JP2018109168A - エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットおよび、エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの製造方法 - Google Patents

エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットおよび、エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エチレン−ビニルアルコール系共重合体の単層膜でも、フィッシュアイの発生を抑制できるホウ素化合物および桂皮酸類を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットおよびその製造方法を提供する。【解決手段】ホウ素化合物および桂皮酸類を含有したエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットであって、当該ペレット表層部のホウ素化合物の含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸類の含有量が当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%であることを特徴とするホウ素化合物および桂皮酸類含有エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット。【選択図】 なし

Description

本発明は、フィルム成形したときに、フィッシュアイの発生が少ないフィルムを提供できるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と称することがある)のペレットに関し、さらに詳しくは、ペレット表面に存在するホウ素化合物の含有量を調整し、かつ所定量の桂皮酸類を含有した、EVOHペレットおよびその製造方法に関する。
EVOHは、分子鎖に含まれる水酸基が強固に水素結合して結晶部を形成し、かかる結晶部が外部からの酸素等の気体の侵入を防止するため、酸素バリア性をはじめとして、優れたガスバリア性を示すことができる。このような特性を生かして、EVOHは、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等のフィルムやシート、あるいはボトル等の包装容器等に成形されて利用されている。
EVOHは、通常、溶融成形によって、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状、チューブ状、パイプ状等の形状に成形、加工されて、実用に供される。したがって、EVOHの成形性、加工性は重要である。
そこで、溶融成形性の改善にあたり、特許文献1には、EVOH等の溶融成形可能なビニルアルコール系共重合体の膜成形性、特に成膜時のサージング防止の観点から、ホウ酸またはその塩を配合した組成物として、溶融粘度を高めたものを溶融成形することが有効であることが開示されている。
また、特許文献2には、ホウ素化合物で処理したEVOHを、ポリオレフィンと共押出することにより、EVOH層とポリオレフィン層との接着性に優れた積層体が得られ、ガスバリア性能を要する分野において、好適な包装材を提供できることが開示されている。
特許文献2の、ホウ素化合物処理は、EVOH溶液または分散液にホウ素化合物を添加することにより行われ、ホウ素成分を含有したEVOHペレットを押出成形原料として用いている。
ところで、包装材料としてのEVOHフィルムまたは多層構造体の外観に対する昨今の要求の高まりから、0.1mm未満の小さなフィッシュアイについても、改善が求められるようになっている。
特許文献3では、EVOHにホウ素化合物を含有させる処理を行って得られるホウ素含有EVOHペレットについて、ペレットの含水率が0.1mm未満のフィッシュアイの発生と関係があることを見出し、含水率0.0001〜2重量%に乾燥させた後、水と接触させることにより、0.1mm未満のフィッシュアイの発生を抑制できることが開示されている。
特許文献3の実施例では、ホウ素化合物の添加処理を施したEVOHペレットを水に浸漬した後、乾燥して、ホウ素化合物の含有量および含水率を調整したEVOHペレット〔含水率0.13〜0.4重量%、EVOH100重量部に対するホウ素含有量0.015〜0.039重量部(150〜390ppm)〕を製造し、このEVOHペレットを、多層押出装置に供給して、3種5層の多層積層体を製造している(実施例1,3,4)。そして、得られた多層構造体のフィッシュアイの評価は、目視観察により、直径0.01〜0.1mmのフィッシュアイの発生の個数をカウントすることにより行っている(段落〔0038〕−〔0041〕)。
特公昭62−3866号公報 特公平3−11270号公報 特開2000−44756号公報
近年、包装材料の外観に対する要求は益々厳しくなっており、成形時のサージング防止等の溶融成形性を確保しつつ、さらなるフィッシュアイの改善が望まれている。特に、EVOHを単層成膜した場合、多層構造体の場合よりも、大きなフィッシュアイが発生しやすく、また発生個数も多くなる傾向があるため、EVOHの単層膜でも、フィッシュアイの発生が抑制されたEVOHペレットが求められるようになっており、上記特許文献1〜3の開示技術では、まだまだ満足のいくものではなかった。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、EVOH単層膜でも、フィッシュアイの発生を抑制できるホウ素化合物および桂皮酸類を含有するEVOHペレットおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、ホウ素化合物を含有させたEVOHペレットについて、フィッシュアイの発生との関係を調べた。種々検討した結果、フィッシュアイは、ホウ素化合物の凝集体がEVOHの局所的増粘を招くことにより発生すると考えられる。そして、単層成膜の場合、成形機の金属と接することになるペレット表層部に存在するホウ素化合物が凝集しやすくなり、結果として、フィッシュアイが発生しやすく、目立つのではないかと考えた。
また、EVOHが押出機内部に滞留すると劣化やゲル化が進み、この滞留物が排出されるとフィッシュアイの発生へとつながる。桂皮酸類はEVOHを適度に架橋させて粘度を上げる性質がある。そのため、桂皮酸類を含有させて成膜すると、押出機内部でEVOHの粘度が上昇し、EVOHが押出機内部で滞留する前に、直ちに後続の粘度の高いEVOHによって排出される。そのためフィッシュアイの発生を抑制することができるものと推測される。
なお、桂皮酸類を過剰添加すると、極端に架橋反応が促進され、EVOHが増粘しすぎるため、フィッシュアイが増加することとなる。
かかる認識の下、本発明者らは、EVOHペレット表層部のホウ素化合物の含有量、さらに桂皮酸類の含有量に着目し、EVOHペレットの表層部のホウ素化合物の含有量を従来より少なくし、かつ、EVOH中の桂皮酸類の含有量を所定範囲にすることにより、フィッシュアイが減少することを見出し、本発明を完成した。
なお、本発明のホウ素および桂皮酸類を含有するEVOHペレットを用いて得られる膜(層、フィルムを含む)は、単層膜であっても成形性に優れ、外観に優れているので、耐水性、強度等の観点から、他の樹脂層を積層した多層構造体においても、当然に適用できるものである。
すなわち、本発明は、ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するEVOHペレット(以下、単に「ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット」と称する場合がある)であって、当該ペレット表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸類の含有量が当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%であるEVOHペレットを第1の要旨とする。
また、本発明は、EVOHペレットをホウ素化合物の溶液と接触させることによりホウ素化合物を含有させる工程、上記工程により得られたペレットを洗浄して、ペレット表層部のホウ素化合物含有量を、ホウ素換算でEVOHペレット重量あたり1.7ppm以下にする工程、および桂皮酸類を含有させる工程を備えたEVOHペレットの製造方法であって、上記洗浄工程の洗浄が、乾燥後のペレットと、水のアルコールに対する重量比(水/アルコール)が80/20〜0/100の水/アルコール混合溶液またはアルコールとを接触させることであり、上記桂皮酸類を含有させる工程が、桂皮酸類を当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%となるように含有させることであるEVOHペレットの製造方法を第2の要旨とする。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、当該ペレット表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸類の含有量が当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%である。そのため、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、溶融成形性を確保しつつ、フィッシュアイの発生を抑制する効果に優れる。
