JP2018111872A - 金属接合用材料、及び接合構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】被着体と他の被着体との間に形成される接合層から発生するハロゲンの溶出量を最小量に抑制することができ、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)を最小限に抑制することができる金属接合用材料を提供する。【解決手段】被着体同士を接合する接合層を形成するために用いる、金属およびハロゲンを含有する金属接合用材料であって、金属接合用材料が、接合層に含まれるハロゲンを溶出させない物質(X)を含有する、金属接合用材料。【選択図】なし
Description
本発明は、被着体(例えば、半導体パッケージ、および半導体チップ等の部品)と他の被着体(例えば、基板、および電極等の部品)とを接合するために用いる金属接合用材料、及び当該金属接合用材料を用いて被着体と他の被着体とを接合して形成される接合層を有する接合構造体に関する。
金属接合用材料としては、ナノサイズの粒径範囲にある金属微粒子(例えば銅微粒子)を有機溶媒に分散させた、金属微粒子(P)の分散溶液が知られている。被着体同士を接合する方法としては、例えば、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のそれぞれの接合面に塗布し、加熱処理により焼結を行い、被着体と他の被着体との間に接合層を形成させて接合する方法が挙げられる。
また、金属接合用材料としては、上記金属微粒子(P)の分散溶液の他に、鉛(Pb)、および錫(Sn)等の金属を含有するはんだ材料が知られている。被着体同士を接合する方法としては、例えば、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のそれぞれの接合面に配置し、加熱処理により溶融を行い、被着体と他の被着体との間に接合層を形成させて接合する方法が挙げられる。
近年、被着体と他の被着体とを接合して形成される接合層を有する接合構造体に対して、被着体と他の被着体との間に存在する接合層の接合強度をより強固なものとすることが求められている。更には、被着体と他の被着体との間に存在する接合層の接合界面の接合状態をより信頼性が高いものとすることが求められている。
近年の研究開発の成果として、金属接合用材料中に塩素などのハロゲンを含有させることで、被着体と他の被着体との間に存在する接合層の接合強度をより強固なものとし、当該接合層の接合界面の接合状態をより信頼性が高いものとすることができる知見が得られている。
しかしながら、その一方で、接合層から塩素などのハロゲンが溶出し、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)が及ぼされ易くなってしまい、接合構造体としての性能を低下させてしまう問題があった。
このような問題に対して、塩素などのハロゲンを含有する金属接合用材料を用いて被着体同士を接合して形成される接合層を有する接合構造体を製造した後には、被着体(例えば、基板、シリコンチップなど)の表面などを洗浄等のクリーニングを施し、接合層から溶出した塩素等のハロゲンを除去する工程がこれまで必要とされてきた。
例えば、特許文献1には、電子部品を収納する空間を有する電子部品ケースにおいて、当該電子部品ケースが、ハロゲンガス吸着機能を有する低発生ガス熱可塑性ポリエステル樹脂で構成されることを特徴とする、電子部品ケースが開示されている。
特許文献1に開示された発明は、電子部品を収納する用途で用いられる電子部品ケースに関する発明で、ハロゲンガスが発生した場合、当該電子部品ケースを構成する熱可塑性ポリエステル樹脂が有するハロゲンガス吸着機能によって、当該ハロゲンガスを吸着させることに着眼した発明である。
しかしながら、特許文献1に開示された電子部品ケースに係る発明は、あくまでもハロゲンガスが発生した後、事後的にハロゲンガスを吸着させることには着眼しているが、未然にハロゲンガスを発生させないように、或いは例えハロゲンガスが発生してしまった場合であっても最小量に抑えることには何ら着眼した発明ではない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被着体と他の被着体との間に形成される接合層から発生するハロゲンの溶出量を最小量に抑制することができ、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)を最小限に抑制することができる金属接合用材料を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明に係る金属接合用材料は、被着体同士を接合する接合層を形成するために用いる、金属およびハロゲンを含有する金属接合用材料であって、金属接合用材料が、接合層に含まれるハロゲンを溶出させない物質(X)を含有する。
また、本発明に係る金属接合用材料において、ハロゲンを溶出させない物質(X)が、ハロゲンを吸着する物質(X1)であることが好ましい。
また、本発明に係る金属接合用材料において、ハロゲンを吸着する物質(X1)が、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、およびゼオライトの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明に係る金属接合用材料において、ハロゲンを溶出させない物質(X)が、ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)であることが好ましい。
また、本発明に係る金属接合用材料において、ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)が、銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子であることが好ましい。
また、本発明の第1の実施形態に係る金属接合用材料において、金属接合用材料が、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)を含む金属微粒子(P)と、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)とを含有する、金属微粒子(P)の分散溶液であることが好ましい。
また、本発明の第2の実施形態に係る金属接合用材料において、金属接合用材料が、被着体同士のはんだ付けに使用される、はんだ材料であることが好ましい。
また、本発明に係る接合構造体は、本発明に係る金属接合用材料を用いて、被着体同士を接合して形成される接合層を有することが好ましい。
また、本発明に係る接合構造体において、被着体同士を接合して形成される接合層が、金属多孔質体であることが好ましい。
本発明によれば、被着体と他の被着体との間に形成される接合層から発生するハロゲンの溶出量を最小量に抑制することができ、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)を最小限に抑制することができる。
<金属接合用材料>
本発明に係る金属接合用材料には、被着体と他の被着体との間に形成される接合層の接合強度を強固なものとし、接合界面の接合状態を信頼性が高いものとする観点から、ハロゲンを含有させる。
本発明に係る金属接合用材料には、被着体と他の被着体との間に形成される接合層の接合強度を強固なものとし、接合界面の接合状態を信頼性が高いものとする観点から、ハロゲンを含有させる。
ここで「ハロゲン」とは、周期表において第17族に属する元素を総称していい、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)のことを指していう。
また、本発明に係る金属接合用材料には、被着体と他の被着体との間に形成される接合層からハロゲンを溶出させない観点から、ハロゲンを溶出させない物質(X)を含有させる。
ここで「ハロゲンを溶出させない物質(X)」とは、被着体と他の被着体との間に形成される接合層内にハロゲンを残留させることができる物質のことを指していう。
また、たとえ、接合層内に残留されたハロゲンの一部が外部(例えば、接合層の周辺部品など)に溶出したとしても、そのハロゲンの溶出量(μg)は、接合層の全量(g)に対して20μg/g以下の最小量に抑制することができる物質のことを指していう。
また、たとえ、接合層内に残留されたハロゲンの一部が外部(例えば、接合層の周辺部品など)に溶出したとしても、そのハロゲンの溶出量(μg)は、接合層の全量(g)に対して20μg/g以下の最小量に抑制することができる物質のことを指していう。
本発明においては、金属接合用材料に、ハロゲンを溶出させない物質(X)を含有させることによって、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)を最小限に抑制することができる。
