JP2018108943A - 抗グリチルレチン酸抗体及びその利用 - Google Patents

抗グリチルレチン酸抗体及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】血清中で、アルブミンがグリチルレチン酸が結合しても、特異的に結合するモノクローナル抗体と前記抗体の利用法の提供。【解決手段】グリチルレチン酸及び哺乳動物の生体内においてアルブミンと結合したグリチルレチン酸に対して特異的結合能を有する抗グリチルレチン酸抗体。グリチルリチンに対して特異的結合能を有しない前記抗体。グリチルリチン、オレアノール酸、β−アミリン、サイコゲニン−A或いは、ヘデラゲニンの内の1種以上の化合物又は/及びアルドステロン、コレストロール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン或いはコルチコステロンの内の1種以上の化合物に対して特異的結合能を有さない、前記化合物。【選択図】なし

Description

本明細書は、抗グリチルレチン酸抗体及びその利用に関する。
甘草は、医療用及び一般用漢方エキス製剤に汎用されている重要生薬であり、主成分であるグリチルリチンは、腸内細菌叢による加水分解によりグリチルレチン酸となって吸収され、薬理作用を発現する。グリチルレチン酸は、抗炎症作用をはじめ、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用など多彩な薬理作用を奏することが知られている。一方、グリチルレチン酸は、副作用として偽アルドステロン症の発現に関与しているとされている。
これらの薬効作用及び副作用発現における作用機序は解明されつつあるが、受容体などの標的分子は確定されていない。
グリチルレチン酸について、より詳細に、分子レベルでの作用機序の解明を行うには、グリチルレチン酸と特異的に反応する抗体が必要である。また、薬効や副作用発現のモニタリングには血中のグリチルレチン酸のモニタリングが重要である。一方、既に、抗グリチルレチン酸モノクローナル抗体も報告されている(特許文献1)。
特開平5−68584号公報
しかしながら、生体内、例えば、血清中においては、アルブミンにグリチルレチン酸が結合する。このため、上記モノクローナル抗体では、血清中のグリチルレチン酸を測定する場合には、除タンパク質を行わなければ、グリチルレチン酸と特異的に結合させることができなかった。このため、操作として煩雑であった。
本明細書は、より実用的な抗グリチルレチン酸抗体及びその利用を提供することを1つの目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、遊離のグリチルレチン酸に特異的に結合するとともに、生体内に存在しうる形態でのグリチルレチン酸にも特異的に結合できる抗グリチルレチン酸抗体を得ることができた。本明細書によれば、この知見に基づき、以下の手段が提供される。
(1)抗グリチルレチン酸抗体であって、
グリチルレチン酸及び哺乳動物の生体内においてアルブミンと結合したグリチルレチン酸に対して特異的結合能を有する抗体。
(2)グリチルリチンに対する特異的結合能を有しない、(1)に記載の抗体。
(3)モノクローナル抗体である、(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)グリチルリチン、オレアノール酸、β−アミリン、サイコゲニン−A及びヘデラゲニンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対する特異的結合能を有しない、(1)〜(3)のいずれかに記載の抗体。
(5)アルドステロン、コレステロール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン及びコルチコステロンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対する特異的結合能を有しない、(1)〜(4)のいずれかに記載の抗体。
(6)グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してキャリアタンパク質を備える複合体を免疫原として得られる、(1)〜(5)のいずれかに記載の抗体。
(7)生体由来試料中のグリチルレチン酸を検出する方法であって、
(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体と前記試料中のグリチルレチン酸とを接触させて、前記抗体と前記グリチルレチン酸との複合体を生成させる工程、
を備える、方法。
(8)前記複合体を、二次抗体を用いて検出する工程、をさらに備える、(7)に記載の方法。
(9)グリチルレチン酸の標的分子の探索方法であって、
グリチルレチン酸と1又は2以上の標的分子候補との可能性ある複合体と(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体とを接触させて、グリチルレチン酸−抗体の複合体を形成させる工程と、
グリチルレチン酸−抗体複合体においてグリチルレチン酸と特異的に結合した前記1又は2以上の標的分子候補を分離又は同定する工程と、を備える、方法。
(10)グリチルレチン酸を検出するための試薬であって、
(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体を含む、試薬。
(11)グリチルレチン酸を検出するためのキットであって、
(1)〜(6)のいずれかに記載の抗体を含む、キット。
(12)抗グリチルレチン酸抗体の製造方法であって、
グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してキャリアタンパク質を備える複合体を用いて動物を免疫する工程と、
前記動物又は前記動物の脾臓細胞由来のハイブリドーマからグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体グリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を取得する工程と、
を備える、方法。