また、本発明のなかでも、特に、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット全体のホウ素化合物全含有量が、ホウ素換算で上記ペレット重量あたり10〜1000ppmであると、成膜に適した粘度となり、成膜性能を向上させることができ、ひいてはフィッシュアイの発生を抑制する効果に優れたものとすることができる。
さらに、本発明のなかでも、特にホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット全体のホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)に対する上記ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)の重量比(表層部ホウ素化合物含有量/ホウ素化合物全含有量)が、1.38×10-2以下であると、より一層フィッシュアイの発生を抑制する効果に優れたものとすることができ、また、フィルム外観を向上させることができる。
そして、本発明のなかでも、特に、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの含水率が0.01〜1重量%であると、より一層フィシュアイの発生を抑制する効果に優れたものとすることができ、また、フィルム外観を向上させることができる。
また、EVOHペレットをホウ素化合物の溶液と接触させることによりホウ素化合物を含有させる工程、上記工程により得られたペレットを洗浄して、ペレット表層部のホウ素化合物含有量を、ホウ素換算でエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット重量あたり1.7ppm以下にする工程および桂皮酸類を含有させる工程を備えたEVOHペレットの製造方法であって、上記洗浄する工程の洗浄が、乾燥後のペレットと、水のアルコールに対する重量比(水/アルコール)が80/20〜0/100の水/アルコール混合溶液またはアルコールとを接触させることであり、上記桂皮酸類を含有させる工程が、桂皮酸類を当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%となるように含有させることである、本発明のEVOHペレットの製造方法であると、表層部のホウ素化合物含有量を減じたホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットとすることができ、当該ペレットを用いた溶融成形品は、溶融成形性が良好で、フィッシュアイの発生が低減されたものとなる。
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
なお、本明細書において、前記ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するEVOHペレットにおけるホウ素量として測定された含有量については、「ホウ素化合物含有量(ホウ素換算)」または単に「ホウ素含有量」と称する。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、当該ペレットの表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸類の含有量が当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%である。
ここで、「ペレット表層部のホウ素化合物含有量」とは、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットが含有するホウ素化合物のうち、表面近くに存在しているホウ素化合物の量をいい、具体的には、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット4gを30℃のメタノール20mLに6時間静置浸漬した後、得られたメタノール溶液中のホウ素含有量を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いて測定し、上記EVOHペレットの重量(4g)で除したものである。この「ペレット表層部のホウ素化合物」には、ペレット表面に付着しているだけのホウ素化合物、表面にブリードしてきたホウ素化合物等が含まれる。
そして、「ペレット表層部のホウ素化合物含有量」は、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット中に含有されているホウ素含有量(「ペレットのホウ素全含有量」)とは区別されるものである。
本発明の「桂皮酸類含有量」とは、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの表面、または内部、またはその両方に含有する桂皮酸類の量を意味する。具体的には、EVOHペレット表面にのみ桂皮酸類を含有する場合は、EVOHペレット表面への桂皮酸類の添加量を含有量とみなすことができる。また、EVOHペレット内部に桂皮酸類を含有する場合は、EVOHペレット1gを25℃の抽出液(桂皮酸の場合はメタノール)9mLに浸漬し、2時間超音波処理して得られた抽出液についてLC/MS/MS分析にて測定される量である。
以下、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの説明に先立って、各構成成分および、ホウ素化合物と桂皮酸類とを含有させる前のEVOHペレットの製造方法について説明する。
<EVOH>
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを構成するEVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン−ビニルエステル系共重合体)をケン化させることにより得られる樹脂であり、一般的にエチレン−ビニルアルコール系共重合体やエチレン−ビニルエステル系共重合体ケン化物と称される非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法も公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノール等の低級アルコール、特に好ましくはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン−ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
このようにして製造されるEVOHは、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、必要に応じてケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を通常含む。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物の処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
上記エチレンおよび上記ビニルエステル系モノマーは、通常はナフサ等の石油由来の原料が用いられているが、シェールガス等天然ガス由来の原料や、さとうきび、テンサイ、トウモロコシ、ジャガイモ等に含まれる糖、デンプン等の成分、またはイネ、麦、キビ、草植物等に含まれるセルロース等の成分から精製した植物由来の原料からのモノマーを用いてもよい。
EVOHにおけるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定した値で、通常20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、特に好ましくは27〜48モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が低下する傾向がある。
EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、溶媒として水/メタノールを使用)に基づいて測定した値で、通常90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
また、該EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5〜100g/10分であり、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、成膜性が不安定となる傾向があり、小さすぎる場合には粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
本発明で用いられるEVOHには、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
上記コモノマーとしては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−1,2−ジオール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1,2−ジオール等の水酸基含有α−オレフィン類やそのエステル化物、2−メチレンプロパン−1,3−ジオール、3−メチレンペンタン−1,5−ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチロニルオキシ−2−メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類、アシル化物等の誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
特に、水酸基含有α−オレフィン類を共重合したEVOHは、二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも側鎖に1級水酸基を有するEVOH、特には1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。