本発明における「ハロゲンを溶出させない物質(X)」としては、接合層内でハロゲンを残留させることを可能とする物質であれば、特に限定されないが、「ハロゲンを吸着する物質(X1)」、および「ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)」が好ましく用いられる。
「ハロゲンを吸着する物質(X1)」としては、接合層内にハロゲンを残留させるために、ハロゲンを吸着し、且つハロゲンを吸着した状態を持続することが可能な物質であれば、特に限定されず、例えば、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、およびゼオライトなどが好ましく用いられる。
「ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)」としては、接合層内にハロゲンを残留させるために、ハロゲンと化合物を形成し、且つハロゲンと化合物を形成した状態を持続することが可能な物質であれば、特に限定されず、例えば、銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子が好ましく用いられる。
本発明において、ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)として用いる銀銅合金微粒子の銀の含有率が、上記範囲未満(70重量%未満)である場合には、接合層内で銀銅合金微粒子とハロゲンとを好適に化学結合させ、接合層内にハロゲンを好適に残留させることができず、接合層からハロゲンを溶出させてしまうおそれがある。
「ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)」として用いる銀銅合金微粒子を構成する、銀と同様の効果を発揮する金属としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、およびストロンチウム(Sr)等の第2族元素(アルカリ土類金属)、並びに、アルミニウム(Al)等の第13族元素などが挙げられる。
銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子の平均一次粒径は、ハロゲンとの化学結合を好適に形成させる観点から、0.002〜50μmであることが好ましい。
上記銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子の平均一次粒径が、上記範囲未満(0.002μm未満)である場合には、高度な粒径制御技術を伴うため、製造コストの上昇を招くおそれがある他、銀微粒子、又は銀銅合金微粒子が分散溶液中で凝集する傾向を示し均一に分散され難く、保存安定性に劣るおそれがある。
一方、上記銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子の平均一次粒径が、上記範囲を超える(50μmを超える)場合には、金属微粒子(P)の分散溶液、又は、はんだ材料を印刷法などにより塗布する工程において、筋状の不良が多発するなど、塗工性が問題となるおそれがある。
本発明に係る金属接合用材料は、[1]金属微粒子(P)の分散溶液(第1の実施形態)、或いは、[2]はんだ材料(第2の実施形態)として用いることが好ましい。
以下において、本発明の第1の実施形態、および第2の実施形態について詳述する。
以下において、本発明の第1の実施形態、および第2の実施形態について詳述する。
[1]金属微粒子(P)の分散溶液(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液は、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)を含む金属微粒子(P)を、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)に分散させて形成されることが好ましい。
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液は、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)を含む金属微粒子(P)を、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)に分散させて形成されることが好ましい。
(1)金属微粒子(P)
本発明で用いる金属微粒子(P)は、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)のみ含んで構成する場合のほか、金属微粒子(P1)に加えて、さらに平均一次粒径が0.5〜50μmの範囲にある金属微粒子(P2)を含んで混合して構成することもできる。
本発明で用いる金属微粒子(P)は、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)のみ含んで構成する場合のほか、金属微粒子(P1)に加えて、さらに平均一次粒径が0.5〜50μmの範囲にある金属微粒子(P2)を含んで混合して構成することもできる。
(1−1)金属微粒子(P1)
本発明において金属微粒子(P1)の原料となる金属は、特に限定されないが、銅(Cu)が好ましく用いられ、その他にも金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、およびパラジウム(Pd)などの貴金属も好ましく用いることができる。
本発明において金属微粒子(P1)の原料となる金属は、特に限定されないが、銅(Cu)が好ましく用いられ、その他にも金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、およびパラジウム(Pd)などの貴金属も好ましく用いることができる。
金属微粒子(P1)の原料として、銅(Cu)を用いた場合、その不可避的不純物として、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、鉛(Pb)、およびリン(P)などの各金属を、金属微粒子(P1)の全量(g)に対して、それぞれ30μg/g以下程度、含んでいてもよい。
金属微粒子(P1)の平均一次粒径は、特に限定されないが、2〜500nmの範囲にあることが好ましい。
上記金属微粒子(P1)の平均一次粒径が、上記範囲未満(2nm未満)である場合には、高度な粒径制御技術を伴うため、製造コストの上昇を招くおそれがある他、金属微粒子(P)が分散溶液中で凝集する傾向を示し均一に分散され難く、保存安定性に劣るおそれがある。
一方、上記金属微粒子(P1)の平均一次粒径が、上記範囲を超える(500nmを超える)場合には、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、加熱温度を上昇させなければならず、所望の接合強度を有し、且つ信頼性が高い接合状態の接合界面を有する接合層が形成されないおそれがある。
ここで「一次粒径」とは、二次粒子を構成する個々の一次粒子の直径のことを指していう。一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて測定することができる。
更に「平均一次粒径」とは、測定対象に選定した複数個の一次粒子に対して、その直径を個々に測定し、個々の測定値を個数で除して算出した平均値を指していう。
具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジー社製、製品名:SU8020)を用いて、加速電圧3kV、倍率20万倍の条件下で観察し、測定対象となる金属微粒子(P1)のSEM画像を取得する。取得したSEM画像の中から、任意に20個の金属微粒子(P1)を選定し、選定した金属微粒子(P1)の一次粒子の直径をそれぞれ測定し、各測定値の平均を算出して平均一次粒径を求める。
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液に、ハロゲンを含有させる方法は、特に限定されないが、例えば、気相中で金属微粒子(P)の表面にハロゲン成分を修飾させる方法(例えば、気相法)が挙げられる。
具体的には、金属微粒子(P)としてナノサイズの銅微粒子(P1)を、反応槽内に導入し、反応槽内の気相中に窒素ガスを充填させ、反応槽内に存在する気相ガスを窒素ガスで置換する。次いで、反応槽内の気圧を1/10大気圧(大気圧の10分の1の圧力)になるまで真空引き(減圧)し、窒素希釈ハロゲンガス(処理ガス)を大気圧になるまで充填する。
上記のような減圧工程・処理ガス充填工程を3回繰り返し行うことで、反応槽内の窒素希釈ハロゲンガス(処理ガス)の濃度を安定させ、所望濃度との差を1%以下に調整することができる。このように、充填する処理ガスの濃度を調整し、ナノサイズの銅微粒子(P1)の表面にハロゲン成分を修飾させる。
上記のようにして得られた、ハロゲン成分が表面修飾されてなる銅微粒子(P1)は、反応槽内に所定時間、室温下(23.5℃)で静置させる。
上記気相法など一連の工程を経て得られる、ハロゲン成分が表面修飾されてなる銅微粒子(P1)において、銅微粒子(P1)表面に実際に修飾したハロゲンの量を測定する方法は、特に限定されないが、例えば、ハロゲンを燃焼により気化させ、所定の水溶液中にハロゲンを溶解し、ハロゲンの量を測定する燃焼イオンクロマトグラフ法が挙げられる。
