本発明の一実施形態のカードについて図面を用いて説明する。
本実施形態のカードは、図1に上面図を、図2に断面図を示したように、樹脂製のカード基板1と、カード基板1に設けられた配線パターン2と、カード基板1上に搭載され、配線パターン2に接合されたLEDダイ3と、LEDダイ3の発光面側に配置され、セグメント形状の開口40を1以上備えた遮光層4とを有する構造である。ここで、配線パターン2は、導電性粒子を電磁波によって焼結したものを用いる。また、LEDダイ3は、電磁波焼結により配線パターン2に接合されている。なお、ここでいう電磁波とは、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波の波長域のものを含む。
このように、配線パターン2を電磁波焼結した導電性粒子によって構成し、LEDダイ3を電磁波焼結により配線パターン2に接合することにより、配線パターン2の形成時、ならびに、LEDダイ3の接合時には、電磁波を集束して配線パターン形成箇所および接合箇所に照射すればよく、カード基板全体に熱を印加する必要が無い。このため、配線パターン2の形成時および接合時の加熱領域が、集束された電磁波のスポット径程度と極めて局所的になり、局所的な熱を周囲のカード基板1に熱伝導させ、空気中に放熱することができる。よって、樹脂製の基板1の温度上昇を抑えることができるため、樹脂製の基板1に直接、LEDダイ3を実装することができる。これにより、LEDダイ3を予めサブマウント基板等に実装してパッケージ化したLEDパッケージをカード基板1に搭載する場合と比較して、薄型で、かつ、LEDダイ3の実装密度の高いカードを構成することができ、製造コストも低減することができる。また、配線パターン2を形成する際に電磁波を集束させず、配線パターン2部に使用するインク材料が吸収可能な電磁波の波長を選択し、かつ、カード基板1は、その波長の電磁波を透過する特性のものを用いて電磁波を吸収しにくくすることで、カード基板1全体に熱を印加せず、配線パターン2部のみ加熱することが可能である。
また、LEDダイ3と配線パターンとの接合を、電磁波焼結により行っているため、カード基板1が湾曲した場合の歪応力が加わっても接合部が破断や剥離を生じにくく、耐久性を高めることができる。
LEDダイ3およびセグメント形状の開口40は、LED表示部20を構成している。セグメント表示部20の開口40は、図1のように7セグメント表示用に配列されている場合、各セグメントのON/OFFを制御することにより、多様な内容を表示することができるため好ましい。
また、配線パターン2は、図2のように、カード基板1の表面に直接固着した構造であることが望ましい。これにより、配線パターン2とカード基板1との密着性を高めることができるため、カード基板1が湾曲した場合にも配線パターン2がカード基板1から剥離しにくく、配線パターン2に断線等が生じにくい。また、配線パターン2がLEDダイ3の発光時の発熱を熱伝導して効率よくカード基板1に伝導することができるため、LEDダイ2の放熱性能を高めることができる。
また、図2のように、カード基板1に対して、LEDダイ3を挟んで対向するように、第2基板5が配置されている構造とすることができる。これにより、両面が平坦なカードを提供することができるとともに、LEDダイ3を保護し、カードの剛性を高めることができる。
カード基板1は、LEDダイ3の発する光を透過する性質を有するものを用い、図2のように、LEDダイ3の発光面をカード基板1に向けてカード基板1に搭載されている構造とすることが望ましい。これにより、LEDダイ2の発光時の発熱を、カード基板1を介して外気に容易に放熱することができるため、LEDダイ3の熱を第2基板5に熱伝導させる場合よりも、LEDダイ2の放熱性能をさらに高めることができる。
なお、遮光層4には、所望のセグメント表示(例えば7セグメント表示)を実現するために、図1および図2のように、セグメント形状の開口40が複数備えられ、開口40ごとに1以上のLEDダイ3がカード基板1に搭載されている。カード基板1と第2基板5との間であって、複数のセグメント形状の開口40間には、遮光性の仕切り部材6が配置されていることが好ましい。このように、遮光性の仕切り部材6を配置することにより、開口40aの直下のLEDダイ3の発光が、図3のように隣のセグメントの開口40b〜40eに到達してしまうのを防ぐことができる。これにより、本来、発光させるべき開口40aのセグメントのみから光を出射させることができ、表示内容の明確なセグメント表示を行うことができる。