かかる1,2−ジオール構造を側鎖に有するEVOHは、側鎖に1,2−ジオール構造単位を含むものである。かかる1,2−ジオール構造単位とは、具体的には下記一般式(1)で示される構造単位である。
Figure 2018109168
上記一般式(1)式中、R1〜R6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示す。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等があげられる。
1〜R3は、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。R4〜R6は、通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4のアルキル基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。特に、R1〜R6がすべて水素であるものが最も好ましい。
また、上記一般式(1)で表される構造単位中のXは、代表的には単結合である。 なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、Xは結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2)m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造;−CO−、−COCO−、−CO(CH2)mCO−、−CO(C64)CO−等のカルボニル基を含む構造;−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造;−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造;−HPO4−等のリン原子を含む構造等のヘテロ原子を含む構造;−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造;−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造;−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造等の金属原子を含む構造等があげられる。
また、mは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における最も好ましい構造は、R1〜R6がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記一般式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
Figure 2018109168
上記一般式(1a)で表わされる1,2−ジオール構造単位を含有する場合、その含有量は通常0.1〜20モル%、さらには0.1〜15モル%、特には0.1〜10モル%のものが好ましい。
さらに、本発明で用いるEVOHとしては、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHであってもよい。
<ホウ素化合物>
本発明で用いるホウ素化合物としては、ホウ酸またはその金属塩、例えば、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)等のアルカリ金属塩;ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)等のアルカリ土類金属塩;ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ビスマス、等の他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物等があげられ、好適にはホウ砂、ホウ酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
<桂皮酸類>
本発明で用いる桂皮酸類としては、桂皮酸に限らず、例えば、桂皮酸エステル、アルコキシ基を有する桂皮酸、桂皮酸アミド、桂皮酸塩等の桂皮酸誘導体があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これらのなかでも、桂皮酸が好ましい。また、複数種の桂皮酸類を用いた時の桂皮酸類の含有量は、全桂皮酸類を合計した含有量である。
<EVOHペレットの製造>
EVOHからペレットを製造する方法としては、従来公知の方法を採用でき、
a)溶融状態のEVOHを吐出口から押し出し、溶融状態でカットした後、冷却固化してペレットを作製するホットカット方式、
b)溶融状態のEVOHを凝固浴中に押し出し、冷却固化により得られたEVOHストランドをカットするストランドカット方式、等があげられる。
上記a)ホットカット方式、b)ストランドカット方式のいずれにおいても、ペレット原料として使用するEVOHとしては、(α)EVOHの製造において、エチレン−ビニルエステル系共重合体の溶液をケン化することにより得られたEVOHの溶液またはスラリー、またはEVOH含水組成物(以下、「EVOH溶液・含水組成物」と称することがある);あるいは(β)EVOH(乾燥EVOH)のペレットを溶融し、かかる溶融状態のEVOHを用いることができる。
上記EVOH含水組成物とは、上記EVOHの溶液またはスラリーの含水率を、溶媒を用いて適宜調整したものであり、EVOH含水組成物中におけるEVOHの濃度は、通常20〜60重量%である。
上記の溶媒としては、アルコール、水/アルコール混合溶媒等を用いることができる。これらのうち、水/アルコール混合溶媒が好ましい。上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜10の脂肪族アルコールを用いることができ、特にメタノールが好ましい。また、水/アルコール混合重量比は、80/20〜5/95が好ましい。
また、上記EVOH含水組成物としては、通常EVOH100重量部に対し、アルコールを0〜10重量部、水を10〜500重量部含有することが好ましい。
上記EVOHの溶液またはスラリー含水組成物の含水率を調整する方法としては特に限定しないが、含水率を上げるためには、EVOHの溶液またはスラリーに上記の溶媒をスプレーする方法、EVOHの溶液またはスラリーと上記の溶媒とを混合する方法、EVOHの溶液またはスラリーを上記の溶媒の蒸気と接触させる方法等を採用できる。含水率を下げるためには、EVOHの溶液またはスラリーを適宜乾燥すればよく、例えば流動式熱風乾燥機あるいは静置式熱風乾燥機を用いて乾燥することができる。
つぎに、a)ホットカット方式および、b)ストランドカット方式について説明する。
a)ホットカット方式
EVOH溶液・含水組成物をホットカット方式で製造するペレット原料として押出機に投入する場合、押出機内でのEVOH溶液・含水組成物の温度は、70〜170℃が好ましく、より好ましくは80〜170℃、さらに好ましくは90〜170℃である。EVOH溶液・含水組成物の温度が低すぎる場合は、EVOHが完全に溶融しない傾向があり、高すぎる場合は、EVOHが熱劣化を受けやすくなる傾向がある。
また、乾燥EVOHをペレット原料として使用する場合、押出機内でのEVOHの温度は150〜300℃が好ましく、より好ましくは160〜280℃、さらに好ましくは170〜250℃である。
なお、上記EVOH溶液・含水組成物および乾燥EVOHの温度とは、押出機シリンダーに設置した温度センサーにより押出機先端部吐出口付近で検出した温度をいう。
押出機のダイスから押し出されるEVOH溶液・含水組成物、すなわち溶融状態にあるEVOHは、冷却固化する前にカットされる。カット方式は、大気中でカットするホットカット方式(空中ホットカット方式)、冷却水で満たされたカッター設置容器内に押出され冷却水中でカットする水中カット方式のいずれでもよい。
上記水中カット方式における冷却水の温度は、溶融状態で押し出されたEVOHが瞬時に固化(凝固)しない程度の温度であり、EVOH溶液・含水組成物を原料として用いる場合の冷却水の温度は−20〜50℃とすることが好ましく、より好ましくは−5〜30℃である。
また、乾燥EVOHを原料とする場合、EVOH溶液・含水組成物を原料として用いる場合よりも凝固しやすいことから、水中カット方式における冷却水の温度は、EVOH溶液・含水組成物を原料とする場合よりも高く、通常0〜90℃であり、好ましくは20〜70℃である。
上記冷却水は、水に限定されず、水/アルコール混合溶液;ベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル等の有機エステル類等も用いることができる。これらのうち、取扱い性が容易という点から、水、または水/アルコール混合溶液が用いられる。水/アルコール混合溶液において、水/アルコール(重量比)は通常90/10〜99/1である。なお、上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを用いることができ、工業上、メタノールが好ましく用いられる。
b)ストランドカット方式
EVOH溶液・含水組成物をストランドカット方式で製造するペレット原料として押出機に投入する場合、凝固浴に押し出すEVOH溶液・含水組成物の温度は、通常、10〜100℃である。また、凝固浴の温度は、押し出されたEVOHが冷却固化できる温度で、通常、−10〜40℃であり、滞留時間は、通常、10〜400秒間程度である。
