JP2018115248A - 中間層用樹脂組成物及び包装用フィルム及び液体包装袋 - Google Patents

中間層用樹脂組成物及び包装用フィルム及び液体包装袋 Download PDF

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Abstract

【課題】高ヒートシール性及び生産性に優れ、ダイロール方式等による自動充填機での幅広い温度範囲で高速液体充填が可能な包装用フィルムを製造できる包装材料を提供する。【解決手段】基材層、中間層及びシーラント層を少なくとも有する包装材料において、中間層に下記の条件(1)〜(4)を満足するエチレン系重合体を用いることを特徴とする。(1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)0.1〜100g/10分以下(2)密度が0.895〜0.940g/cm3(3)昇温溶出分別(TREF)による0℃以下で溶出する成分の割合(Y)が0.8重量%未満(4)示差屈折計、粘度検出器、及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’における、分子量10万から100万の間での最低値(gL)が0.20〜0.40【選択図】なし

Description

本発明は、中間層用樹脂組成物、包装用フィルムおよびそれを用いた液体包装袋に関し、より詳しくは、基材層、中間層及びシーラント層を少なくとも有する包装用フィルムとその中間層用樹脂組成物およびそれを用いた液体包装袋に関する。
特に、本発明は、包装材料を自動充填機での液体や粘体用の包装袋として用いたときに、押出加工適性(機械的負荷の低減、フィルム加工性、ラミネート加工性等)、自動充填適性(ヒートシール強度、ヒートシール温度幅、ヒートシール温度、ホットタック性等)および製品特性(外観、耐圧強度、破袋強度、突き刺し強度等)の諸性能を満足させるために、中間層として、耐圧強度、ヒートシール強度が高く、低温から高温まで幅広いシール温度範囲で高速充填を可能とし、上記自動充填適性を満足するとともに、機械的な負荷の低減などの押出加工適性をも同時に満足するように改良したものである。
従来、包装用基材としては、透明性や機械的強度に優れるポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂等が使用されている。しかし、ヒートシール温度が高く、包装速度を速く出来ないこと、ヒートシール時にフィルムが収縮して包装外観が悪化すること、ヒートシール強度が低いこと等の問題を有しているため、これらの基材が単独で使用されることは少なく、通常はヒートシール層を設けた複合フィルムが使用されている。
例えば液体及び粘体、並びに不溶物質として、繊維、粉末等の固形状のものを含んだ液体、粘体等の液体包装用基材には、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、紙、アルミニウム箔等からなる表面基材層上にシーラント層を設けた複合フィルム、あるいは基材上に種々の中間層を積層させ、さらにその上にシーラント層を積層させて得られる包装用フィルムが知られている。
このような複合フィルムのシーラント層用フィルムとしては、当初は低密度ポリエチレン(LDPE)やエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が使用されていたが、LDPEフィルムは高速成形性(加工性)等に優れるものの、低温ヒートシール性、耐熱性及びホットタック性等に難点を有し、EVAは低温ヒートシール性が優れるものの、耐熱性及びホットタック性等に難点を有している。
これらを改良するものとして、特許文献1では基材層上に、特定の物性を有する密度0.910〜0.940g/cmのエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、および高圧法低密度ポリエチレン(以下、HPLDと略称することがある)のブレンド組成物からなるシーラント層を積層した複合フィルムが提案されている。
また、特許文献2では上記複合フィルムのヒートシール強度とホットタック性等を維持し、さらに低温ヒートシール性を改良したラミネート組成物として、メタロセン触媒で製造された特定の温度上昇溶離分別(以下、TREFと略称することがある)特性を示すエチレンと炭素数3〜炭素数18のα−オレフィンとの共重合体、および特定の低密度ポリエチレンのブレンド組成物が提案され、あるいは特許文献3では同様な複合フィルム用ポリエチレン組成物として、メタロセン触媒で製造された密度0.880〜0.930g/cm、分子量分布が1.5〜4.0であるエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、及び高圧法低密度ポリエチレンからなる組成物が提案されている。
上記のような特定のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとのブレンド組成物からなるシーラント層は、従来の低密度ポリエチレンのシーラント層に比べてヒートシール強度とホットタック性等が優れている。ところが、スープ、ソース、タレ、麺つゆ等の液体包装の場合には、ダイロール式等の自動充填機械を用いて複合フィルム(包装材)の縦、及び横シールを行うため、それぞれ二本の回転ロール間に挟んでシールされて充填袋が形成されることになる。このようなヒートシール方式で上記これらのブレンド組成物からなるシーラントを用いると、ヒートシール部の肉やせが生じ、破袋が起きたり、基材とシーラント層との剥離が起こるという問題点があった。
このような問題を解消するために、特許文献4では基材とシーラント層間に中間層を設けた多層フィルムが提案されている。このような外層(A)/中間層(B)/内層(C)からなる多層フィルムにおいて、外層(A)及び内層(C)にエチレン−α−オレフィン共重合体(1)、中間層(B)にエチレン−α−オレフィン共重合体(1)より少なくとも0.003g/cm高い密度であるエチレン−α−オレフィン共重合体(2)と、エチレン−α−オレフィン共重合体(1)と同じ密度またはそれ以下の密度であるエチレン−α−オレフィン共重合体(3)、及び高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物を用いて貼合用共押出多層フィルムとすることが提案されている。
また、特許文献5では少なくとも基材層、中間層およびシーラント層が、この順に積層された多層構造のフィルムの中間層として、直鎖状低密度ポリエチレン(A)と高圧法低密度ポリエチレン(B)との混合比率[(A)/(B)]が70/30〜40/60である樹脂組成物からなり、該直鎖状低密度ポリエチレン(A)がエチレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体であって、そのメルトフローレートが1〜50g/10分であり、密度が0.890〜0.930g/cmであり、分子量分布を示すMw/Mnが1.5〜4.0のもの、また該高圧法低密度ポリエチレン(B)が2g以上のメルトテンションであるものを用いることが提案されている。
さらに特許文献6では少なくとも基材層、中間層およびシーラント層が、この順に積層された多層構造のフィルムの中間層として、メタロセン触媒より製造された直鎖状低密度ポリエチレン(A)50〜95重量%と高圧法低密度ポリエチレン(B)50〜5重量%の樹脂組成物を用いることが提案されている。
また、特許文献7及び8には、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)からなるシーラント層と該シーラント層に比べて高密度のL−LDPEからなる中間層と二軸延伸フィルムからなるベースフィルム層との押出し三層構造を有する包装用フィルムが提案されている。
さらに、特許文献9には、基材フィルムと、支持層と、シーラント層とを順に積層する積層体であって、支持層が、チーグラーナッタ系触媒またはメタロセン系シングルサイト触媒を使用して重合した直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなり、シーラント層が特定の2種以上の樹脂をブレンドする組成物から構成される積層体が提案されている。
しかし、自動充填装置を用いてフィルムを製造する際、種々の内容物、基材の違いなどに対応させるために、充填装置の設定条件を調整する必要があるところ、上記特許文献1〜9に開示されるような従来のフィルムでは、個々の包材での許容範囲が十分でなく、毎回、充填条件を探索する必要がある等の煩雑さが生じるという問題があり、さらなる充填適性の改良が求められていた。
特公平02−004425号公報 特開平07−026079号公報 特開平8−269270号公報 特開平10−323948号公報 特開平11−010809号公報 特開2001−009997号公報 特開2008−302977号公報 特開2005−289471号公報 特開2004−223728号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、ヒートシール性及び生産性に優れ、低温から高温まで幅広い温度範囲で高速充填が可能な中間層用樹脂組成物及びそれを用いてなる包装用フィルム及び液体包装袋を提供することにある。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成及び物性を有するエチレン系重合体を中間層に用いることにより、上記問題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の各項の発明に存する。
本願の第1の発明によれば、基材層(I)、中間層(II)及びシーラント層(III)を少なくとも有する包装用フィルムの中間層(II)に用いる中間層用樹脂組成物であって、下記の条件(A−1)〜(A−4)を満足するエチレン系重合体と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを合わせて100重量%となるように配合したエチレン系樹脂組成物であり、条件(B−1)及び(B−2)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
