以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1に示す車載システム10は、互いに異なる制御を行う複数の電子制御ユニット(CPU、メモリ及び不揮発性の記憶部を含む制御ユニットであり、以下、ECU(Electronic Control Unit)と称する)が各々接続されたバス12を備えている。なお、図1は車載システム10の一部のみ示している。また、以下では車載システム10が搭載された車両を自車両と称する。
バス12には、自車両に搭載された原動機14が発生する駆動力を制御する原動機制御ECU16と、自車両に搭載された制動装置18が発生する制動力を制御する制動制御ECU20と、自車両に搭載された操舵装置22が発生する操舵介助力を制御する操舵制御ECU24と、が各々接続されている。
なお、原動機14は内燃機関であっても電動機であってもよく、それらを組み合わせたハイブリッドシステムであってもよい。また、原動機14が電動機である場合、電動機に供給する電力は、自車両に搭載されたバッテリに蓄電されていてもよいし、自車両に搭載されたタンクに貯留されている燃料(例えば化石燃料又は水素)により発電してもよい。
また、バス12には、自車両の挙動を検出する複数種のセンサを含む車両挙動検出センサ群26と、自車両及びその周囲の状況を監視する状況監視ECU28と、運転者による自車両の運転を支援する運転支援制御ECU36と、が各々接続されている。車両挙動検出センサ群26は、例えば、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の加速度を検出する加速度センサ、自車両の操舵角を検出する操舵角センサなどを含む。
状況監視ECU28は、カメラ30、レーダ装置32及び無線通信部34が各々接続されている。カメラ30は、少なくとも自車両の前方を含む自車両の周囲を撮影し、撮影した画像を状況監視ECU28へ出力する。なお、カメラ30は、自車両の前方を撮影するカメラを含む、撮影範囲が互いに異なる複数のカメラを含んでいてもよい。
レーダ装置32は、少なくとも自車両の前方を含む自車両の周囲に存在する歩行者や他車両等の物体を点情報として検出し、検出した物体と自車両の相対位置及び相対速度を取得する。また、レーダ装置32は周囲の物体の探知結果を処理する処理装置を内蔵し、当該処理装置は、直近の複数回の探知結果に含まれる個々の物体との相対位置や相対速度の変化等に基づき、ノイズやガードレール等の路側物等を監視対象から除外し、歩行者や他車両等の特定物体を監視対象物として追従監視する。そしてレーダ装置32は、個々の監視対象物との相対位置や相対速度等の情報を状況監視ECU28へ出力する。
無線通信部34は、他車両などと無線通信を行うことで、自車両の周囲に存在する他車両などを確認し、自車両の周囲に存在する他車両などの情報を状況監視ECU28へ通知する。なお、無線通信部34は省略することも可能である。また、無線通信部34が、例えば自車両の周囲に存在する歩行者などが所持するスマートフォンなどとも無線通信を行うことで、レーダ装置32と同等の情報が得られるのであれば、無線通信部34に代えてレーダ装置32を省略することも可能である。
状況監視ECU28は、レーダ装置32及び無線通信部34の少なくとも一方から入力された情報(例えば個々の監視対象物との相対位置等)に基づいて、カメラ30から入力された画像上における個々の監視対象物の位置を検出し、更に、自車両が走行する車線の位置も検出する。また、個々の監視対象物の特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づき監視対象物の種別(歩行者か車両か等)を判別する。なお、監視対象物の種別は、無線通信部34による無線通信の結果から判別することも可能である。そして、状況監視ECU28は、上記処理を繰り返すことで監視対象物を追従監視すると共に、個々の監視対象物及び車線の情報を、運転支援制御ECU36を含む車載システム10内の特定ECUへ送信する周囲状況監視処理を行う。なお、特定ECUには、例えば自車両と監視対象物との衝突を予測する処理を行うECUが含まれていてもよい。
運転支援制御ECU36は、CPU38、メモリ40、運転支援制御プログラム44を記憶する不揮発性の記憶部42を備えている。本実施形態において、運転支援制御ECU36は、自車両の前方の同一車線上に存在する先行車両に追従して自車両が走行するように、原動機制御ECU16及び制動制御ECU20を介して自車両の走行(加減速量)を制御し、必要に応じて運転者へ報知するACC(Adaptive Cruise Control)を行う機能を備えている。運転支援制御ECU36によるACCは、運転者によってオンオフ可能である。
また、本実施形態において、運転支援制御ECU36は、自車両が走行中の車線から逸脱しそうな状況を検出した場合に運転者へ警報を出力し、操舵制御ECU24を介して操舵介助力を制御する車線維持制御を行う機能を備えている。運転支援制御ECU36による車線維持制御についても、運転者によってオンオフ可能である。
更に、本実施形態において、運転支援制御ECU36は、自車両の車線に隣接する隣接車線を走行している隣接先行車両が、自車両の車線への車線変更が予測される車線変更隣接先行車両であり、車線変更隣接先行車両の車線変更に伴って自車両が車線変更隣接先行車両と接近するか否かを判定する隣接先行車両接近予測処理を行う。本実施形態では、ACC及び車線維持制御のオンオフに拘わらず運転支援制御ECU36が隣接先行車両接近予測処理を行う態様を説明するが、当該処理は、ACC及び車線維持制御の少なくとも一方がオンの場合に行うようにしてもよいし、ACC及び車線維持制御の両方がオンの場合に行うようにしてもよい。運転支援制御ECU36は、本発明における判定部及び車線維持制御部の一例である。