また、乾燥EVOHをペレット原料として押出機に投入する場合、凝固浴にEVOHが押し出される温度は、通常、150〜300℃であり、凝固浴の温度は、通常、0〜90℃で、滞留時間は2〜400秒間程度である。
凝固浴に用いる凝固液としては、上記a)ホットカット方式の冷却水と同様の溶液を採用することができる。
このようにして、EVOHペレットが得られる。
以上のようなEVOHペレットのうち、後述するホウ素化合物の含有処理の点から、ペレット内部に複数の孔を有する多孔質ペレットを用いることが好ましい。この孔内へホウ素化合物を浸透させることで、ホウ素化合物をペレット中に保持しやすくなり、効率的にホウ素化合物をペレット内部へ取り込ませることができる。上記多孔質ペレットの孔の大きさは、その孔内へホウ素化合物が浸透できる範囲であればよく、特に限定されない。
このような多孔質ペレットは、通常、ペレット原料として、上記EVOH含水組成物を使用し、当該EVOH含水組成物中のEVOH濃度、溶媒の種類、押し出し時の温度、凝固浴の温度、滞留時間等を調整することで、得ることができる。
また、多孔質ペレットの含水率は20〜80重量%が好ましい。当該含水率の多孔質ペレットは、後述のホウ素化合物の含有させる工程において、ホウ素化合物を均一かつ迅速に含有させることができる。
EVOHペレットの形状は、通常、ペレットの製造方法に依存し、種々の形状のものを用いることができ、上記各方法によって得られるEVOHペレットおよび本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの形状は任意である。ペレットの形状としては、例えば、球形、オーバル形、円柱形、立方体形、直方体形、不定形等があるが、通常、オーバル形、または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、オーバル形の場合は長径が通常1〜10mm、好ましくは2〜7mmであり、短径は通常1〜6mm、好ましくは2〜5mmであり、円柱形の場合は底面の直径が通常1〜10mm、好ましくは2〜7mmであり、長さは通常1〜10mm、好ましくは3〜8mmである。
本発明で用いるEVOHペレットは、異なる他のEVOHペレットとの混合物であってもよく、上記他のEVOHペレットとしては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)が異なるもの、他の共重合成分が異なるもの、例えば、前記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位の含有量が異なるもの等をあげることができる。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、上記EVOHペレットに所定量のホウ素化合物および桂皮酸類を含有させることにより得られる。この、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に代表的な製造方法について説明する。
<ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの製造>
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、EVOHペレットとホウ素化合物とを接触させることによりホウ素化合物を含有させる工程、ホウ素化合物を含有するEVOHペレットを洗浄して、ペレット表層部のホウ素化合物含有量を、ホウ素換算でEVOHペレット重量あたり1.7ppm以下にする工程、および桂皮酸類を含有させる工程を経ることにより得ることができる。これらの工程は、どちらの工程を先に行ってもよく、また同時に行ってもよい。上記工程を同時に行う際は、例えば、ホウ素化合物と桂皮酸類が溶解した溶液を用いる等により行うことができる。
<ホウ素化合物を含有させる工程>
上記ホウ素化合物を含有させる工程は、前記EVOHペレットとホウ素化合物とを接触させることにより行う。
上記EVOHペレットとホウ素化合物とを接触させる方法としては、例えば、
i)EVOHのペレット製造段階でEVOHとホウ素化合物とを接触させる方法、
ii)予め作製したEVOHペレットとホウ素化合物とを接触させる方法、
等により行うことができる。
i)のEVOHペレット製造段階でEVOHとホウ素化合物とを接触させる方法としては、例えば、ペレット原料(EVOH溶液・含水組成物、乾燥EVOH)にホウ素化合物を添加、あるいはホウ素化合物を含有する溶液を、ペレット製造する際の凝固液に使用する方法等があげられる。
ペレット原料としてEVOH溶液・含水組成物を用いる場合には、当該EVOH溶液・含水組成物にホウ素化合物を添加すればよい。また、乾燥EVOHペレットを溶融し、かかる溶融状態のEVOHを原料として用いる場合、乾燥EVOHに予めホウ素化合物を含有させればよい。
好ましくは、ホウ素化合物を添加したEVOH含水組成物を、凝固浴中にストランド状に押し出し、得られたストランドを切断する方法である。
ii)の予め作製したEVOHペレットとホウ素化合物を接触させる方法としては、ホウ素化合物を含有する溶液をEVOHペレットに噴霧する方法;ホウ素化合物を含有する溶液にEVOHペレットを浸漬する方法;ホウ素化合物を含有する溶液を撹拌しながら、EVOHペレットを投入する方法等があげられる。これらのうち、ホウ素化合物をペレット内部にまで効率よく含有させることができる点で、ホウ素化合物を含有する溶液を撹拌しながら、EVOHペレットを投入する方法が好ましく用いられる。
上記ホウ素化合物を含有する溶液の溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール;水/アルコール混合用液等を使用することができる。なお、水/アルコール混合溶液において、水/アルコール(重量比)は通常90/10〜10/90である。
また、EVOHペレットとホウ素化合物との接触処理に用いるホウ素化合物の溶液の濃度は、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%である。かかる濃度が低すぎると、所定量のホウ素化合物を含有させることが困難となる傾向があり、高すぎると最終的に得られる成形物の外観が低下する傾向にある。
上記EVOHペレット中のホウ素化合物量(EVOHペレット中のホウ素化合物全含有量)は、ホウ素化合物を含有する溶液における、ホウ素化合物の濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOHペレットの含水率等により、コントロールすることが可能である。
以上のようなEVOHペレットとホウ素化合物とを接触させる方法のうち、種々のペレットに適用でき、汎用性に優れているという点で、ii)の予め作製したEVOHペレットとホウ素化合物とを接触させる方法が好ましい。より好ましくは、前記の多孔質ペレットを、ホウ素化合物の溶液と接触させる方法である。
このようなホウ素化合物接触処理により得られるホウ素化合物を含有するEVOHペレット〔ペレット表層部におけるホウ素化合物含有量については未調整であり、以下、このペレットを「表層部ホウ素調整前EVOHペレット」という〕に含有されるホウ素化合物量(EVOHペレット中のホウ素化合物全含有量)は、ホウ素換算で、通常10〜10000ppmであり、好ましくは20〜5000ppm、さらに好ましくは30〜3000ppmである。かかる含有量が少なすぎると、ホウ素化合物の添加効果が低下する傾向があり、多すぎると最終的に得られる成形物の外観が低下する傾向がある。
上記表層部ホウ素調整前EVOHペレット中に含有されるホウ素化合物の量〔ホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)〕は、ペレットを濃硝酸とともにマイクロウェーブ分解法にて処理して得られた溶液に、純水を加えて定容したものを検液とし、誘導結合プラズマ発光分析計(ICP−AES)で測定される量である。
上記の工程によって得られる表層部ホウ素調整前EVOHペレットは、そのまま次の工程に供してもよいが、通常、ペレットを乾燥することが好ましい。かかる乾燥に際しては公知の方法を採用することができ、例えば、円筒・溝型撹拌乾燥器、円筒乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等を用いた流動乾燥や回分式箱型乾燥器、バンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型サイロ乾燥器等を用いた静置乾燥等により乾燥すればよい。80〜150℃の窒素ガス等の気体を乾燥器内を通過させることで、表層部ホウ素調整前EVOHペレットに影響を及ぼさないで、効率よく乾燥させることができる。
<EVOHペレットを洗浄する工程>
つぎにEVOHペレットを洗浄する工程について説明する。上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットは、当該ペレットに含まれるホウ素化合物の全含有量、およびペレット表層部のホウ素化合物の含有量にもよるが、洗浄処理によって、ペレット表層部におけるホウ素化合物の含有量を調整することができる。
上記洗浄処理は、洗浄用処理液と上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットとを接触させることにより行われる。上記接触させる方法としては、例えば、洗浄用処理液に上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットを浸漬し撹拌する方法、洗浄用処理液中で上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットを循環させる方法、表層部ホウ素調整前EVOHペレットに洗浄用処理液を吹き付ける方法等により行うことができる。また、上記浸漬する方法においては、浸漬中に超音波等の振動を与えることも有効である。上記の方法のなかでも、工業上、好適には表層部ホウ素調整前EVOHペレットを洗浄用処理液に浸漬し撹拌する方法、洗浄用処理液中で表層部ホウ素調整前EVOHペレットを循環させる方法が用いられる。
