JP2018115769A - ホイールローダ及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホイールローダにおいて燃費を向上させる。【解決手段】モード選択部は、所定の第1モードと、第2モードとを含む複数のモードから選択された制御モードを示す操作信号を生成する。第2モードは、車両の作業局面に応じて最大牽引力を制御し、第1モードよりも牽引力を小さく制御する制御モードである。モード保持設定部は、前回、始動スイッチがオフされたときにモード選択部によって選択されている制御モードが車両の始動時に保持される選択保持機能を設定する。制御部は、モード選択部からの操作信号を取得し、選択された制御モードに従って駆動系を制御し、選択保持機能がオフに設定されている場合には、始動スイッチがオンされたときに第2モードにて駆動系の制御を開始する。【選択図】図14
Description
本発明は、ホイールローダ及びその制御方法に関する。
ホイールローダには、オペレータが車両の制御モードを複数のモードから選択できるものがある。例えば、特許文献1のホイールローダは、トラクションコントロールスイッチを備えている。オペレータは、トラクションコントロールスイッチをオン状態にすることにより、トラクションコントロールモードを選択することができる。オペレータは、トラクションコントロールスイッチをオフ状態にすることにより、トラクションコントロールモードを解除して通常モードを選択することができる。
トラクションコントロールモードでは、車両の最大牽引力が通常モードにおける最大牽引力よりも低減される。従って、オペレータは、軟弱地などのタイヤが滑り易い路面上では、トラクションコントロールスイッチをオン状態とする。それにより、牽引力が低減されることで、タイヤのスリップを抑えることができる。また、オペレータは、通常時にはトラクションコントロールスイッチをオフ状態とすることで、牽引力の大きな通常モードで作業を行うことができる。
従来のホイールローダでは、車両の始動時には、トラクションコントロールスイッチの状態に応じて制御モードが選択される。すなわち、車両の始動時にトラクションコントロールスイッチがオン状態であれば、制御モードはトラクションコントロールモードとなる。しかし、車両の始動時にトラクションコントロールスイッチがオフ状態であれば、制御モードは通常モードとなる。
一般的に、多くのオペレータは、車両を始動するたびにトラクションコントロールスイッチをオン状態に切り換えることを行わない。従って、車両が作動停止したときにトラクションコントロールスイッチがオフ状態であれば、車両の始動時には通常モードにて車両の制御が開始される。そのため、トラクションコントロールモードによる燃費向上の効果は期待できないというのが現状であった。
本発明の課題は、ホイールローダにおいて燃費を向上させることにある。
第1の態様に係るホイールローダは、走行輪と、駆動系と、作業機と、モード選択部と、モード保持設定部と、制御部と、を備える。駆動系は、エンジンと、動力伝達装置と、作業機ポンプと、を有する。動力伝達装置は、エンジンからの駆動力によって走行輪を回転駆動する。作業機ポンプは、エンジンによって駆動される。作業機は、作業機ポンプから吐出される作動油によって駆動される。モード選択部は、所定の第1モードと第2モードとを含む複数のモードから選択された制御モードを示す操作信号を生成する。第2モードは、車両の作業局面に応じて最大牽引力を制御し、第1モードよりも牽引力を小さく制御する制御モードである。モード保持設定部は、前回、始動スイッチがオフされたときにモード選択部によって選択されている制御モードが車両の始動時に保持される選択保持機能を設定する。制御部は、モード選択部からの操作信号を取得し、選択された制御モードに従って駆動系を制御し、選択保持機能がオフに設定されている場合には、始動スイッチがオンされたときに第2モードにて駆動系の制御を開始する。
本態様に係るホイールローダでは、第1モードが選択されても、次の車両の始動時には、第2モードにて駆動系の制御が開始される。第2モードの牽引力は、第1モードの牽引力よりも小さいので、第2モードでは、第1モードよりも燃費が良い。従って、車両の始動時に、オペレータが制御モードを第2モードに戻す操作を行わなくても、燃費の良い第2モードにて駆動系を制御することができる。これにより、燃費を向上させることができる。
第2の態様に係るホイールローダの制御方法は、次のステップを備える。第1ステップでは、所定の第1モードと第2モードとを含む複数のモードから選択された制御モードを示す操作信号を取得する。第2モードは、、車両の作業局面に応じて最大牽引力を制御し、第1モードよりも牽引力を小さく制御する制御モードである。第2ステップでは、選択された制御モードに従って、駆動系を制御する。第3ステップでは、前回、始動スイッチがオフされたときに選択されている制御モードが車両の始動時に保持される選択保持機能を設定する。第4ステップでは、選択保持機能がオフに設定されている場合には、始動スイッチがオンされたときに第2モードにて駆動系の制御を開始する。
本態様に係るホイールローダの制御方法では、第1モードが選択されても、次の車両の始動時には、第2モードにて駆動系の制御が開始される。第2モードの牽引力は、第1モードの牽引力よりも小さいので、第2モードでは、第1モードよりも燃費が良い。従って、車両の始動時に、オペレータが制御モードを第2モードに戻す操作を行わなくても、燃費の良い第2モードにて駆動系を制御することができる。これにより、燃費を向上させることができる。
本発明によれば、ホイールローダにおいて燃費を向上させることができる。
以下、実施形態に係るホイールローダについて、図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係るホイールローダ1の側面図である。ホイールローダ1は、車体2と、作業機3と、複数の走行輪4と、キャブ5と、を備えている。作業機3は、車体2の前部に装着されている。作業機3は、ブーム31と、バケット32と、リフトシリンダ33と、バケットシリンダ34とを有する。ブーム31は、車体2に回転可能に取り付けられている。ブーム31は、リフトシリンダ33によって駆動される。バケット32は、ブーム31の先端に回転可能に取り付けられている。バケット32は、バケットシリンダ34によってダンプおよびチルトされる。キャブ5は、車体2上に載置されている。
