以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図3、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図3における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図3における上下方向)が示される。図4では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図4における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFに配設された3本の部品実装ラインL1〜L3を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。各部品実装ラインL1〜L3は、後述するように部品実装装置を含む複数の部品実装用装置を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。すなわち、部品実装システム1は、複数の部品実装用装置を連結して構成される部品実装ラインL1〜L3を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインL1〜L3は3本である必要はなく、1本、2本及び4本以上でも良い。
フロアFに設けられた外段取りエリアApには、段取り作業支援装置4が配設されている。段取り作業支援装置4は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。段取り作業支援装置4には、段取り作業の対象となる複数の交換用の部品供給台車5(ここでは4台の部品供給台車5A,5B,5C,5D)が接続されている。以下、交換用の部品供給台車5を「予備台車5*」と称する。
段取り作業支援装置4に接続された予備台車5*(部品供給台車5)には、段取り作業を担当する作業者によって、部品を供給する複数のテープフィーダ9(図4参照)が装着される。予備台車5*にテープフィーダ9が装着されると、予備台車5*を介して段取り作業支援装置4よりテープフィーダ9に電力が供給されて、テープフィーダ9が内蔵するフィーダ制御部(図示省略)が管理コンピュータ3と通信可能な状態となる。これにより、予備台車5*へのテープフィーダ9の装着状況、テープフィーダ9への部品Dを保持するキャリヤテープ15(図4参照)の補給状況などの段取り作業の状況を、管理コンピュータ3において取得することができる。
このように、段取り作業支援装置4に接続された予備台車5*では、部品実装ラインL1〜L3における実装基板の生産を停止させずに、段取り作業を実行することができる。すなわち、段取り作業支援装置4は、部品実装ラインL1〜L3における実装基板の生産を停止させずに実行する段取り作業(以下、「外段取り作業」と称する)を支援する。外段取り作業が完了した予備台車5*(交換用の部品供給台車5)は、部品実装ラインL1〜L3における実装基板の生産を停止させて実行する段取り作業(以下、「内段取り作業」と称する)において、部品実装装置に装着されている交換対象の部品供給台車5と交換される。
次に図2を参照して、部品実装ラインL1〜L3の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1〜L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、基板搬送方向の上流側(紙面左側)から下流側(紙面右側)に向けて、はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3〜M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8などの部品実装用装置を直列に連結して構成されている。
はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3〜M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。はんだ印刷装置M1は、はんだ印刷作業部によって上流側から搬入された基板Bにマスクを介してはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行する。印刷検査装置M2は、はんだ検査カメラを含む印刷検査作業部によって基板Bに印刷されたはんだの状態を検査する印刷検査作業を実行する。
