以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。本実施形態のロック装置10は、車両を構成する固定物(例えば、車両のボディ)に対して可動に支持される可動物(例えば、床面に対して回動して引き出しや収納が可能な座席、ボディ開口部を開閉可能なドアやトランクリッド等)に対するロック及びロック解除を行うものであり、可動物と固定物の一方の側にロック装置10が設けられ、他方の側にストライカ60(図3ないし図10)が設けられている。なお、以下の説明における前後方向は、図1に矢線で示したロック装置10の前後方向に対応しており、車両の前後方向と必ずしも一致するものではない。
図1は、本実施の形態に係るロック装置10の構成要素を分解した状態で示したものである。ロック装置10は、ベースプレート11(ベース)上に回転可能に支持されるフック12及びポール13と、フック12に支持されるストライカ当接部材14と、フック12とストライカ当接部材14を回転付勢するフック付勢バネ15(付勢部材)と、ポール13を回転付勢するポール付勢バネ16とを備えている。フック12とポール13とストライカ当接部材14はそれぞれ、ベースプレート11の前面側に支持される板状部材である。フック12はブッシュ17を介して回転可能に支持され、ポール13はブッシュ18を介して回転可能に支持される。
ベースプレート11は、ストライカ進入凹部20を挟んだ両側に円形状の支持穴21と支持穴22を有し、ストライカ進入凹部20の上方に、前方へ突出するガイド突起23を有している。支持孔21と支持穴22の近傍にバネ掛け部24とバネ掛け部25が突設されている。
フック12は、前後方向に貫通する略円形の軸穴30と、ストライカ進入溝31と、ストライカ進入溝31に隣接して外径方向に突出する凸部32(被係合部)と、凸部32に隣接する凹部33(被係合部)と、凹部33に隣接する摺動面34と、後方へ突出する円柱状のガイドピン35とを備えている。
図2に示すように、ストライカ当接部材14は、軸挿入溝50と、長穴51と、後方に向けて突出する位置制御凸部52と、長穴51の近傍の外縁部に設けた被押圧部53及びストライカ保持面54とを備えている。軸挿入溝50は、略平行な一対の対向面50a,50bと、対向面50aと対向面50bを接続する湾曲面50cを有する長溝であり、湾曲面50cと反対側の端部がストライカ当接部材14の外縁部に開放されている。対向面50aと対向面50bの間隔は、フック12の軸穴30の内径の大きさとほぼ等しい。長穴51は、軸挿入溝50における各対向面50a,50bの延設方向と略平行に長手方向(長径方向)が向く長穴である。
フック12とストライカ当接部材14は、ガイドピン35を長穴51に挿入して重ねられ、フック12の軸穴30とストライカ当接部材14の軸挿入溝50に対して、ブッシュ17の軸部17aが挿入される。ブッシュ17は、円筒状の外周面を有する軸部17aの一端に、軸部17aよりも大径の頭部17bを備えており、軸部17aの先端(頭部17bと反対側の端部)がベースプレート11の支持穴21に固定的に挿入される。フック12は、軸穴30の内周面が軸部17aの外周面に対して摺接することによって、軸部17aの軸C1(図1)を中心として回転する。後述する図3のロック状態におけるフック12の位置をロック位置と呼び、図7のアンロック状態におけるフック12の位置をアンロック位置と呼ぶ。
ストライカ当接部材14の長穴51の長手方向は、軸部17aの軸C1を中心とする径方向と略平行に向いている。フック12のガイドピン35は、長穴51に対して、長手方向に移動可能で、幅方向(短径方向)には移動が規制された状態で挿入されている。また、ストライカ当接部材14の軸挿入溝50の内面は、軸部17aの外周面に対して、一対の対向面50a,50bの長手方向に移動可能に支持されると共に、軸C1を中心として回転可能に支持される。従って、ストライカ当接部材14は、ガイドピン35と長穴51を介してフック12と共に回転可能に支持され、さらに、フック12に対して長穴51の長手方向に直進移動可能に支持される。