図2は、ホイールローダ1に搭載された駆動系6と制御系7の構成を示すブロック図である。駆動系6は、主として、エンジン11と、作業機ポンプ12と、動力伝達装置13とを有している。また、制御系7は、エンジンコントローラ14と車体コントローラ15とを有している。
動力伝達装置13は、エンジン11からの駆動力によって走行輪4を回転駆動する。動力伝達装置13は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)である。動力伝達装置13は、走行ポンプ16と、走行モータ17と、駆動油圧回路18とを有している。動力伝達装置13では、走行ポンプ16がエンジン11によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行モータ17が、走行ポンプ16から吐出された作動油によって駆動される。そして、走行モータ17が上述した走行輪4を回転駆動することにより、ホイールローダ1が走行する。
エンジン11は、ディーゼル式のエンジンであり、エンジン11で発生した出力トルクが、作業機ポンプ12及び走行ポンプ16等に伝達される。駆動系6には、エンジン11の実回転速度を検出するエンジン回転速度センサ19が設けられている。また、エンジン11には、燃料噴射装置20が接続されている。エンジンコントローラ14は、設定されたスロットル開度に応じて燃料噴射装置20を制御することにより、エンジン11の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)と回転速度とを制御する。
走行ポンプ16は、エンジン11によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行ポンプ16は、可変容量型の油圧ポンプである。走行ポンプ16から吐出された作動油は、駆動油圧回路18を通って走行モータ17へと送られる。具体的には、駆動油圧回路18は、第1駆動回路18aと第2駆動回路18bとを有する。作動油が、走行ポンプ16から第1駆動回路18aを介して走行モータ17に供給されることにより、走行モータ17が一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、走行ポンプ16から第2駆動回路18bを介して走行モータ17に供給されることにより、走行モータ17が他方向(例えば、後進方向)に駆動される。
駆動油圧回路18には、駆動回路圧検出部21が設けられている。駆動回路圧検出部21は、第1駆動回路18a又は第2駆動回路18bを介して走行モータ17に供給される作動油の圧力(以下、「駆動回路圧」)を検出する。具体的には、駆動回路圧検出部21は、第1駆動回路圧センサ21aと第2駆動回路圧センサ21bとを有する。第1駆動回路圧センサ21aは、第1駆動回路18aの油圧を検出する。第2駆動回路圧センサ21bは、第2駆動回路18bの油圧を検出する。第1駆動回路圧センサ21aと第2駆動回路圧センサ21bとは、検出信号を車体コントローラ15に送る。
走行ポンプ16には、ポンプ容量制御部22が接続されている。ポンプ容量制御部22は、例えばサーボシリンダと、サーボシリンダに供給される作動油を制御する電磁制御弁などを有している。ポンプ容量制御部22は、車体コントローラ15からの制御信号に基づいて制御される。ポンプ容量制御部22は、走行ポンプ16の傾転角を変更することで、走行ポンプ16の容量を変更する。また、ポンプ容量制御部22は、走行ポンプ16の吐出方向を変更する。
駆動油圧回路18には、チャージ回路23を介してチャージポンプ24が接続されている。チャージポンプ24は、エンジン11によって駆動され、駆動油圧回路18へと作動油を供給するためのポンプである。第1駆動回路18aの油圧がチャージ回路23の油圧よりも低くなると、チャージポンプ24からの作動油が、チャージ回路23を介して第1駆動回路18aに供給される。第2駆動回路18bの油圧がチャージ回路23の油圧よりも低くなると、チャージポンプ24からの作動油が、チャージ回路23を介して第2駆動回路18bに供給される。
駆動油圧回路18の油圧が所定のリリーフ圧よりも高くなると、駆動油圧回路18は、チャージ回路23を介して作動油タンクに接続される。これにより、駆動油圧回路18の油圧がリリーフ圧を越えないようにされている。
作業機ポンプ12は、エンジン11によって駆動される。作業機ポンプ12から吐出された作動油は、作業機用油圧回路25を介してリフトシリンダ33に供給される。これにより、作業機3が駆動される。
作業機ポンプ12には、ポンプ容量制御部26が接続されている。ポンプ容量制御部26は、例えばサーボシリンダと、サーボシリンダに供給される作動油を制御する電磁制御弁などを有している。ポンプ容量制御部26は、車体コントローラ15からの制御信号に基づいて制御される。ポンプ容量制御部26は、作業機ポンプ12の傾転角を変更することで、作業機ポンプ12の容量を変更する。
作業機ポンプ12の吐出圧は、吐出圧センサ27によって検出される。吐出圧センサ27は、検出信号を車体コントローラ15に送る。作業機用油圧回路25には、作業機制御弁28が設けられている。作業機制御弁28は、作業機操作部材41の操作量に応じて駆動される。作業機制御弁28は、パイロットポートに印加されるパイロット圧(以下、「PPC圧」と呼ぶ)に応じて、リフトシリンダ33に供給される作動油の流量を制御する。
作業機制御弁28のパイロットポートに印加されるPPC圧は、作業機操作部材41のパイロット弁41aによって制御される。パイロット弁41aは、作業機操作部材41の操作量に応じたPPC圧を作業機制御弁28のパイロットポートに印加する。これにより、作業機操作部材41の操作量に応じてリフトシリンダ33が制御される。作業機制御弁28のパイロットポートに印加されるPPC圧は、PPC圧センサ42によって検出される。また、リフトシリンダ33に供給される作動油の圧力(以下、「シリンダ圧」と呼ぶ)は、シリンダ圧センサ29によって検出される。PPC圧センサ42及びシリンダ圧センサ29は、検出信号を車体コントローラ15に送る。
