JP2018112224A - 自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法 - Google Patents

自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法 Download PDF

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勇司 古賀
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Abstract

【課題】BRGの焼損の発生を抑えることが可能な、自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供すること。
【解決手段】ベアリングを備える自動変速機におけるベアリングの発熱量W1と、ベアリングにおける冷却量W2とを推定し、発熱量W1と冷却量W2とを比較し、発熱量W1が冷却量W2を超えているときには、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行う制御部を備える自動変速機の制御装置である。制御部は、ベアリングにおける潤滑量Qに基づいて冷却量W2を推定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両等の自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法に関する。
従来より、車両においては、変速クラッチ等の摩擦係合要素を選択的に締結制御することで、複数の変速歯車列からなる動力伝達経路を切り換えて、自動的に変速を行う自動変速機が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
近年では、エンジンの高出力化や自動変速機の変速品質向上等を目的として、自動変速機の変速動作(摩擦係合要素の締結動作)が頻繁に行われる傾向にあり、それに伴い、自動変速機においては、変速に供するベアリング(以下、「BRG」と言う)の発熱量が増加する傾向にある。変速動作時の発熱によって高温となった摩擦係合要素とともにBRGは、主として自動変速機の作動油(ATF)との熱交換等によって当該ATFの油温と同等の温度まで冷却される。このため、ATFの油温上昇を抑制することは、BRGのフェーシングを焼損等の熱害から保護するための重要な要件となる。
特開2011−27210号公報
上記公報に記載された装置においては、摩擦係合要素の温度を算出するとともに、摩擦係合要素の入出力の差回転を検出する。そして、摩擦係合要素に焼損を起こすおそれがある場合は係合不可と判断し、係合を遅延させる。しかし、上記公報には、BRGの焼損の発生からBRGを確実に保護することについての積極的な記載はなく、BRGをより確実に焼損の発生から保護することが求められていた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、BRGの焼損の発生を抑えることが可能な、自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、ベアリング(例えば、後述のBRG131)を備える自動変速機(例えば、後述の変速ギア機構13)における前記ベアリングの発熱量(例えば、後述の発熱量W1)を推定する制御部(例えば、後述の発熱量算出部312)を備える、自動変速機の制御装置(例えば、後述の自動変速機の制御装置10)を提供する。
これにより、ベアリングの発熱量の推定値に基づいて、ベアリングの状態を適切に把握することが可能となる。このため、ベアリングの状態に対応して、ベアリングの焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
この場合、前記制御部(例えば、後述の冷却量算出部322)は、前記ベアリングにおける冷却量(例えば、後述の冷却量W2)を推定することが好ましい。これにより、ベアリングにおける冷却量の推定値とベアリングの発熱量の推定値に基づいて、ベアリングの焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
また、前記制御部(例えば、後述の冷却量算出部322)は、前記ベアリングにおける潤滑量(例えば、後述の潤滑量Q)に基づいて前記冷却量を推定することが好ましい。これにより、冷却量を適切に推定することが可能となる。この結果、ベアリングの焼損の発生を抑えるための適切な制御を、より高い精度で行うことが可能となる。