図3ないし図10における、フック12とストライカ当接部材14の反時計方向の回転を引き込み方向の回転とし、時計方向の回転をオープン方向の回転とする。また、フック12に対するストライカ当接部材14の直進移動方向のうち、軸挿入溝50の湾曲面50cがブッシュ17の軸部17aから離れる方向(ストライカ進入溝31内に進入しているストライカ60にストライカ保持面54が接近する方向)の移動を進出方向の移動とし、反対に軸挿入溝50の湾曲面50cがブッシュ17の軸部17aに近づく方向(ストライカ進入溝31内に進入しているストライカ60からストライカ保持面54が離れる方向)の移動を退避方向の移動とする。
ベースプレート11の前面に近い側から、ストライカ当接部材14、フック12の順で重ねられており、フック12の前面に対してブッシュ17の頭部17bが当接することによって、ベースプレート11から前方へのフック12とストライカ当接部材14の離脱が規制される。
フック付勢バネ15は、トーションバネであり、内端部をベースプレート11のバネ掛け部24(図1)に係合させ、外端部をストライカ当接部材14から後方に突出するバネ掛け部14aに係合させている。フック付勢バネ15によって、フック12とストライカ当接部材14がオープン方向に回転付勢される。また、フック付勢バネ15は、ストライカ当接部材14を進出方向へ付勢する。
フック12のストライカ進入溝31は、フック12の外縁部に凹設された溝であり、略平行な一対の対向面31a,31bを内側に有している。対向面31aと対向面31bの間隔(ストライカ進入溝31の幅)は、ストライカ60の径よりも僅かに大きく、ストライカ進入溝31内にストライカ60がクリアランスをもって進入可能である。
フック12の凸部32は、ストライカ進入溝31の対向面31aを外径方向に延長して形成されており、凸部32の先端付近に側方へ突出する小突起32aを備えている。摺動面34は、緩やかに湾曲する凸状の湾曲面であり、凹部33は、摺動面34に対して凹設されている。
図2に示すように、ストライカ当接部材14の位置制御凸部52は、長穴51の長手方向に対して交差する方向に延びる長いリブ状の凸部である。位置制御凸部52の一端に、ストライカ当接部材14の退避位置寄りに位置する第1湾曲部52aが設けられ、位置制御凸部52の他端に、ストライカ当接部材14の進出位置寄りに位置する第2湾曲部52bが設けられている。第1湾曲部52aは、ストライカ当接部材14の退避方向側に凸となる湾曲形状を有し、第2湾曲部52bは、ストライカ当接部材14の進出方向側に凸となる湾曲形状を有する。第1湾曲部52aと第2湾曲部52bの間に、長穴51の長手方向に沿うストライカ当接部材14の直進移動方向に対して所定の傾斜を有する傾斜部52cが設けられている。
ストライカ当接部材14の被押圧部53は、進出方向に向けて突出する突起形状に形成されている。図2に、長穴51の幅方向の中央を通り長穴51の長手方向に延びる仮想線Lを示した。被押圧部53は、仮想線Lを挟んだ一方の側面としてテーパ面53aを有し、他方の側面としてテーパ面53bとテーパ面53cを有している。被押圧部53の先端(仮想線L上)でテーパ面53aとテーパ面53bが接しており、テーパ面53aとテーパ面53bはそれぞれ、被押圧部53の先端から離れるにつれて仮想線Lとの間隔を広げるように傾斜している。テーパ面53aよりもテーパ面53bの方が仮想線Lに対する傾斜が大きい。テーパ面53bに続けて形成されているテーパ面53cと、テーパ面53aに続けて形成されているストライカ保持面54もそれぞれ、被押圧部53の先端側から離れるにつれて仮想線Lとの間隔を広げるように傾斜している。テーパ面53bよりもテーパ面53cの方が仮想線Lに対する傾斜が小さく、テーパ面53aよりもストライカ保持面54の方が仮想線Lに対する傾斜が小さい。テーパ面53bとテーパ面53cの境界部分は湾曲面で滑らかに接続されている。