リフトシリンダ33には、ブーム角度検出部35が設けられている。ブーム角度検出部35は、後述するブーム角を検出する。ブーム角度検出部35は、ブーム31の回転角度を検出するセンサである。ブーム角度検出部35は、検出信号を車体コントローラ15に送る。なお、バケットシリンダ34も、リフトシリンダ33と同様に、制御弁によって制御されるが、図2においては図示を省略している。
走行モータ17は、可変容量型の油圧モータである。走行モータ17は、走行ポンプ16から吐出された作動油によって駆動され、走行のための駆動力を生じさせる。走行モータ17には、モータ容量制御部36が設けられている。モータ容量制御部36は、例えばサーボシリンダと、サーボシリンダに供給される作動油を制御する電磁制御弁とを有する。モータ容量制御部36は、車体コントローラ15からの制御信号に基づいて制御される。モータ容量制御部36は、走行モータ17の傾転角を変更することで、走行モータ17の容量を変更する。
駆動系6には、車速センサ37が設けられている。車速センサ37は、車速を検出する。車速センサ37は、車速信号を車体コントローラ15に送る。車速センサ37は、例えば、走行輪4の駆動軸の回転速度を検出することにより、車速を検出する。
ホイールローダ1は、始動スイッチ43と、アクセル操作部材44と、前後進切換操作部材45と、モード選択部46と、入力装置47と、表示装置48と、を有する。始動スイッチ43と、アクセル操作部材44と、前後進切換操作部材45と、モード選択部46と、入力装置47とは、キャブ5内に配置されている。
始動スイッチ43は、エンジン11を始動するためのスイッチである。始動スイッチ43は、例えばキースイッチである。オペレータが始動スイッチ43をオン状態とすることで、エンジン11が始動される。また、オペレータが始動スイッチ43をオン状態とすることで、ホイールローダ1の制御系7が起動される。オペレータが始動スイッチ43をオフ状態とすることで、エンジン11が停止される。また、オペレータが始動スイッチ43をオフ状態とすることで、ホイールローダ1の制御系7がシャットダウンされる。始動スイッチ43は、始動スイッチ43の操作を示す操作信号を生成して、車体コントローラ15へ送る。
アクセル操作部材44は、オペレータがスロットル開度を設定するための部材である。アクセル操作部材44は、例えばアクセルペダルであり、オペレータによって操作される。アクセル操作部材44は、アクセル操作量センサ44aと接続されている。アクセル操作量センサ44aは、ポテンショメータなどで構成されている。アクセル操作量センサ44aは、アクセル操作部材44のアクセル操作量を示す開度信号を生成してエンジンコントローラ14へと送る。オペレータは、アクセル操作量を調整することによって、エンジン11の回転速度を制御することができる。
前後進切換操作部材45は、オペレータによって操作され、前進位置と後進位置と中立位置とに切り換えられる。前後進切換操作部材45は、前後進切換操作部材45の位置を示す操作信号を車体コントローラ15に送る。オペレータは、前後進切換操作部材45を操作することによって、ホイールローダ1の前進と後進とを切り換えることができる。
モード選択部46は、オペレータによって操作され、後述するトラクションコントロールによる制御モードを選択するために操作される。モード選択部46は、モード選択部46の選択位置を示す操作信号を生成して車体コントローラ15へ送る。
入力装置47は、オペレータによって操作され、後述するトラクションコントロールにおける各種の設定を行うために操作される。入力装置47は、例えばタッチパネル装置である。入力装置47は、設定された内容を示す操作信号を生成して車体コントローラ15へ送る。
表示装置48は、ホイールローダ1に関する情報を表示する。表示装置48は、例えば、エンジン回転速度、燃料の残量、及び油温などを表示する。なお、入力装置47と表示装置48とは一体的に設けられてもよい。
エンジンコントローラ14は、CPUなどの演算装置や各種のメモリなどを有する電子制御部である。エンジンコントローラ14は、エンジン11を制御するようにプログラムされている。エンジンコントローラ14は、設定されたスロットル開度に応じた目標回転速度が得られるように、エンジン11を制御する。
図3にエンジントルク線を示す。エンジントルク線は、エンジン11の回転速度と、各回転速度においてエンジン11が出力できる最大のエンジントルクの大きさとの関係を示す。図3において、実線L100は、後述するスロットル開度の上限を設定する制御が行われていない状態(以下、「通常状態」と呼ぶ)において、アクセル操作量が100%であるときのエンジントルク線を示している。
エンジントルク線L100は、例えばエンジン11の定格又は最大のパワー出力に相当する。なお、アクセル操作量が100%とは、アクセル操作部材44が最大に操作されている状態を意味する。また、破線L75は、通常状態においてアクセル操作量が75%であるときのエンジントルク線を示している。エンジンコントローラ14は、エンジントルクがエンジントルク線以下となるようにエンジン11の出力を制御する。このエンジン11の出力の制御は、例えば、エンジン11への燃料噴射量の上限値を制御することにより行われる。
車体コントローラ15は、CPUなどの演算装置や各種のメモリなどを有する電子制御部である。車体コントローラ15は、エンジンコントローラ14と通信を行うことで、エンジン回転速度などの情報を取得する。車体コントローラ15は、作業機ポンプ12の容量を制御するようにプログラムされている。車体コントローラ15は、作業機操作部材41の操作量等に基づいて、作業機ポンプ12の容量を制御する。
車体コントローラ15は、走行ポンプ16の容量と走行モータ17の容量とを制御するように、プログラムされている。車体コントローラ15は、各検出部からの出力信号に基づいてポンプ容量制御部22とモータ容量制御部36とを電子制御することにより、走行ポンプ16の容量と走行モータ17の容量とを制御する。
具体的には、車体コントローラ15は、エンジン回転速度センサ19が検出したエンジン回転速度に基づいて指令信号をポンプ容量制御部22に出力する。これにより、ポンプ容量と駆動回路圧との関係が規定される。図4に、ポンプ容量−駆動回路圧特性の一例を示す。ポンプ容量−駆動回路圧特性は、ポンプ容量と駆動回路圧との関係を示す。
