JP2018112707A - 光選択透過フィルターおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス基板上に色素を含有する吸収層が設けられた光選択透過フィルターであって、吸収層とガラス基板との密着性に優れた光選択透過フィルターを提供する。
【解決手段】水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有する光選択透過フィルター。吸収層は樹脂を含有し、水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂に添加されていることが好ましい。また、水酸基との反応性基を有する化合物は、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有する光選択透過フィルター。吸収層は樹脂を含有し、水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂に添加されていることが好ましい。また、水酸基との反応性基を有する化合物は、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、光選択透過フィルターとその製造方法に関する。
携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、ビデオカメラ、表示素子(LED等)等の撮像装置には、被写体の光を電気信号等に変換して出力する撮像素子が通常使用されている。このような撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサ)およびレンズを備えるとともに、高性能化のため、画像処理等の妨げとなる光学ノイズ(例えばゴーストやフレア)を除去するための近赤外線カットフィルターを備える場合がある。
近赤外線カットフィルターとしては、これまで様々なものが知られている。例えば特許文献1には、ガラス基板上に、スクアリリウム化合物と樹脂とを含有する近赤外線吸収層を有する近赤外線カットフィルターが開示され、特許文献2には、ガラス基板、スクアリリウム化合物を含有するコーティング層、および赤外線反射膜を積層してなる波長カットフィルターが開示され、特許文献3には、ガラス基板上に、オキシラン化合物と600nm〜900nmの波長域に吸収極大を有する色素とを含有する樹脂組成物から形成された層が設けられた光選択透過フィルターが開示されている。
上記のように、所定領域の光線の少なくとも一部をカットする光選択透過フィルターには、ガラス基板上に色素を含有する吸収層が形成されたものが知られており、このような光選択透過フィルターでは、吸収層とガラス基板との密着性を確保することが重要となる。吸収層とガラス基板との間に隙間が生じると、屈折率が変わったりして、所望の光学性能が得られなくなるためである。またこの際、湿熱下のような過酷な条件下に置いても吸収層とガラス基板との密着性が維持されることが好ましい。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス基板上に色素を含有する吸収層が設けられた光選択透過フィルターであって、吸収層とガラス基板との密着性に優れた光選択透過フィルターを提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有することを特徴とする光選択透過フィルター。
[2] 前記吸収層が樹脂を含有し、前記水酸基との反応性基を有する化合物が前記樹脂に添加されている[1]に記載の光選択透過フィルター。
[3] 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]に記載の光選択透過フィルター。
[4] 前記色素が、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
[5] 前記色素が、波長600nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である[1]〜[4]のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の光選択透過フィルターを有することを特徴とする撮像素子。
[7] ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄し、前記ガラス基板の表面の水に対する接触角を21°以下にする工程と、前記洗浄工程で得られたガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を形成する工程を有することを特徴とする光選択透過フィルターの製造方法。
[8] 前記洗浄工程において、前記ガラス基板をアルカリ溶液で超音波洗浄する[7]に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
[9] 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である[7]または[8]に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
[1] 水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、前記ガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有することを特徴とする光選択透過フィルター。
[2] 前記吸収層が樹脂を含有し、前記水酸基との反応性基を有する化合物が前記樹脂に添加されている[1]に記載の光選択透過フィルター。
[3] 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]に記載の光選択透過フィルター。
[4] 前記色素が、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
[5] 前記色素が、波長600nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である[1]〜[4]のいずれかに記載の光選択透過フィルター。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の光選択透過フィルターを有することを特徴とする撮像素子。
[7] ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄し、前記ガラス基板の表面の水に対する接触角を21°以下にする工程と、前記洗浄工程で得られたガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を形成する工程を有することを特徴とする光選択透過フィルターの製造方法。
[8] 前記洗浄工程において、前記ガラス基板をアルカリ溶液で超音波洗浄する[7]に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
[9] 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である[7]または[8]に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
本発明の光選択透過フィルターは、水に対する接触角が21°以下のガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層が設けられているため、ガラス基板の水との親和性が高まり、水酸基との反応性基を有する化合物とガラス基板表面との相互作用によって、吸収層とガラス基板との密着性を高めることができる。そのため、湿熱下の過酷な条件下に置いても吸収層とガラス基板との耐剥離性に優れたものとなる。
本発明の光選択透過フィルターは、水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、このガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有するものである。本発明の光選択透過フィルターは、水に対する接触角が21°以下のガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層が設けられているため、吸収層とガラス基板との密着性が高まり、高温高湿の過酷な条件下に置いても吸収層とガラス基板との耐剥離性に優れたものとなる。
ガラス基板は、吸収層の支持体として用いられ、光線透過性を有するものであれば、無着色のものであっても着色したものであっても特に制限なく用いることができる。ガラス基板に用いられるガラスは、二酸化ケイ素を主成分とするケイ酸塩ガラスが好ましく、ケイ素と酸素以外の原子あるいはイオンを含有していてもよい。このような原子やイオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、鉄、銀、銅、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、およびこれらのイオンが挙げられる。ガラス基板の厚みは、例えば、強度を確保する点から、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、また薄型化の点から、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。
ガラス基板の表面には、ガラスを構成する酸素原子に由来して水酸基が存在し得る。一方、吸収層には水酸基との反応性基を有する化合物が含まれている。そのため、ガラス基板の表面に存在する水酸基量を増やすことによって、吸収層とガラス基板との密着性を高めることができ、本発明ではガラス基板の表面に存在する水酸基量の指標として、水との接触角を採用している。ガラス基板の水との接触角が小さいほど親水性が高まり、ガラス基板の表面に存在する水酸基量が増えることとなる。そのため、本発明では水に対する接触角が21°以下のガラス基板を用いており、このようなガラス基板を用いることにより、吸収層に含まれる水酸基との反応性基を有する化合物とガラス基板の表面に存在する水酸基との結合量が増え、吸収層とガラス基板との密着性を高めることができる。なお、水酸基との反応性基を有する化合物とガラス基板との結合は、共有結合のように強い結合のみならず、水素結合のような弱い結合も含まれる。ガラス基板の接触角は小さければ小さいほど良く、例えば20°以下でもよく、18°以下でもよく、あるいは15°以下でもよい。ガラス基板の接触角の下限値は特に限定されず、0°以上であればよく、3°以上、あるいは5°以上であってもよい。ガラス基板の水に対する接触角は、実施例に記載の方法に従って求める。
接触角が小さいガラス基板としては、アルカリ溶液で洗浄したガラス基板を用いることが好ましく、より好ましくはアルカリ溶液中で超音波洗浄したガラス基板を用いる。このように処理されたガラス基板は、アルカリ溶液による洗浄によってガラス基板の表面の不純物が除去されるとともに、ガラス基板の表面に水酸基が露出あるいは付与されたものになると考えられる。アルカリ溶液による洗浄の詳細は後述する。
ガラス基板は透明性が高いことが好ましく、例えばヘイズが3%以下であることが好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。ヘイズは、濁度計(例えば、日本電色工業社製、NDH5000等)を用いて測定することができる。
ガラス基板上には吸収層が形成され、具体的には、ガラス基板の主面のうち、水に対する接触角が21°以下に形成された面上に吸収層が形成される。吸収層は、ガラス基板の主面の一方面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。吸収層はガラス基板上に直接形成されることが好ましく、吸収層の少なくとも一部がガラス基板上に直接形成されていればよく、吸収層の全部がガラス基板上に直接形成されていることがより好ましい。
吸収層は、特定波長域の光線を吸収するように機能する層であり、色素が含まれている。色素は、有機色素であっても、無機色素であっても、有機無機複合色素(例えば、金属原子またはイオンが配位した有機化合物)であってもよく、特にその種類は限定されない。色素としては、例えば、中心金属イオンとして銅(例えば、Cu(II))や亜鉛(例えば、Zn(II))等を有していてもよい環状テトラピロール系色素(ポルフィリン化合物、クロリン化合物、フタロシアニン化合物、コリン化合物等)、オキソカーボン系色素(スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物等)、シアニン系色素、クアテリレン系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素、ジインモニウム系色素、サブフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、アゾ系色素、ジピロメテン系色素等が挙げられる。吸収層には、色素が1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。なお、所望の光学特性が発揮されるように分子設計することが容易な点から、色素としては有機色素または有機無機複合色素を用いることが好ましく、中でもスクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの化合物の詳細は後述する。
