JP2018118938A - 農薬複合粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】農業従事者が混和作業を行わなくても、農薬活性成分の効力が増強された農薬製剤を提供する。【解決手段】機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子からなる層を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、固体の農薬活性成分粒子が特定の無機粒子によって被覆されている農薬複合粒子及びその製造方法に関する。
これまでに、農薬活性成分の効力増強を目的として種々の検討がなされている。例えば、農薬活性成分と、分子内に特定のポリオキシアルキレン構造を有する化合物とを混和して施用することにより、農薬活性成分の効力を増強させる方法が知られている(特許文献1参照)。
国際公開第2009/028454号
しかし、従来の効力増強方法では、農業従事者が農薬活性成分と該化合物とを混和する必要があった。
本発明は、農業従事者が混和作業を行わなくても、農薬活性成分の効力が増強された農薬複合粒子を製造する方法、並びに該農薬複合粒子を製剤化する工程を有する農薬製剤の製造方法を見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 機械的複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子からなる層を形成する工程を有する、農薬粒子の製造方法。
[2] 25℃で固体の農薬活性成分の粒子の粒径が、1〜100μmの範囲である、[1]に記載の農薬複合粒子の製造方法。
[3] 酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子の粒径が、25℃で固体の農薬活性成分の粒子の粒径の3分の1以下である、請求項1又は2に記載の農薬複合粒子の製造方法。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の農薬複合粒子の製造方法により製造された農薬複合粒子を製剤化する工程を有する、農薬製剤の製造方法。
[5] 機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子からなる層を形成する工程を有する、農薬活性成分の効力増強方法。
[6] 酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子並びに25℃で固体の農薬活性成分からなり、該農薬活性成分の粒子表面に、機械的粒子複合化法により形成した該無機粒子からなる層を有する農薬複合粒子。
本発明の製造方法により製造された農薬複合粒子(以下、本複合粒子と記す)により、固体の農薬活性成分の効力を増強させることができる。また、本複合粒子は、その粒径が、被覆前の農薬活性成分の粒子の粒径とほぼ同じであり、被覆処理していない農薬活性成分と同様に製剤化することができる。本複合粒子、及び本複合粒子を製剤化して得られた農薬製剤は、農業従事者が施用時に効力増強成分を混和する必要がないため、農作業を省力化することができる。
本複合粒子の電子顕微鏡写真である。(試験例1) 本複合粒子の断面の電子顕微鏡写真である。(試験例2) 本複合粒子の酸化鉄R300層の厚さの分布を示した図である。(試験例2)
本発明における農薬活性成分は25℃で固体の農薬活性成分であり、その融点は70℃以上であることが好ましい。農薬活性成分としては、殺虫活性成分、殺菌活性成分、除草活性成分、昆虫成長制御活性成分及び植物成長制御活性成分が挙げられる。
かかる殺虫活性成分及び昆虫成長制御活性成分としては、バチルス・チューリンゲンシスなどを利用した生物農薬;デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、テトラメトリン、テフルスリン等のピレスロイド化合物;プロポキサー、イソプロカルブ、キシリルカルブ、メトルカルブ、チオジカルブ、XMC、カルバリル、ピリミカルブ、カルボフラン、メソミル、フェノキシカルブ、フェノブカルブ等のカーバメート化合物;アセフェート、トリクロルホン、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、ピリダフェンチオン、アジンホスエチル、アジンホスメチル等の有機リン化合物;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