具体的には、反応槽内にハロゲン成分が表面修飾されてなる銅微粒子(P1)を導入し、反応槽内に加湿したアルゴンガス、酸素ガスを流し、反応槽内の温度を1000℃に設定し燃焼反応させ、ハロゲン成分を気化させる。
気化させたハロゲン成分を所定の水溶液(例えば、過酸化水素水溶液30μg/g)に通して、所定の水溶液中にハロゲン成分を溶解させて(移動させて)、イオンクロマトグラフ法によりハロゲンの量を測定することができる。
本発明において、銅微粒子(P1)表面に実際に修飾したハロゲンの量は、金属微粒子(P1)の全量(g)に対して、300〜700μg/gであることが好ましい。
上記銅微粒子(P1)表面に実際に修飾したハロゲンの量が、上記範囲未満である場合には、被着体と他の被着体との間に形成される接合層において所望の接合強度が得られず、接合層の接合界面においては、信頼性が高い所望の接合状態とすることができないおそれがある。
一方、上記銅微粒子(P1)表面に実際に修飾したハロゲンの量が、上記範囲を超える場合には、接合層内に残留されたハロゲンが外部に溶出し、接合層の周辺部品(例えば、基板、シリコンチップなど)に対して、ハロゲン由来の悪影響(例えば、腐食など)が及ぼされるおそれがある。
(1−2)金属微粒子(P2)
本発明で用いる金属微粒子(P)は、前述した平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)のみで構成する場合のほか、金属微粒子(P1)に加えて、更に平均一次粒径が0.5〜50μmの範囲にある金属微粒子(P2)を混合して構成されてもよい。
本発明で用いる金属微粒子(P)は、前述した平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)のみで構成する場合のほか、金属微粒子(P1)に加えて、更に平均一次粒径が0.5〜50μmの範囲にある金属微粒子(P2)を混合して構成されてもよい。
本発明で用いる金属微粒子(P)として、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)と、平均一次粒径が0.5〜50μmの範囲にある金属微粒子(P2)とを共存させると、ミクロンサイズの金属微粒子(P2)同士の間に、ナノサイズの金属微粒子(P1)が好適に介在することができる。
これによって、ナノサイズの金属微粒子(P1)の自由な流動を効果的に制限し、金属微粒子(P)の分散溶液中において、適度な分散状態で金属微粒子(P1)を安定して混合させることができる。
このため、金属微粒子(P1)と共に金属微粒子(P2)を含む金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、均質な空孔を多数有する多孔質体の接合層が形成される。
上記金属微粒子(P2)の平均一次粒径が、上記範囲未満(0.5μm未満)である場合には、金属微粒子(P)の分散溶液中において、ナノサイズの金属微粒子(P1)の自由な流動を制限する効果を十分に発揮できないおそれがある。
一方、上記金属微粒子(P2)の平均一次粒径が、上記範囲を超える(50μmを超える)場合には、印刷時に筋状の塗工不良がでて、一部が接合できなくなり、信頼性が損われる可能性がある。
ここで「平均一次粒径」とは、レーザー回折式粒度分布計で測定し、累積頻度が50%の粒径のことを指していう。
本発明において金属微粒子(P2)の原料となる金属は、特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)の中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、銅(Cu)が特に好ましく用いられる。
(2)高分子分散剤(D)
本発明で用いる金属微粒子(P)に含まれる、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)は、その表面を高分子分散剤(D)によって被覆して構成することもできる。
本発明で用いる金属微粒子(P)に含まれる、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)は、その表面を高分子分散剤(D)によって被覆して構成することもできる。
金属微粒子(P1)の表面を高分子分散剤(D)で被覆することによって、金属微粒子(P)の分散溶液中、金属微粒子(P1)同士の凝集を防ぎ、金属微粒子(P1)の分散性を向上させることができる。
ここで「被覆」とは、金属微粒子(P1)の表面の少なくとも一部を覆うことを指していい、金属微粒子(P1)の表面の全体を覆うものであってもよい。
本発明で用いる高分子分散剤(D)は、金属微粒子(P1)の表面を好適に被覆させことができる性質をもつ化合物であれば、特に限定されないが、アミド基(−CON=)を有する化合物が好ましく用いられる。
アミド基(−CON=)を有する化合物としては、例えば、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、2−ピロリドン、アルキル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、及びアセトアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびN−ビニル−2−ピロリドンの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンが特に好ましく用いられる。
本発明で用いる高分子分散剤(D)と、被覆対象となる金属微粒子(P1)との重量比(D/P1)は、特に限定されないが、0.1〜5.0の範囲にあることが好ましい。
上記高分子分散剤(D)と金属微粒子(P1)との重量比(D/P1)が、上記範囲未満である場合には、金属微粒子(P1)表面を被覆するのに高分子分散剤(D)の量が少な過ぎることに起因して、金属微粒子(P1)同士の凝集を好適に防止できず、金属微粒子(P1)の分散性を低下させてしまうおそれがある。
一方、上記高分子分散剤(D)と金属微粒子(P1)との重量比(D/P1)が、上記範囲を超える場合には、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、高分子分散剤(D)が好適に分解されずに接合層内に残留し、所望の接合層が形成されないおそれがある。
本発明において、金属微粒子(P1)の表面を高分子分散剤(D)によって被覆する方法は、特に限定されないが、被覆された高分子分散剤(D)の厚さを直接測定することは難しため、炭素・硫黄濃度分析装置を用いて被覆量を測定する方法を採用することができる。
具体的には、炭素・硫黄濃度分析装置を用い、測定対象となる試料を反応槽内に導入し、反応槽内に酸素ガスを流し、高温状態にして測定対象となる試料に含まれる炭素成分を二酸化炭素の状態で取り出す。
取り出された二酸化炭素は、二酸化炭素検出器によりその濃度を測定し、その濃度から炭素量を算出し、更に当該炭素量から用いた高分子分散剤(D)の重量を算出し、金属微粒子(P1)の表面に実際に被覆された高分子分散剤(D)の被覆量を求めることができる。
(3)有機溶媒(S)
本発明で用いる有機溶媒(S)は、特に限定されないが、2価以上のアルコール(S1〜S3)のみ含んで構成する場合のほか、2価以上のアルコールに加えて、さらに低沸点有機溶媒(S4)を混合して構成することもできる。
本発明で用いる有機溶媒(S)は、特に限定されないが、2価以上のアルコール(S1〜S3)のみ含んで構成する場合のほか、2価以上のアルコールに加えて、さらに低沸点有機溶媒(S4)を混合して構成することもできる。
また、本発明で用いる有機溶媒(S)は、必要に応じてアミン系溶媒(S5)を適宜混合して構成することもできる。
「2価以上のアルコール(S1〜S3)」は、金属微粒子(P1)に対して還元性を有するため、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、金属微粒子(P1)の焼結を好適に促進させることができる。
ここで「2価以上のアルコール」とは、1分子内に2個以上のヒドロキシル基(−OH)を有するアルコールのことを指していう。
2価以上のアルコール(S1〜S3)としては、1分子内に2個のヒドロキシル基(−OH)を有する2価アルコール(S1)、1分子内に3個のヒドロキシル基(−OH)を有する3価アルコール(S2)、1分子内に4個以上のヒドロキシル基(−OH)を有する多価アルコール(S3)に分類することができる。
(3−1)2価アルコール(S1)
2価アルコール(S1)としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびオクタンジオールの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレングリコール、およびジエチレングリコールが特に好ましく用いられる。
