以下に、本発明の実施の形態に係る電気機器の筐体および電気機器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電気機器1の外観図である。なお、図1を含む複数の図には、説明を分かり易くするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を付しており、X軸の正方向が電気機器1の前方を指すものとし、Y軸の正方向が電気機器1の左方を指し、Z軸の正方向を電気機器1の上方を示すものとする。
図1に示すように、実施の形態1に係る電気機器1は、防水構造および耐塩害構造を有する筐体2と、筐体2に形成される内部空間5に収納される機器本体3と、機器本体3に接続され、筐体2の外に一部が配置されるケーブル4とを有する。筐体2の内部空間5は、筐体2内の空間を意味し、筐体2の防水構造によって防水され且つ筐体2の耐塩害構造によって密封性が確保される空間である。なお、機器本体3は、筐体2の内部空間5に配置されていればよく、図1に示す形状に限定されない。また、機器本体3の配置は、図1に示す配置に限定されない。
機器本体3は、電気機器1の機能を実現する複数の部品によって構成される。電気機器1が、発電装置から供給される直流電力を交流電力へ変換して出力するパワーコンディショナーである場合、機器本体3は、昇圧回路、インバータ回路、およびヒートシンクを含む複数の電気部品を含む。なお、電気機器1は、パワーコンディショナーに限定されず、屋外に設置される電気機器であればよい。電気機器には、主に電子部品から構成される電子機器が含まれる。
後述するように、実施の形態1に係る電気機器1の筐体2においては、防水構造へ影響を与えることなく耐塩害構造から気密性を向上させるための部品を取り外すことができ、耐塩害機能を選択的に除去することができる。以下、筐体2について、具体的に説明する。
図2は、実施の形態1に係る電気機器1の筐体2の分解斜視図であり、図1の外観図と同じ方向から見た図である。図2に示すように、筐体2は、フレーム9と、上パネル21と、前パネル22と、右パネル23と、左パネル24と、後パネル25と、上シール部材31と、前シール部材32と、右シール部材33と、左シール部材34と、後シール部材35と、を備える。以下において、パネル21〜25を総称してパネル20と記載し、シール部材31〜35を総称してシール部材30と記載する場合がある。シール部材30は、内部空間5の気密性を向上させる部材である。シール部材30は、非連続発泡タイプのシール材であり、ゴム、ウレタン樹脂、およびシリコン樹脂といった弾性を有する素材によって形成される。
フレーム9は、パネル20が取り付けられるフレーム本体7と、フレーム本体7の下部に連結される脚部8とを備える。フレーム9に各パネル20が取り付けられ、かつ、パネル20とフレーム9との間にシール部材30が挟み込まれることで、防水構造および耐塩害構造を有する筐体2が形成される。パネル20は、主に締結部材によってフレーム9に締結されることによって取り付けられる。締結部材としては、ネジが挙げられる。パネル20とフレーム9とを締結する締結部材は、パネル20とフレーム9とを締結できるものであればよく、ボルトおよびナット、リベットまたは他の部材であってもよい。また、フレーム9から取り外されることがないパネル20は、溶接によってフレーム9へ取り付けてもよい。
図3は、実施の形態1に係る電気機器1の筐体2が備えるフレーム本体7の斜視図である。図3に示すフレーム本体7は、8つの枠部材11〜18と、1つの板部材19とを備える。なお、筐体2は板金で形成される筐体であり、枠部材11〜18および板部材19は、鋼板によって形成されるが、他の金属板によって形成されてもよい。また、筐体2は板金で形成される筐体でなくてもよい。枠部材11〜18を総称して枠部材10と記載する場合がある。
枠部材11〜14は、フレーム本体7において上下方向に延伸する部材であり、枠部材15,16は、フレーム本体7において前後方向に延伸する部材であり、枠部材17,18は、フレーム本体7において左右方向に延伸する部材である。以下においては、枠部材11〜14を縦枠部材と記載し、枠部材15,16を奥行枠部材と記載し、枠部材17,18を幅枠部材と記載する場合がある。
枠部材11〜18および板部材19が溶接により連結されることによって、フレーム本体7が形成される。具体的には、縦枠部材11〜14の下端部が板部材19の四隅に溶接により各々連結され、縦枠部材11の上端部、奥行枠部材15の前端部および幅枠部材17の左端部が溶接によって連結され、縦枠部材12の上端部、奥行枠部材16の前端部および幅枠部材17の右端部が溶接によって互いに連結される。また、縦枠部材13の上端部、奥行枠部材15の後端部および幅枠部材18の左端部が溶接によって連結され、縦枠部材14の上端部、奥行枠部材16の後端部および幅枠部材18の右端部が溶接によって連結される。なお、枠部材10間に補強板を取り付けることもできる。
