JP5039059B2 - 多焦点眼用レンズ - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は多焦点眼用レンズに係り、特に老視眼の視力補正について改善された多焦点眼内レンズを一例とする多焦点眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
多焦点眼用レンズは、単焦点眼用レンズより深い焦点深度を有する。この多焦点眼用レンズの特徴は老視眼の矯正に有益な点である。単焦点眼内レンズを用いた老視眼は遠用距離の像、及び遠用距離から中間距離までの一部の像のみ、または近用距離の像、及び近用距離から中間距離までの一部の像のみを明瞭に見ることができるものが多い。例えば、屈折誤差が0ディオプタ(D)である遠用視用の単焦点眼内レンズの屈折矯正力では近距離対象物を鮮明に見ることができない。そのため別途眼鏡が必要となる。以下、本明細書において、記号Dはディオプタを表すものとする。
【0003】
一方、多焦点眼内レンズを用いた老視眼は、レンズの光学設計により、遠用、近用及び中間距離を鮮明に見ることができる。近用視、中間視、遠用視の視距離の範囲は、それぞれ眼前60cmまで、眼前60cm〜眼前1.5m、眼前1.5mから無限遠である。中間視の視距離の範囲に特別な定義はないが、眼光学の分野では眼前60cm〜眼前1.5mの範囲は中間視の視距離として受け入れられている。
【0004】
多焦点眼内レンズの光学設計に関して多数の特許が、老視眼の矯正について異なる考えを提示している。多焦点眼内レンズに対して適用される遠用視補正用の中央ゾーンと、この中央ゾーンを取り囲む近用視補正用の環状ゾーンからなる多焦点眼内レンズの光学設計に関する発明の例を以下に示す。
【0005】
特許文献1及び2には、遠用視補正用の中央ゾーンと、この中央ゾーンを取り囲む近用視補正用の環状ゾーンを有する多焦点眼内レンズが提示されている。明所にて遠距離の対象物を見る場合、眼の瞳孔は縮瞳する。この環境下では、ほとんどの光が多焦点眼内レンズの中央ゾーン(遠用視補正領域)により網膜上に屈折させられるため、人の視覚システム(眼、網膜、視神経、脳)は遠距離対象物を鮮明に捉えることができる。また、平均的な室内照明または読書時の照明において、眼が近距離または中間距離の対象物を見るときには瞳孔が広がる。このときには、多焦点眼内レンズの環状ゾーン(近用視補正領域)によって網膜上に屈折させられる光が増加する。この結果、近距離または中間距離の対象物を鮮明に見ることができる。
【0006】
このような特許文献1及び2における多焦点眼内レンズの光学的性能は、瞳孔径の大きさにより容易に影響を受ける。例えば、水晶体に代えて当該眼内レンズを挿入手術した後の無水晶体眼患者が夜間外出する場合、光量が非常に低い照明環境のために眼球の瞳孔は最大径近くまで開く。このとき環状ゾーン(近用視補正領域)は瞳孔領域によって覆われるので、この環状ゾーンの面積の比率は、中央ゾーン(遠用視補正領域)のそれよりも非常に大きくなる。従って、夜間において中央ゾーンが利用できる光量が不充分となり、眼患者は眼鏡無しで遠距離対象物を見ることが殆んど不可能となる。
【0007】
この特許文献1及び2には、上述の事情を考慮して、遠用視補正用の中央ゾーンと、近用視補正用の環状ゾーンとが繰り返して構成されることで、レンズの光学性能が瞳孔径に影響される依存性を減少させるようにした多焦点眼内レンズが提示されている。当該眼内レンズにおける遠用視補正用ゾーンの総面積と近用視補正用ゾーンの総面積は相対的に略等しい。このようなレンズ構成上の等面積性により、遠用視と近用視の結像性能のバランスが確保される。
【0008】
また、特許文献3及び4には、3ゾーン光学設計の多焦点コンタクトレンズが提示されている。このコンタクトレンズにおける光学部は、遠用視補正用の中央ゾーンと、この中央ゾーンを取り囲む近用視補正用の第1環状ゾーンと、この第1環状ゾーンを取り囲む遠用視補正用の第2環状ゾーンとからなる。薄暮または暗所下における瞳孔径が、平均的な室内照明または読書時の照明の環境下における瞳孔径と比べ広がることにより、第2環状ゾーンは、遠用視のために光を取り囲む役割を果す。この光学設計においては、多焦点コンタクトレンズの遠用視補正用ゾーンと近用視補正用ゾーンの面積は、視距離と照明環境との関係によって変化する瞳孔径の大きさに従って設計される。
【0009】
更に、特許文献5及び6には、3ゾーン光学設計を採用し、異なる環境照明下において瞳孔径の大きさが変化する傾向を見越して、中央ゾーン(遠用視補正領域)、第1環状ゾーン(近用視補正領域)、第2環状ゾーン(遠用視補正領域)のそれぞれの範囲を加減して限定し、これにより多焦点眼内レンズの光学部を設計した多焦点眼内レンズが提示されている。
【特許文献1】
独国特許発明第3332313A1号明細書
【特許文献2】
米国特許第4813955号明細書
【特許文献3】
米国特許第4752123号明細書
【特許文献4】
特開昭62−121419号公報
【特許文献5】
米国特許第5139519号明細書
【特許文献6】
特許第2993022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献のうち、特許文献3〜6に記載の、3ゾーン光学設計を備えた多焦点眼内レンズにあっては、中央ゾーン(遠用視補正領域)、第1環状ゾーン(近用視補正領域)及び第2環状ゾーン(遠用視補正領域)の面積または径方向の範囲に比べ、加入度数とその度数分布が光学性能に大きな影響を与えることになる。
【0011】
例えば、特許文献5及び6の多焦点眼内レンズでは、図11及び図12に示すように、眼内レンズ100のレンズ光学領域における中央領域に遠用視補正のための第1遠用部103(中央ゾーン)が配置されている。また、この第1遠用部103の外側に同心円状態で環状の近用部104(第1環状ゾーン)が配置されている。さらに、この近用部104の外側に同心円状態で環状の第2遠用部105(第2環状ゾーン)が配置されている。そして、近用部104(第1環状ゾーン)には、近用視補正のための患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数である3〜4D(眼鏡換算で2.25〜3D)の範囲の一定値の度数が設定される。ここで、近用視補正のための所望の加入度数とは、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される度数である。図12は、近用部104に、一定値3.5Dの度数がレンズ径方向の全領域に設定されていることを示すとともに、第1遠用部103(中央ゾーン)及び第2遠用部105(第2環状ゾーン)に、無水晶体眼患者の眼又は老視眼が正視になるために必要とされる眼用レンズの屈折力(度数)である基準度数(ベースパワー)が径方向の全領域に設定されていることを示すものである。
【0012】
しかしながら、このような特許文献5及び6に記載の多焦点眼内レンズ100の近用部104における比較的一定の値の加入度数分布は、浅い近用焦点深度を与えることになる。なぜなら、一定値の加入度数の近用部104は近用視に対してただ一つの焦点距離を持つためである。浅い近用焦点深度は、近距離の狭い範囲(例えば眼前25〜40cm)に置かれた近距離対象物に対してのみ適切な結像能力を与えるに過ぎない。
【0013】
読書等のための近用視を必要とする仕事を除いて、日常生活において近距離対象物を見るとき、眼は、近距離に固定した一点にだけ焦点を合わせるのではなく、眼からの距離が異なる複数の近距離対象物群を連続的に見る。このように、眼が近距離において視点を変えるときの近方視の困難性は、例えば食卓の食べ物を見比べたり、新聞の見出しと写真を一瞥するときなどのように、眼から略同一距離にある一点から他の点に視点を変えるときとは大いに異なる。これに対し、近用の焦点深度が深ければ、近方視の上記困難性が解消されて有益な近用視と快適な近方視を付与することが可能となる。
【0014】
ところで、単焦点眼内レンズを施術する白内障手術では、殆んどの術者は、近用視確保のために未矯正遠用視を犠牲にし、施術後の屈折力の誤差が−0.5〜−1.0D(近視)になることを目的とする。それとは反対に、多焦点眼内レンズを移植する殆んどの術者は、患者の近用視及び未矯正遠用視を完全に得るために、施術後の屈折力が正視または軽度の遠視(0〜+0.5D)になることを目的とする。近年の白内障手術では、術後屈折誤差が予測屈折誤差目標の約±0.5D以内となる精度に達している。
【0015】
このように多焦点眼内レンズを使用する白内障手術では、正視または軽度の遠視を達成するように施術されるが、多焦点眼内レンズを挿入した患者にいくらかの術後屈折誤差があり、この術後屈折誤差の予測値に対する約±0.5Dの誤差に起因して近視になる患者が発生する。このような患者の場合、軽度の近視であっても未矯正遠用視を低下させ、暗所において光源周りに光が拡散するハロー症候やグレア症候が出現する恐れがある。更に、近視は、近点を患者の眼近くにシフトさせるので、近用視の近距離間隔が患者の想定するものより眼に近づくことになり、近方視の快適性を阻害することがある。
【0016】
前述の特許文献のうち、特に特許文献3〜6の多焦点眼用レンズにおいては、隣接する二つの視力補正ゾーンの境界領域における度数分布の特徴が、3ゾーン光学設計の多焦点眼用レンズの光学性能に影響を与えることになる。中央ゾーン(遠用視補正領域)と第1環状ゾーン(近用視補正領域)との境界領域に甚大な度数差がある場合、この度数差による度数分布の不連続性はレンズの二重焦点性を強調し、多重焦点性を弱める傾向になる。二重焦点の特徴を有する眼用レンズは、遠用視と近用視においては高い視力と良好な結像性能を達成するが、中間距離のための中間視に対しては、低い視力と乏しい結像性能を与えるに過ぎない。更に、甚大な度数差による度数分布の不連続性は、遠方視と近方視との間で視点を変えるときに望ましくない像び現象を生じさせる恐れがある。