(13)前記抗体取得工程は、前記動物からグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を分離する工程である、(12)に記載の方法。
(14)前記抗体取得工程は、前記動物から分離した脾細胞とミエローマ細胞とを融合して得られるハイブリドーマから、グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマを分離する工程と、前記ハイブリドーマを用いて前記抗体を生産する工程と、を備える、(12)記載の方法。
(15)グリチルレチン酸のカルボキシ基由来のカルボニルを含むアミド結合を介してキャリアタンパク質を備える、抗グリチルレチン酸抗体を取得するための免疫原。
実施例で作製したモノクローナル抗体の抗体価の評価結果を示す図である。 モノクローナル抗体のグリチルレチン酸(18β-GA、18α-GA)及びグリチルリチン(GL)との交差性の評価結果を示す図である。 モノクローナル抗体のグリチルレチン酸類似物質との交差性の評価結果を示す図である。 モノクローナル抗体とステロイド化合物との交差性の評価結果を示す図である。 ビオチン化抗体の抗体価の評価結果を示す図である。 ビオチン化抗体の18β-GA検量線を示す図である。 免疫沈降法による18β-GAの標的分子の探索結果を示す図である。
本明細書の開示は、抗グリチルレチン酸抗体及びその利用に関する。本明細書に開示される抗グリチルレチン酸抗体(以下、単に本抗体ともいう。)によれば、フリーのグリチルレチン酸であっても、アルブミンと結合しているグリチルレチン酸であっても、特異的に結合して、グリチルレチン酸を検知し、又は定量することができる。このため、生体由来試料に関し、従来必要であった除タンパク質操作を回避して、グリチルレチン酸を検知し定量することができる。このため、グリチルレチン酸に関して分子レベルでの作用機構ならびに標的分子を探索することも可能となる。
以下、本明細書に開示される抗体及びその利用に関する実施形態について詳細に説明する。
(抗グリチルレチン酸抗体)
本抗体が備える特異的結合能は、例えば、以下のように列挙することができる。本抗体は、少なくとも(1)の特異的結合能を有することができる。以下の(2)〜(4)のいずれか又は2つ以上の特異的結合能をさらに有することができる。なお、本明細書において、「特異的結合能」または「特異的に結合する」とは、抗体、すなわち、免疫グロブリンが有する抗原認識能に基づいて結合する能力及び結合することを意味している。以下に、グリチルレチン酸の構造を示す。
(1)フリーのグリチルレチン酸及びアルブミンと複合体になったグリチルレチン酸と特異的に結合する。なお、アルブミンに対して特異的に結合しない。
(2)グリチルリチンに対して特異的に結合しない。
(3)グリチルリチン以外のオレアナン骨格を有する化合物、なかでもオレアナン型トリテルペン、例えば、オレアノール酸、β−アミリン、サイコゲニン−A及びヘデラゲニンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対して特異的に結合しない。
(4)ステロイド化合物、例えば、アルドステロン、コレステロール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン及びコルチコステロンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対して特異的に結合しない。
こうした特異的結合能は、競合ELISAなどの当業者の周知の抗原抗体反応に基づく交差性評価方法によって取得することができる。
なお、上記(1)の特異的結合能に関し、本抗体は、グリチルレチン酸の18位の炭素原子に結合する水素原子の立体異性体である18α−グリチルレチン酸(18α-GA)、18β−グリチルレチン酸(18β-GA)を識別してそれぞれに対して特異的に結合してもよいし、これらを区別せずにいずれにも特異的に結合するものであってもよい。
本抗体が、18α−GA及び18β−GAに関わらず、GAを認識し、グリチルリチンやその他のオレアナン骨格を有する化合物及びステロイド化合物を認識しない場合、GA構造中の、A環、B環及びC環領域を識別しているといえる。
本抗体は、上記(1)の特異的結合能を有することで、アルブミンに結合した複合体で存在する生体内環境(in vivo)又は生体内環境と同様の試験管内環境(in vitro)におけるグリチルレチン酸(以下、特に断りの無い限り、こうした形態のグリチルレチン酸を総称してグリチルレチン酸又はGAというものとする。)を検知し、定量することができるようになる。このため、除タンパク質操作を回避してグリチルレチン酸を簡易に検知又は定量できるようになる。従来、グリチルレチン酸を検知するには、除タンパク質操作が必要であり、そのために、グリチルレチン酸の分子レベルでの作用機作も、ターゲットとなる標的分子(タンパク質など)を特定することは極めて困難であったが、そのような不都合が解消される。
本抗体は、本願出願時における公知技術において、特異的に任意の抗原(本明細書においては、例えば、GAなど)に対して結合能を有するインタクトな抗体又は当該結合能を有する抗原結合部分を含む部分ということができる。本抗体は、本願出願時における技術常識のほか以下に示す内容に基づいて各種態様を採ることができる。
抗体の「抗原結合部分」とは、特異的に任意の抗原(例えば、GAに結合する能力を保持するインタクトな抗体の1つ以上のフラグメントを意味する。「抗原結合部分」は、特に限定するものではなく、Fabフラグメント、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;F(ab)フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメント(一般的に重鎖および軽鎖から1つ)を含む二価フラグメント;VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一のアームのVおよびVドメインからなるFvフラグメント;Vドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)フラグメント;および単離された相補性決定領域(CDR)など各種形態のフラグメント又はその組合せを含むことができる。また、抗原結合部分は、組換え方法を使用して、VおよびV領域が対になって一価分子を形成する一本のタンパク質鎖として作製可能とする人工ペプチドリンカーにより連結することができる。
