JP2008231265A - エチレン系共重合体よりなるフィルムまたはシートならびに積層体 - Google Patents

エチレン系共重合体よりなるフィルムまたはシートならびに積層体 Download PDF

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Tsutomu Tazaki
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Takahiro Akashi
崇弘 明石
Yasuo Sato
康雄 佐藤
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Abstract

【課題】透明性、衝撃強度および引裂強度、シール強度と耐ブロッキング性とのバランスに優れた、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの新規の共重合体より成形されるフィルムまたはシートおよび積層体を提供すること。
【解決手段】特定の要件を同時に満たす、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンとの共重合体より成形されてなるフィルムまたはシートおよび積層体であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンとのエチレン系共重合体からなり、透明性、衝撃強度および引裂強度、シール強度と耐ブロッキング性とのバランスに優れたフィルムまたはシート、ならびに積層体に関する。
エチレン系共重合体は、種々の成形方法により成形され、多方面の用途に供されている。そして、成形性や成形品の性能に特徴が付与されたさまざまなエチレン系共重合体が開発されている。
高圧法低密度ポリエチレンは、溶融張力が大きく成形性が良いためフィルムや中空容器などの用途に供されている。しかし高圧法低密度ポリエチレンは、数多くの長鎖分岐構造を有するため、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に劣るという問題があった。
チーグラー触媒を用いて得られるエチレン系共重合体は、高圧法低密度ポリエチレンに比べ、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に優れている。しかし、組成分布が広いため、フィルムなどの成形体がべたついてしまい、耐ブロッキング性などに劣る。エチレン系共重合体の密度を高くすれば、耐ブロッキング性は改善されるが、その場合、低温ヒートシール性や柔軟性が悪化するという問題があった。
このような問題を解決するため、均一触媒(シングルサイト触媒)であるメタロセン触媒を用いた様々なエチレン系共重合体が開示されている。
特許文献1(特開2005―97481号公報)にはラセミ-エチレンビス(1―イン
デニル)ジルコニウムジフェノキシドからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系共重合体が、特許文献2(特開平9―111208号公報)にはメタロセン化合物を重合触媒として用いて得られたエチレン系共重合体(エクソンケミカル社製、商品名EXACT)が、特許文献3(特開平11―269324号公報)にはエチレン-ビス(
4,5,6,7―テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルモキサ
ンとからなる触媒の存在下で高圧イオン重合により得られたエチレン系共重合体が、特許文献4(特開平2002―3661号公報)にはビス(n―ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドとメチルアルモキサンとからなる触媒を用いて得られたエチレン系共重合体が開示されている。これらのエチレン系共重合体は、従来のチーグラー触媒を用いて得られたエチレン系共重合体に比べると組成分布は狭くなっているものの、ブロッキング性を完全解消するためには依然として組成分布は広い。
本発明者は、このような状況に鑑み研究した結果、特定のMFR範囲、および特定の密度範囲を満たし、分子量分布が特定の範囲を満たし、温度上昇溶離分別(TREF)によって規定されるH/Wと密度とが特定の関係を満たし、好ましくは[η]とMFRとが特定の関係を満たすエチレン系共重合体が、成形体としての耐ブロッキング性、低温ヒートシール性に特に優れ、かつ透明性、衝撃強度、引裂強度および機械的強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
特開2005−97481号公報 特開平9−111208号公報 特開平11−269324号公報 特開2002−3661号公報
本発明は、従来公知のフィルムまたはシートと比較して、透明性、衝撃強度および引裂強度、シール強度と耐ブロッキング性とのバランスに優れた、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの新規エチレン系共重合体より成形されるフィルムまたはシートおよび積層体を提供することを課題とする。
本発明のフィルムまたはシートは、エチレンと、炭素原子数4〜10のα−オレフィンとを共重合して得られる、下記要件(I)〜(IV)を同時に満たすエチレン系共重合体からなることを特徴とする。
(I)190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1
0〜20 g/10分の範囲である。
(II)密度(D)が870〜925 kg/m3の範囲である。
(III)GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲である。
(IV) 温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピ
ーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D)とが、要件(I)のMFR値に応じて下記関係式(Eq−1)〜(Eq−3)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−14.00≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.21 …(Eq−1)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−14.02≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.30 …(Eq−2)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.10≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.40 …(Eq−3)
また、前記エチレン系共重合体が、さらに下記要件(V)を満たすことを特徴とするフィルムまたはシートである。
(V)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq−4)を満たす。
−0.21×Log10MFR+0.16≦ Log10[η]≦−0.21×Log10MFR+0.31 …(Eq−4)
さらに、上記フィルムまたはシートとの層と少なくとも一種の基材層とを有することを特徴とする積層体であり、その積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部がヒートシールされている容器であることを特徴とする。
本発明は、透明性、衝撃強度および引裂強度、シール強度と耐ブロッキング性とのバランスに優れた、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィンとの共重合体より成形されるフィルムまたはシートであって、上記フィルムまたはシートと1以上の基材層とを含む積層体を提供することができる。
次に本発明のフィルムまたはシート、およびに積層体、ならびにそれらの製造方法等について具体的に説明する。
〔エチレン系共重合体〕
本発明のエチレン系共重合体は、エチレンと炭素原子数4〜10のα−オレフィン、好ましくはエチレンと炭素原子数6〜10のα−オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素原子数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。α―オレフィンの炭素数が4以上の場合、α−オレフィンが結晶中に取り込まれる確率が低くなるため(Polymer、VOL31、1999ページ、1990年)、機械的強度に優れる。α−オレフィンの炭素原子数が10以下の場合、流動の活性化エネルギーが小さく、成形時の粘度変化が小さい。
