JP2018120040A - 眼用レンズ、その設計方法、その製造方法、および眼用レンズセット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】近用度数を備えた近用部と、遠用度数を備えた遠用部とを有し、近用部または遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、光学部の中央に配された近用部または遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する眼用レンズおよびその関連技術を提供する。
【選択図】図4
Description
図1に示すように、レンズの光学中心Oを同心として中央に近用部、その外縁に環状の遠用部を配する。本例では光学中心Oを幾何中心と一致させる。こうして近用部および遠用部を有する光学部が構成される。そして光学部のさらに外縁に環状の周辺部を有する。周辺部はレンズを角膜上に載置した際に瞼の裏に入り込みやすいフランジ形状を有するのが通常である。つまり光学部と周辺部により本例のレンズは構成される。ただし、光学部と周辺部とは各々が上記の機能を奏するために区別されているのであって、光学部と周辺部との間に段差等のように目視で確認可能な明確な境目があるわけではない。
以上の知見を得た結果、以降に記載された本発明の構成を採用するに至った。なお、以下に示す好適な各態様は適宜組み合わせ可能である。
近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する、眼用レンズである。
前記光学部においては前記近用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する。
前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所は1か所のみであり、且つ、前記部分A’においても度数が極大となる箇所は1か所のみである。
前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所と、前記部分A’において度数が極大となる箇所との間の平面視距離は1.0〜2.8mmである。
前記部分Aにおける度数の極大値と前記近用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、前記部分A’における度数の極大値と前記近用度数との差も0.05〜0.25Dである。
前記光学部においては前記遠用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記遠用度数よりも遠用へと度数を強めた後に近用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する。
前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所は1か所のみであり、且つ、前記部分A’においても度数が極小となる箇所は1か所のみである。
前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所と、前記部分A’において度数が極小となる箇所との間の平面視距離は1.0〜2.8mmである。
前記部分Aにおける度数の極小値と前記遠用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、前記部分A’における度数の極小値と前記遠用度数との差も0.05〜0.25Dである。
前記眼用レンズはコンタクトレンズ(ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズ。好ましくはソフトコンタクトレンズ。)である。
前記眼用レンズは眼内レンズである。
近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズの設計方法であって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有するように眼用レンズを設計する、眼用レンズの設計方法である。
前記光学部においては前記近用部を中央に配し、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めるように眼用レンズを設計する。
前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所は1か所のみとし、且つ、前記部分A’においても度数が極大となる箇所は1か所のみとする。
前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所と、前記部分A’において度数が極大となる箇所との間の平面視距離を1.0〜2.8mmとする。
前記部分Aにおける度数の極大値と前記近用度数との差を0.05〜0.25Dとし、且つ、前記部分A’における度数の極大値と前記近用度数との差も0.05〜0.25Dとする。
