JP2018112754A - 樹脂フィルム、それを用いた偏光板及び樹脂フィルムの切断加工方法 - Google Patents

樹脂フィルム、それを用いた偏光板及び樹脂フィルムの切断加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザーにより切断加工される樹脂フィルムであって、そのフィルムを構成する高分子材料自体がレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない場合であっても、良好に切断加工できるフィルムを提供し、そのフィルムを偏光子に貼合して偏光板とする
【解決手段】レーザーにより切断加工される樹脂フィルムであって、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、そのレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されている樹脂フィルムが提供される。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、上の樹脂フィルムが保護フィルムとして貼合されている偏光板も提供される。レーザーによりこの樹脂フィルムを切断加工する方法も提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、レーザーにより切断加工される樹脂フィルム、及び、その樹脂フィルムが保護フィルムとして偏光子に貼合されており、レーザーによる切断加工性が改良された偏光板に関するものである。本発明はまた、レーザーによる樹脂フィルムの切断加工方法にも関係している。
樹脂フィルムを所望形状に切断加工する方法として、従来一般には、刃先が鋭利な刃物による切断や金型による打ち抜き加工が採用されている。しかし、特にポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に透明保護層が形成された偏光板に対し、このような機械的な切断加工を行った場合、目には見えない傷や残留応力の不均一化を招くことがあり、耐久性試験後の偏光子に亀裂を生起することがあった。そこで、このような機械的な切断加工に代えて、レーザーによる切断加工を採用する提案がなされている。
例えば、特開 2010-277018号公報(特許文献1)には、偏光子の片面にのみ透明保護層を有する薄型構造の偏光板の切断加工において、レーザーを用いることにより、耐久性試験を行った後も、偏光板を構成する偏光子の端から内側に向かって発生する亀裂が実質的に存在しない偏光板とすることが開示されている。また、特開 2009-167321号公報(特許文献2)には、加工精度に優れ、加工面の品質向上が可能なレーザー加工用フィルムとするため、高分子材料に対し、熱分解の際に吸熱反応を生じる金属水酸化物からなる難燃剤を配合することが開示されている。
しかし、特許文献2に記載の技術では、難燃剤の含有量が、高分子材料100重量部に対して50重量部以上求められており、得られる樹脂フィルムは、切断加工性以外の品質の低下を招来することが多い。
一般にレーザーを物質に当てた場合、その物質がレーザーの発振波長範囲に吸収を持っていれば、その物質の内部でレーザーの吸収が有効に利用できるため、その物質を精度よく加工できる。しかし、その物質がレーザーの発振波長範囲に吸収を持たなければ、レーザーはその物質を透過するにすぎないので、精度のよい加工は望めない。例えば、レーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料からなるフィルムに、レーザーを当てて切断加工しようとすると、フィルム内をレーザーが透過し、レーザーの熱によりフィルムを溶融切断することになるため、切断加工性に問題があった。
特に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の保護フィルムとして、レーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料からなるフィルムを用いた偏光板に対し、レーザーによる切断加工を行おうとすると、積層フィルムである偏光板を構成する偏光子自体はレーザーの発振波長範囲に吸収を持っているが、レーザー発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料からなる保護フィルム層においてはレーザーが透過するため、両者の間で切断加工速度に乖離を生じる。そのため、このような偏光板をレーザーにより精度よく切断加工することはできなかった。
偏光子の保護フィルムとして、シクロオレフィン系樹脂からなるものが、近年急速に使用されるようになってきている。市販されているシクロオレフィン系樹脂の中には、レーザーの発振波長範囲に吸収を示すものもあるが、レーザーの発振波長範囲に吸収を持たないものもある。このような、レーザーの発振波長範囲に吸収を持たないシクロオレフィン系樹脂からなるフィルムを保護フィルムとする偏光板は、上記のとおり、レーザーによる切断加工に問題を生じていた。一方、シクロオレフィン系樹脂フィルムについては、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に対する接着力を向上させる研究も行われており、例えば特開 2012-177890号公報(特許文献3)には、シクロオレフィン系樹脂フィルムの偏光子への接着面を予め所定の有機溶剤で処理してから、接着剤を介して偏光子に貼合することにより、偏光子とシクロオレフィン系樹脂フィルムとの間の接着力を向上させる技術が開示されている。
特開2010−277018号公報 特開2009−167321号公報 特開2012−177890号公報