部品実装装置M3〜M6は、部品実装作業部によって基板Bに部品Dを実装する部品実装作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、部品実装装置M3〜M6が4台の構成に限定されることなく、部品実装装置M3〜M6が1〜3台であっても5台以上であってもよい。実装検査装置M7は、部品検査カメラを含む実装検査作業部によって基板Bに搭載された部品Dの状態を検査する実装検査作業を実行する。リフロー装置M8は、装置内に搬入された基板Bを基板加熱部によって加熱して、基板B上のはんだを硬化させ、基板Bの電極部と部品Dとを接合する基板加熱作業を実行する。
次に図3、図4を参照して、部品実装装置M3〜M6の構成を説明する。部品実装装置M3〜M6は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M3について説明する。図4は、図3におけるA−A断面を部分的に示している。部品実装装置M3は、部品Dを基板Bに実装する機能を有している。
図3において、基台6の中央にはX方向に基板搬送機構7が配設されている。基板搬送機構7は上流側から搬入された基板Bを搬送し、部品実装作業を実行するための位置に位置決めして保持する。基板搬送機構7の両側方には、部品供給部8(1),8(2)が設けられている。部品供給部8(1),8(2)には部品Dを供給する複数のパーツフィーダが並設して装着される。部品供給部8(1),8(2)にはこれらのパーツフィーダの装着位置を特定するためのフィーダアドレス8aが設定されている。
本実施の形態に示す例では、部品供給部8(1)におけるフィーダアドレス8aとして、下流側(図3において右側)から上流側に向かって、1−1L/R、1−2L/R,1−3L/R・・が設定されている。これらのフィーダアドレス8aを指定することにより、部品実装装置M3に装着されたパーツフィーダを個別に特定することができるようになっている。同様に、部品供給部8(2)におけるフィーダアドレス8aとして、下流側から上流側に向かって、2−1L/R、2−2L/R,2−3L/R・・が設定されている。なお、フィーダアドレス8aにおける順序の設定方式は任意であり、部品供給部8(1),8(2)のアドレス順を逆に設定してもよい。
ここでは、パーツフィーダとして実装対象の部品を保持したキャリヤテープをピッチ送りする機能を有するテープフィーダ9が装着された例を示している。テープフィーダ9は、部品Dを収納したキャリヤテープをテープ送り方向にピッチ送りすることにより、以下に説明する部品実装機構の実装ヘッドによる部品取り出し位置に部品Dを供給する。すなわち、テープフィーダ9は、部品Dを供給する部品供給手段となる。
図3において、基台6上面においてX方向の一方側の端部には、リニア駆動機構を備えたY軸ビーム10がY方向に沿って配設されている。Y軸ビーム10には、同様にリニア駆動機構を備えた2基のX軸ビーム11が、Y方向に移動自在に結合されている。X軸ビーム11はX方向に沿って配設されている。2基のX軸ビーム11には、それぞれ実装ヘッド12がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド12は、図4に示すように、部品Dを吸着保持して昇降可能な複数の吸着ユニット12aを備える。吸着ユニット12aのそれぞれの先端には、吸着ノズル12bが設けられている。
Y軸ビーム10、X軸ビーム11を駆動することにより、実装ヘッド12はX方向、Y方向に移動する。これにより2つの実装ヘッド12は、それぞれ対応した部品供給部8(1),8(2)に配置されたテープフィーダ9の部品取り出し位置から部品Dを吸着ノズル12bによって吸着して取り出して、基板搬送機構7に位置決めされた基板Bの実装点に実装する。Y軸ビーム10、X軸ビーム11および実装ヘッド12は、部品Dを保持した実装ヘッド12を移動させることにより、部品Dを基板Bに実装する部品実装機構を構成する。
部品Dをテープフィーダ9から取り出して基板Bに実装するまでの実装時間は、テープフィーダ9から基板Bの実装点までに実装ヘッド12が移動する距離に依存する。すなわち、実装時間はテープフィーダ9の位置によって増減する。例えば、基板Bへの実装数が多い部品Dを供給するテープフィーダ9が部品供給部8(1),8(2)の中央付近となるように部品配置することで、実装ヘッド12の移動距離を短縮して実装時間を削減することができる。
図3において、部品供給部8と基板搬送機構7との間には、部品認識カメラ13が配設されている。部品供給部8から部品を取り出した実装ヘッド12が部品認識カメラ13の上方を移動する際に、部品認識カメラ13は実装ヘッド12に保持された状態の部品Dを撮像して部品Dの保持姿勢を認識する。実装ヘッド12が取り付けられたプレート11aには基板認識カメラ14が取り付けられている。基板認識カメラ14は、実装ヘッド12と一体的に移動する。