−(6−ヨード−3−ピリジルメトキシ)ピリダジン−3(2H)−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアゾン−4−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア化合物;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、チアメトキサム、ジノテフラン、チアクロプリド等のクロロニコチル化合物;スピノサド等のスピノシン類;フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール等のジアミド化合物;フィプロニル、エチプロール等のフェニルピラゾール化合物;スピロテトラマット、スピロメシフェン、スピロジクロフェン等のテトラミックアシッド化合物;その他カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、ヒドラメチルノン、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アベルメクチン、ホウ酸、パラジクロロベンゼン等が挙げられる。
かかる殺菌活性成分としては、フェンピラザミン等のピラゾリノン化合物;マンデストロビン;ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール化合物;メタラキシル等のアシルアラニン化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、トリフルザミド等のカルボキシアミド化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、SSF−126等のメトキシアクリレート化合物;その他クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、オリサストロビン、イソチアニル、チアジニル、チウラム等が挙げられる。
かかる除草活性成分としては、アトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6−ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン、イマゾスルフロン、プロピリスルフロン、スルホスルフロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;その他ビスピリバックナトリウム塩、ビスチオバックナトリウム塩、アシフルオルフェンナトリウム塩、サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン、ブロモブチド等が挙げられる。
かかる植物成長制御活性成分としては、マレイックヒドラジド、クロルメカット、エテフォン、ジベレリン、メピカットクロライド、チジアズロン、イナベンファイド、パクロブトラゾール、ウニコナゾール等が挙げられる。
本発明における農薬活性成分としては、フェンピラザミン、フルミオキサジン、クロチアニジン及びバチルス・チューリンゲンシスが好ましい。
本発明における農薬活性成分の粒子の粒径は1〜100μmの範囲である。但し、農薬活性成分の粒子の粒径は、本複合粒子を製剤化するに際し、選択する製剤の形態(剤型)によって決定され、そのまま施用する剤型(例えば、粉剤及び粒剤)の場合、通常1〜100μm、好ましくは3〜100μm、さらに好ましくは5〜50μmの範囲であり、水と混合して施用する剤型(例えば、水性懸濁製剤及び水和剤)の場合、通常1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜25μmの範囲である。本発明において、農薬活性成分の粒子の粒径とは、体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒径(体積メジアン径)を意味し、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定により求めることができる。より具体的には、水中に農薬活性成分の粒子を分散させて該装置を用いて測定する。かかるレーザ回折式粒度分布測定装置としては、例えば、マルバーン社製のマスターサイザー2000が挙げられる。
本発明においては、農薬活性成分の粒子として、必要に応じ粉砕機を用いて粉砕された農薬活性成分粉末を用いる。粉砕機としては、例えば、ジェットミル及び遠心粉砕機が挙げられる。