次に図2を参照し、運転支援制御ECU36のCPU38が運転支援制御プログラム44を実行することで行われる運転支援制御処理を説明する。なお、運転支援制御処理は、自車両のイグニッションスイッチがオンされている間、繰り返し実行される。
運転支援制御処理のステップ60において、運転支援制御ECU36は、自車両の周囲状況を表す情報を状況監視ECU28から取得する。次のステップ62において、運転支援制御ECU36は、車両挙動検出センサ群26によって検出された情報(例えば自車両の車速)に基づいて、自車両が走行中か否か判定する。
自車両が停車している場合は、ステップ62の判定が否定されてステップ64へ移行する。ステップ64において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、自車両の前方の同一車線上に先行車両が存在しており、かつ前記先行車両が発進したか否か判定する。自車両の前方の同一車線上に先行車両が存在していない場合、及び、自車両の前方の同一車線上に存在している先行車両が停車している場合は、ステップ64の判定が否定されてステップ74へ移行する。
ACCでは、自車両及び先行車両が各々停車している状態で先行車両が発進した場合、先行車両に追従して自車両を発進させる運転操作を運転者に促すために、先行車両の発進を自車両のインスツルメントパネルなどに表示して運転者へ報知する。しかし、ステップ64の判定が否定された場合は先行車両の発進を表示する条件を満たしていないため、ステップ74では先行車両の発進を自車両のインスツルメントパネルなどに表示することなく、運転支援制御処理を終了する。
また、ステップ64の判定が肯定された場合はステップ66へ移行する。ステップ66において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、自車両の車線に隣接する隣接車線を走行している隣接先行車両が存在しているか否か判定する。隣接先行車両が存在しない場合、先行車両に追従して自車両を発進させても危険は生じない。このため、ステップ66の判定が否定された場合はステップ72へ移行し、ステップ72において、運転支援制御ECU36は、ACCがオンされているか否か判定する。
ステップ72の判定が肯定された場合はステップ76へ移行し、ステップ76において、運転支援制御ECU36は、先行車両に追従して自車両を発進させる運転操作を運転者に促すために、先行車の発進を自車両のインスツルメントパネルなどに表示し、運転支援制御処理を終了する。また、ACCがオフされている場合は、自車両の運転者は先行車両に追従して走行する意思が無いと判断できる。このため、ステップ72の判定が否定された場合はステップ74へ移行し、先行車両の発進を表示することなく運転支援制御処理を終了する。
また、先のステップ66において、隣接先行車両が存在している場合、先行車両に追従して自車両を発進させると、隣接先行車両が自車両の車線に車線変更したときに、自車両と隣接先行車両との車間距離が所定値未満の、非常に接近した状態になる可能性がある。このため、ステップ66の判定が肯定された場合はステップ68へ移行し、ステップ68において、運転支援制御ECU36は、先のステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオン(点滅)しているか否か判定する。
隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオンしていない場合は、隣接先行車両が自車両の車線へ車線変更する可能性は低く、先行車両に追従して自車両を発進させても、自車両が隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低い。このため、ステップ68の判定が否定された場合はステップ72へ移行する。この場合、前述のように、ステップ72でACCがオンされているか否かが判定され、ACCがオンされていればステップ76で先行車の発進が表示され、ACCがオフされていればステップ74で先行車両の発進が表示されない。
また、隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオンしている場合、隣接先行車両は自車両の車線への車線変更が予測される車線変更隣接先行車両であると判定できるので、ステップ68の判定が肯定されてステップ70へ移行する。ステップ70において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が経時的に増加しているか否か判定する。なお、ステップ70の判定は、先行車両に追従して自車両を発進させた場合に、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になるか否かを判定しており、後述するステップ82と同様に、車間距離の経時的な増加に加えて、車間距離が所定値以上か否かも判定するようにしてもよい。
ステップ70の判定が肯定された場合は、先行車両に追従して自車両を発進させても、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低いと判断できるので、ステップ72へ移行する。この場合、前述のように、ステップ72でACCがオンされているか否かが判定され、ACCがオンされていればステップ76で先行車の発進が表示され、ACCがオフされていればステップ74で先行車両の発進が表示されない。
一方、ステップ70の判定が否定された場合、先行車両に追従して自車両を発進させると、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと判断できる。このため、ステップ70の判定が否定された場合はステップ74へ移行し、ACCのオンオフに拘わらず先行車両の発進を表示せずに処理を終了する。