ストライカ保持面54は、ロック状態において、ストライカ進入溝31の対向面31aと概ね平行であり(対向面31aに対してわずかに傾斜している)、対向面31aの近傍に位置している。ガイドピン35と長穴51に案内されるストライカ当接部材14の直進移動方向は、フック12におけるストライカ進入溝31の対向面31a,31bの延設方向に対して交差する。そのため、フック12に対してストライカ当接部材14が直進移動を行うと、図3ないし図10のようにロック装置10を平面視した状態で、ストライカ保持面54を含むストライカ当接部材14の一部が、ストライカ進入溝31の内側に入り込む(ストライカ進入溝31に重なる)状態と、ストライカ進入溝31の外側に離脱する状態に変化する。具体的には、ストライカ当接部材14が進出方向に移動すると、ストライカ保持面54が対向面31aを超えてストライカ進入溝31の内側に進入し、ストライカ当接部材14が退避方向に移動すると、ストライカ保持面54がストライカ進入溝31の外側(フック12の背後)に離脱する。
ポール13は、前後方向に貫通する略円形の軸穴40と、側方を向く摺動面41と、摺動面41に隣接して凹設された凹部42(係合部)と、凹部42に隣接する凸部43(係合部)と、ワイヤ接続穴44と、解除レバー45(解除部)を備えている。
ポール13の軸穴40に対して、ブッシュ18の軸部18aが挿入される。ブッシュ18は、円筒状の外周面を有する軸部18aの一端に、軸部18aよりも大径の頭部18bを備えており、軸部18aの先端(頭部18bと反対側の端部)がベースプレート11の支持穴22に固定的に挿入される。ポール13は、軸穴40の内周面が軸部18aの外周面に対して摺接することによって、軸部18aの軸C2(図1)を中心として回転する。図3ないし図10における、ポール13の反時計方向の回転をロック保持方向の回転とし、時計方向の回転をロック解除方向の回転とする。ベースプレート11から前方へのポール13の離脱は、頭部18bによって規制される。
ポール付勢バネ16は、トーションバネであり、内端部をベースプレート11のバネ掛け部25(図1)に係合させ、外端部をポール13から後方に突出するバネ掛け部46に係合させ、ポール13をロック保持方向に回転付勢する。
ポール13は、軸穴40を中心として径方向に延設される片持ち状の部材であり、摺動面41と凹部42と凸部43は、ポール13の片側の側面(フック12に向く側の側面)に並んで位置している。軸穴40に最も近い内径側に位置する摺動面41は、緩やかに湾曲する凹状の湾曲面である。摺動面41よりも外径側に位置する凹部42は、摺動面41に対して凹設された形状をなしている。凹部42の凹形状は、フック12の凸部32の突出形状に対応しており、後述するロック状態で、凹部42内に凸部32が進入する。凹部42よりも外径側に位置する凸部43は、凹部42との凹設方向とは反対方向に突出しており、先端が円弧状に湾曲している。凸部43の凸形状は、フック12の凹部33の凹形状に対応しており、後述するロック状態で、凹部33内に凸部43が進入する。
ワイヤ接続穴44は、軸穴40から最も離れたポール13の先端付近に設けられており、図3ないし図10に一点鎖線で仮想的に示す操作ワイヤ61の一端部が、ワイヤ接続穴44に接続する。操作ワイヤ61の他端部は図示を省略するアンロック操作部材に接続しており、アンロック操作部材を操作して操作ワイヤ61を牽引すると、ポール付勢バネ16の付勢力に抗してポール13がロック解除方向に回転される。
解除レバー45は、摺動面41や凹部42や凸部43が設けられているポール13の本体部分13aに対して後方にオフセットして位置している。解除レバー45は、軸穴40を中心とする径方向に延設された片持ち状の突出部であり、フック12(ストライカ当接部材14)側に突出している。解除レバー45は、軸穴40から離れて先端に近づくにつれて幅狭になる三角状の形状をなしており、最も幅狭になる解除レバー45の先端部には、円弧状に湾曲した押圧面47が設けられている。