色素としては、例えば、波長600nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素を用いることが好ましく、これにより本発明の光選択透過フィルターを近赤外線カットフィルターに好適に適用することができる。この場合、近赤外線吸収色素として、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、吸収層に近赤外線領域の光線を選択的にカットする機能を付与することが容易になり、特にスクアリリウム化合物およびクロコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種を用いれば、近赤外領域の光線を効果的に吸収し、可視光透過率を高めることが容易になる。近赤外線吸収色素の極大吸収波長の波長範囲は、好ましくは650nm以上であり、680nm以上がより好ましく、また1000nm以下が好ましく、900nm以下がより好ましく、850nm以下がさらに好ましい。
吸収層には、水酸基との反応性基を有する化合物が含有されている。吸収層に水酸基との反応性基を有する化合物が含有されることにより、水酸基との反応性基がガラス基板の水酸基と反応し、吸収層とガラス基板との密着性を高めることができる。水酸基との反応性基は、水酸基と反応して結合を形成し得る基であれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、エポキシ基、スルホニル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、イソシアネート基、シラノール基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
水酸基との反応性基を有する化合物は、吸収層のマトリックス成分(例えば、樹脂)を構成していてもよく、吸収層に添加剤として含まれるものでもよい。水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂として吸収層に含まれる場合、当該樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。水酸基との反応性基を有する化合物が添加剤として吸収層に含まれる場合、吸収層は樹脂を含有し、水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂に添加されていることが好ましい。この場合、水酸基との反応性基を有する化合物は樹脂とガラス基板のバインダーとして機能することが好ましく、無機材料であるガラス基板に対する親和性と有機材料である樹脂に対する親和性の両方を兼ね備えていることが好ましい。従って、そのような化合物として、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂に含有されていれば、吸収層とガラス基板との密着性を任意に調整することが容易になり、吸収層とガラス基板との密着性を高めやすくなる。以下、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物をまとめて、「特定シラン化合物」と称する場合がある。
シランカップリング剤としては、任意の有機基を有するアルコキシシランを用いることができ、当該有機基としては、アルキル基、エポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基、(メタ)アクリル基含有基、重合性二重結合含有基、アリール基等が挙げられる。中でも、樹脂との親和性を高めることが容易な点から、シランカップリング剤の有する有機基としては、アルキル基、エポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基、および重合性二重結合含有基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。シランカップリング剤の加水分解物は、シランカップリング剤に含まれるアルコキシシリル基をシラノール基に変換することにより得ることができ、シランカップリング剤の加水分解縮合物は、シランカップリング剤の加水分解物に含まれるシラノール基を脱水縮合させてシロキサン結合(−Si−O−Si−)を形成することにより得ることができる。通常シランカップリング剤を加水分解させると、シランカップリング剤の加水分解物が得られるとともに、当該加水分解物に含まれるシラノール基の脱水縮合反応も起こることにより、シランカップリング剤の加水分解縮合物も容易に得られる。
特定シラン化合物は、下記式(1)で表されるケイ素化合物および/またはその縮合物であることが好ましい。下記式(1)中、R1はアルキル基、エポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基または重合性二重結合含有基を表し、R2はアルキル基を表し、mは1〜3の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。なお、mが2以上のとき、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、4−m−nが2以上のとき、複数のOR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1とOHとOR2は、それぞれSiに直接結合する置換基である。
SiR1 m(OH)n(OR2)4-m-n (1)
SiR1 m(OH)n(OR2)4-m-n (1)
式(1)において、R1のアルキル基としては、炭素数1〜24が好ましく、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜12である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の脂環式アルキル基;等が挙げられる。
R1のエポキシ基含有基としては、エポキシ基を有するものであれば特に限定されず、グリシドキシ基含有基やシクロアルケンオキサイド(脂環式エポキシ基)含有基が挙げられる。グリシドキシ基やシクロアルケンオキサイドは、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基)等の連結基を介してケイ素原子に結合していてもよい。R1のエポキシ基含有基としては、グリシドキシ基、3−グリシドキシプロピル基、8−(グリシドキシ)−n−オクチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。
R1のアミノ基含有基は、アミノ基を有するものであれば特に限定されず、1級アミノ基を有するものであってもよく、2級アミノ基を有するものであってもよく、3級アミノ基を有するものであってもよく、複数のアミノ基(例えば1級アミノ基と2級アミノ基)を有するものであってもよい。アミノ基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基)等の連結基を介してケイ素原子に結合していることが好ましい。R1のアミノ基含有基としては、3−アミノプロピル基、3−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル基、N−フェニルアミノメチル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−ベンジル−3−アミノプロピル基、N−シクロヘキシルアミノメチル基等が挙げられる。
R1のメルカプト基含有基としては、メルカプト基を有するものであれば特に限定されないが、メルカプトアルキル基が好ましい。メルカプトアルキル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよく、その炭素数は1〜12が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。R1のメルカプト基含有基としては、3−メルカプトプロピル基、2−メルカプトエチル基、2−メルカプトプロピル基、6−メルカプトヘキシル基等が挙げられる。
R1の重合性二重結合含有基としては、重合性二重結合基を有するものであれば特に限定されず、重合性二重結合基としてはビニル基、スチリル基、(メタ)アクリル基等が挙げられる。重合性二重結合基は、ケイ素原子に直接結合していてもよいし、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基)等の連結基を介してケイ素原子に結合していてもよい。R1の重合性二重結合含有基としては、ビニル基、2−プロペニル基、スチリル基、3−(メタ)アクリロキシプロピル基等が挙げられる。
なお、特定シラン化合物が置換基R1としてアルキル基を有する場合、特定シラン化合物は置換基R1としてエポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基または重合性二重結合含有基も有することが好ましく、これにより吸収層のガラス基板への密着性を高めやすくなる。例えば、mが2以上のとき、複数のR1の一部がアルキル基で、他部がエポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基または重合性二重結合含有基であることが好ましい。
式(1)において、R2のアルキル基としては、炭素数1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは1〜3である。OR2基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基等が具体的に挙げられる。
式(1)において、mは1または2が好ましく、1がより好ましく、これにより吸収層のガラス基板への密着性を高めやすくなる。また、nは1〜3が好ましく、2または3がより好ましい。
シランカップリング剤の加水分解縮合物は、同種のシランカップリング剤の加水分解物の脱水縮合物であってもよく、異種のシランカップリング剤の加水分解物の脱水縮合物であってもよい。シランカップリング剤の加水分解縮合物が式(1)で表されるケイ素化合物の縮合物である場合、当該縮合物としては、下記式(2)で表される化合物が示される。
SipOqR1 r(OH)s(OR2)t (2)
SipOqR1 r(OH)s(OR2)t (2)
上記式(2)中、pは2以上の整数を表し、qはp−1〜pの整数を表し、rはp〜2p+1の整数を表し、sは0〜2p+1の整数を表し、tは0〜2p+1の整数を表し、q+s+rの上限は2p+1である。式(2)中、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、tが2以上のとき、複数のOR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1とOHとOR2は、それぞれSiに直接結合する置換基である。
式(2)において、pは1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、これにより樹脂との相溶性を高めやすくなる。sは1以上であることが好ましく、これにより吸収層のガラス基板への密着性を高めやすくなる。また、樹脂との相溶性やハジキ防止の観点より、r≦2pであることが好ましく、r≦1.5pであることがより好ましく、r=pであることがさらに好ましい。
置換基R1としては、エポキシ基含有基、アミノ基含有基またはメルカプト基含有基が好ましい。置換基R1がこのような置換基であれば、樹脂の有する極性基に作用して、吸収層とガラス基板との密着性を高めることが容易になる。この場合、比較的多くの種類の樹脂に対して、吸収層とガラス基板との密着性を高めることが容易になる。なお、置換基R1がこれ以外のアルキル基や重合性二重結合含有基であっても、樹脂の種類によっては吸収層とガラス基板との密着性を高めることができ、例えばポリオレフィン樹脂やシクロオレフィン系樹脂、あるいはアルキル基や重合性二重結合含有基を側鎖に有する樹脂の場合は、置換基R1がアルキル基や重合性二重結合含有基であっても、吸収層とガラス基板との密着性を高めることができる。特に好ましい樹脂と置換基R1との組み合わせとしては、エポキシ樹脂と置換基R1がエポキシ基含有基の組み合わせ、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂と置換基R1がアミノ基含有基の組み合わせ、ポリスルホン樹脂と置換基R1がメルカプト基含有基の組み合わせ等が挙げられる。
