを覆うカバー6が取り付けられている。
基台2において、前端部の側面と、二股に分かれた後端部の側面とには、それぞれ開口21が設けられている。基台2の内部には、開口21に臨むように測域センサ(Laser Range Scanner)31が配置されている。また、基台2の上面にも、2個の測域センサ31が左右両側に配置されている。
測域センサ31は、例えばレーザ光などの光を周囲に照射し、反射光を受光するまでの時間をもとに、測域センサ31の周囲にある物体までの距離を測定する。測域センサ31は、例えば、レーザ光の照射方向を、走行面50と平行な平面内でスイープさせることによって、所定の角度範囲において測域センサ31から物体までの距離を測定する。
本実施形態の搬送装置1は5つの測域センサ31を備えている。5つの測域センサ31は、搬送装置1の低い位置に配置され、走行面50と平行な方向にレーザ光を照射しており、搬送装置1の周囲にある物体までの距離を全周方向で測定することができる。なお、測域センサ31の個数及び配置は適宜変更が可能である。測域センサ31は、レーザ光でスキャニングを行うセンサに限定されず、超音波でスキャニングを行うセンサでもよい。
図4は、搬送装置1の機能を説明するブロック図である。搬送装置1は、制御部30と、上記の測域センサ31と、上記の全周カメラ32と、通信部33と、駆動部34と、ヒューマンマシンインタフェース(HMI:Human Machine Interface)35とを備えている。
搬送装置1は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを備えたマイクロコンピュータを備えている。CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することによって、制御部30の機能を実現する。CPUが実行するプログラムは、インターネットなどの電気通信回線を通じて、あるいはメモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されるが、マイクロコンピュータのメモリにあらかじめ記録されていてもよい。
通信部33は、無線局の免許が不要な小電力無線の通信インタフェースを備える。この種の小電力無線については、用途などに応じて使用する周波数帯域や空中線電力などの仕様が各国で規定されている。日本国においては、920MHz帯、420MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯などの電波を使用する小電力無線(特定小電力無線)が規定されている。なお、通信部33は、小電力無線の通信インタフェースに限定されず、適宜変更が可能であり、例えばZigBee(登録商標)規格に準拠した通信インタフェース、Bluetooth(登録商標)規格に準拠した通信インタフェースなどでもよい。
通信部33は、他の搬送装置1と通信可能であり、搬送装置1の動作状態を示す状態信号を通信(送信及び受信)するために用いられる。また、通信部33は、空港施設の管理者が使用する携帯端末(例えばタブレット型のコンピュータ、スマートフォンなど)との無線通信にも用いられる。
駆動部34は、4つの全方向移動型車輪5をそれぞれ駆動する電動モータ、及び、電動モータを駆動するドライバ回路などを備えている。駆動部34は、制御部30から入力される制御命令に基づいて、4つの全方向移動型車輪5を制御命令に応じた回転の向き及び回転速度でそれぞれ回転させる。
HMI35は上述したタッチパネル351を備えている。HMI35は、搬送装置1の使用者(例えば、空港施設の管理者や利用者など)に対して情報を出力したり、搬送装置1の使用者からの入力を受け付けたりする。
制御部30は、基台2の走行状態を制御する機能や、判別部36などの機能を備えている。
制御部30は、測域センサ31の検知結果、全周カメラ32で撮像された画像などに基づいて、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を決定する。複数の搬送装置1が車列40を移動させている場合、複数の搬送装置1の制御部30は、一緒に車列40を移動させている他の搬送装置1から受信した状態情報に基づいて、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を決定してもよい。制御部30は、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を決定すると、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を別個に制御する制御命令を駆動部34に出力する。また、判別部36は、全周カメラ32が撮像した画像をもとに、荷物カート10が使用中であるか否かを判別する。