なお、1セグメント部(開口40)に対するLEDダイ3の数は、少ない方が好ましく、1セグメントあたりLEDダイ3の数が1個であることがより好ましい。LEDダイ3の数が少ない方が、給電のための配線パターン2が複雑にならないため、簡素な構成となり、消費電力も低減できるためである。
少ない数のLEDダイ3によって、一つのセグメントの開口40の全体から均一な光を出射させることが望ましい。そこで、隣り合う仕切り部材6の間の空間は、光拡散材料が添加された透明な材料からなる中間層7によって、充填されていてもよい。これにより、LEDダイ3の周囲を光拡散材料が添加された中間層7によって充填できるため、LEDダイ3が発した光を、光拡散材料によって散乱して開口40の全体に広げることができる。よって、LEDダイ3が一つのセグメントに対して一つのみ配置されている場合でも、一つのセグメントの開口40の全体を一様な明るさで表示することができる。なお、中間層は、光拡散材料が添加されていない透明材料であってもよいし、空気層であってもよい。また、開口40部の表面に光拡散材料を添加した、光透過性の膜を形成することで、中間層7は空気層や透明な材料であっても、均一な光を出射することが可能である。
また、仕切り部材6の側面は、図4のように傾斜させてもよい。これにより、LEDダイから発光され、仕切り部材6の側面に到達した光を、セグメント形状の開口40に向けて反射することができ、光の取り出し効率を向上させることができるとともに、光の指向特性をコントロールできる。
さらに、仕切り部材6の側面に光反射物質を含有した材料を構成したり、側面の表層に蒸着・堆積などの手法により光反射物質を構成したりすることで反射率を制御してもよい。これにより、開口40からの光の取り出し量をコントロールすることができるため、セグメント表示として見やすい適切な光量を実現できる。
また、図5のように、隣り合う仕切り部材6の間の空間に面する第2基板5の表面の少なくとも一部領域に、その反射率を調節するため、光反射物質を含有した材料を構成、もしくは表層のみに構成することで反射率を向上させたり、光吸収物質を含有した材料を構成、もしくは表層のみに構成することで反射率を低減させる反射率調節層51を配置させたりしてもよい。これにより、光の開口40からの取り出し量をコントロールすることができるため、セグメント表示として見やすい表示を実現できる。
なお、配線パターン2の一部は、図6に示したように、第2基板5のカード基板1との対向面に配置してもよい。この場合、第2基板5に配置した配線パターン50と、カード基板1に配置した配線パターン2とが、カード主平面方向で互いに重なり合う部分において、厚さ方向で接触するように、厚さを調整することにより、両者の電気的に接続することができる。この場合、配線パターン50と配線パターン2とを接触させるだけでもよいが、接触した部分に電磁波を照射して両者を構成する微粒子同士を焼結させて強固に接続してもよい。
図1のようにカード基板1には、配線パターン2と同様に電磁波による焼結で形成された導電性粒子により構成されたアンテナ部30を搭載することができる。アンテナ部30は、外部から電磁波を照射されることにより、電磁誘導により電流を発生し、LEDダイ3に駆動電流として供給することができる。これにより、ワイヤレス給電を実現できる。基板1には、駆動電流を制御するためのICチップ35等の制御回路を搭載してもよい。また、アンテナ部30を給電源として用いるだけでなく、アンテナ部30を介して、ICチップ35内の通信回路に外部から情報を受信させ、受信した情報をセグメント表示部20に表示させることができる。これにより、本実施形態のカードを例えばクレジットカードとして用い、そのセキュリティ番号やワンタイムパスワードをセグメント表示部20に表示させることができる。また、ICチップに固有の情報を登録しておき、外部からの情報とリンクさせることでICチップ固有の情報とリンクさせたセキュリティ番号やワンタイムパスワードをセグメント表示部20に表示させることができる。
本実施形態のカードは、LEDセグメント表示を用いたデバイスであるため、簡素化された配線パターン2により情報を表示することが可能である。