上記洗浄用処理液としては、水/アルコール混合溶液またはアルコールが好ましく、より好ましくは水/アルコール混合溶液である。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の炭素数1〜8、特には1〜5、さらには1〜3のアルコールを用いることが好ましく、これらのうち、入手容易かつ安価の点で、メタノールが特に好ましく用いられる。
上記洗浄用処理液として水/アルコール混合溶液またはアルコールを用いる場合は、水/アルコール(重量比)が、80/20〜0/100、好ましくは65/35〜15/85、特に好ましくは50/50〜20/80である。水が多すぎても、アルコール濃度が高くなりすぎても、表層部のホウ素化合物含有量低減効果が低下する傾向があることから、上記範囲の水/アルコール混合溶液が好ましい。
一般にホウ素化合物の溶解度は、水よりもアルコールの方が高いため、ホウ素化合物の含有量を調整するための洗浄用処理液としては、アルコールを用いることが通常である。しかし、本発明においては、意外にも、洗浄用処理液としてアルコール単独よりも水/アルコール混合溶液を用いることにより、より効率的に表層部ホウ素調整前EVOHペレットからホウ素化合物を溶出させることができることを見出した。なお、ホウ素化合物の23℃の水10gに対する溶解度は、0.1〜10重量%程度であり、23℃のメタノール10gに対する溶解度は15〜30重量%程度である。
上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットと洗浄用処理液との接触時間は、ホウ素化合物含有量が所定の濃度となる時間であれば特に限定されないが、通常5分間〜48時間、さらには10分間〜24時間が好ましく、洗浄用処理液の温度は、通常10〜80℃、さらには20〜60℃とすることが好ましい。
上記洗浄処理後のホウ素化合物含有EVOHペレットは、必要に応じて乾燥してもよい。具体的には、含水率0.01〜1重量%程度、好ましくは0.05〜0.5重量%程度まで乾燥することが好ましい。乾燥方法は、上記表層部ホウ素調整前EVOHペレットの乾燥方法と同様の方法を採用することができる。
上記洗浄処理により、ペレット表層部のホウ素化合物の含有量を減じることができ、本発明の第1の特徴であるペレット表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で1.7ppm以下に低減された、ホウ素化合物を含有するEVOHペレットが得られる。
つぎに、本発明の第2の特徴である、桂皮酸類をEVOHペレットに含有させる工程について説明する。
<桂皮酸類を含有させる工程>
桂皮酸類を含有するEVOHペレットは、前記EVOHペレットに桂皮酸類を含有させることにより製造することができる。
EVOHペレットに桂皮酸類を含有させる方法としては、例えば、
iii)EVOHペレット製造段階で桂皮酸類と接触させる方法、
iv)予め作製したEVOHペレットと桂皮酸類とを接触させる方法、
等により行うことができる。
上記iii)のペレット製造段階で桂皮酸類と接触させる方法としては、例えば、ペレット原料(EVOH溶液・含水組成物、乾燥EVOH)に桂皮酸類を添加、あるいは桂皮酸類の溶液を、ペレットを押出成形する際の凝固液に使用する方法があげられる。
ペレット原料としてEVOH溶液・含水組成物を用いる場合には、例えば、EVOH溶液・含水組成物に桂皮酸類を添加すればよい。また、乾燥EVOHペレットを原料として用いる場合には、乾燥EVOHに予め桂皮酸類を含有させればよい。
好ましくは、桂皮酸類を添加したEVOH溶液・含水組成物を、凝固液中にストランド状に押出し、得られたストランドを切断する方法である。
上記iv)の予め作製したEVOHペレットと桂皮酸類を接触させる方法としては、桂皮酸類を含有する溶液をEVOHペレットに噴霧する方法;桂皮酸類を含有する溶液にEVOHペレットを浸漬する方法;桂皮酸を含有する溶液を撹拌しながら、EVOHペレットを投入する方法;桂皮酸類の粉末をEVOHペレットに直接添加して混ぜ合わせる方法等があげられる。これらのうち、桂皮酸類を効率よく含有させることができる点で、桂皮酸類の粉末をEVOHペレットに直接添加して混ぜ合わせる方法が好ましく用いられる。
上記桂皮酸類を含有する溶液をEVOHペレットに噴霧する場合における溶液中の桂皮酸類の濃度は、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%である。また、桂皮酸類を含有する溶液にEVOHペレットを浸漬する場合または、桂皮酸類を含有する溶液を撹拌しながら、EVOHペレットを投入する場合、桂皮酸類を含有する溶液における桂皮酸類の濃度は、通常0.0001〜0.05重量%であり、好ましくは0.001〜0.04重量%である。かかる濃度が低すぎると、所定量の桂皮酸類を含有させることが困難となる傾向があり、高すぎると最終的に得られる成形物の外観が低下する傾向にある。なお、桂皮酸類を含有する溶液を用いる場合の溶媒としては、前記ホウ素化合物を含有する溶液に用いたものと同様のものを用いることができる。
上記桂皮酸類を含有する溶液を用いる接触方法においては、溶液中の桂皮酸類の濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOHペレットの含水率等により、桂皮酸類の含有量をコントロールすることが可能である。
上記、桂皮酸類の粉末をEVOHペレットに直接添加する場合は、添加量を桂皮酸類の含有量とすることができ、添加する桂皮酸類量は、EVOHペレットに対して、通常0.0001〜0.05重量%であり、好ましくは0.001〜0.04重量%、さらに好ましくは0.005〜0.035重量%である。
以上のような桂皮酸類との接触処理のうち、種々のペレットに適用でき、汎用性に優れているという点で、iv)の予め作製したEVOHペレットと桂皮酸類とを接触させる方法が好ましく、特に好ましくは、桂皮酸類の粉末をEVOHペレットに直接添加して混ぜ合わせる方法である。
上記の桂皮酸類含有EVOHペレットは、必要に応じて、乾燥してもよい。具体的には、含水率0.01〜1重量%程度、特には0.05〜0.5重量%程度まで乾燥することが好ましい。乾燥方法は、表層部ホウ素調整前EVOHペレットの乾燥方法と同様の方法を採用することができる。
上記工程により、桂皮酸類を含有するEVOHペレットが得られる。
上記ホウ素化合物を含有させる工程、EVOHペレットを洗浄する工程、および桂皮酸類を含有させる工程を経ることにより、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを得ることができる。
なかでも、作業効率の点からホウ素化合物を含有させる工程を行い、つぎにEVOHペレットを洗浄する工程、最後に桂皮酸類を含有させる工程を行うことが好ましく、なかでもホウ素化合物を含有させる工程は前記工程ii)、桂皮酸類を含有させる工程は前記工程iv)で行うことが特に好ましい。
<ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット>
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットにおける、ホウ素化合物の全含有量は、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり、10〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは20〜500ppm、さらに好ましくは30〜300ppmである。なお、上記ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットにおけるホウ素化合物の全含有量は、前記表層部ホウ素調整前EVOHペレット中に含有されるホウ素化合物の量と同様の方法で測定することができる。
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットに含有されるホウ素含有量が少なすぎると、溶融粘度が低くなり、成膜性能が低下する傾向にあり、特にインフレーション成膜が困難になる傾向にある。したがって、少なくともホウ素含有量が10ppm程度となるように、ホウ素化合物を含有させることが好ましい。
また、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットにおいて、ペレット表層部のホウ素化合物含有量は、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、好ましくは1.6ppm以下、より好ましくは1.5ppm以下である。下限は、特に限定しないが、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット中のホウ素化合物の全含有量(ホウ素換算)が上記範囲内である場合、通常、1ppb以上、好ましくは50ppb以上、より好ましくは100ppb以上である。
上記ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)が多くなりすぎると、フィッシュアイ等が発生しやすくなり、フィルム外観が低下することとなり、また、成膜性も低下することとなる。