制御部30は、空港施設の管理者から荷物カート10の回収命令が与えられると、使用中ではない荷物カート10を集めて、所定のカート置き場まで移動させる回収作業を行う。
(2.2)動作
本実施形態の搬送システム100において、搬送装置1が、使用中ではない複数の荷物カート10を回収して、カート置き場などの目的地に移動させる動作について、図1,図5〜図9などを参照して説明する。以下の説明において、複数の荷物カート10を集める際の搬送装置1の動作は一例であり、搬送装置1の使用環境や使用目的や使用方法などに応じて、搬送装置1の動作は適宜変更が可能である。
搬送システム100が備える複数の搬送装置1は、空港施設が営業を終了している時間帯などの休止時間になると、空港施設内であらかじめ設定された保管場所に移動する。空港施設の管理者はこの休止時間に搬送装置1のバッテリを充電したり、搬送装置1のメンテナンスを行ったりする。
空港施設の管理者が、搬送装置1A,1Bのタッチパネル351を操作して搬送装置1A,1Bを起動させ、荷物カート10の回収命令を搬送装置1のHMI35を用いて入力すると、搬送装置1A,1Bは荷物カート10の回収作業を開始する。なお、空港施設の管理者は、搬送装置1と無線通信が可能な携帯端末を用いて、荷物カート10の回収命令を搬送装置1に指示してもよい。空港施設の管理者が、荷物カート10の回収を搬送装置1A,1Bに指示する回収命令を携帯端末に入力すると、携帯端末から搬送装置1A,1Bに回収命令が無線送信され、搬送装置1A,1Bが荷物カート10の回収作業を開始する。
本実施形態では、搬送装置1Aと搬送装置1Bとがペアリングされ、搬送装置1Aと搬送装置1Bとが協調して荷物カート10の回収作業を行う場合を例に説明する。搬送装置1A,1Bの各々では、制御部30が、通信部33を制御して動作状態を示す状態情報を相互に通信することによって、他の搬送装置1と協調しながら、荷物カート10の回収作業を行う。ここでは、搬送装置1A,1Bが、第1地点(例えば、空港施設の駐車場のカート置き場など)に置かれている荷物カート10を、第2地点(例えば、空港施設の建物内のカート置き場)に移動させる場合について説明する。
先ず、搬送装置1A,1Bは、現在位置(例えば保管場所)から第1地点(駐車場のカート置き場)に移動する。空港施設には、それぞれビーコン信号を定期的に発信する複数のビーコン送信器が配置されている。ビーコン信号には、送信元のビーコン送信器のID(Identify)情報などが含まれている。搬送装置1の制御部30のメモリには、空港施設の地図データと、複数のビーコン送信器のID情報とその設置場所の位置情報とが保存されている。搬送装置1の制御部30は、通信部33が受信した1又は複数のビーコン信号に基づいて、現在位置を求めることができ、現在位置と地図データをもとに現在位置から行き先(ここでは、第1地点)までの移動経路を決定する。なお、搬送装置1の制御部30は、全周カメラ32で撮像された画像の情報に基づいて、現在位置を取得してもよい。また、搬送装置1が、周囲の距離画像を撮像する距離画像センサを備え、距離画像センサで撮像された距離画像の情報に基づいて現在位置を取得してもよい。また、搬送装置1の制御部30は、全周カメラ32で撮像された画像の情報又は距離画像センサで撮像された距離画像の情報と、ビーコン送信器から受信するビーコン信号との一方又は両方に基づいて現在位置を取得してもよい。
また、搬送装置1の制御部30は、測域センサ31の検知結果及び全周カメラ32で撮像された画像の情報などに基づいて、搬送装置1の周囲にある物体を検出する。搬送装置1の制御部30は、現在位置から第1地点までの移動経路を決定すると、搬送装置1の周囲ある物体を避けながら、決定した移動経路にしたがって走行するように、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を決定する。搬送装置1の制御部は、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を決定すると、駆動部34に制御命令を出力して、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を制御する。