前記光学部においては前記遠用部を中央に配し、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記遠用度数よりも遠用へと度数を強めた後に近用度数に至るまで度数を弱めるように眼用レンズを設計する。
前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所を1か所のみとし、且つ、前記部分A’においても度数が極小となる箇所を1か所のみとする。
前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所と、前記部分A’において度数が極小となる箇所との間の平面視距離を1.0〜2.8mmとする。
前記部分Aにおける度数の極小値と前記遠用度数との差を0.05〜0.25Dとし、且つ、前記部分A’における度数の極小値と前記遠用度数との差も0.05〜0.25Dとする。
前記眼用レンズはコンタクトレンズ(ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズ。好ましくはソフトコンタクトレンズ。)である。
前記眼用レンズは眼内レンズである。
設計された眼用レンズを加工装置により製造する加工工程と、
を有する、眼用レンズの製造方法である。
近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズを複数備える眼用レンズセットであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する眼用レンズを複数備える、眼用レンズセットである。
前記光学部においては前記近用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’とは、近用部内において度数が増加した後に近用度数以下へと減少し(好ましくは度数が減少し続け)た後、遠用度数に至るまで度数が減少す(好ましくは度数が減少し続け)る部分である。
度数プロットで見たときに上に凸部分が2か所(すなわち凹部分が1か所)存在するのが好ましい。
上記の平面視距離は1.0〜2.8mmであるのが好ましく、下限は、より好ましくは1.2mm、さらに好ましくは1.4mm、非常に好ましくは1.6mmであり、上限は、より好ましくは2.6mm、さらに好ましくは2.4mmである。
部分Aにおける度数の極大値と近用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、部分A’における度数の極大値と近用度数との差も0.05〜0.25Dであるのが好ましい。各々の下限は、より好ましくは0.10D、さらに好ましくは0.12D、非常に好ましくは0.15Dであり、上限は、より好ましくは0.20Dである。
レンズに対して直線X−X’を光学中心Oを中心に0から180°まで回転させたときに、部分Aおよび部分A’において近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する部分が光学部の50面積%以上であるのが好ましく、80面積%以上がより好ましく、90面積%以上がさらに好ましい。
前記光学部においては前記遠用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’とは、遠用部内において度数が減少した後に遠用度数以上へと増加し(好ましくは増加し続け)た後、近用度数に至るまで度数が増加す(好ましくは度数が増加し続け)る部分である。
度数プロットで見たときに凹部分が2か所(すなわち上に凸部分が1か所)存在するのが好ましい。
上記の平面視距離は1.0〜2.8mmであるのが好ましく、下限は、より好ましくは1.2mm、さらに好ましくは1.4mm、非常に好ましくは1.6mmであり、上限は、より好ましくは2.6mm、さらに好ましくは2.4mmである。
部分Aにおける度数の極小値と遠用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、部分A’における度数の極小値と遠用度数との差も0.05〜0.25Dであるのが好ましい。各々の下限は、より好ましくは0.10D、さらに好ましくは0.12D、非常に好ましくは0.15Dであり、上限は、より好ましくは0.20Dである。
レンズに対して直線X−X’を光学中心Oを中心に0から180°まで回転させたときに、部分Aおよび部分A’において遠用度数よりも遠用へと度数を強めた後に近用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する部分が光学部の50面積%以上であるのが好ましく、80面積%以上がより好ましく、90面積%以上がさらに好ましい。
前記眼用レンズは眼内レンズであり、
前記眼用レンズは、前記光学部を有するレンズ本体と、前記レンズ本体から延在する支持部とを備える。
前記支持部は、例えば、レンズ本体から腕状に延在する2本の支持部である。
近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時には度数の変曲点が存在する、眼用レンズまたはその設計方法、製造方法である。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.コンタクトレンズ