従って、ACCがオンされており、かつ、自車両及び先行車両が各々停車している状態から先行車両が発進した場合であっても、自車両を発進させると車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと判断できるケースでは、先行車の発進の表示が抑止される。これにより、自車両が停車している状態で、自車両の車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が存在する場合に、先行車両に追従して自車両を発進させる運転操作を運転者が行うことを抑制することができる。
次に、自車両が走行中の場合の処理を説明する。自車両が走行中の場合、ステップ62の判定が肯定されてステップ78へ移行する。なお、以下で説明するステップ78〜ステップ86は、隣接先行車両接近予測処理の一例である。
ステップ78において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づき、自車両の車線に隣接する隣接車線を走行している隣接先行車両が存在しているか否か判定する。隣接先行車両が存在しない場合はステップ78の判定が否定されてステップ84へ移行し、ステップ84において、運転支援制御ECU36は、自車両が隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性を評価する隣接先行車両接近評価値に、自車両が隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が低いことを意味する「0」を設定する。
また、隣接先行車両が存在している場合は、ステップ78の判定が肯定されてステップ80へ移行する。ステップ80において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオンしているか否か判定する。
隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオンしていない場合は、隣接先行車両が自車両の車線へ車線変更することで、自車両が隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低く、隣接先行車両は車線変更隣接先行車両ではないと判定できる。このため、ステップ80の判定が否定された場合はステップ84へ移行し、前述のように隣接先行車両接近評価値に0が設定される。
また、隣接先行車両の自車線側のターンシグナルがオンしている場合、隣接先行車両は、自車両が走行する車線への車線変更が予測される車線変更隣接先行車両であるので、ステップ80の判定が肯定されてステップ82へ移行する。ステップ82において、運転支援制御ECU36は、ステップ60で状況監視ECU28から取得した情報に基づいて、自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近している(自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が経時的に減少している)か、又は、自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が所定値以下か否かを判定する。なお、ステップ82において、上記判定のうち、「自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近しているか否か」と「自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が所定値以下か否か」の一方のみ判定してもよい。
自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近しておらず、かつ、自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が所定値を超えている場合、隣接先行車両は自車両が走行する車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両であるものの、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低いと判断できる。このため、ステップ82の判定が否定された場合もステップ84へ移行し、前述のように隣接先行車両接近評価値に0が設定される。
一方、「自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近している」という第1条件と、「自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が所定値以下」という第2条件と、の少なくとも一方を満足している場合は、車線変更隣接先行車両が自車両が走行する車線へ車線変更することに伴って、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと判断できる。このため、上記の第1条件及び第2条件の少なくとも一方を満足することでステップ82の判定が肯定された場合はステップ86へ移行する。そしてステップ86において、運転支援制御ECU36は、隣接先行車両接近評価値に、車線変更隣接先行車両が存在する隣接車線の方向を表す値を設定する。
なお、ステップ86における隣接先行車両接近評価値の設定の一例としては、右方向及び左方向のうちの一方に「+1」を、他方に「−1」を予め割り当てておき、隣接先行車両が存在する隣接車線の方向に応じて+1又は−1を選択的に設定することができる。