また、前記制御部(例えば、後述の判断部323)は、前記発熱量と前記冷却量とを比較し、前記発熱量が前記冷却量を超えているときには、前記発熱量を前記冷却量以下にする制御を行うことが好ましい。これにより、発熱量が冷却量を上回ることを抑えることができ、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、前記制御は、前記自動変速機を備える車両の速度を制限するか、又は、前記車両のエンジンの出力トルクを制限することにより行われることが好ましい。これにより、ベアリングにおける発熱が抑えられ、発熱量を冷却量以下とすることが可能となる。この結果、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、前記制御は、前記自動変速機の油路(例えば、後述の油路171)を流通する作動油の圧力を低下させるか、又は、前記車両(例えば、後述の車両1)のエンジン(例えば、後述のエンジン11)の回転数を増加させることにより行われることが好ましい。これにより、ベアリングにおける潤滑量が増加し、これにより冷却量が増加し、発熱量を冷却量以下とすることが可能となる。この結果、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、本発明は、ベアリング(例えば、後述のBRG131)を備える自動変速機(例えば、後述の変速ギア機構13)における前記ベアリングの発熱量(例えば、後述の発熱量W1)を推定する工程を有する、自動変速機の制御方法を提供する。
これにより、ベアリングの発熱量の推定値に基づいて、ベアリングの状態を適切に把握することが可能となる。このため、ベアリングの状態に対応して、ベアリングの焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
また、前記ベアリングにおける冷却量(例えば、後述の冷却量W2)を推定する工程と、前記発熱量と前記冷却量とを比較する工程と、前記発熱量が前記冷却量を超えているときには、前記発熱量を前記冷却量以下にする制御を行う工程と、を有することが好ましい。
これにより、ベアリングにおける冷却量の推定値とベアリングの発熱量の推定値とを用いて、発熱量と冷却量との比較を行い、発熱量が冷却量を超えているときには、発熱量を冷却量以下にする制御を行うため、発熱量が冷却量を上回ることを抑えることができ、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、前記制御を行う工程では、前記自動変速機を備える車両の速度を制限する制御を行うか、又は、前記車両(例えば、後述の車両1)のエンジン(例えば、後述のエンジン11)の出力トルクを制限する制御を行うことが好ましい。これにより、ベアリングにおける発熱が抑えられ、発熱量を冷却量以下とすることが可能となる。この結果、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、前記制御を行う工程では、前記自動変速機の油路(例えば、後述の油路171)を流通する作動油の圧力を低下させる制御を行うか、又は、前記車両のエンジンの回転数を増加させる制御を行うことが好ましい。このため、ベアリングにおける潤滑量が増加し、これにより冷却量が増加し、発熱量を冷却量以下とすることが可能となる。この結果、ベアリングの焼損の発生を抑えることが可能となる。
本発明によれば、BRGの焼損の発生を抑えることが可能な、自動変速機の制御装置及び自動変速機の制御方法を提供することができる。
本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置10を備えた車両1の概略を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の構成を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の制御を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の制御を説明するためのグラフである。 本発明の一実施形態に係る自動変速機101のBRG回転数と発熱量W1との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る自動変速機101におけるライン圧の高低による潤滑量Qの値の違いを示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る自動変速機101において、潤滑量Qの違いによるBRG発熱量W1とBRG表面温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置10を備えた車両1の概略を示すブロック図である。
自動変速機の制御装置10は、車両1の動力伝達系統と、車両1の動力伝達系統を制御するための制御系統と、を含んで構成されている。
車両1の動力伝達系統は、動力源であるエンジン11と、エンジン11の回転出力を変速ギア機構13に伝達するためのトルクコンバータ12と、トルクコンバータ12の回転出力を入力し、設定された速度比で変速して出力する変速ギア機構13と、変速ギア機構13の出力回転を左右の車輪(例えば後輪)21に分配するディファレンシャルギア機構14とを含む。