また、本実施形態のカードは、上述したようにLEDダイ3の熱を、配線パターン2およびカード基板1に熱伝導させ、さらに外気に効率よく放熱することができるため、LED表示部20の熱残像を抑制できる。従来、セグメント表示のために、図7(a)のように、各セグメントの下のLEDを発光させた後、消灯させると(図7(b))、図7(c)のように、LED表示部に表示内容の熱残像が生じていたため、サーモグラフィ等によって残像を観察可能であったが、本実施形態のカードは、放熱効率がよいため、熱残像を短時間で消失させることができる。よって、クレジットカード等でセキュリティコードやワンタイムパスワードを表示させる場合のように、ユーザ以外の第三者には知られたくない秘匿性の高い情報をLED表示部20に表示した場合であっても、消灯後の熱残像による漏洩さえも防ぐことができる。
上述してきた構成において、カード基板1は、光を透過する基板であることが望ましく、その材質としては、ガラス、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミドなどを用いることができる。カードとしてのトータル厚みは800μm以内にすることが求められているため総厚でのコントロールが必要になるが、カード基板1の厚さは、一例として25〜100μmである。
配線パターン2は、導電性微粒子を含むインクを電磁波によって焼結させたものである。導電性微粒子を含むインクとは、1μm以下のナノサイズ粒子を含有するインクであり、微粒子は、Au、Ag、Cu、Pd、ITO、などの導電性金属物質が好適である。インクは、有機溶媒だけで構成されていても良いし、分散性を向上させる添加剤(ポリマー成分等)を添加し、また固着力を向上させるために樹脂成分(エポキシやシリコーン、ウレタンなど)を添加しても良い。
LEDダイ3としては、セグメント表示に用いる所望の波長の光を発するものを用いる。
遮光性仕切り部材6の材質としては、カーボンブラックやブラックチタン、光を遮光する材料を添加した樹脂(エポキシ、シリコーン、ウレタン、等の有機樹脂)を用いることができる。反射率を向上させる場合には、Ag、Al、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属物質や酸化物質で光反射可能な材料を添加することが好まれる。また、添加するだけでなくこれらの物質を蒸着・堆積などにより6の表層に構成してもよい。樹脂としては、熱硬化タイプでも熱可塑性タイプでも良い。仕切り部材6は、カード基板1と第2基板5との間に未硬化の状態で挟んでから硬化させてもよいし、予め成型したものを配置してもよい。
中間層7は、光透過樹脂(エポキシやシリコーンなど)で構成してもよいし、光透過樹脂に酸化チタンやシリカなど、光を反射する物質を添加した材料で構成してもよい。中間層7は、空気層であってもよい。なお、開口40からLEDダイ3の光を取り出す効率を下げたい場合には、カーボンブラックなどの光を遮光する物質を添加した樹脂で中間層7を構成することも可能である。
遮光層4は、一般的に使わせる塗料であって、遮光性のあるものを用いる。例えば、熱硬化タイプ、常温硬化タイプ、UV硬化タイプなどの塗料をもちいることができる。また、開口40部の表面に光拡散材料を添加した、光透過性の膜を構成することで、中間層7は空気層や透明な材料であっても、均一な光を出射することが可能である。
第2基板5は、光を透過しても、しなくてもよく、その材質としては、例えば、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC、PET、PEN、ポリイミドなどの樹脂を用いることができる。カードとしてのトータル厚みは800μm以内にすることが求められているため総厚でのコントロールが必要になるが、第2基板5の厚さは、一例として100〜500μmである。
つぎに、本実施形態のカードの製造方法を説明する。
まず、カード基板1に、所望の方法で微粒子を含むインクを配線パターン2の形状に塗布して、未焼結の配線パターンを形成する。塗布方法は、インクジェット、ディスペンス、フレキソ、グラビア、グラビアオフセット、スクリーン印刷手法などの方法を用いる事が可能である。
未焼結の配線パターン2を形成する際に、ワイヤレス給電用のアンテナ部30の形状の未焼結の配線パターンを同時に形成することにより、工程を短縮することができる。なお、アンテナ部30の形成は、別工程で行ってもよい。
