以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一の形態は、(A)金属粒子と、(B)熱硬化性樹脂と、(C)硬化剤と、を含み、前記(B)成分は、重量平均分子量が10,000以上である二官能フェノキシ樹脂と、三官能以上のエポキシ樹脂と、を含む、電極用ペースト(本明細書中、単に「ペースト」とも称することがある)である。
上記のように、近年、車載部品としてMLCCが用いられるようになってきており、過酷な環境下での使用に耐えうるMLCCが求められている。このようなMLCCを回路基板に実装する場合、MLCCの外部電極と、回路基板の配線電極とを接続する。したがって、MLCCを実装した回路基板に外力が加わったり、回路基板が撓んだりすると、MLCCの外部電極に応力が加わることがあり、その結果として、電子機器の故障につながる虞があることから、外部電極を形成するための電極用ペーストには、高い機械的強度が求められる。
高温かつ大きな振動や衝撃が加わる車載用途としての使用にも耐えうる機械的強度を満足するために、種々の電極用ペーストの研究が行われている。このような背景のもと、高い耐熱性を有し、引張強度および衝撃吸収性のバランスに優れた硬化物を与える電極用ペーストを得るべく、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、熱硬化性樹脂として、重量平均分子量が10,000以上である二官能フェノキシ樹脂と、三官能以上のエポキシ樹脂と、を含む電極用ペーストによって上記課題が解決されることを見出した。
上記効果が達成しうる理由は不明であるが、以下のように推測される。なお、本発明は、下記推測によって限定されない。
本発明に係る電極用ペーストは、金属粒子、硬化剤の他、熱硬化性樹脂として、重量平均分子量が10,000以上である二官能フェノキシ樹脂および三官能以上のエポキシ樹脂を含む。
三官能以上のエポキシ樹脂を含むことにより、本発明に係る電極用ペーストは、熱硬化させた際、三次元架橋構造を形成することができる。その結果、高いガラス転移温度(Tg)を有する硬化物が得られ、貯蔵弾性率の低下が生じる温度が高温側にシフトするため、使用可能な温度領域が広くなる。すなわち、耐熱性が向上するといえる。また、上記三次元架橋構造を形成することにより、分子鎖がより強固となり、高いモジュラス(その物体が原形を保つために抵抗しようとする力)が得られ、引張強度が向上する。
また、本発明に係る電極用ペーストは、重量平均分子量が10,000以上である二官能フェノキシ樹脂を含む。二官能フェノキシ樹脂は、同じ質量であれば、重量平均分子量が大きいほど、含まれるエポキシ基が少なくなるといえる(すなわち、エポキシ当量が大きくなる)。したがって、当該フェノキシ樹脂を硬化させた場合、反応点の数(エポキシ基の数)が適度に少なくなるため、当該樹脂の硬化収縮が抑制される。
ここで、引張強度に関し、実際の引張強度は、真の引張強度から、熱硬化性樹脂の硬化収縮による強度低下を差し引いた値として概算できると考えられる。よって、熱硬化性樹脂の硬化収縮が小さいほど、実際の引張強度は向上するといえる。
したがって以上より、本発明に係る電極用ペーストは、二官能フェノキシ樹脂の反応点が少なくなることに起因して、硬化収縮が低減されるため、硬化物の引張強度が向上すると考えられる。
一方で、二官能フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000未満である場合には、硬化時の反応点が多くなるため、当該樹脂の硬化収縮が大きくなってしまう。その結果、二官能フェノキシ樹脂に由来する引張強度の向上効果が十分に得られず、上記のような三官能以上のエポキシ樹脂により得られる引張強度の向上効果を以ってしても、電極用ペースト全体として、十分な引張強度が得られない。
また、上記のように、二官能フェノキシ樹脂の重量平均分子量が大きいほど、硬化時の反応点の数が少なくなるため、硬化物中の架橋密度が小さくなる。フェノキシ樹脂の架橋密度が小さくなると、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の値が高くなる傾向があることから、本発明に係る電極用ペーストは、その硬化物のtanδが高くなると考えられる。その結果、衝撃吸収性が向上し、MLCCの外部電極に加わるエネルギーを吸収しやすくなる。
したがって、以上より、本発明に係る電極用ペーストによれば、ガラス転移温度、引張強度および衝撃吸収性(高tanδ)がバランスよく向上された硬化物を得ることができる。
さらに、本発明に係る電極用ペーストによれば、上記のように、引張強度および衝撃吸収性(高tanδ)に優れるため、たわみ強度もまた向上する。
以下、本発明の電極用ペーストについて詳細に説明する。なお、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
<電極用ペースト>
本発明の電極用ペーストは、(A)金属粒子と、(B)重量平均分子量が10,000以上である二官能フェノキシ樹脂と、(C)三官能以上のエポキシ樹脂と、(D)硬化剤と、を含む。以下、各成分について説明する。
≪(A)金属粒子≫
本発明に係る電極用ペーストは、金属粒子(金属フィラー)を必須に含む。金属粒子は、高い導電性を確保するために用いられる成分である。金属粒子を含むことにより、金属粒子同士の接触による導電パスを形成することができる。
金属粒子の材質としては、導電性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、銀、金、銅、白金、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、鉄、インジウム、パラジウムおよびこれらの合金等が挙げられる。なかでも、導電性に優れるという観点から、銀、銅、パラジウムおよびこれらの合金等が好ましい。特に、良好な導電性を得るという観点から、金属粒子((A)成分)は、銀または銅を主成分として含むと好ましい。なお、「主成分」とは、金属粒子を構成する成分の内、最も含有量の多い成分であり、製造上含まれてしまう不純成分が金属粒子中に微量含まれていてもよい。当該成分の含有量は、例えば、金属粒子中、50質量%以上であると好ましく、70質量%以上であるとより好ましく、90質量%以上であると特に好ましく、95質量%以上であると特に好ましい(上限:100質量%)。