枠部材10は、切断機で切断された細長い形状の平板を、かかる平板の長手方向に亘って加工機で複数回折り曲げた形状を有している。切断機は、シャーまたはスリッタであり、加工機は、プレスブレーキであるが、加工対象の平板を後述する形状に加工できればよく、他の装置を用いて枠部材10を形成してもよい。なお、以下において、平板の長手方向を単に長手方向と記載し、平板の短手方向を単に短手方向と記載する場合がある。また、枠部材11の長手方向が上下方向であるものとして説明する。
図4は、実施の形態1に係る枠部材11の斜視図を示す図であり、図5は、実施の形態1に係る枠部材11の断面図である。なお、他の枠部材12〜18も枠部材11と同様の断面形状であるため、以下においては、主に枠部材11の構成について説明する。
図4および図5に示すように、長手方向に延伸する枠部材11は、短手方向における断面がL字状に形成された基部41と、基部41の両端から互いに接近する方向に屈曲して延伸し、互いに異なるパネル20と対向する複数の対向部42,43とを備える。L字状の基部41は、平板の短手方向における中央部を長手方向に亘って90度折り曲げる折り曲げ加工によって形成される。基部41の断面は、L字状の形状であることに限定されない。基部41の断面は、平板状であってもよく、C字状であってもよい。対向部42,43は、板部材の短手方向における両端部を長手方向に亘って端部同士が接近する側に90度折り曲げる曲げ加工を行うことによって基部41の両端に連続して形成される。
枠部材11は、隣接するパネル20間の隙間から浸入した水分を外部へ排出するための通路としての機能を持つ排水路空間50を有しており、排水路空間50は、基部41と複数の対向部42,43とに囲まれた空間に形成される。
対向部42は、対向するパネル20の裏面に当接する接合面53を有する基端部44と、対向するパネル20の裏面との間でシール部材30を挟持するシール部材取付面54を有する先端部46と、基端部44と先端部46との間に形成され、基端部44と先端部46との間に段差を形成する段差部48とを備える。段差部48は、板部材のうち対向部42が形成される領域の異なる2つの箇所を長手方向に亘って排水路空間50側と排水路空間50の逆側とに各々90度までの範囲内で折り曲げることによって形成される。
基端部44は、図4に示すように、枠部材11にパネル20を取り付けるためのネジ孔51を有している。ネジ孔51は上下方向に間隔を空けて複数形成される。また、先端部46は、段差部48を介して基端部44に支持されることによって基端部44よりも排水路空間50側に形成され、基端部44よりも排水路空間50側に位置する。したがって、後述するように、パネル20を枠部材11に接合した場合に、パネル20の裏面と先端部46の間においてシール部材30が配置される空間を形成することができる。
対向部43は、対向部42と同様に構成される。すなわち、対向部43は、対向部42の基端部44、先端部46、および段差部48と同様の構成を有する基端部45、先端部47、および段差部49を備える。基端部45は、基端部44のネジ孔51および接合面53と同様のネジ孔52および接合面55を有し、先端部47は、先端部46のシール部材取付面54と同様のシール部材取付面56を有する。
次に、フレーム9に取り付けられるパネル20について説明する。パネル20は、矩形状の板材に折り曲げ加工および溶接処理を施すことによって形成される。具体的には、パネル20は、矩形状の板材における外縁部の四辺の各々を加工機で一回または複数回の折り曲げ加工を行った後、外縁部の四隅を溶接することによって形成される。
図6は、実施の形態1に係る前パネル22の横断面図である。図6に示すように、前パネル22は、筐体2の前面を構成するパネル本体部61と、後述する案内路66を形成する断面がL字状の案内部62と、パネル本体部61および案内部62の各々と互いに直交し、パネル本体部61と案内部62を接続する接続部63とを備える。図6に示す前パネル22の端部は、矩形状の板材における外縁部を内側に90度ずつ2回折り曲げて折り返し、さらに、外側に90度折り曲げることによって形成される。なお、後パネル25も図6に示す前パネル22と同様の構成である。
