以下、図面を参照して、本発明に係る車間距離制御装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る車間距離制御装置を、車両に搭載されるACC[Adaptive Cruise Control]装置に適用する。本実施の形態に係るACC装置では、自車の前に先行車が存在する場合には先行車との車間時間が目標車間時間になるように先行車追従制御を行い、先行車が存在しない場合には自車速が目標車速になるように定速制御を行う。なお、先行車が存在する場合、先行車の車速が目標車速までは追従制御が行われるが、先行車の車速が目標車速を超えると目標車速に基づく定速制御が行われる。
目標車速(初期値)としては、例えば、ACC装置が起動されたときの実際の自車速あるいは運転者によるスイッチ操作によって所定の車速が設定される。さらに、目標車速は、制御中、運転者によるアクセルペダル操作やブレーキペダル操作に応じて変化する車速に変更されてもよい。また、目標車間時間(初期値)としては、例えば、ACC装置が起動されたときの実際の車間時間あるいは運転者によるスイッチ操作よって長、中、短の三段階のいずれかの時間が設定される。
図1を参照して、本実施の形態に係るACC装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係るACC装置の構成図である。
ACC装置1は、通常、追従制御中に、運転者がブレーキペダル操作又はアクセルペダル操作を行った場合、ブレーキONからブレーキOFFになったとき又はアクセルONからアクセルOFFになったときの先行車との実際の車間時間を目標車間時間に変更する。特に、ACC装置1では、運転者が意図しない目標車間時間に変更しないように、運転者がブレーキペダル操作又はアクセルペダル操作を行った場合でも先行車の走行状況(必要に応じて、自車の走行状況も)として追従走行に適さない状況を検出したときには目標車間時間を変更しない。ACC装置1は、ミリ波レーダ10、カメラ11、ブレーキペダルスイッチ12、アクセルペダルスイッチ13、ウィンカスイッチ14、車速センサ15、ヨーレートセンサ16、エンジン制御ECU[Electronic Control Unit]20、ブレーキ制御ECU21、ACCECU30を備えており、ACCECU30に先行車認識部31、レーンチェンジ認識部32、ブレーキ操作検出部33、アクセル操作検出部34、目標車間時間設定部35、目標加速度演算部36が構成される。
なお、本実施の形態では、ブレーキペダルスイッチ12が特許請求の範囲に記載する減速操作検出手段に相当し、アクセルペダルスイッチ13が特許請求の範囲に記載する加速操作検出手段に相当し、目標車間時間設定部35が特許請求の範囲に記載する目標車間距離変更手段に相当し、ミリ波レーダ10、カメラ11、先行車認識部31及びレーンチェンジ認識部32が特許請求の範囲に記載する先行車走行状況検出手段に相当し、ウィンカスイッチ14、車速センサ15、ヨーレートセンサ16及びレーンチェンジ認識部32が特許請求の範囲に記載する自車走行状況検出手段に相当する。
ミリ波レーダ10は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ10は、自車の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ10では、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ10では、そのミリ波の送受信情報をレーダ信号としてACCECU30に送信する。
カメラ11は、自車の前方に取り付けられる(例えば、ルームミラーに内蔵)。カメラ11では、自車の前方を撮像し、その撮像した画像を取得する。カメラ11では、その撮像画像のデータを画像信号としてACCECU30に送信する。カメラ11は、左右方向に撮像範囲が広く、走行している車線を示す左右両側(一対)の白線を十分に撮像可能である。
ブレーキペダルスイッチ12は、ブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれたか否か(ON/OFF)を検出するセンサである。ブレーキペダルスイッチ12では、その検出したブレーキのON/OFF情報をブレーキペダル信号としてACCECU30に送信する。
アクセルペダルスイッチ13は、アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれたか否か(ON/OFF)を検出するセンサである。アクセルペダルスイッチ13では、その検出したアクセルのON/OFF情報をアクセルペダル信号としてACCECU30に送信する。
ウィンカスイッチ14は、運転者による方向指示(右方向指示ON、左方向指示ON、OFF)を入力するためのスイッチである。ウィンカスイッチ14では、運転者のウィンカ操作情報をウィンカ信号としてACCECU30に送信する。