本発明の課題は、レーザーにより切断加工される樹脂フィルムであって、そのフィルムを構成する高分子材料自体がレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない場合であっても、良好に切断加工できるフィルムを提供することにある。本発明のもう一つの課題は、レーザーによる切断加工性が向上した樹脂フィルムを偏光板に適用することにある。本発明の別の課題は、それ自身ではレーザーによる切断加工が困難な高分子材料を主成分とする樹脂フィルムを、レーザーにより切断加工する方法を提供することにある。
研究の結果、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に対し、その発振波長範囲に吸収を持つ添加剤を配合することが、上記の課題解決に有効であることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明によれば、レーザーにより切断加工される樹脂フィルムであって、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、そのレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されている樹脂フィルムが提供される。
この樹脂フィルムの切断加工に用いるレーザーは、赤外線レーザー、とりわけ炭酸ガスレーザーであるのが好ましい。またそのレーザーは、波長9.4μmのものであることが好ましい。この樹脂フィルムの一つの好ましい形態として、それを構成する高分子材料がシクロオレフィン系樹脂である場合を挙げることができる。この樹脂フィルムを構成する上記の組成物は、上記の高分子材料100重量部に対して上記の添加剤が50重量部未満の割合で配合されていることが好ましい。
また本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、上記の樹脂フィルムが保護フィルムとして貼合されている偏光板も提供される。
さらに本発明によれば、レーザーにより樹脂フィルムを切断加工する方法であって、この樹脂フィルムとして、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、そのレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成された層を有するものを採用する、樹脂フィルムの切断加工方法も提供される。この方法において、樹脂フィルムは、上記の組成物から形成された層が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に貼合された偏光板であることができる。
レーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料からなるフィルムにレーザーを当てると、フィルム内をレーザーが透過してしまうが、上記した本発明の樹脂フィルムは、用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合されているため、レーザーの透過が抑制され、切断加工性が向上したものとなる。
また、この樹脂フィルムを保護フィルムとする本発明の偏光板にレーザーを当てて切断加工すると、積層フィルムである偏光板内において、保護フィルム層中のレーザーの透過が抑制されるため、偏光板としての切断加工性の向上を図ることができる。
さらに、本発明の樹脂フィルムの切断加工方法によれば、それ自身ではレーザーによる切断加工が困難な高分子材料を主成分とする樹脂フィルム、又はその樹脂フィルムを一つの層とする積層フィルムが、精度よく切断加工できるようになる。
後述する実施例で用いたシクロオレフィン系樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”自体(添加剤なし)の吸収スペクトルである。 後述する実施例で添加剤として用いた“Irgafos 168”の吸収スペクトルである。 後述する実施例で添加剤として用いた“Sumisorb 400”の吸収スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、フィルムの切断加工に用いるレーザーについて説明し、その後、そのレーザーにより切断加工される樹脂フィルム、それを用いた偏光板、及び樹脂フィルムの切断加工方法の順に説明を進めていく。
[切断加工に用いるレーザー]
レーザーによる切断加工は、一般に採用されているレーザー光線を用い、そのレーザーを樹脂フィルムに照射することにより、その樹脂フィルムを切断する方法である。レーザーには、赤外線レーザーや紫外線レーザーがあり、いずれも使用可能であるが、一般には赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーには、炭酸ガスレーザーやYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーなどがあり、やはりいずれも使用可能であるが、作業性の観点からは、炭酸ガスレーザーの適用が推奨される。
赤外線レーザーの出力は、切断加工される樹脂フィルムの厚さ、所望の切断速度などにもよるが、通常は10〜400Wの範囲内で使用される。炭酸ガスレーザーには、波長が10.6μmのものと、波長が9.4μmのものがあるが、本発明において対象とする樹脂フィルム及び偏光板の切断加工においては、レーザー波長が9.4μmのものを用いることが推奨される。例えば10.6μm のレーザー波長を用いて切断加工した場合に比べ、9.4μm のレーザー波長を用いて切断加工する場合には、偏光板の切断端面に溶融物が突起したり、溶融変形したりすることがなく、切断端面が美麗になる。それゆえ、液晶セル等の画像表示素子に貼合する際、偏光板を構成するセパレーター(剥離フィルム)の剥離が容易であるとともに、貼合端面も美麗になり、貼合部への空気の巻込みや貼合部の剥がれ等の問題を生じることもないので、好ましい。9.4μmのレーザー波長を用いた場合、その発振波長範囲は、その前後9.1〜9.5μm 程度になることが多い。