形成した未焼結の配線パターン2およびアンテナ部30の微粒子を焼結させるため、電磁波を照射させることで局所的に配線部のみ加熱し、微粒子を焼結させる。電磁波は、フラッシュランプの様な光のパルス波、レーザー光の様な連続波、マイクロ波の様な長波長の電磁波を用いることができる。電磁波焼結の際には、多孔質の配線パターン2およびアンテナ部30が形成されるように照射条件を設定することが望ましい。多孔質となるように形成した配線パターン2およびアンテナ部30は、可撓性を有するため、カード基板1の撓みに追随して変形でき、フレキシブルで断線しにくく、信頼性を高めることができる。
電磁波は、カード基板1のどちらの面から照射しても焼結は可能であるが、未焼結の配線パターン2を形成していない側の面から、カード基板1を通して照射し、未焼結の配線パターン2を焼結した場合、カード基板1と焼結された配線パターン2との密着性が良好となるため好ましい。
なお、配線パターン2を電磁波焼結により形成する工程の詳細については、図面を用いて後で詳しく説明する。
つぎに、LEDダイ3を配線パターン2上に搭載した後、LEDダイ3の電極部を未焼結の配線パターン2上に搭載しながら、カード基板1を通して電磁波を照射することで、LEDダイ3と配線パターン2との接合を行う事が出来る。なお、焼結した配線パターン2の上に、再度微粒子を含むインクを所望の方法で塗布し、この塗布部にLEDダイ3の電極部を搭載し、電磁波によって加熱することで焼結させ、LEDダイ3の電極部と配線パターン2との接合を行ってもよい。
つぎに、遮光性仕切り部6となる未硬化の樹脂を、印刷等の所望の方法で仕切り部6の形状に形成(塗布)する。未硬化の状態での形状維持性を高めるため、粘度が高い物性値となる樹脂を選択することが望ましい。また、印刷方法は、ディスペンスやグラビア、グラビアオフセット、スクリーン印刷など高粘度タイプに適した手法が望ましい。形成した未硬化の樹脂を、熱を印加する等により硬化させる。なお、高温で溶かした材料で形成する熱可塑タイプの樹脂により仕切り部6を形成することも可能となる。なお、仕切り部6は、カード基板1側に形成すると、LEDダイ3との位置精度を高めることができる。一方、第2基板5側に仕切り部6を形成する場合、LEDダイ3部に仕切り部6の樹脂が付着するのを防ぐための治具構造等を用いる必要がないというメリットがある。よって、カード基板1側か、第2基板5側のどちらに仕切り部6を形成するかは、任意に選択できる。
また、予め仕切り部6の形状に成形した部品を、カード基板1または第2基板5に接着物質などによって固定する手法を取ることも可能である。例えば、図4のように、仕切り部6の側面を傾斜させる場合には、塗布する場合よりも精度よく傾斜面を形成することが可能となる。
中間層7を空気層とする場合には、カード基板1と第2基板とを、仕切り部6を挟み込みながら接着物質を介して貼り合わせる。また、接着物質を用いず、熱圧着の手法を用いて貼り合わせることも可能である。
中間層7を光透過樹脂によって形成する場合、隣り合う仕切り部6の間の空間に光透過樹脂をディスペンスやスクリーン印刷等、所望の方法で充填してから貼り合わせる。もしくは、貼り合わせ後に、隣り合う仕切り部6の間の空間に毛細管現象で未硬化の光透過樹脂を充填する方法や、真空注入技術によって、樹脂充填を行うことも可能である。
つぎに、カード基板1のLEDダイ3を搭載していない側の表面に、塗料を印刷等することにより、開口40を備えた遮光層4を形成する。遮光層4は、カード基板1に配線パターン2を形成した後であればいつでも形成可能である。また、配線パターン2の形成時に照射する電磁波の妨げにならない形状に、遮光層4を形成する場合は、配線パターン2の形成前に遮光層4を形成することも可能である。また、開口40部の表面に光拡散材料を添加した、光透過性の膜を構成することで、中間層7は空気層や透明な材料であっても、均一な光を出射することが可能である。
このようにしてカード状の薄型に形成することが可能で、必要に応じて任意の外形サイズにカットしても良いし、最初から任意の形状にしていても良い。
本実施形態のカードは、セキュリティーカード、決済カード、ポイントカード、電子マネーカード、クレジットカード等の秘匿性の高い情報をユーザにのみ表示するカードデバイスとして好適である。