また、他の一例として、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性に応じて隣接先行車両接近評価値の絶対値を増減させてもよい。具体的には、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は、自車両と隣接先行車両との相対的な接近速度が大きくなるに従って高くなり、自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が小さくなるに従って高くなる。このため、上記の相対的な接近速度及び車間距離の少なくとも一方の変化に応じて、隣接先行車両接近評価値の絶対値を変化させるようにしてもよい。
なお、本発明においてステップ82の判定を行うことは必須ではなく、ステップ80の判定が肯定されることで隣接先行車両が車線変更隣接先行車両であると判定した場合は、ステップ82の判定をスキップし、ステップ86で隣接先行車両接近評価値に、車線変更隣接先行車両が存在する隣接車線の方向を表す値を設定するようにしてもよい。
ステップ84又はステップ86で隣接先行車両接近評価値を設定するとステップ88へ移行し、ステップ88において、運転支援制御ECU36は、ACCがオンされているか否か判定する。ACCがオンされている場合は、ステップ88の判定が肯定されてステップ90へ移行する。
ステップ90において、運転支援制御ECU36は、状況監視ECU28から取得した情報及び車両挙動検出センサ群26によって検出された自車両の挙動に基づいて、自車両が先行車両に追従して走行するように、原動機制御ECU16及び制動制御ECU20を介して自車両の走行(加減速量)を制御するACC処理を行う。但し、このACC処理において、運転支援制御ECU36は、隣接先行車両接近評価値が0かそれ以外かに応じて、ACC処理を切り替える。
すなわち、隣接先行車両接近評価値=0の場合は、隣接先行車両が存在しないか、隣接先行車両は存在するものの自車両が走行する車線への車線変更が予測される車線変更隣接先行車両ではないか、車線変更隣接先行車両が存在したとしても、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低いことを意味している。このため、運転支援制御ECU36は、隣接先行車両接近評価値=0の場合は通常のACC処理を行う。
一方、隣接先行車両接近評価値≠0の場合は、自車両が走行する車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が存在しており、かつ、車線変更隣接先行車両の車線変更に伴って自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いことを意味している。このため、運転支援制御ECU36は、隣接先行車両接近評価値≠0の場合、原動機制御ECU16を介して自車両を加速させる際には通常のACC処理よりも自車両の加速量を抑制させ、制動制御ECU20を介して自車両を減速させる際には通常のACC処理よりも自車両の減速量を増加させる。
これにより、車線変更隣接先行車両が自車両の車線へ車線変更してきた場合(先行車両と自車両との間に割り込んできた場合)にも、通常のACC処理を行う場合と比較して、自車両と割り込んできた車線変更隣接先行車両との車間距離が大きくなる。従って、車線変更隣接先行車両が自車両の車線へ車線変更してきた場合に、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になることが抑制される。
なお、隣接先行車両接近評価値≠0の場合に、自車両を加速させる際に加速量を抑制させたり、自車両を減速させる際に減速量を増加させることは、一例として、加速制御量を規定するパラメータを所定量減少させたり、減速制御量を規定するパラメータを所定量増加させることで実現できる。また、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高くなるに従って、隣接先行車両接近評価値の絶対値を大きくする場合は、隣接先行車両接近評価値の絶対値が増加するに従って前記所定量を増加させるようにしてもよい。
ステップ90でACC処理を行うと、ステップ92へ移行する。また、ACCがオフされている場合には、ステップ88の判定が否定され、ステップ90のACC処理をスキップしてステップ92へ移行する。
ステップ92において、運転支援制御ECU36は、車線維持制御がオンされているか否か判定する。車線維持制御がオフされている場合には、ステップ92の判定が否定されて運転支援制御処理を終了する。一方、車線維持制御がオンされている場合には、ステップ92の判定が肯定されてステップ94へ移行し、ステップ94において、運転支援制御ECU36は、車線維持制御処理を行う。
図3に示すように、車線維持制御処理のステップ102において、運転支援制御ECU36は、状況監視ECU28から取得した情報に含まれる、自車両が走行する車線の位置を表す情報に基づいて、車両の幅方向に沿った車線の中央位置に対する自車両の幅方向中央位置の偏差ΔDを演算する。なお、車線中央に対する自車両の偏差ΔDは、隣接先行車両接近評価値と同様に、右方向及び左方向のうちの一方に符号の正が、他方に符号の負が予め割り当てられており、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの値の符号により、自車両が車線中央に対して右方向にずれているか左方向にずれているかを表している。
次のステップ104において、運転支援制御ECU36は、ステップ102で演算した車線中央に対する自車両の偏差ΔDの絶対値|ΔD|が、予め設定された報知用閾値D1th以上か否か判定する。ステップ104の判定が肯定された場合はステップ106へ移行し、ステップ106において、運転支援制御ECU36は、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向への自車両のターンシグナルがオンされているか否か判定する。