上記ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)は、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット4gを30℃のメタノール20mLに6時間静置浸漬した後、得られたメタノール溶液中のホウ素含有量を誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いて測定し、上記EVOHペレットの重量(4g)で除したものである。
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット中のホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)に対する前記ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)の重量比(表層部のホウ素化合物含有量/ホウ素化合物全含有量)を、1.38×10-2以下とすることが好ましく、より好ましくは1.35×10-2以下、さらに好ましくは1.30×10-2以下である。当該比率が高くなりすぎると、フィッシュアイが発生しやすくなり、フィルム外観が低下する傾向にある。なお、下限値は、通常1×10-7である。
また、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットにおける桂皮酸類含有量は、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットに対して0.0001〜0.05重量%であり、好ましくは0.001〜0.04重量%、さらに好ましくは0.005〜0.035重量%である。かかる含有量が少なすぎると、フィッシュアイの抑制効果が低下する傾向があり、多すぎるとEVOHが増粘しすぎてしまい、逆にフィッシュアイの発生およびその他の押出成形性が低下する傾向がある。
上記桂皮酸類の含有量とは、具体的には、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット表面にのみ桂皮酸類を含有する場合は、EVOHペレット表面への桂皮酸類の添加量を含有量とみなすことができる。また、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット内部に桂皮酸類を含有する場合は、粉砕したホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット1gを25℃の抽出液(桂皮酸の場合はメタノール)9mLに浸漬し、2時間超音波処理して得られた抽出液についてLC/MS/MS分析にて測定される量である。
また、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの含水率は、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。含水率が少なすぎると水分子によるEVOHの可塑化が起こらず、押出成形時にEVOHペレットが溶融しづらくなって、未溶融物の欠点が生じやすくなる傾向があり、多すぎると押出成形時に発泡現象が起こり、成形物の外観が悪化しやすくなる傾向がある。
〔その他の成分〕
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットには、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下)で、一般的にEVOH組成物に用いられるEVOH以外の樹脂を混合して得られる樹脂組成物も含むことができる。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットには、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOHに配合する配合剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等が含有されていてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩等の塩;または、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、またはこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)、亜鉛塩等の塩;等の添加剤を添加してもよい。これらのうち、特に、酢酸、酢酸塩、リン酸塩を配合することが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
これらの成分を配合する場合、通常、ホウ素化合物または桂皮酸類とEVOHペレットとの接触処理前、接触処理とともに、あるいは接触処理後のいずれの段階で行ってもよい。好ましくはホウ素化合物または桂皮酸類含有量への影響が少ないという点で、接触処理とともに行うことが好ましい。
その他の成分の配合方法は特に限定しないが、通常、これらの配合剤を含有する溶液にEVOHペレットを接触させることにより行うことができる。したがって、ホウ素化合物または桂皮酸類との接触処理前であれば、EVOHペレットを上記配合剤を含有する溶液に浸漬することにより、あるいはホウ素化合物および桂皮酸類の少なくとも一方を含有する溶液に、さらに上記配合剤も含有させることにより、配合することができる。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの溶融成形品は、単層膜であっても成形性に優れ、外観に優れているが、耐水性、強度等の観点から、必要に応じて、他の樹脂層を積層した多層構造体としてもよい。
以下、かかる多層構造体について説明する。
上記の多層構造体を製造するにあたっては、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを用いて成形された層の片面または両面に、他の基材(熱可塑性樹脂等)を積層するのであるが、積層方法としては、例えば、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等を用いて成形されたフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等を溶融押出ラミネートする方法、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等と他の基材とを共押出する方法、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等を用いてなるフィルム、シート等(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法等があげられる。上記の溶融押出時の溶融成形温度は、150〜300℃の範囲から選ぶことが多い。
かかる他の基材としては、熱可塑性樹脂が有用で、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独または共重合体、あるいはこれらのオレフィンの単独または共重合体を不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、芳香族または脂肪族ポリケトン、さらにこれらを還元して得られるポリアルコール類、さらには本発明に用いられるEVOH以外の他のEVOH等があげられる。多層構造体の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックまたはランダム)共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましく用いられる。
さらに、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等を用いて成形されたフィルムやシート等の成形物に、他の基材を押出コートしたり、他の基材のフィルム、シート等を、接着剤を用いてラミネートしたりする場合、かかる基材としては、上記の熱可塑性樹脂以外に、任意の基材(紙、金属箔、一軸または二軸延伸プラスチックフィルムまたはシートおよびその無機物蒸着物、織布、不織布、金属綿条、木質等)も使用可能である。
上記多層構造体の層構成は、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを用いて成形された層をa(a1、a2、・・・)、他の基材、例えば熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、かかるa層を最内層とする構成で、[内側]a/b[外側](以下同様)の二層構造のみならず、例えば、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、a1/b1/a2/b2、a1/b1/b2/a2/b2/b1等任意の組み合わせが可能であり、さらには、少なくとも本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット等と熱可塑性樹脂の混合物からなるリグラインド層をRとするとき、例えば、a/R/b、a/R/a/b、a/b/R/a/R/b、a/b/a/R/a/b、a/b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができる。かかる接着性樹脂としては、種々のものを使用することができるが、延伸性に優れた多層構造体が得られる点において、例えば不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(上述の広義のポリオレフィン系樹脂)に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体をあげることができる。