吸収層に含まれる色素がスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物である場合は、置換基R1はエポキシ基含有基であることが特に好ましい。つまり、シランカップリング剤として、エポキシ基含有シランカップリング剤を用いることが好ましい。このような特定シラン化合物を用いることにより、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物の耐久性を高めることができる。
吸収層には、特定シラン化合物が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。なお吸収層には、特定シラン化合物として、少なくともシランカップリング剤の加水分解物および/またはシランカップリング剤の加水分解縮合物が含まれることが好ましく、これにより吸収層のガラス基板への密着性を高めやすくなる。この場合、特定シラン化合物100質量%中のシランカップリング剤の加水分解物とシランカップリング剤の加水分解縮合物の合計割合は10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
特定シラン化合物のような水酸基との反応性基を有する化合物が、添加剤として吸収層に含まれる場合、吸収層には、吸収層100質量%中、水酸基との反応性基を有する化合物が0.1質量%以上含まれていることが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。吸収層100質量%中、水酸基との反応性基を有する化合物が0.1質量%以上の含有量で含まれていれば、湿熱下での吸収層のガラス基板への密着性を高めやすくなる。一方、吸収層中に水酸基との反応性基を有する化合物が過剰に含まれていても、吸収層のガラス基板への密着性を高める効果がそれ以上あまり向上しないことから、吸収層100質量%中、水酸基との反応性基を有する化合物の含有量は20質量%以下であることが好ましい。樹脂を基準とした水酸基との反応性基を有する化合物の含有量としては、樹脂100質量部に対して、水酸基との反応性基を有する化合物の含有量は0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
吸収層に樹脂が含まれる場合、当該樹脂としては公知の樹脂を用いることができ、透明性が高い樹脂を用いることが好ましい。吸収層に含まれる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂)、シクロオレフィン系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキド樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂(例えば、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等)、フッ素系樹脂(例えば、フッ素化芳香族ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、フッ素化ポリアリールエーテルケトン(FPEK)、フッ素化ポリイミド(FPI)、フッ素化ポリアミド酸(FPAA)、フッ素化ポリエーテルニトリル(FPEN)等)等が挙げられる。これらの中でも、耐光性に優れる点から、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂およびフッ素化芳香族ポリマーから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
樹脂はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましく、これにより吸収層の耐熱性を高めることができる。樹脂のガラス転移温度は、例えば、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。前記樹脂のガラス転移温度の上限は特に限定されないが、成形加工性を高める点から、例えば380℃以下が好ましい。
樹脂としては、耐熱性が高く、高温下での形状安定性に優れる点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂を用いれば、例えば吸収層の上に誘電体多層膜を蒸着により形成する場合など、吸収層の熱収縮を抑えて反りを抑えることができる。
エポキシ樹脂に含まれるオキシラン化合物は、エポキシ基(オキシラン環)をグリシジル基の形態で含んでいてもよく、シクロアルキレン環の二重結合を酸化してエポキシ化した脂環式エポキシ基(シクロアルケンオキサイド)の形態で含んでいてもよい。エポキシ基がグリシジル基の形態で含まれる場合は、グリシジル基は、例えばグリシジルエーテルの形態で存在していてもよく、グリシジルアミンの形態で存在していてもよく、グリシジルエステルの形態で存在していてもよく、もちろんグリシジル基が直接主鎖に結合していてもよい。
エポキシ樹脂としては、主鎖に芳香環構造を有する芳香族エポキシ樹脂、脂環構造を有する脂環式エポキシ樹脂、主鎖に芳香環構造も脂環構造も有さず脂肪族炭化水素鎖構造を有する脂肪族エポキシ樹脂などを用いることができ、特にその種類は限定されない。
芳香族エポキシ樹脂としては、主鎖にビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等を有するオキシラン化合物が挙げられ、これらの化合物には通常グリシジル基の形態でエポキシ基が含まれる。芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等の多官能性グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応により得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキサン環等の脂環構造を有するオキシラン化合物が挙げられ、エポキシ基はグリシジル基またはシクロアルケンオキサイドの形態で含まれる。グリシジル基を有する脂環式エポキシ樹脂としては、主鎖に脂環構造を有するものが挙げられ、例えば、上記の芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素化したもの(水添エポキシ樹脂)や、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。シクロアルケンオキサイド構造を有する脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、主鎖にプロピレングリコール構造、アルキレン構造、オキシアルキレン構造等を有するオキシラン化合物が挙げられ、これらの化合物には通常グリシジル基の形態でエポキシ基が含まれる。脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパンおよびその多量体、ペンタエリスリトールおよびその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては脂環式エポキシ樹脂を用いることが好ましい。脂環式エポキシ樹脂を用いれば、吸収層の耐熱性を高めやすくなり、また着色の少ないものとすることができる。
エポキシ樹脂に含まれるオキシラン化合物は、エポキシ基(オキシラン環)をグリシジル基の形態で含むことが好ましい。エポキシ樹脂は通常、硬化剤や硬化触媒を含む樹脂組成物として取り扱われるが、グリシジル基を有するエポキシ樹脂を用いれば、硬化の際、様々な種類の硬化剤や硬化触媒を使用することができるため、硬化剤や硬化触媒を適宜選択して樹脂組成物としての適用範囲を広げることができる。エポキシ樹脂に含まれるオキシラン化合物はまた、エポキシ基(オキシラン環)を1分子中に3個以上含むこと(多官能型)が好ましく、これにより上記に説明した特定シラン化合物との反応性が高まり、吸収層をガラス基板上に形成した際の吸収層とガラス基板との密着性を高めやすくなる。
エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物は、硬化剤および/または硬化触媒を含有することが好ましい。硬化剤および硬化触媒は公知のものを用いることができ、エポキシ樹脂の種類や所望する性状に応じて適宜選択すればよい。硬化剤としては、アミン類(脂肪族ジアミン、脂肪族ポリアミン、脂環式ジアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ジアミン、芳香族ポリアミン等)、ポリアミノアミド類、酸無水物類(脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物等)、フェノール類(ビスフェノール、ポリフェノール類等)、ポリメルカプタン類等が挙げられる。硬化触媒としては、3級アミン類(トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノネン−5等)、イミダゾール類(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、ルイス酸塩類やブレンステッド酸塩類等が挙げられる。硬化剤および硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化剤および硬化触媒は、それらの総量として、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部用いればよい。
硬化剤としては、潜在性硬化触媒を用いることが好ましい。潜在性硬化触媒としては熱潜在性硬化触媒や光潜在性硬化触媒が挙げられ、それぞれ反応形式の違いにより、カチオン硬化触媒とラジカル硬化触媒が存在する。潜在性硬化触媒は、エポキシ樹脂とともに樹脂組成物中に含有させても、熱や光の反応開始のきっかけを与えなければ、長期間安定して保存することが可能となるため、樹脂組成物の取り扱い性が向上する。熱潜在性硬化触媒であれば、樹脂組成物を加熱することにより硬化反応が進行し、光潜在性硬化触媒であれば、樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することにより硬化反応が進行する。このように硬化剤として潜在性硬化触媒を用いれば、エポキシ樹脂の硬化反応を自在に調節することができ、1液型樹脂組成物として調製しても保存安定性に優れるとともに、硬化させたいときは加熱や活性エネルギー線の照射により反応のきっかけを与えることにより、速やかに硬化反応を進行させることができる。中でも、硬化物の収縮量を低減できる点から、熱潜在性カチオン硬化触媒または光潜在性カチオン硬化触媒を用いることが好ましい。
熱潜在性カチオン硬化触媒は公知のものを適宜用いればよく、中でも、有機ボランとルイス塩基との塩を用いることが好ましい。有機ボランとルイス塩基との塩を用いることも好ましい。有機ボランはルイス酸として機能し、例えば下記式(3)で表されるものが好ましく用いられる。このような熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることにより、耐熱性や耐湿性等の耐久性に優れ、着色の低減された硬化物を得やすくなる。
BR11 uR12 3-u (3)
BR11 uR12 3-u (3)
上記式(3)中、R11はフッ化フェニル基を表し、R12は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、uは1〜3の整数を表す。R11のフッ化フェニル基は、フェニル基の水素原子が1〜5個のフッ素原子で置換されている。R11が複数ある場合は、複数のR11は同一であっても異なっていてもよく、R12が複数ある場合は、複数のR12は同一であっても異なっていてもよい。R12の炭化水素基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアルケニル基であることが好ましい。これらの基に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基等が挙げられる。
上記式(3)で表される有機ボラン(ルイス酸)として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(以下、「TPB」と称する)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。なお、ルイス酸としてTPBを含む触媒を、「TPB触媒」と称す。