2価アルコール(S1)としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびオクタンジオールの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレングリコール、およびジエチレングリコールが特に好ましく用いられる。
(3−2)3価アルコール(S2)
3価アルコール(S2)としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン(グリセロール)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、および2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、グリセリン(グリセロール)が特に好ましく用いられる。
3価アルコール(S2)としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン(グリセロール)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、および2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、グリセリン(グリセロール)が特に好ましく用いられる。
(3−3)多価アルコール(S3)
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリグリセリン、トレイトール、エリトリト−ル、ペンタエリスリト−ル、ペンチト−ル、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシト−ル、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコ−ス、フルクト−ス、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクト−ス、イソマルト−ス、グルコヘプト−ス、ヘプト−ス、マルトトリオース、ラクツロース、およびトレハロースの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリグリセリンが特に好ましく用いられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリグリセリン、トレイトール、エリトリト−ル、ペンタエリスリト−ル、ペンチト−ル、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル2−プロパノール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシト−ル、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセリンアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコ−ス、フルクト−ス、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクト−ス、イソマルト−ス、グルコヘプト−ス、ヘプト−ス、マルトトリオース、ラクツロース、およびトレハロースの中から選択される1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリグリセリンが特に好ましく用いられる。
2価以上のアルコール(S1〜S3)の含有量は、有機溶媒(S)の全量100重量%に対して20〜100重量%であることが好ましい。
(3−4)低沸点有機溶媒(S4)
「低沸点有機溶媒(S4)」は、金属微粒子(P)の分散溶液の粘度を調整するために用いられ、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布するのに適した粘度となるように調整することで、液だれし難く、パターン形成などの高度な塗布であっても、高い精度で塗布することができる。
「低沸点有機溶媒(S4)」は、金属微粒子(P)の分散溶液の粘度を調整するために用いられ、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布するのに適した粘度となるように調整することで、液だれし難く、パターン形成などの高度な塗布であっても、高い精度で塗布することができる。
ここで「低沸点有機溶媒(S4)」とは、常温で液体である有機化合物であって、常圧における沸点が60〜120℃(沸点は常圧における沸点をいう。以下同じ。)で、沸点が比較的低い有機化合物のことを指していう。
低沸点有機溶媒(S4)としては、1分子内に1個のヒドロキシル基(−OH)を有する1価アルコール、1分子内に1個のエーテル結合(C−O−C)を有するエーテル、および1分子内に1個のカルボニル基(C=O)を有するケトンが好ましく用いられる。
1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール(64.7℃)、エタノール(78℃)、1−プロパノール(97.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、2−メチル2−プロパノール(83℃)、および2−ブタノール(100℃)などが好ましく用いられる。
エーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ジプロピルエーテル(89℃)、ジイソプロピルエーテル(68℃)、t−アミルメチルエーテル(85℃)、およびアリルエーテル(94℃)などが好ましく用いられる。
ケトンとしては、特に限定されないが、例えば、アセトン(56.5℃)、メチルエチルケトン(79.5℃)、およびジエチルケトン(100℃)などが好ましく用いられる。
低沸点有機溶媒(S4)の含有量は、有機溶媒(S)の全量100重量%に対して、0〜80重量%であることが好ましい。
(3−5)アミン系溶媒(S5)
「アミン系溶媒」は、金属微粒子(P1)に対して還元性を有するため、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、金属微粒子(P1)の焼結を好適に促進させることができる。
「アミン系溶媒」は、金属微粒子(P1)に対して還元性を有するため、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布し、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、金属微粒子(P1)の焼結を好適に促進させることができる。
アミン系溶媒(S5)としては、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、およびアルカノールアミンが好ましく用いられ、その具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、t−プロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−n−オクチルアミン、モノ−2エチルヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、および2−(2−アミノエトキシ)エタノールなどが挙げられる。
アミン系溶媒(S5)の含有量は、有機溶媒(S)の全量100重量%に対して、0.3〜30重量%であることが好ましい。
[2]はんだ材料(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る、被着体と他の被着体とのはんだ付けに使用される、はんだ材料は、はんだ粉とフラックスとを混合して構成することが好ましい。
本発明の第2の実施形態に係る、被着体と他の被着体とのはんだ付けに使用される、はんだ材料は、はんだ粉とフラックスとを混合して構成することが好ましい。
(1)はんだ粉
本発明において、はんだ材料の原料となるはんだ粉の種類は、特に限定されないが、例えば、PbSn系化合物(Pb含有率:残部、Sn含有率:63〜5重量%);CuSn系化合物(Cu含有率:残部、Sn含有率:97〜99.3重量%);CuSnAg系化合物(Cu含有率:0.5〜0.7重量%、Sn含有率:残部、Ag含有率:3〜4重量%);などが挙げられる。
ここで「残部」とは、各原料元素の合計(100重量%)から、残部として示された原料元素以外の元素の含有割合の合計を差し引いたものを指していう。
本発明において、はんだ材料の原料となるはんだ粉の種類は、特に限定されないが、例えば、PbSn系化合物(Pb含有率:残部、Sn含有率:63〜5重量%);CuSn系化合物(Cu含有率:残部、Sn含有率:97〜99.3重量%);CuSnAg系化合物(Cu含有率:0.5〜0.7重量%、Sn含有率:残部、Ag含有率:3〜4重量%);などが挙げられる。
ここで「残部」とは、各原料元素の合計(100重量%)から、残部として示された原料元素以外の元素の含有割合の合計を差し引いたものを指していう。
これらの中でも、鉛(Pb)を含まないはんだ粉が好ましく、CuSn系化合物、およびCuSnAg系化合物が、はんだ粉として近年多用されている。