【0017】
一方、中央ゾーンと第1環状ゾーンとの間、及び第1環状ゾーンと第2環状ゾーンとの間に、中間視補正用の中間度数を有する中間部(移行ゾーン)を付加することで、中間視の結像性能と視力を改善した多焦点眼用レンズがある。
確かに、上記中間部の中間度数により同時に形成される結像は、網膜上に遠方像と近方像を重ね合わせて結像し混在させる場合があり、結像性能を低下させることになる。
また、実際には、日常生活において上記中間部における中間視は、遠用視及び近用視のように高いレベルの視力が必要というわけではない。
また、中間部の面積が大きな多焦点眼用レンズでは、遠用視及び近用視の結像性能を低下させることになる。これは、中間部に光エネルギーの多くが使用されるために、遠用視補正領域および近用視補正領域への光エネルギーの配分が減少すること等が原因である。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、遠方視及び近方視において明瞭に見える範囲をそれぞれ広げることを可能にして、遠方視時及び近方視時の快適性を向上させることを可能にする多焦点眼用レンズを提供することにある。また、本発明の別の目的は、ハロー症候やグレア症候の発生を低減でき、像飛び(ジャンプ)現象の発生を抑制できる多焦点眼用レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述の課題を解決するための手段として第1の手段は、
レンズ光学領域に、遠用視を補正するための遠用部と、近用視を補正するための近用部とが同心円状に配置された多焦点眼用レンズであって、前記遠用部及び前記近用部の径方向において、度数分布が累進的に変化して設定され、かつ、前記遠用部と近用部との境界において、度数が段差状の不連続に変更され、さらに、前記遠用部と近用部との境界における度数の差の値が、中間視を補正するための中間度数の最大値以下であることを特徴とする多焦点眼用レンズである。
【0020】
第2の手段は、
前記近用部における平均度数が、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする第1の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0021】
第3の手段は、
前記遠用部には、基準度数に対して負の平均度数を有する領域が設けられたことを特徴とする第1又は第2の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0022】
第4の手段は、
前記遠用部における近用部側領域は、基準度数に対して正の平均度数に設定されたことを特徴とする第1乃至第3のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0023】
第5の手段は、
前記光学領域の中心領域に第1遠用部が配置され、この第1遠用部の外側領域に同心円状態で環状の近用部が配置され、この近用部の外側領域に同心円状態で環状の第2遠用部が配置されたことを特徴とする第1乃至第4のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0024】
第6の手段は、
前記近用部における第2遠用部側領域の加入度数が、前記近用部における第1遠用部側領域の加入度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする第5の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0025】
第7の手段は、
前記第2遠用部における近用部側領域の度数が、前記第1遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする第5又は第6の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0026】
第8の手段は、
前記第2遠用部における外側領域の度数が、前記第2遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする第5乃至第7のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズ。
【0027】
第9の手段は、
前記第2遠用部における外側領域は、基準度数に対して負の平均度数に設定されたことを特徴とする第5乃至第8のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0028】
第10の手段は、
前記光学領域の中心領域に近用部が配置され、この近用部の外側領域に同心円状態で環状の遠用部が配置されたことを特徴とする第1乃至第4のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0029】
第11の手段は、
前記遠用部における外側領域の度数が、前記遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする第10の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0030】
第12の手段は、
前記遠用部における外側領域は、基準度数に対して負の平均度数に設定されたことを特徴とする第10又は第11の手段にかかる多焦点眼用レンズである。
【0031】
第13の手段は、
レンズ光学領域に、遠用視を補正するための少なくとも1つの遠用部と、近用視を補正するための少なくとも1つの近用部とが同心円状に配置された多焦点眼用レンズであって、
前記遠用部及び前記近用部の径方向において、度数分布が累進的に変化して設定され、
かつ、前記遠用部と近用部との境界において、度数が段差状の不連続に変更され、
前記遠用部と近用部との境界付近の近用部の累進度数分布は、前記境界において、中間視を補正するための中間度数の最大値と近似した値を有し、
前記近用部の累進度数分布は、山状の分布をなし、この山状の度数分布の頂点における最大度数が、意図された最近方距離または読書距離の物体を見る際に必要とされる視力補正のための度数に設定されており、
かつ、前記近用部の累進度数分布は、この近用部と遠用部との境界から前記山状の度数分布の頂点に向かうに従って徐々に度数が増加していく分布であり、
前記遠用部は基準度数より小さい負の平均度数を持つことを特徴とする多焦点眼用レンズである。
【0032】
第14の手段は、
第1乃至第13のいずれかの手段にかかる多焦点眼用レンズが、紫外線吸収剤及び/又は青色光遮断色素を含むことを特徴とする多焦点眼用レンズである。
第15の手段は、
第1乃至第14のいずれかの手段にかかる眼用レンズが、眼内に埋植される眼内レンズであることを特徴とする多焦点眼用レンズである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、遠用部及び近用部のそれぞれの径方向の全領域において、度数(パワー)分布が累進的に変化して設定されたことから、遠用部による遠用焦点深度及び近用部による近用焦点深度を深くすることができる。この結果、遠方視及び近方視において明瞭に見える範囲をそれぞれ広げることができるので、遠方視時及び近方視時の快適性を向上させることができる。
また、本発明によれば、ハロー症候やグレア症候の発生を低減でき、像飛び(ジャンプ)現象の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[A]第1の実施の形態(図1〜図9)
図1は本発明に係る眼用レンズの第1の実施形態である眼内レンズを眼側から見た図であり、図2は本発明に係る眼用レンズの第1の実施形態である眼内レンズのレンズ本体11を示す図であって、図2(A)は図1に示される眼内レンズのレンズ本体11の側面図であり、図2(B)は図1の眼内レンズのレンズ本体11を物体側からみた図である。図3は図1及び図2に示される眼内レンズのレンズ本体11のレンズ半径方向における度数分布を示すグラフである。図4は図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズの焦点深度を従来技術にかかる眼内レンズの場合の焦点深度と比較して示す図であって、図4(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図4(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。図5は図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズの遠点及び近点を、従来技術にかかる眼内レンズの場合の遠点及び近点と比較して示す図であり、図5(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図5(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。図6は図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズのハロー症候を、従来技術にかかる眼内レンズの場合のハロー症候と比較して示す図であって、図6(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図6(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。以下、これらの図面を参照にしながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0035】