車速センサ15は、車輪の回転速度を検出する車輪速センサである。車速センサ15では、車輪の回転速度を検出し、その回転速度を車速信号としてACCECU30に送信する。ACCECU30では、この車輪の回転速度から自車速を算出する。なお、車速センサとしては、車輪速センサ以外の車速センサでもよい。
ヨーレートセンサ16は、自車のヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ16では、ヨーレートを検出し、そのヨーレートをヨーレート信号としてACCECU30に送信する。
エンジン制御ECU20は、エンジン(ひいては、駆動力)を制御する制御装置である。エンジン制御ECU20では、運転者によるアクセル操作などに基づいて目標加速度を設定する。そして、エンジン制御ECU20では、その目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、その目標開度を目標スロットル開度信号としてスロットルアクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、エンジン制御ECU20では、ACCECU30からエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標加速度となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータに送信する。
スロットルアクチュエータは、スロットルバルブ(図示せず)の開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータでは、エンジン制御ECU20からの目標スロットル開度信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。目標スロットル開度になると、自車は、エンジン制御ECU20で設定した目標加速度となり、目標車速となる。
ブレーキ制御ECU21は、各ブレーキ(ひいては、制動力)を制御する制御装置である。ブレーキ制御ECU21では、運転者によるブレーキ操作などに基づいて目標減速度を設定する。そして、ブレーキ制御ECU21では、その目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダ(図示せず)のブレーキ油圧を設定し、そのブレーキ油圧を目標油圧信号としてブレーキアクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、ブレーキ制御ECU21では、ACCECU30からブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。
ブレーキアクチュエータは、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータでは、ブレーキ制御ECU21からの目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車は、ブレーキ制御ECU21で設定した目標減速度となり、目標車速となる。
ACCECU30は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、ACC装置1を統括制御する。ACCECU30では、ROMに格納されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、先行車認識部31、レーンチェンジ認識部32、ブレーキ操作検出部33、アクセル操作検出部34、目標車間時間設定部35、目標加速度演算部36を構成する。ACCECU30では、各種センサ10〜16から各種信号を取り入れ、その各種信号に基づいて各部31〜36の処理を行う。そして、ACCECU30では、目標加速度を設定し、目標加速度に基づいてエンジン制御ECU20、ブレーキ制御ECU21に制御信号を送信する。なお、目標加速度は、プラス値/マイナス値で表され、プラス値のときは目標加速度による加速制御(駆動力制御)であり、マイナス値のときは目標減速度による減速制御(制動力制御)である。
先行車認識部31では、一定時間毎に、ミリ波レーダ10からのミリ波の送受信情報に基づいて、自車の前方を走行している車両(先行車)の有無を判定する。この際、操舵角、ヨーレートなどから自車の進行方向を推定し、自車の進行走行方向も考慮して先行車の有無を判定する。先行車が存在する場合、先行車認識部31では、ミリ波の送受信情報に基づいて、自車と先行車との相対距離、相対速度、横位置などを演算する。さらに、先行車認識部31では、先行車との相対速度と自車の車速から先行車の車速を演算する。
レーンチェンジ認識部32では、一定時間毎に、カメラ11からの撮像画像に基づいて、自車が走行している車線(必要に応じて、隣接車線も)を示す一対の白線を認識する。この認識方法としては、従来の方法を適用し、例えば、エッジ検出を用いる。
そして、レーンチェンジ認識部32では、一定時間毎に、自車の車速、ウィンカスイッチ14からの運転者の方向指示情報、ヨーレートセンサ16からの自車のヨーレート及び白線情報などに基づいて、自車がレーンチェンジ中か否かを判定する。また、レーンチェンジ認識部32では、一定時間毎に、先行車認識部31での先行車の横位置情報及び白線情報などに基づいて、先行車がレーンチェンジ中か否かを判定する。