本発明における無機粒子(以下、本無機粒子と記す)とは、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムまたは炭酸カルシウムの微粒子であり、これらが混合されていてもよく、塗料、化粧品及びゴム用添加剤等として一般に知られている。
本無機粒子の粒径は、農薬活性成分の粒子の粒径の通常3分の1以下、好ましくは5分の1以下である。本無機粒子の粒径は、本無機粒子の分散液の粒子径を動的光散乱法を用いて測定した粒径(体積メジアン径)であり、具体的にはZETASIZER Nano ZSP(Malvern Instruments社製)を用いて、溶媒屈折率:1330、溶媒粘度:0.8872cp、測定温度:25℃、平衡時間:20秒のパラメーターの装置環境下で、無機粒子分散液の粒子径を粒度分布として測定する。無機粒子分散液は、本無機粒子をイオン交換水100mLの入ったガラス製スクリュー管に0.01%となるように分取し、このスクリュー管に60秒間超音波を照射することにより調製する。
本複合粒子の製造方法(以下、本複合粒子製造方法と記す)について以下に説明する。
本複合粒子製造方法は、機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、本無機粒子からなる層を形成する工程(以下、本工程と記す)を有する。機械的粒子複合化法とは、粉砕機及び混合機等の機械を用いて複合粒子を作製する手法であり、核となる物質の粒子(以下、母粒子と記す)と、母粒子とは異なる物質であって、且つ母粒子より小さい粒子(以下、子粒子と記す)との混合物に、圧縮、剪断、摩擦及び衝撃等の機械的エネルギーを加えることにより、バインダーを用いることなく、母粒子を多数の子粒子で被覆し、複合粒子を作製する技術として知られている。該技術は、多数の文献に記載されており、かかる文献としては、例えば、「医薬品製剤開発のための次世代微粒子コーティング技術」(市川秀喜監修、株式会社シーエムシー出版、2012年12月3日、p.111-118)が挙げられる。機械的粒子複合化法は、市販されている粒子複合化装置を用いることにより行うことができる。かかる市販されている粒子複合化装置としては、例えば、株式会社奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム(登録商標)、及び株式会社アーステクニカ製のクリプトロン等の高速衝撃式乾式粒子複合化装置、並びにホソカワミクロン株式会社製のメカノフュージョン(登録商標)、特開2005−270955号公報に記載の装置であるホソカワミクロン株式会社製のノビルタ(登録商標)NOB、及び株式会社徳寿工作所製のシータ・コンポーザ等の圧縮剪断式乾式粒子複合化装置が挙げられる。本工程は、ノビルタを用いて行うことが好ましい。
本工程においては、母粒子として農薬活性成分粉末を、子粒子として本無機粒子を用いる。農薬活性成分粉末と本無機粒子とを所定割合で配合して得られる配合物を、粒子複合化装置で混合すると、農薬活性成分の粒子表面に本無機粒子が付着し、本無機粒子からなる層が形成される。農薬活性成分粉末と本無機粒子との重量比は、農薬活性成分粒子の粒径及び真比重、並びに、本無機粒子の粒径及び真比重によって変わり得るが、通常4:96〜99.7:0.3、好ましくは16:84〜99.4:0.6、さらに好ましくは25:75〜99:1の範囲である。本工程においては、粒子複合化装置の混合容器内へ、農薬活性成分粉末及び本無機粒子の全量を一度に投入してもよく、農薬活性成分粉末は全量投入し、本無機粒子は分割して投入してもよい。また、事前に酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる2種類以上の無機粒子を配合したしたものを一度に装置に投入してもよく、異なる種類の無機粒子を装置に分割して投入することもできる。粒子複合化装置の混合容器内へ、農薬活性成分粉末及び本無機粒子の全量を一度に投入する場合、粒子複合化装置の混合容器内へ農薬活性成分粉末及び本無機粒子をそれぞれ投入するか、ホソカワミクロン株式会社製のナウタミキサ(登録商標)等の混合機を用いて農薬活性成分粉末及び本無機粒子を予め混合して得られる混合物を投入することもできる。農薬活性成分粉末及び本無機粒子の全量を、粒子複合化装置の混合容器内へ投入した後、粒子複合化装置を作動させて混合することにより、本複合粒子を得ることができる。