図1及び図2に示す眼内レンズ10は、老視眼などの視力を補正するための多焦点眼用レンズであり、レンズ本体11と支持部材12とを備えて構成される。
【0036】
レンズ本体11のレンズ光学領域には視力補正用の3つの領域があり、当該レンズ光学領域の中心領域には第1遠用部13が、この第1遠用部13の外側領域には同心円状態で環状の近用部14が、この近用部14の外側領域には同心円状態で環状の第2遠用部15がそれぞれ配置される。
【0037】
図1に示す前記支持部材12は、レンズ本体11から複数本が突設され、レンズ本体11と同一材料または異なった材料にて構成される。この支持部材12は、レンズ本体11のレンズ光学領域をレンズ装用者の目の内側または外側の所定位置に位置付けるためのものである。尚、支持部材12は、眼用レンズがコンタクトレンズの場合、レンズ光学領域の周囲に形成されるフランジ部であり、眼用レンズが眼鏡レンズの場合、眼鏡フレームである。
【0038】
ここで、レンズ本体11について詳説する。レンズ本体11における第1遠用部13及び第2遠用部15は、遠用視を補正する領域であり、近用部14は近用視を補正する領域である。第1遠用部13、近用部14、第2遠用部15においては、図3に示すように、それぞれの径方向の全領域における度数分布が累進的に変化するように設定される。また、第1遠用部13と近用部14との境界、及び近用部14と第2遠用部15との境界において、度数が段差状に不連続に変化するように設定されている。度数の段差があるこの境界において、度数分布は遠用部における最小中間度数から近用部の最大中間度数にジャンプする。
なお、中間度数とは、中間視を補正するための度数であり、遠用度数と近用度数との中間の度数をいう。
最小中間度数とは、中間度数のうちの最も小さい度数をいい、最大中間距離(例えば
1.5m)にある対象物を見るために必要とされるレンズの屈折力である。
最大中間度数とは、中間度数のうちの最も大きい度数をいい、最小中間距離(例えば
60cm)にある対象物を見るために必要とされるレンズの屈折力である。
また、中間距離とは、遠用距離と近用距離との中間の距離をいい、最小中間距離とは、中間距離のうちの最も短い距離をいい、最大中間距離とは、中間距離のうちの最も長い距離をいう。
【0039】
更に、図3より、上記第1遠用部13におけるレンズ中心側の副領域Aが、基準度数に等しいか、または基準度数よりも小さな負の平均度数に設定される。なお、ここで、基準度数とは、無水晶体眼患者の眼又は老視眼が正視になるために必要とされる眼用レンズの屈折力(度数)のことをいい、ベースパワーともいう。以下、基準度数というときは、上記意味で用いるものとする。また、当該第1遠用部13におけるレンズ外側の副領域B、つまり第1遠用部13における近用部14側領域Bは、基準度数(ベースパワー)よりも大きな正の平均度数に設定されている。副領域Bの度数分布は半径距離a1における基準度数(ベースパワー)に近似した度数を持ちそして半径距離aにおける最小中間度数近くまで徐々に増加する。また、上記第2遠用部15は、レンズ中心側の副領域C、つまり近用部14側副領域Cが基準度数よりも大きな正の平均度数に設定されている。副領域Cの度数分布は半径距離bにおける最小中間度数に近似した度数を持ちそして半径距離b1における基準度数の近くまで徐々に減少する。また、上記第2遠用部15におけるレンズ外側の副領域Dは、基準度数に等しいか、またはこの基準度数よりも小さな負の平均度数に設定されている。
半径距離b1における副領域Dの度数は基準度数に近似している。副領域Dの度数分布は半径距離の増加(半径距離b1から半径距離c)に対して比較的に一定である度数を持つか半径距離の増加に伴い徐々に減少する。
また、上記近用部14の平均度数は、所望の加入度数(3〜4D;眼鏡換算で2.25〜3D)よりも低い値に設定されている。ここで、所望の加入度数とは、点p付近の副領域の平均度数であって、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される追加加入度数に近似した度数である。この追加加入度数は30〜40cmの読書距離に必要とされる度数であり、追加加入度数はそれぞれの患者により異なる。一般的にこの度数は3Dから4Dである。患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される度数が約3.5Dであるとき点p付近の副領域の平均度数は約3.5Dである。
【0040】
ところで、上記度数分布を設定する際に、角膜の球面収差と屈折力が角膜中心から角膜周辺部に移動するに伴い増加することを考慮に入れる必要がある。
図18において、角膜の球面収差の特徴を図示する。図18より、角膜半径hn(n=0,1,2,3……、h0を角膜の半径中心を通る平行光線とする)の位置における角膜の視軸上の平行光線は、角膜を通して眼球に入射した後、眼球内にある焦点f0の前の点Pnに各々屈折する。この点Pnは角膜半径hnの値が高ければ高いほど、焦点f0から角膜側へと移動した点となる。すなわち、角膜中心からの高さが増加するほど、平行光線は、より屈折する。つまり、角膜中心からの高さが増加するほど、角膜の屈折力及び球面収差は増加する。
よって、角膜の屈折力と球面収差は上記のような特性を有するため、多焦点眼用レンズの光学的特性を最適化するためには、多焦点眼用レンズの設計に角膜の球面収差を考慮することが必要とされる。
【0041】
以下、角膜の球面収差を具体的にどのように考慮するかについて、眼内レンズに基づいて詳細に説明する。
角膜モデルの前面60cmの距離にある光源から光線を照射した様子を図19に図示する。
光線Lxは、レンズ中心よりの高さ、すなわちレンズ中心からの半径距離x1の位置で角膜に入射し、x2の位置で角膜から出射し、点Pxへと屈折される。
光線Lyは、レンズ中心よりの高さ、すなわちレンズ中心からの半径距離x2の位置で角膜に入射し、y2の位置で角膜から出射し、点Pyへと屈折される。
上記のように、半径y2は半径x2より大きいため、y2における屈折力はx2における屈折力よりも大きい。そのため、光線Lyは、点Pxよりも角膜側の点Pyに屈折する。
結果、対象を鮮明に見るためには、点Pxと点Pyを網膜において一致させる必要がある。つまり、点Pxと点Pyを網膜において一致させるには、図19の状態から、x2の位置で角膜から出射した光線Lxに加えられる屈折力を、y2の位置で角膜から出射した光線Lyにおける屈折力に比べて増加させ、点Pxと点Pyを網膜において一致させる必要がある。
【0042】
上記より、本実施形態では網膜の位置を角膜及びレンズの光学システムの焦平面と設定する。そして、角膜及びレンズにより屈折された光線が網膜で一致する様子を、図20に示す。図20より、光線Lxと光線Lyを網膜上に屈折させる為に、眼内レンズによって、半径距離aにおける光線Lxに加えられる屈折力を、半径距離bにおける光線Lyに加えられる屈折力に比べて増加させている。なお、図20より、光線Lxと光線Lyを網膜上に屈折させるように、レンズは角膜後方に置かれる。なぜなら、光線Lxと光線Lyを網膜に屈折させるためには、レンズにおいては、半径距離bの屈折力よりも半径距離aの屈折力が大きいことが必要とされるためである。
半径距離aにおける加入度数αと、半径距離bにおける加入度数βは、角膜前60cmである「中間距離として最も近い点」からの光線を網膜に屈折させるのに用いられる。なお、αは半径距離aにおけるレンズ近用部14加入度数の値であると同時に最大中間度数であり、βは半径距離bにおけるレンズ近用部14加入度数の値であると同時に中間度数である。
【0043】
角膜モデルの前面1.5mの距離からの光線を図21に図示する。図19と同様に、光線Lxは、レンズ中心よりの高さ、すなわちレンズ中心からの半径距離x1の位置で角膜に入射し、x2の位置で角膜から出射し、点Pxへと屈折される。
光線Lyは、レンズ中心よりの高さ、すなわちレンズ中心からの半径距離y1の位置で角膜に入射し、y2の位置で角膜から出射し、点Pyへと屈折される。
半径bにおける屈折力δは光線Lyを網膜に屈折させる。
半径aにおける屈折力γが光線Lxを網膜に屈折させるためには、屈折力γが屈折力δより大きな屈折力であるが必要とされる。
半径距離aにおける度数γと、半径距離bにおける度数δは、角膜前1.5mである「中間距離として最も遠い点」からの光線を網膜に屈折させるのに用いられる。なお、γは半径距離aにおけるレンズ第1遠用部13の度数の値であると同時に中間度数であり、δは半径距離bにおけるレンズ第2遠用部15の度数の値であると同時に最小中間度数である。
【0044】
半径bにおける角膜屈折力が半径aにおける角膜屈折力よりも大きいことを考慮すると、半径aにおけるレンズ加入度数及び度数の値は半径bにおけるレンズ加入度数及び度数の値よりも大きくなるように作られるのが好ましい。
また、半径距離aにおけるレンズ近用部14加入度数の値αは、半径距離bにおけるレンズ近用部14加入度数の値βよりも大きいことが好ましい。
また、半径距離aにおけるレンズ第1遠用部13の度数の値γは、半径距離bにおけるレンズ第2遠用部15の度数の値δよりも大きいことが好ましい。
【0045】
前述の第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15の光学構造を更に詳説する。ここで、当該眼内レンズ10では、第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15の度数分布は、眼内レンズ10の前面16の形態を設計することにより実現されるが、眼内レンズ10の後面17の形態を設計することで、上記第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15の度数分布を実現してもよい。
【0046】
(1)近用部14