図7は、実施の形態1に係る左パネル24の横端面図である。図7に示すように、左パネル24は、筐体2の左側面を構成するパネル本体部64と、パネル本体部64の端部から排水路空間50側に向けて延伸し、後述する案内路66を形成するためのL字状の案内部65とを備える。図7に示す左パネル24の端部は、矩形状の板材における外縁部の左右の2辺の各々を内側に90度ずつ2回折り曲げる折り曲げ加工を行うことによって形成される。なお、右パネル23も図7に示す左パネル24と同様の構成である。
ここで、筐体2における縦枠部材11、前パネル22、および左パネル24の関係について説明する。図8は、筐体2の横端面図であり、説明の便宜上、左前方の部分以外は省略している。
図8に示すように、前パネル22は、縦枠部材11にネジ90によって取り付けられ、左パネル24は、縦枠部材11にネジ90によって取り付けられている。また、前パネル22と縦枠部材11との間に前シール部材32が挟み込まれ、左パネル24と縦枠部材11との間に左シール部材34が挟み込まれている。筐体2は、上述したように防水構造および耐塩害構造を有している。以下、図8を参照して、防水構造、および耐塩害構造の順に説明する。
図8に示すように、縦枠部材11に取り付けられた前パネル22の左端部と左パネル24の前端部とによって、前パネル22と左パネル24との間の隙間から浸入した水分を排水路空間50へ案内する案内路66が形成される。具体的には、前パネル22の案内部62と左パネル24の案内部65とは、互いの形状に合わせた形状に形成され、間隙を空けて対向しており、案内部62と案内部65との間に、始端が筐体2外に通じる案内路66が形成されている。
案内路66は、縦枠部材11に形成される上述の排水路空間50に向けて延伸しており、前パネル22と左パネル24との間の隙間から浸入した水分を案内路66によって排水路空間50へ誘導することができる。排水路空間50へ浸入した水分は、排水路空間50を通じて筐体2の下部へ誘導され筐体2外へ排出される。また、案内路66は上下方向に延伸しており、案内路66に浸入した水分の一部は案内路66の下端から筐体2外へ排出される。
案内路66の終端は、パネル20との接合面53,55が形成される縦枠部材11の表面ではなく、縦枠部材11の裏面で囲まれる排水路空間50に通じている。そのため、案内路66の終端から出た水分が縦枠部材11の表面側におけるパネル20と縦枠部材11との取付部分へ浸入することを抑制することができる。また、対向部42,43の先端部46,47は、基端部44,45よりもパネル20の裏面から離れていることから、先端部46,47間の間隔を狭めることができる。そのため、排水路空間50へ浸入した水分が排水路空間50からパネル20と縦枠部材11との取付部分へ浸入することを、より効果的に防止することができる。
また、前パネル22が縦枠部材11へ取り付けられることによって、対向部42における基端部44の表面に形成された接合面53に前パネル22の裏面71が当接した状態が維持され、左パネル24の縦枠部材11への接合によって、対向部43における基端部45の表面に形成された接合面55に左パネル24の裏面72が当接した状態が維持される。したがって、パネル20と縦枠部材11との取付部分によって筐体2の内部空間5へ水分が浸入することを抑制できる。
また、接合面53,55は、非塗装面または非表面処理面であり、鋼材の金属面が露出している。前パネル22の裏面71における接合面53への当接部分および左パネル24の裏面72における接合面55への当接部分も非塗装面または非表面処理面である。そのため、フレーム9と前パネル22および左パネル24との導通性を高めて前パネル22および左パネル24の接地を強化することができる。なお、非塗装面は、他の面を塗装する際にマスキングによって形成したり、塗装を除去したりすることで形成することができる。また、非表面処理面は、表面処理を除去することによって形成することができる。
案内路66を形成する案内部62,65は断面視L字状に屈曲した形状を有しており、案内路66は、屈曲して形成される。したがって、前パネル22と左パネル24との間の隙間から水分が勢いよく浸入した場合であっても、案内路66の屈曲部分69によって水分の勢いを低減させることができるので、排水路空間50において、水分が飛散することを防止することができる。なお、図8に示す例では、案内路66は、断面視L字状に形成されているが、案内路66は、水分の勢いを低減する屈曲部分69を複数有し、水分の勢いをより低減することができる形状であってもよい。
上述したように、枠部材12〜18も枠部材11と同様の形状である。枠部材11〜18に形成された排水路空間50は連結されて繋がっている。具体的には、枠部材15から18の異なる2つの排水路空間50の端部同士が連結されており、フレーム9の上部に、矩形環状の排水路空間が形成される。そして、矩形環状の排水路空間の四隅が枠部材11〜14の排水路空間50の上端部の各々に連結されて繋がっている。