なお、金属粒子は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
また、金属粒子の形状としては、特に限定されないが、球状、略球状、繊維状、棒状、偏平状(板状)等を挙げることができる。また金属粒子は、ある金属粒子の表面に、他の金属が被覆された形態であってもよい。
金属粒子が球状または略球状である場合、金属粒子の平均粒子径は特に制限されないが、0.5μm以上7μm以下であることが好ましく、1μm以上5μm以下であることがより好ましい。平均粒子径を0.5μm以上とすることにより、接触抵抗の増大を抑制し、抵抗値を低くすることができる。一方、平均粒子径を7μm以下とすることにより、電極用ペーストを用いて外部電極等を形成する際の作業性が良好になる。このような所定の範囲の粒子径の金属粒子を準備するためには、篩などによって分級すればよい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとし、「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
金属粒子が偏平状(板状)である場合、金属粒子の平均板面径は特に制限されないが、1μm以上10μm以下であることが好ましく、3μm以上8μm以下であることがより好ましい。平均板面径を1μm以上とすることにより、接触抵抗の増大を抑制し、抵抗値を低くすることができる。一方、平均板面径を10μm以下とすることにより、電極用ペーストを用いて外部電極等を形成する際の作業性が良好になる。また、「平均板面径」とは、偏平な面の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味するものとし、測定方法は、上記と同様である。
本発明に係る電極用ペースト中の金属粒子の含有量(二種以上の金属粒子を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して70質量%以上であると好ましく、80質量%以上であるとより好ましく、85質量%以上であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストにより得られる硬化物の導電性を良好に確保することができる。一方、金属粒子の含有量の上限もまた特に制限されないが、本発明の効果をより向上させる観点から、電極用ペーストの総質量に対して95質量%以下であると好ましく、90質量%以下であるとより好ましい。
≪(B)熱硬化性樹脂≫
本発明に係る電極用ペーストは、熱硬化性樹脂を必須に含む。本明細書中、「熱硬化性樹脂」とは、熱可塑性樹脂の対概念であり、熱によって不可逆的に硬化する樹脂を意味する。熱硬化性樹脂は、上記金属粒子のバインダーとして機能すると共に、熱硬化させることで、外部電極等の形成を容易にする。
本発明に係る電極用ペースト中の熱硬化性樹脂の含有量(以下で詳説する、少なくとも、二官能フェノキシ樹脂および三官能以上のエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂の合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して3質量%以上であると好ましく、5質量%以上であるとより好ましく、8質量%以上であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストの硬化性を高め、得られる硬化物の引張強度や衝撃吸収性を良好にすることができる。一方、熱硬化性樹脂の含有量の上限もまた特に制限されないが、十分な導電性を得る観点から、電極用ペーストの総質量に対して25質量%以下であると好ましく、17質量%以下であるとより好ましく、15質量%以下であると特に好ましく、15質量%未満であると最も好ましい。
(二官能フェノキシ樹脂)
本発明に係る電極用ペーストは、熱硬化性樹脂((B)成分)として、重量平均分子量が10,000以上の二官能フェノキシ樹脂(本明細書中、単に「二官能フェノキシ樹脂」とも称することがある)を含む。上述のように、当該フェノキシ樹脂を含むことにより、硬化時の引張強度および衝撃吸収性が良好になる。また、硬化時のたわみ強度も向上する。
二官能フェノキシ樹脂は、一般に、エピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、または2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂であって、1分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂である。
本発明に係る電極用ペーストは、重量平均分子量10,000以上の高分子体である二官能フェノキシ樹脂を含むことを特徴の一つとする。重量平均分子量が10,000未満であると、硬化時の反応点が多くなり、硬化収縮が大きくなる結果、三官能以上のエポキシ樹脂による引張強度の向上効果を加味しても、十分な引張強度が得られない。また、架橋密度が高くなり、衝撃吸収性も低下しやすい。引張強度、衝撃吸収性およびたわみ強度を向上させるという観点から、二官能フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、10,000を超えると好ましく、20,000以上であるとより好ましく、50,000以上であるとより特に好ましく、51,000以上であると最も好ましい。一方、二官能フェノキシ樹脂の重量平均分子量の上限は、特に制限されないが、電極用ペーストの粘度を適度に低くし、作業性を良好にするという観点から、200,000以下であると好ましい。また、電極用ペーストを溶剤(有機溶媒等)に溶解させて使用しやすいという観点から、当該重量平均分子量は、100,000以下であるとより好ましい。なお、上記重量平均分子量とは、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、より詳細な方法の例について、後述の実施例において説明する。また、1分子中に2個のエポキシ基を有すること(二官能であること)は、1H−NMR等の分析手法により確認することができる。