また、トルクコンバータ12及び変速ギア機構13に付属して油圧制御装置16が設けられている。油圧制御装置16は、トルクコンバータ12及び変速ギア機構13内に設けられている油圧制御型の摩擦係合要素(クラッチ等)を所定の組合せで係合又は解放することにより、トルクコンバータ12をロックアップしたり、変速ギア機構13における入出力速度比を所要の変速段に設定したりする。車両1の自動変速機101は、これらのトルクコンバータ12、変速ギア機構13、油圧制御装置16等によって構成されており、変速ギア機構13の出力軸等の部材を回転可能に支持する複数のベアリング131(以下「BRG131」と言う)を有している。
車両1の動力伝達系統を制御するための制御系統は、車両1の各部に設けられたセンサと、各センサの出力が入力される制御部としての電子制御ユニット(ECU)31と、電子制御ユニット31によって制御される油圧制御装置16等により構成される。回転センサ51は、トルクコンバータ12の入力軸の回転数(エンジン回転数)を検出する。回転センサ52は変速ギア機構13の入力軸の回転数を検出する。回転センサ53は変速ギア機構13の出力軸の回転数を検出する。車速センサ54は車速を検出する。スロットルセンサ55は、アクセルペダルの踏み込みに応じて開度が設定されるエンジン11のスロットルの開度に基づくエンジン11の出力トルクを検出する。ATF温度センサ56は、油圧制御装置16における作動油の温度(ATF油温)TATFを検出する。冷却水温センサ57は、エンジン冷却液の温度を検出する。ライン圧センサ58は、オイルポンプ17(以下、「O/P17」と言う)による加圧され自動変速機101の油路171を流通する作動油の圧力(ライン圧)を検出する。O/P回転数検出部59は、O/P17の回転数を検出する。
自動変速機の制御装置10は、電子制御ユニット31が実現可能な種々の制御機能のうちの一つとして実施されることにより構成される。具体的には、自動変速機の制御装置10は、電子制御ユニット31が有するコンピュータプログラムによって実行される。制御装置10は、コンピュータプログラムに限定されず、専用の電子回路ハードウェア等で構成されてもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の構成を示すブロック図である。図2に示す機能は、具体的には電子制御ユニット31において実行される。変速制御部311は、車両1の運転状態に応じて最適な変速段を決定し、決定した変速段にギアシフトすべきことを指示する変速指令を発生する。変速制御部311は、車両1の自動変速制御技術における公知の構成が用いられる。
発熱量算出部312は、エンジン11の出力トルクの値のパラメータや、予め設定され電子制御ユニット31の図示しない記憶媒体に記憶されているプリロード(BRG131にかかる初期荷重)の値のパラメータに基づいて、BRG131の表面における面圧Pの値を算出する。また、発熱量算出部312は、自動変速機101における現在の変速段の値のパラメータや、O/P17の回転数の値のパラメータにより把握される、トラッスミッション(T/M)にかかる負荷の状況に基づいて、BRG131の回転数Vを算出する。また、発熱量算出部312は、作動油の温度(油温)を加味して、算出した面圧PとBRG131の回転数Vとの積PVを算出する。そして、予め電子制御ユニット31の記憶装置に記憶している発熱量W1の値であって、積PVの値に一対一で対応する発熱量W1の推定値を得る。
冷却量算出部322は、O/P17の回転数の値のパラメータや、作動油の油温や、ライン圧により把握される、油圧回路(油路171)の状態に基づいて、潤滑量Qを算出する。そして、予め電子制御ユニット31の記憶装置に記憶している冷却量W2の値であって、潤滑量Qの値に一対一で対応する冷却量W2の推定値を得る。
判断部323は、発熱量算出部312において算出された発熱量W1の値と、冷却量算出部322において算出された冷却量W2の値との大小を比較し、発熱量W1が冷却量W2以下となるようにして、発熱量W1が冷却量W2以下の状態を維持するように、制御を行う。
具体的には、判断部323は、BRG131における発熱量W1を減少させる制御か、又は、BRG131を冷却する冷却量W2を増加させる制御か、の少なくとも一つを行う。発熱量W1を減少させる制御としては、例えば、車速に上限を設定して、車速制限を行ったり、エンジン11からの出力トルクに上限を設定して、トルク制限を行ったりする制御を行う。また、冷却量W2を増加させる制御としては、ライン圧を低減させたり、エンジン11の回転数を増加させたりする制御を行う。
次に、自動変速機の制御方法について説明する。自動変速機の制御方法では、電子制御ユニット31における、発熱量W1が冷却量W2以下の状態を維持する制御を行う。図3は、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の制御を示すフローチャートである。