図中のL11〜L16は、エンジン回転速度に応じて変更されるポンプ容量−駆動回路圧特性を示すラインである。車体コントローラ15が、エンジン回転速度に基づいてポンプ容量制御部22を制御することにより、ポンプ容量−駆動回路圧特性がL11〜L16に変更される。これにより、ポンプ容量がエンジン回転速度及び駆動回路圧に対応したものに制御される。
車体コントローラ15は、エンジン回転速度センサ19および駆動回路圧検出部21からの出力信号を処理して、モータ容量の指令信号をモータ容量制御部36に出力する。ここでは、車体コントローラ15は、車体コントローラ15に記憶されているモータ容量−駆動回路圧特性を参照して、エンジン回転速度の値と駆動回路圧の値とからモータ容量を設定する。車体コントローラ15は、この設定したモータ容量に対応する傾転角の変更指令をモータ容量制御部36に出力する。
図5に、モータ容量−駆動回路圧特性の一例を示す。図中の実線L21は、エンジン回転速度がある値の状態における、駆動回路圧に対するモータ容量を定めたラインである。ここでのモータ容量は、走行モータ17の傾転角に対応している。
駆動回路圧がある一定の値以下の場合まではモータ容量は最小(Min)である。その後、駆動回路圧の上昇に伴ってモータ容量は次第に大きくなる(実線の傾斜部分L22)。そして、モータ容量が最大(Max)となった後は、駆動回路圧が上昇してもモータ容量は最大容量Maxを維持する。傾斜部分L22は、駆動回路圧の目標圧力を規定している。すなわち、車体コントローラ15は、駆動回路圧が目標圧力よりも大きくなると走行用油圧モータの容量を増大させる。また、駆動回路圧が、目標圧力よりも小さくなると走行用油圧モータの容量を低減させる。
目標圧力は、エンジン回転速度に応じて定められる。すなわち、図5に示す傾斜部分L22は、エンジン回転速度の増減に応じて上下するように設定される。具体的には、傾斜部分L22は、エンジン回転速度が低ければ、駆動回路圧がより低い状態からモータ容量が大きくなり、駆動回路圧がより低い状態で最大容量に達するように制御される(図5における下側の破線の傾斜部分L23参照)。反対にエンジン回転速度が高ければ、駆動回路圧がより高くなるまで最小容量Minを維持し、駆動回路圧がより高い状態で最大容量Maxに達するように制御される(図5における上側の破線の傾斜部分L24参照)。
これにより、図6に示すように、ホイールローダ1は、牽引力と車速とが無段階に変化して、車速ゼロから最高速度まで変速操作なく自動的に変速することができる。なお、図6に示す車速−牽引力特性Lmax,L1〜L5,Lsはいずれもアクセル操作量が全開の状態における車速−牽引力特性である。
本実施形態に係るホイールローダ1では、オペレータは、モード選択部46によって、牽引力の制御に関する制御モードを選択することができる。図7は、モード選択部46によって選択可能な制御モードを示している。図7に示すように、オペレータは、モード選択部46によって、MAXモード(第1モード)と、トラクションコントロールモード(第2モード)と、Sモード(第3モード)とを選択することができる。上述した表示装置48には、モード選択部46によって選択された制御モードを示す情報が表示される。
MAXモードでは、図6に示す車速−牽引力特性Lmaxに従うように、車両の牽引力が制御される。MAXモードでの最大牽引力は、全ての制御モードのなかで最も大きい。すなわち、MAXモードでの最大牽引力は、車両において用いることができる最大の牽引力である。従って、MAXモードでは、他の制御モードと比べて燃費は劣るが、高出力での作業が可能となる。
トラクションコントロールモードでは、最大牽引力Lmaxが、MAXモードでの最大牽引力よりも小さくなる。これにより、走行輪4のスリップの発生を抑制することができる。所定の低速領域において、トラクションコントロールモードにおける牽引力は、MAXモードにおける牽引力よりも小さい。所定の低速領域は、車速が0以上、速度VPth未満の領域である。所定の低速領域は、例えば掘削、或いは、積み込み等の作業時に利用される速度領域である。なお、速度VPthは、牽引力のレベルに応じて異なってもよい。
速度VPth以上の中高速領域では、トラクションコントロールモードにおける牽引力は、MAXモードにおける牽引力と同じである。ただし、速度VPth以上の中高速領域において、トラクションコントロールモードにおける牽引力は、MAXモードにおける牽引力と完全に同じでなくてもよく、僅かに異なっていてもよい。
また、図5に示すように、トラクションコントロールモードでは、モータ容量の上限が、MAXモードよりも小さく設定される。従って、同じ車速に対して、トラクションコントロールモードでのポンプの吐出量は、MAXモードでのポンプの吐出量よりも少なくてもよい。従って、同じ車速に対してトラクションコントロールモードでのエンジン回転速度は、MAXモードのエンジン回転速度よりも小さくなる。それにより、トラクションコントロールモードでは、MAXモードと比べて、燃費を向上させることができる。また、後述するように、走行ポンプ16の容量が制御されることによっても、燃費を向上させることができる。
トラクションコントロールモードは、レベル選択モードとオートモードとを有する。図2に示すように、入力装置47は、トラクションコントロール設定部51(以下、「TC設定部51」と呼ぶ)を有する。TC設定部51は、レベル選択モードとオートモードとのうちのいずれかをトラクションコントロールモードでの制御モードとして設定する。すなわち、オペレータは、モード選択部46によってトラクションコントロールモードが選択されたときに実行される制御モードを、レベル選択モードとオートモードとのいずれかに設定しておくことができる。
レベル選択モードでは、最大牽引力が、複数レベルの最大牽引力の中から予め設定された大きさとなるように制御される。図2に示すように、入力装置47は、最大牽引力の大きさを設定する牽引力設定部52を有している。レベル選択モードでは、車体コントローラ15は、最大牽引力を、牽引力設定部52によって設定された大きさとする。図8は、入力装置47に表示される牽引力設定部52の操作画面である。例えば、牽引力設定部52によって最大牽引力の大きさを第1レベルから第5レベルの5段階に設定することができる。