エチレン系重合体(A)の条件;
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1g〜100g/10分である。
(A−2)密度が0.895〜0.940g/cmである。
(A−3)昇温溶出分別(TREF)による0℃以下で溶出する成分の割合(Y)が0.8重量%未満である。
(A−4)示差屈折計、粘度検出器、及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’における、分子量10万から100万の間での最低値(g)が0.20〜0.40である。
組成物全体の条件;
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分である。
(B−2)密度が0.900〜0.935g/cmである。
本願の第2の発明によれば、前記第1の発明のエチレン系重合体が下記の条件(A−5)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−5)前記分岐指数g’の分子量10万での値(g)が0.50〜0.75である。
本願の第3の発明によれば、上記第1または第2の発明のエチレン系重合体が下記の条件(A−6)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−6)昇温溶出分別(TREF)による85℃以上で溶出する成分の割合(X)が1重量%を超え、70重量%未満である。
本願の第4の発明によれば、上記第1〜3の発明のいずれかに記載のエチレン系重合体が下記の条件(A−7)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−7)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0である。
本願の第5の発明によれば、上記第1〜4の発明のいずれかに記載のエチレン系重合体が下記条件(A−8)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−8)GPCにより測定される分子量分布Mz/Mwが2.0〜9.0である。
本願の第6の発明によれば、上記第1〜5の発明のいずれかに記載のエチレン系重合体が下記の条件(A−9)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−9)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)、及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40重量%を超え、80重量%未満である。
本願の第7の発明によれば、上記第1〜6の発明のいずれかに記載のエチレン系重合体が下記の条件(A−10)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
(A−10)前記W、及びCFCにより測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高温で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)の差(W−W)が、−4重量%を超え、30重量%未満である。
本願の第8の発明によれば、上記第1〜7の発明のいずれかに記載のエチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
本願の第9の発明によれば、上記第1〜8の発明のいずれかに記載のエチレン系重合体が、成分(i)、(ii)及び(iii)を含むオレフィン重合用触媒によって製造されることを特徴とする中間層用樹脂組成物が提供される。
成分(i):インデニル環上に五員環構造置換基を有する、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物
成分(ii):成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(iii):無機化合物担体
本願の第10の発明によれば、基材層(I)、中間層(II)及びシーラント層(III)を少なくとも有する包装用フィルムであって、該中間層(II)に用いる中間層用樹脂組成物として、上記第1〜9の発明のいずれかに記載の中間層用樹脂組成物を用いたことを特徴とする包装用フィルムが提供される。
本願の第11の発明によれば、上記第10の発明に記載の中間層(II)、シーラント層(III)が、押出ラミネーション法または共押出ラミネーション法により積層されることを特徴とする包装用フィルムが提供される。
本願の第12の発明によれば、前記第10又は11の発明に記載の包装用フィルムが液体を含む内容物を包装するためのフィルムであることを特徴とする液体包装用フィルムが提供される。
本願の第13の発明によれば、前記第10又は11の発明に記載の包装用フィルムを用いて袋状に形成した液体包装袋が提供される。
本発明の中間層用樹脂組成物は、液体及び/又は粘体の包装材料の中間層に用いた場合に低温シール性に優れ、幅広い温度範囲で高速充填が可能となる。また、上記中間層用樹脂組成物を中間層として用いた包装用フィルムは、シール強度や耐圧強度、高速充填性に優れた包装用フィルム、液体包装袋を提供することが出来る。
ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で用いられる、クロマトグラムのベースラインと区間を示すグラフの一般的な例示である。 GPC−VIS測定(分岐構造解析)から算出する分岐指数(g’)と分子量(M)との関係を示すグラフの一般的な例示である。 昇温溶出分別(TREF)による、溶出量の溶出温度分布を示すグラフの一般的な例示である。 クロス分別クロマトグラフィー(CFC)法で測定される溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線図として示すグラフである。 クロス分別クロマトグラフィー(CFC)法で測定される溶出温度と各溶出温度における溶出割合(wt%)との関係を示すグラフである。
本発明は、近年当出願人により新たに開発された特殊な分子構造を有するエチレン系共重合体、すなわち、特定のMFRと密度を有し、昇温溶出分別(TREF)による低温溶出成分が少なく、かつ、分岐指数(g‘)で特徴付けられる高度に発達した分岐構造を有する、エチレン系重合体からなる中間層用樹脂組成物と、それを中間層に用いて製造した包装用フィルムに係るものである。
以下において、本発明で用いる中間層用樹脂組成物を特徴付ける条件(A−1)〜(A−10)について項目毎に、詳細に説明する。
1.本発明に用いるエチレン系重合体
本発明に用いるエチレン系重合体は、下記に説明する条件(A−1)〜(A−4)を全て満たすことを基本的な特徴とする。
1−1.条件(A−1)
本発明のエチレン系重合体のメルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg荷重下)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分、より好ましくは0.5〜30g/10分、更に好ましくは1〜20g/10分である。
MFRがこの範囲にあると、押出ラミネートする際の加工特性に優れる。一方、MFRが0.1g/10分未満では、押出ラミネート成形時に機械に負荷がかかってしまう等の問題が生じる。MFRが100g/10分より大きいと、加工時のネックインが大きくなり、製品の歩留まりが悪くなるだけでなく、発煙・臭気の原因となる為好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
MFRの調整は、エチレン重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
1−2.条件(A−2)
本発明で用いるエチレン系重合体の密度は、0.895〜0.940g/cmである。
密度が上記範囲より高いと低温ヒートシール性に劣る。一方、密度が上記範囲より低いと高温でシールした際に発泡しやすくなる。
なお、本発明では、エチレン系重合体の密度は、以下の方法で測定したときの値をいう。
ペレットを熱プレスして2mm厚のプレスシートを作成し、該シートを1,000ml容量のビーカーに入れ蒸留水を満たし、時計皿で蓋をしてマントルヒーターで加熱した。蒸留水が沸騰してから60分間煮沸後、ビーカーを木製台の上に置き放冷した。この時60分煮沸後の沸騰蒸留水は500mlとし室温になるまでの時間は60分以下にならないように調整した。また、試験シートは、ビーカー及び水面に接しないように水中のほぼ中央部に浸漬した。シートを23℃・湿度50%の条件で、16時間以上24時間以内でアニーリングを行った後、縦横2mmになるように打ち抜き、試験温度23℃で、JIS K7112の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に準拠して、測定した。
1−3.条件(A−3)
本発明におけるエチレン系重合体は、上記条件(A−1)(A−2)に加えて更に、昇温溶出分別(TREF)による0℃以下で溶出する成分の割合(Y)が0.8重量%未満、好ましくは0.7重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満である。なお、昇温溶出分別(TREF)は、非結晶性と結晶性などに応じてポリマーを分別する慣用手段である。
Y値が0.8重量%以上であると、エチレン系重合体に含まれる低分子量成分や低密度成分が多くなって、包装用フィルムの機械強度が悪化するおそれがあるので好ましくない。なお、Y値は0重量%以上である。