はんだ材料は、被着体と他の被着体とにそれぞれ好適にはんだ付けする観点から、ペースト状で用いることが好ましく、はんだ材料の原料となるはんだ粉は100μm以下の粒径を有する粒状であることが好ましい。
(2)フラックス
本発明において、はんだ材料の原料となるフラックスは、はんだ粉と混合してペースト状にする目的で溶媒として用いることができる他に、被着体表面の酸化膜除去、被着体表面の再酸化防止、および被着体とはんだ材料との間の濡れ性向上などの目的で活性剤として用いることができる。
本発明において、はんだ材料の原料となるフラックスは、はんだ粉と混合してペースト状にする目的で溶媒として用いることができる他に、被着体表面の酸化膜除去、被着体表面の再酸化防止、および被着体とはんだ材料との間の濡れ性向上などの目的で活性剤として用いることができる。
本発明において、はんだ材料の原料となるフラックスの種類は、特に限定されないが、例えば、ロジン等の樹脂系フラックス;グリセリン、およびポリエチレングリコール等の有機水溶性フラックス;塩酸亜鉛、塩酸アニリン、および塩化アンモニウム等の無機フラックス;などが挙げられる。
本発明の第2の実施形態に係る、被着体と他の被着体とのはんだ付けに使用される、はんだ材料に、ハロゲンを含有させる方法は、特に限定されないが、例えば、はんだ材料の原料となるフラックスの種類として、ハロゲン成分を含有するフラックスを用いる方法が挙げられる。
ハロゲン成分を含有するフラックスとしては、例えば、塩酸亜鉛、塩酸アニリン、および塩化アンモニウム等の無機フラックスが代表的に挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において、はんだ粉とフラックスとを所定の割合で混合してペースト状のはんだ材料とする方法は、特に限定されないが、例えば、粒状のはんだ粉とフラックスとを所定の割合で混合して遠心混錬機に投入して混錬し、ペースト状のはんだ材料とする方法が挙げられる。
<接合構造体>
本発明に係る接合構造体は、上述の本発明に係る金属接合用材料を用いて、被着体と他の被着体とを接合して形成される接合層を有する。
本発明に係る接合構造体は、上述の本発明に係る金属接合用材料を用いて、被着体と他の被着体とを接合して形成される接合層を有する。
本発明に係る接合構造体を製造する方法は、上述の本発明に係る金属接合用材料として、[1]金属微粒子(P)の分散溶液(第1の実施形態)、或いは、[2]はんだ材料(第2の実施形態)を用いて製造されることが好ましい。
(1)金属微粒子(P)の分散溶液を用いて製造する方法
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液を用いて、本発明に係る接合構造体を製造する方法の一例について、以下で述べる。
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液を用いて、本発明に係る接合構造体を製造する方法の一例について、以下で述べる。
本発明に係る接合構造体を製造する方法は、本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体との間に配置する第1工程と、当該配置された金属微粒子(P)の分散溶液を所定の条件で乾燥を行い、加熱接合材料(M)を形成する第2工程と、当該加熱接合材料を加熱処理などにより焼結させる第3工程と、を備える。
(1−1)第1工程
第1工程は、本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布するなどにより、当該被着体と他の被着体との間に配置する工程である。
ここで「被着体」としては、例えば、半導体パッケージ、および半導体チップ等の部品が挙げられ、「他の被着体」としては、例えば、基板、および電極等の部品が挙げられる。
第1工程は、本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布するなどにより、当該被着体と他の被着体との間に配置する工程である。
ここで「被着体」としては、例えば、半導体パッケージ、および半導体チップ等の部品が挙げられ、「他の被着体」としては、例えば、基板、および電極等の部品が挙げられる。
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液は、金属微粒子(P)を有機溶媒(S)に分散させて形成される。
なお、本発明において金属微粒子(P)を有機溶媒(S)に分散させる方法は、特に限定されないが、公知の混合機、および捏和機などを用いることができる。
なお、本発明において金属微粒子(P)を有機溶媒(S)に分散させる方法は、特に限定されないが、公知の混合機、および捏和機などを用いることができる。
本発明の第1の実施形態に係る金属微粒子(P)の分散溶液に含まれる、金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)は、被着体と他の被着体との間に好適に配置させる観点から、10/90〜70/30の範囲にあることが好ましい。
上記金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)が、上記範囲未満である場合には、有機溶媒(S)の量が多過ぎ分散溶液の粘度が所望よりも低いことに起因して、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布する際に、液だれし易いなど形状安定性に乏しく、パターン形成などの高度な塗布が難しく、第2工程で所望の加熱接合材料(M)を形成することができないおそれがある。
上記金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)が、上記範囲を超える場合には、有機溶媒(S)の量が少な過ぎ、金属微粒子(P)が粉状のまま存在し易くペースト状にすることが困難で、金属微粒子(P)の分散溶液を被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布する際に、塗布する方法が制限されるおそれがある他、加熱処理による焼結を行う過程(焼結過程)で、接合層が形成される焼結温度に達する前に有機溶媒(S)が枯渇してしまう(気化してしまう)おそれがある。
なお、本発明において、金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)は、金属微粒子(P)の分散溶液を被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布する方法に応じて、適宜変更可能である。
例えば、被着体と他の被着体に対して、パターン形成などの高度な塗布を行う場合には、金属微粒子(P)の分散溶液が液だれし難いなどの形状安定性が求められることから、金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)は、20/80〜60/40の範囲にあることが好ましい。
また、被着体と他の被着体に対して、シート状などの広範囲に薄く塗布を行う場合には、金属微粒子(P)の分散溶液の伸ばし易さなどの特性が求められることから、金属微粒子(P)と有機溶媒(S)との重量比(P/S)は、10/90〜30/70の範囲にあることが好ましい。
本発明において、金属微粒子(P)の分散溶液を、被着体と他の被着体のいずれか、もしくは、それぞれに塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スキージ法、スクリーン印刷、マスク印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、およびスピンコート等が挙げられる。
(1−2)第2工程
第2工程は、第1工程で被着体と他の被着体との間に配置された金属微粒子(P)の分散溶液を所定の条件で予備乾燥などの乾燥を行い、加熱接合材料(M)を形成する工程である。
第2工程は、第1工程で被着体と他の被着体との間に配置された金属微粒子(P)の分散溶液を所定の条件で予備乾燥などの乾燥を行い、加熱接合材料(M)を形成する工程である。
第2工程で行われる予備乾燥などの乾燥条件は、加熱接合材料(M)中の金属微粒子(P)の含有量が、加熱接合材料(M)の全量100重量%に対して87〜93重量%に調整されるように、窒素ガス雰囲気下110℃の乾燥温度で30〜60分間程度保持することが好ましい。
(1−3)第3工程
第3工程は、第2工程で予備乾燥などの乾燥を行い形成された加熱接合材料(M)に対して、加熱接合材料(M)を加熱処理などにより焼結させる工程である。
第3工程は、第2工程で予備乾燥などの乾燥を行い形成された加熱接合材料(M)に対して、加熱接合材料(M)を加熱処理などにより焼結させる工程である。
第3工程で行われる加熱処理などによる焼結条件は、例えば、ヒーターを内蔵したプレス板で被処理体を挟持して、真空引き(減圧)し、190〜400℃の加熱温度(焼結温度)で10〜120分間程度保持することが好ましい。
なお、第3工程で行われる加熱処理などによる焼結条件は、加圧しながら行われてもよい。
なお、第3工程で行われる加熱処理などによる焼結条件は、加圧しながら行われてもよい。