先ず、BRG131における発熱量W1を推定する工程を行う。具体的には、図3に示すステップS101において、発熱量算出部312は、エンジン11の出力トルクの値、即ち、出力しようとするトルクの目標値と、プリロードの値とを用いて、BRG131の表面における面圧Pの値を算出する。また、発熱量算出部312は、自動変速機101における現在の変速段の値と、O/P17の回転数の値とを用いてBRG131の回転数Vを算出する。また、発熱量算出部312は、算出した面圧PとBRG131の回転数Vとの積PVを得る。そして、発熱量算出部312は、予め電子制御ユニット31の図示しない記憶媒体に記憶されており積PVの値に一対一で対応する発熱量W1の推定値を得る。そして、電子制御ユニット31による処理は、ステップS102へ進む。
次に、BRG131における冷却量W2を推定する工程を行う。具体的には、図3に示すステップS102において、冷却量算出部322は、O/P17の回転数の値と、作動油の油温の値と、ライン圧の値と、を用いて潤滑量Qを算出する。そして、冷却量算出部322は、予め電子制御ユニット31の図示しない記憶媒体に記憶されており潤滑量Qの値に一対一で対応する冷却量W2の推定値を得る。そして、電子制御ユニット31による処理は、ステップS103へ進む。
次に、発熱量W1と冷却量W2とを比較する工程を行う。具体的には、図3に示すステップS103において、電子制御ユニット31は、発熱量W1の値と冷却量W2の値とを比較する。発熱量W1の値が冷却量W2の値以下である場合、即ち、W1とW2との差の値が0以下であるときには(YES)、電子制御ユニット31による処理は、ステップS103へ戻る。発熱量W1が冷却量W2を超えているとき、即ち、W1とW2との差の値が正の値であるときには(NO)、電子制御ユニット31による処理は、ステップS104へ進む。
次に、図3に示すステップS104において、電子制御ユニット31は、BRG131の発熱量W1を冷却性能以下(冷却量W2以下)にする制御を行う工程を行う。具体的には、電子制御ユニット31は、少なくとも、BRG131における発熱量W1を減少させる制御か、又は、BRG131を冷却する冷却量W2を増加させる制御か、の少なくとも一つを行う。発熱量W1を減少させる制御としては、例えば、車速に上限を設定して、車速制限を行ったり、エンジン11からの出力トルクに上限を設定して、トルク制限を行ったりする制御を行う。また、冷却量W2を増加させる制御としては、ライン圧を低減させたり、エンジン11の回転数を増加させたりする制御を行う。そして、電子制御ユニット31による処理は、ステップS105へ進む。
次に、図3に示すステップS105において、電子制御ユニット31は、発熱量W1の値と冷却量W2の値とを比較する。未だW1とW2との差の値が正の値であるときには(YES)、電子制御ユニット31による処理は、ステップS104へ戻る。発熱量W1の値が冷却量W2の値以下の場合、即ち、W1とW2との差の値が0以下であるときには(NO)、電子制御ユニット31による処理はリターンする。
上述のように、電子制御ユニット31が、BRG131の発熱量W1を冷却性能以下(冷却量W2以下)にする制御を行う工程について、グラフを用いて説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る自動変速機の制御装置10の制御を説明するためのグラフである。
図4の左のグラフ及び右のグラフに黒丸で示す点においては、BRGにおける発熱量W1と、BRGにおける冷却量W2と、は一致しており、つりあいがとれた状態にある。これに対して、左のグラフにおける黒丸よりも上側の発熱量W1の値を採る場合には、図4の右側のグラフにおける黒丸が変化しない場合には、発熱量W1の値が冷却量W2を上回ることになる。この状態が続くと、BRGの焼損が発生する可能性が高まる。このため、図4の左のグラフにおいて矢印で示すように、発熱量W1の値を低下させる制御を行うか、図4の右のグラフにおいて矢印で示すように、冷却量W2の値を増加させる制御を行うか、のいずれかの制御により、BRGにおける発熱量W1と、BRGにおける冷却量W2とが、再びつりあいがとれた状態となるようにする。この状態が維持されることにより、BRGにおいて過度に発熱することを抑えることができ、BRGの焼損が発生することが抑えられる。
次に、冷却量W2と油温との関係について説明する。図4に示すように、作動油について、油温が100℃の場合には、潤滑量Qが多くなるにつれて、冷却量W2の値は高くなるが、それほど高い値とはならない。これに対して、油温が20℃の場合には、潤滑量Qが多くなるにつれて、潤滑量Qの値は、油温が100℃の場合と比較して、急激に上昇していることが分かる。このことより、油温が低い方が、同一の潤滑量Qの場合に、より高い冷却量W2が得られることが分かる。そして、油温と、潤滑量とに基づいて、冷却量W2を推定することが可能であることが分かる。
次に、発熱量W1と油温との関係について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る自動変速機101のBRG回転数と発熱量W1との関係を示すグラフである。図5に示すように、作動油について、油温が140℃の場合には、BRG131の回転数が高くなるにつれて、発熱量W1の値は高くなるが、それほど高い値とはならない。これに対して、油温が20℃の場合には、BRG131の回転数が高くなるにつれて、発熱量W1の値は、油温が140℃の場合と比較して、急激に上昇していることが分かる。このことより、油温が高い方が、同一のBRG131の回転数の場合に、発熱量W1がより少ないことが分かる。そして、BRG131の回転数、油温に基づいて、発熱量W1を推定することが可能であることが分かる。