[TREFの測定条件]
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、20分間保持する。
その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。この時、−15℃から0℃までの間に溶出する成分量(W≦0℃)をY(単位wt%)とし、85℃から140℃までの間に溶出する成分量(W≧85℃)をX(単位wt%)とする。図3には、昇温溶出分別(TREF)による、溶出量の溶出温度分布を示すグラフの一般的な例示を示す。
使用装置は、下記のとおりである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム カラム充填:100μm表面不活性処理ガラスビーズ 加熱方式:アルミヒートブロック 冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷) 温度分布:±0.5 ℃ 温調器:(株)チノー・デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン) 加熱方式:空気浴式オーブン 測定時温度:140℃ 温度分布:±1℃ バルブ:6方バルブ・4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式 注入量:ループサイズ 0.1ml 注入口加熱方式:アルミヒートブロック 測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製・MIRAN・1A 検出波長:3.42μm 高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル・光路長1.5mm・窓形状2φ×4mm長丸・合成サファイア窓板 測定時温:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製・SSC−3461ポンプ
(測定条件)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り) 試料濃度:5mg/mL 試料注入量:0.1mL 溶媒流速:1mL/分
1−4.条件(A−4)
本発明におけるエチレン系重合体は、上記条件(A−1)〜(A−3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器、及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’における、分子量10万から100万の間での最低値(g)が、0.20〜0.40、好ましくは0.25以上0.40未満、より好ましくは0.27以上0.40未満である。
なお、g’は長鎖分岐の存在度合いの尺度であり、(g)を上記範囲とするには、ある程度の長鎖分岐をエチレン系重合体に導入させることにより達成することができる。
値が0.40より大きいと成形加工性や流動性の改善効果が小さくなるおそれがあるので好ましくない。g値が0.20より小さいと、成形加工性や流動性は向上するが、材料強度が低下するおそれがあるので好ましくない。なお、本発明で、エチレン系重合体のg値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
[GPC−VISによる分岐構造解析]
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)及び光散乱検出器を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance・GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)であるWyatt・Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S)・HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
[分岐指数(g’)などの算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gとして算出する。
図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。図2は、MALLSから得られる分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
1−5.条件(A−5)
本発明で用いるエチレン系重合体は、上記の条件(A−1)〜(A−4)に加えて更に、前述のgと同様にして測定される分岐指数g’の分子量10万での値(g)が0.50〜0.75、好ましくは0.55以上0.75未満、より好ましくは0.55〜0.73、更に好ましくは0.58〜0.72、特に好ましくは0.60〜0.71である。
この範囲であると、溶融加工性や流動性が更によくなり電力量削減効果が増大するので好適な条件である。g値が0.75より大きいと成形加工性や流動性の改善効果が小さくなるので好ましくない場合がある。g値が0.50より小さいと、成形加工性や流動性は向上するが、材料強度が低下したりするので好ましくない場合がある。
1−6.条件(A−6)
本発明で用いるエチレン系重合体は、上記の条件(A−1)〜(A−5)に加えて更に、前述のY値と同様に、TREFにより測定される85℃以上で溶出する成分の割合(X)が1重量%を超え、70重量%未満、好ましくは2重量%を超え、50重量%未満、より好ましくは2重量%を超え、36重量%未満、更に好ましくは3重量%を超え、33重量%未満、最も好ましくは3重量%を超え、10重量%未満である。
この範囲であると、ホットタック性、押出ラミネート加工性が向上する。X値が1重量%以下であると、ホットタック性が低下し、押出ラミネート加工性も低下するので好ましくない。X値が70重量%以上であると、低温シール性が悪化するため、好ましくない。
1−7.条件(A−7)
本発明で用いるエチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の好適な範囲は、3.0〜10.0、好ましくは3.5〜9.0、より好ましくは4.0〜8.0、更に好ましくは4.5〜8.0である。Mw/Mnが3.0未満では、成形加工性、特に溶融流動性やネックインの改善効果が小さくなるため、避けるべきである。
Mw/Mnが10.0より大きいと成形加工性、特に高速成形性が悪化する場合がある。なお、本発明で、エチレン系重合体のMwやMnは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
[GPC法測定]
GPC法により測定保持容量を測定し、測定保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C) 検出器:FOXBORO社製MIRAN・1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン 測定温度:140℃ 流速:1.0ml/分 注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行う。
1−8.条件(A−8)
本発明で用いるエチレン系重合体のZ重量平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)の好適な範囲は、2.0〜9.0、好ましくは2.0〜8.0、より好ましくは2.5〜7.0、特に好ましくは2.5〜6.0である。
Mz/Mwが2.0未満では、成形加工性、特に溶融流動性やネックインの改善効果が小さくなるため避けるべきである。Mz/Mwが9.0より大きいと成形加工性、特に高速成形性が悪化する場合がある
なお、本発明で、エチレン重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体のMzは、上述のゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
1−9.条件(A−9)
本発明で用いるエチレン系重合体は、上記の条件(A−1)〜(A−8)に加えて更に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)、及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)の好適な範囲が、40重量%を超え、80重量%未満である。好ましくは41重量%を超え、70重量%未満、更に好ましくは41重量%を超え、56重量%未満、特に好ましくは42重量%を超え、50重量%未満である。
+W値が40重量%以下であると、エチレン系重合体に含まれる材料強度向上に効果的に作用する低密度高分子量成分の割合が減少したり、ホットタック性向上に効果的に作用する高密度低分子量成分が減少したりする場合がある。一方、一方、W+W値が80重量%以上であると、エチレン系重合体に含まれる該高密度低分子量成分と該低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、材料強度が悪化したり、該低密度高分子量成分と該高密度低分子量成分の分散性が悪くなって、ゲルが発生したりする場合がある。
[CFCの測定]
クロス分別クロマトグラフ(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却し、ポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN・1A・IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L GPCカラム:昭電工社製AD−806MS(3本を直列に接続) 溶媒:ODCB サンプル濃度:3mg/mL 注入量:0.4mL 結晶化速度:1℃/分 溶媒流速:1mL/分 GPC測定時間:34分 GPC測定後安定時間:5分 溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,10