実装ヘッド12が移動することにより、基板認識カメラ14は基板搬送機構7に位置決めされた基板Bの上方に移動し、基板Bに設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板Bの位置を認識する。実装ヘッド12による基板Bへの部品実装動作においては、部品認識カメラ13による部品Dの認識結果と、基板認識カメラ14による基板位置の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
図4おいて、部品供給部8(1),8(2)は、フィーダベース5aに予め複数のテープフィーダ9が装着された部品供給台車5で構成されている。部品供給台車5は、基台6に対して着脱自在に構成されている。テープフィーダ9がフィーダベース5aに装着されることにより、テープフィーダ9に内蔵されたフィーダ制御部が、部品実装装置M3〜M6の実装制御部21(図5参照)と電気的に接続される。部品供給台車5には、キャリヤテープ15を巻回状態で収納するリール16が保持されている。リール16から引き出されたキャリヤテープ15は、テープフィーダ9に装着されている。テープフィーダ9は、キャリヤテープ15を吸着ノズル12bによる部品取り出し位置までピッチ送りする。
このように、部品実装装置M3には、部品Dを供給する複数の部品供給手段(テープフィーダ9)を配置可能な部品供給台車5を着脱可能である。そして、部品実装装置M3において、基板搬送機構7、部品実装機構(Y軸ビーム10、X軸ビーム11、実装ヘッド12)、部品認識カメラ13、基板認識カメラ14は、基板Bを搬送して部品供給部8(1),8(2)が供給する部品Dを搬送された基板Bに実装する部品実装作業部17(図5参照)を構成する。
次に図5を参照して、部品実装システム1の制御系の構成について説明する。部品実装システム1が備える部品実装ラインL1〜L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1が備える部品実装装置M3〜M6は同様の構成をしており、以下、部品実装装置M3について説明する。
図5において、部品実装装置M3は、実装制御部21、実装記憶部22、部品供給部8、部品実装作業部17、通信部23を備えている。通信部23は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して他の部品実装装置M4〜M6、他の部品実装ラインL2,L3、管理コンピュータ3との間で信号、データの授受を行う。実装制御部21は、実装記憶部22が記憶する部品実装データに基づいて部品供給部8に装着されたテープフィーダ9、部品実装作業部17を制御することにより、部品実装装置M3に部品実装作業を実行させる。
図5において、管理コンピュータ3は、管理制御部31、管理記憶部32、入力部33、表示部34、通信部35を備えている。入力部33は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部34は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部33による操作のための操作画面などの各種情報を表示する。通信部35は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1〜L3の部品実装装置M3〜M6、段取り作業支援装置4との間で信号、データの授受を行う。
管理制御部31はCPUなどの演算装置であり、管理記憶部32が記憶する情報に基づいて部品実装システム1を管理する。管理制御部31は、内部処理機能として部品配置作成部31a、生産時間算出部31b、段取り作業時間算出部31c、生産完了時間算出部31d、部品配置決定部31eを備えている。管理記憶部32は記憶装置であり、実装データ32a、グループ情報32b、部品配置情報32c、算出時間情報32dなどを記憶する。
図5において、実装データ32aは、実装される部品Dの部品種や基板Bにおける実装点などのデータであり、生産対象の実装基板Vごとに記憶される。グループ情報32bには、部品実装ラインL1〜L3において生産対象となる複数種類の実装基板Vを部品実装装置M3〜M6におけるテープフィーダ9(部品供給手段)の配置(以下、「部品配置」と称す。)が共通となるように分けられた共通配置の実装基板VのグループGの情報が記憶されている。実装基板VのグループGは、所定の期間(例えば、1日)に部品実装ラインL1〜L3で生産が計画されている実装基板Vの種類、生産枚数などを基に、あらかじめ決められている。