なお、他の異なる組み合わせのパネル20同士の他の枠部材10に対する関係も、枠部材11に対する前パネル22と左パネル24との関係と同様になるように筐体2が構成される。すなわち、縦枠部材12、前パネル22、および右パネル23の関係、縦枠部材13、後パネル25、および左パネル24の関係、縦枠部材14、後パネル25、および右パネル23の関係も、図8に示す枠部材11、前パネル22、および左パネル24の関係と同様である。
また、枠部材15〜18に対する上パネル21と他のパネル20との関係が、枠部材11に対する前パネル22と左パネル24との関係と同様になるように、筐体2を構成することができるが、図9に示す関係であってもよく、図10に示す関係であってもよい。図9は、奥行枠部材15に対する上パネル21と左パネル24との関係の一例を示す縦端面図であり、図10は、奥行枠部材15に対する上パネル21と左パネル24との関係の他の例を示す縦端面図である。なお、奥行枠部材15は、縦枠部材11と同様の構成であるため、図9および図10においては、縦枠部材11と同様の機能を有する部位には同一符号を付している。
図9に示す上パネル21は、筐体2の上面を構成するパネル本体部81と、パネル本体部81に連続して下方に延伸する下垂部82とを備える。パネル本体部81は、ネジ90によって奥行枠部材15に取り付けられる。また、左パネル24の上端部には、奥行枠部材15によって形成される空間に進入する断面がL字状の案内部67が形成されている。かかる案内部67の先端部は、奥行枠部材15における基部41の上部にネジ90によって取り付けられる。
したがって、上パネル21と左パネル24との間の隙間から浸入した水分を奥行枠部材15によって形成される空間のうち奥行枠部材15の案内部67上に導き、縦枠部材11,13の排水路空間50を介して筐体2外へ排出することができる。なお、案内部67のうち左右に延伸し且つ排水路空間50に対向する部分に複数の開口を設けることによって、奥行枠部材15により形成される空間のうち奥行枠部材15の下方も排水路空間として利用することができる。
図10に示す例では、左パネル24の上端部には、図7に示す案内部65と同様の断面がL字状の案内部68が形成される。また、上パネル21は、筐体2の上面を構成するパネル本体部81と、パネル本体部81に連続して下方に延伸する下垂部82と、下垂部82に連続し左方に延伸する案内部83とを備える。
左パネル24の案内部68と上パネル21の案内部83との間に、始端が筐体2外に通じる案内路88が形成されている。案内路88は、縦枠部材11に形成される排水路空間50に向けて延伸しており、上パネル21と左パネル24との間の隙間から浸入した水分を案内路88によって排水路空間50へ誘導することができる。排水路空間50へ浸入した水分は、排水路空間50を通じて筐体2外へ排出される。
以上のように、筐体2は、排水路空間50および案内路66,88を含む防水構造を有しており、パネル20間の隙間から水分が浸入した場合であっても、排水路空間50を通じて筐体2外へ水分を排出し、筐体2の内部空間5へ水分が浸入することを防止することができる。
次に、筐体2の耐塩害構造について説明する。図11は、前シール部材32が取り付けられたフレーム9の正面図であり、図10に示すように、前シール部材32は、フレーム9の前面に取り付けられる。上シール部材31、右シール部材33、左シール部材34、および後ろシール部材35も同様に、フレーム9の上面、右側面、左側面、および後面に取り付けられる。
ここで、一例として、図8を参照して、縦枠部材11、前パネル22、左パネル24、前シール部材32、および左シール部材34の関係について説明するが、他の組み合わせについての関係も同様である。
図8に示すように、対向部42の先端部46におけるシール部材取付面54には、前シール部材32が貼り付けられ、対向部43の先端部47におけるシール部材取付面56には、左シール部材34が貼り付けられる。シール部材取付面54への前シール部材32の貼り付けおよびシール部材取付面56への左シール部材34の貼り付けは、粘着テープ、接着材または他の部材によって行われる。
前シール部材32は、前パネル22を縦枠部材11へ接合することによって、シール部材取付面54と前パネル22の裏面71とによって挟持される。同様に、左シール部材34は、左パネル24を縦枠部材11へ接合することによって、シール部材取付面56と左パネル24の裏面72とによって挟持される。