例えば、上記第1工程で、特定の平均一次粒径を有する銅微粒子(P1)を含む金属微粒子(P)と、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)とを含有する分散溶液を用いた場合には、第3工程において以下のように、銅微粒子(P1)の焼結が促進される。
第3工程で行われる加熱処理などにより、銅微粒子(P1)の表面が2価以上のアルコールで還元され、活性化された銅微粒子(P1)同士の焼結が促進される。この一方で、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)は、好適に分解、蒸発(気化)が進行する。
本発明においては、上記第1〜第3工程を経て、金属多孔質体の接合層を有する接合構造体を製造することができる。
なお、本発明では、第3工程の後に必要に応じて、大気雰囲気下または窒素などの不活性ガス雰囲気下で、且つ水素などの還元雰囲気下で、190〜400℃の温度で1〜30時間程度、アニール処理を施すことが好ましい。
このようなアニール処理を施すことにより、第3工程で形成される接合層における、残留応力による歪みが適正に緩和され、接合層の接合強度と接合界面の接合状態の信頼性一層高めることができる。
本発明において上記第1〜第3工程を経て製造される、接合構造体が有する接合層の厚み(L)は、5〜500μmの範囲にあることが好ましい。
上記接合層の厚み(L)が、上記範囲未満(5μm未満)である場合には、接合層の厚みが薄過ぎることに起因し、被着体と他の被着体との間に接合層が部分的に形成されない不具合が生じ易く、接合層の接合強度を低下させてしまうおそれの他に、接合界面の接合状態の信頼性を低下させてしまうおそれがある。
一方、上記接合層の厚み(L)が、上記範囲を超える(500μmを超える)場合には、接合層の厚みが厚過ぎることに起因し、放熱性が悪化するおそれがある。
(2)はんだ材料を用いて製造する方法
本発明の第2の実施形態に係る、被着体と他の被着体とのはんだ付けに使用される、はんだ材料を用いて、本発明に係る接合構造体を製造する方法の一例について、以下で述べる。
本発明の第2の実施形態に係る、被着体と他の被着体とのはんだ付けに使用される、はんだ材料を用いて、本発明に係る接合構造体を製造する方法の一例について、以下で述べる。
本発明に係る接合構造体を製造する方法は、本発明の第2の実施形態に係るはんだ材料をペースト状にし、当該はんだ材料の厚さが50〜500μmとなるように、被着体と他の被着体との間に配置する第1工程と、当該配置されたはんだ材料をリフロー炉に入れて150〜180℃の温度で1〜2分程度保持して溶媒となるフラックスを蒸発させる第2工程と、240〜250℃の温度で0.5〜1分間程度保持してはんだを溶融させその後、降温する第3工程と、を備える。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例のみに限定されるものではない。
本実施例及び比較例において行った試験方法は、以下のとおりである。
本実施例及び比較例において行った試験方法は、以下のとおりである。
(1)金属微粒子(P1)の平均一次粒径
走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジー社製、製品名:SU8020)を用いて、加速電圧3kV、倍率20万倍の条件下で観察し、測定対象となる金属微粒子(P1)のSEM画像を取得した。取得したSEM画像の中から、任意に20個の金属微粒子(P1)を選定し、選定した金属微粒子(P1)の一次粒子の直径をそれぞれ測定し、各測定値の平均を算出して平均一次粒径を求めた。
走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジー社製、製品名:SU8020)を用いて、加速電圧3kV、倍率20万倍の条件下で観察し、測定対象となる金属微粒子(P1)のSEM画像を取得した。取得したSEM画像の中から、任意に20個の金属微粒子(P1)を選定し、選定した金属微粒子(P1)の一次粒子の直径をそれぞれ測定し、各測定値の平均を算出して平均一次粒径を求めた。
(2)高分子分散剤(D)の被覆量
炭素・硫黄濃度分析装置を用い、測定対象となる試料を反応槽内に導入し、反応槽内に酸素ガスを流し、高温状態にして測定対象となる試料に含まれる炭素成分を二酸化炭素の状態で取り出した。
取り出された二酸化炭素は、二酸化炭素検出器によりその濃度を測定し、その濃度から炭素量を算出し、更に当該炭素量から用いた高分子分散剤(D)の重量を算出し、金属微粒子(P1)の表面に実際に被覆された高分子分散剤(D)の被覆量を求めた。
炭素・硫黄濃度分析装置を用い、測定対象となる試料を反応槽内に導入し、反応槽内に酸素ガスを流し、高温状態にして測定対象となる試料に含まれる炭素成分を二酸化炭素の状態で取り出した。
取り出された二酸化炭素は、二酸化炭素検出器によりその濃度を測定し、その濃度から炭素量を算出し、更に当該炭素量から用いた高分子分散剤(D)の重量を算出し、金属微粒子(P1)の表面に実際に被覆された高分子分散剤(D)の被覆量を求めた。
(3)ハロゲン量の測定
(3−1)金属微粒子(P1)表面に修飾したハロゲン量
測定対象となるハロゲン成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)を、反応槽内に導入し、反応槽内の気相中に加湿したアルゴンガスと酸素ガスを流し、反応槽内の温度を1000℃に設定し燃焼反応させ、ハロゲン成分を気化させた。
気化させたハロゲン成分を過酸化水素水溶液30μg/gに通して、当該過酸化水素水溶液中にハロゲン成分を溶解させて(移動させて)、イオンクロマトグラフ法によりハロゲン量を測定した。
(3−1)金属微粒子(P1)表面に修飾したハロゲン量
測定対象となるハロゲン成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)を、反応槽内に導入し、反応槽内の気相中に加湿したアルゴンガスと酸素ガスを流し、反応槽内の温度を1000℃に設定し燃焼反応させ、ハロゲン成分を気化させた。
気化させたハロゲン成分を過酸化水素水溶液30μg/gに通して、当該過酸化水素水溶液中にハロゲン成分を溶解させて(移動させて)、イオンクロマトグラフ法によりハロゲン量を測定した。
(3−2)接合層から溶出するハロゲン量
測定対象となる接合層をシリコン基板より剥離して回収した。純水50gを入れた容器内に回収した接合層0.3gを入れて、120℃で48時間加熱した。なお、容器は三愛科学製の高圧用反応分解容器HU−100を用いた。純水中にハロゲン成分を移動させた抽出液を、イオンクロマトグラフ法によりハロゲン量を測定した。
測定対象となる接合層をシリコン基板より剥離して回収した。純水50gを入れた容器内に回収した接合層0.3gを入れて、120℃で48時間加熱した。なお、容器は三愛科学製の高圧用反応分解容器HU−100を用いた。純水中にハロゲン成分を移動させた抽出液を、イオンクロマトグラフ法によりハロゲン量を測定した。
(実施例1)
(金属微粒子(P)の分離・回収工程)
高分子分散剤(D)としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量;約3,500)10gを、蒸留水1979.3mlに添加して溶解させた水溶液に、金属微粒子(P1)の原料として水酸化第二銅(Cu(OH)2,粒度範囲:0.1〜100μm)29.268gを添加して撹拌し、水酸化第二銅水溶液を調製した。
(金属微粒子(P)の分離・回収工程)
高分子分散剤(D)としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量;約3,500)10gを、蒸留水1979.3mlに添加して溶解させた水溶液に、金属微粒子(P1)の原料として水酸化第二銅(Cu(OH)2,粒度範囲:0.1〜100μm)29.268gを添加して撹拌し、水酸化第二銅水溶液を調製した。
上記のようにして調製された水酸化第二銅水溶液の液温を20℃に調整し、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)150mmolと水酸化ナトリウム(NaOH)480mmolとを含む水溶液20.73mlを滴下し、45分間攪拌しながら還元反応を行い、混合溶液中に高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)が生成した。
なお、還元反応の終了は、反応系からの水素ガスの発生が終了した時点とした。
なお、還元反応の終了は、反応系からの水素ガスの発生が終了した時点とした。
上記のようにして生成された、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)の混合溶液に、凝集促進剤としてクロロホルム(CHCl3)66mlを添加して数分間攪拌し、数分間静置して高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)を沈殿させた。