2つの搬送装置1A,1Bが、第1地点である駐車場のカート置き場60(図5参照)の近くに到着すると、搬送装置1Aの制御部30は、駆動部34を制御して第1地点の近くで停止する。搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bへ、カート置き場から荷物カート10を集めるように指示する無線信号を無線送信する。搬送装置1Bの通信部33が搬送装置1Aから送信された無線信号を受信すると、搬送装置1Bの制御部30は、通信部33の受信した無線信号にしたがって、カート置き場60に置かれている荷物カート10を集める作業を開始する。
カート置き場60には複数(図5では5つ)の荷物カート10が置かれている。搬送装置1Bは、カート置き場60に置かれている複数の荷物カート10を1台ずつ搬送装置1Aのところまで移動させる。搬送装置1Bの制御部30は、全周カメラ32で撮像された画像をもとに、カート置き場60に置かれている荷物カート10の位置を把握する。搬送装置1Bの制御部30は、全周カメラ32が撮像した画像をもとに、パターンマッチングなどの画像処理を行って荷物カート10の位置を検出する。
搬送装置1Bの制御部30は、駆動部34に制御命令を出力し、カート置き場60に置かれている複数の荷物カート10のうち最後尾の荷物カート10の後方に搬送装置1Bを移動させる。搬送装置1Bの制御部30が、搬送装置1Bを最後尾の荷物カート10に向かって前進させると、基台2の前部が最後尾の荷物カート10の第2フレーム114,114の間に入り込む(図5参照)。搬送装置1Bの制御部30は、測域センサ31の検知結果と全周カメラ32で撮像された画像とに基づいて、基台2の前部が荷物カート10の後部に入り込んだと判断すると、駆動部34を制御して搬送装置1Bを停止させる。搬送装置1Bの制御部30は、基台2の前部が荷物カート10の後部に入り込んだ状態で、昇降台221を上昇させる。昇降台221が上昇すると、一対の支持枠222の凹部223に第1フレーム110の横桟116が嵌まった状態となり(図8参照)、最後尾の荷物カート10の一部(横桟116)が搬送装置1Bの載置台22に引っ掛かった状態となる。図8では、図示を簡単にするため、荷物カート10の数を1台としている。本実施形態では、支持枠222の凹部223に第1フレーム110の一部(横桟116)が嵌まっているが、荷物カート10の第1フレーム110の一部に引っ掛かるフックを搬送装置1が備えていてもよい。
搬送装置1Bの制御部30は、支持枠222に第1フレーム110の一部が引っ掛かると、駆動部34に制御命令を出力して、基台2を後進させる。基台2が後進すると、基台2と共に最後尾の荷物カート10が後進し、この荷物カート10がカート置き場60から引き出される。なお、搬送装置1Bの制御部30は、基台2の一部が荷物カート10の下側に入り込んでいる状態で、支持枠222に荷物カート10の一部を載せる前に基台2を後進させてもよい。基台2が後進すると、基台2と一緒に荷物カート10が後進することで、荷物カート10の前側の車輪112の向きを揃えた状態にすることができる。
搬送装置1Bの制御部30は、カート置き場60から引き出した荷物カート10を、搬送装置1Aの所まで移動させるように駆動部34に制御命令を出力して、基台2を移動させる(図6参照)。なお、搬送装置1Bは、カート置き場60から引き出した荷物カート10を後ろに引きながら搬送装置1Aの近くまで運び、搬送装置1Aの近くで回転してもよい。搬送装置1Bの制御部30は、全周カメラ32で撮像された画像に基づいて、搬送装置1Aの支柱3,3の間に、荷物カート10の前側の差込部115が挿入されたと判断すると、駆動部34を制御して基台2を停止させる。また、搬送装置1Bの制御部30は、昇降台221を下降させて、第1フレーム110から支持枠222が離れた状態として、荷物カート10の第1フレーム110を搬送装置1Bから離れた状態とする。
その後、搬送装置1Bの制御部30は、カート置き場60から次の荷物カート10を取り出すために、駆動部34に制御命令を出力して、基台2をカート置き場60に向かって移動させる。搬送装置1Bは、上記の動作を繰り返すことによって、カート置き場60から荷物カート10を1台ずつ引き出し、搬送装置1Aの所まで移動させる。搬送装置1Bは、搬送中の荷物カート10の前部が、搬送装置1Aの後ろに連なっている荷物カート10の後部に重なるように(つまり、複数の荷物カート10がスタッキングされるように)、搬送中の荷物カート10を移動させる。なお、搬送装置1Bは、カート置き場60から引き出した荷物カート10を後ろに引きながら搬送装置1Aの近くまで運び、搬送装置1Aの近くで回転して、車列40に加えてもよい。