このほか、抗原結合部分は、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NARおよびビス−scFvに組み込まれていてもよい。
本抗体の由来生物種は特に限定するものではないが、適用する生物体や目的によっても異なるが、ヒト抗体、マウス抗体、ヤギ抗体等とすることができる。なお、ヒト抗体というときには、抗体のフレームワークおよびCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来している可変領域を有する抗体を含むことを意味している。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域は、また、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖細胞系列配列または突然変異型のヒト生殖細胞系列配列に由来することを意味している。また、2以上の生物種に由来するフラグメントに基づく抗体をキメラ抗体ということができる。
本抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体であれば、抗原に対して安定した結合性能を発揮することができる。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の取得は、当業者において周知である。後述する方法のほか、例えば、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合させた遺伝子導入非ヒト動物(例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入マウス)から得られたB細胞を含むハイブリドーマにより製造される。
また、本抗体は、例えば、組換えヒト抗体などの組換え抗体であってもよい。組換えヒト抗体は、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を遺伝子導入または染色体導入された動物(例えば、マウス)またはそれから製造されたハイブリドーマから単離された抗体;ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体;組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体;およびヒト免疫グロブリン遺伝子配列の全部または一部の他のDNA配列へのスプライシングを含む他の手段により製造、発現、作製または単離された抗体を含む。このような組換えヒト抗体はフレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する。
本抗体の製造方法については、後段にて詳述するが、本抗体は、公知の方法で取得された抗体がGAを認識して結合する結合能を有している限り、その変異体であってもよい。例えば、出発物質としての抗体の少なくとも一部、例えば、全長重鎖および/または軽鎖配列、Vおよび/またはV配列またはそれに結合した定常領域に変異を導入するなどの修飾をすることにより、新たな抗体を取得することもできる。また、取得した抗体に対していわゆるペグ鎖を導入するなどもできる。こうした抗体の改変の手法自体は、当業者において周知である。
本抗体は、必要に応じて、標識要素を備えることができる。標識要素は、特に限定するものではないが、従来公知の標識物質を適宜選択して用いることができる。標識物質は、特に限定しないが、典型的には、蛍光、放射能、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、燐光、化学発光、着色などを利用した標識物質が挙げられる。
本抗体は、標識要素として、標識要素と結合可能な物質を備えていてもよい。最終的に標識物質による識別が可能にこれらを結合可能な分子ないし物質を備えていてもよい。こうした物質等としては、タンパク質−タンパク質相互作用、低分子化合物−タンパク質相互作用等を利用できる。例えば、抗原抗体反応における抗体や、アビジン(ストレプトアビジン)−ビオチンシステムにおけるビオチン、抗ジゴキシゲニン(DIG)−ジゴキシゲニン(DIG)システムにおけるジゴキシゲニン、又は抗FITC−FITCシステムにおけるFITC等に代表されるハプテン類などが挙げられる。この場合、最終的に検出のために用いられる標識物質は、こうした標識物質に結合性を有する物質と相互作用する他方の分子又は物質(例えば、抗原、すなわち、ストレプトアビジン、抗FITCなど)を、標識物質結合物質との結合のための部位として備えるように修飾される。
こうした各種態様の標識要素は、商業的に入手できるほか、標識要素で抗体を修飾する方法も当業者において周知である。したがって、当業者であれば、種々の標識要素を取得して、抗体に対してアミノ基やカルボキシ基等の官能基を介して適宜可能である。
(抗グリチルレチン酸抗体の製造方法)
本明細書に開示される、本抗体の製造方法は、グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してキャリアタンパク質を備える複合体を用いて動物に免疫する工程と、前記動物又は前記動物の脾臓細胞由来のハイブリドーマからグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体グリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を取得する工程と、を備えることができる。
前記抗体取得工程は、前記動物からグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を分離する工程とすることができる。本製造方法によれば、ポリクローナル抗体である本抗体を効率的に取得することができる。