部品配置作成部31aは、実装データ32a、グループ情報32bに基づいて、部品実装ラインL1〜L3が備える部品実装装置M3〜M6の部品供給部8に装着される予備台車5*(又は部品供給部8に装着されている部品供給台車5)と、その予備台車5*(又は部品供給台車5)に装着されるテープフィーダ9(部品D)の部品供給部8におけるフィーダアドレス8aとを紐付けた部品配置をグループG毎に作成して、部品配置情報32cとして管理記憶部32に記憶させる。部品配置作成部31aは、後述する実装基板Vの生産時間Tvが短くなる条件、外段取り作業時間Twが短くなる条件など、所定の条件に基づいて部品配置を作成する。
図5において、生産時間算出部31bは、実装データ32a、部品配置情報32cに基づいて、作成された部品配置に従ってテープフィーダ9(部品D)が配置された部品実装ラインL1〜L3において計画された生産枚数の実装基板Vを生産する際に要する生産時間Tvを実装基板V毎に算出して、算出時間情報32dとして管理記憶部32に記憶させる。
段取り作業時間算出部31cは、実装データ32a、グループ情報32b、部品配置情報32cに基づいて、外段取り作業にかかる外段取り作業時間Twと内段取り作業にかかる内段取り作業時間Tcを算出し、算出時間情報32dに記憶させる。すなわち、段取り作業時間算出部31cは、外段取り作業にかかる外段取り作業時間Twを算出する外段取り作業算出部、及び内段取り作業にかかる内段取り作業時間Tcを算出する内段取り作業算出部としての機能を有している。
外段取り作業とは、部品実装ラインL1〜L3で生産中のグループGの次に生産対象となるグループGで使用するテープフィーダ9(部品供給手段)を部品実装ラインL1〜L3から取り外されている部品供給台車5(予備台車5*)に部品配置に従って配置(装着)する作業である。本実施の形態の部品実装システム1では、外段取りエリアApの段取り作業支援装置4に接続した予備台車5*に対して外段取り作業が実行される。
内段取り作業とは、部品実装ラインL1〜L3を次に生産対象となるグループGのために段取り替えするにあたり、部品実装装置M3〜M6に装着されている部品供給台車5を、外段取り作業によって次に生産対象となるグループGで使用されるテープフィーダ9が配置された予備台車5*(部品供給台車5)と交換する作業である。
図5において、生産完了時間算出部31dは、算出時間情報32dに含まれる生産時間Tv、外段取り作業時間Tw、内段取り作業時間Tcに基づいて、生産対象となる全ての実装基板Vの生産が完了する生産完了時間Tfを算出して、算出時間情報32dに記憶させる。部品配置決定部31eは、部品配置作成部31aによる部品配置の作成、生産時間算出部31bによる生産時間Tvの算出、段取り作業時間算出部31cによる外段取り作業時間Twと内段取り作業時間Tcの算出、生産完了時間算出部31dによる生産完了時間Tfの算出を繰り返し実行させて、生産完了時間Tfが短くなるようにグループG毎の部品配置を決定する。
ここで図6(a)を参照して、実装基板VのグループG、生産時間Tv、外段取り作業時間Tw、内段取り作業時間Tc、生産完了時間Tfについて説明する。ここでは、部品実装ラインL1において6種類の実装基板V1〜V6を4つのグループG1〜G4に分けて生産する例を用いて説明する。グループ分けは、予めグループ情報32bに記憶されている。ここでは、実装基板V1,V2はグループG1に、実装基板V3はグループG2に、実装基板V4はグループG3に、実装基板V5はグループG4に分けられている。
図6(a)は、部品配置作成部31aにより、実装基板V1〜V5の生産時間Tv1〜Tv5がそれぞれ最短となる条件で部品配置が作成された初期部品配置の例を示している。生産開始時点では、部品実装ラインL1の部品実装装置M3〜M6には、グループG1(実装基板V1,V2)で使用される部品配置がされた複数の部品供給台車5(以下、「台車群R1」と称する。)が装着されている。
また、グループG2(実装基板V3)で使用される複数の部品供給台車5(以下、「台車群R2」と称する。)は、外段取りエリアApにおいて段取り作業支援装置4に接続され、部品実装ラインL1におけるグループG1の実装基板V1,V2の生産と並行して、グループG2(実装基板V3)用の外段取り作業が行われる。
図6(a)において、グループG1の実装基板V2の生産終了後、台車群R1が部品実装装置M3〜M6から取り外され、グループG2(実装基板V3)用の部品配置が完了した台車群R2が部品実装装置M3〜M6に装着される。取り外された台車群R1は、外段取りエリアApに搬送され、段取り作業支援装置4に接続されて、グループG3(実装基板V4)用の外段取り作業が行われる。