近用部14は、径方向の全領域(図2及び図3の点a〜点bの範囲)において、度数分布が、急激に度数が変化する点(以降、変曲点という)における度数α〜変曲点における度数βまで累進的に変化して設定され、近用焦点深度を深くするように構成される。上記度数分布は、点pにおいてレンズ加入度数最大となるような、上に凸の曲線を形成することが好ましい。上に凸の曲線を形成する度数分布ならば、眼鏡レンズにおいて緩やかな累進構造を有することになるためである。点p付近の副領域の平均度数は所望の加入度数に近似した度数である。ここで、所望の加入度数とは、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される追加加入度数のことである。以下において、所望の加入度数というときは、上記意味に用いるものとする。所望の追加加入度数は30〜40cmの読書距離に必要とされる度数であり、追加加入度数はそれぞれの患者により異なる。一般的にこの度数は3から4Dである。患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される度数が約3.5Dであるとき点p付近の副領域の平均度数は約3.5Dである。上記度数分布について詳述すると、図3の近用部14領域の累進部分の度数分布は、瞳孔径が変化しても最大近用視に近い近用視を確保する為、上に凸の曲線の頂点を形成するレンズ半径pの位置の左右近傍においては、緩やかに変化する。しかし、近用部14領域の累進部分の度数分布は、α、βに近づくにつれその変化が急激になる。この近用部14の累進部分の度数分布曲線の変化を接線の勾配とレンズ半径から説明すると、近用部14領域の度数分布曲線の勾配はレンズ半径aにおける正の値から、レンズ半径pにおける勾配ゼロの値を経て、レンズ半径bにおける負の値に変化する。すなわち、中心Oからの距離が半径aより半径pまで増加すれば、近用部14の累進部分の度数分布曲線の勾配の絶対値は減少し、中心Oからの距離が半径pより半径bまで増加すれば、近用部14の累進部分の度数分布曲線の勾配の絶対値は増加する。第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15領域における度数分布の設計値は、下記の多項式で表すことができる。
【数1】
P : 半径 r における屈折力
r : レンズ中心からの半径または距離
m : レンズの累進部分の番号
a : 定数
n : 多項式の次数
ここで、図3における第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15領域の累進部分について、上記多項式の次数を4次として計算すると、その変化は下記の多項式で表すことができる。後述の段落[0061]の実施例+21Dの多焦点眼内レンズの例では、近用部14の累進部分は多項式P14(r)となり、同様にレンズ中央領域の遠用部13の累進部分は多項式P13(r)、レンズ周辺部の遠用環状領域である第2遠用部15領域の累進部分は多項式P15(r)となる。
【数2】
なお、点pにおける度数は3.5Dであり、これは一般の読書距離に代表される約35cmの距離における度数である。また、点pの半径距離は、室内での通常照明下における平均瞳孔直径である約3.0mmの半径である約1.5mmと同じ半径距離に設定すれば、装用者の最大近用視を引き出すことができる。また、上記の一般的な照明より明るい照明下において瞳孔径が平均的に小さくなる場合にも近用視を確保できるように、若干レンズ中心O寄りに、点pを設定するのが好ましい。
【0047】
また、上記度数αと度数βは、眼前60cmにある対象物を見るために必要な度数であり、例えばα=2.0D、β=1.6Dである。最大加入度数が4.0Dの時は、最近用距離は約30cmであり、この場合、近用部14は、近用距離の意図された範囲(例えば、眼前30〜60cmの範囲Wi(図4(B)))から生ずる光を集光するための全ての度数を有することになり、近方視で明瞭に見える範囲が広がる。これにより、異なった近距離にある対象物も明瞭に見えるので、近方視の快適性が良好になる。上記のように、α>βとすることにより、上記球面収差を考慮に入れたとき網膜上で屈折光線を結像させることができる。
【0048】
これに対し、図11及び図12に示す従来技術の眼内レンズ100では、近用部104の度数分布は、レンズ周辺部になればなるほど球面収差の影響が増加することになる。それに応じて度数分布曲線はレンズ周辺部方向に対して度数増加するものの第1遠用部、近用部、第2遠用部において度数は一定の範囲しか変動しないため、近用焦点深度が浅く、例えば読書距離(眼前25〜35cmの範囲Wp(図4(A)))にのみ明瞭な結像性能を与えるに過ぎない。また、上述のレンズの球面収差と角膜の球面収差の相乗効果のため、瞳孔径が大きくなると従来技術のレンズでは予定した遠用視が低下することとなる。尚、図4、図5及び図6においては、符号18は網膜を示す。
【0049】
また、図2及び図3に示す本実施形態の眼内レンズ10の近用部14では、度数が患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数よりも低い値に設定されている。つまり、図11及び図12に示す従来技術では、近用部104の加入度数は、3〜4Dの範囲で微増するものの、ほぼ一定の値に設定されるが、本実施形態の近用部14では、図3に示すように、上記近用部14の平均度数が3.D以下の値に設定される。
【0050】
白内障手術で水晶体に代えて多焦点眼内レンズを挿入する手術後に、遠視でも近視でもなく正常視力になる無水晶体眼患者が近方視において明瞭に見える近点を近点1(図5(A)(B))とすると、上記眼内レンズの挿入手術後に近視状態となる無水晶体眼患者の近点は、上記従来技術の場合に近点2(図5(A)(B))となり、本実施形態の場合に近点3(図5(B))となる。従来技術の平均加入度数が本実施形態の平均加入度数より高いため、近点2と近点1との距離Lpに比べ、近点3と近点1との距離Liは小さくなる。そのため、本実施形態の場合の近点3は眼に近づきすぎないので、近方視での見易さが確保される。さらに、遠点2は遠点3より眼に近いため、本実施例の眼は遠点2と遠点3の間にある物体を見ることができる。
【0051】
更に、本実施形態の眼内レンズ10の近用部14では、近用度数分布の度数範囲がレンズ100の近用部104の近用度数範囲より広い、さらに平均度数が患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数よりも低い値に設定されるので、図6(B)に示すように、この近用部14の焦点距離Fiが長くなる、すなわち集光する位置が眼内レンズ10から遠くなる。そのため、当該近用部14を通った光は、網膜18上で狭まるので、暗所におけるハロー症候やグレア症候の発生が低減される。よって、暗所におけるハロー症候やグレア症候の発生が低減されると共に、近方視において明瞭に見える近点が眼に近づきすぎないので、近方視での見やすさを確保できる。また、角膜の球面収差を考量するために半径距離aにおけるレンズ近用部14加入度数の値αは、半径距離bにおけるレンズ近用部14加入度数の値βよりも大きいことが好ましい。半径距離aから半径距離pに至り半径距離pより半径距離bまでのレンズ近用部14を累進構造にし、半径距離aの加入度数αと半径距離bの加入度数βをα>βと設定することにより、近方視において広い距離範囲を明瞭に見ることが出来、また網膜にて対象物を明瞭に見ることができるためである。
これに対し、従来技術の如く、眼内レンズ100の近用部104の平均度数が患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数より高い値に設定されている場合には、図6(A)に示すように、当該近用部104の焦点距離Fpが上記焦点距離Fiに比べて短いので、当該近用部104を通った光は、集光する位置が眼内レンズ100に近くなり網膜18上で広がるので、暗所におけるハロー症候やグレア症候が発生しやすい。
【0052】
(2)第1遠用部13及び第2遠用部15
図2及び図3に示す第1遠用部13は、径方向の全領域(図3の点0〜点aの範囲)において、度数が負の度数から正の度数γまで累進的に変化するように設定される。
また、前記第2遠用部15は、径方向の全領域(図3の点b〜点cの範囲)において、度数が正の度数δから負の度数まで累進的に変化するように設定される。
ここで、度数γとδは、眼前1.5mにある対象物を見るために必要な度数である。これにより、第1遠用部13及び第2遠用部15による遠用焦点深度が深くなり、遠方視において明瞭に見える範囲Xi(図4 (B))が広がり(例えば1.5〜6mの範囲)、遠方視の快適性を向上させることができる。
【0053】
これに対し、図11及び図12に示す眼内レンズ100の第1遠用部103及び第2遠用部105では、度数分布が基準度数に一致した一定の値となっているので、遠用焦点深度が浅く、遠方視において明瞭に見える範囲Xp(図4(A))は本実施形態の範囲 Xi より狭くなる(例えば2〜6mの範囲)、遠方視の快適性が低い。
【0054】
また、図2及び図3に示す眼内レンズ10では、第1遠用部13のレンズ中心側の副領域と、第2遠用部15のレンズ外側副領域が基準度数に等しいか、またはこの基準度数よりも小さい負の平均度数に設定されている。これにより、眼内レンズ10の装用者の眼の光学度数を遠視側にシフトさせることが可能となり、この軽度遠視(+0.3D以下)は、眼内レンズ10の装用者の遠用結像性能を改善することになる。
【0055】
特に、白内障手術で水晶体に代えて眼内レンズを挿入する手術後に、遠視でも近視でもなく正視になる無水晶体眼患者が遠方視において明瞭に見える遠点を遠点1(図5)とすると、上記眼内レンズ10の挿入手術後に近視状態になる無水晶体眼患者の遠点は、本実施の形態の場合に遠点3となる。これは、眼内レンズ10の手術後に近視状態になる無水晶体眼患者に対して、眼内レンズ10の第1遠用部13及び第2遠用部15の負の平均度数を有する副領域が、当該眼患者の近視の度数を相殺して、この患者の眼の光学度数を遠視側にシフトさせるためである。