2,120,140
(データ解析)
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。更に、図5のような溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際、使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
更に、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中のwt%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
Figure 2018115248
また、各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、図4のように溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得る。上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量未満の成分の割合
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出
する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量未満の成分の割合
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合
なお、W+W+W+W=100である。
1−10.条件(A−10)
本発明におけるエチレン系重合体は、上記の条件(A−1)〜(A−9)に加えて更に、1−9.で前記したW及びWの差(W−W)の好適な範囲が、−4重量%を超え、30重量%未満、好ましくは−4重量%を超え、20重量%未満、より好ましくは−4重量%を超え、10重量%未満である。
−Wが−4重量%以下であると、エチレン系重合体に含まれる材料強度の向上に特に効果的に作用する低密度高分子量成分が減少するおそれがあるので好ましくない。一方、W−W値が30重量%以上であると、高密度低分子量成分と低密度高分子量成分の含有量のバランスが崩れ、分散性が悪くなって、ゲルが発生したりするおそれがあるので好ましくない。
1−11.本発明で用いるエチレン系重合体の組成
本発明のエチレン系重合体は、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であり、好ましくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。
ここでエチレン単独重合体とは、モノマー原料としてエチレンのみを反応器に供給することによって製造された重合体をいう。また、ここで用いられるコモノマーであるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1などが挙げられる。更にビニルシクロヘキサン或いはスチレン及びその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。
これらのうち、より好ましいα−オレフィンはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のものであり、更に好ましいα−オレフィンはブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、特に好ましくはヘキセン−1である。
本発明で用いるエチレン系重合体中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約70〜100重量%、α−オレフィン0〜約30重量%であり、好ましくはエチレン約80〜99.99重量%、α−オレフィン約0.01〜20重量%であり、より好ましくはエチレン約80〜99.9重量%、α−オレフィン約0.1〜20重量%であり、更に好ましくはエチレン約82〜99.2重量%、α−オレフィン約0.8〜18重量%であり、特に好ましくはエチレン約85〜99重量%、α−オレフィン約1〜15重量%であり、最も好ましくはエチレン約88〜98重量%、α−オレフィン約2〜12重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、成形加工性が格段に優れる
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレンなどのスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン類、ノルボルネン、シクロペンテンなどの環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチルなどの含酸素化合物類、などの重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造が上記条件(4)を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことはいうまでもない。
2.本発明で用いるエチレン系重合体の製法
本発明で用いるエチレン系重合体は、上記条件(A−1)〜(A−4)を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンなどを重合する方法によって実施される。
オレフィン重合用触媒としては、今日様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成及び重合条件や後処理条件の工夫の範囲内において上記条件を満足するエチレン系重合体が準備可能であれば何ら制限されるものではないが、本発明のエチレン系重合体が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(i)、(ii)及び(iii)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
成分(i):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物
成分(ii):成分(i)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
成分(iii):無機化合物担体
2−1.触媒成分(i)
本発明で用いるエチレン系重合体を製造するのに好ましい触媒成分(i)は、インデニル環上に五員環構造置換基を有する、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
本発明においては、特に式[2]更には、(1−c)で表される配位子を重合用触媒成分として使用することにより、本発明の特定のエチレン系重合体を、専らかつ効率よく製造することができる。そして、本発明のエチレン系重合体は、かかる特定の重合用触媒を使用する重合方法によって製造されることを一つの特徴とする。
Figure 2018115248
[但し、式[1]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Aはシクロペンタジエニル環(共役五員環)構造を有する配位子を、Aは五員環構造置換基の付いたインデニル環構造を有する配位子を、QはAとAを任意の位置で架橋する結合性基を示す。X及びYは、σ結合性基であり、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
Figure 2018115248
[但し、式[2]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Qはシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。10個のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示すが、インデニル環側に付いた少なくとも1個のRは五員環構造を有する。]
本発明で用いるエチレン系重合体を製造するのに特に好ましい触媒成分(A)は、特開2013−227271号公報の段落0007以下に記載された一般式(1c)で表されるメタロセン化合物である。
Figure 2018115248
[但し、式(1c)中、略号の説明は全て特開2013−227271号公報の記載に従う。すなわち、M1cは、Ti、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。X1c及びX2cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Q1cとQ2cは、各々独立して、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。R1cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのR1cのうち少なくとも2つが結合してQ1c及びQ2cと一緒に環を形成していてもよい。mは、0または1であり、mが0の場合、Q1cは、R2cを含む共役5員環と直接結合している。R2c及びR4cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。R3cは、下記一般
(1−ac)で示される置換アリール基を示す。]
Figure 2018115248
[但し、式(1−ac)中、Y1cは、周期表14族、15族又は16族の原子を示す。R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは隣接する基同士で結合して、それらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。nは、0または1であり、nが0の場合、Y1cに置換基R5cが存在しない。pは、0または1であり、pが0の場合、R7cが結合する炭素原子とR9cが結合する炭素原子は直接結合している。Y1cが炭素原子の場合、R5c、R6c、R7c、R8c、R9cのうち少なくとも1つは水素原子ではない。R2cが五員環構造置換基でない場合、pは0である。]