エチレン系共重合体中のα−オレフィンの種類は、通常10mmφの試料管中で約200mgのエチレン系共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた飼料の13C−NMRスペクトルを、温度120℃、周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2秒、45°パルス幅6μsecの測定条件下で測定して同定することができる。
このようなエチレン系共重合体は下記要件(I)〜(IV)を満たしている。
(I)190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1
0〜20 g/10分、好ましくは0.50〜20.0 g/10分、より好ましくは0.50〜10.0 g/10分の範囲である。
エチレン系共重合体のメルトフローレート(MFR)が0.10 g/10分以上であ
ると、せん断粘度が高すぎず成形性が良好である。また、メルトフローレート(MFR)が
20g/10分以下であると、得られるエチレン系共重合体の引張強度が良好である。
メルトフローレート(MFR)は、分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる傾向がある。また、エチレン系共重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Kazuo Soga、KODANSHA“CATALYTIC OLEFIN PO
LYMERIZATION”、376頁(1990年))。このため、水素/エチレンを増減させることで、本発明の要件(I)の上限ないし下限のメルトフローレート(MFR)を有するエチレン系共重合体を製造することが可能である。
本発明において、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238−89に従
い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定された値である。
(II)密度(D)が870〜925kg/m3、好ましくは880〜920kg/m3、より好ましくは880〜915kg/m3、特に好ましくは885〜910kg/m3の範囲にある。
密度(D)が870kg/m3以上の場合、得られるエチレン系共重合体の耐ブロッキ
ング性が良好であり、密度(D)が925kg/m3以下の場合、得られるエチレン系共
重合体の低温シール性が良好である。
密度はエチレン系共重合体のα−オレフィン含量に依存しており、α−オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α−オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系共重合体中のα−オレフィン含量は、重合系内におけるα−オレフィンとエチレンとの組成比(α−オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えばW
alter Kaminsky、Makromol.Chem.193、606頁(1992年))。このため、α−オレフィン/エチレンを増減させることで、本発明の要件(I
I)の上限ないし下限の密度を有するエチレン系共重合体を製造することが可能である。
密度(D)は、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100 kg/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にてプレス成形した厚さ0.5
mmのプレスシートを測定サンプルとし、密度勾配管で測定して求められる。
(III)GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下、好ましくは1.50以上2.50以下、さらに好ましくは1.50
以上2.20以下、特に好ましくは1.60以上2.10以下の範囲にある。
Mw/Mnが1.50以上の場合、得られるエチレン系共重合体の成形性が良好であり、Mw/Mnが3.00以下の場合、得られるエチレン系共重合体の衝撃強度が良好である。
本発明において、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)はウォーターズ社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel
GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600 mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジ
クロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0 ml /分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500μリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw≦1000およびMw≧4×106については東ソー社製を用い、1000≦M
w≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバー
サル校正して、ポリエチレンに換算した値である。
(IV)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D)とが、要件(I)のMFR値に応じて下記関係式(Eq−1)〜(Eq−3)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−14.00≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.21 …(Eq−1)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−14.02≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.30 …(Eq−2)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.10≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.40 …(Eq−3)
好ましくは、下記関係式(Eq−1’)〜(Eq−3’)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−13.83≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.21
…(Eq−1’)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−13.92≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.30
…(Eq−2’)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−14.02≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.40
…(Eq−3’)
より好ましくは、下記関係式(Eq−1’’)〜(Eq−3’’)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−13.78≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.31
…(Eq−1’’)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−13.87≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.40
…(Eq−2’’)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−13.97≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.50
…(Eq−3’’)
特に好ましくは、下記関係式(Eq−1’’’)〜(Eq−3’’’)のいずれかを満たす。