また、前記抗体取得工程は、前記動物から分離した脾細胞とミエローマ細胞とを融合して得られるハイブリドーマから、グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマを分離する工程と、前記ハイブリドーマを用いて前記抗体を生産する工程と、を備えることができる。本製造方法によれば、モノクローナル抗体である本抗体を効率的に取得することができる。
本抗体が有する特異的結合能を有する抗体を得るには、例えば、抗原であるGAの30位炭素原子を含むカルボキシ基のカルボニルを介してキャリアタンパク質を導入した、例えば、GA−KLH(Keyhole limpet hemocyanin、スカシガイヘモシアニン)複合体などのGA−キャリアタンパク質複合体を免疫原として用いることができる。かかる免疫原を用いることで、フリーのGAにも、また、生体環境等におけるGA−アルブミン複合体に対しても特異的結合能を有する抗体を免疫動物に産生させることができる。さらに、免疫動物から得られる血清や免疫動物の脾臓細胞由来のハイブリドーマに対して、GA−アルブミン複合体に対する特異的結合能を指標として本抗体産生能を評価することで、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を効率的に取得することができる。
(免疫工程)
以下、免疫工程について説明する。
(GA−キャリアタンパク質複合体)
本製造方法で用いる、GA−キャリアタンパク質複合体は、GAの30位炭素原子を含むカルボキシ基のカルボニルを介してキャリアタンパク質を導入した複合体とすることができる。ここで用いるGAは、3β−ヒドロキシ−11−オキソオレアナ−12−エン−30−酸(IUPAC)((3β,20β)−3−ヒドロキシ−11−オキソオレアナ−12−エン−29−酸(CAS))であり、18α体であってもよいし、18β体であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
キャリアタンパク質としては、KLH、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、ウシチログロブリン(THY)等の公知のキャリアタンパク質から適宜選択される。キャリアタンパク質としては、さらに、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ等など各種脊椎動物種由来のもののほか変異体であってもよい。
こうしたGA−KLH複合体及びGA−BSA複合体の作製スキームを以下に示す。
GAに対するキャリアタンパク質の導入部位は、GAの30位の炭素原子を含むカルボキシ基とすることができる。かかる部位をキャリアタンパク質の導入部位として用いることで、GAに対する特異的結合能を有する本抗体を得ることができる。
GAの30位の炭素原子を含むカルボキシ基を導入部位とするとき、当該カルボキシ基のカルボニルを介してキャリアタンパク質が導入されてGA−キャリアタンパク質複合体とすることができる。かかる導入形態は、当業者において周知の各種方法を用いることができる。カルボニルを介したキャリアタンパク質の導入形態は、例えば、当該カルボキシ基とキャリアタンパク質のアミノ基とを、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて結合させることができる。また、当該カルボキシ基に対して酸アミド結合でリンカーペプチドを導入して、当該リンカーペプチドのアミノ基とキャリアタンパク質のEDCにより活性化されたカルボキシ基とを反応させることもできる。さらに、酸アミド結合により導入されたリンカーペプチド中のCys残基とキャリアタンパク質のアミノ基とをN-(γ-4-マレイミドブチルリルオキシ)スクシンイミド(GMBS)を用いて反応させて連結することもできる。
本抗体を得るためには、GAの30位のカルボキシ基のカルボニルに対して、リンカーペプチドなどを介在させることなく、直接キャリアタンパク質を導入することが好適である。すなわち、上記スキームに記載のように、上記カルボニルに対して二級アミノ基(−NH−)を介してキャリアタンパク質を結合させることで、例えば、血清中においてBSAなどのタンパク質と近接して結合した状態のGAも認識することができるようになる。
こうして得られたGA−キャリアタンパク質複合体で脊椎動物を免疫する。免疫する脊椎動物(以下、免疫動物ともいう。)の種類は特に限定するものではないが、遺伝子組換又は遺伝子組換えされていない非ヒト動物が挙げられる。好適には、マウス、ラット、ヤギ、ウサギ等が挙げられる。既述のとおり、ヒト抗体を得るには、ヒト型抗体を作製できるように遺伝的に改変された非ヒト脊椎動物を用いることができる。
免疫原の免疫動物への投与は、特に限定するものではないが、腹腔内投与、静脈投与等、必要に応じて周知の方法から適宜選択される。また、複合体の投与にあたり、適宜、完全アジュバント、不完全アジュバントを用いることができる。複合体の投与は、十分に免疫されるまで繰り返して行うことができる。通常は、2回〜5回程度、複合体が投与される。免疫動物において、意図した抗体が産生されているか否かは、適宜、免疫動物から採血して、GA−BSAなど、GA−アルブミン複合体を用いた抗体価を評価する。評価は、ELISAなど公知の方法を適宜用いることができる。
こうした免疫原を用いて、脊椎動物を免疫し、GA−BSA複合体に対する抗体価を評価することで、免疫動物における、本抗体の産生を確認することができる。以下に、ポリクローナル抗体の取得工程の一態様について説明する。
(本抗体の取得工程)
免疫動物からポリクローナル抗体を得るには、動物からグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるGA−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を分離することができる。概して、免疫動物の血液(血清)中の抗体評価を、当該複合体を用いて実施することで、本抗体を得ることができる。抗体価の評価は、当業者の周知の、例えば、ELISA法により実施することができる。抗体価を確認できた場合には、必要に応じて、免疫動物を最終免疫後、免疫動物から、全採血し、血液を凝固させたあと、血清を回収する。抗血清からの抗体の回収は、当業者に周知である。