上記一般式(1c)中の略号の更なる具体的な例示は、以下に特別な説明の無い限りにおいて、全て特開2013−227271号公報の記載に従う。本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに最も好ましい触媒成分(A)は、特開2013−227271号公報の段落0013に記載された一般式(3c)で表されるメタロセン化合物である。
なお、上記のとおり、特開2013−227271号公報には本願発明の実施例に使用する触媒が開示されているが、具体的な製造条件等が異なるために、該特開2013−227271号公報には本願発明の物性、特に要件(4)g’を有するポリマーは開示されていない。すなわち、本願発明は、特定の触媒と特定の製造条件の組み合わせにより達成された、重合体の新規で特異的な物性を顕現していることを特徴とする、新規物性を有するポリマーに関する発明である。
Figure 2018115248
上記の一般式(3c)で示されるメタロセン化合物において、M1c、X1c、X2c、Q1c、R1c、R2c及びR4cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子及び基と同様な構造を好ましい態様も含め選択することができるが、R2cは水素原子、メチル基が最も好ましく、4つのR4cのうち、架橋基Q1cが付いた炭素原子の両隣の炭素に付いた2つのR4cは水素原子が最も好ましく、残りのR4cは水素原子又はメチル基が最も好ましい。また、R12c、R13c及びR14cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR5c、R6c、R7c、R8c、R9cの原子及び基と同様な構造を選択することができる。そしてZ1cは、酸素原子又は硫黄原子を示す。
上記のメタロセン化合物の具体例として、特開2013−227271号公報の表1cに記載された化合物のうち、55c〜94c、224c〜303cが好ましいが、これらに限定するものではない。
また、上記に例示した具体的化合物の中にあって、より好ましいものを以下に示す。該表1c中の、55c〜72c、81c〜86c、224c〜231c、などが挙げられる。また、上記の化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物などが、好ましいものとして挙げられる。
更に、上記に例示した具体的化合物の中にあって、更に好ましいものを以下に示す。該表1c中の、55c〜66c、81c、82c、224c〜227cなどが挙げられる。また、上記の化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物が、好ましいものとして挙げられる。
上記の具体例の化合物はジルコニウム化合物又はハフニウム化合物であることが好ましく、ジルコニウム化合物であることが更に好ましい。
本発明で用いるエチレン系重合体を製造するのに好ましい触媒成分(i)として、上述の架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物を2種以上用いることもできるが、その場合は分子量分布や共重合組成分布が広がり過ぎないように注意することはいうまでもない。
2−2.触媒成分(ii)
本発明で用いるエチレン系重合体を製造するのに好ましい触媒成分(ii)は、成分(i)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、汎用されている有機アルミニウムオキシ化合物やボラン化合物及びボレート化合物が挙げられる。
より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(ii)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
2−3.触媒成分(iii)
触媒成分(iii)としては、汎用されている、無機物担体、粒子状ポリマー担体又はこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、又はこれらの混合物が使用可能である。
本発明で用いるエチレン系重合体を製造するのに好ましい触媒成分(iii)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
2−4.オレフィン重合用触媒の製法
本発明で用いるエチレン系重合体は、上記触媒成分(i)〜(iii)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンを重合する方法によって好適に製造される。本発明の上記触媒成分(i)〜(iii)からオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)〜(III)の方法が任意に採用可能である。
(I)上記の遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物である触媒成分(i)と、上記触媒成分(i)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物である触媒成分(ii)とを接触させた後、無機化合物担体である触媒成分(iii)を接触させる。
(II)触媒成分(i)と触媒成分(ii)とを接触させた後、触媒成分(iii)を接触させる。
(III)触媒成分(ii)と触媒成分(iii)とを接触させた後、触媒成分(i)を接触させる。
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、更に(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族或いは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)などの液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、更に好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、更に好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
また、触媒成分(i)、触媒成分(ii)及び触媒成分(iii)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素或いは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、或いは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥などの手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
本発明において、触媒成分(i)、触媒成分(ii)及び触媒成分(iii)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
触媒成分(ii)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、触媒成分(i)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1,000、更に好ましくは50〜500、特に好ましくは100〜400の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、触媒成分(i)中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、更に好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。更に、触媒成分(ii)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
触媒成分(iii)の使用量は、触媒成分(i)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
また、本発明において、触媒成分(iii)1gに対する触媒成分(ii)の金属のモル数の割合は、好ましくは、0.001〜0.020(モル/g)、より好ましくは、0.003〜0.012(モル/g)、更に好ましくは、0.004〜0.010(モル/g)である。
触媒成分(i)、触媒成分(ii)及び触媒成分(iii)を、前記した接触方法(I)〜(III)を適宜選択して相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃、更に好ましくは20〜100℃で1分〜100時間、好ましくは10分〜50時間、更に好ましくは30分〜20時間で行うことが望ましい。
なお、オレフィン重合用触媒は、以下に示す(IV)、(V)の方法によっても得ることができる。
(IV)触媒成分(i)と触媒成分(iii)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)触媒成分(ii)である有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と触媒成分(iii)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒成分(i)と接触させる。 上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