[0.10≦MFR≦1.00の場合]
0.0163×D−13.73≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.41
…(Eq−1’’’)
[1.00<MFR≦10.0の場合]
0.0163×D−13.82≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.50
…(Eq−2’’’)
[10.0<MFR≦100の場合]
0.0163×D−13.92≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.60
…(Eq−3’’’)
温度上昇溶離分別(TREF)では、α−オレフィン含量の多い成分ほど低温にて溶出し、α−オレフィン含量の少ない成分ほど高温にて溶出する。H/Wは温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピーク強度の強いピークの高さ(H)と、最もピーク強度の強いピークの1/2の高さにおける幅(W)との比で表されるので、同等の密度のエチレン系共重合体で比較した場合、H/Wが大きいほどα−オレフィンは均一に分子鎖中に導入されており、組成分布は狭くなる。このため、Log10(H/W)が、0.10≦MFR≦1.00の場合に0.0163×D−14.00以上、1.00<MFR≦10.0の場合に0.0163×D−14.02以上、10.0≦MFR≦100の場合に0.0163×D−14.10以上になると、得られるエチレン系共重合体の組成分布が狭く、べたつき成分が発生しないため、耐ブロッキング性に優れる。
H/Wは得られるエチレン系共重合体の組成分布に強く依存しており、この組成分布は触媒の活性点が均一になれば狭くなり、不均一になれば広くなることが知られている。
なお、本発明において、H/Wは以下のようにして決定した。
まず、温度上昇溶離分別(TREF)による溶出曲線を、三菱油化社製クロス分別クロマトグラフ装置CFCT−150A型を用いて以下のようにして測定した。測定サンプルを溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用い、濃度が4 mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。試料溶液は、TREF分離カラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された装置付属のステンレス製カラム、容量は0.88ml、配管容量は0.07ml)に0.4ml注入される。次に、試料溶液を1℃/minの速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、不活性担体にコーティングさせる。このとき、高結晶性成分から低結晶性成分の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREF分離カラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが、1ml/分の流速でTREF分離カラムからSEC分離カラム(昭和電工社製 Shodex AT−806MS×3本)へ注入される。SEC分離カラム
内で分子サイズでの分別が行われている間に、TREF分離カラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持される。溶出温度は以下の温度で段階的に昇温される。
[溶出温度]0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃
各温度で溶出した成分の分子量を測定し、汎用較正曲線を使用して、ポリエチレン換算分子量を求めた。SEC温度は140℃であり、データサンプリング時間は0.50秒である。SEC分離カラムを通過した試料溶液は、赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μm,2924cm-1)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られる。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算される。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算される。
次に、得られた微分溶出曲線の作図を、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行い、この微分溶出曲線のピーク高さ(mm)を1/2高さの幅(mm)で除した値をH/Wとした。
本発明に係るエチレン系共重合体は、上記要件(I)〜(IV)に加えて更に下記要件(V)を満たすことが好ましい。
(V)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq−4)を満たす。
−0.21×Log10MFR+0.16≦Log10[η]≦−0.21×Log10MFR
+0.31 … (Eq−4)
この極限粘度([η])とメルトフローレート(MFR)との関係は、分子鎖中の長鎖分岐構造に強く支配されることが知られている(例えば白山健三、高分子化学、Vol.28、No.310、156−160頁(1971年))。同じメルトフローレート(MFR)のエチレン系共重合体で比較した場合、長鎖分岐が導入されると溶液中での分子鎖の広がりが小さくなるため、極限粘度([η])は小さくなる。Log10[η]が(−0.21×Log10MFR+0.26)以上の場合、分子鎖中に長鎖分岐が存在していないため、引裂強度に優れる。
したがって要件(V)については、上記エチレン系共重合体を成形体用途に展開する場合に、どのような特性を求めるかによって好ましい態様が二分される。すなわち、エチレンとともに共重合反応に供されるα−オレフィンに起因する短鎖分岐(例えば、α−オレフィンとして1―ブテンを用いる場合は、エチル基が短鎖分岐として導入される。)が主
なる分岐構造であり、末端にビニル基を有するマクロモノマーを経由して生成する長鎖分岐構造をほとんど含有しないエチレン系共重合体(以下、「短鎖分岐型エチレン系共重合体」と略称する場合がある。)を所望する場合は、好ましい要件(V)は下記関係式(Eq―4a)で表される範囲を満たすエチレン系共重合体が好適である。
―0.21×Log10MFR+0.26≦Log10[η]≦―0.21×Log10MFR+0.31 … (Eq―4a)
一方で、マクロモノマーを経由して生成する長鎖分岐構造含有量を少量含有するエチレン系共重合体(以下、「長鎖分岐型エチレン系共重合体」と略称する場合がある。)を所
望する場合は、好ましい要件(V)は下記関係式(Eq―4b)で表される範囲を満たすエチレン系共重合体が好適である。このような長鎖分岐型エチレン系共重合体は、短鎖分岐型エチレン系共重合体に比べて溶融状態においてゆっくりとした変形に対して高い弾性を示し、良成形加工性が求められる分野に好んで応用することができる。
―0.21×Log10MFR+0.16≦Log10[η]<−0.21×Log10MFR+0.26 …(Eq―4b)
後述の実施例のような配位重合の場合、エチレン系共重合体中の長鎖分岐構造は、β−水素脱離反応により生成した末端ビニル基を有する分子鎖(マクロモノマー)が、再挿入することにより生成すると考えられている。このため、溶液中のマクロモノマー濃度とエチレン濃度との比([マクロモノマー]/[エチレン])を増減させることで、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増減し、その結果、本発明の要件(V)の上限ないし下限の極限粘度[η]を有するエチレン系共重合体を製造することが可能である。一般的に[マクロモノマー]/[エチレン]が高いとエチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加し、[マクロモノマー]/[エチレン]が低いとエチレン系共重合体中の長鎖分岐量は低下する。溶液中の[マクロモノマー]/[エチレン]を増減させる手法には具体的には以下のような方法が挙げられる。
[1]重合温度
重合温度が高いほどβ-水素脱離反応は起こりやすくなる。そのため、重合温度を高くす
れば、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
[2]ポリマー濃度
溶液中のポリマー濃度を高くすれば、相対的にマクロモノマー濃度も高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