また、モノクローナル抗体を得る場合には、GA−BSA複合体に対する抗体価を確認できる免疫動物から脾臓を摘出して、脾細胞を調製後、P3U1細胞などのマウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどを用いた公知の細胞融合方法によって細胞融合を行い、ハイブリドーマのみを選択的に取得し、その後、ハイブリドーマについて、GA−BSAなどの複合体等を用いたクローニング作業及びスクリーニング作業を行い、特定のハイブリドーマを取得する。当該ハイブリドーマを培養してその培養上清からモノクローナル抗体を得ることができる。
なお、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体(ハイブリドーマ)は、GA−BSA複合体のほか、既に説明した本抗体の特異的結合能に関連する各種化合物、すなわち、フリーのグリチルレチン酸及びアルブミンと複合体になったグリチルレチン酸に対する特異的結合能の有する一方、アルブミンに対する結合能、グリチルリチンに対する結合能、グリチルリチン以外のオレアナン骨格を有する化合物、なかでもオレアナン型トリテルペンに対する結合能及びステロイド化合物に対する結合能を有していないという交差反応性に基づいてポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を選択することができる。
なお、本製造方法において用いる本抗体作製のための免疫原、ハイブリドーマ、評価用複合体も本開示の一態様である。また、本抗体のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドも本開示の一態様である。係るポリヌクレオチドは、本抗体のアミノ酸配列の解析によって及び/又はハイブリドーマから得られる抗体コード領域の塩基配列解析によって得ることができる。さらに、係るポリヌクレオチドを意図した宿主細胞において発現可能に保持する発現ベクタ−も本発明の一態様である。なお、発現ベクターは、宿主の種類に応じて当業者に周知の適切な形態のほか、プロモーター、ターミネーター等の制御領域も適宜選択することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、DNAであり、また例えば、cDNAである。
(グリチルレチン酸の検出試薬及びグリチルレチン酸の検出キット)
本明細書に開示される、GAの検出試薬は、本抗体を含むことができる。また、本明細書に開示されるキットは、本抗体を含むことができる。本試薬及びキットによれば、除タンパク質操作することなく、生体由来試料中のGAを検出し、定量することができる。
本キットは、さらに、本抗体を抗原であるGAとの複合体を検出するための試薬を含むことができる。かかる試薬は、例えば、GA−抗体複合体を検出するための標識物質及び/又は標識物質結合物質のほか、これらの標識物質及び/又は標識物質結合物質を導入するための試薬、あるいは標識物質を備えていてもよい二次抗体、標識物質のための試薬(例えば、ペルオキシダーゼを標識物質とする場合の基質等)が挙げられる。
さらに、本キットには、そのほか、ELISAや抗体クロマトグラフィーによる検出を意図するブロッキング試薬、洗浄液、バッファ等を含めることができる。
(生体由来試料中のグリチルレチン酸を検出する方法)
本明細書に開示される、生体由来試料中のグリチルレチン酸を測定する方法は、本抗体と前記試料中のグリチルレチン酸とを接触させて、本抗体とグリチルレチン酸との複合体を生成させる工程、を備えることができる。この方法によれば、グリチルレチン酸を、除タンパク質操作することなく、簡易に検出又は測定することができる。グリチルレチン酸の検出又は測定は、GA−抗体複合体形成に基づく、ELISAや抗体クロマトグラフィー等、公知の方法を適宜採用することができる。本検出方法では、GA−抗体複合体の検出にあたって、適宜、本抗体に対する二次抗体を用いてもよい。
(グリチルレチン酸の標的分子の探索方法)
本明細書に開示される、グリチルレチン酸の標的分子の探索方法は、GA(例えば、タンパク質とは結合していない)と1又は2以上の標的分子候補との可能性ある複合体と本抗体とを接触させて、GA−抗体複合体を生成させる工程と、GA−抗体複合体においてグリチルレチン酸と特異的に結合した前記1又は2以上の標的分子候補を分離又は同定する工程と、を備えることができる。この探索方法によれば、グリチルレチン酸の標的分子を分離又は同定することができる。
GAと1又は2以上の標的分子候補の可能性ある複合体は、例えば、フリーのGAと、GAが結合する可能性があると考えられる生体試料、例えば、肝臓等の各種器官又は組織のタンパク質抽出物やホモジネートとの混合系を、適当な時間インキュベートすることによって得ることができる。インキュベート条件は、特に限定するものではないが、例えば、数分から数時間(典型的には、2、3時間以下程度、より具体的には1時間以下程度)、必要に応じて撹拌しつつ、室温(例えば、25℃以上37℃以下程度)でインキュベートする。必要に応じて、生体適合性のあるバッファ等を用いることができる。これにより、GAの標的分子が試料中に存在する場合には、GA−標的分子候補複合体が形成されうる。
こうした複合体を含む可能性のあるGAと標的分子候補とが共存する混合液に対して本抗体を添加するなどして可能性ある複合体と本抗体とを接触させる。接触条件も、特に限定するものではないが、例えば、4℃で8〜16時間程度のインキュベートや、又は室温(25℃以上37℃以下程度)で1〜3時間程度インキュベートなどとすることができる。これにより、複合体が存在する場合には、GA−標的分子候補複合体のGAに対して本抗体が結合した、第1のGA−抗体複合体が形成される。さらに、フリーのGAが残存している場合には、フリーのGAに本抗体が結合した第2のGA−抗体複合体が形成される。
こうしたGA−抗体複合体の混合系から、GAと結合した標的分子候補を分離又は同定するには、上記した第1のGA−抗体複合体を分離取得して、この複合体からタンパク質を分離し、同定することができる。第1のGA−抗体複合体を効率的に分離するには、例えば、抗体をカラムやビーズ等の固相担体に結合させておき、こうした固相担体から、第1のGA−抗体複合体に保持される標的分子候補を分離又は同定することができる。