二官能フェノキシ樹脂としては、上記重量平均分子量の規定を満たす限りにおいて、特に制限されないが、例えば、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格およびジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択される少なくとも一つの骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAD型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ナフタレン型フェノキシ樹脂、フェノールノボラック型フェノキシ樹脂、クレゾールノボラック型フェノキシ樹脂、フェノールアラルキル型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、トリフェニルメタン型フェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノキシ樹脂、グリシジルエステル型フェノキシ樹脂、グリシジルアミン型フェノキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、入手容易性が高く、また、耐熱性や密着性をより一層高めるという観点から、二官能フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールAD型フェノキシ樹脂およびビスフェノールF型フェノキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であると好ましく、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂であると特に好ましい。なお、二官能フェノキシ樹脂は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
二官能フェノキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されないが、本発明の効果をより向上させるという観点から、3,000g/eq以上であると好ましく、5,000g/eq以上であるとより好ましく、6,000g/eqを超えるとさらにより好ましく、7,000g/eq以上であると特に好ましい。一方、二官能フェノキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、特に制限されないが、電極用ペーストの粘度を適度に低くし、作業性を良好にするという観点から、100,000g/eq以下であると好ましい。また、電極用ペーストを溶剤に溶解させて使用しやすいという観点から、当該エポキシ当量は、50,000g/eq以下であるとより好ましく、40,000g/eq以下であるとさらにより好ましく、20,000g/eq以下であると特に好ましい。
なお、本明細書中、「エポキシ当量」は、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」を意味し、単位は[g/eq]となる。また、上記エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準じて測定することができる。
(B)成分として本発明に係る電極用ペーストに含まれる熱硬化性樹脂は、上記二官能フェノキシ樹脂の他、三官能以上のエポキシ樹脂を含む。さらに、その他の熱硬化性樹脂を含んでもよい。
全熱硬化性樹脂(全(B)成分)の総質量に対する上記二官能フェノキシ樹脂の含有量(二種以上の二官能フェノキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、本発明の効果をより向上させるという観点から、20質量%以上であると好ましく、25質量%以上であるとより好ましく、30質量%以上であると特に好ましい。一方、上記二官能フェノキシ樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、上記二官能フェノキシ樹脂は、粘度が比較的高いため、電極用ペーストの粘度を適度に低くし、作業性を良好にするという観点から、90質量%以下であると好ましく、80質量%以下であるとより好ましく、75質量%以下であると特に好ましい。
また、上記二官能フェノキシ樹脂と、三官能以上のエポキシ樹脂との合計質量に対する上記二官能フェノキシ樹脂の含有量(二種以上の二官能フェノキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、三官能以上のエポキシ樹脂による架橋密度が高くなることに起因する脆性破壊を抑制すると共に、引張強度を向上させるという観点から、20質量%以上であると好ましく、25質量%以上であるとより好ましく、30質量%以上であると特に好ましい。一方、上記二官能フェノキシ樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、三官能以上のエポキシ樹脂による架橋密度を十分に確保し、引張強度を向上させると共に、延性破壊を抑制するという観点から、90質量%以下であると好ましく、80質量%以下であるとより好ましく、75質量%以下であると特に好ましい。
さらに、本発明に係る電極用ペースト中の上記二官能フェノキシ樹脂(二種以上の二官能フェノキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して1質量%以上であると好ましく、2質量%以上であるとより好ましく、2.5質量%以上であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストの硬化物について、引張強度や衝撃吸収性を良好にすることができる。一方、上記二官能フェノキシ樹脂の含有量の上限もまた特に制限されないが、十分な導電性を得る観点から、電極用ペーストの総質量に対して15質量%以下であると好ましく、10質量%以下であるとより好ましい。