ポール13の本体部分13aに対して後方にオフセットして設けた解除レバー45と、フック12の後面側に支持したストライカ当接部材14は、互いに同じ前後方向位置にある。そして、フック12とポール13が後述する所定の位置関係にあるときに、解除レバー45(特に押圧面47)がストライカ当接部材14(特に被押圧部53)に当接して、ストライカ当接部材14の位置が制御される。また、ストライカ当接部材14の後面に突出する位置制御凸部52は、ベースプレート11の前面に設けたガイド突起23と同じ前後方向位置にあり、ストライカ当接部材14が後述する所定の位置にあるときに、位置制御凸部52がガイド突起23に当接する(図7、図8参照)。位置制御凸部52とガイド突起23の当接によってストライカ当接部材14の位置が制御される。これらのストライカ当接部材14の動作(位置制御)については後述する。
以上の構成からなるロック装置10の動作を説明する。なお、図4ないし図6、図8ないし図10には、フック12、ポール13及びストライカ当接部材14の回転動作の方向を円弧形状の矢印で示している(フック12とストライカ当接部材14の回転方向は共通の矢印で示している)。このうち、実線の矢印は、対応するフック付勢バネ15やポール付勢バネ16の付勢力に抗する方向の回転であることを意味し、一点鎖線の矢印は、各付勢バネ15,16の付勢力が働く方向への回転であることを意味する。
図3はロック装置10のロック状態を示している。ロック状態では、ベースプレート11のストライカ進入凹部20の開口部分を、ストライカ進入溝31の対向面31bで塞ぐようにフック12が位置しており(フック12がロック位置にあり)、ストライカ進入溝31内に進入したストライカ60は、ストライカ進入凹部20からの離脱が規制されている。ポール13の凸部43がフック12の凹部33に進入し、フック12の凸部32がポール13の凹部42に進入しており(ポール13が保持状態にあり)、これらの凹凸部の係合関係によって、フック12のオープン方向(時計方向)の回転が規制される。
ロック状態では、フック付勢バネ15による進出方向への付勢力を受けているストライカ当接部材14が、ストライカ保持面54をストライカ60に押し付けている。これにより、ストライカ保持面54とストライカ進入溝31の対向面31bによってストライカ60が挟まれ、ストライカ60がガタつくことなく保持される。ストライカ保持面54は、概ねストライカ進入溝31の対向面31aと同じ方向に沿って延びる面であるため、ストライカ60を円滑に挟持することができる。
ロック状態において、ポール13に設けた解除レバー45は、ストライカ当接部材14から離間している。より詳しくは、ストライカ当接部材14は、被押圧部53の先端をポール13の摺動面41に対向する方向に向けており、解除レバー45は、押圧面47を有する先端部分が被押圧部53の下方(ストライカ進入凹部20の開口方向)に位置している。そして、被押圧部53のテーパ面53aと解除レバー45との間に、上下方向の隙間がある。このロック状態における被押圧部53と解除レバー45の離間量は、ロック装置10を構成する各部材の部品精度や、ベースプレート11に対する各部材の組み付け精度に多少の誤差があっても、解除レバー45が被押圧部53に当接しないように設定されている。そのため、解除レバー45による影響(押圧)を受けずにストライカ当接部材14の位置を定めることができ、ストライカ60に対するガタ除去効果を確実に得ることができる。
図4から図6は、図3のロック状態から図7のアンロック状態への移行時の動作を順に示したものである。操作ワイヤ61を牽引することによってロック装置10のロック解除動作が行われる。図4は、操作ワイヤ61の牽引によって、ポール13がポール付勢バネ16の付勢力に抗してロック解除方向(時計方向)に所定量回転されて、ポール13の凹部42内からフック12の凸部32が離脱する直前まで達した状態(凹部42の開口部の直前に小突起32aが位置する状態)を示している。この段階で凸部43は既に凹部33から離脱している。小突起32aが凹部42の内面に当接した状態にあるため、フック12はオープン方向への回転が規制されてロック位置に保持されており、ストライカ60はストライカ進入溝31内に保持された状態を維持する。