第1のGA−抗体複合体からタンパク質を分離するには、例えば、適宜タンパク質を変性するような条件(加熱、アルカリ、塩)など公知の条件を付与することができる。また、こうしたタンパク質の分離、精製及び同定についても、当業者であれば、電気泳動、カラムクロマトグラフィー、周知の種々の方法を適用して実施可能である。
また、第2のGA−抗体複合体が共存していたとしても、第2のGA−抗体複合体の構成要素は、GAと本抗体であって、既知であるため、こうした存在可能性を予め把握するか、コントロールとして実施することで、第2のGA−抗体複合体の影響を排除できる。
また、例えば、GAを含まないで標的分子候補と、本抗体とを、GAを含む場合と同様の条件で接触させたものをさらに他のコントロールとすることもできる。こうすることで、非特異的な抗体複合体の可能性を排除して、GA存在下において、特異的に結合する標的分子候補を確実に特定できる。
以上説明したように、本明細書に開示される、抗グリチルレチン酸抗体は、グリチルレチン酸及び生体環境中における形態のグリチルレチン酸に対して特異的に結合できる。このため、従来とは異なり、グリチルレチン酸の抗体による捕捉のために除タンパク質操作が排除されて簡易にグリチルレチン酸を検出できる。また、除タンパク質操作によっては、検知できなかったグリチルレチン酸の生体内分布や標的分子の探索も可能となる。
以下、本明細書の開示をより具体的に説明するために具体例としての実施例を記載する。以下の実施例は、本明細書の開示を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。
(抗グリチルレチン酸モノクローナル抗体の作製)
(1)免疫原の作製
GAは低分子であるため、そのままでは抗原となり得ない。そのため、カルボジイミド法に基づいて、18β-GAに1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride(EDC)とN-hydroxysulfosuccinimide(Sulfo-NHS)を処理したのち、キャリアタンパク質を加えることで、GA-タンパク複合体を作製した。キャリアタンパク質にはkeyhole limpet hemocyanin(KLH)とbovine serum albumin (BSA)を用い、マウスへの免疫に用いるGA−KLHとELISA測定に用いるGA−BSAの2種類の抗原を作製した。
なお、グリチルレチン酸20μmolをDMF溶液400μlに添加し、さらに、EDC5mg、Sulfo-NLHS5mgを添加し、24時間撹拌してグリチルレチン酸のDMF溶液を調製した。この溶液に、KLH10mg/ml(PBS)500μlを加えて4時間撹拌し、PBS溶液にて透析してグリチルレチン酸(GA)−KLH複合体を調製した。KLH5mgに替えてBSA7.5mgを用いて同様に操作して、GA−BSA複合体を作製した。
(2)マウスへの免疫
雌性BALB/cマウス(6週齢)を用いて、完全アジュバント(Freund’s complete adjuvant : FCA)とともに、作製したGA−KLHを腹腔内投与して初回免疫を行った。その後、隔週にて不完全アジュバンド(Freund’s incomplete adjuvant : FIA)とともに4回の追加免疫を行った。各免疫を行った一週間後にマウスの尾静脈から採血し、GA−BSAに対する血清中の抗体価をELISAにて検証したところ、マウス血清中において、GA−BSAに交差性を有する抗体の産生が認められた。
(3)ハイブリドーマの樹立
モノクローナル抗体として樹立するために、GA−BSAに対する抗体価の上昇を認めたマウスの脾臓を摘出し、脾細胞を調製後、マウスミエローマ細胞P3U1とのポリエチレングリコールを用いた細胞融合を行った。P3U1と融合後、HAT培地を用いて長期培養することで、ハイブリドーマ細胞のみを選別した。これは、HAT培地中のアミノプテリンによりde novo経路が阻害されるため、ヒポキサンチンとチミジンを用いたサルベージ経路のみでDNA合成が進むが、P3U1はサルベージ経路に必要なhypoxanthine guanine phosphoribosyltransferase(HGPRT)を欠損しているためにHAT培地下では生存できないことを利用している。すなわち、脾臓細胞由来のサルベージ経路が利用でき、なおかつP3U1由来の無限増殖能を持つハイブリドーマ細胞のみがHAT培地中において長期生存可能となる。
HAT培地による選別後、限界希釈法に従いクローンの単離作業であるクローニングと細胞培養上製を用いたELISAによるスクリーニングを行い、単一のハイブリドーマ細胞6D6、6B10を樹立した。これらから得られる培養上清の抗体価評価結果を図1に示す。図1に示すように、いずれのモノクローナル抗体も、GA−BSA複合体に対して特異的に結合し、GA−BSA複合体と同様にして作製したGL−BSA複合体、そしてBSAには結合しなかった。
なお、ELISAは、コーティングにGA−BSA、GL-BSA及びBSA(各1mg/ml)、ブロッキング剤にBlock Ace Powder(DSファーマバイオメディカル株式会社)、二次抗体に、Anti-mouse IgG(whole specific)-Peroxidase antibody produced in goat(1mg/mL)(GE Healthcare)、発色液に、1%TMB(3,3,5,5,5Tetramethylbenzidine)(SIGMA/DMF:WAKO):40mMクエン酸/リン酸buffer(pH5.0):30%H2O2(50:5000:2)を用いた。操作は以下のように行った。96穴プレートに、各抗原をPBSにて1μg/mlに調製し、各ウェル100μlずつを散布後、4℃で一晩静置後、洗浄液0.05%Tween20含有PBS溶液(TPBS溶液)200μlで3回洗浄後、ブロッキング剤の1%水溶液200μl/ウェルを散布後、37℃、1時間インキュベート後、TPBS溶液で洗浄した。その後、抗体価を測定したい血清あるいは培養上清をTPBSにて適宜希釈(500倍希釈など)したものから3倍ずつ段階希釈し、それぞれ100μl/ウェルを散布して、37℃で1時間インキュベート後、洗浄した。さらに、二次抗体のTPBS5000倍希釈液100μlを各ウェルに散布し、37℃で1時間インキュベート後、TPBS溶液で洗浄し、発色液をウェル当たり100μl加えて発色させ、10分後に1Nリン酸(100 μl/ウェル)にて発色を停止後、450nmで吸光度を測定した。