第1レベルが設定されると、車体コントローラ15は、モータ容量の上限を図5に示すように、Maxより小さいM1とする。これにより、図6に示す車速−牽引力特性L1に従うように、車両の牽引力が制御される。同様に、第2〜第5レベルが設定されると、車体コントローラ15は、モータ容量の上限を、それぞれ図5に示すM2〜M5とする。これにより、図6に示す車速−牽引力特性L2〜L5に従うように、車両の牽引力が制御される。
オートモードでは、車体コントローラ15は、車両の作業局面を判定し、判定された作業局面に応じて、最大牽引力を制御する。例えば、以下の判定条件(a1)〜(a4)が全て満たされたときに、車体コントローラ15は、掘削中にスリップが生じ易い局面であると判定して、最大牽引力を低減する。
(a1)駆動回路圧>所定の圧力閾値p1
(a2)車速<所定の速度閾v1
(a3)ブーム角<所定の角度閾値d1
(a4)シリンダ圧>所定の圧力閾値p2
条件(a1)は、走行モータ17への負荷が大きいことを示している。条件(a2)は、車両が停止しているか或いは極低速で走行していることを示している。条件(a3)は、ブーム31の位置が低いことを示している。条件(a4)は、作業機3に大きな負荷がかかっていることを示している。条件(a1)及び条件(a2)を満たすことは、車両が走行モータ17を駆動して走行しようとしているが、車両がほとんど進むことができない状態を示している。また、条件(a3)及び条件(a4)を満たすことは、ブーム31が低い位置に配置された状態で、作業機3による作業が行われていること、すなわち掘削が行われていることを示している。
(a1)駆動回路圧>所定の圧力閾値p1
(a2)車速<所定の速度閾v1
(a3)ブーム角<所定の角度閾値d1
(a4)シリンダ圧>所定の圧力閾値p2
条件(a1)は、走行モータ17への負荷が大きいことを示している。条件(a2)は、車両が停止しているか或いは極低速で走行していることを示している。条件(a3)は、ブーム31の位置が低いことを示している。条件(a4)は、作業機3に大きな負荷がかかっていることを示している。条件(a1)及び条件(a2)を満たすことは、車両が走行モータ17を駆動して走行しようとしているが、車両がほとんど進むことができない状態を示している。また、条件(a3)及び条件(a4)を満たすことは、ブーム31が低い位置に配置された状態で、作業機3による作業が行われていること、すなわち掘削が行われていることを示している。
車体コントローラ15は、上記のような状況において、最大牽引力を自動的に低減するように、走行モータ17の容量の上限を低減する。或いは、車体コントローラ15は、スロットル開度の上限を低減してもよい。すなわち、車体コントローラ15は、スロットル開度を、アクセル操作部材44の操作によって設定されたスロットル開度よりも低減することによって、牽引力を低下させてもよい。
また、オートモードでは、車体コントローラ15は、以下の判定条件(b1)〜(b3)が全て満たされたときに、車体コントローラ15は、車両が作業機3を用いずに走行している局面であると判定する。
(b1)ブーム角<所定の角度閾値d2
(b2)シリンダ圧<所定の圧力閾値p3
(b3)PPC圧<所定の圧力閾値p4
条件(b1)は、ブーム31の位置が低いことを示している。条件(b2)は、ブーム31に掛かっている負荷が小さいことを示している。条件(b3)は、作業機操作部材41が操作されていない、或いは殆ど操作されていないことを示している。
(b1)ブーム角<所定の角度閾値d2
(b2)シリンダ圧<所定の圧力閾値p3
(b3)PPC圧<所定の圧力閾値p4
条件(b1)は、ブーム31の位置が低いことを示している。条件(b2)は、ブーム31に掛かっている負荷が小さいことを示している。条件(b3)は、作業機操作部材41が操作されていない、或いは殆ど操作されていないことを示している。
判定条件(b1)〜(b3)を満たす場合、車体コントローラ15は、図9に示すように、走行ポンプ16の吸収トルク線がLPmaxからLP1に変更されるように、走行ポンプ16の容量を増大させる。LPmaxは、MAXモードでの走行ポンプ16の吸収トルクを示している。
図9に示すように、同じ吸収トルクTP1であっても、吸収トルク線LP1でのエンジン回転速度n1は、吸収トルク線LPmaxでのエンジン回転速度n2よりも小さい。従って、吸収トルク線LP1では、吸収トルク線LPmaxと比べて、エンジン回転速度が低くても、同等の牽引力を得ることができる。これにより、MAXモードよりも低いエンジン回転速度で走行することができ、燃費をさらに向上させることができる。
オートモードが選択されていても、車体コントローラ15は、作業局面が「かき上げ」であると判定したときには、MAXモードにて駆動系6を制御してもよい。「かき上げ」とは、荷物をバケット32に積みながら、ブーム31を上昇させて持ち上げる作業を意味する。車体コントローラ15は、上述の掘削の条件(a1),(a2),及び(a4)を満たすと共に、ブーム角が所定の角度閾値より大きい場合に、作業局面が「かき上げ」であると判定する。
Sモードでは、図6に示す車速−牽引力特性Lsに従うように、車両の牽引力が制御される。Sモードの車速−牽引力特性Lsでは、車速が速度VP5であるときの牽引力は、トラクションコントロールモードでの最大牽引力より小さい。速度VP5は、トラクションコントロールモードでの車速−牽引力特性L5において牽引力が最大となる速度である。
Sモードでは、車体コントローラ15は、車速が所定の閾値以下である低速度領域において、車速が小さいほど走行モータ17の最大容量を増大させる制御を行う。例えば、図10に示すように、車速が所定の閾値Va以上では走行モータ17の最大容量はMaで一定とされるものとする。Sモードでは、車速がゼロから閾値Va以下の範囲では、車速が小さいほど走行モータ17の最大容量を増大させ、最大容量をMa以上とする。なお、閾値Vaは、上述した速度VP5のように、牽引力が最大となる速度に近似した値である。
仮に、車速がゼロから閾値Va以下の範囲においても、走行モータ17の最大容量がMaで一定であるとすると、図10においてLs’で示すように、車速が閾値Va以下の範囲では、車速が小さいほど、牽引力が低下する。
これに対して、車速が小さいほど走行モータ17の最大容量を増大させると、図10においてLsで示すように、車速がゼロから閾値Va以下の範囲においても、車速の小さくなるほど牽引力が増大する。従って、車速がゼロから閾値Va以下の範囲での牽引力の低下が抑えられる。このようにSモードでは、低速走行時における牽引力の低下を抑えることができる。これにより、雪上のように走行輪4がスリップし易い状況でのスリップの発生を抑えることができる。