以下同様に、グループG2の実装基板V3の生産終了後、台車群R2が部品実装装置M3〜M6から取り外され、グループG3(実装基板V4)用の部品配置が完了した台車群R1が部品実装装置M3〜M6に装着される。取り外された台車群R2には、グループG4(実装基板V5)用の外段取り作業が行われる。そして、グループG3の実装基板V4の生産終了後、台車群R1が部品実装装置M3〜M6から取り外され、グループG4(実装基板V5)用の部品配置が完了した台車群R2が部品実装装置M3〜M6に装着される。
図6(a)におて、段取り作業時間算出部31cにより、部品実装ラインL1の部品配置をグループG1からグループG2に変更する段取り替えC1に要する内段取り作業時間Tc1、グループG2からグループG3に変更する段取り替えC2に要する内段取り作業時間Tc2、グループG3からグループG4に変更する段取り替えC3に要する内段取り作業時間Tc3が算出されている。
また、段取り作業時間算出部31cにより、台車群R2にグループG2(実装基板V3)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw1、台車群R1にグループG3(実装基板V4)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw2、台車群R2にグループG4(実装基板V5)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw3が算出されている。
図6(a)において、生産完了時間算出部31dは、生産時間Tv1〜Tv5、内段取り作業時間Tc1〜Tc3、外段取り作業時間Tw1〜Tw3に基づいて、次のグループG2〜G4用の台車群R1,R2への部品配置(外段取り作業)が完了すると段取り替えC1〜C3を開始するという条件で、生産完了時間Tf0を算出する。
具体的に説明すると、グループG2(実装基板V3)用の外段取り作業時間Tw1の終了時刻は、グループG1の実装基板V1,V2の生産の終了時刻よりも早い。そのため、実装基板V2の生産完了直後から、部品実装ラインL1をグループG1からグループG2に変更する段取り替えC1が開始される。
グループG3(実装基板V4)用の外段取り作業時間Tw2の終了時刻は、グループG2の実装基板V3の生産の終了時刻よりも遅い。そのため、実装基板V3の生産完了からグループG3への段取り替えC2が開始されるまでの間、実装基板Vの生産が休止する外段取り作業待ち時間Tq1が発生する(Tq1=Tw2−(Tc1+Tv3))。同様に、実装基板V4の生産完了からグループG4への段取り替えC3が開始されるまでの間、外段取り作業待ち時間Tq2が発生する(Tq2=Tw3−(Tc2+Tv4))。
そして、生産完了時間算出部31dは、生産時間Tv1〜Tv5、内段取り作業時間Tc1〜Tc3、外段取り作業待ち時間Tq1,Tq2を合算して、生産完了時間Tf0を算出する(Tf0=Tv1+Tv2+Tc1+Tv3+Tq1+Tc2+Tv4+Tq2+Tc3+Tv5)。このように、生産完了時間算出部31dは、外段取り作業時間Twを考慮して、次に生産対象となるグループG3(G4)への外段取り作業の完了が生産中のグループG2(G3)での実装基板V3(V4)の生産の完了よりも遅いことにより部品実装ラインL1が休止(生産が停止)する外段取り作業待ち時間Tq1(Tq2)を含めて、全ての実装基板V1〜V5の生産が完了する生産完了時間Tf0を算出する。
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、部品配置(部品実装装置M3〜M6における部品供給手段の配置)を作成する部品配置作成部31aと、生産完了時間Tfを算出する生産完了時間算出部31dと、生産完了時間Tfが短くなるようにグループG毎の部品配置を決定する部品配置決定部31eとを備え、部品配置を決定する部品配置決定装置となる。
図5において、段取り作業支援装置4は、支援制御部41、支援記憶部42、台車接続部43、入力部44、表示部45、通信部46を備えている。入力部44は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部45は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部44による操作のための操作画面などの各種画面の他、段取り作業の手順、段取り作業の進捗状況などの各種情報を表示する。