本実施形態の配線パターン2の製造工程を図8(a)〜(d)を用いて詳しく説明する。ここでは、電磁波として光を用いる例について説明する。
まず、図8(a)のように、カード基板1に導電性粒子と絶縁材料とが分散された溶液(インク)、もしくは、絶縁材料層で被覆された導電性粒子が分散された溶液を、カード基板1の表面に所望の形状で塗布する。これにより、カード基板1の表面に、絶縁材料で被覆された導電性粒子の膜21を形成する。必要に応じて膜21を加熱し、溶媒を蒸発させて乾燥させる。膜21内には、導電性ナノ粒子が分散され、導電性ナノ粒子の周囲は絶縁材料で覆われた状態である。よって、本工程では、絶縁材料で完全に導電性ナノ粒子を覆っている場合には膜21は非導電性であるが、絶縁材料で覆わない部分も有する場合には導電性を有する。すなわち絶縁材料の種類、添加量によって導電性をコントロール可能となる。なお、膜21の形状は、形成すべき配線パターン2の形状になるように塗布してもよいし、一様な膜であってもよい。一様な膜である場合、配線パターン2以外の領域は、後工程で除去する。
つぎに、図8(b)のように、LEDダイ3を、その電極31aが膜21に接触するように搭載する。つぎに、図8(c)、(d)のように、カード基板1を透過させて光束12を膜21に照射する。この方法では、例えば配線パターン2の形成と、発光素子30と配線パターン2との接続とを、光束12の照射により同時にまたは連続して行うことができる。具体的には、図8(c)のように、カード基板1の、膜21が形成されていない側から光束12を電極31とカード基板1の間の領域に照射して、膜21の導電性粒子を光焼結し、電極接続領域となる配線パターン2を形成する。さらに、図8(d)のように、光束12を照射し、他の配線パターン2も形成する。形成順序は、他の配線パターンを形成した後にLEDダイ3の電極接続領域となる配線パターン2を形成しても良い。
また、配線パターン2形成後、配線パターン2と電極31の間に未焼結の導電性粒子含有インクをさらに塗布し、LEDダイ3の電極31aを搭載した後、さらに光束12を照射することで電極接続領域を形成することも可能である。
膜21の光束12が照射された領域は、導電性粒子が光のエネルギーを吸収して温度が上昇する。これにより、導電性粒子は、その粒子を構成する材料のバルクの融点よりも低い温度で溶融するとともに、導電性粒子の温度上昇に伴い、周囲の絶縁材料層は多くが蒸発し、一部が残存した場合で軟化する。そのため、溶融した導電性ナノ粒子は、隣接する粒子と直接融合するか、もしくは、軟化した絶縁材料層を突き破って隣接する粒子と融合する。これにより、導電性粒子同士が焼結され、カード基板1の上面に導電性の配線パターン2が形成される。このとき、溶融した導電性粒子は、カード基板1に固着する。特に、カード基板1の膜21が形成されていない側の面から光束12を照射することにより、カード基板1と配線パターン2の界面の固着強度を高めることができる。
なお、上述のように、膜21の光束12の照射を受けた領域の導電性粒子は、光を照射することにより温度が上昇し、この熱は、導電性粒子の焼結に用いられるとともに、周囲の膜21、カード基板1に伝導し、放熱される。よって、膜21のうち光束12の照射を受けた領域のみ、もしくは、その光束12の照射を受けた領域とその近傍領域のみが、導電性粒子が焼結される温度に到達し、その外側領域の膜21やカード基板1の温度は、それらを構成する材料を溶融させたり変質させたりする温度には到達しない。すなわち、本実施形態では、膜21の一部領域のみに光束12を照射することにより、カード基板1の温度上昇を抑制することができ、カード基板1の光焼結による変形や歪、白濁等の変質を防止することができる。また、カード基板1がフレキシブルである場合にはそのフレキシブル性を維持することができる。