(三官能以上のエポキシ樹脂)
本発明に係る電極用ペーストは、熱硬化性樹脂((B)成分)として、三官能以上のエポキシ樹脂を含む。当該三官能以上のエポキシ樹脂は、上記二官能フェノキシ樹脂と共に三次元架橋構造を形成し、その結果、耐熱性や引張強度の向上に寄与する。また、硬化時のたわみ強度の向上にも寄与する。
三官能以上のエポキシ樹脂は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する樹脂である。
本発明に係る電極用ペーストは、三次元架橋構造を形成しうる三官能以上のエポキシ樹脂を含むことを特徴の一つとする。当該エポキシ樹脂の1分子中のエポキシ基の個数の上限は特に制限されないが、架橋密度が高くなりすぎることに起因する脆性破壊を抑制するため、四官能以下であると好ましい。かような脆性破壊を抑制しやすく、かつ、上記のような三次元架橋構造による引張強度や耐熱性の向上効果を十分に得るという観点からは、三官能エポキシ樹脂または四官能エポキシ樹脂を用いると好ましく、三官能エポキシ樹脂を用いるとより好ましい。
三官能以上のエポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、15,000未満であると好ましく、7,500以下であるとより好ましく、1,500以下であると特に好ましい。かような重量平均分子量を有する樹脂を用いることにより、硬化時に十分な反応点が確保され、三次元架橋構造を形成しやすい。その結果、引張強度や耐熱性が向上する。一方、三官能以上のエポキシ樹脂の重量平均分子量の下限は特に制限されず、実質的には、300以上である。なお、上記重量平均分子量とは、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、より詳細な方法の例について、後述の実施例において説明する。また、1分子中に3個以上のエポキシ基を有すること(三官能以上であること)は、1H−NMR等の分析手法により確認することができる。
三官能以上のエポキシ樹脂としては、官能基数の規定を満たす限りにおいて、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型三官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型三官能エポキシ樹脂、ビスフェノールF型三官能エポキシ樹脂;テトラキス(ヒドロキシフェニル)メタン型四官能エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型四官能エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)プロパン型四官能エポキシ樹脂、四官能ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂;カテコール、レゾルシンなどの多価フェノールまたはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られたポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られたグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;ノボラック型多官能エポキシ樹脂;エポキシ化ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、上記二官能フェノキシ樹脂との親和性や、耐熱性の観点から、芳香族環構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。さらにこれらのなかでも、入手容易性の観点から、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型三官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型三官能エポキシ樹脂およびビスフェノールF型三官能エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であると好ましく、ビスフェノールA型三官能エポキシ樹脂であると特に好ましい。なお、三官能以上のエポキシ樹脂は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
三官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されないが、本発明の効果をより向上させるという観点から、100g/eq以上であると好ましく、200g/eq以上であるとより好ましい。一方、三官能以上のエポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、特に制限されないが、電極用ペーストの粘度を適度に低くし、作業性を良好にするという観点から、5,000g/eq未満であると好ましい。また、電極用ペーストを溶剤に溶解させて使用しやすいという観点から、当該エポキシ当量は、2,500g/eq以下であるとより好ましく、500g/eq以下であると特に好ましい。なお、上記エポキシ当量は、JIS K7236:2001に準じて測定することができる。
(B)成分として本発明に係る電極用ペーストに含まれる熱硬化性樹脂は、上記二官能フェノキシ樹脂の他、三官能以上のエポキシ樹脂を含む。さらに、その他の熱硬化性樹脂を含んでもよい。
全熱硬化性樹脂(全(B)成分)の総質量に対する三官能以上のエポキシ樹脂の含有量(二種以上の三官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、引張強度や耐熱性をより向上させるという観点から、10質量%以上であると好ましく、20質量%以上であるとより好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。一方、上記三官能以上のエポキシ樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、架橋密度が高いことによる脆性破壊を抑制するという観点から、80質量%以下であると好ましく、75質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であると特に好ましい。