粒子複合化装置の混合容器内へ、農薬活性成分粉末は全量投入し、本無機粒子を分割して投入する場合、まず、粒子複合化装置の混合容器内へ農薬活性成分粉末全量と、本無機粒子の一部を投入し、粒子複合化装置を作動させて混合し、複合粒子を得る工程(以下、工程1と記す)を実施する。次に、本無機粒子の一部を添加し、粒子複合化装置を作動させて工程1で得られた複合粒子と本無機粒子とを混合し、該複合粒子を本無機粒子で被覆する工程(以下、工程2と記す)を繰り返し実施することにより本複合粒子を得ることができる。また、工程1を実施した後、得られた複合粒子の一部を装置から取り出し、取り出した複合粒子と同量の本無機粒子を工程2において添加することもできる。
粒子複合化装置で混合する際の混合強度は、通常0.005〜0.25kW/g、好ましくは0.005〜0.10kW/gの範囲である。本発明において、混合強度とは、混合時の粒子複合化装置の動力(kW)を、粒子複合化装置の混合容器内への粉末の投入量(g)で除することにより求められる値である。また、混合時間は、通常0.5〜20分、好ましくは3〜15分の範囲である。
本複合粒子の比表面積の値は、農薬活性成分粉末及び本無機粒子を単純に混合して得られる混合物の比表面積の値の通常2分の1〜40分の1、好ましくは4分の1〜25分の1の範囲である。本発明において、比表面積とは、BET法により求められる値を意味する。具体的には、BELPREP-VAC II(日本BEL製)を用いて、約25℃で約12時間真空脱気を行うことで前処理した粉体粒子表面を、BELSORP-mini(日本BEL製)を用いて窒素吸着法の定容法にて測定することにより得た吸着脱離等温線をBET法(BETの式を用いる解析方法)により解析することで求められる。
図2は、本複合粒子の断面の電子顕微鏡写真である。図2に示すように、本複合粒子は、1個の農薬活性成分の粒子表面に、多数の本無機粒子からなる層(以下、無機粒子層と記す)を有する。農薬活性成分の粒子表面は、必ずしもその全てが本無機粒子で覆われていなくてもよい。本発明においては、農薬活性成分の粒子表面の50%以上が本無機粒子で覆われていることが好ましく、100%が覆われていることがさらに好ましい。また、農薬活性成分の粒子表面の100%が覆われ、且つ、無機粒子層の厚さが厚いことが好ましい。無機粒子層の平均厚さは、通常0.01〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜20μmの範囲である。
本無機粒子による無機粒子層の平均厚さは、以下のように求められる。本複合粒子を樹脂に包埋させ、ミクロトームを用いて断面を作製し、走査電子顕微鏡を用いて観察される該断面のデジタル画像において、農薬活性成分の粒子を灰色、本無機粒子の粒子層を白色、本複合粒子外側の包埋樹脂部分を黒色に三値化したのち、白色部と灰色部との境界の画素を起点として、起点から白色部と黒色部との境界の画素への最短の距離を画像解析により求め、この操作を全ての起点で実施する。数十〜100個程度の本複合粒子について同様の画像解析を実施して得られた数千〜数万点の距離の数平均値が、無機粒子層の平均厚さである。
また、本複合粒子の粒径は、農薬活性成分の粒子の粒径の1.0〜1.5倍である。本複合粒子は、その粉末度が2%以下であることが好ましい。本発明において、粉末度とは次の方法で求めた値である。まず、本複合化粒子を含有する製剤をイオン交換水で100倍に希釈し、マグネティックスターラー等で撹拌して得た分散液を目開き300μmの篩に通し、残渣量が一定になるまで水道水で洗浄する。ついで該篩上の残渣をシャーレに移し、水を蒸発させた後、残渣の重量を計量する。試験に使用した複合化粒子の重量に対する該残渣重量の比率(%)が粉末度の結果である。
本複合粒子における本無機粒子の含有量は、通常0.3〜96重量%、好ましくは0.6〜84重量%、さらに好ましくは1〜75重量%である。また、本複合粒子における農薬活性成分と本無機粒子との重量比は、農薬活性成分粒子の粒径及び真比重、並びに本無機粒子の粒径及び真比重によって変わり得るが、通常4:96〜99.7:0.3、好ましくは16:84〜99.4:0.6、さらに好ましくは25:75〜99:1の範囲である。
本発明の農薬製剤の製造方法は、本複合粒子を製剤化する工程を有する。本複合粒子は、複合化されていない固体の農薬活性成分と同様に製剤化することができる。また、複合化の際に所望の粒径に調整されているため、製剤化の際には粉砕する必要がない。製剤化は公知の方法により行われる。本複合粒子、並びに固体の不活性担体、結合剤及び界面活性剤等の製剤助剤を混合し、水和剤、粉剤、DL(ドリフトレス)粉剤、粒剤、微粒剤、微粒剤F、顆粒水和剤、ジャンボ剤及び錠剤等の固形製剤に製剤化することができる。また、本複合粒子、並びに水及び有機溶媒等の分散媒並びに界面活性剤等の製剤助剤を混合し、水性懸濁製剤、水性乳濁製剤及びオイルフロアブル等の液体製剤に製剤化することができる。