上記のようにして沈殿させた、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)の固形分を含む混合溶液を遠心分離機に供給し、固液分離を行い、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)を含む固形分を回収した。
さらに、回収された高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)を含む固形分に、メタノールを添加して撹拌し、遠心分離機に供給し、固液分離を行い、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)のメタノール洗浄を行った。
上記のようにしてメタノール洗浄を数回繰り返し行い、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)を分離、回収した。その後真空乾燥を7時間行い、乾燥状態の金属微粒子(P1)を得た。なお、真空乾燥時の真空度は大気圧を0kPaとして、−80kPa以下で行った。
ここで、上記分離・回収工程を経て得られた、高分子分散剤(D)で被覆された乾燥状態の金属微粒子(P1)の一部を採取し、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)の一次粒径を測定し、平均一次粒径を算出したところ50nmであった。
また、ここで、上記分離・回収工程を経て得られた、高分子分散剤(D)で被覆された金属微粒子(P1)の一部を採取し、高分子分散剤(D)の被覆量を測定したところ、金属微粒子(P1)全量100重量%に対して、0.6重量%であった。
(ハロゲン成分の表面修飾工程)
上記金属微粒子(P1)の分離・回収工程で回収された、乾燥状態の金属微粒子(P1)100gを、窒素ガスで置換された反応槽内に導入し、反応槽内の気圧を1/10大気圧になるまで真空引き(減圧)し、窒素希釈塩素ガス(塩素ガス濃度0.5体積%)を大気圧になるまで充填した。
上記金属微粒子(P1)の分離・回収工程で回収された、乾燥状態の金属微粒子(P1)100gを、窒素ガスで置換された反応槽内に導入し、反応槽内の気圧を1/10大気圧になるまで真空引き(減圧)し、窒素希釈塩素ガス(塩素ガス濃度0.5体積%)を大気圧になるまで充填した。
上記のようにして塩素成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)を、大気圧下の反応槽内で1時間静置させた。
ここで、上記塩素成分の表面修飾工程を経て得られた、塩素成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)の一部を採取し、金属微粒子(P1)表面に実際に修飾した塩素量を測定したところ、塩素成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)全重に対して、515〜525μg/gであった。
(金属微粒子(P)の分散溶液を得る工程)
上記のようにして得られた、塩素成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)6.7gと、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子(平均一次粒径:5μm)1.8gとを、有機溶媒(S)として3価アルコールであるグリセリン(グリセロール)(C3H5(OH)3,沸点;290℃)4gに添加して、遠心混錬機(シンキー社製、製品名:ARE−250)に投入して、2000rpm×3分間の条件を4回繰り返す混錬を行い、ペースト状の金属微粒子(P)の分散溶液を得た。
上記のようにして得られた、塩素成分が表面修飾されてなる金属微粒子(P1)6.7gと、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子(平均一次粒径:5μm)1.8gとを、有機溶媒(S)として3価アルコールであるグリセリン(グリセロール)(C3H5(OH)3,沸点;290℃)4gに添加して、遠心混錬機(シンキー社製、製品名:ARE−250)に投入して、2000rpm×3分間の条件を4回繰り返す混錬を行い、ペースト状の金属微粒子(P)の分散溶液を得た。
(金属微粒子(P)の分散溶液の塗布・焼結工程)
上記のようにして得られた、ペースト状の金属微粒子(P)の分散溶液を、シリコン板(13mm角、厚さ1mm)の上に、9mm角、厚さ100μmのメタルマスクを用いて、印刷法による塗布を行った。
なお、最終的に1.5g以上の接合層(焼結体)が回収できるよう、300枚程度のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)に対して、それぞれ同様に印刷法による塗布を行った。
上記のようにして得られた、ペースト状の金属微粒子(P)の分散溶液を、シリコン板(13mm角、厚さ1mm)の上に、9mm角、厚さ100μmのメタルマスクを用いて、印刷法による塗布を行った。
なお、最終的に1.5g以上の接合層(焼結体)が回収できるよう、300枚程度のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)に対して、それぞれ同様に印刷法による塗布を行った。
その後、窒素ガス雰囲気下、110℃の乾燥温度で10〜60分間程度保持して予備乾燥し、金属濃度を85%に調整した。
次いで、予備乾燥した金属微粒子(P)の分散溶液の上に、他のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)を載せ、窒素ガス雰囲気中、10MPaの加圧下で、300℃の温度で20分間、加圧加熱処理による焼結を行い、室温まで炉冷し、シリコン板と他のシリコン板との間に接合層(焼結体)が形成された実施例1の接合構造体を製造した。
ここで、金属微粒子(P1)の分散溶液の塗布・焼結工程を経て得られた、300個程度の接合構造体から接合層(焼結体)をそれぞれ剥がしとり、1.5gの接合層(焼結体)を回収して測定対象とし、溶出する塩素量を測定したところ、8μg/gであった。
(実施例2)
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率90重量%・銅含有率10重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の接合構造体を製造した。
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率90重量%・銅含有率10重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の接合構造体を製造した。
(実施例3)
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率50重量%・銅含有率50重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の接合構造体を製造した。
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率50重量%・銅含有率50重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の接合構造体を製造した。
(実施例4)
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率70重量%・銅含有率30重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の接合構造体を製造した。
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率70重量%・銅含有率30重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4の接合構造体を製造した。
(実施例5)
はんだ材料の原料となるはんだ粉として、PbSn系化合物(Pb含有率:80重量%、Sn含有率:20重量%、粒径:38μm)73重量%と、ハロゲンを溶出させない物質(X)としてゼオライト(東ソー社製、製品名:疎水性ゼオライトHSZ−900シリーズの990HOA)7重量%と、溶媒として有機水溶性フラックスであるグリセリン20重量%と、活性剤として無機フラックスである塩酸アニリン0.07重量%とを、混合し、遠心混錬機(シンキー社製、製品名:ARE−250)に投入して、2000rpm×3分間の条件を4回繰り返す混錬を行い、ペースト状のはんだ材料を得た。
はんだ材料の原料となるはんだ粉として、PbSn系化合物(Pb含有率:80重量%、Sn含有率:20重量%、粒径:38μm)73重量%と、ハロゲンを溶出させない物質(X)としてゼオライト(東ソー社製、製品名:疎水性ゼオライトHSZ−900シリーズの990HOA)7重量%と、溶媒として有機水溶性フラックスであるグリセリン20重量%と、活性剤として無機フラックスである塩酸アニリン0.07重量%とを、混合し、遠心混錬機(シンキー社製、製品名:ARE−250)に投入して、2000rpm×3分間の条件を4回繰り返す混錬を行い、ペースト状のはんだ材料を得た。