ブレーキ操作検出部33では、一定時間毎に、ブレーキペダルスイッチ12からのブレーキのON/OFF情報に基づいて、ブレーキペダルが踏み込まれている状態から踏み込みが解除された時点(ブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点)を検出する。
アクセル操作検出部34では、一定時間毎に、アクセルペダルスイッチ13からのアクセルのON/OFF情報に基づいて、アクセルペダルが踏み込まれている状態から踏み込みが解除された時点(アクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点)を検出する。
目標車間時間設定部35では、一定時間毎に、先行車認識部31で検出した先行車の有無情報を用いて先行車が存在するか否かを判定する。さらに、先行車が存在する場合、目標車間時間設定部35では、先行車認識部31で演算した先行車の車速が目標車速を超えたか否かを判定する。目標車速以下の先行車が存在する場合、目標車間時間設定部35では、ブレーキ操作又はアクセル操作に応じて目標車間時間の再設定を行う。特に、目標車間時間設定部35では、レーンチェンジ対応目標車間時間設定機能、先行車停止対応目標車間時間設定機能、先行車発進直後対応目標車間時間設定機能の3つの目標車間時間設定機能に対応して以下の処理を行う。
レーンチェンジ対応目標車間時間設定機能について説明する。目標車間時間設定部35では、一定時間毎に、ブレーキ操作検出部33でブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点を検出した場合又はアクセル操作検出部34でアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点を検出した場合、レーンチェンジ認識部32で先行車がレーンチェンジ中と判定しかつ自車がレーンチェンジ中と判定しているか否かを判定する。
先行車と自車が共にレーンチェンジ中と判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作がレーンチェンジに対応するためのもの(車間時間の変更を意図する操作でない)と推定し、目標車間時間設定部35では、それまでに設定されている目標車間時間を保持する。
先行車と自車の少なくとも一方がレーンチェンジ中でないと判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作が車間時間の変更を意図する操作と推定し、目標車間時間設定部35では、ブレーキOFF又はアクセルOFFしたときの車間時間を目標車間時間として再設定する。なお、このときの実際の車間時間は、先行車との相対距離を自車の車速で除算して求められる。
図2には、追従制御中に、先行車FVの前方に遅い車両OVが存在するので、先行車FVと自車MVが共にレーンチェンジして車両OVを追い越す場合を示している。図2(a)に示すように、先行車FVと自車MVが通常の走行を行っている場合、追従制御によって、自車MVと先行車FVとの車間時間RTが目標車間時間TT(=T1)になるように制御される(図3(a)参照)。その後、図2(b)に示すように、先行車FVと自車MVが共にレーンチェンジを行っている場合、先行車FVがレーンチェンジ中と判定されるとともに自車MVがレーンチェンジ中と判定される(図3(b)、(c)参照)。
レーンチェンジを行う場合、自車MVの運転者は、レーンチェンジ先の車線の後方車両や先行車FVの加減速などを考慮しながら、先行車FVへの追従走行よりもレーンチェンジを重視したブレーキ又はアクセルのペダル操作を行う。したがって、このレーンチェンジ中の先行車FVとの車間時間は、運転者が追従走行時の車間時間を意図したものではない。このような状況のときに運転者のブレーキ又はアクセルのペダル操作に応じて目標車間時間を変更すると、レーンチェンジが終了して通常の追従走行に戻ったときに運転者の意図した車間時間にならない可能性が大きい。そのため、再度、運転者がペダル操作を行って、意図する車間距離に変更する必要があり、利便性が低下する。
そこで、先行車FVと自車MVが共にレーンチェンジ中と判定されている区間CPでは、自車の運転者がブレーキ又はアクセルのペダル操作O1,O2を行ったとしても(図3(d)参照)、先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTを変更しない(図3(a)参照)。レーンチェンジが終了した後に(図3(b)、(c)参照)、自車MVの運転者がペダル操作O3を行うと(図3(d)参照)、その操作O3のOFF時の先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTをT2に変更する(図3(a)参照)。