本複合粒子を製剤化して得られる農薬製剤は、従来の農薬製剤と同様に使用することができ、水田、畑地、果樹園、芝地、非農耕地等の場所に施用することができる。該製剤を所望により水と混合し、上記場所に生育する植物や上記場所の土壌に散布してもよい。該製剤を水と混合して得られる希釈液の散布方法としては、公知の散布機等を用いた土壌表面散布や茎葉散布等が挙げられる。また、該希釈液は、種子処理、育苗箱処理等に使用することもできる。
本発明の効力増強方法は、機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、本無機粒子からなる層を形成する工程を有する。本発明の農薬活性成分の効力増強方法によれば、用いる農薬活性成分の効力を増強することができる。
本複合粒子は、本無機粒子及び25℃で固体の農薬活性成分からなり、該農薬活性成分の粒子表面に、機械的粒子複合化法により形成した該無機粒子からなる層を有する。本複合粒子の粒径は、被覆前の農薬活性成分の粒子の粒径とほぼ同じであるため、被覆処理していない25℃で固体の農薬活性成分と同じ様に取扱い製剤化することができる。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
実施例で使用する無機粒子について、以下に示す。
カラー塗装着色顔料300R(以下、酸化鉄300Rと記す)/戸田工業株式会社/平均粒子径:0.32μm(測定方法: ZETASIZER法)
MAGNESIUM Oxide nanpowder(以下、酸化マグネシウム微粉と記す)/Stem Chemicals,Inc./平均粒子径:0.63μm(測定方法:ZETASIZER法)
Aluminum Oxide nanopowder(以下、酸化アルミニウム微粉と記す)/Stem Chemicals,Inc./平均粒子径:1.5μm(測定方法:ZETASIZER法)
NEOLIHT SP(以下、炭酸カルシウム微粉と記す)/竹原化学工業株式会社/平均粒子径:0.72μm(測定方法:ZETASIZER法)
参考製造例1
フェンピラザミン(純度:98.4%、住友化学株式会社製)を縦型ジェットミル(JOM−0101型ジェット粉砕装置、株式会社セイシン企業製)を用い、空気圧を変えて乾式粉砕することにより、粒径が5.0μmのフェンピラザミン粉末(以下、フェンピラザミン粉末Aと記す)、及び粒径が6.0μmのフェンピラザミン粉末(以下、フェンピラザミン粉末Bと記す)を得た。
製造例1
フェンピラザミン粉末B 9.6gと酸化鉄300R 2.4gとを粒子複合化装置(ノビルタNOB−MINI、ホソカワミクロン株式会社製)の混合容器内へ投入し、動力158〜301Wで10分間混合し、複合粒子1aを得た。該混合容器内から複合粒子1a 2.0gを取り出し、酸化鉄300R 2.0gを加え、動力70〜83Wで10分間混合し、本発明の農薬複合粒子(1)(以下、農薬複合粒子(1)と記す)を得た。
製造例2
フェンピラザミン粉末A 9.6gと酸化マグネシウム微粉 2.4gとを粒子複合化装置(前述に同じ)の混合容器内へ投入し、動力187〜402Wで10分間混合し、複合粒子2aを得た。該混合容器内から複合粒子2a 2.0gを取り出し、酸化マグネシウム微粉 2.0gを加え、動力130〜158Wで10分間混合し、本発明の農薬複合粒子(2)(以下、農薬複合粒子(2)と記す)を得た。
製造例3
フェンピラザミン粉末A 9.6gと酸化アルミニウム微粉 2.4gとを粒子複合化装置(前述に同じ)の混合容器内へ投入し、動力252〜404Wで10分間混合し、複合粒子3aを得た。該混合容器内から複合粒子3a 2.0gを取り出し、酸化アルミニウム微粉 2.0gを加え、動力130〜214Wで10分間混合し、本発明の農薬複合粒子(3)(以下、農薬複合粒子(3)と記す)を得た。
製造例4
フェンピラザミン粉末A 7.68gと炭酸カルシウム微粉 1.92gとを粒子複合化装置(前述に同じ)の混合容器内へ投入し、動力130〜214Wで10分間混合し、複合粒子4aを得た。該混合容器内から複合粒子4a 2.0gを取り出し、炭酸カルシウム微粉 2.0gを加え、動力63〜70Wで10分間混合し、本発明の農薬複合粒子(4)(以下、農薬複合粒子(4)と記す)を得た。
製剤例1