搬送装置1Bは、カート置き場60から最後の荷物カート10を引き出し、搬送装置1Aの後ろに連なっている荷物カート10の後ろに、搬送中の荷物カート10が連なるように、荷物カート10を移動させると、その場で停止する(図1及び図7参照)。このとき、2つの搬送装置1A,1Bは、複数の荷物カート10が一列に並んだ車列40を間に挟んだ状態となり、搬送装置1Bの制御部30は、通信部33から搬送装置1Aに、荷物カート10を全て集めたことを通知する通知信号を無線送信する。搬送装置1Aの通信部33が搬送装置1Bから送信された通知信号を受信すると、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bへ、第2地点(所定のカート置き場)への移動開始を通知する通知信号を無線送信する。これにより、搬送装置1A,1Bの制御部30は、駆動部34を制御して走行を開始し、搬送装置1Aの本体部9と搬送装置1Bの本体部9と間に荷物カート10の車列40を挟んだ状態で走行することによって、車列40を移動させる。
ここで、車列40の前側にいる搬送装置1Aの制御部30は、ビーコン送信器から受信するビーコン信号をもとに現在位置を求めて、現在位置から目的地(ここでは、第2地点)までの移動経路を決定する。また、搬送装置1Aの制御部30は、測域センサ31の検出結果と全周カメラ32の画像とに基づいて、周囲にある物体を検出する。搬送装置1Aの制御部30は、搬送装置1Aの周囲にある物体を避けながら、決定した移動経路にしたがって走行するように、移動方向を修正し、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を制御する。また、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bに、搬送装置1Aの動作状態として移動方向及び移動速度などの情報を通知する状態情報を無線送信する。
搬送装置1Bの通信部33が搬送装置1Aから状態情報を受信すると、搬送装置1Bの制御部30は、通信部33が受信した状態情報に基づいて、駆動部34に制御命令を出力し、搬送装置1Aの動きに追従するように、4つの全方向移動型車輪5の回転の向き及び回転速度を制御する。ここにおいて、搬送装置1A,1Bの間には車列40が挟まれているので、搬送装置1Aが移動方向を変える場合、後ろ側の搬送装置1Bの制御部30は、車列40の長さ、つまり荷物カート10の台数に応じた内輪差を考慮して移動方向などを決定するのが好ましい。なお、車列40の後に並ぶ搬送装置1Bから、車列40の前に並ぶ搬送装置1Aに対して、移動方向及び移動速度などの情報を通知する状態情報を無線送信してもよい。車列40の前に並ぶ搬送装置1Aの通信部33が、搬送装置1Bから状態情報を受信すると、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33が受信した状態情報に基づいて、走行状態を制御してもよい。
搬送装置1A,1Bが、搬送装置1A,1Bの間に車列40を挟んだ状態で目的地(第2地点)まで移動すると、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bに、目的地への到着を通知する通知信号を無線送信する。搬送装置1Bの通信部33が搬送装置1Aから送信された通知信号を受信すると、搬送装置1Bの制御部30は、通信部33から搬送装置1Aに応答信号を送信するとともに、駆動部34に制御命令を出力して搬送装置1Bを停止させる。これにより、複数の荷物カート10の車列40が第2地点で停止する。その後、搬送装置1Aの制御部30は、駆動部34に制御命令を出力して搬送装置1Aを前進させ、搬送装置1Bの制御部30は、駆動部34に制御命令を出力して搬送装置1Bを後進させる。したがって、車列40を第2地点まで移動させた後に、搬送装置1A,1Bは車列40から離脱することができ、別の荷物カート10を移動させる作業を行うことができる。
ところで、上記の実施形態では、2つの搬送装置1A,1Bがカート置き場60に置かれている荷物カート10を別のカート置き場に移動させる作業を行っているが、空港施設内に放置されている荷物カート10を集めて、所定のカート置き場まで運んでもよい。ここでは、搬送装置1A,1Bがペアリングされており、搬送装置1A,1Bが協調して荷物カート10を運ぶ作業を行う場合について説明する。
搬送装置1A,1Bは、空港施設内であらかじめ設定された区域、又は空港施設の管理者が携帯端末などを用いて指示した区域において、使用中ではない荷物カート10を探している。搬送装置1A,1Bは、空港施設内の複数の区域を担当し、複数の区域を順番に移動し、各々の区域で使用中ではない荷物カート10を回収する作業を行ってもよい。