図4の状態で、ポール13に設けた解除レバー45の押圧面47が、ストライカ当接部材14のテーパ面53aに当接する。図3のロック状態から図4の状態までは、ストライカ当接部材14が移動していないため、押圧面47をテーパ面53aに当接させる際の位置関係やタイミングの精度管理が容易である。
図5は、ポール13が図4の位置よりも僅かにロック解除方向(時計方向)に進み、ポール13の凹部42からフック12の凸部32が離脱した直後(ポール13の保持解除状態)を示している。凹部42からの凸部32の離脱により、フック12のオープン方向(時計方向)への回転が許容されるようになる。図5では、ポール13が保持解除状態になったことにより、フック12の小突起32aがポール13の摺動面41に対向する位置関係になっている。
図4の状態から図5の状態になるときに、ロック解除方向へのポール13の回転に伴って、解除レバー45の押圧面47がストライカ当接部材14のテーパ面53aに接しながら移動する。すると、押圧面47の移動軌跡(軸C2を中心とする時計方向の移動軌跡)と、テーパ面53aの傾斜形状との関係によって、ストライカ当接部材14を押し込む力が働き、ストライカ当接部材14が退避方向に移動する。なお、ポール13が保持状態(図3)から保持解除状態(図5)になるまでの間、解除レバー45の押圧によってストライカ当接部材14が退避方向に直進移動するのに対して、フック12は回転せずにロック位置に維持される。このように、ロック解除動作の際に解除レバー45によって動作させる対象をストライカ当接部材14のみにすると、精度の管理が容易になる。
図6は、フック付勢バネ15の付勢力によってフック12とストライカ当接部材14が図5の位置よりもオープン方向(時計方向)に回転し、解除レバー45の押圧面47が当接する対象が、ストライカ当接部材14の被押圧部53におけるテーパ面53aからテーパ面53bに切り替わる状態(解除レバー45の押圧面47が被押圧部53の先端を乗り越える状態)を示している。この段階で操作ワイヤ61の牽引は解除されており、ポール13は、ポール付勢バネ16の付勢力によって図5の状態よりもロック保持方向に戻っている。図6の状態では、解除レバー45の押圧面47が被押圧部53の先端に近い位置に当接するので、ストライカ当接部材14は退避方向へ最大に押し込まれた状態になる。このとき、ガイドピン35は長穴51の一端付近に位置し、軸部17aは軸挿入溝50の湾曲面50cに近接した位置にある。
図4の状態から図6の状態にかけて、解除レバー45による押圧を受けてストライカ当接部材14が退避方向へ移動し、この退避方向移動によって、ストライカ当接部材14に設けたストライカ保持面54がストライカ進入溝31内のストライカ60から離れる方向に位置を変化させる。その結果、ストライカ保持面54とストライカ進入溝31の対向面31bによるストライカ60の挟持状態が確実に解除される。図6の状態では、ストライカ保持面54が完全にストライカ進入溝31の外側(フック12の裏側)に引き込まれており、ストライカ60の保持に関与しなくなっている。従って、ストライカ進入溝31内にストライカ60を固着させず(挟み込まず)に、ストライカ60を確実にリリースすることが可能になる。
図7はロック装置10のアンロック状態を示している。アンロック状態では、アンロック位置にあるフック12のストライカ進入溝31の対向面31bがベースプレート11のストライカ進入凹部20を塞がず、ストライカ60がストライカ進入溝31とストライカ進入凹部20から離脱する。また、アンロック状態では、ストライカ当接部材14の位置制御凸部52の第1湾曲部52aが、ベースプレート11のガイド突起23に当接して、進出方向への移動が規制されている。ポール13は、ポール付勢バネ16の付勢力によって、凸部43をフック12の摺動面34に当接させる位置に保持される。