上記のようにして得られたペースト状のはんだ材料を、シリコン板(13mm角、厚さ1mm)の上に、9mm角、厚さ100μmのメタルマスクを用いて、印刷法による塗布を行い、次いで、はんだ材料の上に、他のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)を載せた。
なお、最終的に1.5g以上の接合層(焼結体)が回収できるよう、300枚程度のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)に対して、それぞれ同様に印刷法による塗布を行った。
なお、最終的に1.5g以上の接合層(焼結体)が回収できるよう、300枚程度のシリコン板(13mm角、厚さ1mm)に対して、それぞれ同様に印刷法による塗布を行った。
その後、リフロー炉に入れて120℃の温度で1分間、溶媒となるフラックスを蒸発させ、340℃の温度で1分間、はんだを溶融させその後、降温し、シリコン板と他のシリコン板との間に接合層(焼結体)が形成された実施例5の接合構造体を製造した。
ここで、はんだ材料の塗布・焼結工程を経て得られた、300個程度の接合構造体から接合層(焼結体)をそれぞれ剥がしとり、1.5gの接合層(焼結体)を回収して測定対象とし、溶出する塩素量を測定したところ、18μg/gであった。
(比較例1)
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銅含有率100重量%の銅微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の接合構造体を製造した。
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銅含有率100重量%の銅微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の接合構造体を製造した。
(比較例2)
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率10重量%・銅含有率90重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の接合構造体を製造した。
実施例1の金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀微粒子から、銀含有率10重量%・銅含有率90重量%の銀銅合金微粒子(平均一次粒径:5μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の接合構造体を製造した。
(比較例3)
実施例5のペースト状のはんだ材料を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)を用いなかったこと以外は、実施例5と同様にして比較例3の接合構造体を製造した。
実施例5のペースト状のはんだ材料を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)を用いなかったこと以外は、実施例5と同様にして比較例3の接合構造体を製造した。
(結果)
表1には、各実施例および各比較例でそれぞれ製造した接合構造体において、被着体と他の被着体との間に形成された接合層から溶出する塩素量(μg/g)の測定結果を示す。
なお、接合層から溶出する塩素量(μg/g)は、測定対象とした接合層の全量(g)に対する量(μg)である。
表1には、各実施例および各比較例でそれぞれ製造した接合構造体において、被着体と他の被着体との間に形成された接合層から溶出する塩素量(μg/g)の測定結果を示す。
なお、接合層から溶出する塩素量(μg/g)は、測定対象とした接合層の全量(g)に対する量(μg)である。
(結果のまとめ)
表1に記載されている評価結果から、以下のことが分かる。
表1に記載されている評価結果から、以下のことが分かる。
比較例1で製造された接合構造体は、金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銅含有率100重量%の銅微粒子を用いたことに起因し、接合層内に塩素を好適に残留させることができず、接合層から溶出する塩素量を20μg/g以下に抑制することができなかった。
比較例2で製造された接合構造体は、金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として銀含有率10重量%・銅含有率90重量%の銀銅合金微粒子を用いたことに起因し、接合層内に塩素を好適に残留させることができず、接合層から溶出する塩素量を20μg/g以下に抑制することができなかった。
比較例3で製造された接合構造体は、金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)を全く用いなかったことに起因し、接合層内に塩素を残留させることができず、比較例1および比較例2よりも多くの塩素が接合層から溶出することが分かった。
これに対して、実施例1〜4で製造された接合構造体は、金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として、銀微粒子、あるいは銀銅合金微粒子を用いたことに起因し、接合層内に塩素を好適に残留させることができ、接合層から溶出する塩素量を20μg/g以下に抑制することができた。
また、実施例5で製造された接合構造体は、金属微粒子(P1)の分散溶液を得る工程において、ハロゲンを溶出させない物質(X)として、ゼオライトを用いたことに起因し、接合層内に塩素を好適に残留させることができ、接合層から溶出する塩素量を20μg/g以下に抑制することができた。
実施例1〜5の中でも、ハロゲンを溶出させない物質として、銀微粒子を用いた実施例1が、接合層から溶出する塩素量を抑制する効果が最も高いことが分かった。
Claims (9)
- 被着体同士を接合する接合層を形成するために用いる、金属およびハロゲンを含有する金属接合用材料であって、
前記金属接合用材料が、前記接合層に含まれるハロゲンを溶出させない物質(X)を含有する、金属接合用材料。 - 前記ハロゲンを溶出させない物質(X)が、前記ハロゲンを吸着する物質(X1)であることを特徴とする、請求項1に記載の金属接合用材料。
- 前記ハロゲンを吸着する物質(X1)が、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、およびゼオライトの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2に記載の金属接合用材料。
- 前記ハロゲンを溶出させない物質(X)が、前記ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)であることを特徴とする、請求項1に記載の金属接合用材料。
- 前記ハロゲンと化合物を形成する物質(X2)が、銀微粒子、又は銀の含有率が70重量%以上である銀銅合金微粒子であることを特徴とする、請求項4に記載の金属接合用材料。
- 前記金属接合用材料が、平均一次粒径が2〜500nmの範囲にある金属微粒子(P1)を含む金属微粒子(P)と、2価以上のアルコールを含む有機溶媒(S)とを含有する、金属微粒子(P)の分散溶液であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属接合用材料。
- 前記金属接合用材料が、被着体同士のはんだ付けに使用される、はんだ材料であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属接合用材料。
- 前記請求項1から7のいずれか1項に記載の金属接合用材料を用いて、被着体同士を接合して形成される接合層を有することを特徴とする、接合構造体。
- 前記被着体同士を接合して形成される接合層が、金属多孔質体であることを特徴とする、請求項8に記載の接合構造体。
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JP2017004381A JP2018111872A (ja) | 2017-01-13 | 2017-01-13 | 金属接合用材料、及び接合構造体 |
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WO2020202970A1 (ja) * | 2019-03-29 | 2020-10-08 | 三井金属鉱業株式会社 | 接合体及びその製造方法 |
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JP7484663B2 (ja) | 2020-10-29 | 2024-05-16 | 株式会社デンソー | 接合構造体、電子装置、接合構造体の製造方法 |
-
2017
- 2017-01-13 JP JP2017004381A patent/JP2018111872A/ja active Pending
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