通信部46は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3との間で信号、データの授受を行う。支援制御部41はCPUなどの演算装置であり、支援記憶部42が記憶する情報に基づいて段取り作業支援装置4を制御する。支援記憶部42は記憶装置であり、部品配置、段取り作業手順などを記憶する。台車接続部43には、予備台車5*(図1の部品供給台車5A,5Bなど)が接続されている。台車接続部43は、部品供給台車5を介して、部品供給台車5に装着されている各テープフィーダ9に内蔵されるフィーダ制御部と通信する。
次に、図7、図8のフローに沿って、図6、図9を参照しながら、部品実装ラインL1〜L3において生産対象となる複数種類の実装基板VのグループG毎に、部品実装装置M3〜M6における部品供給手段(テープフィーダ9)の配置(部品配置)を決定する部品配置の決定方法について説明する。ここでは、図6(a)、図6(b)に示す、部品実装ラインL1において6種類の実装基板V1〜V6を4つのグループG1〜G4に分けて生産する例を用いて説明する。
図7において、部品配置作成部31aは、グループ情報32bに含まれるグループGの情報と実装データ32aに基づいて、実装基板V1〜V6の生産時間Tv1〜Tv6がそれぞれ最短となる条件で初期部品配置を作成する(ST1:初期部品配置作成工程)。作成された初期部品配置は、部品配置情報32cに記憶される。次いで、生産完了時間Tf0が算出される(ST2:生産完了時間算出工程)。
ここで図8を参照して、生産完了時間算出工程(ST2)の詳細について説明する。まず生産時間算出部31bは、作成された部品配置における実装基板V1〜V6の生産時間Tv1〜Tv6を実装基板V1〜V6毎に算出する(ST11:生産時間算出工程)。次いで段取り作業時間算出部31cは、内段取り作業時間Tcを算出する(ST12:内段取り作業時間算出工程)。
次いで段取り作業時間算出部31cは、部品実装ラインL1で生産中のグループG1(G2,G3)の次に生産対象となるグループG2(G3,G4)で使用するテープフィーダ9(部品供給手段)を部品実装ラインL1から取り外されている部品供給台車5(予備台車5*)に配置する外段取り作業にかかる外段取り作業時間Tw1(Tw2,Tw3)を算出する(ST13:外段取り作業時間算出工程)。次いで生産完了時間算出部31dは、生産時間Tv、内段取り作業時間Tc、外段取り作業時間Twに基づいて、生産完了時間Tf0を算出する(ST14:生産完了時間算出工程)。算出された生産完了時間Tf0は、算出時間情報32dに記憶される。
図6(a)に示すように、生産完了時間Tf0には、部品実装ラインL1での実装基板V4(V5)の生産が休止する外段取り作業待ち時間Tq1(Tq2)が含まれている。そこで、外段取り作業待ち時間Tq1(Tq2)を削減して生産完了時間Tfが短くなるように部品配置を変更する部品配置の最適化が実行される。初期部品配置では、実装基板V1〜V6の生産時間Tv1〜Tv6がそれぞれ最短となるように、外段取り作業で台車群R1,R2に配置するテープフィーダ9のフィーダアドレス8aが最適化されている。しかしながら、外段取り作業では、最適化されたフィーダアドレス8aに指定されたテープフィーダ9を装着するため、外段取り作業時間Tw1〜Tw3は長くなっている。
そこで、本実施の形態の部品配置の最適化では、部品実装装置M3〜M6から取り外した台車群R1,R2を、次に部品実装装置M3〜M6に装着して生産するグループG用に外段取り作業する際に、次の生産でも使用する部品D(以下、「引継ぎ部品D*」と称す。)を供給するテープフィーダ9の配置を変更しないように部品配置を変更する。
例えば、図6(a)において、部品配置作成部31aは、グループG3(一のグループ)の生産で使用する台車群R1(部品供給台車5)を用いてグループG3(一のグループ)の前に生産をしたグループG1(他のグループ)と、グループG3(一のグループ)とのいずれでも使用する少なくとも一以上のテープフィーダ9(部品供給手段)を、グループG3(一のグループ)とグループG1(他のグループ)とで台車群R1(部品供給台車5)上の配置位置が同一となるように部品配置を作成する。これにより、テープフィーダ9の着脱回数を削減して、外段取り作業時間Tw2を短縮することができる。
図7において、部品配置の最適化では、まず、部品配置作成部31aは、部品配置情報32cに記憶されている部品配置から、引継ぎ部品D*を供給するテープフィーダ9*のうち一つの位置を変更した部品配置を作成する(ST3:部品配置変更工程)。