ステップ106の判定が否定された場合、運転者は、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向への自車両の車線変更を予定していないと判断できる。このため、ステップ106の判定が否定された場合はステップ108へ移行し、ステップ108において、運転支援制御ECU36は、自車両の中央が車線中央に対して報知用閾値D1th以上ずれていることを報知する操舵指示警報を出力する。この操舵指示警報の出力により、車線中央に対する自車両の位置ずれが或る程度大きくなっていることを運転者に認識させることができ、車線中央に対する自車両の位置ずれが小さくなる方向への操舵操作を運転者に促すことができる。
一方、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が報知用閾値D1th未満の場合はステップ104の判定が否定され、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向への自車両のターンシグナルがオンされている場合はステップ106の判定が肯定される。これらの場合は、何れもステップ108がスキップされ、操舵指示警報は出力されない。このように、操舵指示警報は、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いか否か(隣接先行車両接近評価値≠0か否か)に拘わらず、一定の状況(ステップ104の判定が肯定され、かつステップ106の判定が否定される状況)で出力される。
次のステップ110において、運転支援制御ECU36は、車線維持制御に用いるパラメータである制御用閾値D2th及び操舵制御調整量ΔSとして、記憶部42に予め記憶されたデフォルト値を取得する。続いて、ステップ112において、運転支援制御ECU36は、車線中央に対する自車両の偏差ΔD≠0で、かつ車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向が隣接先行車両接近評価値に設定された方向と同じか否か判定する。
車線中央に対する自車両の偏差ΔD=0の場合、及び、車線中央に対する自車両の偏差ΔD≠0でかつ隣接先行車両接近評価値=0の場合には、ステップ112の判定が否定され、ステップ116へ移行する。この場合、後述するステップ114をスキップしているので、以降のステップ116,118において、車線維持制御パラメータである制御用閾値D2th及び操舵制御調整量ΔSとしてデフォルト値が用いられることで、通常の車線維持制御が行われる。
すなわち、ステップ116において、運転支援制御ECU36は、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が制御用閾値D2th(のデフォルト値)以上か否か判定する。車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が制御用閾値D2th未満の場合は、ステップ116の判定が否定されて車線維持制御処理を終了する。
また、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が制御用閾値D2th以上の場合は、ステップ116の判定が肯定されてステップ118へ移行する。ステップ118において、運転支援制御ECU36は、操舵制御ECU24へ出力する操舵制御量Sを、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向と反対の方向に操舵制御調整量ΔS(のデフォルト値)だけ変化させる。
この操舵制御量Sの調整により、操舵装置22が、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向と反対の方向に操舵介助力を発生する場合には、この方向への操舵介助力が操舵制御調整量ΔS(のデフォルト値)に対応する分だけ増加される。また、操舵装置22が、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向に操舵介助力を発生する場合には、この方向への操舵介助力が操舵制御調整量ΔS(のデフォルト値)に対応する分だけ減少される。これにより、運転者による操舵操作を、車線中央に対する自車両の偏差ΔDが小さくなるように介助することができ、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向へ自車両が車線を逸脱することが抑制される。
上記制御について、図4(A)を用いて更に説明する。図4(A)は、自車両の車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が自車両の右前方に存在しているものの、自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近しておらず(相対速度ΔV>0)、かつ、自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離が所定値を超えている(車間距離L>所定値Lth)状況を示している。この状況は、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性は低いと評価され(図2のステップ82の判定が否定)、隣接先行車両接近評価値=0に設定されるので、通常の車線維持制御が行われる。