アンロック状態において、ポール13に設けた解除レバー45は、ストライカ当接部材14から離間している。より詳しくは、ストライカ当接部材14は、被押圧部53の先端をストライカ進入凹部20が開口する斜め下方に向けており、解除レバー45は、押圧面47を有する先端部分が被押圧部53の斜め上方に位置している。そして、被押圧部53のテーパ面53cと解除レバー45との間に隙間がある。このアンロック状態における被押圧部53と解除レバー45の離間量は、ロック装置10を構成する各部材の部品精度や、ベースプレート11に対する各部材の組み付け精度に多少の誤差があっても、解除レバー45が被押圧部53に当接しないように設定されている。そのため、アンロック状態において、解除レバー45はストライカ当接部材14の位置設定に関与しない。
図8から図10は、図7のアンロック状態から図3のロック状態への移行時の動作を順に示したものである。ストライカ60をストライカ進入溝31に進入させる動作によってロック装置10のロック動作が行われる。ロック動作では、ストライカ60によってストライカ進入溝31の対向面31aが押し込まれて、フック付勢バネ15の付勢力に抗してフック12とストライカ当接部材14が引き込み方向(反時計方向)に回転する。
フック12とストライカ当接部材14をアンロック状態におけるアンロック位置から引き込み方向(反時計方向)に回転させる初動段階は、停止状態からの始動であり、かつフック付勢バネ15の付勢力に抗する方向の回転であることから、動作を行わせるために大きな力を要する。ここで、上述のように、アンロック状態では解除レバー45が被押圧部53から離間している。そのため、アンロック状態からフック12とストライカ当接部材14が引き込み方向へ所定量回転するまでの間、ストライカ当接部材14の被押圧部53は解除レバー45に当接せずに動作する。別言すれば、フック12とストライカ当接部材14に引き込み回転方向の慣性力が働くようになるまで、被押圧部53を解除レバー45に当接させない。これにより、フック12とストライカ当接部材14の引き込み方向の回転の初動段階を、解除レバー45を有するポール13からの負荷を受けずに行わせることができる。特に、ポール13は、ポール付勢バネ16によってロック保持方向(フック12に接近する方向)に付勢されているため、解除レバー45が被押圧部53から離間している間は、ポール付勢バネ16による負荷がストライカ当接部材14に作用せず、フック12とストライカ当接部材14に対する回転抵抗の低減に顕著な効果が得られる。
図7のアンロック状態からフック12が引き込み方向(反時計方向)に回転すると、フック12の摺動面34に対して凸部43を摺接させながら、ポール13がロック解除方向へ押し込まれる。また、アンロック状態からフック12が引き込み方向に回転すると、ベースプレート11のガイド突起23に対して位置制御凸部52の傾斜部52cが摺接し、ストライカ当接部材14は進出方向の移動が制限されながらフック12と共に回転する。そのため、この段階では、ストライカ進入溝31に進入するストライカ60に対して、ストライカ当接部材14のストライカ保持面54の当接(挟持)は行われない。
図8は、フック12とストライカ当接部材14がアンロック状態(アンロック位置)から引き込み方向に所定量回転して、ストライカ当接部材14の被押圧部53が解除レバー45に当接した状態を示している。このとき、解除レバー45は、押圧面47を有する先端付近の側面を、被押圧部53のテーパ面53c(テーパ面53cとテーパ面53bの境界付近)に当接させている。図8の状態では、ストライカ当接部材14に設けた位置制御凸部52のうち第2湾曲部52bが、ベースプレート11のガイド突起23に当接しており、ストライカ当接部材14は、図7の状態から継続して進出方向への移動が制限されている。但し、位置制御凸部52の形状によって、図7の状態よりも図8の状態の方が、ストライカ当接部材14の位置が進出方向側に変化している。