先行車停止対応目標車間時間設定機能について説明する。目標車間時間設定部35では、一定時間毎に、ブレーキ操作検出部33でブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点を検出した場合又はアクセル操作検出部34でアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点を検出した場合、先行車認識部31で検出した先行車の車速を用いて、先行車が停止しているか(先行車の車速が停止判定閾値以下か)否かを判定する。停止判定閾値は、先行車の車速によって先行車が停止しているか否かを判定するための閾値であり、各センサの精度などを考慮して予め設定される。
先行車が停止していると判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作が先行車の停止に対応するためのもの(車間時間の変更を意図する操作でない)と推定し、目標車間時間設定部35では、それまでに設定されている目標車間時間を保持する。
先行車が停止していないと判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作が車間時間を意図する操作と推定し、目標車間時間設定部35では、ブレーキOFF又はアクセルOFFしたときの車間時間を目標車間時間として再設定する。
図4には、追従制御中に、後方から走行してきた自車MVの前方に先行車FVが停止している場合を示している。この場合、先行車FVの車速FSは、0km/hであるので、停止判定閾値SS以下である(図5(b)参照)。自車MVの車速MSは、停止するために徐々に低下し、やがて0km/hになる(図5(c)参照)。
先行車FVが停止している場合、自車MVの運転者は、先行車FVの後方で安全な距離をあけて停止できるように、車速調整を行うためのブレーキ操作を行う(状況によっては、アクセル操作を行う場合もある)。したがって、先行車FVが停止している場合の先行車FVとの車間時間は、運転者が追従走行時の車間時間を意図したものではない。このような状況のときに運転者のブレーキ又はアクセルのペダル操作に応じて目標車間時間を変更すると、先行車FVの発進に伴って自車MVが発進した後に通常の追従走行になったときに運転者の意図した車間時間にならない可能性が大きい。
そこで、先行車FVが停止中と判定されている区間CPでは、自車の運転者がブレーキ又はアクセルのペダル操作O1を行ったとしても(図5(d)参照)、先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTを変更しない(図5(a)参照)。そして、先行車FVの車速FSが停止判定閾値SSを超えた後(図5(b)参照)、自車MVの運転者がペダル操作O3を行うと(図5(d)参照)、その操作O3のOFF時の先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTをT2に変更する(図5(a)参照)。
先行車発進直後対応目標車間時間設定機能について説明する。目標車間時間設定部35では、一定時間毎に、ブレーキ操作検出部33でブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点を検出した場合又はアクセル操作検出部34でアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点を検出した場合、先行車認識部31で検出した先行車の車速を用いて、先行車が停止しているか否かを判定する。先行車の停止判定後、目標車間時間設定部35では、先行車認識部31で検出した先行車の車速及び自車の車速を用いて、先行車が発進直後か(先行車の車速と自車の車速との相対速度(絶対値)が先行車発進直後判定閾値以下か)否かを判定する。先行車発進直後判定閾値は、先行車と自車との相対速度によって先行車が発進した直後か否かを判定するための閾値であり、各センサの精度などを考慮して予め設定される。ちなみに、先行車が発進直後の場合には先行車と自車との車速差からある程度大きな相対速度が発生するが、追従制御によって徐々に相対速度が小さいなり、0km/hに近づいてゆく。
先行車が発進直後と判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作が先行車の発進直後に対応するためのもの(車間時間の変更を意図する操作でない)と推定し、目標車間時間設定部35では、それまでに設定されている目標車間時間を保持する。
先行車が発進直後でないと判定した場合、運転者が行ったブレーキ操作又はアクセル操作が車間時間を意図する操作と推定し、目標車間時間設定部35では、ブレーキOFF又はアクセルOFFしたときの車間時間を目標車間時間として再設定する。
図6には、追従制御中に、後方から走行してきた自車MVの前方で先行車FVが停止状態から発進した場合を示している。図6(a)に示すように先行車FVが停止している場合、先行車FVの車速FSは0km/hであり、自車MVでは減速して車速MSが徐々に低下するので(図7(b)参照)、相対速度(絶対値)RSは徐々に小さくなる(図7(c)参照)。図6(b)に示すように先行車FVが発進(加速)した場合、先行車FVの車速FSは徐々に上昇し、それに応じて自車MVの車速MSが変化するので(図7(b)参照)、相対速度RSは更に小さくなる(図7(c)参照)。やがて、通常の追従走行となるため、相対速度RSは、0km/hとなる(図7(c)参照)。