(4)プロテインGカラムによるmAb6D6、6B10の精製
得られた抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清は、目的抗体以外にアルブミンなどの多くのウシ血清由来成分を含んでいる。それらによる意図しない反応を防ぐために、常法に従い、ProteinGカラムによる抗体の精製を行った。ProteinGカラムによりアフィニティー精製が可能であることに加え、ELISAにおいて使用した二次抗体がマウスIgGを認識する抗体であることから、本研究において作製した抗体のアイソタイプは、IgGであると予想された。
抗体精製後、適宜BCA assayを行い、mAb6D6、mAb6B10を1mg/mLの濃度に希釈調製し、−30℃下で凍結保存した。
(5)mAb6D6、mAb6B10の抗体価と特異性解析
作製したmAb6D6とmAb6B10を利用した生体内におけるGAの解析を進めるにあたり、18β−GAおよび構造類似化合物を用いた競合ELISAにより抗体の特異性を解析した。
コンペティターには、18α−GA、18β−GA、およびGA以外のオレアナン型トリテルペンとしてGAの配糖体であるGL、オレアノール酸、β−アミリン、サイコゲニン−Aおよびヘデラゲニンを用いた。さらに、GAに類似する構造をもつ化合物としてステロイド化合物のうち、アルドステロン、コレステロール、コルチゾン、ヒドロコルチゾンおよびコルチコステロンを用いた。
それぞれのコンペティターのエタノール溶液(5mM)を0.05%TPBSで希釈して2μM溶液を調製し、これを順次3倍希釈したものをコンペティターとした。なお、ELISAは、コーティングとしてGA−BSAのみを用い、一次抗体として、各モノクローナル抗体1mg/mlをTPBSで2000倍希釈して、コンペティターと一時抗体とをそれぞれウェルあたり50μlづつ添加する以外は、上記と同様にして実施した。GA及びGLとの交差性について図2に示し、類似物質との交差性を図3に示し、ステロイド化合物との交差性を図4に示す。
図2に示すように、mAb6D6は18α−GAおよび18β−GA濃度1nM以上において、交差性を示すことが認められた。また、図3及び図4に示すように、その他の類似化合物及びステロイド化合物との交差性は認められなかった。なお、mAb6B10は、mAb6D6と同様の性質を示したため、ここでの表記を省略した。
(マウス血清中のGAの定量)
(1)ビオチン化抗GA抗体の作製
マウス血清を用いてGAを定量するにあたり、血清のみを酵素標識抗マウスIgG抗体で検出したところ、0.4程度の吸光度を示した。これはマウス血清成分に起因する値と考え、この影響を排除するため、mAb6D6をビオチン標識し、ビオチン−アビジンシステムを用いたELISA法を構築した。ビオチン化抗体の作製には、EZ-Link NHS-LC-Biotinを用い、抗体の一級アミンとのアミド結合を介してビオチンを標識した。ビオチン化抗体(0.88mg/ml)とビオチン化前抗体(1mg/ml)とについてそれぞれ実施例1に準じて抗体価を測定した。結果を、図5に示す。
図5に示すように、ビオチン化mAb6D6においては、ビオチン化前mAb6D6に比べてその感度が上昇していることが認められ、しかも、ビオチン化抗体によれば、native−BSAに対する抗体価と比較してGA−BSAに対して十分に高い抗体価を得られることがわかった。このことから、mAb6D6をビオチン化することで血清による影響が低減されることがわかった。また、血清中において既知濃度(100nM及び10nM)のGAについて、ビオチン化抗体で回収試験を行ったところ、実用可能であることを確認できた。
ビオチン化6D6の吸光度を考慮し、GAの定量法で用いるビオチン化6D6の濃度を0.88ng/ウェルに決定した。また、用いるコンペティターは、GAのエタノール液(5mM)をマウス血清中に添加し、GA20μmの血清を調製した。これを順次血清で3倍に希釈してGA0.2nM血清までを作製し、37℃で4分間インキュベートし、これらを各ウェルに50μlずつ散布したのち、さらにビオチン化6D6(0.88mg/ml)を、0.05%TPBSにて50000倍希釈して、ウェルあたり50μl散布し、37℃で1時間インキュベートし、実施例1に準じて抗体価を評価した。結果を図6に示す。
図6に示すように、血清中GA濃度約5〜100nMの範囲で直線性が得られた。したがって、これを検量線として用いることで定量が可能であると考えられた。
(mAb6D6を用いたGAの標的分子の探索)
GLは肝細胞障害抑制及び修復促進作用を有し、肝庇護薬として用いられている。そこで、このような作用発現に関わる分子(GA標的タンパク質)の存在を考え、肝臓において、GAが直接作用しているタンパク質の同定を、マウス肝ホモジネートを用いた免疫沈降法により試みた。
マウスから肝臓を摘出し、1mlのRIPAバッファと10μlのprotease inhibitor混合液をホモジネート溶媒とし、肝組織100mgが10質量%となるようにしてホモジネートした。4℃、10000rpmで20分遠心分離し、TBSTにて1mg/ml溶液に調製した。この肝ホモジネート400μlに対して、5mMのGAエタノール溶液20μl、対象実験としてエタノール20μlをそれぞれ加えて、室温で60分間ローテータを用いてインキュベートした。
次に、磁気ビーズ溶液70μl中のビーズにmAb6D6(1mg/ml)28μlとTBST42μlを加え、室温にて30分ローテータを用いてインキュベートした。この磁気ビーズ溶液を等量に分注し、肝ホモジネートにそれぞれ加えて、4℃において、ローテータを用いて撹拌しながら一晩反応させた。その後、磁気ビーズを回収し、TBSTを用いた洗浄後、RIPAバッファ30μl及び5×サンプルバッファ7.5μlをそれぞれ加え、100℃で2分間加熱した後、磁気ビーズの上清を電気泳動用サンプルとした。なお、5×サンプルバッファの組成は以下のとおりであった。