また、上記二官能フェノキシ樹脂と、三官能以上のエポキシ樹脂との合計質量に対する上記三官能以上のエポキシ樹脂の含有量(二種以上の三官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、三官能以上のエポキシ樹脂による架橋密度を十分に確保し、引張強度を向上させると共に、延性破壊を抑制するという観点から、10質量%以上であると好ましく、20質量%以上であるとより好ましく、25質量%以上であると特に好ましい。一方、上記三官能以上のエポキシ樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、三官能以上のエポキシ樹脂による架橋密度が高くなることに起因する脆性破壊を抑制すると共に、引張強度を向上させるという観点から、80質量%以下であると好ましく、75質量%以下であるとより好ましく、70質量%以下であると特に好ましい。
以上より、本発明に係る電極用ペースト中、上記三官能以上のエポキシ樹脂の含有量(二種以上の三官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、上記二官能フェノキシ樹脂と、三官能以上のエポキシ樹脂との合計質量に対し、10質量%以上80質量%以下であると好ましく、20質量%以上75質量%以下であるとより好ましく、25質量%以上70質量%以下であると特に好ましい。
また、本発明に係る電極用ペースト中の上記三官能以上のエポキシ樹脂(二種以上の三官能以上のエポキシ樹脂を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して1質量%以上であると好ましく、2質量%以上であるとより好ましく、2.5質量%以上であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストの硬化物について、引張強度や耐熱性を良好にすることができる。一方、上記三官能以上のエポキシ樹脂の含有量の上限もまた特に制限されないが、十分な導電性を得る観点から、電極用ペーストの総質量に対して15質量%以下であると好ましく、10質量%以下であるとより好ましく、8質量%以下であると特に好ましい。
また、耐熱性、引張強度および衝撃吸収性を特にバランスよく向上させると共に、作業性を良好にするという観点から、(B)成分としての熱硬化性樹脂は、下記組成を有していると好ましい。すなわち、(B)成分としての熱硬化性樹脂は、重量平均分子量が10,000以上の二官能フェノキシ樹脂 20質量%以上90質量%以下、および、三官能以上のエポキシ樹脂 10質量%以上80質量%以下を含んでいると好ましく、上記二官能フェノキシ樹脂 25質量%以上80質量%以下、および、三官能以上のエポキシ樹脂 20質量%以上75質量%以下を含んでいるとより好ましく、上記二官能フェノキシ樹脂 30質量%以上75質量%以下、および、三官能以上のエポキシ樹脂 25質量%以上70質量%以下を含んでいると特に好ましい(ただし、上記において、二官能フェノキシ樹脂および三官能以上のエポキシ樹脂の合計量は、100質量%である)。
(他の熱硬化性樹脂)
本発明に係る電極用ペーストは、(B)成分として、上記二官能フェノキシ樹脂および三官能以上のエポキシ樹脂以外に、他の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(上記三官能以上のエポキシ樹脂を除く。ここで、「エポキシ樹脂」とは、重量平均分子量が10,000未満であるものを指す)、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
なかでも、上記二官能フェノキシ樹脂および三官能エポキシ樹脂との親和性が高く、引張強度やたわみ強度を向上させると共に、電極用ペーストの粘度調整を容易にするという観点から、他の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、上記二官能フェノキシ樹脂と比較して粘性が低く、種々の有機溶媒に可溶であるため、電極ペーストを用いてMLCCの外部電極を作製する際、作業性を良好にすることができる。
エポキシ樹脂は、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する樹脂である。本発明の効果をより得られやすくするという観点から、エポキシ樹脂を用いる場合、当該エポキシ樹脂は、二官能エポキシ樹脂(すなわち、1分子中に2個のエポキシ基を有する樹脂)であると好ましい。
上記三官能以上のエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(本明細書中、単に「他のエポキシ樹脂」とも称することがある)の種類としては、特に制限されず、上述の(三官能以上のエポキシ樹脂)の項で挙げたエポキシ樹脂であって単官能または二官能のエポキシ樹脂の種類が例示される。なお、他のエポキシ樹脂は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
(B)成分としての熱硬化性樹脂が、上記二官能フェノキシ樹脂および三官能以上のエポキシ樹脂以外に、他の熱硬化性樹脂を含む場合、その含有量は、本発明の効果を得やすくするという観点から、全熱硬化性樹脂(全(B)成分)の総質量に対し、3質量%以下であると好ましく、1質量%以下であるとより好ましく、実質的に含有しないと特に好ましい。ここで、「実質的に含有しない」とは、不純物程度の混入は許容されうることを意味し、一例としては、全熱硬化性樹脂(全(B)成分)の総質量に対し、0.1質量%以下程度の他の熱硬化性樹脂の混入は許容される。
≪(C)硬化剤≫
本発明に係る電極用ペーストは、硬化剤を必須に含む。硬化剤は、上述の熱硬化性樹脂を硬化させる機能を有するものであればよく、本技術分野において公知のものが用いられる。