有機ボランの対イオンとなるルイス塩基は、有機ボランのホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができ、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適に用いられる。具体的には、窒素原子、リン原子または硫黄原子を有する化合物を用いることができる。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子または硫黄原子が有する非共有電子対を有機ボランのホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することができる。
有機ボランとルイス塩基との塩としては、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPB/アルキルアミン錯体やTPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH3錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。これらの中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH3錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適に用いられる。
光潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。これらの中でも、オニウム塩を使用することが好ましく、トリアリールスルホニウム塩およびジアリールヨードニウム塩のうち少なくとも1種を使用することが好ましい。
色素として好適に用いられるスクアリリウム化合物とクロコニウム化合物について説明する。スクアリリウム化合物としては、スクアリリウム骨格を有する化合物であれば特に制限なく用いることができ、下記式(4)で表されるスクアリリウム骨格を有する化合物が具体的に示される。クロコニウム化合物としては、クロコニウム骨格を有する化合物であれば特に制限なく用いることができ、下記式(5)で表されるクロコニウム骨格を有する化合物が具体的に示される。下記式(4)および式(5)において、R21〜R24はそれぞれ独立して有機基を表す。なお、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物には、共鳴関係にある化合物が存在している場合があり、下記式(4)で表されるスクアリリウム化合物や下記式(5)で表されるクロコニウム化合物には、これら全ての共鳴関係にある化合物が含まれる。
スクアリリウム化合物は、上記式(4)において、R21とR22の少なくとも一方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表すものが好ましい。クロコニウム化合物は、上記式(5)において、R23とR24の少なくとも一方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表すものが好ましい。このようなスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いることにより、π共役系がスクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格から芳香族炭化水素環や芳香族複素環にかけて広がって、近赤外領域の光の透過を選択的にカットしやすくなる。より好ましくは、上記式(4)において、R21とR22の両方が、スクアリリウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、上記式(5)において、R23とR24の両方が、クロコニウム骨格とπ共役系で繋がった、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表す。
芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜14のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、フルオランテン環、シクロテトラデカヘプタエン環等が挙げられる。中でも、置換基を有していてもよい5員または6員の芳香族炭化水素環が好ましい。
芳香族複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環等が挙げられ、具体的には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。中でも、置換基を有していてもよい5員または6員の芳香族複素環が好ましい。
芳香族炭化水素環と芳香族複素環を含む縮合環としては、例えば、インドール環、イソインドール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、ベンゾピラン環、アクリジン環、キサンテン環、カルバゾール環等が挙げられる。
芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環は、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格と直接結合していてもよく、π共役系を有する連結基を介してスクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格と結合していてもよい。いずれの場合も、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格からこれらの環構造にかけてπ共役系が広がるように構成されていればよい。π共役を有する連結基としては、例えば、−CRa1=、−(CRa2=CRa3)h−(式中、Ra1〜Ra3は、水素原子、有機基またはハロゲン原子を表し、Ra2とRa3は互いに繋がって環を形成していてもよく、hは1以上の整数を表す)で表される基が示される。Ra1〜Ra3の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環が有していてもよい置換基Ra4の種類は特に限定されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオオキシ基(アルキルチオ基)、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオオキシ基(アリールチオ基)、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミド基、スルホンアミド基、エチレン含有基、イミン含有基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基、ベンゾチアゾール基、ハロゲノアルキル基等の有機基や;ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基(スルホン酸基)等の極性官能基が挙げられる。
スクアリリウム化合物とクロコニウム化合物は、上記式(4)および式(5)において、R21〜R24がそれぞれ独立して、下記式(6)で示される基を有する化合物であることが好ましい。このようなスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物を用いれば、可視光領域(特に400nm〜450nmの波長範囲)の光の平均透過率を高めることが容易になり、また近赤外領域の吸収波形のショルダーピークを大幅に低減して、光学特性を改善できる。さらに、環Bのπ共役系を適宜設定することにより、スクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物の吸収波長を容易に調整できる。
式(6)中、環Aは、置換基を有していてもよい4〜9員の不飽和炭化水素環を表し、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表し、R25は、水素原子、有機基または極性官能基を表し、*は式(4)中の4員環または式(5)中の5員環との結合部位を表す。
環Aは、スクアリリウム骨格またはクロコニウム骨格に結合する炭素原子とピロール環のα位の炭素原子との間に二重結合を有するとともに、ピロール環のα位の炭素とβ位の炭素を含んで構成される不飽和炭化水素環である。環Aは、前記二重結合以外にも不飽和結合(好ましくは二重結合)を有していてもよく、好ましくは不飽和結合(二重結合)を1個のみ有する。環Aは、好ましくは5〜8員環であり、より好ましくは6〜8員環である。スクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物が環Aを有していれば、吸収波形の低波長側のショルダーピークを大幅に低減することが可能となり、光学特性を改善することができる。また、環Aを有することにより、分子歪みによってπ−π*遷移のバンドギャップが狭くなり、かつ環Bによってπ電子系が広範囲に広がることができるため、吸収波長の長波長化を容易に達成することができる。
環Aの構造としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロノネン、シクロノナジエン、シクロノナトリエン、シクロノナテトラエン等のシクロアルケン構造が挙げられる。中でも、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のシクロアルカンモノエンが好ましい。
環Aは置換基を有していてもよく、そのような置換基としては置換基Ra4として上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。中でも、環Aに結合する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、アリール基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、アミド基、スルホンアミド基、水酸基が好ましく、アルキル基または水酸基がより好ましく、これにより、スクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物の有機溶媒への溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1〜2である。環Aが置換基を有する場合、その数は1〜6が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2がさらに好ましい。ただし、環Aの置換基の数は、環Aの構成員数から3を引いた値以下であることが好ましい。環Aが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数の置換基は各々別の炭素原子に結合していてもよく、1つの炭素原子に結合していてもよい。環Aは置換基を有しなくてもよい。
環Aの一部を構成するピロール環のβ位の炭素原子には、水素原子、有機基または極性官能基が結合している(式(6)におけるR25)。式(6)中、R25の有機基と極性官能基としては、置換基Ra4として上記に説明した有機基や極性官能基が挙げられる。中でも、式(6)のR25としては、水素原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アリール基が好ましく、アルキル基またはアリール基がより好ましく、これにより、スクアリリウム化合物やクロコニウム化合物の溶剤溶解性を高めやすくなる。この場合、アルキル基の炭素数は、直鎖状または分岐状のアルキル基であれば1〜6が好ましく、より好ましくは1〜4であり、脂環式のアルキル基であれば4〜7が好ましく、より好ましくは5〜6である。アリール基の炭素数は6〜10が好ましく、より好ましくは6〜8である。R25がアルキル基またはアリール基である場合、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が好ましく挙げられる。
式(6)中、環Bは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、芳香族複素環、またはこれらの環構造を含む縮合環を表す。これらの環構造の具体例は、上記に説明した通りである。環Bのπ共役系を適宜設定することにより、スクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物の吸収波長を容易に調整することができる。式(6)で示される基が結合したスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物は、短波長域では、極大吸収波長を例えば650nm程度に調整することができ、環Bのπ電子数を増加させる(π共役系を広げる)ことにより最大吸収波長を長波長シフトさせて、例えば極大吸収波長を1100nm程度まで調整することが可能である。