さらに、低速域において牽引力が下がるように、走行ポンプ16の容量を制御することによって、図6に示すように、ほぼ単調減少する車速−牽引力特性Lsを得ることができる。車速−牽引力特性Lsにおいて、牽引力が最大となる速度は、ゼロ或いはゼロ近傍である。ゼロ近傍の速度は、例えば、1km/h程度である。このような車速−牽引力特性Lsによって、動き始めた直後のスリップの発生を抑えることができる。それにより、雪上のような走行輪4がスリップし易い状況でのスリップ抑制効果をさらに向上させることができる。なお、走行ポンプ16の容量の制御は、走行ポンプ16の容量を電子制御することによって行われてもよい。或いは、走行ポンプ16の容量の制御は、スロットル開度の上限を制限することによって行われてもよい。
次に、上述した各制御モードの切換制御について説明する。図11は、モード選択部46の斜視図である。モード選択部46は、3つの位置に操作可能なスイッチである。詳細には、モード選択部46は、MAXモードの選択位置(以下、「MAX位置」と呼ぶ)と、トラクションコントロールモードの選択位置(以下、「TC位置」と呼ぶ)と、Sモードの選択位置(以下、「S位置」と呼ぶ)とに操作可能である。モード選択部46は、TC位置を中心として、MAX位置とS位置とに揺動可能に設けられている。
MAX位置とTC位置とにおいては、モード選択部46は、モーメンタリ動作式のスイッチである。すなわち、図12(A)において矢印で示すように、オペレータがMAX位置を押している間は、モード選択部46の選択位置はMAX位置に維持される。しかし、オペレータがMAX位置を押していなければ、図12(B)に示すように、モード選択部46の選択位置は、MAX位置からTC位置に自動的に復帰する。
S位置とTC位置とにおいては、モード選択部46は、オルタネート動作式のスイッチである。すなわち、オペレータがS位置を押すと、その後、S位置を押していなくても、図12(C)に示すように、モード選択部46の選択位置はS位置に保持される。また、オペレータがTC位置を押すと、その後、TC位置を押していなくても、図12(B)に示すように、モード選択部46の選択位置はTC位置に保持される。このように、モード選択部46では、選択位置が、TC位置とS位置とのいずれかに選択的に保持される。
始動スイッチ43がオンされたときにおいて、モード選択部46の選択位置がTC位置である場合には、車体コントローラ15は、トラクションコントロールモードにて駆動系6の制御を開始する。すなわち、車体コントローラ15は、車両の始動時にはトラクションコントロールモードにて駆動系6の制御を開始する。従って、前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードがMAXモードであっても、次に始動スイッチ43がオンされたときには、制御モードはトラクションコントロールモードに設定される。
なお、入力装置47は、モード保持設定部53を有する。モード保持設定部53は、モード選択部46によって選択された制御モードが車両の始動時に保持されるように設定する。図13は、入力装置47に表示されるモード保持設定部53の操作画面である。モード保持設定部53によって制御モードの選択保持機能のオン/オフを設定することができる。制御モードの選択保持機能がオフに設定されている場合には、前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードがMAXモードであっても、次に始動スイッチ43がオンされたときには、制御モードはトラクションコントロールモードに設定される。
制御モードの選択保持機能がオンに設定されている場合には、前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードが維持される。すなわち、前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードがMAXモードである場合には、次に始動スイッチ43がオンされたときには、制御モードはMAXモードに設定される。前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードがトラクションコントロールモードである場合には、次に始動スイッチ43がオンされたときには、制御モードはトラクションコントロールモードに設定される。なお、前回、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードは、車体コントローラ15のメモリに記憶されている。
車両の始動後は、車体コントローラ15は、モード選択部46からの操作信号に応じて、車体コントローラ15は、制御モードを切り換える。すなわち、車体コントローラ15は、モード選択部46から操作信号を取得し、モード選択部46によって選択された制御モードに従って、駆動系6を制御する。
図7に示すように、制御モードがトラクションコントロールモードである状態で、モード選択部46がMAX位置に操作されると、制御モードがトラクションコントロールモードからMAXモードに切り換えられる。上述したようにモード選択部46は、MAX位置に操作された後、TC位置に自動的に復帰するが、制御モードはMAXモードに維持される。
制御モードがMAXモードである状態で、モード選択部46がMAX位置に操作されると、制御モードがMAXモードからトラクションコントロールモードに切り換えられる。このように、モード選択部46の選択位置がTC位置であるときには、モード選択部46がMAX位置に操作されるたびに、制御モードがトラクションコントロールモードとMAXモードとに交互に切り換えられる。
モード選択部46がTC位置からS位置に操作されると、車体コントローラ15は、制御モードをSモードに切り換える。なお、始動スイッチ43がオンされたときにおいて、モード選択部46の選択位置がS位置である場合には、車体コントローラ15は、Sモードにて駆動系6の制御を開始する。また、車両の始動後に、モード選択部46がS位置からTC位置に操作されると、車体コントローラ15は、制御モードをSモードからトラクションコントロールモードに切り換える。