図8の状態からフック12とストライカ当接部材14が引き込み方向に回転すると、図9に示すように、位置制御凸部52がガイド突起23から離れ、ガイド突起23によるストライカ当接部材14の進出方向への移動制限が解除される。その一方、被押圧部53のテーパ面53bが解除レバー45の押圧面47に摺接して、ストライカ当接部材14は解除レバー45による進出方向の移動制限を受ける。このとき、図9に示すように、押圧部47の移動軌跡(軸C2を中心とする時計方向の移動軌跡)と、テーパ面53bの傾斜形状との関係によって、ストライカ当接部材14を退避方向に押し込む力が作用する。図9の状態では、押圧面47が被押圧部53の先端に近い位置に当接するので、ストライカ当接部材14は退避方向へ最大に押し込まれた状態になる。また、図9の状態では、フック12の摺動面34に対してポール13の凸部43が当接し、ポール13の摺動面41に対してフック12の凸部32(小突起32a)が当接し、ポール13のロック保持方向の回転がフック12によって制限されている。
図10は、フック12とストライカ当接部材14が図9の位置よりもさらに引き込み方向(反時計方向)に回転し、フック12の凸部32がポール13の凹部42に係合する直前の状態を示している。このとき凸部32に設けた小突起32aは、ポール13の摺動面41の上端付近に達している。図9の状態から図10の状態になる途中で、解除レバー45の押圧面47が被押圧部53の先端を乗り越えて、押圧面47の当接対象が、被押圧部53のテーパ面53bからテーパ面53aに変化している。テーパ面53aの傾斜方向は、ストライカ当接部材14の引き込み方向の回転に応じて、ストライカ当接部材14の進出方向の移動を許すものである。そのため、図9の状態よりも図10の状態の方が、ストライカ当接部材14が進出方向に移動している。
図10の状態からさらにフック12とストライカ当接部材14が引き込み方向(反時計方向)に回転すると、被押圧部53が解除レバー45から離れ、ストライカ当接部材14の進出方向の移動に対する制限が解除される。そして、フック12が図3に示すロック位置まで回転すると、ポール13に設けた凹部42と凸部43がそれぞれ、フック12の凸部32と凹部33に進入し(ポール13が保持状態になり)、ロック装置10がロック状態になる。ロック状態では、フック付勢バネ15による進出方向への付勢力を受けるストライカ当接部材14が、ストライカ保持面54をストライカ60に押し付けており、ストライカ保持面54とストライカ進入溝31の対向面31bによってストライカ60を挟持して、ストライカ60のガタつきを防ぐ。
以上のように、本実施形態のロック装置10は、フック12に対する進退移動が可能なストライカ当接部材14をフック12上に備え、ロック状態(図3)において、ストライカ当接部材14のストライカ保持面54とストライカ進入溝31の対向面30bでストライカ保持面54を挟持する。これにより、ロック状態でストライカ60がガタつかずに安定し、異音が生じない高品質なロック装置10を得ることができる。
ストライカ当接部材14は、フック12をオープン方向に回転付勢するフック付勢バネ15によって、ストライカ60を挟持する方向(進出方向)に付勢されるため、ストライカ当接部材14を付勢するための独立した付勢部材が不要であり、構成を簡略にできる。
また、ロック装置10では、ロック状態からアンロック状態への動作を行うときに、ポール13に設けた解除レバー45によって、ストライカ当接部材14を退避方向に押圧移動させるので、ストライカ当接部材14を用いたストライカ60の挟持状態を解除して、確実にストライカ60をリリースしてアンロック状態に移行させることができる。
さらに、ロック状態において、解除レバー45がストライカ当接部材14から離間する構成であるため、精度誤差等によって解除レバー45がストライカ当接部材14を退避方向に押圧してしまうおそれがなく、ロック状態でストライカ当接部材14が確実に機能してストライカ60を挟持することができる。