硬化剤の種類としては、特に制限されるものではなく、例えば、酸無水物系硬化剤;カチオン重合開始剤;有機リン化合物;アミン系硬化剤(ただし、第3級アミン化合物を除く);第3級アミン化合物等の公知のものが挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
カチオン重合開始剤としては、熱によりカチオン種および/またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤、光によりカチオン種および/またはルイス酸を発生する光カチオン重合開始剤等が挙げられる。なお、熱カチオン重合開始剤と光カチオン重合開始剤との間には明確な区分はなく、熱及び光のいずれに対しても硬化剤として作用するものもある。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩系カチオン重合開始剤;アルミニウム錯体とシラノール化合物との組み合わせ、アルミニウム錯体とビスフェノールSとの組み合わせ等のアルミニウム錯体複合系カチオン重合開始剤等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン系化合物等が挙げられる。
有機リン化合物としては、例えば、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート等が挙げられる。
アミン系硬化剤(ただし、第3級アミンを除く)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン等の脂肪族アミン類、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン等のポリエーテルアミン類、イソホロンジアミン、メンセンジアミン等の脂環式アミン類、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
第3級アミンとしては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
上記以外にも、硬化剤として、イミダゾール化合物;アミド系硬化剤;フェノール系硬化剤;テトラフェニルボロン塩;有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が用いられる。なかでも、本発明に係る電極用ペーストに含まれる硬化剤としては、イミダゾール化合物が好ましい。
イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ−PW)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW)、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
なお、硬化剤は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る電極用ペースト中の硬化剤の含有量(二種以上の硬化剤を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、上記熱硬化性樹脂((B)成分)の総質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であると好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であるとより好ましく、0.8質量%以上2.0質量%以下であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストの保管安定性および硬化速度のバランスに優れ、良好な硬化物を与える電極用ペーストが得られる。
また、電極用ペースト中の硬化剤の含有量(二種以上の硬化剤を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して0.01質量%以上5質量%以下であると好ましく、0.02質量%以上3質量%以下であるとより好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であると特に好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストの保管安定性および硬化速度のバランスに優れ、良好な硬化物を与える電極用ペーストが得られる。
≪その他の成分(添加剤)≫
本発明に係る電極用ペーストは、上記(A)〜(C)成分以外にも、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。
かような他の成分としては、例えば、ゴム粒子、シランカップリング剤、着色剤、チクソトロピック剤等が挙げられる。
(ゴム粒子)
本発明の効果をより向上させるために、本発明に係る電極用ペーストは、ゴム粒子をさらに含んでいてもよい。
ゴム粒子を含んでいると、電極用ペーストまたは硬化物中に生じた亀裂の先端において、ゴム粒子自体が塑性変形し、応力を緩和することができる。また、亀裂間の隙間を埋めるようにゴム粒子が存在すると、当該ゴム粒子が変形し、亀裂の隙間距離が大きくならないように作用するため、亀裂の拡大を抑制することができる。さらに、電極用ペーストまたは硬化物中にゴム粒子が分散されると、応力が緩和される。その結果、優れた引張強度やたわみ強度を得ることができる。
ゴム粒子の材質としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限されないが、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れるという観点から、フッ素ゴムおよびシリコーンゴムが好ましい。
フッ素ゴム粒子としては、例えば、フッ化ビニリデン・三フッ化エチレン共重合体粒子、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン・四フッ化エチレン三元共重合体粒子、四フッ化エチレン・プロピレン共重合体粒子、含フッ素アクリレート系重合体粒子、含フッ素ポリエステル系重合体粒子、含ポリエーテル系重合体粒子、含フッ素ニトロ素系重合体粒子、含フッ素トリアジン系重合体粒子等が挙げられる。