[レーザーにより切断加工される樹脂フィルム]
本発明において、レーザーにより切断加工される樹脂フィルムは、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、そのレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成される。
〈高分子材料〉
上記の高分子材料は、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たないものである。用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たないとは、発振波長範囲内に吸収ピークを持たないこと、また、発振波長範囲外の吸収ピークによる吸収が発振波長範囲内まで及ばないことを意味する。高分子材料の吸収は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計で吸収スペクトルを測定することにより、確認できる。
切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料の具体例を挙げると、シクロオレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などがある。特に、偏光子として用いられるポリビニルアルコール系樹脂や、従来から偏光板の保護フィルムとして伝統的に用いられてきたトリアセチルセルロースを代表例とする酢酸セルロース系樹脂フィルムは、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つため、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に酢酸セルロース系樹脂からなる保護フィルムが貼合された偏光板は、レーザーによる切断加工性が良好であった。ところが、偏光板の保護フィルムとして最近急速に普及してきたシクロオレフィン系樹脂フィルムには、通常の切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たないものがあるため、それを保護フィルムとする偏光板は、レーザーによる切断加工性に問題があった。本発明により、それが解決できた。
レーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料は、適宜の市販品を用いることができる。例えば、シクロオレフィン系樹脂であれば、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノア”(ZEONOR)及び“ゼオネックス”(ZEONEX)など(いずれも商品名)を挙げることができる。
〈添加剤〉
以上のような、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、本発明では添加剤を配合するのであるが、その添加剤は、用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ化合物とする。用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ化合物は、発振波長範囲内に吸収ピークを持つものでもよいし、発振波長範囲内には吸収ピークを持たないが、発振波長範囲外の吸収ピークによる吸収が発振波長範囲内まで及んでいるものでもよい。ただ、高分子材料に配合することによりその吸収を有効に利用するうえでは、前者、すなわち発振波長範囲内に吸収ピークを持つ化合物であることが好ましい。またこの添加剤は、高分子材料との相溶性の観点から、一般には有機化合物であることが好ましい。添加剤の吸収も、高分子材料の吸収と同様、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計で吸収スペクトルを測定することにより、確認できる。
レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤は、上述のとおり、吸収スペクトルを確認したうえで、上記波長範囲に吸収を持つ化合物を選択すればよい。例えば、高分子材料用の添加剤として市販されている化合物のなかから、このような吸収を示すものを選択して用いてもよいし、レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ高分子材料を添加剤として用いてもよい。また添加剤は、上記の性質を示すものを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このような添加剤は、レーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料100重量部に対し、50重量部未満の割合で配合することが好ましい。その配合量が、高分子材料100重量部に対して50重量部以上になると、切断加工性は向上するものの、切断加工性以外の樹脂フィルムとしての品質の低下を招来する可能性が大きくなる。そのため、樹脂フィルムの偏光板への適用も難しくなる。高分子材料100重量部に対する添加剤の配合量が50重量部未満であれば、所望されるフィルムの切断加工性と品質に応じて、その配合量は適宜設定され得る。したがって、添加剤の配合量の下限は、その添加剤が配合された樹脂フィルムがレーザーにより切断加工できるようになる量であればよいが、一般には、高分子材料100重量部に対して0.1重量部以上とするのが好ましい。