(5×サンプルバッファ)
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム) :0.75g
グリセリン :1.25mL
BPB(ブロモフェノールブルー) :0.5mg
1 Mトリス塩酸(pH6.8) :1.676mL
メルカプトエタノール :0.5mL
BPBとSDSを混合した後、グリセリン、1Mトリス塩酸を加え、十分に混合し溶解した。さらに、メルカプトエタノールを加え、超純水で5mLにメスアップした。
電気泳動は、10%ゲルを泳動バッファ(2-Amino-2-hydroxymethyl-1,3-propanediol:30.3g、Glycine:144g、SDS(sodium dodecyl sulfate):10gを、超純水にて溶解後、全量1Lにメスアップした)中に浸し、ウェル内に各サンプルを20μlずつ、分子量マーカーを3μl、それぞれローディングし、200V、20mAにて約120分間電気泳動した。その後、ゲル固定液(酢酸:メタノール:水=3.75:5:41.25)50mLに浸し、室温にて一晩固定し、銀染色により可視化した。結果を図7に示す。
図7に示すように、GA添加マウス肝ホモジネートのサンプルのみ見られるバンドが部分的に確認できた。このことから、肝組織中にGAが結合するタンパク質が存在することが示唆された。

Claims (15)

  1. 抗グリチルレチン酸抗体であって、
    グリチルレチン酸及び哺乳動物の生体内においてアルブミンと結合したグリチルレチン酸に対して特異的結合能を有する抗体。
  2. グリチルリチンに対する特異的結合能を有しない、請求項1に記載の抗体。
  3. モノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
  4. グリチルリチン、オレアノール酸、β−アミリン、サイコゲニン−A及びヘデラゲニンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対する特異的結合能を有しない、請求項1〜3のいずれかに記載の抗体。
  5. アルドステロン、コレステロール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン及びコルチコステロンからなる群から選択される1種又は2種以上の化合物に対する特異的結合能を有しない、請求項1〜4のいずれかに記載の抗体。
  6. グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してキャリアタンパク質を備える複合体を免疫原として得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の抗体。
  7. 生体由来試料中のグリチルレチン酸を検出する方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の抗体と前記試料中のグリチルレチン酸とを接触させて、前記抗体と前記グリチルレチン酸との複合体を生成させる工程、
    を備える、方法。
  8. 前記複合体を、二次抗体を用いて検出する工程、をさらに備える、請求項7に記載の方法。
  9. グリチルレチン酸の標的分子の探索方法であって、
    グリチルレチン酸と1又は2以上の標的分子候補との可能性ある複合体と請求項1〜6のいずれかに記載の抗体とを接触させて、グリチルレチン酸−抗体の複合体を形成させる工程と、
    グリチルレチン酸−抗体複合体においてグリチルレチン酸と特異的に結合した前記1又は2以上の標的分子候補を分離又は同定する工程と、を備える、方法。
  10. グリチルレチン酸を検出するための試薬であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の抗体を含む、試薬。
  11. グリチルレチン酸を検出するためのキットであって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の抗体を含む、キット。
  12. 抗グリチルレチン酸抗体の製造方法であって、
    グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してキャリアタンパク質を備える複合体を用いて動物を免疫する工程と、
    前記動物又は前記動物の脾臓細胞由来のハイブリドーマからグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体グリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を取得する工程と、
    を備える、方法。
  13. 前記抗体取得工程は、前記動物からグリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体を分離する工程である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記抗体取得工程は、前記動物から分離した脾細胞とミエローマ細胞とを融合して得られるハイブリドーマから、グリチルレチン酸のカルボキシ基を介してアルブミンを備える複合体であるグリチルレチン酸−アルブミン複合体に対して特異的結合能を有する抗体の産生能を有するハイブリドーマを分離する工程と、
    前記ハイブリドーマを用いて前記抗体を生産する工程と、を備える、請求項12記載の方法。
  15. グリチルレチン酸のカルボキシ基を含むアミド結合を介してキャリアタンパク質を備える、抗グリチルレチン酸抗体を取得するための免疫原。
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金岡又雄ら: "I 抗原測定法における最近の進歩 生薬成分の酵素免疫測定法", 蛋白質 核酸 酵素, JPN6020046442, 10 September 1987 (1987-09-10), pages 160 - 169, ISSN: 0004399224 *

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