また、本発明で用いるエチレン重合体を得るのに好適なオレフィン重合用触媒として、触媒成分(i)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる触媒成分(ii)と触媒成分(iii)とを兼ねる成分として、特開平05−301917号公報、同08−127613号公報などに記載されてよく知られている層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。これらの層状珪酸塩は、酸やアルカリなどによる化学処理を施してもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
触媒成分(i)と層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。触媒成分(i)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じて、エチレン又は/及び適宜なα−オレフィンモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
2−5.エチレン系重合体の重合方法
本発明で用いるエチレン系重合体は、好適には上記の2−4.に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンを重合又はエチレンをα−オレフィンと共重合して製造される。
コモノマーであるα−オレフィンとしては、段落0053〜0055で述べたように、炭素数3〜20のα−オレフィンが使用可能であり、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能であり、該α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能である。
本発明において、上記の重合反応は、好ましくは気相連続重合装置又はスラリー連続重合装置を使用して行うことができる。連続重合装置とは、触媒、モノマーなど、重合に必要な原料などを連続的に供給可能な装置と生成重合体を連続的に排出可能な装置を有する重合反応装置のことをいう。気相連続重合の場合、実質的に酸素、水などを断った状態で、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレンなどを重合させる。また、スラリー連続重合の場合、イソブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素などから選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレンなどを連続重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレンなどの液体モノマーも溶媒として使用できることはいうまでもない。本発明において、更に好ましい重合は、気相連続重合である。
重合温度は通常0〜250℃、好ましくは60〜110℃、更に好ましくは65〜95℃であり、気相重合やスラリー重合の場合、生成する重合体粒子の流動が軟化や溶融によって妨げられない範囲において、より高い温度で重合を行うことでより小さなg値を有するエチレン系重合体を得ることができる。
また、エチレン分圧は通常、常圧〜10MPa、好ましくは0.2〜1.9MPa、更に好ましくは0.3〜1.8MPa、特に好ましくは0.4〜1.6MPaの範囲にあり、重合時間としては平均滞留時間が通常5分〜20時間、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜12時間が採用されるのが普通である。
生成共重合体の分子量は、触媒成分(i)や触媒成分(ii)の種類、触媒のモル比、重合温度などの重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。
これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
生成共重合体の長鎖分岐構造(すなわちg、g)やコモノマー共重合組成分布(すなわちX、Y、W〜W)は、触媒成分(i)や触媒成分(ii)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間などの重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。
長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン分圧を上げたりして長鎖分岐構造の少ない重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体が製造することがあるので注意を要する。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度などの重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式においても、重合条件を適切に設定するならば、本発明のエチレン系重合体を製造することが可能であり得るだろうが、本発明で用いるエチレン系重合体は、一段階重合反応により製造される場合、複雑な重合運転条件を設定することなく、より経済的に製造できるので好ましい。
3.本発明に用いる中間層用樹脂組成物
次に、以下において本発明で用いる中間層用樹脂組成物を特徴付ける条件(B−1)及び(B−2)について項目毎に、詳細に説明する。
本発明に用いる中間層用樹脂組成物は、下記に説明する条件(B−1)及び(B−2)を両方満たすことを基本的な特徴とする。
3−1.条件(B−1)
本発明に用いる中間層用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR;190℃、2.16kg荷重下)は、1g/10分〜50g/10分、好ましくは1.5g/10分〜40g/10分、より好ましくは2.0g/10分〜30g/10分、更に好ましくは2.5g/10分〜20g/10分である。
MFRがこの範囲にあると、押出ラミネートする際の加工特性に優れる。一方、MFRが1g/10分未満では、押出ラミネート成形時に機械に負荷がかかってしまう等の問題が生じる。MFRが50g/10分より大きいと、加工時のネックインが大きくなり、製品の歩留まりが悪くなるだけでなく、発煙・臭気の原因となる為好ましくない。
1−2.条件(B−2)
本発明の中間層用樹脂組成物の密度は、0.895〜0.940g/cmである。
密度が上記範囲より高いと低温ヒートシール性に劣る。一方、密度が上記範囲より低いと高温でシールした際に発泡しやすくなる。
[高圧ラジカル法低密度ポリエチレン]
中間層用樹脂組成物は高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを含む。高圧ラジカル法低密度ポリエチレンは高圧ラジカル法重合法により得ることができる。高圧ラジカル法低密度ポリエチレンは溶融張力が高く、特に押出ラミネート加工時のネックインの改良に用いられる。高圧ラジカル法低密度ポリエチレンの物性としては特に規定されないが、MFRが1〜50g/10分、密度が0.915〜0.930g/cm3のものが好ましい。MFR及び密度が上記範囲であることにより、加工時のネックイン、延展性のバランスが向上する。
[各成分の含有割合]
本発明で用いる中間層用樹脂組成物は、条件(A−1)〜(A−4)を基本条件として満たすエチレン系重合体と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを100重量%の範囲内で任意に配合することで調整するが、上記樹脂組成物100重量%に対して、好ましくは上記エチレン系重合体10〜99重量%と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを90〜1重量%で配合、より好ましくは上記エチレン系重合体20〜99重量%と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを80〜1重量%で配合、更に好ましくは上記エチレン系重合体30〜99重量%と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを70〜1重量%で配合する。各成分の含有割合が上記範囲であることにより、低温及び高温でのシール性のバランスや加工性に優れる。
なお、中間層用樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶造核剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、スリップ剤、過酸化物、有機又は無機充填剤、蛍光増白剤、顔料等を含むことができる。また、上記ポリエチレン樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、エチレン系重合体及び高圧法低密度ポリエチレン以外の樹脂成分を少量含むことができる。
4.包装用フィルム
本実施形態の包装用フィルムは、基材層(I)、中間層(II)及びシーラント層(III)の少なくとも3層からなる積層体からなり、中間層(II)として上記中間層用樹脂組成物を用いてなる。また、この包装用フィルムは、好ましくは、中間層(II)及びシーラント層(III)が、押出ラミネート法または共押出ラミネート法により、基材層(I)上に積層される。
基材層(I)としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体などのフィルムが挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。基材層(I)として用いるフィルムは、1種類を用でもよく、2種類以上を用いてもよい。また、該フィルムは、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでもよい。延伸加工を行ったフィルムとしては、例えば、一軸、又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。さらに、上記フィルム上にポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどをコーティングしたものや、アルミ、アルミナやシリカ、又はアルミナ及びシリカの混合物を蒸着したものを基材層(I)として用いてもよい。液体や粘体を含む内容物の包装用フィルムの場合、基材層(I)は、二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、又はそれら基材上にシリカやアルミナを蒸着したものを用いることができる。