また、図6(A)(B)における集光像を比べると、従来技術である(A)は、本実施形態である(B)に比べて中心の像が大きく広がっており、さらにはその中心の像は中心点から離れれば離れるほどぼやけていく。このことは、従来技術の図6(A)において、中心の像とその周辺部において、すなわち眼内レンズにおける第1遠用部と第2遠用部においては明瞭な遠用視を得ることができないことにより示されている
逆に、本実施形態の図6(B)では、第1遠用部と第2遠用部に負の平均度数を設定することにより、上述した角膜における球面収差を打ち消すことができ、明瞭な視野を得ることができる。
結果、第1遠用部13及び第2遠用部15の負の平均度数を有する副領域により、過剰な正の度数の一部分を相殺することにより、近視化を減少させることができる。さらに、第2遠用部15の負の平均度数を有する副領域によって、角膜における半径距離の増加により増大する角膜球面収差の影響を相殺することができる。
このとき、角膜の球面収差を考慮し、半径距離aにおけるレンズ第1遠用部13の度数の値γは、半径距離bにおけるレンズ第2遠用部15の度数の値δよりも大きいことが好ましい。
【0056】
図11及び図12の従来技術の眼内レンズ100では、第1遠用部103及び第2遠用部105の度数が基準度数(0D)に設定されているので、眼内レンズ100の装用者の眼の光学度数を軽度の遠視側にシフトさせることができない。従って、眼内レンズ100の挿入手術後に近視状態になる無水晶体眼患者の遠点は遠点2(図5(A))となる。
一方、本実施形態においては、遠点3と遠点1との距離Miが、遠点2と遠点1との距離Mpよりも短くなることから、本実施形態の眼内レンズ10の装用者の近視化が低減されることになる。これにより、レンズ装用者の眼の遠用視の結像性能が向上すると共に、暗所におけるハロー症候やグレア症候の発生が抑制される。
【0057】
(3)第1遠用部13及び第2遠用部15と近用部14との境界
図3に示すように、眼内レンズ10においては、第1遠用部13と近用部14との境界(変曲点における度数γ〜α)、及び近用部14と第2遠用部15(変曲点における度数β〜δ)との境界は、度数が段差状に不連続に変更して設定されている。従って、眼内レンズ10に取り込まれた光エネルギーは、第1遠用部13及び第2遠用部15による遠用視と近用部14による近用視のためにのみ利用されることになる。この結果、中間度数用の中間部がある眼内レンズより遠方視像と近方視像が明瞭になり、遠用視及び近用視の結像性能(コントラスト及び鮮明度)を向上させることができる。
【0058】
上述の第1遠用部13と近用部14との境界、及び近用部14と第2遠用部15との境界の不連続な度数の段差(度数差)の高さは、網膜18上で遠方視像と近方視像とを分離させるのに十分な度数差を有している。人の視覚システム(眼、網膜、視神経、脳)は、必要に応じて明瞭な遠方視像または近方視像を選択して見ることになり、両像を意識的に同時に見ることがない。すなわち、従来技術では、中間度数を有する中間部により形成される結像(中間視像)が、網膜上に遠方視像と近方視像を重ね合わせて結像を混在させることがある一方、本実施形態では、網膜上で遠方視像と近方視像とを分離させるのに十分な不連続度数差を有しているため、この混在する結像の出現を抑制できる。
【0059】
また、図3に示すように、第1遠用部13及び第2遠用部15における両近用部14側副領域は、基準度数(0D)よりも大きな正の平均度数に設定される。これにより、第1遠用部13と近用部14との境界、及び近用部14と第2遠用部15との境界における度数段差を減少させることができ、本実施形態では、これらの度数段差は1〜2Dの範囲に設定される。この結果、像飛び現象の可能性が低減され、遠距離対象物と近距離対象物間で視野を移行させるときに、この視野の移行を快適に実現できる。
【0060】
近用部14が累進構造をとるため、その平均度数は患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数より小さくなる。これにより、αとβが所望の加入度数より小さな値となる。さらに、第1遠用部13における近用領域の度数γと、第2遠用部15における近用領域の度数δが、正の平均度数と設定されることにより、そのγ〜α、β〜δの幅が小さくなる。それにより、像のジャンプを抑制することが出来、ハロー症候やグレア症候を抑えることができる。
また、図12に示すような従来技術では、遠用補正領域と近用補正領域との境界において度数が急激に変化するように設定されている。すなわち、遠用部の遠用度数の曲面と近用部の近用度数の曲面が交わる変曲点(線)で曲率が急激に変化することにより、その変曲点(線)がグレア発生原となる。さらには、上記設定通りに加工することは難しい。しかしながら、図3の本実施形態では、上記境界に平均度数を設定することにより、その曲率の変化が緩やかな変化となり、グレア発生を低減することができる。さらには、加工も容易となり歩留まりの向上に繋がる。
【0061】
以下、本発明における一実施例を挙げる。
図3及び図22において、眼内レンズ度数のベースパワー0を21Dとする。このとき、半径距離a=1.05mmとb=1.75mmにおける近用部における度数はそれぞれ22.97 D と 22.64 Dである。また、半径距離a=1.05mmとb=1.75mmにおける遠用部における度数はそれぞれ21.60 D と 21.28 Dである。
よって、半径距離aにおけるレンズ近用部14加入度数の値α、半径距離bにおけるレンズ近用部14加入度数の値β、半径距離aにおけるレンズ第1遠用部13の度数の値γ、半径距離bにおけるレンズ第2遠用部15の度数の値δは、上記加入度数とベースパワーOとの差を取ることにより、それぞれ1.97(=22.97-21.0), 1.64(= 22.64-21.0), 0.60(=21.60-21.0), と 0.28(=21.28-21.0) Dとなる。
なお、半径距離a とbの間の半径距離pの値ρである最大加入度数は、近用距離として最も近い距離の値によって決まる。
近用距離として最も近い距離の値と半径距離がそれぞれ30cmと1.4mmと設定されるならば、半径距離1.4mmの度数は25.13Dでありρは4.13 Dとなる。
近用距離として最も近い距離の値が35cmに設定される時、半径距離1.4mmの度数は24.49Dでありρは 3.49 Dとなる。
上記度数は、表1に示される角膜モデルとレンズの光学系を光線追跡法によるコンピューター計算によって得られる。角膜とレンズの光学系の模型化と一般に販売・知られている光学設計ソフトウェアのようなOptical Research Associates社製光学設計評価プログラムCODE V(登録商標)や米国ZEMAX Development Corporation製 光学システムデザインソフト ZEMAX(登録商標)のによる光線追跡法はこの種類のレンズの設計に用いられる。
【0062】
異なる屈折率の材料や異なる光学部形状で作られたレンズのα, β, γ, δの値は上記の値と若干異なる。また、異なる角膜モデルを使用したレンズを設計しても、α, β, γ, δの値は上記の値と若干異なる。しかしながら、本実施例及び本実施形態についての知見は、上記例示した実施例のパラメーターとは異なる屈折率、異なる光学部形状、異なるパラメーターを持つレンズの設計にも適用することができる。
【0063】
次に、図6の具体的な実施例として、それぞれアパーチャー径4mm、5mmとしてソフトウェアZEMAXを用いハローシミュレーションを行った結果を図24、図25に示す。図24()、図25()は従来技術に関するものであり、図24()、図25()は本実施例に関するものである。従来技術及び本実施例についての模型眼のパラメーターは表1に示すとおりである。
本実施例においては、表1に示すパラメーターを有する模型眼の前方60mの距離に直径20cmの光源となる円形対象物を設置した。この円形対象物は、例えば実生活においては夜間の交通信号を挙げることができる。
眼内レンズにおける近用領域によって屈折された光線は、光源の中心像の周囲にハローパターンとして現れる。ここでハローは、光源の像を実際の光源の像よりも大きく表す。そしてハローは、レンズ遠用領域によって表示される中心像を囲むように形成される。通常、レンズ近用領域の平均度数が高くなればなるほど、その平均度数より低く設計されているレンズ近用部の遠用部側領域平均度数に起因するハローパターンはより大きく、そしてより濃くなる。
従来技術のレンズ近用領域における平均度数は、本実施例のレンズ近用領域の平均度数よりも大きく設計されている。そのため、図24及び図25に示されるように、従来技術のレンズのハローパターンのサイズは本実施例のレンズのハローパターンのサイズよりも大きくなった。また、図25に示されるように、従来技術のレンズのハローパターンは、本実施例のレンズのハローパターンよりも濃くなった。すなわち、本実施例のレンズのハローパターンの光強度は、従来技術のレンズのハローパターンよりも小さく、本実施例のレンズは患者にとって不自由を感じにくい。つまり、本実施例のレンズを移植された患者は、従来技術のレンズを移植された患者よりも、夜間のハロー症候による不自由を感じることは少ないと考えられる。
【0064】
ところで、多焦点眼内レンズの性能は、レンズの遠用視補正領域及び近用視補正領域の各領域の相対的配置関係、加入度数、及びパワー分布等に左右される。多焦点眼内レンズの光学性能は、対象物体の置かれる距離とそれを見た場合の視力との関係を示す、距離−視力グラフ、並びに、対象物体の置かれる距離とコントラスト(=MTF値)などの像の性質との関係を示す距離―コントラストグラフにより表すことができる。そこで、以下に、上述の第1の実施の形態にかかる多焦点眼内レンズと、従来技術に係る多焦点眼内レンズとについて、これらのグラフを求めた結果を説明する。