[3]エチレン転化率
エチレン転化率を高くすれば、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。
[4]溶媒種
重合溶媒を低沸点の溶媒にすると、溶液中のエチレン濃度が低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が大きくなり、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量は増加する。他にも、β−水素脱離反応を制御する以外にAlへの連鎖移動反応等を制御することによって[マクロモノマー]/[エチレン])を増減させ、エチレン系共重合体中の長鎖分岐量を変化させることもできる。
極限粘度〔[η](dl/g)〕はデカリン溶媒を用い、以下のように測定した。エチレン系共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηSPを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηSPを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηSP/Cの値を極限粘度として求める。すなわち、極限粘度[η]は下記式で表される。
[η]=lim(ηSP/C) (C→0)
〔重合触媒〕
本発明に係るエチレン系共重合体は、例えば
(A)下記一般式[I]で表される架橋型メタロセン化合物、並びに
(B)(b―1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(b―2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(b―3)有機アルミニウム化合物
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(助触媒と呼ぶ場合がある)とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンおよびα―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマーを120〜300℃の温度で溶媒の共存下で溶液重合(以下の説明では、「高温溶液重合」と呼ぶ場合がある。)することによって製造することができる。しかしながら本発明に関わるエチレン系共重合体の製造方法は、本願請求項で定義したエチレン系共重合体を満たす限り上記製造方法には何ら限定されるものではない。例えば一般式[I]とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良いし、前記(B)成分とは異なる助触媒を使用してもよいし、公知の二種類以上のエチレン系共重合体を反応器ブレンドや物理ブレンド等の手法によって調製してもよい。
Figure 2008231265
(上記一般式[I]において、Mは遷移金属を表し、pは遷移金属の原子価を表し、Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれは水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R1およびR2は同一でも異なっていてもよいMに配位したπ電子共役配位子を表し、そしてQは2個のπ電子共役配位子R1とR2とを架橋する2価の基を表す。)
一般式[I]中、Mで表される遷移金属としては、たとえば、Zr、Ti、Hf、V、Nb、TaおよびCrが挙げられ、好ましい遷移金属はZr、TiまたはHfであり、さらに好ましい遷移金属はZrまたはHfである。
一般式[I]中、R1およびR2で表されるπ電子共役配位子としては、η−シクロペンタジエニル構造、η−ベンゼン構造、η−シクロヘプタトリエニル構造、およびη−シクロオクタテトラエン構造を有する配位子が挙げられ、特に好ましい配位子はη−シクロペンタジエニル構造を有する配位子である。η−シクロペンタジエニル構造を有する配位子として、たとえば、シクロペンタジエニル基、インデニル基、水素化インデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシなどの炭化水素基、トリアルキルシリル基などの炭化水素基含有シリル基、鎖状または環状アルキレン基などでさらに置換されていてもよい。
一般式[I]中、Qで表されるR1とR2とを架橋する基は、2価の基であれば特に限定されないが、たとえば、直鎖または分枝鎖アルキレン基、非置換または置換シクロアルキレン基、アルキリデン基、非置換または置換シクロアルキリデン基、非置換または置換フェニレン基、シリレン基、ジアルキル置換シリレン基、ゲルミル基、ジアルキル置換ゲルミル基などが挙げられる。
後述する実施例においては、上記一般式[I]を満たすメタロセン化合物としてジ(p―トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオ
レニル)ジルコニウムジクロリドに代表されるメタロセン錯体を用いているが、本発明に
関わるメタロセン化合物はこれに何ら限定されるものではない。
次に前記したメタロセン化合物(A)を、本発明のエチレン系共重合体を製造するための重合触媒成分として使用する際の好ましい実施態様について説明する。
メタロセン化合物(A)を含むメタロセン系触媒を、エチレン系共重合体を製造するためのオレフィン重合触媒として用いる場合、重合触媒は上述のように、(A)前記一般式[I]で表されるメタロセン化合物、並びに(B)(b―1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b―2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b―3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物から構成されるのが好ましい。ここで、触媒成分(B)としては、重合活性と生成オレフィン重合体の性状の視点から、次の[c1]〜[c4]のいずれかが好ましく用いられる。
[c1](b―1)有機アルミニウムオキシ化合物のみ、
[c2](b―1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b−3)有機アルミニウム化合物

[c3](b―2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物と
(b−3)有機アルミニウム化合物、
[c4](b―1)有機アルミニウムオキシ化合物と(b―2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物。
ただし、(A)成分として、一般式[I]においてQがシリレン基であるメタロセン化合物を用いる場合は、(B)成分としては、(b−2)前記メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物が使用されることはなく、従って、上記の好ましい(B)成分;[c1]〜[c4]においても、[c1]と[c2]のみが採用される。
以下、(B)成分を構成しうる各成分について具体的に説明する。
(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用できる。具体的には、下記一般式[II]および/または一般式[III]
Figure 2008231265
(式[II]または[III]中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)で代表される化合物を挙げることができ、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。(一般式[II]または[III]においてRがメチル基である有機アルミニウムオキシ化合物を、以下「メチルアルミノキサン」と呼ぶ場合がある。)
メチルアルミノキサンは、その入手容易性と重合活性の高さからポリオレフィン業界で多用されてきた有機アルミニウムオキシ化合物であるが、飽和炭化水素に溶解し難いことから、止む無く環境負荷が大きなトルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素溶液として用いられてきた経緯がある。このような背景下、飽和炭化水素に溶解するメチルアルミノキサ
ン類縁体が開発されている。このような類縁体としては下記一般式[IV]のような修飾メチルアルミノキサンを例示できる。本発明においては、有機アルミニウムオキシ化合物(b-1)として、このような修飾メチルアルミノキサンも包含する。