先行車FVが停止状態から発進した直後の場合、自車MVの運転者は、動き出した先行車FVの加速度を予測しながらブレーキ又はアクセルのペダル操作を行う。したがって、この先行車FVの発進直後の先行車FVとの車間時間は、運転者が追従走行時の車間時間を意図したものではない。このような状況のときに運転者のブレーキ又はアクセルのペダル操作に応じて目標車間時間を変更すると、通常の追従走行になったときに運転者の意図した車間時間にならない可能性が大きい。
そこで、先行車FVの停止状態から発進直後の区間CPでは、自車の運転者がブレーキ又はアクセルのペダル操作O1を行ったとしても(図7(d)参照)、先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTを変更しない(図7(a)参照)。そして、先行車FVと自車MVとの相対速度RSが先行車発進直後判定閾値AS以下になった後に(図7(c)参照)、自車MVの運転者のペダル操作O3を行うと(図7(d)参照)、その操作O3のOFF時の先行車FVと自車MVとの実際の車間時間RTに応じて目標車間時間TTをT2に変更する(図7(a)参照)。
目標加速度演算部36では、先行車認識部31で検出した先行車の有無情報を用いて先行車が存在するか否かを判定する。さらに、先行車が存在する場合、目標加速度演算部36では、その先行車の車速が目標車速を超えたか否かを判定する。
先行車が存在しない場合あるいは先行車が存在するときでも先行車の車速が目標車速を超えた場合、目標加速度演算部36では、一定時間毎に、自車速と目標車速との差に基づいて、自車速が目標車速になるために必要な目標加減度を演算する。目標加減度がプラス値の場合、目標加速度演算部36では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU20に送信する。目標加減度がマイナス値の場合、目標加速度演算部36では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU21に送信する。
先行車が存在する場合(特に、先行車の車速が目標車速以下の場合)、目標加速度演算部36では、一定時間毎に、先行車認識部31で求めた先行車との車間距離と自車速を用いて、先行車との車間時間(=車間距離/自車速)と目標車間時間との差に基づいて、先行車との車間時間が目標車間時間になるために必要な目標加速度を演算する。目標加速度がプラス値の場合、目標加速度演算部36では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU20に送信する。目標加速度がマイナス値の場合、目標加速度演算部36では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU21に送信する。
図1を参照して、ACC装置1における動作について説明する。特に、ACCECU30のレーンチェンジ対応目標車間時間設定機能については図8のフローチャートに沿って説明し、先行車停止対応目標車間時間設定機能については図9のフローチャートに沿って説明し、先行車発進直後対応目標車間時間設定機能については図10のフローチャートに沿って説明する。図8は、図1のACCECUにおけるレーンチェンジ対応目標車間時間設定機能の処理の流れを示すフローチャートである。図9は、図1のACCECUにおける先行車停止対応目標車間時間設定機能の処理の流れを示すフローチャートである。図10は、図1のACCECUにおける先行車発進直後対応目標車間時間設定機能の処理の流れを示すフローチャートである。
ミリ波レーダ10では、ミリ波を送受信し、その送受信した情報をレーダ信号としてACCECU30に送信している。カメラ11では、自車の前方を撮像し、その画像情報を画像信号としてACCECU30に送信している。ブレーキペダルスイッチ12では、ブレーキのON/OFFを検出し、その検出したON/OFF情報をブレーキペダル信号としてACCECU30に送信している。アクセルペダルスイッチ13では、アクセルのON/OFFを検出し、その検出したON/OFF情報をアクセルペダル信号としてACCECU30に送信している。ウィンカスイッチ14では、運転者のウィンカ操作情報をウィンカ信号としてACCECU30に送信している。車速センサ15では、車輪の回転速度を検出し、その回転速度を車速信号としてACCECU30に送信している。ヨーレートセンサ16では、自車のヨーレートを検出し、そのヨーレートをヨーレート信号としてACCECU30に送信している。
ACCECU30では、一定時間毎に、各センサ10〜16から各種信号を受信する。そして、ACCECU30では、車速信号に基づいて、自車の車速を演算する。また、ACCECU30では、レーダ信号に基づいて、先行車の有無を判定するとともに先行車が存在する場合には先行車との相対距離、相対速度、横位置などを演算する。さらに、ACCECU30では、その先行車の相対速度と自車の車速に基づいて、先行車の車速を演算する。また、ACCECU30では、撮像信号に基づいて、車線を示す一対の白線を認識する。