環Bは置換基を有していてもよく、当該置換基としては、環Aが有していてもよい置換基が例示される。環Bに結合する置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐状アルキル基)、アリール基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜2のアルキルチオ基)、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、水酸基、チオール基、ベンゾチアゾール基、インドリニル基等の電子供与性基や;ハロゲノ基(好ましくは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基)、ハロゲノアルキル基(好ましくは炭素数1〜3のパーハロゲノアルキル基)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エステル基)、カルボキシ基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、スルホニル基、スルホン酸エステル基、ニトロ基等の電子吸引性基が好ましい。これらの中でも、電子吸引性基がより好ましく、ハロゲノ基が特に好ましい。環Bが置換基を有する場合、その数は1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、さらに好ましくは1である。環Bが複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。なお、環Bは置換基を有さなくてもよい。
スクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物は公知の方法を用いて合成すればよく、式(6)で示される基を有するスクアリリウム化合物またはクロコニウム化合物は、例えば、下記式(7)で表されるピロール環含有化合物を、スクアリン酸またはクロコン酸と反応させることにより製造することができる。なお、下記式(7)中、環A、環BおよびR25は、上記の式(6)における意味と同じである。
原料として用いるピロール環含有化合物は、公知の合成手法を適宜採用することによって合成でき、例えば、ベンジルヒドラジン塩酸塩とシクロアルカノンとの反応により合成できる。このとき、2位に置換基を有するシクロアルカノンを用いることにより置換基R25を導入することができ、また2位以外の位置に置換基を有するシクロアルカノンを用いれば、環Aに置換基を導入することができる。環Bの構造は、ベンジルヒドラジン塩酸塩の代わりに他の芳香族ヒドラジン塩酸塩を使用することにより、変えることができる。ピロール環含有化合物はまた、例えば次の論文に記載の合成法によっても合成することができる:Sajjadifar et al.,“New 3H-Indole Synthesis by Fischer's Method. Part I”, Molecules, Vol.15, p.2491-2498 (2010)。
スクアリリウム化合物は、例えば、次の論文に記載の合成法によって合成することができる:Serguei Miltsov et al.,“New Cyanine Dyes:Norindosquarocyanines”, Tetrahedron Letters, Vol.40, Issue 21, p.4067-4068 (1999)。クロコニウム化合物は、例えば、特開2002−286931号公報、特開2007−31644号公報、特開2007−31645号公報、特開2007−169315号公報に記載されている方法により合成することができる。
色素として好適に用いられるフタロシアニン化合物について説明する。フタロシアニン化合物は、フタロシアニン骨格(すなわち4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造)を有する化合物であれば特に制限なく用いることができる。色素としてフタロシアニン化合物を用いれば、近赤外領域の光の透過を選択的にカットしやすくなる。また、フタロシアニン化合物は分解温度が高いため、耐久性に優れた光選択透過フィルターを得ることが容易になる。
フタロシアニン化合物としては、下記式(8)で表される化合物を用いることが好ましい。式(8)中、Mは、金属原子、金属酸化物または金属ハロゲン化物を表し、R31a〜R31d、R32a〜R32d、R33a〜R33dおよびR34a〜R34dは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。Mを構成する金属元素は、酸素やハロゲン等の他の元素と結合していても配位していてもよい。
式(8)中、Mを構成する金属元素としては、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられる。これらの金属元素の中でも、可視光透過性や耐光性の点から、銅、バナジウム、および亜鉛が好ましく、銅および亜鉛がより好ましい。銅フタロシアニン(フタロシアニンの銅錯体)は、光による劣化が少なく、優れた耐光性を有する。亜鉛フタロシアニン(フタロシアニンの亜鉛錯体)は、光選択透過性の高いフィルターを得る場合に特に有用である。
式(8)中、R31a〜R31d、R32a〜R32d、R33a〜R33dおよびR34a〜R34dのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
R31a〜R31d、R32a〜R32d、R33a〜R33dおよびR34a〜R34dの置換基を有していてもよいアルコキシ基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アルコキシ基に結合していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基等が挙げられる。
R31a〜R31d、R32a〜R32d、R33a〜R33dおよびR34a〜R34dの置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、炭素数が6〜15であることが好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基に結合していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
式(8)で表される化合物は、フタロシアニン骨格にハロゲン原子または電子供与性基が結合していることが好ましい。従って、R31a〜R31d、R32a〜R32d、R33a〜R33dおよびR34a〜R34dのうちの1つ以上は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシ基、または、置換基を有していてもよいアリールオキシ基であることが好ましい。フタロシアニン骨格にこれらの置換基が結合していれば、フタロシアニン化合物の吸収波長が長波長側にシフトし、近赤外領域の光の透過をカットしやすくなる。
フタロシアニン化合物は、公知の方法を用いて合成すればよく、一般には、フタロニトリル誘導体を無溶媒または有機溶媒の存在下で加熱することで得ることができる。フタロシアニン化合物の合成は、例えば、特公平06−031239号公報、特許第3721298号公報、特許第3226504号公報、特開2010−077408号公報等を参考にすることができる。
吸収層中の色素の含有量は、光選択透過フィルターの所望する光学性能に応じて適宜調整すればよいが、例えば吸収層100質量%中、色素の含有量は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、また20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。このように吸収層中の色素含有量を調整することにより、所望の波長領域に吸収波長帯を十分広い範囲で有しやすくなるとともに、それ以外の波長領域での光線透過率を高めやすくなる。
吸収層に、色素として、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、またはフタロシアニン化合物が含まれる場合は、これらの化合物に由来して所望の光選択透過性能(特に近赤外領域の光の選択的な吸収特性)が発揮されるようにする点から、吸収層に含まれる色素の総量100質量%中、これらの化合物の含有率が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましい。吸収層には、色素として、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、またはフタロシアニン化合物のみが含まれていてもよい。
吸収層には、例えば、350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物(紫外線吸収剤)が含有されていてもよい。これらの化合物の存在により、350nm〜400nm波長域の光に起因する樹脂の劣化を抑制することができる。350nm〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、BASF社製のTINUVIN(登録商標)シリーズを用いることができる。
吸収層には、任意の有機微粒子または無機微粒子が含有されていてもよい。有機微粒子または無機微粒子は、例えば、吸収層に屈折率や導電性等に関する機能を付与するために用いられる。吸収層の高屈折率化や導電性付与に有用な微粒子の具体例として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、インジウムドープ酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。一方、吸収層の低屈折率化に有用な微粒子の具体例として、フッ化マグネシウム、シリカ、中空シリカ等が挙げられる。防眩性付与に有用な微粒子の具体例としては、上記の微粒子に加え、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン等の無機微粒子:シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂およびこれらの共重合樹脂等の有機微粒子が挙げられる。吸収層には、これらの微粒子が1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
吸収層には、表面調整剤が含有されていてもよい。吸収層に表面調整剤が含まれることにより、樹脂組成物を硬化して吸収層を形成した際に、吸収層にストライエーションや凹み等の外観上の欠陥を生じることを抑制することができる。表面調整剤は、吸収層100質量%中、例えば0.01〜1質量%含まれていればよい。
表面調整剤の種類は特に限定されず、シロキサン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系レベリング剤などを用いることができる。中でも、表面調整剤としては、シロキサン系界面活性剤またはアクリル系レベリング剤を用いることが好ましく、シロキサン系界面活性剤を用いることがより好ましい。
シロキサン系界面活性剤としては、シロキサン結合を有する界面活性剤であれば特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。中でも、吸収層中における色素(特にスクアリリウム化合物やクロコニウム化合物)の分散性の観点から、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンは、親水基がポリアルキレンオキサイド(より好ましくはエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド)、疎水基がジメチルシロキサンで構成される非イオン系の界面活性剤であることが特に好ましい。
吸収層には、上記以外の添加剤として、必要に応じて、可塑剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
樹脂を含有する吸収層は、樹脂成分と、水酸基との反応性基を有する化合物と、色素とを少なくとも含有する樹脂組成物から形成することができる。樹脂組成物は、射出成形等の成形に用いることのできる熱可塑性樹脂組成物であってもよく、スピンコート法や溶媒キャスト法等により塗工できるよう塗料化された樹脂組成物であってもよいが、本発明ではガラス基板上に吸収層を形成することから、塗料化された樹脂組成物を用いることが好ましい。樹脂成分としては、重合が完結した樹脂のみならず、樹脂原料(樹脂の前駆体、当該前駆体の原料、樹脂を構成する単量体等を含む)であって、樹脂組成物を成形する際に重合反応または架橋反応して樹脂に組み込まれるものも用いることができる。樹脂成分としては、上記に説明した各樹脂を用いることができる。