Figure 2008231265
(式[IV]中、Rは炭素数2〜20の炭化水素基、m、nは2以上の整数を示す。)
前記一般式[IV]で表わされる修飾メチルアルミノキサンは、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製され(例えば、US4960878やUS5041584等に製造法が開示)、東ソー・ファインケム社等メーカーからトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製された、Rがイソブチル基であるものがMMAO、TMAOといった商品名で商業生産されている(例えば、「東ソー研究・技術報告」第47巻55(2003)参照)。しかし、MMAOやTMAOを飽和炭化水素溶液の形態で、本願発明の高温溶液重合法の技術的範囲外で重合しても、メチルアルミノキサンを超える活性を達成できないことを本願出願人は確認している。本発明に関わる高温溶液重合法によれば、前記一般式[IV]で示される修飾アルミノキサンの飽和炭化水素溶液を用いた場合でも高い重合活性を発現する。
なお本発明に関わる高温溶液重合においては、有機アルミニウムオキシ化合物(b―1)として、特開平2―78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用できる。
さらに、本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(b―1)としては、下記一般式[V]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
Figure 2008231265
(式[V]中、Rcは炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
なお、上述した(b―1)有機アルミニウムオキシ化合物中には若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
(b―2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物
メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b―2)(以下、「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1―501950号公報、特開平1―502036号公報、特開平3―179005号公報、特開平3―179006号公報、特開平3―207703号公報、特開平3―207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、イオン性化合物(b―2)としては、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
本発明において、好ましく採用されるイオン性化合物(b―2)は、下記一般式[VI]で表される化合物である。
Figure 2008231265
… [VI]
式[VI]中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、
アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。Rf〜Riは、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基である。
前記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n―プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n―ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N―ジメチルアニリ
ニウムカチオン、N,N―ジエチルアニリニウムカチオン、N,N―2,4,6―ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N―ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピ
ルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
上記のうち、Re+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N―ジメチルアニリニウムカチオン
、N,N―ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
カルベニウム塩であるイオン性化合物(b―2)としては、具体的には、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5―ジトリフル
オロメチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス
(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5―ジメチルフェニル)カルベニウ
ムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることができる。
アンモニウム塩であるイオン性化合物(b―2)としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N―ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などを挙げるこ
とができる。
トリアルキル置換アンモニウム塩であるイオン性化合物(b―2)としては、具体的に
は、たとえばトリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n―ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p―トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o―トリル)ボレート、トリ(n―ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタ
フルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェ
ニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4―ジメチルフェニル)ボレート、ト
リ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5―ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n―ブチル)アンモニウムテトラキス(4―トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n―ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボ
レート、トリ(n―ブチル)アンモニウムテトラキス(o―トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p―トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o―トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4―ジメチルフ
ェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5―ジメチルフ
ェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4―トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5―ジト
リフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどが挙げられる。
N,N―ジアルキルアニリニウム塩であるイオン性化合物(b―2)としては、具体的
には、たとえばN,N―ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、 N,N―ジメチ