具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとしてあげられる。このときの、熱可塑性樹脂に含有される不飽和カルボン酸またはその無水物の量は、0.001〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.03〜0.5重量%である。該変性物中の変性量が少なすぎると接着性が低下する傾向があり、逆に多すぎると架橋反応を起こし、成形性が低下する傾向がある。
また、これらの接着性樹脂には、本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットに由来するEVOH、他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
多層構造体の各層の厚みは、層構成、b層の種類、用途や成形物の形態、要求される物性等により一概にいえないが、通常は、a層は5〜500μm、好ましくは10〜200μm、b層は10〜5000μm、好ましくは30〜1000μm、接着性樹脂層は5〜400μm、好ましくは10〜150μm程度の範囲から選択される。
多層構造体は、そのまま各種形状のものに使用されるが、上記多層構造体の物性を改善するためには加熱延伸処理を施すことも好ましい。ここで、「加熱延伸処理」とは、熱的に均一に加熱されたフィルム、シート、パリソン状の積層体をチャック、プラグ、真空力、圧空力、ブロー等の成形手段により、カップ、トレイ、チューブ、フィルム状に均一に成形する操作を意味する。そして、かかる延伸については、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、できるだけ高倍率の延伸を行ったほうが物性的に良好で、延伸時にピンホールやクラック、延伸ムラや偏肉、デラミ(delamination:層間剥離)等の生じない、ガスバリア性に優れた延伸成形物が得られる。
上記多層構造体の延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。二軸延伸の場合は同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。延伸温度は60〜170℃、好ましくは80〜160℃程度の範囲から選ばれる。延伸が終了した後、熱固定を行うことも好ましい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、上記延伸フィルムを、緊張状態を保ちながら80〜170℃、好ましくは100〜160℃で2〜600秒間程度熱処理することによって、熱固定を行うことができる。
また、生肉、加工肉、チーズ等の熱収縮包装用途に用いる場合には、延伸後の熱固定は行わずに製品フィルムとし、上記の生肉、加工肉、チーズ等を該フィルムに収納した後、50〜130℃、好ましくは70〜120℃で、2〜300秒間程度の熱処理を行って、該フィルムを熱収縮させて密着包装をする。
このようにして得られる多層構造体の形状としては、任意のものであってよく、フィルム、シート、テープ、異型断面押出物等が例示される。また、上記多層構造体は、必要に応じて、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
上記の如く得られたフィルム、シート、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
まず実施例および比較例で用いるペレットの測定評価方法について説明する。
〔測定評価方法〕
(1)ペレット中のホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)
EVOHペレット0.1gを濃硝酸とともにマイクロウェーブ分解法にて処理して得られる溶液を純水にて定容(0.75mg/mL)したものを検液とし、誘導結合プラズマ発光分析計(ICP−AES)(アジレント・テクノロジー社製720−ES型)で測定した。当該測定されるホウ素含有量は、ホウ素化合物に由来するホウ素量に該当する。なお、かかる測定評価方法は、ホウ素調整前EVOHペレットおよび、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットに適用する。
(2)ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット4gを、メタノール(30℃)20mLに6時間静置浸漬し、得られたメタノール溶液を測定用試料として用いた。この測定用試料について、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)(パーキンエルマー社製、ELAN DRCII)を用いてホウ素含有量を測定し、上記EVOHペレット重量(4g)で除してペレット表層部のホウ素含有量を求めた。当該測定されるホウ素含有量は、ホウ素化合物に由来するホウ素量に該当する。
(3)ペレットの桂皮酸類含有量
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット中の桂皮酸類の含有量について、桂皮酸類がホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット表面に直接添加されたものである場合は添加量を含有量とみなした。また、桂皮酸類がホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの内部に存在する場合は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)を用いて、下記手順に基づいて評価した。なお、下記手順は桂皮酸類として桂皮酸を用いた場合を例にして記載するが、桂皮酸以外の桂皮酸塩等についても同様の手順にて行なわれる。
[標準溶液の調製]
桂皮酸(10.89mg)を10mLメスフラスコに秤量し、メタノールに溶解して10mL溶液とした(標準原液:1089μg/mL)。ついで、調製した標準原液をメタノールで希釈して、複数濃度(0.109μg/mL、0.218μg/mL、0.545μg/mL、1.09μg/mL、2.18μg/mL)の各混合標準溶液を調製した。これら混合標準溶液を用いてLC/MS/MS分析を実施し、検量線を作成した。
[試料溶液の調製]
凍結粉砕したホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレット(1g)を10mLメスフラスコに秤量後、メタノール9mLを加え、超音波処理を120分間実施し、その後、室温(25℃)で放冷した。つぎに、この10mLメスフラスコにメタノールを加えて10mLに定容し、試料溶液(I)とした。上記試料溶液(I)1mLを10mLメスフラスコに採取後、メタノールを加えて10mLに定容し、試料溶液(II)とした。
試料溶液(I)または試料溶液(II)をPTFEフィルタ(0.45μm)で濾過した液体を測定溶液としてLC/MS/MS分析に供した。
LC/MS/MS分析で検出されたピーク面積値と、標準溶液の検量線から桂皮酸の検出濃度を算出し、この検出濃度からEVOHペレット中の桂皮酸含有量を算出した。
[LC/MS/MS測定条件]
LCシステム: LC−20A[島津製作所社製]
質量分析計: API4000[AB/MDS Sciex]
分析カラム: Scherzo SM−C18 (3.0×75mm、3μm)
カラム温度: 45℃
移動相: A 10mmol/L 酢酸アンモニウム 水溶液
B メタノール
タイムプログラム: 0.0→5.0min B%=30%→95%
5.0→10.0min B%=95%
10.1→15.0min B%=30%
流量: 0.4mL/min
切り替えバルブ: 2.0 to 6.0min: to MS
注入量: 5μL
イオン化: ESI法
検出: 負イオン検出(SRM法)
モニターイオン: Q1=147.0 → Q3=102.9(CE: −15eV)
なお、上記タイムプログラムにおける「%」は、体積%を意味する。
(4)EVOHペレットの含水率(%)
乾燥前のEVOHペレットの重量と、温度150℃、5時間乾燥後のEVOHペレットの重量から揮発分を求め、これをEVOHペレットの含水率とした。具体的には含水率は、下記式で表わされる。なお、かかる測定評価方法は、EVOHペレット、表層部ホウ素調整前EVOHペレットおよび、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットに適用する。
含水率(%)=(乾燥前のEVOHペレット重量−乾燥後のEVOHペレット重量)/乾燥前のEVOHペレット重量×100
(5)フィッシュアイ
ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを用いて下記条件で、厚み30μmの単層フィルムを成膜した。
(成膜条件)
押出機:直径(D)40mm、L/D=28
スクリュー:フルフライトタイプ圧縮比=2.5
スクリーンパック:60/90/60メッシュ
ダイ:幅450mm、コートハンガータイプ
設定温度:C1/C2/C3/C4/A/D=190/200/210/210/210/210℃
スクリュー回転数:20rpm
ロール温度:80℃
厚み30μmの単層フィルムについて、デジタル欠陥検査装置(マミヤオーピー社製、GX−70LT)を用いて、フィッシュアイを計測した。
フィッシュアイの計測は、単層フィルムの下面から光を当て、光透過しなかった部分(直径0.1〜0.2mm)をフィッシュアイ1個として、100cm2(サイズ:10cm×10cm)あたりのフィッシュアイ個数をカウントすることにより行った。なお、計測時の読み取り速度は3m/分である。
〔ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットの製造〕