シール部材30は、非連続発泡タイプのシール材から形成されており、高い気密性を有する。前シール部材32において適切な圧縮量を得ることができるように、段差部48が形成する段差の寸法が調整されており、気密性を向上させることができる。同様に、左シール部材34において適切な圧縮量を得ることができるように、段差部49が形成する段差の寸法が調整されており、気密性を向上させることができる。
筐体2は、上述したように、防水構造へ影響を与えることなく耐塩害構造から気密性を向上させるための部品を取り外すことができ、耐塩害機能を選択的に除去することができる。すなわち、筐体2からシール部材30を取り外した状態であっても、防水構造を保持することができる。
図12は、図8に示す状態から、前シール部材32および左シール部材34を取り外した状態を示す横端面図である。図12に示すように、前シール部材32および左シール部材34を取り外しても、前パネル22と縦枠部材11との取付部分、および左パネル24と縦枠部材11との取付部分には影響を及ぼさない。
したがって、筐体2を塩害地域用と非塩害地域用とで共用することができる。また、塩害地域でない場合でも、高い気密性が求められる環境下に設置する場合には、シール部材30を取り付け、高い気密性が求められない環境下に設置する場合には、シール部材30を取り付けないようにすることで、設置環境に応じて複数の筐体を用いることなく同一の筐体を用いることができる。
以上のように、実施の形態1にかかる電気機器1の筐体2は、排水路空間50が形成された枠部材10を有するフレーム9と、互いの端部が対向した状態で枠部材10に取り付けられ、互いの対向する端部間に筐体2外から浸入する水分を排水路空間50へ案内する案内路66を端部間に形成する複数のパネル20とを備える。枠部材10は、枠部材10に複数のパネル20が取り付けられた状態で、対向するパネル20と間隔を空けて対向し、シール部材30を挟持可能なシール部材取付面54,56を有する。したがって、パネル20間の隙間から浸入した水分を案内路66によって排水路空間50へ誘導することができ、排水路空間50が雨樋として機能して防水性を有することができる。また、枠部材10には、複数のパネル20が取り付けられた状態で、対向するパネル20と間隔を空けて対向するシール部材取付面54,56を有していることから、防水構造へ影響を与えることなく耐塩害構造から気密性を向上させるための部品を取り外すことができ、耐塩害機能を選択的に除去することができる。
また、枠部材10は、長手方向に延伸する基部41と、基部41における短手方向の両端から互いに接近する方向に屈曲して延伸し各々異なるパネル20の端部に対向する複数の対向部42,43とを備える。基部41と複数の対向部42,43とに囲まれた空間に排水路空間50が形成され、シール部材取付面54,56は、対向部42,43における排水路空間50の面と反対の面に設けられる。そのため、金属板の折り曲げ加工によって排水路空間50およびシール部材取付面54,56を容易に形成できる。また、対向部42,43の一方の面で排水路空間50を形成し、他方の面でシール部材取付面54,56が形成されることから、枠部材10の両面を有効に活用することができ、枠部材10の小型化を図ることもできる。
また、対向部42,43は、対向するパネル20に接合される接合面53,55を有することから、パネル20を枠部材10に直接接合させることができ、パネル20と枠部材10との取付部分によって防水性をより強化することができる。また、接合面53,55は、シール部材取付面54,56より内部空間5側に配置されることで、塩害地域に配置された場合でも、パネル20と枠部材10との取付部分に塩分が浸入することを防止でき、パネル20と枠部材10との接合の強度が低下することを防止できる。さらに、接合面53,55は、対向部42,43における排水路空間50の面と反対の面に設けられることで、枠部材10の両面を有効に活用することができ、枠部材10の小型化を図ることもできる。
また、接合面53,55は、非塗装面または非表面処理面である。したがって、枠部材10とパネル20との電気的な接続が強化され、パネル20の接地を強化することができる。
また、各パネル20の端部は、排水路空間50へ向かって延伸し且つ一部に屈曲部分を有する案内部62,65を有しており、複数のパネル20の案内部62,65同士が間隙を介して対向配置されて屈曲部分69を有する案内路66が形成される。したがって、隣接するパネル20間の隙間から水分が勢いよく浸入した場合であっても、案内路66の屈曲部分69によって水分の勢いを低減し、排水路空間50において、水分が飛散することを防止することができる。
実施の形態2.