農薬複合粒子(1) 37重量部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Morwet(登録商標)EFW、AkzoNobel社製) 3重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(Morwet(登録商標)D−425、AkzoNobel社製) 10重量部及びロウ石(商品名:勝光山クレーS、勝光山鉱業所製) 50重量部を乳鉢を用いて混合し、水和剤(1)を得た。
製剤例2
農薬複合粒子(2) 30.8重量部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Morwet(登録商標)EFW、AkzoNobel社製) 3重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(Morwet(登録商標)D−425、AkzoNobel社製) 10重量部及びロウ石(商品名:勝光山クレーS、勝光山鉱業所製) 56.2重量部を乳鉢を用いて混合し、水和剤(2)を得た。
製剤例3
農薬複合粒子(3) 30.8重量部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Morwet(登録商標)EFW、AkzoNobel社製) 3重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(Morwet(登録商標)D−425、AkzoNobel社製) 10重量部及びロウ石(商品名:勝光山クレーS、勝光山鉱業所製) 56.2重量部を乳鉢を用いて混合し、水和剤(3)を得た。
製剤例4
農薬複合粒子(4) 30.8重量部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(Morwet(登録商標)EFW、AkzoNobel社製)3重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(Morwet(登録商標)D−425、AkzoNobel社製) 10重量部及びロウ石(商品名:勝光山クレーS、勝光山鉱業所製) 56.2重量部を乳鉢を用いて混合し、水和剤(4)を得た。
参考製造例2
フェンピラザミン粉末B 66.7重量部と酸化鉄300R 33.3重量部とをポリエチレン袋に入れ、該ポリエチレン袋を激しく振り動かして混合し、比較用のフェンピラザミン及び酸化鉄300Rの混合物(1)(以下、比較混合物(1)と記す)を得た。
参考製剤例1
フェンピラザミン粉末A 20.0重量部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(前述に同じ) 3.0重量部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(前述に同じ) 10重量部、酸化マグネシウム微粉 10.8重量部及びロウ石(前述に同じ) 56.2重量部をジュースミキサーを用いて混合し、比較用の水和剤(1)(以下、比較水和剤(1)と記す)を得た。
参考製剤例2
酸化マグネシウム微粉を酸化アルミニウム微粉に変えた以外は参考製剤例1と同様の操作を行い、比較用の水和剤(2)(以下、比較水和剤(2)と記す)を得た。
参考製剤例3
酸化マグネシウム微粉を炭酸カルシウム微粉に変えた以外は参考製剤例1と同様の操作を行い、比較用の水和剤(3)(以下、比較水和剤(3)と記す)を得た。
試験例1
農薬複合粒子(1)を、走査電子顕微鏡(型番:S-5500、株式会社日立製作所製)を用いて観察した。農薬複合粒子(1)の電子顕微鏡写真を図1に示す。
試験例2
農薬複合粒子(1)をエポキシ樹脂に包埋させ、ウルトラミクロトーム(型番:Leica EM UC7、ライカマイクロシステムズ株式会社製)及びダイヤモンドナイフを用いて粒子断面を作製した。該粒子断面を、走査電子顕微鏡(前述に同じ)を用いて観察した。農薬複合粒子(1)の断面の電子顕微鏡写真を図2に示す。また、観察された粒子断面のデジタル画像において、農薬複合粒子(1)では22個の本複合粒子について農薬活性成分の粒子を灰色、酸化鉄層を白色、本複合粒子外側の包埋樹脂部分を黒色に三値化したのち、それぞれの粒子の白色部と灰色部との境界の画素を起点として、起点から白色部と黒色部との境界の画素への最短の距離を画像解析により求め、この操作を全ての起点で実施した。全ての粒子に同様の画像解析を実施して得られた21537点(農薬複合粒子(1))の距離の数平均を取得することで計測した農薬複合粒子(1)の無機粒子層の厚さの分布を図3に示す。