【0065】
この場合、これらの光学性能は、レンズの開口径と無水晶体眼の患者の眼の瞳孔径により影響される。それゆえ、これらを変えた場合の結果も示す。また、第1の実施の形態にかかる多焦点眼内レンズと、従来技術に係る多焦点眼内レンズとの双方とも、遠用領域と近用領域との配置関係は、図7で示されるものである。さらに、両方のレンズのベースパワーは、21.0Dであり、度数分布は、それぞれ図3と図12で示される分布となっている。レンズの近用領域の最大加入度数は、両方のレンズとも約3.5Dである。また、本実施形態の近用領域はパワー分布の頂点付近の副領域において約3.5Dの平均加入度数を持ち、近用領域の他の副領域は3.5D以下である。一方、従来技術にかかるレンズは、その近用領域の全ての副領域において、3.5Dでその値がほとんど一定である加入度数を持つものである。
【0066】
また、上記グラフ作成のための検証は、表−1で示したパラメーターで表される模型眼と米国ZEMAX Development Corporation製 光学システムデザインソフト ZEMAX(登録商標)を用いてシミレーションを行い、無水晶体眼の患者の眼の瞳孔径に相当する各アパーチャー径(2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm)において評価した。被験者10人にそのシミュレーションした視力表のどの視力まで識別できるかをモニタリングし、識別できた最高視力の平均値を各距離における視力とし、縦軸に視力、横軸に距離の各アパーチャー径における距離−視力グラフ(図8)を作成した。
【0067】
【表1】
【0068】
さらに、距離−視力グラフで評価する為に、視力0.2の指標(ランドルト環)から視力1.0の指標までを有するランドルト環の視力表(図13参照)と、表-1の模型眼とを用い、模型眼におけるアパーチャー径ごとに、本実施形態の眼内レンズ10と従来技術の眼内レンズ100のレンズとを使用した場合の各距離における視力表の結像状態を、ZEMAXでシミュレーションし、各アパーチャー径における実施例と従来技術の各距離における像シミュレーション結果のサンプル画像を図14〜図17に示した。
【0069】
眼前60cmまでの物を明瞭に見る(近方視)には視力0.3以上が必要であり、本実施形態の眼内レンズ10による近方視において、視力0.3以上が明瞭に見える範囲Wiと従来技術の眼内レンズ100で、近方視における視力0.3以上が明瞭に見える範囲Wpを各アパーチャー径(2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm)ごとに比較し、図 8 (a)(b)(c)(d)及び表−2に示した。
【0070】
【表2】
【0071】
上記 図8(a)(b)(c)(d)と表−2見られるように近方視において、視力0.3以上が明瞭に見える範囲の幅は各アパーチャー径において従来技術より広く、読書、パソコンなどの中間距離の作業において、さまざまな瞳孔径状況の下で、本実施形態の眼内レンズ10を使用する無水晶体眼の患者は従来技術の眼内レンズ100使用の無水晶体眼の患者より容易に、そして、より明確に近用物体を見ることができる。
【0072】
眼前60cmから1.5mの物を明瞭に見る(中間視)及び1.5mから6.0mまでの(遠用視)には視力0.5以上が必要であり、本実施形態の眼内レンズ10による中間視から遠方視において、視力が0.5以上の明瞭に見える範囲Xiと従来技術の眼内レンズ100の、視力が0.5以上の明瞭に見える範囲Xpを各アパーチャー径(2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm)ごとに比較し、図8(a)(b)(c)(d)及び表−3に示した。
【0073】
【表3】
【0074】
上記 図8(a)(b)(c)(d)と表−3見られるように中間視から遠方視において、視力0.5以上が明瞭に見える範囲は各アパーチャー径2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mmにおいて従来技術より広いことがわかる。表2と3に示される結果より、さまざまなアパーチャー径において本実施形態の近用視と遠用視の両方において従来技術の眼内レンズのものと比べて焦点深度深いことを示している。加えて、図8(a)(b)(c)(d)に見られるようにはさまざまなアパーチャー径における本実施形態の中間視の距離-視力特性が従来技術に比べて大きいことが判る。
【0075】
さらに、視力0.5に相当する空間周波数50c/mmの条件でそれを各アパーチャー径(2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm)での距離−MTF値を求めた。像の識別能力である結像性能(コントラスト及び鮮明度)の閾値であるMTF値 0.05以上で本実施形態と従来技術のレンズの比較結果を、図9(a)(b)(c)(d)及び表−4 に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
以上の結果により、本実施形態と従来技術の遠距離と近距離の空間周波数50c/mmの条件における視力0.5に相当する条件下では、人間の眼が物体とその背景である像の識別能力である結像性能(コントラスト及び鮮明度)の閾値であるMTF値 0.05以上において比較すると本実施形態の方が従来技術より広い範囲におよぶことが示され、結像性能(コントラスト及び鮮明度)において、本実施形態が従来技術より良好であることが判る。
また、前記 図8 (a)(b)(c)(d)と表−2と表−3 の結果と同様に、この結果も近用視の焦点深度と遠用視の焦点深度は従来技術の近用視の焦点深度と遠用視の焦点深度より深いことを示している。
【0078】
また、上記ハロー症候やグレア症候の低減の為の方法に加えて、その刺激成分光である近紫外から青色光部分を吸収する着色剤及び/または紫外線吸収剤により、眼用レンズを着色化及び/または紫外線吸収能を持たせる。それにより、ハロー症候やグレア症候の症状低減を図ることが出来る。
また、人眼水晶体は加齢により黄変化してくることが知られており、水晶体摘出後に透明なレンズを移植した場合、人眼水晶体との色の差による色視症である青視症、色覚の変化、コントラスト感度の低下、紫外線による網膜への影響などに対しての抑制効果も図ることが出来る。
なお、着色に用いる着色剤、紫外線吸収剤は眼用レンズ中よりの溶出が最小または皆無であることが好ましく、着色剤、紫外線吸収剤の含有量を抑えるかまたは眼用レンズ材料に結合する反応性染料、反応性紫外線吸収剤がより好ましい。
【0079】
着色剤の例としては、カラーインデックス(CI)に記載されたCIソルベント イエロー(Solvent Yellow)、CIソルベント オレンジ(Solvent Orange)等の油溶性染料またはCIディスパース イエロー(Disperse Yellow )、CIディスパース オレンジ(Disperse Orange )等の分散染料が好ましい。レンズ材料との相溶性がよい着色剤であれば上記以外のものでもよい。
【0080】
黄色系着色剤としては、
CIソルベント イエロー16,CIソルベント イエロー29,CIソルベント イエロー33,CIソルベント イエロー44,CIソルベント イエロー56,CIソルベント イエロー77,CIソルベント イエロー93,CIディスパース イエロー3等
が挙げられる。
また、黄褐色系着色剤としては、
CIソルベント イエロー14,CIソルベント イエロー104,CIソルベント イエロー105,CIソルベント イエロー110,CIソルベント イエロー112,CIソルベント イエロー113,CIソルベント イエロー114等
が挙げられる。
さらに、橙色系着色剤としては、
CIソルベント オレンジ60,CIソルベント オレンジ67,CIソルベント オレンジ68,CIソルベント オレンジ79,CIソルベント オレンジ80,CIソルベント オレンジ86,CIディスパース オレンジ47
が挙げられる。
上記の内、特に好ましい着色剤は、
CIソルベント イエロー93,CIソルベント イエロー44,CIソルベント イエロー16,CIソルベント イエロー77,CIディスパース イエロー3
等が挙げられる。これらは、最大吸収波長が350〜400nm付近にある化合物だからである。すなわち、これらの着色剤は可視光400〜500nmの吸収があり、尚かつ水晶体の紫外線吸収領域である300〜400nmの光を同時に吸収できるという利点を有する。
【0081】
また、反応性着色剤としては、特開平10-195324に記載の(化1)で表されるピラゾロン系反応性黄色染料や、特開2000-290256に記載の(化2)で表されるピラゾロン系反応性染料が望ましい。上記染料は、多焦点眼用レンズの材料と結合し、レンズから溶出しないためである。なお、下記式中、Xはフェニル基又は4−アルキルフェニル基を示す。
【化1】
【化2】
【0082】
本実施形態の多照点眼用レンズにおいては、上記着色剤とともに紫外線吸収剤を併用することにより、300〜400nmの範囲で光線吸収が行われるように任意調整できる。このような紫外線吸収剤としては、
(1)ベンゾトリアゾール系
2−(2′−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール (チヌビン326,チバガイギー社製)
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール (チヌビンP,チバガイギー社製)