シリコーンゴム粒子としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等の直鎖状のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子;該シリコーンゴム粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆したもの、固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルとを含むコア−シェル粒子等が挙げられる。なかでも、上記熱硬化性樹脂((B)成分)との親和性や、電極ペースト中のシリコーン粒子の分散性を向上するという観点から、シリコーン粒子は、上記コア−シェル粒子であると好ましい。
なお、上記ゴム粒子は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
ゴム粒子の形状は、特に限定されないが、球状、略球状、繊維状、棒状、偏平状等を挙げることができる。
ゴム粒子が球状または略球状である場合、ゴム粒子の平均粒子径は特に制限されないが、1μm未満であると好ましい。1μm未満とすることにより、電極用ペーストを用いて外部電極等を形成した際の密着性が良好になる。さらに、密着性を向上させるという観点から、平均粒子径は、500nm以下であるとより好ましく、300nm以下であると特に好ましい。一方、ゴム粒子の平均粒子径の下限は特に制限されないが、10nm以上であると好ましい。平均粒子径を10nm以上とすることにより、上記のような応力を緩和する効果が得られやすくなる。なお、「粒子径」および「平均粒子径」の定義ならびに測定方法は上述の通りである。
電極用ペーストがゴム粒子を含む場合、ゴム粒子の含有量(二種以上のゴム粒子を用いる場合は、その合計量)は、特に制限されないが、電極用ペーストの総質量に対して0.1質量%以上であると好ましく、0.5質量%以上であるとより好ましく、1.0質量%以上であると特に好ましい。かような範囲であれば、上記のような応力を緩和する効果が得られやすく、引張強度やたわみ強度が向上する。一方、ゴム粒子の含有量の上限もまた特に制限されないが、十分な導電性や熱硬化性を得る観点から、電極用ペーストの総質量に対して5質量%以下であると好ましく、3質量%以下であるとより好ましく、1.5質量%以下であると特に好ましい。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。電極用ペーストがシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果をより得やすくするため、電極用ペーストの総質量に対して1.5質量%以下であると好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、0.1質量%以上程度であると好ましい。
(着色剤)
着色剤としては、例えば、染料;カーボンブラック、チタンブラック、鉄黒等の無機顔料;アニリンブラック等の有機顔料等が挙げられる。電極用ペーストが着色剤を含む場合、着色剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果をより得やすくするため、電極用ペーストの総質量に対して1.5質量%以下であると好ましい。一方、その下限は特に制限されないが、0.1質量%以上程度であると好ましい。
(チクソトロピック剤)
チクソトロピック剤としては、例えば、無機系または有機系のいずれであっても用いることができる。無機系チクソトロピック剤としては、例えば、微粒子無水ケイ酸またはヒュームドシリカ等のケイ酸系、セピオライト、クリソスタイル等の含水ケイ素マグネシウム系、モンモリロナイト系ベントナイト、ゼオライト等のケイ酸アルミニウム系等が挙げられる。有機系チクソトロピック剤としては、例えば、ポリヒドロキシカルボン酸またはそのアミド化合物、ポリアクリル酸ソーダ、ジベンザルソルビット等が挙げられる。これら以外にも、層間に有機分子を吸着させた有機ベントナイト等を用いてもよい。
≪好ましい組成≫
本発明に係る電極用ペーストは、特に、耐熱性、引張強度および衝撃吸収性を特にバランスよく向上させるという観点から、下記組成を有していると好ましい。
すなわち、電極用ペーストは、(A)成分 70質量%以上95質量%以下;(B)成分 3質量%以上25質量%以下;(C)成分 0.01質量%以上5質量%以下を含んでいると好ましく、(A)成分 80質量%以上90質量%以下;(B)成分 5質量%以上17質量%以下;(C)成分 0.02質量%以上3質量%以下を含んでいるとより好ましく、(A)成分 85質量%以上90質量%以下;(B)成分 8質量%以上15質量%以下;(C)成分 0.05質量%以上1質量%以下を含んでいると特に好ましい(ただし、上記において、(A)〜(C)成分の合計量は、100質量%である)。
<電極用ペーストの製造方法>
本発明に係る電極用ペーストは、必須成分である(A)〜(C)成分、および必要に応じて添加される他の成分(添加剤)を、所定の含有量となるように同時または順次配合し、各成分が均一に分散するように混合することにより、製造することができる。
混合方法は特に限定されず、例えば、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、ボールミル、スチールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー、ジェットミル、バンバリーミキサーのような回分式混練機、二軸押出機、単軸押出機、ローター型二軸混練機等の混合装置を用いる方法を挙げることができる。混合時に、必要に応じて加熱処理や冷却処理を施してもよい。
上記各成分の混合方法、混合順序は特に制限されないが、添加物を均一に分散できるという点で、混合方法は、湿式混合が好ましい。また、湿式混合を行うことにより、本発明に係る電極用ペーストは、溶媒を添加し、粘度を調整して用いることができる。これにより、本発明に係る電極用ペーストを用いてMLCC等の外部電極を形成する際、作業性が向上する。