搬送装置1の全周カメラ32は搬送装置1の周囲を撮像しており、搬送装置1の判別部36は、全周カメラ32が撮像した画像をもとに、パターンマッチングを行って荷物カート10を検出し、さらに荷物カート10に荷物が載っているか否かを検出する。荷物カート10に荷物が載っている場合、搬送装置1は、この荷物カート10が使用者によって使用されていると判断する。荷物カート10に荷物が載っていない場合、判別部36は、この荷物カート10が停止している停止時間をカウントする。判別部36は、停止時間が所定の判定時間を超えると、この荷物カート10が使用中ではないと判断する。
例えば、搬送装置1Bの判別部36が荷物カート10を検出し、この荷物カート10が使用中ではないと判断すると、搬送装置1Bの制御部30は、荷物カート10の回収作業を開始する状態情報と、搬送装置1Bの位置情報とを含めた送信信号を作成する。そして、搬送装置1Bの制御部30は、作成した無線信号を、通信部33から搬送装置1Aに無線送信させる。
搬送装置1Aの通信部33が、搬送装置1Bから送信された無線信号を受信すると、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bに応答信号を無線送信させ、駆動部34を制御して、搬送装置1Aを搬送装置1Bがいる場所まで移動させる。
搬送装置1Bの制御部30は、全周カメラ32で撮像された画像などに基づいて、回収対象の荷物カート10の位置を特定し、駆動部34を制御して搬送装置1Bを回収対象の荷物カート10の後方位置に移動させる。さらに、搬送装置1Bの制御部30は、駆動部34を制御して、回収対象の荷物カート10に後方から近付き、荷物カート10の一対の第2フレーム114の間に、基台2の前部が入り込む位置に、搬送装置1Bを移動させる。搬送装置1Bの制御部30は、搬送装置1Bで荷物カート10を押して、この荷物カート10を搬送装置1Aがいる場所まで押していき、搬送装置1Aの一対の支柱3の間に荷物カート10の差込部115を挿入させる。
搬送装置1Bの判別部36が、全周カメラ32によって撮像された画像をもとに、放置されている別の荷物カート10を検出していれば、搬送装置1Bの制御部30は、上記の作業を繰り返して、搬送装置1Aの後ろに連なっている荷物カート10の後ろに別の荷物カート10を連ねる。すなわち、搬送装置1Bが、搬送装置1Aの後ろに連なっている荷物カート10の後部に、搬送中の荷物カート10の前部が入り込むように、荷物カート10を後ろから押して、荷物カート10を移動させる。搬送装置1Bが、回収作業を行っている区域内で、放置されている荷物カート10を全て回収すると、搬送装置1Bの制御部30は、荷物カート10の車列40の後ろ側で停止する(図1及び図7参照)。このとき、2つの搬送装置1A,1Bは、複数の荷物カート10が一列に並ぶ車列40を間に挟んだ状態となり、搬送装置1Bの制御部30は、通信部33から搬送装置1Aに、荷物カート10を全て集めたことを通知する通知信号を無線送信する。搬送装置1Aの通信部33が搬送装置1Bから送信された通知信号を受信すると、搬送装置1Aの制御部30は、通信部33から搬送装置1Bへ、所定の移動先(例えば所定のカート置き場など)への移動開始を通知する通知信号を無線送信する。これにより、搬送装置1A,1Bの制御部30は、駆動部34を制御して走行を開始し、搬送装置1Aと搬送装置1Bとの間に荷物カート10の車列40を挟んだ状態で走行することによって、車列40を移動させる。
上記実施形態では、複数の搬送装置1A,1Bの種類が同じである。したがって、搬送装置1A,1Bは、車列40の前側について車列40の進行方向を制御する役割と、車列40の後側について車列40を押す役割とのどちらの役割もすることができる。上記実施形態では、搬送装置1Aが車列40の前について車列40の移動方向を制御し、搬送装置1Bが車列40の後について車列40を後から押しているが、搬送装置1Bが車列40の前につき、搬送装置1Aが車列40の後についてもよい。したがって、車列40の前に並ぶ搬送装置と、車列40の後に並ぶ搬送装置とを別々に用意する必要がなく、搬送装置の種類を少なくできる。
上記実施形態では、あらかじめペアリングされた2つの搬送装置1A,1Bが協調して荷物カート10を運んでいるが、2つの搬送装置1A,1Bはあらかじめペアリングされていなくてもよい。空港施設内を複数の搬送装置1が移動し、複数の搬送装置1の1台が使用中ではない荷物カート10を検出すると、この搬送装置1が、近くにいる別の搬送装置1とペアリングし、荷物カート10を運ぶ作業を協調して行ってもよい。
(3)変形例