図8(c)、(d)の工程では、形成される配線パターン2が多孔質(ポーラス)となるように形成することが望ましい。すなわち、隣接する導電性粒子同士は、全体が完全に溶融して混ざりあうのではなく、接触する界面で焼結され、焼結後の導電性粒子間の少なくとも一部に空孔40aを形成するような温度で光焼結することが望ましい。例えば、光束12として、レーザー光を用い、通過するカード基板1を溶融させない程度の照射強度で膜21に照射することにより、光束12が照射された膜21の領域に短時間に比較的大きなエネルギーを投入でき、導電性粒子を加熱して溶融させ焼結できるとともに、レーザー光の光束12の照射を停止することにより、周囲の膜21やカード基板1への熱伝導により速やかに冷却することができるため、多孔質の配線パターンを形成することができる。言い換えると、膜21をレーザー光の光束12で焼結するときに、膜21が適切な温度になるように、光束12の照射強度を調節することで、多孔質の配線パターン2を形成できる。具体例としては、カード基板1として、延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(融点250℃程度、耐熱温度150℃程度)を用い、カード基板1の形状が維持されるようにレーザー光の光束12の強度を調整してカード基板1の裏面から膜21に照射し、膜21の導電性粒子を焼結した場合、多孔質の配線パターン2を形成することができる。
配線パターン2が多孔質である場合には、上述したように、配線パターン2自体が追随性(可撓性)を有するため、フレキシブルなカード基板1を変形させた場合にも、それに伴って配線パターン2が追随するため、配線パターン2がカード基板1からはがれにくく、ひび割れ等も生じにくい。よって、断線の生じにくい、フレキシブルな基板を提供することができる。
なお、図8(c)、(d)の工程において、膜21へ照射する際の光束12の形状は、マスクを通過させることにより配線パターン2の形状に整形してから照射してもよいし、照射スポットが円形や矩形の光束12を走査させて配線パターン2を描いてもよい。
以上の工程により、配線パターン2を形成できる。アンテナ部30も同様の工程により形成することができる。
なお、光束12は、カード基板1の膜21が設けられている側の面から照射することももちろん可能である。この場合、LEDダイ3を搭載する電極の接続部分には使用できないが、他の配線パターン部は焼結できるため、電極接続部と配線パターン形成の工程をパラレルに実施することも可能である。
なお、照射する光束12の波長は、膜21に含まれる導電性粒子に吸収される波長を用いる。照射する光は、紫外、可視、赤外いずれの光であってもよいし、マイクロ波であってもよい。例えば導電性粒子として、Ag、Cu、Au、Pdなどを用いた場合、400〜600nmの可視光を用いることができる。
光を照射していない膜21の領域がある場合は、焼結が生じないため、この後の工程で除去してもよい。例えば、有機溶媒等を用いて膜21を除去することが可能である。また、追加して光を照射したり、加熱をしたりすることによって、膜21を焼結させることもできる。
膜21に含有される導電性粒子の材料としては、Au、Ag、Cu、Pd、Ni、ITO、Pt、Feなどの導電性金属および導電性金属酸化物のうちの1つ以上を用いることができる。導電性粒子の粒子径は、1μm未満のナノ粒子のみであってもよいし、1μm未満のナノ粒子と1μm以上のマイクロ粒子とが混合されていてもよい。
膜21に少なくとも含有される絶縁材料、または、膜21の導電性粒子を被覆する絶縁材料としては、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、および、アクリル樹脂などの有機材料、ならびに、SiO2、Al2O3、TiO2などの無機材料、また有機と無機のハイブリット材料のうちの1以上を用いることができる。また、膜21において導電性ナノ粒子を被覆する絶縁材料層の厚みは導電性のコントロールによって異なるが、例えば絶縁性を有する場合は1nm〜10μm程度であることが好ましい。
導電性粒子および絶縁材料、もしくは、絶縁材料の層で被覆された導電性粒子は、溶媒に分散することにより図8(a)の工程で塗布する溶液(インク)とする。溶媒としては、有機溶媒や水を用いることができる。
配線パターン2の大きさは、例えば1μm以上、厚みは、1nm〜50μm程度に形成することが可能である。また、配線パターン2,43bの電気抵抗値は、10−4Ω/cm2以下であることが望ましく、特に、10−6Ω/cm2オーダー以下の低抵抗であることが望ましい。
上述してきた本実施形態のカードは、発光部にLEDを用いているため、有機ELの様な防湿構造を取らなくても信頼性を確保することが可能であり、フレキシブルで信頼性の高く、かつ、LED表示部20に情報を表示可能である。