なお、上記の説明において、トラクションコントロールモードは、レベル選択モードとオートモードとのいずれかである。すなわち、TC設定部51によってオートモードが設定されている場合には、トラクションコントロールモードとしてオートモードが実行される。TC設定部51によってレベル選択モードが設定されている場合には、トラクションコントロールモードとしてレベル選択モードが実行される。
トラクションコントロールモードとしてレベル選択モードが設定されているときには、制御モードの選択保持機能は使用不可能となる。すなわち、前回、始動スイッチ43がオフされたときに、制御モードがレベル選択モードであった場合には、次に始動スイッチ43がオンされたときは、レベル選択モードにて駆動系6の制御が開始される。
図14は、車両の始動時の制御モードの切換における処理を示すフローチャートである。以下の説明では、トラクションコントロールモードとしてオートモードが選択されているものとする。
図14に示すように、ステップS101では、車体コントローラ15は、モード選択部46から操作信号を取得する。ステップS102では、車体コントローラ15は、モード選択部46の選択位置がTC位置であるか否かを判定する。モード選択部46の選択位置がTC位置であるときには、ステップS103に進む。
ステップS103では、車体コントローラ15は、制御モードの選択保持機能がオフであるか否かを判定する。制御モードの選択保持機能がオフであるときには、ステップS104において、車体コントローラ15は、制御モードをトラクションコントロールモードに設定する。
ステップS103において制御モードの選択保持機能がオンであるときには、ステップS105において、車体コントローラ15は、制御モードを、前回、車両が作動停止されたときの制御モードに設定する。すなわち、車体コントローラ15は、制御モードを、始動スイッチ43がオフされたときの制御モードに設定する。
ステップS102において、モード選択部46の選択位置がTC位置ではないとき、すなわちモード選択部46の選択位置がS位置であるときには、ステップS106において、車体コントローラ15は、制御モードをSモードに設定する。
図15は、車両の始動後の制御モードの切換における処理を示すフローチャートである。ここでは、トラクションコントロールモードで駆動系6の制御が開始されたものとする。
ステップS201では、車体コントローラ15は、モード選択部46から操作信号を取得する。ステップS202では、車体コントローラ15は、モード選択部46の選択位置がTC位置であるか否かを判定する。モード選択部46の選択位置がTC位置であるときには、ステップS203に進む。
ステップS203では、車体コントローラ15は、モード選択部46がMAX位置に操作されたか否かを判定する。モード選択部46がMAX位置に操作されたときには、ステップS204において、制御モードを切り換える。ここでは、トラクションコントロールモードとMAXモードとの間で制御モードが交互に切り換えられる。
ステップS202において、モード選択部46の選択位置がTC位置ではないとき、すなわちモード選択部46の選択位置がS位置であるときには、ステップS205において、車体コントローラ15は、制御モードをSモードに切り換える。
以上説明した本実施形態に係るホイールローダ1では、制御モードがMAXモードに設定されていても、車両が作動停止された後、次の車両の始動時には、トラクションコントロールモードにて駆動系6の制御が開始される。すなわち、車両の始動時の制御モードとしてトラクションコントロールモードがデフォルトとして設定されている。従って、車両の始動時に、オペレータがモード選択部46を操作しなくても、燃費の良いトラクションコントロールモードにて駆動系6を制御することができる。これにより、燃費を向上させることができる。
オペレータがトラクションコントロールモードのデフォルト化を望まない場合には、制御モードの選択保持機能をオンにすることで、前回始動スイッチ43をオフにしたときの制御モードにて車両の操作を開始することができる。従って、例えば、オペレータが、常時MAXモードを使用したい場合には、制御モードの選択保持機能をオンにするとよい。これにより、車両の始動時にモード選択部46を操作することなく、MAXモードにて車両の操作を開始することができる。
オートモードでは、作業局面に応じて最大牽引力が調整される。また、「かき上げ」のように高出力を必要とする作業時には、最大牽引力が、自動的にMAXモードと同等の大きさに増大される。これにより、大きな出力を必要としない作業時には、燃費を向上させることができると共に、必要な場合には大きな出力を容易に得ることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、動力伝達装置13の一例としてHSTが挙げられている。ただし、動力伝達装置は、HSTに限らず、異なるものであってもよい。例えば、図16のように、動力伝達装置13は、エンジン11からの駆動力を走行輪4に伝達するトルクコンバータ61と変速機62とを有してもよい。変速機62は、複数の油圧クラッチと複数の変速ギアを有してもよい。複数の油圧クラッチが車体コントローラ15によって制御されることで、動力伝達装置13の速度段が制御されてもよい。この場合、最大牽引力の調整は、エンジン11の制御によって行ってもよい。例えば、エンジントルク特性の変更、エンジン回転速度の制御、或いはスロットル最大開度の制御によって、最大牽引力の調整が行われてもよい。
HSTの構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、HSTは、2つの走行モータを有してもよい。
上記の実施形態では、車両の始動時は、始動スイッチ43がオンされたときを意味している。しかし、車両の始動時は、エンジン11の始動時であってもよい。或いは、車両の始動時は、ホイールローダ1の制御系7の起動時であってもよい。
車両の作動停止は、始動スイッチ43がオフされていることを意味してもよい。或いは、車両の作動停止は、エンジン11が停止していることを意味してもよい。或いは、車両の作動停止は、ホイールローダ1の制御系7がシャットダウンされていることを意味してもよい。