より詳しくは、車線中央に対して自車両が左方向に制御用閾値D2thのデフォルト値以上ずれた場合(図4(A)において自車両の左側に位置する外向きの実線の矢印も参照)には、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に対応する分だけ右方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、車線中央に対する自車両の左方向へのずれが小さくなるように介助される(図4(A)において自車両の左側に位置する内向きの破線の矢印も参照)。
また、車線中央に対して自車両が右方向に制御用閾値D2thのデフォルト値以上ずれた場合(図4(A)において自車両の右側に位置する外向きの実線の矢印も参照)には、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に対応する分だけ左方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、車線中央に対する自車両の右方向へのずれが小さくなるように介助される(図4(A)において自車両の右側に位置する内向きの破線の矢印も参照)。
なお、上記の車線維持制御は、LDA、LTCなどのLKA技術を適用した制御であってもよい。例えば、制御用閾値D2thのデフォルト値を小さな値とし、それに応じて操舵制御調整量ΔSのデフォルト値を調整した場合には、車両の幅方向中央が車線中央に常に維持されるように制御されることになり、LTCに類する制御になる。また、例えば、制御用閾値D2thのデフォルト値を比較的大きな値(例えば(車線幅−自車両の幅)/2以下)とし、それに応じて操舵制御調整量ΔSのデフォルト値を調整した場合には、車両の左右端の一方が車線の境界付近に達した場合に操舵制御量Sが調整されることになり、LDAに類する制御になる。
次に、隣接先行車両接近評価値≠0の場合を説明する。先に説明したステップ112において、車線中央に対する自車両の偏差ΔD≠0で、隣接先行車両接近評価値≠0であっても、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向が隣接先行車両接近評価値に設定された方向と反対方向であれば、ステップ112の判定は否定される。このケースではステップ114をスキップしてステップ116へ移行するので、車線中央に対する自車両の位置が車線変更隣接先行車両の方向と反対側へずれた場合は、車線維持制御パラメータである制御用閾値D2th及び操舵制御調整量ΔSとしてデフォルト値が用いられることで、通常の車線維持制御が行われる。この場合の制御は本発明における第2の制御の一例である。
一方、ステップ112において、車線中央に対する自車両の偏差ΔD≠0で、隣接先行車両接近評価値≠0で、かつ車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向が隣接先行車両接近評価値に設定された方向と同じ方向である場合には、ステップ112の判定は否定されてステップ114へ移行する。ステップ114において、運転支援制御ECU36は、制御用閾値D2thのデフォルト値から所定値αを減算することで、制御用閾値D2thをデフォルト値よりも小さい値にすると共に、操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に所定値βを加算することで、操舵制御調整量ΔSをデフォルト値よりも大きい値にする。
このステップ114の処理を経ることで、ステップ116では、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が、制御用閾値D2thのデフォルト値から所定値αを減算した値以上か否かが判定される。また、ステップ118では、操舵制御量Sが、車線中央に対する自車両の偏差ΔDの方向と反対の方向に、操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に所定値βを加算した値だけ変化される。この場合の制御は本発明における第1の制御の一例である。
上記制御について、図4(B),(C)を用いて説明する。図4(B)は、自車両の車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が自車両の右前方に存在しており、「自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近している(相対速度ΔV<0)」という条件と、「自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離Lが所定値Lth以下」という条件と、の少なくとも一方を満足した状況を示している。この状況は、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと評価され(図2のステップ82の判定が肯定)、車線変更隣接先行車両が存在する隣接車線の方向が右方向であることを表す値が隣接先行車両接近評価値に設定される。
図4(B)に示す状況で、自車両が車線中央に対して左方向車線変更(車線変更隣接先行車両と反対側)にずれた場合には、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が制御用閾値D2thのデフォルト値以上になると(図4(B)において自車両の左側に位置する外向きの実線の矢印も参照)、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に対応する分だけ右方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、車線中央に対する自車両の左方向へのずれが小さくなるように介助される(図4(B)において自車両の左側に位置する内向きの破線の矢印も参照)。この制御は、図4(A)と同じく通常の車線維持制御である。