レーンチェンジ対応目標車間時間設定機能について説明する。ACCECU30では、アクセルペダル信号に基づいて、運転者によるアクセル操作に応じたアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点を検出したか否かを判定する(S10)。S10にてアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点でないと判定した場合、ACCECU30では、ブレーキペダル信号に基づいて、運転者によるブレーキ操作に応じたブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点を検出したか否かを判定する(S11)。S10にてアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点でないと判定した場合かつS11にてブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点でないと判定した場合、ACCECU30では、今回の目標車間時間設定機能を終了する。
S10にてアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点と判定した場合又はS11にてブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点と判定した場合、ACCECU30では、先行車の横位置及び白線情報に基づいて、先行車がレーンチェンジ中か否かを判定する(S12)。S12にて先行車がレーンチェンジ中と判定した場合、ACCECU30では、ウィンカ信号、ヨーレート信号及び自車の車速、白線情報に基づいて、自車がレーンチェンジ中か否かを判定する(S13)。
S12にて先行車がレーンチェンジ中と判定した場合かつS13にて自車がレーンチェンジ中と判定した場合、ACCECU30では、現在設定されている目標車間時間を保持する(S14)。一方、S12にて先行車がレーンチェンジ中でないと判定した場合又はS13にて自車がレーンチェンジ中でないと判定した場合、ACCECU30では、先行車との相対距離及び自車の車速に基づいて現在の車間時間を演算し、その車間時間(アクセルOFF時点又はブレーキOFF時点での車間時間)を目標車間時間として変更する(S15)。
先行車停止対応目標車間時間設定機能について説明する。レーンチェンジ対応目標車間時間設定機能で行ったS10、S11の各判定を行い(S20,S21)、S20にてアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点と判定した場合又はS21にてブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点と判定した場合、ACCECU30では、先行車の車速に基づいて、先行車が停止中か否かを判定する(S22)。
S22にて先行車が停止中と判定した場合、ACCECU30では、現在設定されている目標車間時間を保持する(S23)。一方、S22にて先行車が停止中でないと判定した場合、ACCECU30では、上記のS15と同様に目標車間時間をOFF時点での車間時間に変更する(S24)。
先行車発進直後対応目標車間時間設定機能について説明する。レーンチェンジ対応目標車間時間設定機能で行ったS10、S11の各判定を行い(S30,S31)、S30にてアクセルONからアクセルOFFへの切り替わり時点と判定した場合又はS31にてブレーキONからブレーキOFFへの切り替わり時点と判定した場合、ACCECU30では、先行車の車速に基づいて先行車の停止状態を判定した後に、先行車の車速と自車の車速との相対速度を演算し、その相対速度に基づいて先行車が発進直後か否かを判定する(S32)。
S32にて先行車が停止状態からの発進直後と判定した場合、ACCECU30では、現在設定されている目標車間時間を保持する(S33)。一方、S32にて先行車が発進直後でないと判定した場合、ACCECU30では、上記のS15と同様に目標車間時間をOFF時点での車間時間に変更する(S34)。
なお、上記の3つの目標車間時間設定機能では、各機能の処理の流れを判り易くするために3つに分けてそれぞれ説明したが、1つに統一してもよい。統一する場合、アクセルONからアクセルOFFの切り替わり時点を検出又はブレーキONからブレーキOFFの切り替わり時点を検出した場合、先行車がレーンチェンジ中かつ自車がレーンチェンジ中の状況、先行車が停止中の状況、先行車が停止状態からの発進直後の状況のうちのいずれかの状況を判定したときには目標車間時間を保持し、いずれの状況でもないときには目標車間時間を変更する。