1−1.マルチフォーカルコンタクトレンズ(多焦点レンズ)
1−1−1.近用部を中央に配置
1−1−2.遠用部を中央に配置
1−2.その他のコンタクトレンズ
2.コンタクトレンズの設計方法(製造方法)
3.眼内レンズ(IOL)およびその設計方法(製造方法)
4.眼用レンズセット
5.変形例
また、本明細書にて扱う眼用レンズ(コンタクトレンズ、または眼内レンズにおけるレンズ本体)は互いに対向する二つの面を有する。該眼用レンズを装用者が装着した際に網膜側に位置する方を「後面」とし、その逆の物体側に位置する方を「前面」とする。
また、本明細書にて度数とはパワー(単位は[D])のことを指す。
その一方、中央に遠用部が配される場合、「遠用度数を強め」とは、より遠くが見える方向すなわちマイナス方向に強めることを指し、度数を減少させることを指す(例:0.00D→−0.10D)。逆に「遠用度数を弱め」とは、遠くが見えにくくなる方向すなわちプラス方向に見て弱めることを指し、度数を増加させることを指す(例:−0.10D→0.00D)。
つまり、中央に近用部が配されるか遠用部が配されるか未定の段階での「度数を強め」とは、近用度数または遠用度数を強めることを意味し、「度数を弱め」とは近用度数または遠用度数を弱めることを意味する。
1−1.マルチフォーカルコンタクトレンズ(多焦点レンズ)
本実施形態においてはマルチフォーカルコンタクトレンズ(多焦点レンズ。以降、単にレンズとも称する。)を主として例示する。
本実施形態におけるレンズは、先に説明した従来のレンズと同様、光学性能に主として寄与する略円形状の光学部と、該光学部の周縁に位置する環状の周辺部を備える。先ほど述べたように周辺部はレンズを角膜上に載置した際に瞼の裏に入り込みやすいフランジ形状を有するのが通常である。そして光学部は、近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離(無限遠含む)を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有するものである。そして本実施形態においては、近用部が中央に配され、遠用部がその外縁に環状に配された例を挙げる。なお、平面視の構成としては先に挙げた図1と同様である。本例においても光学中心Oをレンズの幾何中心と一致させた例を挙げるが、本発明はそれに限定されない(以降同様)。
本実施形態のマルチフォーカルコンタクトレンズの光学部をX−X’方向の端Fから端F’まで見た時の度数をプロットした図4(a)および近用部の拡大図である図4(b)を用いて説明する。図2と同様、横軸は、レンズを平面視した際のX−X’における光学中心Oからの距離を示す。縦軸は、レンズの度数(単位:ディオプター[D])を示す。
ただし、図4(b)に示すように、本実施形態のレンズは、部分Aおよび部分A’においては近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する。ここで言う部分Aおよび部分A’とは、近用部内において例えば部分Aだと度数が増加した後に近用度数以下へと減少し(好ましくは度数が減少し続け)た後、遠用度数に至るまで度数が減少す(好ましくは度数が減少し続け)る部分のことを指す。図4で言うと、部分Aおよび部分A’は、近用部(中央)に存在しつつもその周辺である遠用部にもわたって存在する部分である。
その一方で、図5に示すように、はじめは緩やかに度数が減少し、その後で少しばかり急に度数が減少し、最終的には遠用度数へと至った後も度数が減少し続けるという度数プロットを有しても構わない。
また、図6に示すように、はじめは緩やかに度数が減少し、その後で急激に度数が減少し、再び度数の減少が緩やかとなり、最終的には遠用度数へと至った後は度数変化が無くなるという度数プロットを有しても構わない。
また、図7に示すように、はじめは緩やかに度数が減少し、その後で少しばかり急に度数が減少したのちに急激に度数が減少し、最終的には遠用度数へと至った後も度数が減少し続けるという度数プロットを有しても構わない。
さらに言うと、中央の近用部、周縁の遠用部に加え、そのさらに周縁に環状の近用部を設ける場合も本発明は排除しない。また、後で詳述するが中央に遠用部を設け、周縁に近用部、そのさらに周縁に環状の遠用部を設ける場合も同様である。
「近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、近用部が中央に配され、遠用部がその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、
近用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に曲率半径を減少させた後に増加させた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも曲率半径を減少させた後に増加させた部分A’を有する、眼用レンズ。
好ましくは、