実施の形態2は、実施の形態1に対し、さらに、パネル20の接地を強化するシールドガスケットを取り付ける点で異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の筐体2と異なる点を中心に説明する。図13は、実施の形態2に係る筐体2Aの横端面図であり、上述した図8に対応する図である。なお、図13に示す例では、枠部材11Aについて説明するが、筐体2Aを構成する他の枠部材も枠部材11Aと同様の形状である。
図13に示すように、実施の形態2に係る枠部材11Aにおける対向部42Aの先端部46Aには、対向する前パネル22の裏面71との間でシールドガスケット73を挟持するシールドガスケット取付面57が形成され、かかるシールドガスケット取付面57にシールドガスケット73が貼り付けられる。同様に、対向部43Aの先端部47Aには、対向する左パネル24の裏面72との間でシールドガスケット74を挟持するシールドガスケット取付面58が形成され、シールドガスケット取付面58にシールドガスケット74が貼り付けられる。シールドガスケット取付面57,58へのシールドガスケット73,74の貼り付けは、両面テープまたは粘着剤によって行われる。シールドガスケット73,74は、非導通性の発泡性芯材を導電性素材で被覆した部材であるが、導電性を有する部材であればよく、ばね性を有する金属部材で構成してもよく、導電性エラストマーで構成してもよい。
シールドガスケット取付面57,58は、接合面53,55と同様に、非塗装面または非表面処理面であり、前パネル22の裏面71におけるシールドガスケット73への当接部分および左パネル24の裏面72におけるシールドガスケット74への当接部分も、非塗装面または非表面処理面である。そのため、フレーム9と前パネル22および左パネル24との導通性を高めて前パネル22および左パネル24の接地を強化することができる。
図13に示す例では、シールドガスケット取付面57,58は、シール部材取付面54,56よりも内部空間5側に形成されており、シールドガスケット73,74は、シール部材32,34よりも内部空間5側に配置される。シール部材32,34は、防水性と気密性を高める役割を持っていることから、シールドガスケット73,74側への雨風による水分および塩分の浸入が抑制される。したがって、水分および塩分の浸入を抑制する機能を有していないシールドガスケット73,74を介して、内部空間5へ水分または塩分が浸入することを防止することができる。
なお、図13に示す例では、シールドガスケット73,74をフレーム9の前面および左側面に取り付けているが、シールドガスケットは、シールドが必要な箇所にのみ取り付けてもよい。また、フレーム9の上面、前面、右側面、左側面、および後面のすべてにシールドガスケットを取り付けてもよい。また、シールドガスケット73,74は、シール部材30のようにフレーム9の開口部を囲むように隙間なく取り付けなくてもよい。
図14は、実施の形態2に係る筐体2Aにおいて、図13に示す状態から、シール部材32,34を取り外した状態を示す図である。図14に示すように、筐体2Aからシール部材32,34を取り外した場合、筐体2からシール部材30を取り外した場合と同様に、前パネル22と縦枠部材11Aとの取付部分、および左パネル24と縦枠部材11Aとの取付部分には影響を及ぼさない。したがって、シールドガスケットの有無で筐体2Aの構造を変更する必要が無い。そのため、例えば、電磁波に対する規格が異なる地域に接地される場合であっても、複数の筐体を用いることなく同一の筐体を用いることができる。