樹脂フィルムの製造は、適宜公知の方法によって行うことができる。例えば、高分子材料とともに上記の添加剤が有機溶剤に溶解された溶液をベルト又はドラム上に流延する溶剤キャスト法、高分子材料に上記の添加剤が配合されたものを溶融して押出す溶融押出法などが、好適な方法として挙げられる。また所望により、一軸延伸又は二軸延伸を行ってもよい。この場合の延伸倍率は、通常1.1〜5倍、好ましくは1.1〜3倍である。
延伸された樹脂フィルムを後述する偏光板に適用する場合、偏光子との貼着において、樹脂フィルムの延伸配向による密着性の低下が懸念されることがある。そのような場合には、樹脂フィルムの貼着表面を改質することが好ましい。樹脂フィルムがシクロオレフィン系樹脂を主成分とし、本発明に従ってレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されている場合は、表面改質の方法として、先に挙げた特許文献3(特開 2012-177890号公報)に記載されるような、有機溶剤、とりわけ、接触によってその樹脂に変化を与える有機溶剤で処理する方法が好ましい。この場合、同文献に記載されるように、接触によってその樹脂に変化を与える有機溶剤(良溶媒)と接触によってその樹脂に実質的な変化を与えない有機溶剤(貧溶媒)との混合物で処理することが特に好ましい。
本発明において、副成分である添加剤として有機化合物を選択した場合、樹脂フィルムの貼着表面を均一に処理するため、処理に用いる有機溶剤は、接触によって添加剤にも変化を与える有機溶剤(良溶媒)を含有することが好ましい。また処理効率の観点から、接触によって添加剤に変化を与える有機溶剤(良溶媒)は、シクロオレフィン系樹脂に変化を与える有機溶剤(良溶媒)と同じものを選択することが特に好ましい。換言すると、上記の表面改質に用いる有機溶剤は、接触によってシクロオレフィン系樹脂及び添加剤の双方に変化を与える有機溶剤(良溶媒)を含有することが特に好ましい。
樹脂フィルムの厚さは特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得るが、レーザーにより切断するうえでの加工精度及び加工速度、また後述する偏光板にこの樹脂フィルムを適用した場合の透明性、さらには近年の薄型軽量化の観点からすると、薄いほうが好ましく、通常は80μm 以下に設定される。ただ、あまり薄すぎると、取扱いが難しくなることから、通常は1μm以上であり、好ましくは5μm以上である。
レーザーにより切断加工される本発明の樹脂フィルムは、単層であってもよいし、また2以上の層が積層された複層であってもよい。単層の場合は、フィルム層内で前記添加剤の濃度勾配を持たせた濃度傾斜フィルムでもよい。また複層であって、それらの層のすべてが、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料を主成分とする場合は、各層に前記添加剤が配合されていることが好ましいが、各層中の添加剤の含有量は異なっていてもよい。一方、複層であって、それらの層のうち少なくとも一層が、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料を主成分とするものであり、他の層が、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ高分子材料からなる場合は、その切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料を主成分とする層が、前記添加剤を含んでいればよい。この場合の典型的な例が、以下に説明する偏光板となる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、以上説明した樹脂フィルム、特に、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、前記レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されている層を有する樹脂フィルムが、保護フィルムとして貼合されたものである。
〈偏光子〉
偏光子は、入射する自然光から直線偏光を取り出す機能を有するフィルムであり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものを用いることができる。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂として、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度、好ましくは98モル%以上である。このポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。またポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度、好ましくは1,500〜5,000程度である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光子の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、1〜150μm 程度である。延伸のしやすさなども考慮すれば、その膜厚は10μm 以上であるのが好ましい。