部分Aにおいて曲率半径が極小となる箇所は1か所のみであり、且つ、部分A’においても曲率半径が極小となる箇所は1か所のみである。
好ましくは、
部分Aにおいて曲率半径が極小となる箇所と、部分A’において曲率半径が極小となる箇所との間の平面視距離は1.0〜2.8mmである。
好ましくは、
部分Aにおける曲率半径の極小値と光学中心の曲率半径との差の好適な値は、中央の度数(パワー)によるところが大きいが、一例としては0.01〜0.13mm、好ましくは0.03〜0.11mmであり、部分A’における曲率半径の極小値と近用度数との差も一例としては0.01〜0.13mm、好ましくは0.03〜0.11mmである。その際の設定は、光学中心のパワーを−3.00D、ベースカーブ8.5mm、屈折率1.45、中心肉厚0.10mmとしている。」
ちなみに度数にて規定した場合の好適例を、曲率半径を用いた場合に対し、適宜度数を曲率半径へと変換したうえで適用することも可能である。
なお、本明細書において「面積%」とは、平面視した際の光学部の面積に対し、同じく平面視した際の、光学中心からみて、レンズに対して直線X−X’を光学中心Oを中心に0から180°まで回転させたときに上記の形状を有する部分(例えば光学中心Oと光学部の最外縁の円弧で囲まれる扇形の2か所の部分(0°〜180°にある部分A、180°〜360°にある部分A’))の面積の合計の百分率を意味する。
また、レンズにおける光学部と周辺部との間には、先に述べたように目視で確認可能な境目があるわけではないが、レンズの度数を測定する装置(パワーメータ)を使用することにより判別可能である。
上記の例とは逆に、遠用部が中央に配され、近用部がその外縁に環状に配された場合についても本発明の思想を適用することが可能である。なお、平面視の構成としては先に挙げた図4における近用部と遠用部の位置を逆転させたものとなる。それを表したのが図8である。
なお、本例における部分Aおよび部分A’とは、遠用部内において例えば部分Aだと度数が減少した後に遠用度数以上へと増加し(好ましくは増加し続ける)た後、近用度数に至るまで度数が増加す(好ましくは度数が増加し続け)る部分のことを指す。図9で言うと、部分Aおよび部分A’は、遠用部(中央)に存在しつつもその周辺である近用部にもわたって存在する部分である。
ただし、図9(b)に示すように、本例のレンズは、部分Aおよび部分A’においては遠用度数よりも遠用へと度数を強め(より遠くが見える方向すなわちマイナス方向に強める。)た後に近用度数に至るまで度数を弱め(遠くが見えない方向すなわちマイナス方向から見て弱める。)た形状を有する。
本実施形態においてはマルチフォーカルコンタクトレンズを例示したが、それ以外のコンタクトレンズにも本発明の技術的思想を適用することが可能である。
なお、遠用部を中央に配置して外縁に近用部を配置した場合についても本発明の技術的思想を適用することが可能である。その他の内容は、<1−1−2.遠用部を中央に配置>の項目にて述べた内容と重複するため省略する。
上記の内容は、コンタクトレンズの設計方法や製造方法においても十分に適用可能である。例えば設計方法については以下の構成となる。
「近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズの設計方法であって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有するように眼用レンズを設計する、眼用レンズの設計方法。」
本発明の技術的思想は、眼内レンズ(IOL)およびその設計方法(製造方法)においても十分に適用可能である。眼内レンズとしては特に限定は無く、水晶体嚢内に配置する形式(イン ザ バッグ)の眼内レンズや、嚢外に配置する形式(アウト ザ バッグ)の眼内レンズや、縫着型の眼内レンズ等々に適用可能である。
上記の内容は、本実施形態にて例示したコンタクトレンズを複数備えるコンタクトレンズセットや、同じく本実施形態にて例示した眼内レンズを複数備える眼内レンズセットにおいても十分に適用可能である。これらのレンズセットを総称して「眼用レンズセット」と称する。
見方を変えると、本実施形態における眼用レンズセットを構成するすべての眼用レンズセットが上述のような度数の挙動を示す。これは、従来技術において上記の度数の挙動を示す眼用レンズが1枚作製されたとしても、偶々作製されたこの眼用レンズと、本実施形態における眼用レンズセットとでは、構成として全く相違することを意味する。
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する眼用レンズを複数備える、眼用レンズセット。」
本発明は上記の各例に限定されることはなく、上記の各例および好適例を適宜組み合わせてももちろん構わない。また、先に挙げた実施形態だと、X方向にもX’方向にも、度数を強めた後に弱めた部分を有するが、一方にのみ該部分を有しても本発明の効果を多少なりとも奏することが期待される。この内容を規定すると以下のようになる。