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール (チヌビン320,チバガイギー社製)
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール (チヌビン327,チバガイギー社製)
2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール (チヌビン328,チバガイギー社製)
(2)ベンゾフェノン系
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン
2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン
2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン
2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
(3)サリチル酸系
フェニルサリシレート
p−tert−ブチルフェニルサリシレート
p−オクチルフェニルサリシレート
などが挙げられる。
【0083】
また、これらの紫外線吸収剤と同様の化学構造部分を有し、かつ眼内レンズ母材形成用モノマーと共重合し得る部分を有する反応性紫外線吸収剤も使用できる。例えば、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン,2−(2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエトキシ)−4−クロロベンゾトリアゾール、特開平08-311045に記載されており(化3)に示されるベンゾトリアゾール化合物それからなる紫外線吸収剤や、その他のベンゾトリアゾール系の反応性紫外線吸収剤としては特開2000-290256に記載されており(化4)に示される下記構造式の反応性紫外線吸収剤が好ましい。なお、式中、Xは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C4アルキル基またはC1〜C4アルコキシ基を示す。
【化3】
【化4】
【0084】
本実施形態の多焦点構造の眼用レンズに使用される透明レンズ素材は、例えば硬質の高分子材料、親水性及び疎水性の軟質高分子材料が挙げられる。
硬質の高分子材料としてはメチルメタクリレートを主成分としたもの、親水性の軟質材料としては2-ヒドロキシメチルメタクリレートを主成分としたもの、疎水性の軟質材料としてはゴム弾性を有して軟性レンズ材料として求められる特性を備えるものであれば、特に限定されるものではない。
シリコーン系材料としては縮合や付加反応により硬化する一液、二液タイプの液状シリコーンゴムなどがあり、また、アクリル系材料としては、例えば、メチルメタクリレートと、長鎖アクリレートまたはメタクリレート(n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等)が挙げられる。
上記主成分を架橋剤(エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等)の存在下で共重合させて得られた共重合体を材料として用いることもできる。
なお、軟性レンズ材料としては、上記長鎖アクリレートまたはメタクリレートは1種または2種以上用いられ、これらはガラス転移温度が30℃以下であるのが好ましい。またメチルメタクリレートと共重合される上記モノマーとして含フッ素系アクリレートや含フッ素系メタクリレート等のモノマーを選択することもできる。
【0085】
本実施形態における多焦点眼用レンズの実施例として n−ブチルアクリレート(n−BA)42g、フェニルエチルメタクリレート(PEMA)52g、パーフロロオクチルエチルオキシプロピレンメタクリレート(HRM−5131HP)8g、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)5gおよびAIBN 0.33gの混合物に、これらのレンズ用モノマー全量に対して紫外線吸収剤T−150を1.5重量%、一般式(I)の化合物に含まれる反応性黄色染料HMPO−Hを0.02重量%加えて窒素ガスを通しながら十分に撹拌し、得られた重合性材料を眼用レンズ用ポリプロピレン(PP)樹脂型に入れて、室温から60℃まで30分間で加熱し、60℃で12時間保持し、60℃から90℃まで15分間加熱し、90℃で3時間保持し、90℃から100℃まで15分間で加熱し、100℃で12時間保持後、室温まで自然放冷する重合プログラムで熱重合した。得られた重合物を切削加工して本実施形態における多焦点眼用レンズを製造した。この多焦点眼用レンズについて光線透過率測定を行い10枚の平均値より光線透過率曲線を図23(A)に例示した。また、上記組成から反応性黄色染料を除き、本実施形態における多焦点眼用レンズを製造した。こうして製造した多焦点眼用レンズ10枚の透過率平均値より光線透過率曲線を作製し(図23(B))、上記反応性黄色染料含有のものと比較例示した。この際、人眼水晶体の光線透過率(引用:人眼水晶体の出典「Boettner EA et al : Transmission of the ocular media. Invest Ophthalmol1 : 776〜783, 1962 」)を比較例として図23に記載した。
その結果、紫外線吸収剤のみ含有する光線透過率曲線(B)は紫外領域である400nm以下の光線を吸収することを示した。また、反応性黄色染料を用いた光線透過率曲線(A)は紫外線吸収剤のみ含有する光線透過率曲線(B)よりも人眼水晶体曲線に近似し、グレア症候やハロー症候の刺激光部分である500nmから400nmの青色光から紫外光を吸収し、グレア症候やハロー症候の低減を好ましく実現できることがわかった。
【0086】
[B]第2の実施の形態(図10)
図10は、本発明に係る眼用レンズの第2の実施形態である眼内レンズのレンズ本体31を示す図であって図10(A)が物体側から見た図であり図10(B)がレンズ半径方向における度数分布を示すグラフである。
【0087】
この第2の実施の形態の眼内レンズ30は、レンズ本体31と図示しない支持部材とを備え、レンズ本体31のレンズ光学領域の中心領域に近用部32が、この近用部32の外側領域に同心円状態で環状の遠用部33がそれぞれ配置される。
【0088】
近用部32は、近用視を補正するための領域であり、遠用部33は、遠用視を補正するための領域である。また、これらの近用部32及び遠用部33においては、それぞれの径方向の全領域(近用部32が図10(B)の点0〜点dの範囲、遠用部33が図10(B)の点d〜点eの範囲)における度数分布が累進的に変化して設定されて、近用部32により近用焦点深度が、遠用部33により遠用焦点深度がそれぞれ拡張して設定されている。また、近用部32と遠用部33との境界(図10(B)の点d)において、度数が不連続に変更して設定され、近用部32の近用度数と遠用部33の遠用度数との間に度数段差を備える
【0089】
近用部32は、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数(3〜4D)よりも低い値に設定される。また、遠用部33は、レンズ中心側の副領域、つまり近用部32側副領域が基準度数(0D)よりも大きな正の平均度数に設定される。更に、遠用部33は、レンズ外側副領域が基準度数に等しいか、または基準度数よりも小さな負の平均度数に設定される。
【0090】
眼内レンズ30の光学構造が上述のように構成されたことから、当該眼内レンズ30においても、前記実施の形態の(1)〜(3)で述べたが作用効果と同様な作用効果を奏する。
【0091】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記両実施形態では、眼内レンズのレンズ光学領域に、視力補正のための遠用部と近用部とが、第1の実施形態では合計3個(第1遠用部13、近用部14及び第2遠用部15)、第2の実施形態では合計2個(近用部32及び遠用部33)それぞれ配置されるものを述べたが、これらの遠用部と近用部を交互に合計4個または5個以上配置してもよい。
【0092】
なお、他の実施の形態として、以下のものが挙げられる。
(1)実施の形態1では、中間距離として最も近い方の距離を60cmとしたが、この距離よりも大きい値又は小さい値に設定することができる。また、中間距離が最も遠い方の距離を1.5mとしたが、この距離よりも大きい値又は小さい値に設定することができる。
(2)実施の形態1では、近用部と遠用部の境界において、度数が段差状に不連続に変更して設定されることで構成されているが、近用部と遠用部の境界において、度数が最大中間度数から最小中間度数に急激に変化するものでも良い。
(3)実施の形態1では、第1遠用部、近用部、第2遠用部という3ゾーンタイプの眼用レンズを示しているが、第1遠用部である中心領域の平均度数と、第2遠用部である第2環状領域の平均度数が同等か近似していてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、眼用レンズは無水晶体眼用眼内レンズの場合を述べたが、有水晶体眼用眼内レンズ、コンタクトレンズ、埋植用コンタクトレンズ、眼鏡(眼鏡レンズ)であってもよい。コンタクトレンズの場合は変曲点に移行する部分は境界に平均度数を設定することにより、その曲率の変化が緩やかな変化となり眼瞼との接触による異物感を低減し装用感を向上させ、コンタクトレンズフィッティングでの眼球上の動きへの影響を低減できる。これにより、レンズ装用者の眼の遠用視の結像性能が向上すると共に、暗所におけるハロー症候やグレア症候の発生が抑制され、加工性も向上し、またコンタクトレンズの場合、装用感、フィッティングへの影響も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る眼用レンズの第1の実施形態である眼内レンズを眼側からみた図である。