さらに、アンロック状態において、解除レバー45がストライカ当接部材14から離間する構成であるため、アンロック状態からロック状態に移行させるときに、フック12とストライカ当接部材14を引き込み方向に回転させる初動段階で、解除レバー45からストライカ当接部材14に対して負荷が作用せず、少ない回転抵抗でフック12とストライカ当接部材14を動作させることができる。よって、ストライカ当接部材14と解除レバー45を備えたロック装置10において、ロック動作時に必要とされる操作力を軽減して、優れた操作性を得ることができる。
また、ロック装置10がロック状態からアンロック状態になるときに、解除レバー45(特に押圧面47)が、ストライカ当接部材14の被押圧部53の一方の側面であるテーパ面53aに当接し、続いて被押圧部53の先端を乗り越えて、被押圧部53の他方の側面であるテーパ面53bに当接する。逆に、ロック装置10がアンロック状態からロック状態になるときに、解除レバー45が、ストライカ当接部材14の被押圧部53の一方の側面であるテーパ面53b(53c)に当接し、続いて被押圧部53の先端を乗り越えて、被押圧部53の他方の側面であるテーパ面53aに当接する。このように、解除レバー45が、当接する面を切り替えながら被押圧部53に当接すると、動作の状況や条件に適した特性を各面で設定することができる。
例えば、被押圧部53のテーパ面53aは、ロック状態でストライカ60を挟持していたストライカ当接部材14を退避方向(挟持を解除する方向)に押圧移動させる際に用いられる面である。そのため、解除レバー45からの押圧力を確実に受けてストライカ当接部材14に伝達するべく、テーパ面53aを摩擦抵抗の大きい面にする等の選択が可能である。また、テーパ面53aを、解除レバー45(ポール13)の単位回転量あたりのストライカ当接部材14の移動量が大きくなるような傾斜面(図2に示す仮想線Lに対する傾斜が小さい面)にして、ストライカ当接部材14によるストライカ60の挟持状態を迅速に解除させるような選択が可能である。
一方、被押圧部53のテーパ面53b,53cは、アンロック状態からロック状態への移行時に解除レバー45の通過に応じて押圧されるものである。アンロック状態ではストライカ当接部材14によるストライカ60の挟持が行われていないため、テーパ面53b,53cを摩擦抵抗の小さい面にして、解除レバー45を円滑に通過させる等の選択が可能である。また、テーパ面53b,53cを、解除レバー45(ポール13)の単位回転量あたりのストライカ当接部材14の移動量が小さくなるような傾斜面(図2に示す仮想線Lに対する傾斜が大きい面)にして、アンロック状態からロック状態への移行時の最大負荷を軽減させるような選択が可能である。
以上、本発明を図示実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。例えば、図示実施形態のロック装置10では、ストライカ当接部材14がフック12に対して直進移動可能に支持されており、図3のロック状態から図5に示すポール13の保持解除状態になるまでの間、解除レバー45の押圧によって、フック12を回転させずにストライカ当接部材14のみを退避方向に直進移動させている。このように、ロック解除動作の際に解除レバー45により動作させる対象をストライカ当接部材14だけにすると、部品同士の精度の管理が容易になる。これと異なり、フック12に対してストライカ当接部材14が、回転方向の成分を含む相対移動を行うように構成することもできる。ポール13と共に回転する解除レバー45によって、回転方向の移動成分を含むストライカ当接部材14を押圧する構成は、押圧力を伝えやすいという利点がある。また、解除レバー45でストライカ当接部材14を押圧したときに、ストライカ当接部材14と共にフック12が回転する構成にすることも可能である。