ルアニリニウムテトラキス(ペン多フルオロフェニル)ボレート、 N,N―ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N―ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N―ジエチルアニリニウムテトラキス(ペ
ン多フルオロフェニル)ボレート、 N,N―ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5―
ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N―2,4,6―ペンタメチルアニリニウ
ムテトラフェニルボレート、N,N―2,4,6―ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1―プロピル)アンモニウムテトラキス(ペン多フルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
その他のイオン性化合物(b―2)としては、本出願人によって開示(特開2004―51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(b―2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いることもできる。
(b―3)有機アルミニウム化合物
オレフィン重合触媒を形成する(b―3)有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物、下記一般式[VIII]で表される第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物などを挙げることができる。
a mAl(ORbnpq … [VII]
(式[VII]中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
上記一般式[VII]で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチ
ルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn―ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn―アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec―ブチルアルミニウム、トリtert―ブチルアルミニウム、トリ2―メチルブチルアルミニウム、トリ3―メチルヘキシルアルミニウム、トリ2―エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i―C49xAly(C510z (式中、x、y、zは正の数であり、z≦2x
である。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式Ra 2.5Al(ORb0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6―ジ―t―ブチル―4―メチルフェノキ
シド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
2AlRa 4 … [VIII]
(式[VIII]中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。このような化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154 などを例示することができる。
また、上記一般式[VII]で表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
入手容易性の点から、(b―3)有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、例えば触媒成分(A)および触媒成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法を例示することができる。
上記方法においては、各触媒成分の2つ以上が予め接触されていてもよい。
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと炭素数4〜10のα―オレフィンとの共重合を行い、本発明のエチレン系共重合体を製造する場合、触媒成分(A)は
、反応容積1リットル当り、通常10―9〜10―1モル、好ましくは10―8〜10―2モルになるような量で用いられる。
成分(b―1)は、成分(b―1)と、成分(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(b―1)/M]が通常0.01〜5,000、好ましくは0.05〜2,000となるような量で用いられる。成分(b―2)は、成分(b―2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の全遷移金属(M)とのモル比[(b―2)/M]が、通常10〜5,000
、好ましくは20〜2,000となるような量で用いられる。成分(b―3)は、成分(
b―3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b―3)/M]が、通常1〜10000、好ましくは1〜5000となるような量で用いられる。
〔重合方法〕
本発明に係る高温溶液重合では、上述のようなメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素数4〜10のα―オレフィンとの共重合を行うことによって、コモノマー含量が高く、組成分布が狭く、分子量分布が狭いエチレン系共重合体を効率よく製造できる。ここで、エチレンと、炭素数4〜10のα―オレフィンとの仕込みモル比は通常、エチレン:α―オレフィン=10:90〜99.9:0.1、好ましくはエチレン:α―オレフィン=30:70〜99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α―オレフィン=50:50〜
99.9:0.1である。
炭素数4〜10のα―オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα―オレフィン、例えばプロピレン、1―ブテン、2―ブテン、1―ペンテン、3―メチル―1―ブテン、1−ヘキセン、4―メチル―1―ペンテン、3―メチル―1―ペンテン、1―オクテン、1−デセン、1―度で線などを挙げることができる。本発明の高温溶液重合において使用できるα―オレフィンは極性基含有オレフィンも包含する。極性基含有オレフィンとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸などのα,β―不飽和
カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩等の金属塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエス
テル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類などを挙げることができる。また、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエン;芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o―メチルスチレン、m―メチルスチレン、p―メチルスチレン、o, p―ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p―クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン類;および3―フェニルプロピレン、4―フェニルプロピレン、α―メチルスチレンなどを反応系に共存させて高温溶液重合を進めることも可能である。以上述べたα―オレフィンの中では、1―ブテン、1−ヘキセン、4―メチル―1―ペンテンおよび1―オクテンが好ましく用いられる。また本発明に関わる高温溶液重合方法においては、炭素原子数が4〜10、好ましくは3〜20の環状オレフィン類、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5―メチル―2―ノルボルネンなどを併用してもよい。
本発明に関わる「溶液重合」とは、ポリマーの融点以上の温度で後述する不活性炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。本発明に関わる溶液重合における、重合温度は通常120℃〜300℃、好ましくは130℃〜250℃、更に好ましくは130℃〜200℃であり、前記したように、本明細書では「高温溶液重合」ともいう。