上記の実施形態では、第1モードとしてMAXモードが例示され、第2モードとしてトラクションコントロールモードが例示されている。しかし、第1モードと第2モードとは、これらの制御モードに限らず、変更されてもよい。例えば、第1モードは、最大牽引力が最大よりも小さい制御モードであってもよい。
上記の実施形態では、第3モードとしてSモードが例示されているが、異なるモードであってもよい。或いは、Sモードは省略されてもよい。
上記の実施形態では、トラクションコントロールモードは、オートモードとレベル選択モードとを有しているが、いずれか一方のみであってもよい。モード保持設定部53は省略されてもよい。
モード選択部46の構成は上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、MAX位置とTC位置とにおいて、モード選択部46は、オルタネート動作式のスイッチであってもよい。或いは、モード選択部46は、複数のスイッチによって構成されてもよい。例えば、MAX位置とTC位置とに操作可能なスイッチと、S位置のオン/オフの可能なスイッチとが別々に設けられてもよい。
第2モードにて駆動系の制御が開始される車両の始動時は、車両の始動と完全に同時でなくてもよく、時間差があってもよい。例えば、車両の始動直後は制御モードは第1モードであり、所定時間経過後に第2モードに切り換えられてもよい。
或いは、第2モードにて駆動系の制御が開始される車両の始動時は、車両の走行開始時であってもよい。或いは、第2モードにて駆動系の制御が開始される車両の始動時は、作業機3の動作開始時であってもよい。
本発明によれば、ホイールローダにおいて燃費を向上させることができる。
Claims (12)
- 走行輪と、
エンジンと、前記エンジンからの駆動力によって前記走行輪を回転駆動する動力伝達装置と、前記エンジンによって駆動される作業機ポンプと、を有する駆動系と、
前記作業機ポンプから吐出される作動油によって駆動される作業機と、
所定の第1モードと、車両の作業局面に応じて最大牽引力を制御し前記第1モードよりも牽引力を小さく制御する第2モードとを含む複数のモードから選択された制御モードを示す操作信号を生成するモード選択部と、
前回、始動スイッチがオフされたときに前記モード選択部によって選択されている前記制御モードが前記車両の始動時に保持される選択保持機能を設定するモード保持設定部と、
前記モード選択部からの前記操作信号を取得し、選択された前記制御モードに従って前記駆動系を制御し、前記選択保持機能がオフに設定されている場合には、前記始動スイッチがオンされたときに前記第2モードにて前記駆動系の制御を開始する制御部と、
を備えるホイールローダ。 - 前記第1モードでの最大牽引力は、全ての前記制御モードのなかで最も大きい、
請求項1に記載のホイールローダ。 - 前記制御部は、前記車両の作業局面を判定し、
前記制御モードが前記第2モードである場合、前記制御部は、判定された前記作業局面に応じて、最大牽引力を制御する、
請求項1又は2に記載のホイールローダ。 - 最大牽引力の大きさを設定する牽引力設定部をさらに備え、
前記制御モードが前記第2モードである場合、前記制御部は、前記最大牽引力を、前記牽引力設定部によって設定された大きさとする、
請求項1又は2に記載のホイールローダ。 - 前記制御部は、前記モード保持設定部による前記選択保持機能がオフに設定されている場合には、前記第1モードが選択されていても前記始動スイッチがオンされたときに、前記第2モードにて前記駆動系の制御を開始し、前記モード保持設定部による前記選択保持機能がオンに設定されている場合には、前記第1モードが選択されていれば前記始動スイッチがオンされたときに、前記第1モードにて前記駆動系の制御を開始する、
請求項1から4のいずれかに記載のホイールローダ。 - 前記第2モードでは、車速が所定の第1速度であるときに牽引力が最大となり、
前記複数のモードは、第3モードをさらに含み、
車速が前記第1速度であるときの前記第3モードでの牽引力は、前記第2モードでの最大牽引力より小さく、
前記モード選択部によって前記第3モードが選択されているときには、前記モード保持設定部による前記選択保持機能のオン/オフに関らず、前記制御部は、前記車両の始動時に前記第3モードにて前記駆動系の制御を開始する、
請求項1から5のいずれかに記載のホイールローダ。 - 前記モード選択部は、前記第1モードの選択位置と前記第2モードの選択位置と前記第3モードの選択位置とに切り換え可能なスイッチであり、前記第1モードの選択位置から前記第2モードの選択位置に自動的に復帰し、前記第2モードの選択位置と前記第3モードの選択位置とのいずれかに選択的に保持される、
請求項6に記載のホイールローダ。 - 前記モード選択部は、前記第1モードの選択位置と前記第2モードの選択位置とに切り換え可能なスイッチであり、前記第1モードの選択位置から前記第2モードの選択位置に自動的に復帰する、
請求項1から6のいずれかに記載のホイールローダ。 - 前記動力伝達装置は、
前記エンジンによって駆動される走行ポンプと、
前記走行ポンプから吐出された作動油によって駆動され、前記走行輪を回転駆動する油圧モータと、
を有する、
請求項1から8のいずれかに記載のホイールローダ。 - 前記動力伝達装置は、前記エンジンからの駆動力を前記走行輪に伝達するトルクコンバータ及び変速機を有する、
請求項1から8のいずれかに記載のホイールローダ。 - 所定の車速未満の速度領域において、前記第2モードの牽引力は、前記第1モードの牽引力よりも小さく、
前記所定の車速以上の速度領域において、前記第2モードの牽引力は、前記第1モードの牽引力と同じである、
請求項1から10のいずれかに記載のホイールローダ。 - 所定の第1モードと、車両の作業局面に応じて最大牽引力を制御し前記第1モードよりも牽引力を小さく制御する第2モードとを含む複数のモードから選択された制御モードを示す操作信号を取得するステップと、
選択された前記制御モードに従って、駆動系を制御するステップと、
前回、始動スイッチがオフされたときに選択されている前記制御モードが前記車両の始動時に保持される選択保持機能を設定するステップと、
前記選択保持機能がオフに設定されている場合には、前記始動スイッチがオンされたときに前記第2モードにて前記駆動系の制御を開始するステップと、
を備えるホイールローダの制御方法。
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