以下に、上記実施形態の変形例に係る搬送システム及び搬送装置を列記する。なお、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組み合わせて適用可能である。
上記実施形態では、2つの搬送装置1A,1Bが、車列40を間に挟んだ状態で、車列40を移動させているが、3つ以上の搬送装置1で車列40を移動させてもよい。例えば、車列40の後に2つ以上の搬送装置1がついて、車列40を後から2つ以上の搬送装置1で押すことで、車列40の前側にいる1つの搬送装置1と、車列40の後側にいる2つの搬送装置1とで、車列40を移動させてもよい。また、車列40の途中に1つ以上の搬送装置1が入り、車列40の前後にいる2つの搬送装置1と、車列40の途中に入った1つ以上の搬送装置1とで、車列40を移動させてもよい。
上記実施形態では、2つの搬送装置1A,1Bが、車列40を間に挟んだ状態で、車列40を移動させているが、1台の荷物カート10を運ぶ場合は1つの搬送装置1で荷物カート10を運んでもよい。つまり、1台の荷物カート10を搬送装置1が後から押すことで、1つの搬送装置1で1台の荷物カート10を移動させることができる。
上記実施形態では、複数の搬送装置1の種類が同じ、すなわち複数の搬送装置1の種類が1種類であったが、複数の搬送装置1が複数種類の搬送装置を含んでもよい。例えば、車列40の前に並ぶ役割の搬送装置と、車列40の後に並ぶ役割の搬送装置との種類が異なっていてもよく、それぞれの役割に特化した設計を行うことができる。例えば、車列40の後に並ぶ役割の搬送装置は、複数の荷物カート10の車列40を後から押すので、車列40の後に並ぶ役割の搬送装置に比べて、全方向移動型車輪5を駆動するモータのトルクを大きくしてもよい。
上記実施形態では、搬送装置1が、荷物カート10の一部を載せる昇降台22を備えているが、基台2の前部に、前側に行くほど基台2の下面に近付くように傾斜する傾斜部を設け、基台2が前進することによって傾斜部に荷物カート10を載せてもよい。ここで、傾斜部の後側には、荷物カート10の一部が嵌まる凹部が設けられていてもよく、荷物カート10の一部を傾斜部の凹部に引っ掛けることができる。なお、搬送装置1の基台2が、前後方向において伸縮可能なように構成されてもよく、荷物カート10の下側に基台2の前部が入り込んだ状態で、基台2が前方に伸びることによって、傾斜部に荷物カート10の一部を載せてもよい。
上記実施形態では、車列40の後に並ぶ搬送装置1Bの制御部30は、車列40の前に並ぶ搬送装置1Aから受信した移動方向及び移動速度の情報をもとに、搬送装置1Bの移動方向及び移動速度を決定しているが、荷物カート10を押すことによって搬送装置1Bにかかる力を検出することで移動方向を決定してもよい。
この場合、搬送装置1Bの基台2の上面に、搬送装置1Bが荷物カート10を後から押している状態で、荷物カート10のフレーム110の一部に当たる2つの力センサ231,232が配置されていればよい(図9参照)。図9の変形例では、荷物カート10のフレーム110が、力センサ231,232と当たる横桟117を備えている。力センサ231,232は、車列40の進行方向(図8の前後方向)と交差する方向(図8の左右方向)に並んでいる。力センサ231,232は例えば圧電素子などの検出素子を有している。力センサ231,232は、搬送装置1Bが荷物カート10を後から押すときに、フレーム110から力センサ231,232に加わる力を検出する。搬送装置1Bの制御部30は、力センサ231,232を用いて、荷物カート10を後から押すときに基台2の左右にかかる力を検出することができる。
ここで、車列40の前側にいる搬送装置1Aの制御部30は、搬送装置1Aの移動速度を状態情報として、通信部33から搬送装置1Bへ無線送信すればよい。搬送装置1Bの制御部30は、通信部33が受信した状態情報に含まれる移動速度に基づき、この移動速度に対応した速度に、搬送装置1Bの移動速度を決定する。また、搬送装置1Bの制御部30は、力センサ231の検出値S1と力センサ232の検出値S2との差分に基づいて、搬送装置1Bの移動方向を決定する。すなわち、S1>S2であれば、搬送装置1Bの制御部30は、搬送装置1Bの進行方向を前方から左寄りに変更する。S1<S2であれば、搬送装置1Bの制御部30は、搬送装置1Bの進行方向を前方から右寄りに変更する。また、搬送装置1Bの制御部30は、力センサ231の検出値S1と力センサ232の検出値S2との差分が大きいほど、基台2の前方方向と進行方向とがなす角度を大きくする。