本発明に関わる高温溶液重合においては、重合温度が120℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下するので生産性の点で実用的でない。また、120℃以上の重合温度
領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、得られるオレフィン重合体の高分子量化が達成できる。しかし、重合温度が300℃を超えると、得られるポリマーが劣化する場合があるので好ましくない。また本発明に関わる高温溶液重合において好ましく製造されるエチレン系共重合体の性状の視点からは、重合温度が120〜200℃の領域において、フィルム等多くの産業分野で好適に用いられる、後述のエチレン系共重合体を効率良く生産できるのである。重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン系共重合体の分子量は、本発明の範囲内において、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する触媒成分(B)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するエチレン系共重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。
本発明に関わる高温溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なおベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も本発明の高温溶液重合に関わる「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。前記したように、本発明に係る高温溶液重合においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素溶解タイプの有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン系共重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となった。すなわち、本発明に関わる高温溶液重合方法は、環境負荷を軽減化でき人体健康への影響を最小化できるという特徴も有するのである。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系共重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
〔積層体〕
本発明の積層体は、上記エチレン系共重合体からなるフィルムまたはシートの層と、少なくとも一種の基材層とを有する積層体であって、好ましくは、少なくとも一方の表面に上記エチレン系共重合体より成形されてなるフィルムまたはシートを有する。
積層体を構成する基材層に用いられる素材としては、例えば、樹脂、紙、バリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コーティングフィルムなど)等が用いられる。
基材層を構成する樹脂は、容器 としての性能を満たすことが好ましく、フィルム成形
できる分子量と、透明性、柔軟性、耐衝撃性等の物性を有している。
上記樹脂の例として、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと1−ブテンや1−ペンテン等の長鎖オレフィンモノマーとの共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレンホモポリマー、高結晶化度プロピレンホモポリマー、プロピレン/エチレンランダム共重合体、プロピレン/エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂;エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/n−ブチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられてもよいし
、2種類以上が併用されてもよい。さらに従来公知の素材を用いることもできる。
基材層は必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、その他の添加剤などを配合してもよく、これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の積層体の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは10〜150μmである。
〔容器〕
本発明の容器は、上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部がヒートシールされていることを特徴とする。具体的には、例えば、水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチ等)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用等の各種包装用フィルム、輸液バック、ハウスフィルム等の農業用資材等に好適である。
本発明の容器 は、内容物の重量を支え、外部からの衝撃に耐えるために、層厚を30
〜300μm、好ましくは50〜200μmとすることが望ましい。
〔フィルムまたはシートならびに積層体の成形方法〕
本発明に係るエチレン系共重合体は、成形性に優れ、これを加工することにより、機械的強度に優れた成形体、好ましくはフィルムまたはシートが得られる。
本発明のエチレン系共重合体は、従来公知の方法により成形加工することができ、たとえば、一般的なフィルム成形やブロー成形、インジェクション成形、インジェクションブロー成形及び押出成形、延伸(一軸延伸、チューブラー同時二軸延伸、テンター法逐次二軸延伸およびテンター法同時二軸延伸など)などの方法により所望の形状に加工することができる。
フィルムまたはシートの成形としては、押出ラミネート成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層構成とすることでさらに様々な機能を付与することができる。積層体の場合には、前記各成成形法における共押出法が挙げられる。一方押出ラミネ-ト成形やドライラミネ-ト法のような貼合ラミネート成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コーティングフィルムなど)との積層が可能である。ブロー成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
本発明のエチレン系共重合体は、直鎖状ポリエチレン(炭素原子数5以下のα-オレフィンとエチレンの共重合体)または高圧法低密度ポリエチレンにブレンドすることにより、
衝撃強度、低温ヒートシール性、ホットタック性、透明性を改良することができる。
〔実施例〕
次に本発明のフィルムまたはシートについて実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例で使用したフィルムまたはシートの成形方法と成形条件を以下に示す。
<フィルムの成形方法>
下記の成形条件で空冷インフレーション成形を行い、厚さ40μm、幅320mmの単層フィルムを製造した。
<フィルムの成形条件>
モダンマシナリー製50mmφインフレーション成形機を用い、スクリューとしてバリアタイプスクリュー、ダイスは100mmφ(径)、2.0mm(リップ幅)のものを用い、エアーリングは2ギャップタイプ、押出し量は28.8Kg/hrとし、引取速度を
20m/minとして成形した。
上記方法により成形したフィルムまたはシートを、以下の項目にしたがい、全ヘイズおよび内部ヘイズ、ダートインパクト強度、エルメンドルフ引裂強度(MDおよびTD)およびブロッキング係数を測定した。
<透明性>
成形したフィルムの光学的性質のうち透明性を表す尺度としてヘイズ(%)を測定する。測定は、ASTM D1003にしたがった。内部ヘイズについては、シクロヘキサノールを充填したセルにフィルムを入れ、全ヘイズ同様に日本電色製ヘイズメーターを使用して測定を実施した。
<衝撃強度>
衝撃強度としてダートインパクト強度をASTM D1709にしたがい、下記条件にて測定した。