偏光子は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て、製造される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。
偏光板は、偏光子に接着剤又は粘着剤を介して、上で説明したレーザーにより切断加工される樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合することにより、製造できる。所望なら、偏光子の片面に上記のレーザーにより切断加工される樹脂フィルムを第一の保護フィルムとして貼合し、偏光子の他面には、別の熱可塑性樹脂からなる第二の保護フィルムを、やはり接着剤又は粘着剤を介して貼合することができる。
〈第二の保護フィルム〉
上述のとおり、偏光子の片面にレーザーにより切断加工される樹脂フィルムを貼合した場合、偏光子の他面には、別の熱可塑性樹脂からなる第二の保護フィルムを貼合することができる。熱可塑性樹脂からなる第二の保護フィルムも、偏光子に接着剤又は粘着剤を介して貼合される。第二の保護フィルムは、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ高分子材料からなることが好ましく、例えば、酢酸セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂など、当分野において従来から保護フィルムの形成材料として広く用いられている適宜の材料で構成することができる。
第二の保護フィルムの偏光子に貼着する面と反対側の面には、必要に応じて、光学機能を有する光学層を積層したり設けたりすることができる。例えば、偏光板を画像表示素子の表示面(視認側)に配置する場合には、第二の保護フィルムの偏光子に貼着する面と反対側の面に、防眩処理層、ハードコート処理層、帯電防止処理層、反射防止処理層等の表面処理層が設けられていてもよい。一方、偏光板を画像表示素子の表示面と反対側(背面側)に配置する場合には、第二の保護フィルムの偏光子に貼着する面と反対側の面に、輝度向上フィルムなどの光学機能を有する光学層を積層することができる。光学層と第二の保護フィルムは、接着剤又は粘着剤を介して貼合することができる。
偏光子と保護フィルムとは、以下に詳述されるような接着剤又は粘着剤を用いて貼着される。これらのフィルムの貼着にあたっては、密着性を向上させるために、偏光子及び/又はそれに貼合される保護フィルムの接着表面に、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液にフィルムを浸漬することによって行われる。また、上述した第二の保護フィルムと光学層の貼着にも、粘着剤を用いることがある。さらに、偏光板の最も外側であって、画像表示素子に貼り合わされる面には、当該画像表示素子に貼り合わせるための粘着剤層を設けることができる。
以下、偏光子と保護フィルムとの貼着に用いられる接着剤及び、その貼着に用いられるほか、第二の保護フィルムと光学層の貼着にも用いられ、また偏光板を画像表示素子に貼り合わせるためにも用いられる粘着剤について説明する。
〈接着剤〉
偏光子と保護フィルムとの貼着に用いる接着剤は、両者に対して接着力を発現するものであればよく、例えば、接着剤成分を水に溶解又は分散させた水系の接着剤や、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性接着剤が挙げられる。水系接着剤の主成分となる接着剤成分には、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂などがある。
水系接着剤を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、市販品の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、高いケン化度を有するポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“PVA-117H”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセノール NH-20”、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコールであって、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセファイマーZ”シリーズ、アニオン変性されたポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“KL-318”及び“KM-118”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセナール T-330”、カチオン変性されたポリビニルアルコールであって、(株)クラレから販売されている“CM-318”や、日本合成化学工業(株)から販売されている“ゴーセファイマー K-210”などを挙げることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して反応性を有する官能基を有する化合物であればよく、従来からポリビニルアルコール系接着剤において用いられているものを特に制限なく使用できる。架橋剤となり得る化合物を官能基別に掲げると、イソシアナト基(−NCO)を分子内に少なくとも2個有するイソシアネート化合物;エポキシ基(橋かけの−O−)を分子内に少なくとも2個有するエポキシ化合物;モノ−又はジ−アルデヒド類;有機チタン化合物;マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、及びアルミニウムのような二価又は三価金属の無機塩;グリオキシル酸の金属塩;メチロールメラミンなどがある。