このように、荷物カート10を後から押す搬送装置1の制御部30は、荷物カート10を押すことによって搬送装置1にかかる力を検出することで移動方向を決定してもよく、車列40の動きに追従して移動方向を決定できる。なお、搬送装置1は、車列40を押すときに搬送装置1にかかる力を検出する3つ以上の力センサを備えてもよく、3つ以上の力センサの検知結果に基づいて移動方向を変更すればよい。
また、上記実施形態では、車列40を移動させる複数の搬送装置1A,1Bがそれぞれ判別部36を備えているが、車列40を移動させる複数の搬送装置1A,1Bのうち、少なくとも1台の搬送装置1が判別部36を備えていればよい。車列40の移動中に、判別部36を備える搬送装置1において、車列40に連なっていない荷物カート10が使用中ではないと判別部36が判別すると、この搬送装置1が車列40から離れて、使用中ではない荷物カート10を車列40に加える回収作業を行えばよい。
上記実施形態では、基台2が4つの全方向移動型車輪5を備えていたが、全方向移動型車輪5の数は4つに限定されず、3つでもよいし、5つ以上でもよい。
上記実施形態では、全方向移動型車輪5がオムニホイールであったが、全方向移動型車輪5はメカナムホイールでもよいし、オムニボールでもよい。
上記実施形態では、基台2が全方向移動型車輪5を備えているが、一方向に走行(前進及び後進)する駆動輪と方向転換のための車輪を備えていてもよいし、一方向に走行(前進及び後進)する駆動輪だけを備えていてもよい。
上記実施形態の搬送システム100は空港施設に適用されているが、搬送システム100は空港施設以外の施設に適用されてもよく、例えば、複数の店舗が集まったショッピングモール、食料品を販売するスーパーマーケットなど様々な業態の大規模店舗に適用されてもよい。
また、上記実施形態の搬送システム100では、搬送対象台車が空港施設で使用される荷物カート10であるが、搬送対象台車は空港施設で使用される荷物カート10に限定されない。搬送対象台車は、一部が重なるように連ねられて運ぶことが可能、つまりスタッキングが可能な台車であればよく、ショッピングモール、スーパーマーケットなどで使用されるショッピングカートでもよい。
また、搬送装置1は、使用者が使用していない荷物カート10を所定のカート置き場まで移動させる作業以外に、使用者が使用している荷物カート10を、使用者の代わりに運んでもよい。搬送装置1は、全周カメラの画像をもとに、使用者の位置、移動方向、移動速度を求め、使用者の動きに追従するように荷物カート10を移動させてもよい。
搬送装置1は、床、壁、天井などの投影面に画像を投射するプロジェクタを備えてもよい。搬送装置1は、荷物カート10を移動させる作業を行っている間や、荷物カート10を移動させる作業を行っていない場合などに、プロジェクタで広告や案内表示などの画像を投影面に投射してもよい。
また、搬送装置1は、音声を出力するスピーカを備え、荷物カート10を移動させる作業の作業中、又は荷物カート10を移動させる作業を行っていない期間にスピーカから広告やアナウンスのための音声を出力してもよい。
また、搬送装置1は、施設内を走行して施設内を監視してもよい。
また、上記実施形態で説明した搬送システム100は、搬送装置1の制御方法、搬送装置1の制御プログラムとして具現化されてもよい。このような制御プログラムは、搬送装置1が備えるコンピュータによって実行されるが、複数の搬送装置1を制御するサーバコンピュータで実行されてもよいし、コンピュータシステムの1つ又は複数のコンピュータにて実行されてもよい。搬送装置1の制御プログラムは、インターネットなどの電気通信回線を通じて、又はメモリカードなどの記録媒体に記録されて提供されてもよいし、コンピュータのメモリに予め記録されていてもよい。
(4)効果
第1の態様の搬送システム(100)は、複数の搬送対象台車(10)が連なっている車列(40)を間に挟んだ状態で走行することによって、車列(40)を移動させるように構成されている複数の搬送装置(1,1A,1B)を備える。車列(40)の後側の搬送装置(1,1A,1B)が車列(40)を押し、車列(40)の前側の搬送装置(1,1A,1B)が車列(40)の移動方向を制御するので、複数の搬送対象台車(10)を運ぶのにかかる人手を削減することができる。
第2の態様の搬送システム(100)では、第1の態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)の種類が同じである。複数の搬送装置(1,1A,1B)の種類が同じなので、複数の搬送装置(1,1A,1B)は、車列(40)の前に並ぶ役割と、車列(40)の後に並ぶ役割とのどちらの役割もすることができる。したがって、車列(40)の前に並ぶ搬送装置と、車列(40)の前に並ぶ搬送装置とを別々に用意する必要がなく、搬送装置の種類を少なくできる。