シーラント層(III)としては、特に限定されず、従来公知のエチレンン系樹脂組成物を用いることができ、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体や、エチレン・α−オレフィン共重合体とHPLDとのブンレンド組成物などを用いることができる。
通常、積層体を製造する方法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。例えば、ドライラミネーション等に使用する包装用フィルムは、カレンダー法、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイ成形法など任意の方法が挙げられる。また、押出法の場合は、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法(接着層を設けない共押出、接着層を設ける共押出、接着樹脂を配合する共押出等を含む)等の方法がある。
本実施形態の包装用フィルムにおいて、基材層(I)の少なくとも一方の面に、シーラント層(III)及び中間層(II)を積層する際、押出ラミネート法または共押出ラミネート法が好適に用いられる。これらの方法を用いることにより、フィルムの生産性に優れる。例えば、液体、粘体などを含む内容物の包装材料を作る方法としては、生産性と品質の観点から、タンデム押出ラミネート法が好適に用いられる。タンデム押出ラミネート法は、2種類の樹脂層を逐次積層する方法であり、例えば、押出ラミネート法にて基材層(I)上に1層目として中間層(II)を積層し、さらに2層目としてシーラント層(III)を積層する方法である。
包装用フィルムを構成する積層体は、積層体全体の厚み、各層の厚みや各層の厚み比については特に制限はなく、内容物や用途等に応じて適宜選択することができる。積層体全体の厚みは、例えば、40〜120μm、基材層の厚みは10〜40μm、シーラント層の厚みは10〜40μm程度である。中間層を設ける場合は、該中間層の厚みは20〜40μm程度とすることができる。また、積層の際は、基材表面の接着性をよくするために、予め基材層上にコロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理を行うことができる。さらに、接着性増強等のために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布してから積層することができる。アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等のものが挙げられる。
本実施形態の包装用フィルムは、種々の包装材、例えば食品包装材、医療用包装材、エンジンオイルなどの工業材料包装材等として用いることができる。中でも、液体を含む内容物を包装するためのフィルムとして好適に用いることができる。例えば、液体、繊維及び粉体等の固形状の不溶物を含む液体並びに粘体等の流体を内容物として収容するための包装材として用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した測定方法、評価方法及び樹脂材料は、以下の通りである。
[測定方法]
(1)MFR:JIS K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して行った。
(2)密度:JIS K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して行った。
[充填評価方法]
(1)液体の充填:液体自動充填包装機(大成ラミック社製)を用いて、次の条件で液体を充填した。
[充填条件]
シール温度:(縦)170℃、(横)125℃〜155℃ 包装形態:三方シール 袋寸法:幅50mm×縦100mmピッチ 充填物:水 30℃(常温充填) 充填量:約15g 充填速度:20m/分
(2)充填適性の判定基準 上記の条件で横シール温度を変更して充填を行い、下記の耐圧条件にて、破袋、又はシール後退、水漏れの有無を評価した。
[耐圧条件] 耐圧試験機(小松製作所社製)にて100kgで1分間荷重をかけた。
[評価基準] ○:横シール外観が良好であり、耐圧評価で破袋や水漏れがなく、発泡が見られなかった。 △:横シール外観が良好であるが、耐圧評価で破袋や後退、水漏れがあった。×:耐圧評価で破袋や水漏れがないが、横シール外観にシワ、発泡が見られた。
(3)充填後の横シール強度評価 (1)の条件で充填した液体小袋サンプルの横シール部を充填加工方向に15mm幅でサンプリングし、オリエンテック社製テンシロンを用いて、180°の角度、300mm/分の速度にて液体小袋サンプルの横シール強度を測定した。
[中間層用樹脂組成物を押出ラミ加工した際のネックイン評価]
押出ラミネート装置として口径40mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、ダイス幅400mm、ダイリップ開度0.8mmで引き取り加工速度が30m/分の場合に被覆厚みが20μmになるように押出量を調整した際に、ダイス幅と得られた被覆膜の幅の差(単位:mm)をネックインとした。ネックインが小さいほど、有効製品幅が広くなり、押出ラミネート加工性が優れる。
[中間層用樹脂組成物を押出ラミ加工した際の押出負荷評価]
押出ラミネート装置としてL/D=26、圧縮比=4.0のスクリューを備えた口径40mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、ダイス幅400mm、ダイリップ開度0.8mmで引き取り加工速度が30m/分の場合に被覆厚みが20μmになるように押出量を調整した際の押出機モーター負荷量(単位:A)を測定した。モーター負荷量が小さいほど押出ラミネート加工性が優れる。
[実施例]
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成;
ジメチルシリレン(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル
)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報[0159]〜[0165]記載の方法に従い合成した。
(2)オレフィン重合用触媒の合成;
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(3−メチル−4−(2−(5−メチル)−フリル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド369mgを入れ、脱水トルエン80.4mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液51
.6mlを加え30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで粉状触媒を得た。
(3)エチレン系共重合体の製造;
上記(2)で得た粉状触媒を使用してエチレン・1−ヘキセンの気相連続共重合を行った。すなわち、温度75℃、ヘキセン/エチレンモル比1.76%、水素/エチレンモル比1.31%、窒素濃度を33mol%、エチレン分圧を0.45MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ−(分散剤)1.8kg)に該粉状触媒を0.46g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)のヘキサン稀釈溶液0.03mol/Lを15.7ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は303g/時間となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に、エチレン系共重合体;PE−1が得られた。エチレン系共重合体(PE−1)のMFRと密度は各々5.8g/10分、0.918g/cmであった。PE−1の材料物性を測定した結果を、表1に示す。
(4)中間層用樹脂組成物の製造
エチレン系共重合体(PE−1)80重量%に対し、酸化防止剤(BASFジャパン(株)製イルガノックス1076 0.02重量%、BASFジャパン(株)製イルガフォスP−EPQ 0.02重量%)と高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(HPLD−1(MFR:4.0g/10分、密度:0.918g/cm3))を20重量%添加し、単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて押出温度180℃で押し出すことで評価用にペレタイズした。
[評価用フィルムの作製]
押出ラミネート装置を用い、幅300mm、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡社製ハーデンフィルムN2102)を基材層として、その上に、2液系アンカーコート剤(大日精化製セイカダイン溶液)をボウズロールにて塗工しながら、またラミネート部にてオゾン吹きつけを行いながら、中間層用樹脂組成物を引取り速度30m/分、被覆厚み20μmで溶融押出しラミネート加工を行い、中間層を積層した。押出ラミネート装置は、口径40mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅400mm、ダイリップ開度0.8mmで引き取り加工速度が30m/分の場合に被覆厚みが20μmになるように押出量を調整した。さらにこの中間層の上に、同じ押出ラミネート装置を用いシーラント層材料のエチレン・α−オレフィン共重合体組成物(日本ポリエチレン株式会社製 カーネルKC460S(MFR:8.0g/10分、密度:0.905g/cm))を押出樹脂温度300℃、引き取り速度30m/分、被覆厚み25μmで溶融押出しラミネート加工を行いシーラント層を積層した。加工後の積層フィルムを40℃のオーブン内にて48時間のエージングを行った後、幅100mmにスリットすることで評価用の包装用フィルムを得た。成形性、製品物性の測定結果を表2に示す。