塗料化された樹脂組成物としては、溶媒を含む樹脂組成物が挙げられ、例えば、色素や水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂を含む溶媒(溶剤)に溶解または分散したものが挙げられる。溶媒としては、有機溶剤を用いることが好ましく、例えば、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、シクロヘキサノン等のケトン類;PGMEA(2−アセトキシ−1−メトキシプロパン)、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体(エーテル化合物、エステル化合物、エーテルエステル化合物等);N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;N−メチル−ピロリドン(具体的には、1−メチル−2−ピロリドン等)等のピロリドン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。溶媒の含有量としては、樹脂組成物100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、また95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
樹脂組成物中の水酸基との反応性基を有する化合物の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。色素の配合量は、樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。なお、樹脂の量(例えば、樹脂100質量部など)は、樹脂組成物が溶媒を含有する場合は、溶媒を除く固形分量を意味する。
水酸基との反応性基を有する化合物として上記に説明した特定シラン化合物を用いる場合は、シランカップリング剤を樹脂組成物に含有させたり、シランカップリング剤の加水分解物および/またはその加水分解縮合物を樹脂組成物に含有させればよい。シランカップリング剤の加水分解物および/またはその加水分解縮合物は、シランカップリング剤と水とを配合して加水分解またはさらに脱水縮合することにより得ることができる。例えば上記式(1)や式(2)で表される特定シラン化合物の場合は、下記式(9)で表されるケイ素化合物と水とを配合して、加水分解またはさらに脱水縮合することにより得ることができる。通常、シランカップリング剤を加水分解させて加水分解物が生成すると、さらに脱水縮合反応が速やかに進行し、加水分解物の少なくとも一部がその脱水縮合物に変換される。
SiR1 m(OR2)4-m (9)
SiR1 m(OR2)4-m (9)
上記式(9)中、R1はアルキル基、エポキシ基含有基、アミノ基含有基、メルカプト基含有基または重合性二重結合含有基を表し、R2はアルキル基を表し、mは1〜3の整数を表し、mが2以上のとき、複数のR1は互いに同一であっても異なっていてもよく、4−mが2以上のとき、複数のOR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。R1とR2とmの好適態様は上記に説明した通りである。
シランカップリング剤を水と反応させて得られたシランカップリング剤の加水分解物および/またはその加水分解縮合物を含有する反応生成液は、水を除去することなく樹脂や色素と配合して樹脂組成物とすることが、製造上簡便であり好ましい。このようにして得られた樹脂組成物をガラス基板上に塗工して硬化させることにより、ガラス基板上に吸収層を形成することができる。
シランカップリング剤と水とを反応させる際は、シランカップリング剤100質量部に対して、水を25質量部未満用いることが好ましく、22質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。このように水の配合量を調節することで、最終的に得られる樹脂組成物の水分量を低減することができ、樹脂組成物を硬化して吸収層を形成した際に吸収層の表面に凹み等の欠陥が生じにくくなる。一方、シランカップリング剤と水とを反応させる際の水の量の下限は、シランカップリング剤の加水分解反応をスムーズに進行させる点から、シランカップリング剤100質量部に対して、水を1質量部以上用いることが好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。
シランカップリング剤の加水分解反応および脱水縮合反応は、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等)中で行うことが好ましく、これにより反応の制御が容易になる。アルコール溶媒を使用する場合、その使用量は、シランカップリング剤100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、また500質量部以下が好ましく、300質量部以下がより好ましく、200質量部以下がさらに好ましい。
シランカップリング剤の加水分解反応は、触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の塩基;硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中でも有機酸を用いることが好ましい。なお、式(9)で表されるケイ素化合物の置換基R1がエポキシ基含有基である場合、加水分解反応において当該エポキシ基の開環反応が抑制されることが好ましいことから、触媒として塩基を用いる場合は、置換基R1に含まれるエポキシ基はシクロアルケンオキサイドの形態で含まれることが好ましく、触媒として酸を用いる場合は、置換基R1に含まれるエポキシ基はグリシジル基の形態で含まれることが好ましい。触媒を使用する場合、その使用量は、シランカップリング剤100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、これによりシランカップリング剤の加水分解反応を好適に進行させることができる。一方、触媒の使用量は、シランカップリング剤100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、これにより吸収層の透過率(吸収帯以外の透過率)を高めやすくなる。
シランカップリング剤の加水分解反応および脱水縮合反応における反応条件は特に限定されず、反応の進行を見ながら反応温度や反応時間を適宜調整すればよい。例えば、シランカップリング剤の加水分解反応および脱水縮合反応は、0℃〜80℃の温度で、1分〜3時間行えばよい。
上記のようにして得られた樹脂組成物には水が多く含まれないことが好ましく、具体的には、樹脂組成物100質量%中、水分量が0.35質量%未満であることが好ましく、0.32質量%以下がより好ましく、0.30質量%以下がさらに好ましい。このように樹脂組成物の水分量を低減することにより、樹脂組成物を硬化して吸収層を形成した際に吸収層の表面に凹み等の欠陥が生じにくくなり、外観が良好なものとなる。樹脂組成物中の水分量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。樹脂組成物中の水分量は、カールフィッシャー法(容量滴定法)により分析する。
樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、硬化触媒、表面調整剤、紫外線吸収剤、有機微粒子、無機微粒子、可塑剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、比抵抗調整剤、pH調整剤、密着性向上剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、樹脂組成物に硬化剤および/または硬化触媒が含まれていることが好ましい。硬化剤や硬化触媒の具体例やその好適態様は上記に説明した通りである。硬化剤および/または硬化触媒の配合量は、その総量として、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば0.1〜10質量部とすればよい。
本発明の光選択透過フィルターは、水に対する接触角が21°以下のガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を形成する工程(吸収層形成工程)を有する製造方法により得ることができる。吸収層形成工程では、例えば上記に説明したような樹脂組成物をガラス基板上に塗工し、硬化させることにより、吸収層を形成することができる。なお上記では、水酸基との反応性基を有する化合物が添加剤として樹脂に含まれる樹脂組成物について説明したが、水酸基との反応性基を有する化合物が樹脂成分を構成する樹脂組成物であってもよい。また、水酸基との反応性基を有する化合物としては、上記に説明したように、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
樹脂組成物の塗工方法としては、スピンコート法、溶媒キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等が好適に用いられる。これらの中でも、スピンコート法が、薄くて均一な厚みの吸収層を形成しやすい点で、好ましく用いられる。スピンコート法では、例えば、塗料化された樹脂組成物をガラス基板上に載せた後、回転数500rpm〜4000rpmで10秒〜60秒間程度回転させることにより、ガラス基板上に薄くて均一な厚みの塗膜を形成することができる。その後、例えば150℃〜350℃で加熱することにより、樹脂が硬化し、吸収層を形成することができる。
吸収層の厚さは特に限定されず、光選択透過フィルターの所望の光学性能や強度に応じて適宜調整すればよい。吸収層の厚さは、例えば3μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、これにより厚さの薄い光選択透過フィルターとすることができる。吸収層の厚さの下限としては、例えば0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。なお、吸収層は3μmよりも厚く形成することも当然可能である。
水に対する接触角が21°以下のガラス基板を得るために、吸収層形成工程の前に、ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄し、ガラス基板の表面の水に対する接触角を21°以下にする洗浄工程を設けることが好ましい。洗浄工程でガラス基板をアルカリ溶液で洗浄することにより、ガラス基板の表面の不純物が除去されるとともに、ガラス基板の表面に水酸基が露出あるいは付与され、ガラス表面の親水性が高められると考えられる。
ガラス基板のアルカリ溶液による洗浄は、ガラス基板とアルカリ溶液を接触させればよく、ガラス基板をアルカリ溶液に浸漬させたり、ガラス基板の表面にアルカリ溶液を流したりすればよい。ガラス基板の洗浄は、ガラス基板の表面に傷がつかないようにするために、物理的な接触を伴わない洗浄が好ましい。
アルカリ溶液は、ガラス基板の洗浄力を確保する点から強アルカリの水溶液であることが好ましく、アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度は、例えば0.5mol/L以上が好ましく、1mol/L以上がより好ましく、3mol/L以上がさらに好ましく、5mol/L以上が特に好ましい。アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度の上限としては、取り扱い性を考慮すると、例えば20mol/L以下が好ましく、15mol/L以下がより好ましく、10mol/L以下がさらに好ましい。アルカリ溶液の水酸化物イオン濃度は、例えばアルカリ溶液を調製する際の仕込み量から求めることができる。アルカリ溶液としてはアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いることが好ましく、これにより高い水酸化物イオン濃度のアルカリ溶液を調製することが容易になる。アルカリ金属水酸化物としては、入手容易性から水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いることが好ましい。
ガラス基板のアルカリ溶液による洗浄時間は、洗浄後のガラス基板の水との接触角を見ながら適宜設定すればよく、例えば1分以上が好ましく、2分以上がより好ましく、3分以上がさらに好ましく、4分以上がさらにより好ましい。一方、洗浄時間が長すぎても洗浄による効果がそれ以上向上しないことから、1時間以下が好ましく、30分以下がより好ましく、20分以下がさらに好ましい。