接着剤には、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、帯電防止剤、微粒子など、従来公知の適宜の添加剤を配合することもできる。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合、適当な接着剤の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物を挙げることができる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。かかるアイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系接着剤に好適に用いられる。
偏光子と保護フィルムとの貼着には、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する硬化性接着剤を用いることもできる。「活性エネルギー線硬化性化合物」とは、活性エネルギー線の照射により硬化し得る化合物を意味する。活性エネルギー線硬化性化合物は、カチオン重合性のものであってもよいし、ラジカル重合性のものであってもよい。カチオン重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に少なくとも1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物などを挙げることができる。また、ラジカル重合性化合物の例として、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系化合物などを挙げることができる。ここで、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基を意味する。
この貼着に用いる活性エネルギー線硬化性化合物は、少なくともエポキシ化合物を含むことが好ましく、これにより、偏光子と保護フィルムとの間で良好な密着性を示すようになる。硬化性接着剤において、エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、硬化性接着剤は、上記エポキシ化合物に加え、オキセタン化合物を含有してもよい。オキセタン化合物を添加することにより、硬化性接着剤の粘度を低くし、硬化速度を速めることができる。
硬化性接着剤が、エポキシ化合物やオキセタン化合物などのカチオン重合性化合物を含む場合、その硬化性接着剤には通常、光カチオン重合開始剤が配合される。光カチオン重合開始剤を使用すると、常温での接着剤層の形成が可能となるため、偏光子の耐熱性や膨張による歪を考慮する必要が減少し、密着性良く偏光子と保護フィルムを貼合できる。また、光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、これを硬化性接着剤に混合しても、硬化性接着剤は保存安定性や作業性に優れる。
光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、いずれのタイプのものであってもよいが、具体例を挙げれば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレーン錯体などがある。
また、硬化性接着剤は、上記エポキシ化合物とともに、あるいはエポキシ化合物及びオキセタン化合物とともに、ラジカル重合性である(メタ)アクリル系化合物を含有してもよい。(メタ)アクリル系化合物を併用することにより、接着剤層の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには硬化性接着剤の粘度や硬化速度などの調整がより一層容易に行えるようになる。
硬化性接着剤が上記の如き(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物を含有する場合は、光ラジカル重合開始剤が配合されることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物の重合を開始できるものであればよく、従来公知のものを用いることができる。光ラジカル重合開始剤の具体例を挙げれば、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのようなアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノンのようなベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテルのようなベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンなどがある。
〈粘着剤〉
偏光子と保護フィルムを接着する粘着剤、第二の保護フィルムと光学層を接着する粘着剤、また偏光板の最も外側に配置され、画像表示素子に貼り合わされることになる粘着剤は、従来から画像表示装置のために用いられてきた種々の粘着剤をベースに、形成することができる。例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを有するものが用いられる。また、活性エネルギー線硬化型や熱硬化型などであってもよい。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。