[比較例1]
メタロセン触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(MFR=16g/10分、密度=0.911g/cmのエチレン・ヘキセン−1共重合体;PE−2)を73重量%に対し、酸化防止剤(BASFジャパン(株)製イルガノックス1076 0.02重量%、BASFジャパン(株)製イルガフォスP−EPQ 0.02重量%)と高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(HPLD−2(MFR:1.5g/10分、密度:0.919g/cm))27重量%をブレンドした材料を中間層に用い、実施例と同様にして中間層用樹脂組成物、及び包装用フィルムを得た。PE−2の材料物性の測定結果を表1に示す。また、包装用フィルムの成形性、製品物性の評価結果を表2に示す。
[比較例2]
メタロセン触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(MFR=9.0g/10分、密度=0.918g/cmのエチレン・ヘキセン−1共重合体;PE−3)を80重量%に対し、酸化防止剤(BASFジャパン(株)製イルガノックス1076 0.02重量%、BASFジャパン(株)製イルガフォスP−EPQ 0.02重量%)と高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(HPLD−1(MFR:4.0g/10分、密度:0.918g/cm))20重量%をブレンドした材料を中間層に用い、実施例と同様にして中間層用樹脂組成物、及び包装用フィルムを得た。PE−3の材料物性の測定結果を表1に示す。また、包装用フィルムの成形性、製品物性の評価結果を表2に示す。
Figure 2018115248
Figure 2018115248
[評価]
実施例のフィルムは表2に示されるように、充填時の外観が良好であり、横シール温度が低温から高温まで幅広い温度範囲で高速液体充填が可能であった。さらに横シール温度が低温から充填できるにも関わらず、液体充填後の横シール強度は充填温度が更に5℃高い時の比較例1、2同等のシール強度を示した。
一方、比較例1は、表1に示す通りPE−2のg値、g値、Mw/Mn値、Mz/Mw値が低く、PE−2を用いた中間層用樹脂組成物の密度は実施例と比較して低いにも関わらず、表2に示す通り、実施例と比較して低温シール性に劣るばかりでなく、押出ラミネート加工特性も劣る。
また、比較例2は、表1に示す通りPE−3のg値、g値、Mw/Mn値、Mz/Mw値が低く、PE−3を用いたエチレン系樹脂組成物のMFRは実施例と比較して高く、密度は実施例同等であるにも関わらず、表2に示す通り実施例と比較してシール温度範囲が劣るばかりでなく、押出ラミネート加工特性、特に押出負荷が高い欠点が示された。
本発明は自動充填機での液体や粘体用の包装袋等の包装材料として、特定の組成及び物性を有するエチレン系重合体を含むエチレン系樹脂組成物を中間層として用いることで、押出ラミネート生産性に優れ、ヒートシール強度が高く、低温から高温まで幅広いシール温度範囲で高速充填が可能なことから、各種包装用フィルムに使用される。特に液体包装袋として有用である。

Claims (13)

  1. 基材層(I)、中間層(II)及びシーラント層(III)を少なくとも有する包装用フィルムの中間層(II)に用いる中間層用樹脂組成物であって、下記の条件(A−1)〜(A−4)を満足するエチレン系重合体と高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを合わせて100重量%となるように配合したエチレン系樹脂組成物であり、条件(B−1)及び(B−2)を満足することを特徴とする中間層用樹脂組成物。
    エチレン系重合体の条件;
    (A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分である。
    (A−2)密度が0.895〜0.940g/cmである。
    (A−3)昇温溶出分別(TREF)による0℃以下で溶出する成分の割合(Y)が0.8重量%未満である。
    (A−4)示差屈折計、粘度検出器、及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’における、分子量10万から100万の間での最低値(g)が0.20〜0.40である。
    組成物全体の条件;
    (B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が1〜50g/10分である。
    (B−2)密度が0.895〜0.940g/cmである。
  2. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−5)を満足することを特徴とする、請求項1に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−5)前記分岐指数g’の分子量10万での値(g)が0.50〜0.75である。
  3. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−6)を満足することを特徴とする、請求項1又は2に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−6)昇温溶出分別(TREF)による85℃以上で溶出する成分の割合(X)が1重量%を超え、70重量%未満である。
  4. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−7)を満足することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−7)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布Mw/Mnが3.0〜10.0である。
  5. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−8)を満足することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−8)GPCにより測定される分子量分布Mz/Mwが2.0〜9.0である。
  6. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−9)を満足することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−9)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)、及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち、分子量が重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40重量%を超え、80重量%未満である。
  7. 該エチレン系重合体が下記の条件(A−10)を満足することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
    (A−10)前記W、及びCFCにより測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高温で溶出する成分のうち分子量が重量平均分子量以上の成分の割合(W)の差(W−W)が、−4重量%を超え、30重量%未満である。
  8. 該エチレン系重合体が、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
  9. 該エチレン系重合体が、成分(i)、(ii)及び(iii)を含むオレフィン重合用触媒によって製造されるエチレン系重合体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物。
    成分(i):インデニル環上に五員環構造置換基を有する、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物
    成分(ii):成分(i)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物
    成分(iii):無機化合物担体
  10. 基材層(I)、中間層(II)及びシーラント層(III)を少なくとも有する包装用フィルムであって、該中間層(II)に用いる中間層用樹脂組成物として、請求項1〜9のいずれか一項に記載の中間層用樹脂組成物を用いたことを特徴とする包装用フィルム。
  11. 該中間層(II)、該シーラント層(III)が、押出ラミネーション法または共押出ラミネーション法により積層されることを特徴とする請求項10に記載の包装用フィルム。
  12. 液体を含む内容物を包装するためのフィルムであることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の液体包装用フィルム。
  13. 請求項10又は請求項11に記載の包装用フィルムを用いて袋状に形成した液体包装袋。
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