「近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時には度数の変曲点が存在する、眼用レンズまたはその設計方法、製造方法。」
ちなみにここでX’方向で度数の変曲点を存在させている理由としては、X’方向にて度数を強めた後に弱めたまでは行かないにしてもそれに近い形状がある方が本発明の効果を奏しやすくなるためである。そして該それに近い形状を規定したものが“度数の変曲点が存在”という表現である。
また、上記試験とは別に、60代男性を被検者とし、上記の各レンズを用いて試験を行った。このときの本発明に係るレンズを実施例2、従来技術に係るレンズを比較例2とした。
まず、50代男性の完全矯正値を設定した。なお完全矯正値とは被検者にとって最も物が見えやすい条件のことを意味する。以下、右目(VD)および左目(VS)における完全矯正値を示す。
VD=1.5×S+0.50D(頂点間距離を考慮した有効加入度数+1.20D)
VS=1.5×S+0.50D(頂点間距離を考慮した有効加入度数+1.20D)
上記の各式の意味は、球面度数Sを0.50Dとすることにより視力1.5を達成できることを意味する。また、頂点間距離を考慮した有効加入度数+1.20Dとは、眼鏡レンズにおいて頂点間距離12mmであった場合をコンタクトレンズの場合に対応させた場合の補正量を表す。
R:BC8.7mm/P+0.50D/ADD+1.50(光学部において、中央に近用部を配し、その周縁に遠用部を配するレンズ)
L:BC8.7mm/P+0.50D/ADD+1.50(光学部において、中央に近用部を配し、その周縁に遠用部を配するレンズ)
なお、実施例1のレンズの光学部をX−X’方向の端Fから端F’まで見た時の度数をプロットしたのが図10である。また、実施例1のレンズにおいては、レンズに対して直線X−X’を光学中心Oを中心に0から180°まで回転させたときに、光学部(全体)が該形状を有するようにした。
同様に、比較例1のレンズの光学部をX−X’方向の端Fから端F’まで見た時の度数をプロットしたのが図11である。
まず、60代男性の完全矯正値を設定した。なお完全矯正値とは被検者にとって最も物が見えやすい条件のことを意味する。以下、右目(VD)および左目(VS)における完全矯正値を示す。
VD=1.5×S−1.25D(頂点間距離を考慮した有効加入度数+1.80D)
VS=1.5×S−1.25D(頂点間距離を考慮した有効加入度数+1.80D)
R:BC8.7mm/P−1.25D/ADD+2.00(光学部において、中央に近用部を配し、その周縁に遠用部を配するレンズ)
L:BC8.7mm/P−1.25D/ADD+2.00(光学部において、中央に近用部を配し、その周縁に遠用部を配するレンズ)
なお、実施例2のレンズの光学部をX−X’方向の端Fから端F’まで見た時の度数をプロットしたのが図12である。また、実施例2のレンズにおいては、レンズに対して直線X−X’を光学中心Oを中心に0から180°まで回転させたときに、光学部(全体)が該形状を有するようにした。
同様に、比較例2のレンズの光学部をX−X’方向の端Fから端F’まで見た時の度数をプロットしたのが図13である。
以上の結果、各実施例によれば、光学部の中央に近用部が配された場合、近用部において近用度数を十分に確保しつつも近用部とその外縁に設けられた遠用部とのバランスを良好に保つことが可能となることがわかった。なお、光学部の中央に遠用部が配された場合にも同様の効果が十分に期待できる。
2………遠用部
3………光学部
4………周辺部
5………マルチフォーカルコンタクトレンズ
Claims (24)
- 近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する、眼用レンズ。 - 前記光学部においては前記近用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。 - 前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所は1か所のみであり、且つ、前記部分A’においても度数が極大となる箇所は1か所のみである、請求項2に記載の眼用レンズ。
- 前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所と、前記部分A’において度数が極大となる箇所との間の平面視距離は1.0〜2.8mmである、請求項2または3に記載の眼用レンズ。
- 前記部分Aにおける度数の極大値と前記近用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、前記部分A’における度数の極大値と前記近用度数との差も0.05〜0.25Dである、請求項2〜4のいずれかに記載の眼用レンズ。
- 前記光学部においては前記遠用部が中央に配され、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記遠用度数よりも遠用へと度数を強めた後に近用度数に至るまで度数を弱めた形状を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。 - 前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所は1か所のみであり、且つ、前記部分A’においても度数が極小となる箇所は1か所のみである、請求項6に記載の眼用レンズ。