次に、冷却量W2とライン圧との関係について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る自動変速機101におけるライン圧の高低による潤滑量Qの値の違いを示すグラフである。
図6に示すように、自動変速機101の入力軸の単位時間当たりの回転数Ninが高くなると、潤滑量Qの値は大きくなることが分かる。また、ライン圧が高い場合(高ライン圧)と、ライン圧が低い場合(低ライン圧)と、を比較すると、回転数Ninの値が高い領域では、低ライン圧の場合と高ライン圧の場合とで、潤滑量Qの値はほぼ同一であるが、回転数Ninの値が低い領域では、低ライン圧の場合の方が高ライン圧の場合よりも、回転数Ninの値が同一の場合には、潤滑量Qの値は大きくなることが分かる。従って、回転数Ninの値が低い領域では、ライン圧を低下させることにより潤滑量Qが大きくなり、この結果、冷却量W2が大きくなることが分かる。また、回転数Nin、ライン圧に基づいて、潤滑量Qを推定することが可能であることが分かる。
次に、BRG131の表面温度と潤滑量Qとの関係について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る自動変速機101において、潤滑量Qの違いによるBRG発熱量W1とBRG表面温度との関係を示すグラフである。
図7に示すように、BRG131の発熱量W1が大きくなると、BRG131の表面温度が高くなることが分かる。また、潤滑量Qが少ない場合(0.5L/min)と、潤滑量Qが多い場合(2L/min)と、では、潤滑量Qが多い場合の方が、BRG131の表面温度が抑えられていることが分かる。即ち、潤滑量Qを増加させることにより、BRG131の発熱量W1が高くなっても、BRG131の表面温度が上昇することを抑えることが可能であることが分かる。このため、潤滑量Qを多くすることにより、冷却量W2を大きくすることが可能であることが分かる。また、図7において×印で示す「焼け限界」、即ち、焼損が生じない限界の表面温度よりも、図7のグラフにおいて下方に位置するように制御することにより、BRGに焼損が生ずることを抑えることが可能であることが分かる。
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、自動変速機の制御装置10は、BRG131を備える自動変速機101におけるBRG131の発熱量W1を推定する電子制御ユニット31を備える。
これにより、BRG131の発熱量W1の推定値に基づいて、BRG131の状態を適切に把握することが可能となる。このため、BRG131の状態に対応して、BRG131の焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
また、電子制御ユニット31は、BRG131における冷却量W2を推定する。このため、BRG131における冷却量W2の推定値とBRG131の発熱量W1の推定値に基づいて、BRG131の焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
また、電子制御ユニット31は、BRG131における潤滑量Qに基づいて冷却量W2を推定する。このため、冷却量W2を適切に推定することが可能となる。この結果、BRG131の焼損の発生を抑えるための適切な制御を、より高い精度で行うことが可能となる。
また、電子制御ユニット31は、発熱量W1と冷却量W2とを比較し、発熱量W1が冷却量W2を超えているときには、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行う。このため、発熱量W1が冷却量W2を上回ることを抑えることができ、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御は、自動変速機101を備える車両1の速度を制限するか、又は、車両1のエンジン11の出力トルクを制限することにより行われる。このため、BRG131における発熱が抑えられ、発熱量W1を冷却量W2以下とすることが可能となる。この結果、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御は、ライン圧を低下させるか、又は、車両1のエンジン11の回転数を増加させることにより行われる。このため、BRG131における潤滑量Qが増加し、これにより冷却量W2が増加し、発熱量W1を冷却量W2以下とすることが可能となる。この結果、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、自動変速機の制御方法は、BRG131を備える自動変速機101におけるBRG131の発熱量W1を推定する工程を有する。このため、BRG131の発熱量W1の推定値に基づいて、BRG131の状態を適切に把握することが可能となる。このため、BRG131の状態に対応して、BRG131の焼損の発生を抑えるための適切な制御を行うことが可能となる。