洗浄工程では、ガラス基板をアルカリ溶液で超音波洗浄することが好ましい。ガラス基板を超音波洗浄することにより、ガラス基板の表面への物理的な接触を伴わずに、ガラス基板の表面を効果的に洗浄することができる。この場合、ガラス基板をアルカリ溶液に浸漬した状態で超音波洗浄すればよく、超音波の周波数は25kHz〜1MHzの間で適宜調整すればよい。洗浄力を高める点から、超音波の周波数は200kHz以下が好ましく、100kHz以下がより好ましく、50kHz以下がさらに好ましい。
アルカリ溶液で洗浄したガラス基板は、水洗浄によりガラス基板上に残ったアルカリ溶液を洗い流すことが好ましい。ガラス基板は、さらに必要に応じて、加熱して乾燥させることが好ましい。このときの加熱温度は例えば60℃〜120℃とすればよい。
上記のようにして洗浄されたガラス基板は、表面の水との接触角が洗浄前よりも小さくなり、水との親和性が高められたものとなる。洗浄後のガラス基板は、表面状態を洗浄後の状態に維持したまま次工程の吸収層形成工程で用いられることが好ましく、従って、洗浄工程と吸収層形成工程は、例えば同一の工場内あるいは建屋内で実施されることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、上記に説明した吸収層、ガラス基板以外に、さらに誘電体多層膜を有していてもよい。誘電体多層膜は吸収層上に設けられ、吸収層のガラス基板とは反対側に設けられることが好ましい。誘電体多層膜によって所望の波長範囲の光線を透過させたりカットすることができ、光選択透過フィルターに、反射防止膜(可視光反射防止膜)、赤外線反射膜、紫外線反射膜等としての機能を付与することができる。誘電体多層膜はこれら2つ以上の機能を備えることもでき、少なくとも可視光反射防止膜と赤外線反射膜としての機能を有することが好ましい。
誘電体多層膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層して形成することができる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択されることが好ましい。高屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化スズ、酸化ビスマス等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;前記酸化物や前記窒化物の混合物やそれらにアルミニウムや銅等の金属や炭素を含有ドープしたもの(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO))等が挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択されることが好ましい。低屈折率材料層を構成する材料としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ、SiOx(x=1〜2))、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が挙げられる。
誘電体多層膜は、蒸着膜として形成することができる。誘電体多層膜の蒸着は公知の方法により行えばよい。例えば、蒸発源の加熱手段としては、抵抗加熱、電子ビーム加熱、高周波誘導加熱、レーザビーム加熱等の公知の加熱手段を用いることができる。蒸着の際の真空度は5×10-2Pa以下(絶対圧)とすることが好ましく、蒸着温度は、例えば80℃以上300℃以下とすることが好ましい。なお蒸着としては、イオンアシスト蒸着を用いることが好ましく、これにより緻密かつ平滑性の高い誘電体多層膜を形成しやすくなり、所望の光学性能を付与させやすくなる。イオンアシストとしては、イオン銃、イオンプレーティング、プラズマ銃等を用いることができる。
誘電体多層膜の厚みは特に限定されず、例えば0.01μm〜10μmの範囲であればよい。誘電体多層膜の層数は、反射防止膜や赤外線反射膜としての光学性能を発揮させる観点から、例えば2層〜80層であることが好ましい。
光選択透過フィルターは、上記に説明した吸収層、ガラス基板、誘電体多層膜以外に、他の層(膜)を有していてもよい。他の層(膜)としては、防眩性を有する層、傷付き防止性能を有する層、金属膜、その他の機能を有する透明ガラス基板等が挙げられる。
光選択透過フィルターの厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、例えば、撮像素子の小型化への要請に十分に応えることができる。光選択透過フィルターの厚みは、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下、さらにより好ましくは150μm以下であり、また30μm以上が好ましく、50μm以上がさらに好ましい。
光選択透過フィルターのヘイズは、例えば3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
本発明の光選択透過フィルターは、撮像素子用途に特に好適である。本発明には、光選択透過フィルターを有する撮像素子も含まれる。撮像素子は、固体撮像素子やイメージセンサチップとも称され、被写体の光を電気信号に変換し、電気信号として出力する電子部品である。撮像素子は、通常、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)を有し、レンズを有していてもよい。撮像素子は、例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等に用いられる。撮像素子は、本発明の光選択透過フィルターを1または2以上含み、必要に応じて、さらに他の部材を有していてもよい。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、下記の説明では特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
(1)吸収層形成用樹脂組成物の調製
(1−1)調製例1(スクアリリウム化合物Aの調製)
近赤外線吸収色素として、下記に示す構造を有するスクアリリウム化合物Aを作製した。スクアリリウム化合物Aは、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法、すなわち明細書中に挙げた論文に記載された合成方法によって作製した。スクアリリウム化合物Aは、近赤外領域の波長730nmに吸収極大を有する吸収ピークを示す。
(1−1)調製例1(スクアリリウム化合物Aの調製)
近赤外線吸収色素として、下記に示す構造を有するスクアリリウム化合物Aを作製した。スクアリリウム化合物Aは、ピロール環含有化合物とスクアリン酸とを反応させる公知の合成手法、すなわち明細書中に挙げた論文に記載された合成方法によって作製した。スクアリリウム化合物Aは、近赤外領域の波長730nmに吸収極大を有する吸収ピークを示す。
(1−2)調製例2(水酸基との反応性基を有する化合物の調製)
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、ofs−6040)4.0部と2−プロパノール(和光純薬工業社製)5.4部と純水(和光純薬工業社製)0.6部とギ酸0.04部とを配合し、25℃で180分間混合し、水酸基との反応性基を有する化合物としてシランカップリング剤の加水分解物および/またはその加水分解縮合物を含有するシラン組成物を調製した。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、ofs−6040)4.0部と2−プロパノール(和光純薬工業社製)5.4部と純水(和光純薬工業社製)0.6部とギ酸0.04部とを配合し、25℃で180分間混合し、水酸基との反応性基を有する化合物としてシランカップリング剤の加水分解物および/またはその加水分解縮合物を含有するシラン組成物を調製した。
(1−3)調製例3(硬化触媒の調製)
国際公開第1997/031924号に記載された合成法に従って、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%の安藤パラケミー社製アイソパー(登録商標)E溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下して白色結晶を析出させ、これを室温まで冷却した後、吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥し、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析とGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。得られたTPB・水錯体2.0gとトルエンを1.1gとを配合し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.6g添加し、室温で60分間混合し、TPB触媒の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒とした。
国際公開第1997/031924号に記載された合成法に従って、TPB(トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)含有量7%の安藤パラケミー社製アイソパー(登録商標)E溶液255gを調製した。この溶液に水を60℃で滴下して白色結晶を析出させ、これを室温まで冷却した後、吸引ろ過し、n−ヘプタンで洗浄した。得られたケーキを60℃で減圧乾燥し、白色結晶であるTPB・水錯体(TPB含有粉末)を18.7g得た。この錯体は水分量9.2%(カールフィッシャー水分計)であり、TPB含有率は90.8%であった。乾燥後の錯体に対して19F−NMR分析とGC分析を実施したが、TPB以外のピークは検出されなかった。得られたTPB・水錯体2.0gとトルエンを1.1gとを配合し、室温で10分間混合した。その後、2mol/Lアンモニア・エタノール溶液を2.6g添加し、室温で60分間混合し、TPB触媒の均一溶液とした。これをカチオン硬化触媒とした。
(1−4)調製例4(吸収層形成用樹脂組成物の調製)
エポキシ樹脂として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル社製、EHPE3150)を100部、溶媒としてトルエン(和光純薬工業社製)150部とo−キシレン75部を、80℃にて均一に混合した。冷却後、調製例1で得たスクアリリウム化合物Aを9部と、表面調整剤としてビックケミー社製BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)0.3部を加え、25℃にて5分間均一に混合した。さらにそこに、調製例3で得た硬化触媒2.5部を加え均一に混合した後、孔径0.45μmのフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)でろ過して異物を取り除き、ベース樹脂組成物を得た。このベース樹脂組成物336.8部と、調製例2で得たシラン組成物15部とを配合し、25℃で30分間混合した。これを孔径0.45μmのフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)でろ過して異物を取り除き、吸収層形成用樹脂組成物を得た。
エポキシ樹脂として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル社製、EHPE3150)を100部、溶媒としてトルエン(和光純薬工業社製)150部とo−キシレン75部を、80℃にて均一に混合した。冷却後、調製例1で得たスクアリリウム化合物Aを9部と、表面調整剤としてビックケミー社製BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)0.3部を加え、25℃にて5分間均一に混合した。さらにそこに、調製例3で得た硬化触媒2.5部を加え均一に混合した後、孔径0.45μmのフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)でろ過して異物を取り除き、ベース樹脂組成物を得た。このベース樹脂組成物336.8部と、調製例2で得たシラン組成物15部とを配合し、25℃で30分間混合した。これを孔径0.45μmのフィルター(GLサイエンス社製、非水系13N)でろ過して異物を取り除き、吸収層形成用樹脂組成物を得た。
(2)ガラス基板の洗浄