以上のように、実施の形態2に係る筐体2Aの対向部42A,43Aは、シール部材取付面54,56より内部空間5側に、対向するパネル20と間隔を空けて対向してシールドガスケット73,74を挟持するシールドガスケット取付面57,58を備える。したがって、シールドガスケット73,74の有無で筐体2Aの構造を変更する必要が無く、シールドガスケット73,74を必要とする地域と必要としない地域がある場合であっても、複数の筐体を用いることなく同一の筐体を用いることができる。
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態2とシールドガスケットの取り付け位置が異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の筐体2と異なる点を中心に説明する。図15は、実施の形態3に係る筐体2Bの横端面図であり、上述した図8に対応する図である。なお、図15に示す例では、枠部材11Bについて説明するが、筐体2Bを構成する他の枠部材も枠部材11Bと同様の形状である。
図15に示すように、実施の形態3に係る枠部材11Bにおける対向部42Bの基端部44Bには、段差部77が形成されて、前パネル22の裏面71から離れた位置にシールドガスケット取付部78が形成される。そして、シールドガスケット取付部78の表面側には、シールドガスケット取付面59が形成され、シールドガスケット取付面59にシールドガスケット75が貼り付けられる。同様に、対向部43Bの基端部45Bには、段差部79が形成されて、接合面55より左パネル24の裏面72から離れた位置にシールドガスケット取付部80が形成される。そして、シールドガスケット取付部80の表面側には、シールドガスケット取付面60が形成され、シールドガスケット取付面60にシールドガスケット76が貼り付けられる。なお、シールドガスケット75,76は、実施の形態2に係るシールドガスケット73,74と同様の構成である。
シールドガスケット取付面59,60は、接合面53,55と同様に、非塗装面または非表面処理面であり、前パネル22の裏面71におけるシールドガスケット75への当接部分および左パネル24の裏面72におけるシールドガスケット76への当接部分も、非塗装面または非表面処理面である。したがって、フレーム9と前パネル22および左パネル24との導通性を高めて前パネル22および左パネル24の接地を強化することができる。
図16は、実施の形態3に係る筐体2Bにおいて、図15に示す状態から、シール部材32,34を取り外した状態を示す横端面図である。図16に示すように、筐体2Bからシール部材32,34を取り外した場合、筐体2Aの場合と同様に、前パネル22と縦枠部材11Bの取付部分、および左パネル24と縦枠部材11Bとの取付部分には影響を及ぼさない。
以上のように、実施の形態3に係る筐体2Bの対向部42B,43Bは、シール部材取付面54,56より内部空間5側に、対向するパネル20と間隔を空けて対向してシールドガスケット75,76を挟持するシールドガスケット取付面59,60を備える。したがって、シールドガスケット75,76の有無で筐体2Bの構造を変更する必要が無く、シールドガスケット75,76を必要とする地域と必要としない地域がある場合であっても、設置地域に応じて複数の筐体を用いることなく同一の筐体を用いることができる。
また、シールドガスケット取付面59,60は、接合面53,55よりも内部空間5側にあることで、接合面53,55によってシールドガスケット75,76に対する防水性を向上させることができる。すなわち、排水路空間50に勢いよく水分が浸入し、接合面53,55側に水分が浸入した場合であっても、シールドガスケット75,76への水分の付着を防止でき、パネル20の接地強化に対する性能が劣化することを抑制できる。
実施の形態4.