【図2】図2(A)は図1に示される眼内レンズの側面図であり、図2(B)は図1の眼内レンズのレンズ本体11を物体側からみた図である。
【図3】図1及び図2に示される眼内レンズのレンズ本体11のレンズ半径方向における度数分布を示すグラフである。
【図4】図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズの焦点深度を従来技術にかかる眼内レンズの場合の焦点深度と比較して示す図であり、図4(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図4(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。
【図5】図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズの遠点及び近点を、従来技術にかかる眼内レンズの場合の遠点及び近点と比較して示す図であり、図5(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図5(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。
【図6】図1及び図2に示される第1の実施の形態にかかる眼内レンズのハロー症候を、従来技術にかかる眼内レンズの場合のハロー症候と比較して示す図であり、図6(A)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図6(B)が第1の実施の形態にかかる眼内レンズの場合である。
【図7】第1の実施の形態にかかる多焦点眼内レンズにおける遠用領域と近用領域との配置関係を示す図である。
【図8】図1及び図2の眼内レンズにおける距離―視力特性を示すグラフである。
【図9】図1及び図2の眼内レンズにおける距離―コントラスト特性を示すグラフである。
【図10】本発明に係る眼用レンズの第2の実施形態である眼内レンズのレンズ本体31を示す図であって図10(A)が物体側から見た図であり図10(B)がレンズ半径方向における度数分布を示すグラフである。
【図11】従来技術にかかる眼内レンズのレンズ本体を示す図であり図11(A)が側面図、図11(B)が物体側から見た図である。
【図12】図11に示される従来の眼内レンズのレンズ半径方向における度数分布を示すグラフである。
【図13】視力0.2の指標(ランドルト環)から視力1.0の指標までを有するランドルト環の視力表を示す図である。
【図14】模型眼のアパーチャー径が3mmの場合について、従来技術の眼内レンズ100のレンズを使用した場合の各距離における視力表の結像状態を、ZEMAXでシミュレーションし、各距離における像シミュレーション結果のサンプル画像を示す図である。
【図15】模型眼のアパーチャー径が4mmの場合について、従来技術の眼内レンズ100のレンズを使用した場合の各距離における視力表の結像状態を、ZEMAXでシミュレーションし、各距離における像シミュレーション結果のサンプル画像を示す図である。
【図16】模型眼のアパーチャー径が3mmの場合について、実施例1の眼内レンズ10のレンズを使用した場合の各距離における視力表の結像状態を、ZEMAXでシミュレーションし、各距離における像シミュレーション結果のサンプル画像を示す図である。
【図17】模型眼のアパーチャー径が4mmの場合について、実施例1の眼内レンズ10のレンズを使用した場合の各距離における視力表の結像状態を、ZEMAXでシミュレーションし、各距離における像シミュレーション結果のサンプル画像を示す図である。
【図18】角膜における屈折力及び球面収差と半径距離との関係を示す図である。
【図19】光源を角膜手前60cmに設置したときの角膜における屈折力及び球面収差の影響を示す図である。
【図20】光源を角膜手前60cmに設置したときの眼内レンズにより、角膜から出射された光線を網膜にて一致させる様子を示す図である。
【図21】光源を角膜手前1.5mに設置したときの角膜における屈折力及び球面収差の影響を示す図である。
【図22】光源を角膜手前1.5mに設置したときの眼内レンズにより、角膜から出射された光線を網膜にて一致させる様子を示す図である。
【図23】本実施形態において、光の波長と透過率との関係を示す図である。
【図24】本実施例(アパーチャー径4.0mm)におけるハローシミュレーションの結果を示す図であり、図24(a)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図24(b)が本実施例にかかる眼内レンズの場合である。
【図25】本実施例(アパーチャー径5.0mm)におけるハローシミュレーションの結果を示す図であり、図25(a)が従来技術の眼内レンズの場合であり、図25(b)が本実施例にかかる眼内レンズの場合である。
【符号の説明】
【0095】
10 眼内レンズ(眼用レンズ)
13 第1遠用部
14 近用部
15 第2遠用部
30 眼内レンズ(眼用レンズ)
32 近用部
33 遠用部

Claims (15)

  1. レンズ光学領域に、遠用視を補正するための遠用部と、近用視を補正するための近用部とが同心円状に配置された多焦点眼用レンズであって、
    前記遠用部及び前記近用部の径方向において、度数分布が累進的に変化して設定され、
    かつ、前記遠用部と近用部との境界において、度数が段差状の不連続に変更され、
    さらに、前記遠用部と近用部との境界における度数の差の値が、中間視を補正するための中間度数の最大値以下であることを特徴とする多焦点眼用レンズ。
  2. 前記近用部における平均度数が、患者の近用視を補正するために適正度数として患者に応じて設定される加入度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の多焦点眼用レンズ。
  3. 前記遠用部には、基準度数に対して負の平均度数を有する領域が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の多焦点眼用レンズ。
  4. 前記遠用部における近用部側領域は、基準度数に対して正の平均度数に設定されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多焦点眼用レンズ。
  5. 前記光学領域の中心領域に第1遠用部が配置され、この第1遠用部の外側領域に同心円状態で環状の近用部が配置され、この近用部の外側領域に同心円状態で環状の第2遠用部が配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多焦点眼用レンズ。
  6. 前記近用部における第2遠用部側領域の加入度数が、前記近用部における第1遠用部側領域の加入度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする請求項5に記載の多焦点眼用レンズ。
  7. 前記第2遠用部における近用部側領域の度数が、前記第1遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の多焦点眼用レンズ。
  8. 前記第2遠用部における外側領域の度数が、前記第2遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の多焦点眼用レンズ。
  9. 前記第2遠用部における外側領域は、基準度数に対して負の平均度数に設定されたことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の多焦点眼用レンズ。
  10. 前記光学領域の中心領域に近用部が配置され、この近用部の外側領域に同心円状態で環状の遠用部が配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の多焦点眼用レンズ。
  11. 前記遠用部における外側領域の度数が、前記遠用部における近用部側領域の度数よりも低い値に設定されたことを特徴とする請求項10に記載の多焦点眼用レンズ。
  12. 前記遠用部における外側領域は、基準度数に対して負の平均度数に設定されたことを特徴とする請求項10又は11に記載の多焦点眼用レンズ。
  13. レンズ光学領域に、遠用視を補正するための少なくとも1つの遠用部と、近用視を補正するための少なくとも1つの近用部とが同心円状に配置された多焦点眼用レンズであって、
    前記遠用部及び前記近用部の径方向において、度数分布が累進的に変化して設定され、
    かつ、前記遠用部と近用部との境界において、度数が段差状の不連続に変更され、
    前記遠用部と近用部との境界付近の近用部の累進度数分布は、前記境界において、中間視を補正するための中間度数の最大値に近似した値を有し、
    前記近用部の累進度数分布は、山状の分布をなし、この山状の度数分布の頂点における最大度数が、意図された最近方距離または読書距離の物体を見る際に必要とされる視力補正のための度数に設定されており、
    かつ、前記近用部の累進度数分布は、この近用部と遠用部との境界から前記山状の度数分布の頂点に向かうに従って徐々に度数が増加していく分布であり、
    前記遠用部は基準度数より小さい負の平均度数を持つことを特徴とする多焦点眼用レンズ。
  14. 請求項1乃至13のいずれかに記載の眼用レンズが、紫外線吸収剤及び/又は青色光遮断色素を含むことを特徴とする多焦点眼用レンズ。
  15. 請求項1乃至14のいずれかに記載の眼用レンズが、眼内に埋植される眼内レンズであることを特徴とする多焦点眼用レンズ。
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