一方、図4(B)に示す状況で、自車両が車線中央に対して右方向車線変更(車線変更隣接先行車両側)にずれた場合には、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が、制御用閾値D2thのデフォルト値から所定値αを減算した値以上になると(図4(B)において自車両の右側に位置する外向きの実線の短い矢印も参照)、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に所定値βを加算した値に対応する分だけ左方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、通常の車線維持制御よりも早いタイミングで、車線中央に対する自車両の右方向へのずれが小さくなるように通常の車線維持制御よりも強く介助される(図4(B)において自車両の右側に位置する内向きの破線の長い矢印も参照)。
また図4(C)は、自車両の車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が自車両の左前方に存在しており、「自車両と車線変更隣接先行車両が相対的に接近している(相対速度ΔV<0)」という条件と、「自車両と車線変更隣接先行車両との車間距離Lが所定値Lth以下」という条件と、の少なくとも一方を満足した状況を示している。この状況は、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと評価され(図2のステップ82の判定が肯定)、車線変更隣接先行車両が存在する隣接車線の方向が左方向であることを表す値が隣接先行車両接近評価値に設定される。
図4(C)に示す状況で、自車両が車線中央に対して右方向(車線変更隣接先行車両と反対側)にずれた場合には、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が制御用閾値D2thのデフォルト値以上になると(図4(C)において自車両の右側に位置する外向きの実線の矢印も参照)、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に対応する分だけ左方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、車線中央に対する自車両の右方向へのずれが小さくなるように介助される(図4(C)において自車両の右側に位置する内向きの破線の矢印も参照)。この制御は、図4(A)と同じく通常の車線維持制御である。
一方、図4(C)に示す状況で、自車両が車線中央に対して左方向(車線変更隣接先行車両側)にずれた場合には、車線中央に対する自車両の偏差の絶対値|ΔD|が、制御用閾値D2thのデフォルト値から所定値αを減算した値以上になると(図4(C)において自車両の左側に位置する外向きの実線の短い矢印も参照)、操舵制御量Sが操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に所定値βを加算した値に対応する分だけ右方向に変更される。これにより、運転者による操舵操作が、通常の車線維持制御よりも早いタイミングで、車線中央に対する自車両の左方向へのずれが小さくなるように通常の車線維持制御よりも強く介助される(図4(C)において自車両の左側に位置する内向きの破線の長い矢印も参照)。
このように、自車両の車線へ車線変更することが予測される車線変更隣接先行車両が存在しており、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になる可能性が高いと予測される場合には、車線変更隣接先行車両側と反対側とで車線維持制御を切り替える。すなわち、車線変更隣接先行車両と反対側への車線逸脱に対する制御と比較して、車線変更隣接先行車両側への車線逸脱の制御を、より小さな制御用閾値D2thで早期に検知すると共に、より大きな操舵制御調整量ΔSで操舵制御量Sを調整する。これにより、自車両が車線変更隣接先行車両側へ車線を逸脱しそうな状況がより早期に検知され、車線逸脱がより強く抑制されることで、自車両が車線変更隣接先行車両と非常に接近した状態になることが抑制される。従って、車線維持制御を行う機能が搭載された自車両の隣接先行車両が、自車両の車線へ車線変更してくる場合の安全性を向上させることができる。
なお、上記では車線変更隣接先行車両側への車線逸脱を抑制する第1の制御の速度を、車線変更隣接先行車両と反対側への車線逸脱を抑制する第2の制御の速度よりも大きくすることを、制御用閾値D2thのデフォルト値から所定値αを減算することで実現していた。また、前記第1の制御の強度を前記第2の制御の強度よりも大きくすることを、操舵制御調整量ΔSのデフォルト値に所定値βを加算することで実現していた。しかし、これに限定されるものではなく、第1の制御の速度及び第1の制御の強度の一方のみを第2の制御の速度及び第2の制御の強度の一方よりも大きくしてもよい。また、上記では車線維持制御処理を含む運転支援制御処理の実行時間間隔について特に説明していない。ここで、第1の制御の速度を第2の制御よりも大きくすることは、第1の制御を行っている間の車線維持制御処理の実行時間間隔を、第2の制御を行っている間よりも短くすることによっても実現可能である。
また、上記では操舵介助力を発生する操舵装置22が搭載された車両に本発明を適用したが、これに限定されるものではない。本発明に係る車線維持制御の対象とする操舵装置は、少なくとも車線維持制御がオンされている間は、運転者による操舵操作を必要とすることなく操舵力を発生して自動操舵を行う構成であってもよい。また、本発明は、運転者による運転操作を必要とすることなく自動運転を行う機能を備えた車両に適用することも可能である。