目標車速以下の車速の先行車が存在する場合、追従制御により、ACCECU30では、一定時間毎に、先行車との車間時間が目標車間時間となるために必要な目標加速度を演算する。目標加速度がプラス値の場合、ACCECU30では、目標加速度を示すエンジン制御信号をエンジン制御ECU20に送信する。このエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御ECU20では、エンジン制御信号に示される目標加速度となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータに送信する。この目標スロットル開度信号を受信すると、スロットルアクチュエータでは、目標スロットル開度信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。目標スロットル開度になると、自車では、目標加速度となり、目標車速となる。目標加速度がマイナス値の場合、ACCECU30では、目標減速度を示すブレーキ制御信号をブレーキ制御ECU21に送信する。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御ECU21では、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。この目標油圧信号を受信すると、ブレーキアクチュエータでは、目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車では、目標減速度となり、目標車速となる。これによって、自車では、先行車との車間時間が目標車間時間になるように調整される。
先行車が存在しない場合あるいは目標車速を超える車速で走行中の先行車が存在する場合、定速制御により、ACCECU30では、一定時間毎に、自車速が目標車速となるために必要な目標加速度を演算する。この目標加速度に基づいて、ACCECU30、エンジン制御ECU20(スロットルアクチュエータ、スロットルバルブ)、ブレーキ制御ECU21(ブレーキアクチュエータ、ホイールシリンダ)において上記した追従制御と同様の動作が行われる。これによって、自車では、自車速が目標車速になるように調整される。
このACC装置1によれば、先行車の追従走行に適さない走行状況あるいは先行車及び自車の追従走行に適さない走行状況に対応するために運転者がアクセルペダル操作又はブレーキペダル操作を行った場合には目標車間時間の変更を行わないので、運転者の意図に反する目標車間時間の変更を防止することができる。
ACC装置1では、追従走行に適さない走行状況として先行車及び自車がレーンチェンジ中、先行車が停止中、先行車が停止状態から発進直後の3つの状況を判定することにより、運転者が車間時間を変更するために行ったペダル操作か否かを高精度に判定できる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では追従制御と定速制御を行うACC装置に適用したが、追従制御(車間距離制御)だけを行う装置に適用してもよい。
また、本実施の形態では目標車間時間設定においてレーンチェンジ対応目標車間時間設定機能、先行車停止対応目標車間時間設定機能、先行車発進直後対応目標車間時間設定機能の3つの機能を全て有する構成としたが、この3つの機能うちの1又は2つの機能だけを有する構成としてもよい。
また、本実施の形態では先行車を検知するためにミリ波レーダを適用したが、レーザレーダなどの他のレーダあるいはステレオカメラなどの他の検知手段を適用してもよい。
また、本実施の形態では複数のECUを備え、エンジン制御ECU及びブレーキ制御ECUを利用してエンジン制御及びブレーキ制御を行う構成としたが、ACCECUによってエンジン制御及びブレーキ制御を直接行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では車間時間(目標車間時間)を用いて先行車との車間を制御する構成としたが、車間距離(目標車間距離)を用いて先行車との車間を制御する構成としてもよい。
また、本実施の形態では自車と先行車とが共にレーンチェンジする状況、先行車が停止している状況、先行車が発進直後の状況を先行車の走行状況が追従走行に適さない状況(運転者のアクセル操作やブレーキ操作が先行車への追従走行よりも優先する状況に対応するための操作の場合)として目標車間時間の変更を行わない構成としたが、この3つの状況の他にも先行車の走行状況が追従走行に適さない状況の場合には目標車間時間の変更を行わないようにしてよい。
また、本実施の形態では先行車と自車のレーンチェンジの判定方法、先行車の停止の判定方法、先行車の発進直後の判定方法の一例を示したが、他の方法で判定してもよい。
1…ACC装置、10…ミリ波レーダ、11…カメラ、12…ブレーキペダルスイッチ、13…アクセルペダルスイッチ、14…ウィンカスイッチ、15…車速センサ、16…ヨーレートセンサ、20…エンジン制御ECU、21…ブレーキ制御ECU、30…ACCECU、31…先行車認識部、32…レーンチェンジ認識部、33…ブレーキ操作検出部、34…アクセル操作検出部、35…目標車間時間設定部、36…目標加速度演算部