また、自動変速機の制御方法は、BRG131における冷却量W2を推定する工程と、発熱量W1と冷却量W2とを比較する工程と、発熱量W1が冷却量W2を超えているときには、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行う工程と、を有する。
このため、BRG131における冷却量W2の推定値とBRG131の発熱量W1の推定値とを用いて、発熱量W1と冷却量W2との比較を行い、発熱量W1が冷却量W2を超えているときには、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行うため、発熱量W1が冷却量W2を上回ることを抑えることができ、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行う工程では、自動変速機101を備える車両1の速度を制限する制御を行うか、又は、車両1のエンジン11の出力トルクを制限する制御を行う。このため、BRG131における発熱が抑えられ、発熱量W1を冷却量W2以下とすることが可能となる。この結果、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
また、発熱量W1を冷却量W2以下にする制御を行う工程では、自動変速機101のライン圧を低下させる制御を行うか、又は、車両1のエンジン11の回転数を増加させる制御を行う。このため、BRG131における潤滑量Qが増加し、これにより冷却量W2が増加し、発熱量W1を冷却量W2以下とすることが可能となる。この結果、BRG131の焼損の発生を抑えることが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、発熱量の推定値を得る方法は、本実施形態における発熱量W1の推定値は得る方法に限定されない。また、冷却量の推定値を得る方法は、本実施形態におけるBRG131における潤滑量Qに基づいて冷却量W2の推定値を得る方法に限定されない。また、発熱量を冷却量以下にする制御は、自動変速機101を備える車両1の速度を制限することや、車両1のエンジン11の出力トルクを制限することや、自動変速機101のライン圧を低下させることや、車両1のエンジン11の回転数を増加させることに限定されない。
1…車両
11…エンジン
13…自動変速機
31…電子制御ユニット
131…BRG
171…油路
312…発熱量算出部(制御部)
322…冷却量算出部(制御部)
W1…発熱量
W2…潤滑量
Q…潤滑量

Claims (10)

  1. ベアリングを備える自動変速機における前記ベアリングの発熱量を推定する制御部を備える、自動変速機の制御装置。
  2. 前記制御部は、前記ベアリングにおける冷却量を推定する請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記制御部は、前記ベアリングにおける潤滑量に基づいて前記冷却量を推定する請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
  4. 前記制御部は、前記発熱量と前記冷却量とを比較し、前記発熱量が前記冷却量を超えているときには、前記発熱量を前記冷却量以下にする制御を行う請求項2又は請求項3に記載の自動変速機の制御装置。
  5. 前記制御は、前記自動変速機を備える車両の速度を制限するか、又は、前記車両のエンジンの出力トルクを制限することにより行われる請求項4に記載の自動変速機の制御装置。
  6. 前記制御は、前記自動変速機の油路を流通する作動油の圧力を低下させるか、又は、前記車両のエンジンの回転数を増加させることにより行われる請求項5に記載の自動変速機の制御装置。
  7. ベアリングを備える自動変速機における前記ベアリングの発熱量を推定する工程を有する、自動変速機の制御方法。
  8. 前記ベアリングにおける冷却量を推定する工程と、
    前記発熱量と前記冷却量とを比較する工程と、
    前記発熱量が前記冷却量を超えているときには、前記発熱量を前記冷却量以下にする制御を行う工程と、
    を有する請求項7に記載の自動変速機の制御方法。
  9. 前記制御を行う工程では、前記自動変速機を備える車両の速度を制限する制御を行うか、又は、前記車両のエンジンの出力トルクを制限する制御を行う請求項8に記載の自動変速機の制御方法。
  10. 前記制御を行う工程では、前記自動変速機の油路を流通する作動油の圧力を低下させる制御を行うか、又は、前記車両のエンジンの回転数を増加させる制御を行う請求項9に記載の自動変速機の制御方法。
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