- 前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所と、前記部分A’において度数が極小となる箇所との間の平面視距離は1.0〜2.8mmである、請求項6または7に記載の眼用レンズ。
- 前記部分Aにおける度数の極小値と前記遠用度数との差は0.05〜0.25Dであり、且つ、前記部分A’における度数の極小値と前記遠用度数との差も0.05〜0.25Dである、請求項6〜8のいずれかに記載の眼用レンズ。
- 前記眼用レンズはコンタクトレンズである、請求項1〜9のいずれかに記載の眼用レンズ。
- 前記眼用レンズは眼内レンズである、請求項1〜9のいずれかに記載の眼用レンズ。
- 近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズの設計方法であって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有するように眼用レンズを設計する、眼用レンズの設計方法。 - 前記光学部においては前記近用部を中央に配し、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記近用度数よりも近用へと度数を強めた後に遠用度数に至るまで度数を弱めるように眼用レンズを設計する、請求項12に記載の眼用レンズの設計方法。 - 前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所は1か所のみとし、且つ、前記部分A’においても度数が極大となる箇所は1か所のみとする、請求項13に記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記部分Aにおいて度数が極大となる箇所と、前記部分A’において度数が極大となる箇所との間の平面視距離を1.0〜2.8mmとする、請求項13または14に記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記部分Aにおける度数の極大値と前記近用度数との差を0.05〜0.25Dとし、且つ、前記部分A’における度数の極大値と前記近用度数との差も0.05〜0.25Dとする、請求項13〜15のいずれかに記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記光学部においては前記遠用部を中央に配し、
前記部分Aおよび前記部分A’においては前記遠用度数よりも遠用へと度数を強めた後に近用度数に至るまで度数を弱めるように眼用レンズを設計する、請求項12に記載の眼用レンズの設計方法。 - 前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所を1か所のみとし、且つ、前記部分A’においても度数が極小となる箇所を1か所のみとする、請求項17に記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記部分Aにおいて度数が極小となる箇所と、前記部分A’において度数が極小となる箇所との間の平面視距離を1.0〜2.8mmとする、請求項17または18に記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記部分Aにおける度数の極小値と前記遠用度数との差を0.05〜0.25Dとし、且つ、前記部分A’における度数の極小値と前記遠用度数との差も0.05〜0.25Dとする、請求項17〜19のいずれかに記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記眼用レンズはコンタクトレンズである、請求項12〜20のいずれかに記載の眼用レンズの設計方法。
- 前記眼用レンズは眼内レンズである、請求項12〜20のいずれかに記載の眼用レンズの設計方法。
- 請求項12〜22のいずれかに記載の眼用レンズの設計方法によって眼用レンズを設計する設計工程と、
設計された眼用レンズを加工装置により製造する加工工程と、
を有する、眼用レンズの製造方法。 - 近方距離を見るための近用度数を備えた近用部と、近方距離よりも遠くの距離を見るための遠用度数を備えた遠用部とを有し、前記近用部または前記遠用部が中央に配され、中央に配されなかったものがその外縁に環状に配された光学部を備えた眼用レンズを複数備える眼用レンズセットであって、
前記光学部の中央に配された前記近用部または前記遠用部において、中央から周辺に向かうX方向で見た時に度数を強めた後に弱めた部分Aを有し且つX方向とは正反対の方向であって中央から周辺に向かうX’方向で見た時にも度数を強めた後に弱めた部分A’を有する眼用レンズを複数備える、眼用レンズセット。
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