条件:試験片をエアークランプ方式で締め付け、半球径のダートを一定の高さの位置から落下させ、試験片が50%破壊する荷重(グラム)をグラフから読み取った。一水準の落下回数は10回とした。
<引裂強度>
引裂強度としてエルメンドルフ引裂強度をASTM D1922にしたがい、下記の通り測定した。
軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製:振り子の左端に容量ウェイトB:79gを取り付け)を使用し、フィルムから引裂き方向に長さ63.5mm(長辺)及び引裂き方向と直角方向に幅50mm(短辺)の長方形の試験片を切出し、短辺の中央に端から12.7mmの切り込みを入れて複数枚の試験片を用意した。しかる後、試験機の指針(置き針)が20〜80の範囲に収まるように、試験片を複数枚重ねて予備テストを行い、測定に用いる試験片の枚数を調整した後、引裂試験を行い、以下の式により引裂き強度(N/cm)を求めた。なお、試験機の測定レンジ(R)は200とした。
T=(A×0.001×9.81×R/100)/(t)
ただし、T:引裂強度(N/cm)、A:指針の指した値(g)、t:重ねた試験片の合計厚み(cm)とした。
<ヒートシール強度>
得られたインフレーション成形フィルムのヒートシール強度を、下記の方法にしたがい測定した。
片面加熱バーシーラーを使用し、ヒートシール圧力を2 kg/cm2、ヒートシール時間を0.5秒、シールバーの幅を10 mm、試験片幅を15 mm、剥離角度を180度
、剥離速度を300 mm/分とした。
<耐ブロッキング性>
耐ブロッキング性の指標として、ブロッキング試験の測定を行った。
ASTM−D1893にしたがい、50℃の環境下にてフィルムの内面どおしを10k
g荷重で3日間放置したのち、ブロッキング係数の測定を行った。
〔製造例1〕
モノマーとしてエチレンおよび1―オクテンを使用し、上記方法によってエチレン系共重合体を製造した。詳細を下記に示す。
容積136リットルの連続重合器の一つの供給口に、脱水精製したn-ヘキサンを10.2リットル/hrの割合で、TMAO―341(東ソー・ファインケム社製)のヘキサンスラリー(アルミニウム原子として5mmol/リットル)を0.2リットル/hrの割
合で、ジ(p―トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサン溶液(0.1mmol/リッ
トル)を0.02リットル/hrの割合で、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液
(2mmol/リットル)を2.1リットル/hrの割合で連続的に供給した(合計ヘキ
サン12.5リットル/hr)。同時に連続重合器の別の供給口に、エチレンを4 kg/hrの割合で、水素を10リットル/hrの割合で供給し、また別の供給口に1−オクテンを2 kg/hrの割合で連続供給し、重合温度150℃、全圧3Mpa―G、滞留時
間約75min、攪拌回転数250rpmの条件下で連続溶液重合を行った。
重合器で生成したエチレン/1−オクテン共重合体のヘキサン溶液は、重合器側壁部に設けられた排出口を介して流量約22.4リットル/hrの割合で連続的に排出させ、ジャ
ケット部が8kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導かれた。スチームジャケ
ット付き連結パイプ内で170℃に加温されたエチレン/1−オクテン共重合体のヘキサン溶液は、重合槽内溶液量約28リットルを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた液レベル制御バルブの開度の調節によって、10kg/cm2スチームで加熱された
二重配管内管を通して連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、液レベル制御バルブの直後には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設され、1.0vol%
へキサン希釈溶液として12リットル/hrの速度で注入されて該ヘキサン溶液に合流させた。フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が0.04MPa―G
、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。
その結果、エチレン/1−オクテン共重合体が約3.7kg/hrの生産スピードで得
られた。得られたエチレン/1−オクテン共重合体のMFR(190℃、2.16キログ
ラム)は1.3g/10min、密度は908kg/m3であった。
製造例1で製造したエチレン/1−オクテン共重合体を、上記成形方法により成形してフィルムを作製した。上述の方法により、製造例1で製造したエチレン/1−オクテン共重合体の極限粘度[η]、分子量分布(Mw/Mn)、H/W、および作製したフィルムの全ヘイズおよび内部ヘイズ、ダートインパクト強度、エルメンドルフ引裂強度(MDおよびTD)、ブロッキング係数およびヒートシール強度の測定結果を表1に示す。また、ヒートシール特性の比較として、シール温度に対するシール強度をプロットしたものを図1に示す。
〔比較例1〕
エチレン系共重合体としてプライムポリマー製エボリューSP1520を使用する以外は、実施例1と同様の工程によりフィルムを作製した。測定結果を表1および図1に示す。
〔比較例2〕
エチレン系共重合体としてプライムポリマー製ウルトゼックス1020Lを使用する以
外は、実施例1と同様の工程によりフィルムを作製した。測定結果を表1および図1に示す。
Figure 2008231265
図1は、本発明に係るエチレン系共重合体のヒートシール特性の比較として、シール温度に対するシール強度をプロットしたグラフである。

Claims (4)

  1. エチレンと、炭素原子数4〜10のα−オレフィンとを共重合して得られる、下記要件(I)〜(IV)を同時に満たすエチレン系共重合体からなることを特徴とするフィルムまたはシート。
    (I)190℃における2.16 kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1
    0〜20 g/10分の範囲である。
    (II)密度(D)が870〜925 kg/m3の範囲である。
    (III)GPCで測定した重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.50以上3.00以下の範囲である。
    (IV) 温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、最もピ
    ーク強度の強いピークの高さ(H)と、該ピークの1/2の高さにおける幅(W)との比(H/W)と密度(D)とが、要件(I)のMFR値に応じて下記関係式(Eq−1)〜(Eq−3)のいずれかを満たす。
    [0.10≦MFR≦1.00の場合]
    0.0163×D−14.00≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.21 …(Eq−1)
    [1.00<MFR≦10.0の場合]
    0.0163×D−14.02≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.30 …(Eq−2)
    [10.0<MFR≦100の場合]
    0.0163×D−14.10≦Log10(H/W)≦0.0163×D−13.40 …(Eq−3)
  2. 前記エチレン系共重合体が、さらに下記要件(V)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のフィルムまたはシート。
    (V)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕とメルトフローレート(MFR)とが下記関係式(Eq−4)を満たす。
    −0.21×Log10MFR+0.16≦Log10[η]≦−0.21×Log10MFR
    +0.31 …(Eq−4)
  3. 請求項1または2に記載のフィルムまたはシートの層と少なくとも一種の基材層とを有することを特徴とする積層体。
  4. 請求項3に記載の積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部がヒートシールされていることを特徴とする容器。
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