図9に引継ぎ部品D*の例について説明する。図9(a)には、グループG3用に外段取り作業される台車群R1の部品配置の一部が、部品供給台車5を部品実装装置M3〜M6の部品供給部8(1)に装着した状態で示している。図9(a)、図9(b)において、グループG1からの引継ぎ部品D*を供給するテープフィーダ9*には、斜線のハッチングを施してある。
部品配置作成部31aは、図9(a)の状態からグループG3の実装基板V4の生産時間Tv4が最短となるように複数のテープフィーダ9*の位置を変更する初期部品配置の作成と異なり、一つのテープフィーダ9*の位置のみ変更する。例えば、フィーダアドレス8aが1−1L/Rに装着されている引継ぎ部品D*を供給するテープフィーダ9*(1)の位置を、図9(b)に示すフィーダアドレス8aが1−8L/Rの位置に変更する(矢印a)。
図7において、次いで、生産完了時間算出工程(ST2)が実行されて、部品配置変更工程(ST3)において変更された部品配置での生産完了時間Tfが算出される。他に位置が変更可能な引継ぎ部品D*を供給するテープフィーダ9*がある場合は(ST4においてYes)、部品配置変更工程(ST3)、生産時間算出工程(ST2)が実行されて、一つのテープフィーダ9*の位置を変更した部品配置における生産完了時間Tfが算出される。
引継ぎ部品D*を供給するテープフィーダ9*の位置を変更した組合せの全ての部品配置で生産完了時間Tfが算出されると(ST4においてNo)、部品配置決定部31eは、生産完了時間Tfが一番短い部品配置に部品配置を決定する(ST5:部品配置決定工程)。
ここで、図6(b)を参照して、部品配置最適化後の生産完了時間Tf1の例について説明する。段取り作業時間算出部31cにより、最適化された部品配置に基づいて、台車群R2にグループG2(実装基板V3)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw1*、台車群R1にグループG3(実装基板V4)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw2*、台車群R2にグループG4(実装基板V5)用の部品配置を行う外段取り作業時間Tw3*が算出されている。最適化により、外段取り作業時間Tw2*は初期部品配置の外段取り作業時間Tw2より短くなっている(Tw2*<Tw2)。また、外段取り作業時間Tw3*は初期部品配置の外段取り作業時間Tw3より短くなっている(Tw3*<Tw3)。
また、段取り作業時間算出部31cにより、最適化された部品配置に基づいて、段取り替えC1に要する内段取り作業時間Tc1*、段取り替えC2に要する内段取り作業時間Tc2*、段取り替えC3に要する内段取り作業時間Tc3*が算出されている。さらに、生産時間算出部31bにより、最適化された部品配置に基づいて、実装基板V1〜V5の生産時間Tv1*〜Tv5*が算出されている。部品配置の最適化後の生産時間Tv1*〜Tv5*は、初期部品配置の生産時間Tv1〜Tv5よりそれぞれ長くなっている(Tv1*>Tv1,Tv2*>Tv2,・・・)。
図6(b)において、外段取り作業時間Tw1*〜Tw3*が短縮されたことにより、初期部品配置で発生していたグループG2からグループG3に変更する際の外段取り作業待ち時間Tq1と、グループG3からグループG4に変更する際の外段取り作業待ち時間Tq2が無くなっている。そのため、部品配置の最適化後に生産時間Tv1*〜Tv5*は長くなっているが、生産完了時間Tf1(Tf1=Tv1*+Tv2*+Tc1*+Tv3*+Tc2*+Tv4*+Tc3*+Tv5*)は初期部品配置の生産完了時間Tf0より短くなっている(Tf1<Tf0)。
上記説明したように、本実施の形態の部品配置の決定方法では、部品配置決定部31eは、部品配置変更工程(ST3)、生産時間算出工程(ST2)を繰り返して実行させ、生産完了時間Tfが短くなるようにグループG1〜G4毎の部品配置(部品供給手段の配置)を決定することにより、部品配置の最適化を行っている。これにより、従来よりも高い生産性を得ることが可能な部品配置を決定することができる。
なお、上記の部品配置の決定方法では、台車群R1,R2を構成する予備台車5*(部品供給台車5)はグループGが変わっても変更しない条件で部品配置を作成しているが、部品配置の作成はこれに限定されることはない。例えば、部品実装ラインL2〜L3から取り外された予備台車5*を追加して台車群Rを構成して部品配置を作成してもよいし、部品実装ラインL1から外した予備台車5*を部品実装ラインL2〜L3に装着する台車群Rに加えて、部品配置を作成してもよい。