アクリル系粘着剤においては、メチル基やエチル基やブチル基などの炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどからなる官能基含有アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が一般には25℃以下、好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上のアクリル系共重合体が、ベースポリマーとして有用である。
粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチルのような有機溶剤に上記したベースポリマーをはじめとする粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、セパレーター(剥離フィルム)上に粘着剤層を形成しておき、それを偏光板上に移着することで粘着剤層を形成する方式などにより行うことができる。粘着剤には、上記したベースポリマーのほか、架橋剤を配合するのが一般的である。さらに、液晶セルをはじめとする画像表示素子への貼合を意図する場合は、シランカップリング剤を配合することも好ましい。粘着剤層の厚さは、その接着力などに応じて決定されるが、通常は1〜50μm の範囲である。
粘着剤には必要に応じて、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉などの無機粉末などからなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが配合されていてもよい。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
[樹脂フィルムの切断加工方法]
本発明はまた、レーザーにより樹脂フィルムを切断加工する方法も提供する。この方法において、樹脂フィルムは、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、前記レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されている。ここでいう高分子材料に添加剤が配合された組成物から形成された層は、先に説明した、高分子材料に添加剤が配合された組成物から形成された樹脂フィルムに相当する。この層、すなわち樹脂フィルム自体を切断加工の対象としてもよいし、この層を有する積層フィルムを切断加工の対象としてもよい。積層フィルムの典型的な例は、先に説明した偏光板である。ここで切断加工の対象とする樹脂フィルムには、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を有する添加剤が配合されているので、精度よく切断できる。用いるレーザーは、先に説明したとおりである。
切断加工は、対象となる樹脂フィルムの表面にレーザーを照射し、その照射位置を順次移動しながら行われる。照射位置の移動は相対的なものであって、例えば、樹脂フィルムの位置を固定し、レーザー発振器から発振されるレーザーを移動させてもよいし、レーザー発振器から発振されるレーザーの位置を固定し、樹脂フィルムを移動させてもよい。もちろん、樹脂フィルムとレーザー発振器から発振されるレーザーとの双方を逆方向に移動させてもよい。切断速度、すなわちレーザー照射位置の移動速度は、切断加工される樹脂フィルムの厚さに依存するが、フィルムの厚さが70〜500μmの範囲であれば、1m/分以上、好ましくは5〜60m/分である。切断速度が1m/分未満になると、生産性に劣る傾向がある。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部及び%は、特記ない限り重量基準である。また以下の例において、高分子材料及び添加剤の吸収スペクトルは、次の方法により求めた。
[吸収スペクトルの測定法]
BRUKER 社製のフーリエ変換赤外分光光度計“Vertex 70”を使用し、分解能を4cm-1 に設定して試料の吸収スペクトルを求めた。高分子材料(フィルム)は、入射角を37°とし、ゲルマニウム(Ge)プリズムを用いたATR(attenuated total reflection :全反射)法で測定を行った。また添加剤は、乳鉢を用いて臭化カリウム(KBr)と混合し、粉末状とした後、錠剤成型器でペレット状に成型したものを試料とし、透過法で測定を行った。
[実施例1]
(樹脂溶液の調製)
高分子材料として、日本ゼオン(株)から“ゼオノアフィルム”の商品名で販売されているシクロオレフィン系樹脂フィルムを用いた。図1に“ゼオノアフィルム”の吸収スペクトルを示した。後述するレーザーの発振波長範囲である9.1〜9.5μm には吸収を持たないことがわかる。このフィルムをはさみで裁断し、その100部に、溶剤としてシクロヘキサン400部を加えて溶解させた。この20%濃度溶液を「樹脂溶液」と呼ぶ。
(添加剤溶液の調製)
添加剤として、BASF社から“Irgafos 168”の商品名で販売されている、化学名がトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである化合物を用いた。図2に“Irgafos 168”の吸収スペクトルを示した。後述するレーザーの発振波長範囲である9.1〜9.5μm に吸収を持つことがわかる。この“Irgafos 168” 10部に対し、溶剤としてトルエン90部を加えて溶解させた。この10%濃度溶液を「“Irgafos 168”溶液」と呼ぶ。
(樹脂フィルムの作製)
先に調製した樹脂溶液50部に対し、“Irgafos 168”溶液を1部、5部、及び10部の割合で添加し、溶剤キャスト法で製膜した。こうして、シクロオレフィン系樹脂100部に対し、“Irgafos 168”がそれぞれ、1部、5部、及び10部の割合で配合され、厚さがいずれも23μm である3種類のシクロオレフィン系樹脂フィルムを作製した。