第3の態様の搬送システム(100)では、第1又は第2の態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち少なくとも1つの搬送装置が、車列(40)から離れ、車列(40)に連なっていない台車(10)を移動させて、車列(40)に加える作業を行う。少なくとも1つの搬送装置が、車列(40)に連なっていない台車(10)を車列(40)に加える作業を行うことで、散らばっている台車(10)を集めて運ぶことができる。
第4の態様の搬送システム(100)では、第1〜第3のいずれかの態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち少なくとも1つの搬送装置は、車列(40)に連なっていない台車(10)が使用中か否かを判別する判別部(37)を備える。少なくとも1つの搬送装置は、車列(40)に連なっていない台車(10)が使用中ではないと判別部(37)が判別すると、車列(40)から離れ、車列(40)に連なっていない台車(10)を移動させて、車列(40)に加える作業を行う。少なくとも1つの搬送装置が判別部(37)を備えているので、人が指示しなくても、使用中ではない台車(10)を車列(40)に加えて運ぶことができ、台車(10)を運ぶのにかかる人手を削減できる。
第5の態様の搬送システム(100)では、第1〜第4のいずれか1つの態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)の各々が、動作状態を示す状態情報を通信する通信部(33)を有している。複数の搬送装置(1,1A,1B)の各々が、通信部(33)が受信した状態情報に基づいて、車列(40)を移動させる動作を協調して行う。複数の搬送装置(1,1A,1B)の各々は、状態情報を他の搬送装置に送信し、また他の搬送装置から状態情報を受信することで、協調して動作することができる。したがって、人の指示がなくても、複数の搬送装置(1,1A,1B)が協調して動作することが可能になり、台車(10)を運ぶのにかかる人手を削減できる。
第6の態様の搬送システム(100)では、第5の態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち車列(40)の前に並ぶ搬送装置以外の搬送装置は、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち車列(40)の前に並ぶ搬送装置から受信した状態情報に基づいて、車列(40)の前に並ぶ搬送装置の動作状態に合わせて、移動方向及び移動速度を決定する。これにより、外部から複数の搬送装置(1,1A,1B)に移動方向及び移動速度を指示しなくても、複数の搬送装置(1,1A,1B)は協調して移動することができる。
第7の態様の搬送システムでは、第1〜第6のいずれか1つの態様において、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち車列(40)の前に並ぶ搬送装置以外の搬送装置は、車列(40)を押すときにかかる力を検出する複数の検出部(231,232)を備えている。複数の検出部(231,232)は車列(40)の進行方向と交差する方向において並んでいる。複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち車列(40)の前に並ぶ搬送装置以外の搬送装置は、複数の検出部(231,232)の検出結果に基づいて移動方向を変更する。車列(40)の進行方向が変化すると、複数の検出部(231,232)の検出結果が変化する。したがって、複数の搬送装置(1,1A,1B)のうち車列(40)の前に並ぶ搬送装置以外の搬送装置は、車列(40)の移動方向の変化に追従するように、移動方向を変更することができる。
第8の態様の搬送装置(1,1A,1B)は、第1〜第7のいずれか1つの態様の搬送システム(100)に用いられる。複数の搬送装置(1,1A,1B)を用いて複数の搬送対象台車(10)を運ぶことによって、複数の搬送対象台車(10)を運ぶのにかかる人手を削減することができる。
上記の実施形態の搬送システム(100)では、複数の搬送装置(1,1A,1B)の各々が、走行可能な本体部(9)と、本体部(9)の走行状態を制御する制御部(30)とを備えている。複数の搬送装置(1,1A,1B)の各々では、制御部(30)が本体部(9)の走行状態を制御することで、上記実施形態で説明した動作を行う。