試験例3
農薬複合粒子(1)並びに比較混合物(1)を、それぞれBELPREP-VAC II(日本BEL製)を用いて、約25℃で約12時間真空脱気を行うことで前処理した後、BELSORP-mini(日本BEL製)を用いて窒素吸着法の定容法にて測定した吸着脱離等温線からBET法により、比表面積を算出した。結果を表1に示す。
試験例4
水和剤(2)、水和剤(3)または水和剤(4)を、それぞれ0.2gを、100mL容量ガラスビーカーへ秤量し、イオン交換水20mLを投入してマグネティックスターラーで2分間撹拌して製剤を分散させた。該分散液を目開き300μmの篩に通した後、篩上の残渣量が一定になるまで水道水で洗浄した。該篩上の残渣をシャーレに移し、水を蒸発させた後、残渣の重量を計量した。該残渣量は試験したいずれの水和剤においても0.02%であった。
試験例5
水和剤(2)を農薬活性成分の濃度が50ppmとなるように水と混合して希釈液を得た。該希釈液50mLをスプレーガンで第2本葉程度まで生育したきゅうりの葉面に均一になるように散布した。該希釈液を風乾後に7日間温室で栽培した後、菌核病菌含有のジャガイモ煎汁寒天培地を該葉面上に接種した。きゅうりを多湿環境下で3日間栽培した後、きゅうりの葉面に形成された病斑直径を計測した。これを処理区とする。また、水和剤(2)の希釈液を散布しないこと以外は同様の操作を行い、これを無処理区とした。
試験はきゅうり6株、6ポットを1試験区として、2反復にて試験を行い、以下の式により防除価を判定した。
防除価(%)=[(無処理区病斑半径―処理区病斑半径)/無処理区病斑半径]×100
水和剤(3)、水和剤(4)、比較水和剤(1)、比較水和剤(2)及び比較水和剤(3)についても同様の操作を行い、防除価を判定した。結果を表2に示す。
試験例6
水和剤(4)を農薬活性成分の濃度が50ppmとなるように水と混合して希釈液を得た。該希釈液50mLをスプレーガンで第2本葉程度まで生育したきゅうりの葉面に均一になるように散布した。散布1日後に人工降雨装置を用いて降雨処理(10mm/1hr、計1hr)を行い、さらに、その1日後に菌核病菌含有のジャガイモ煎汁寒天培地を該葉面上に接種した。接種後、きゅうりを多湿環境下で3日間栽培した後、きゅうりの葉面に形成された病斑直径を計測した。これを処理区とする。また、水和剤(4)の希釈液を散布しないこと以外は同様の操作を行い、これを無処理区とした。
試験はきゅうり6株、6ポットを1試験区として2反復にて試験を行い、以下の式により防除価を判定した。
防除価(%)=[(無処理区病斑半径―処理区病斑半径)/無処理区病斑半径]×100
比較水和剤(1)及び比較水和剤(3)についても同様の操作を行い、防除価を判定した。結果を表3に示す。
本複合粒子は容易に製剤化することができる。本複合粒子を製剤化して得られた農薬製剤は、農業従事者が、施用時に効力増強成分を混和しなくても、耐雨性や残効性等の農薬活性成分の効力を向上させることができる。

Claims (6)

  1. 機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子からなる層を形成する工程を有する、農薬粒子の製造方法。
  2. 25℃で固体の農薬活性成分の粒子の粒径が、1〜100μmの範囲である、請求項1に記載の農薬複合粒子の製造方法。
  3. 酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子の粒径が、25℃で固体の農薬活性成分の粒子の粒径の3分の1以下である、請求項1又は2に記載の農薬複合粒子の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の農薬複合粒子の製造方法により製造された農薬複合粒子を製剤化する工程を有する、農薬製剤の製造方法。
  5. 機械的粒子複合化法により、25℃で固体の農薬活性成分の粒子表面に、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子からなる層を形成する工程を有する、農薬活性成分の効力増強方法。
  6. 酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上からなる無機粒子並びに25℃で固体の農薬活性成分からなり、該農薬活性成分の粒子表面に、機械的粒子複合化法により形成した該無機粒子からなる層を有する農薬複合粒子。
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