実施の形態1では、パネル20が枠部材10に直接取り付けられるが、実施の形態4では、パネルが枠部材に連結部材を介して取り付けられる点で異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の筐体2と異なる点を中心に説明する。
図17は、実施の形態4のフレーム本体7Cの構成を示す図であり、かかるフレーム本体7Cは、枠部材11C〜18Cと板部材19とが溶接によって連結されており、さらに、複数の連結部材6が縦枠部材11C〜14Cに対してネジ締結または溶接によって取り付けられている。なお、以下において、枠部材11C〜14Cを総称して、枠部材10Cと記載する場合がある。
図18は、連結部材6を示す斜視図である。図18に示す連結部材6は、L字型金具であり、鋼板といった金属板を上述した加工機で少なくとも1回折り曲げられて形成される。かかる連結部材6には、枠部材10Cの表面に接合される第1接合面91と、パネル20の裏面に接合される第2接合面92とが形成される。第1接合面91および第2接合面92には、ネジ90を取り付けるためのネジ孔93,94がタップ加工によって形成される。なお、図18に示す連結部材6は、一例であり、連結部材6は、L字型金具に限定されない。
図19は、実施の形態4に係る枠部材11Cの断面図である。なお、他の枠部材も枠部材11Cと同様の断面形状である。図19に示すように、枠部材11Cは、断面視L字状に形成された基部41と、基部41の両端から互いに接近する方向に屈曲して延伸し、互いに異なるパネル20と対向する複数の対向部42C,43Cとを備える。排水路空間50は、基部41と複数の対向部42C,43Cとに囲まれた空間に形成される。なお、枠部材11Cは、枠部材11と同様に折り曲げ加工によって形成される。
対向部42C,43Cは、対向するパネル20の裏面との間でシール部材30を挟持するシール部材取付面54C,56Cを有するが、対向するパネル20の裏面と接合される接合面および段差部を有しておらず、平坦に形成される点で実施の形態1に係る対向部42,43と異なる。
図20は、実施の形態4に係る筐体2Cの横端面図であり、図8と同様に、説明の便宜上、左前方の部分以外は省略している。
図20に示すように、枠部材11Cにおける基部41の一端部が前パネル22に連結部材6を介して連結され、基部41の他端部が左パネル24に連結部材6を介して連結される。そして、対向部42Cのシール部材取付面54Cと前パネル22の裏面71との間に前シール部材32が挟み込まれ、対向部43Cのシール部材取付面56Cと左パネル24の裏面72との間に左シール部材34が挟み込まれている。これにより、内部空間5の気密性を向上させることができ、耐塩害構造を形成することができる。
シール部材取付面54Cと連結部材6の第2接合面92との段差D1は、前シール部材32において適切な圧縮量を得ることができるように調整される。同様に、シール部材取付面56Cと連結部材6の第2接合面92との段差D2は、左シール部材34において適切な圧縮量を得ることができるように調整される。なお、かかる段差D1,D2は、ネジ孔93の位置の設定によって調整することができる。
このように、対向部42Cのシール部材取付面54Cが前パネル22の裏面71と間隔を空けて対向し、且つ対向部43Cのシール部材取付面56Cが左パネル24の裏面72と間隔を空けて対向するように、連結部材6と枠部材11Cとが取り付けられる。そのため、シール部材30の有無にかかわらず、連結部材6と枠部材11Cとを接合することができ、防水構造へ影響を与えることなく耐塩害機能を選択的に除去することができる。
また、実施の形態4に係る対向部42C,43Cは、平坦に形成されることから、実施の形態1に係る対向部42,43のように段差を設ける場合に比べ、折り曲げ加工処理を一部省くことができる。また、連結部材6は、図19に示す形状にさらに折り曲げ加工を追加した形状であってもよく、他の部品を取り付けた連結部材6を用いることもできる。また、連結部材6に対して、筐体2C内の部品を支持する機能を付加させることもできる。
また、第1接合面91、第2接合面92、第1接合面91に接合される枠部材10Cの表面、および第2接合面92に接合されるパネル20の裏面は、非塗装面または非表面処理面である。これにより、枠部材10Cとパネル20との電気的な接続が強化され、パネル20の接地を強化することができる。
図21は、枠部材11Cがパネル22,24と連結部材6で連結されていない部分の筐体2Cの横端面図である。図21に示すように、対向部42Cと前パネル22とが空隙を空けて対向し、対向部43Cが左パネル24と空隙を空けて対向するが、前シール部材32および左シール部材34を含む複数のシール部材30によって密封性を確保することができる。また、シール部材30を設けない場合であっても、パネル20間の隙間から浸入した水分を案内路66によって排水路空間50へ誘導することができ、排水路空間50が排水通路として機能して防水性を有することができる。
以上のように、実施の形態4に係る筐体2Cは、パネル20と枠部材10Cとを連結する連結部材6を備える。そして、枠部材10Cは、枠部材10Cに複数のパネル20が取り付けられた状態で、対向するパネル20と間隔を空けて対向し、シール部材30を挟持可能なシール部材取付面54C,56Cを有する。防水構造へ影響を与えることなく耐塩害構造から気密性を向上させるための部品を取り外すことができ、耐塩害機能を選択的に除去することができる。また、枠部材11Cとパネル20とを別部材である連結部材6を用いて取り付けることで、設計の自由度を向上させることができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。