〈実施例1〉
EVOH〔エチレン含有量:44モル%、ケン化度:99.6モル%、MFR:3.8g/10分(210℃、荷重2160g)〕を水/メタノール混合溶媒〔水/メタノール=20/80(重量比)〕に溶解した溶液(60℃、EVOH濃度40%)を、5℃に維持した水を収容した水槽内にストランド状に押出して凝固させた後、カッターで切断して、円柱状(直径4mm、長さ4mm)のペレットを得た。次いで、このEVOHペレットを、30℃の温水に投入し、約4時間撹拌して、含水率50%の多孔質のEVOHペレットを得た。
多孔質のEVOHペレット100部を、0.0054%のホウ酸水溶液200部に投入し、30℃で5時間撹拌した。撹拌後、多孔質の表層部ホウ素調整前EVOHペレットを回収した。
この表層部ホウ素調整前EVOHペレットを、回分式塔型流動層乾燥器にて、75℃の窒素ガスを3時間通過させることにより、含水率20%まで乾燥した。
次いで、回分式箱型通気式乾燥器を用いて、125℃の窒素ガスを18時間通過させて、含水率0.3%にまで乾燥させた。
上記のようにして得られた表層部ホウ素調整前EVOHペレットを、以下の洗浄処理に供した。
表層部ホウ素調整前EVOHペレット5部と、洗浄用処理液としての水/メタノール混合溶媒(水/メタノール=1/1(重量比))10部とを、ステンレス製容器に入れ、35℃で1時間撹拌した。その後、ペレットを取り出し、120℃、16時間、窒素気流下で乾燥した。以上のようにして、ホウ素化合物含有EVOHペレットを得た。
得られたホウ素化合物含有EVOHペレットを、上記方法によりホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量、含水率を測定した。ホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)は128.8ppm、表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)は1.1ppm(含水率0.10%)であった。
このホウ素化合物含有EVOHペレットに対して、0.03%になるように桂皮酸をドライブレンドし、ホウ素含有量ならびに桂皮酸含有量を調製した、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを得た。
得られたホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを、単層Tダイ押出装置を用いて、上記方法にて最高温度210℃、スクリュー回転数20rpmで成膜し、厚み30μmの単層フィルムを製造した。この単層フィルムについて、上記方法によりフィッシュアイの発生個数を調べた。結果を後記の表1に示す。
〈実施例2,3〉
実施例1において、ホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量および、桂皮酸含有量を後記の表1のように調整し、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを得た。また、得られたホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットのホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量を測定した(含水率はともに0.15%)。
ついで、このペレットを用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを作製し、フィッシュアイの発生について評価した。結果を後記の表1に示す。
〈比較例1〉
洗浄処理液を水に変更し、桂皮酸含有量を後記の表1の含有量に調整した以外は、実施例1の場合と同様にして、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを得た。得られたホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットのホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量を測定した(含水率0.13%)。
ついで、このペレットを用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを作製し、フィッシュアイの発生について評価した。結果を後記の表1に示す。
〈比較例2〉
洗浄処理液による洗浄を行わず、桂皮酸を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、ホウ素化合物含有EVOHペレットを得た。また、得られたホウ素化合物含有EVOHペレットのホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量を測定した(含水率0.09%)。
ついで、このペレットを用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを作製し、フィッシュアイの発生について評価した。結果を後記の表1に示す。
〈比較例3,4〉
桂皮酸含有量を下記の表1の含有量に調整した以外は、実施例1の場合と同様にして、ホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットを得た。得られたホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットのホウ素化合物全含有量、表層部のホウ素化合物含有量を測定した(含水率はともに0.10%)。
ついで、このペレットを用いて、実施例1と同様にして単層フィルムを作製し、フィッシュアイの発生について評価した。結果を下記の表1に示す。
Figure 2018109168
表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸を当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%含有する実施例1〜3のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、比較例に比べてフィッシュアイの発生を大幅に抑制することができた。
本発明のホウ素化合物および桂皮酸類含有EVOHペレットは、ペレット表層部のホウ素化合物の含有量を減少させ、かつ桂皮酸類の含有量を所定の範囲とすることで、成形性を損なうことなく、外観を向上させることができるため、従来のEVOHペレットよりも包装材料としての外観要求が厳しい分野に好適に利用することができる。

Claims (5)

  1. ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットであって、
    当該ペレット表層部のホウ素化合物含有量が、ホウ素換算で当該ペレット重量あたり1.7ppm以下であり、かつ桂皮酸類の含有量が当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%であることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット。
  2. 上記ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット全体のホウ素化合物全含有量が、ホウ素換算で上記ペレット重量あたり10〜1000ppmであることを特徴とする請求項1記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット。
  3. 上記ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット全体のホウ素化合物全含有量(ホウ素換算)に対する上記ペレット表層部のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)の重量比(表層部ホウ素化合物含有量/ホウ素化合物全含有量)が、1.38×10-2以下であることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット。
  4. 上記ホウ素化合物および桂皮酸類を含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの含水率が0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット。
  5. エチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットをホウ素化合物の溶液と接触させることによりホウ素化合物を含有させる工程、上記工程により得られたペレットを洗浄して、ペレット表層部のホウ素化合物含有量を、ホウ素換算でエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレット重量あたり1.7ppm以下にする工程、および桂皮酸類を含有させる工程を備えたエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの製造方法であって、
    上記洗浄する工程の洗浄が、乾燥後のペレットと、水のアルコールに対する重量比(水/アルコール)が80/20〜0/100の水/アルコール混合溶液またはアルコールとを接触させることであり、
    上記桂皮酸類を含有させる工程が、桂皮酸類を当該ペレット全体の0.0001〜0.05重量%となるように含有させることであることを特徴とするエチレン−ビニルアルコール系共重合体ペレットの製造方法。
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