(偏光板の作製及び切断試験)
ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ25μm のフィルムからなる偏光子の片面に、ポリビニルアルコールと水溶性エポキシ樹脂を含む水溶液からなる接着剤を介して、厚さ40μm のトリアセチルセルロースからなる保護フィルムを貼合し、偏光子の他面には、厚さ15μm のアクリル系粘着剤を介して、先に作製した厚さ23μm の樹脂フィルム3種類をそれぞれ別々に貼合することにより、3種類の偏光板を作製した。
次にレーザー波長9.4μm の炭酸ガスレーザー発振器(コヒーレント社製の“E400i”、発振波長範囲は9.1〜9.5μm )を用いて、それぞれの偏光板のトリアセチルセルロースフィルム側から、偏光子の吸収軸方向(MDとする)及び透過軸方向(TDとする)に対し、周波数60kHz でレーザーを照射して切断加工を行った。このときの切断状況を以下の3段階で評価し、結果を表1に示した。
〈切断状況の評価基準〉
○: 切断面がまっすぐで、良好な切断状態を示す、
△: 切断はできたが、切断面に凹凸がみられる、
×: 切断できない。
なお表1中、「○〜△」とあるのは、切断面が概ねまっすぐで、良好な切断状態であったが、一部切断面に凹凸がみられたことを意味する。
[実施例2]
添加剤を、住化ケムテックス(株)から“Sumisorb 400”の商品名で販売されている、化学名が2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートである化合物に変更した以外は、実施例1の前半と同様にして、添加剤の配合量が異なる3種類のシクロオレフィン系樹脂フィルムを作製した。図3に“Sumisorb 400”の吸収スペクトルを示した。切断に用いるレーザーの発振波長範囲である 9.1〜9.5μmに吸収を持つことがわかる。これらのフィルムを用いる以外は、実施例1の後半と同様にして、3種類の偏光板を作製し、レーザーによる切断加工を行った。切断状況を実施例1と同じ基準で評価し、結果を表1に示した。
[比較例1]
添加剤を配合せず、日本ゼオン(株)から販売されている“ゼオノアフィルム”(厚さ23μm )をそのまま用い、その他は実施例1と同様にして偏光板を作製し、レーザーによる切断加工を行った。切断状況を実施例1と同じ基準で評価し、結果を表1に示した。
〔表1〕
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
例 No. 添 加 剤 切断状況
種 類 配合量 MD TD
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 Irgafos 168 1phr ○〜△ ○
5phr ○〜△ ○
10phr ○ ○
────────────────────────
実施例2 Sumisorb 400 1phr △ ○
5phr ○〜△ ○
10phr ○ ○
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例1 なし − × △
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
phrは、樹脂100部あたりの添加剤配合量(部)
表1に示すとおり、用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たないシクロオレフィン系樹脂に対し、同じレーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤を配合して成形したフィルムは、切断状況の改善が確認された。特に添加剤の配合量が多くなると、一層の切断加工性の向上が認められた。

Claims (8)

  1. レーザーにより切断加工される樹脂フィルムであって、
    切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、前記レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成されていることを特徴とする樹脂フィルム。
  2. 前記レーザーが炭酸ガスレーザーである、請求項1に記載の樹脂フィルム。
  3. 前記レーザーが波長9.4μmのものである、請求項2に記載の樹脂フィルム。
  4. 前記高分子材料がシクロオレフィン系樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルム。
  5. 樹脂フィルムを形成する前記組成物は、前記高分子材料100重量部に対して前記添加剤が50重量部未満の割合で配合されている、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂フィルム。
  6. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂フィルムが保護フィルムとして貼合されていることを特徴とする偏光板。
  7. レーザーにより樹脂フィルムを切断加工する方法であって、
    前記樹脂フィルムは、切断加工に用いるレーザーの発振波長範囲に吸収を持たない高分子材料に、前記レーザーの発振波長範囲に吸収を持つ添加剤が配合された組成物から形成された層を有することを特徴とする樹脂フィルムの切断加工方法。
  8. 前記樹脂フィルムは、前記組成物から形成された層が、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に貼合された偏光板である、請求項7に記載の方法。
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