表1に示す各方法にてガラス基板(Schott社製、D263Teco、50mm角)を洗浄液に漬けて洗浄を行い、実施例1〜3および比較例2、3で用いるガラス基板を準備した。水酸化カリウム(KOH)水溶液は水酸化カリウム(和光純薬工業社製)50gを純水150gに溶解して調製した。なお、当該溶液は比重1.24g/cm2(15℃)であることから、水酸化物イオン濃度としては5.5mol/Lであった。イソプロパノール(IPA)とヘキサンは、和光純薬工業社製のものを用いた。各洗浄液100mLを容量200mLのデスカップに入れ、そこにガラス基板を漬け、37kHzの超音波をかけて所定時間洗浄した。洗浄液による洗浄後、ガラス基板を200mLの超純水に漬けて1分間超音波をかけてすすぎ、再度、新しい超純水で1分間超音波をかけてすすいだ。再洗浄した超純水のpHが7であることを確認し、洗浄液の残存がないことを確認した。その後、80℃の熱風オーブンで30分間乾燥し、吸収層を形成するためのガラス基板を得た。なお比較例4で用いるガラス基板として、ガラス基板(Schott社製、D263Teco、50mm角)を窒素雰囲気下で200℃、30分間熱処理した。また、比較例1では、洗浄も熱処理も行わないガラス基板を用いた。
表1に示す各方法にてガラス基板(Schott社製、D263Teco、50mm角)を洗浄液に漬けて洗浄を行い、実施例1〜3および比較例2、3で用いるガラス基板を準備した。水酸化カリウム(KOH)水溶液は水酸化カリウム(和光純薬工業社製)50gを純水150gに溶解して調製した。なお、当該溶液は比重1.24g/cm2(15℃)であることから、水酸化物イオン濃度としては5.5mol/Lであった。イソプロパノール(IPA)とヘキサンは、和光純薬工業社製のものを用いた。各洗浄液100mLを容量200mLのデスカップに入れ、そこにガラス基板を漬け、37kHzの超音波をかけて所定時間洗浄した。洗浄液による洗浄後、ガラス基板を200mLの超純水に漬けて1分間超音波をかけてすすぎ、再度、新しい超純水で1分間超音波をかけてすすいだ。再洗浄した超純水のpHが7であることを確認し、洗浄液の残存がないことを確認した。その後、80℃の熱風オーブンで30分間乾燥し、吸収層を形成するためのガラス基板を得た。なお比較例4で用いるガラス基板として、ガラス基板(Schott社製、D263Teco、50mm角)を窒素雰囲気下で200℃、30分間熱処理した。また、比較例1では、洗浄も熱処理も行わないガラス基板を用いた。
(3)吸収層積層基板の作製
調製例4で得た吸収層形成用樹脂組成物を、上記で準備したガラス基板上に1cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、MS−A200)を用い、0.5秒間かけて1000回転にし、20秒間その回転数で保持し、その後3秒間かけて0回転(rpm)になるようにして、樹脂組成物をガラス基板上に成膜した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、イナートオーブン(光洋サーモシステム社製、CLO−9CH)を用いて室温で30分間窒素置換した後、30分程度で200℃に昇温し、窒素雰囲気下で200℃で30分間乾燥し、30分で150℃まで降温することにより、ガラス基板上に吸収層を形成した(以下、「吸収層積層基板」と称する)。ガラス基板上に形成した吸収層の厚みは2μmであった。なお、吸収層の厚みは、吸収層を形成したガラス基板の厚みとガラス基板単独の厚みをそれぞれマイクロメーターにより測定し、両者の差から求めた。
調製例4で得た吸収層形成用樹脂組成物を、上記で準備したガラス基板上に1cc垂らした後、スピンコーター(ミカサ社製、MS−A200)を用い、0.5秒間かけて1000回転にし、20秒間その回転数で保持し、その後3秒間かけて0回転(rpm)になるようにして、樹脂組成物をガラス基板上に成膜した。樹脂組成物を成膜したガラス基板を、イナートオーブン(光洋サーモシステム社製、CLO−9CH)を用いて室温で30分間窒素置換した後、30分程度で200℃に昇温し、窒素雰囲気下で200℃で30分間乾燥し、30分で150℃まで降温することにより、ガラス基板上に吸収層を形成した(以下、「吸収層積層基板」と称する)。ガラス基板上に形成した吸収層の厚みは2μmであった。なお、吸収層の厚みは、吸収層を形成したガラス基板の厚みとガラス基板単独の厚みをそれぞれマイクロメーターにより測定し、両者の差から求めた。
(4)ガラス基板および吸収層積層基板の評価方法
(4−1)ガラス基板の水との接触角の測定
静的接触角測定装置(協和界面化学社製、DM−500)を用い、ガラス基板に純水を2μL滴下して、水滴がガラス基板の表面に接触した0.5秒後の接触角を測定した。
(4−1)ガラス基板の水との接触角の測定
静的接触角測定装置(協和界面化学社製、DM−500)を用い、ガラス基板に純水を2μL滴下して、水滴がガラス基板の表面に接触した0.5秒後の接触角を測定した。
(4−2)湿熱下耐剥離性試験(PCT(Pressure Cooker Test)試験)
吸収層積層基板について、ガラス基板上に設けられた吸収層にカッター(エヌティー社製、A−300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で11本のクロスカット線を設けることによって4mm2の四角を100マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。次に、この評価用サンプル基板を、120℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽(平山製作所社製、パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−E、動作モード1)に50時間入れた。続いて、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製、スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、10秒間放置した。その後、基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、吸収層の剥がれが生じなかったマスの個数(非剥離マス個数)を数えた。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
吸収層積層基板について、ガラス基板上に設けられた吸収層にカッター(エヌティー社製、A−300)で切り込みを入れ、縦列、横列にそれぞれ2mm間隔で11本のクロスカット線を設けることによって4mm2の四角を100マス作製し、評価用サンプル基板を作製した。次に、この評価用サンプル基板を、120℃、2気圧、湿度100%の高圧高温高湿槽(平山製作所社製、パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−E、動作モード1)に50時間入れた。続いて、室温にて、空気が入らないようにテープ(3M(スリーエム)社製、スコッチ(登録商標)透明粘着テープ透明美色(登録商標))を貼り付け、10秒間放置した。その後、基板からのテープの剥離を1秒以内に行い、吸収層の剥がれが生じなかったマスの個数(非剥離マス個数)を数えた。なお、いずれのマスにおいても剥離力が一定となるようにテープの剥離を行った。
(5)結果
実施例1〜3と比較例1〜4で用いたガラス基板の接触角の測定結果と、湿熱下耐剥離性試験結果を表1に示す。洗浄をしなかったガラス基板上に吸収層を形成した比較例1では、ガラス基板の水との接触角は24.3°となり、耐剥離性試験における非剥離マス個数は、全マス個数100個に対して、75個となった。これに対して、ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄した実施例1〜3では、ガラス基板の水との接触角は21°以下となって親水性が高まり、その結果、耐剥離性試験における非剥離マス個数は80個以上と改善した。特に、ガラス基板をアルカリ溶液中で5分間以上超音波洗浄した実施例2、3では、ガラス基板の接触角がさらに低減し、耐剥離性試験における吸収層の剥離がほぼ完全に抑えられた。一方、ガラス基板をイソプロパノールやヘキサン中で洗浄した比較例2、3や熱処理した比較例4では、比較例1よりもガラス基板の接触角が大きくなり、耐剥離性試験において剥離したマス個数も増えた。
実施例1〜3と比較例1〜4で用いたガラス基板の接触角の測定結果と、湿熱下耐剥離性試験結果を表1に示す。洗浄をしなかったガラス基板上に吸収層を形成した比較例1では、ガラス基板の水との接触角は24.3°となり、耐剥離性試験における非剥離マス個数は、全マス個数100個に対して、75個となった。これに対して、ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄した実施例1〜3では、ガラス基板の水との接触角は21°以下となって親水性が高まり、その結果、耐剥離性試験における非剥離マス個数は80個以上と改善した。特に、ガラス基板をアルカリ溶液中で5分間以上超音波洗浄した実施例2、3では、ガラス基板の接触角がさらに低減し、耐剥離性試験における吸収層の剥離がほぼ完全に抑えられた。一方、ガラス基板をイソプロパノールやヘキサン中で洗浄した比較例2、3や熱処理した比較例4では、比較例1よりもガラス基板の接触角が大きくなり、耐剥離性試験において剥離したマス個数も増えた。
本発明の光選択透過フィルターは、表示素子や撮像素子等の光学デバイス等、種々の分野において用いることが可能である。例えば、携帯電話用カメラ、デジタルカメラ、車載用カメラ、監視カメラ、表示素子(LED等)等の電子部品に使用できる。
Claims (9)
- 水に対する接触角が21°以下のガラス基板と、
前記ガラス基板上に形成され、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を有することを特徴とする光選択透過フィルター。 - 前記吸収層が樹脂を含有し、前記水酸基との反応性基を有する化合物が前記樹脂に添加されている請求項1に記載の光選択透過フィルター。
- 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の光選択透過フィルター。
- 前記色素が、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、およびフタロシアニン化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光選択透過フィルター。
- 前記色素が、波長600nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有する近赤外線吸収色素である請求項1〜4のいずれか一項に記載の光選択透過フィルター。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光選択透過フィルターを有することを特徴とする撮像素子。
- ガラス基板をアルカリ溶液で洗浄し、前記ガラス基板の表面の水に対する接触角を21°以下にする工程と、
前記洗浄工程で得られたガラス基板上に、水酸基との反応性基を有する化合物と色素とを含有する吸収層を形成する工程を有することを特徴とする光選択透過フィルターの製造方法。 - 前記洗浄工程において、前記ガラス基板をアルカリ溶液で超音波洗浄する請求項7に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
- 前記水酸基との反応性基を有する化合物が、シランカップリング剤、シランカップリング剤の加水分解物、およびシランカップリング剤の加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である請求項7または8に記載の光選択透過フィルターの製造方法。
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---|---|---|---|
JP2017004384A JP2018112707A (ja) | 2017-01-13 | 2017-01-13 | 光選択透過フィルターおよびその製造方法 |
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WO2020054762A1 (ja) * | 2018-09-14 | 2020-03-19 | Agc株式会社 | 電波透過性基板 |
-
2017
- 2017-01-13 JP JP2017004384A patent/JP2018112707A/ja active Pending
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JPWO2020054762A1 (ja) * | 2018-09-14 | 2021-09-16 | Agc株式会社 | 電波透過性基板 |
JP7439760B2 (ja) | 2018-09-14 | 2024-02-28 | Agc株式会社 | 電波透過性基板 |
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