ここで用いる溶媒は、特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶媒などが挙げられる。なかでも、得られる電極用ペーストの溶解性に優れることからグリコールエーテル系溶媒が好ましい。なお、上記溶媒は、単独であっても、または2種以上を混合して用いてもよい。
電極ペーストに有機溶媒を添加する場合、溶媒の添加量は特に制限されないが、添加後の粘度(25℃において、10rpmとし、ブルックフィールドDV−III型粘度計を用いて測定した値)が、5〜30Pa・sとなるように添加すると好ましい。さらに、当該粘度が、8〜20Pa・sとなるように添加するとより好ましい。かような範囲であれば、電極用ペーストを用いた外部電極を形成する際の作業性が向上する。
また、混合時間は特に制限されず、用いる混合方法や混合装置に応じて、適宜設定される。
<電極用ペーストの硬化方法>
本発明に係る電極用ペーストは、適当な大きさ、形状となるように塗布された後、必要に応じて乾燥され、その後の加熱により硬化される。これにより、MLCCの外部電極を形成することができる。
電極用ペーストの塗布方法は特に制限されず、浸漬法などの従来公知の方法が用いられる。
塗布される電極用ペーストの厚さ(乾燥後の厚さ)は、特に制限されないが、十分な導電性や強度を得る目的から、実質的には5μm以上である。一方、上記厚さ(乾燥後の厚さ)の上限は特に限定されないが、100μm以下であると好ましい。
乾燥時の条件は特に制限されないが、温度は80℃以上150℃以下であると好ましく、加熱時間は5分以上30分以下であると好ましい。なお、上記乾燥時の温度や加熱時間は、電極用ペーストが塗布される厚みや使用する溶剤に応じて適宜設定することができる。
また、加熱硬化時の条件は特に制限されないが、温度は120℃以上250℃以下であると好ましく、加熱時間は1時間以上5時間以下であると好ましい。かような範囲とすることにより、熱硬化性樹脂の硬化を十分に進行させることができる。また、電極用ペーストにシリコーンゴム粒子が含まれる場合には、加熱に起因する、シリコーンゴム粒子の変性を抑制することができる。なお、上記加熱硬化時の温度や加熱時間は、使用する硬化剤や電極用ペーストが塗布される厚みに応じて適宜設定することができる。加熱硬化時の雰囲気は、空気中、または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行うことができる。劣化を抑制するという観点からは、窒素等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
<電極用ペーストの用途>
本発明に係る電極用ペーストは、高い耐熱性、ならびに優れた引張強度および衝撃吸収性を有する硬化物を与える。
具体的には、電極用ペーストの加熱硬化後のガラス転移温度(Tg)が、125℃以上であると好ましく、150℃であるとより好ましく、165℃以上であると特に好ましい。なお、上記ガラス転移温度は、実施例に記載の測定方法で測定された値を採用する。一方、ガラス転移温度の上限は特に制限されないが、実質的には、270℃以下である。
また、電極用ペーストの加熱硬化後の引張強度が、4.5MPa以上であると好ましく、5.0MPa以上であるとより好ましく、6.0MPa以上であると特に好ましい。なお、上記引張強度は、実施例に記載の測定方法で測定された値を採用する。一方、引張強度の上限は特に制限されないが、実質的には、10MPa以下である。
さらに、衝撃吸収性に優れたものであるか否かについては、電極用ペーストの加熱硬化後のtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の値が指標となる。具体的には、電極用ペーストの硬化後におけるtanδが、0.30以上であると好ましく、0.50以上であるとより好ましく、0.55以上であると特に好ましい。tanδが0.30以上であると、電極用ペーストの硬化物に良好な衝撃吸収性を発揮させることが可能である。なお、上記tanδは、実施例に記載の測定方法で測定された値を採用する。一方、tanδの上限は特に制限されないが、実質的には、2.0以下である。
本発明に係る電極用ペーストにより形成される硬化物は、高い耐熱性、ならびに優れた引張強度および衝撃吸収性を有する。したがって、本発明に係る電極用ペーストは、外部電極を有する積層セラミック電子部品、特に車載用の積層セラミック電子部品の製造において好適に用いられる。すなわち、本発明の第二の形態によれば、電極用ペーストを硬化させてなる電極を有する、積層セラミック電子部品が提供され、好適には、車載用の積層セラミック電子部品が提供される。
外部電極が形成される積層セラミック電子部品としては、例えば、コンデンサ、コンデンサアレイ、サーミスタ、バリスター、インダクタならびにLC、CR、LRおよびLCR複合部品等が挙げられる。
≪積層セラミックコンデンサ≫
積層セラミック電子部品の好ましい形態として、積層セラミックコンデンサが挙げられる。以下、積層セラミックコンデンサの製造方法について概説する。
まず、グリーンシート上に、各種金属等を含有する内部電極用導電性ペーストを所定形状にスクリーン印刷して、内部電極用導電性ペースト膜を形成する。内部電極の材料としては特に制限されず、例えば、Cu、Ni、W、Mo、Ag、Pd等の金属またはこれらの合金等からなるものなどが挙げられる。
次いで、内部電極用導電性ペースト膜が形成された複数のグリーンシートを積層するとともに、これらグリーンシートを挟むように、導電性ペースト膜が形成されていないグリーンシートを積層して、圧着した後、必要に応じてカットすることによって、積層体(グリーンチップ)を得る。
そして、得られた積層体(グリーンチップ)に脱バインダー処理を施した後、当該グリーンチップを、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気下において焼成して、コンデンサチップ体を得る。コンデンサチップ体においては、グリーンシートを焼成してなる焼結体からなる誘電体層と内部電極とが交互に積層されている。焼成条件としては、特に制限されず、公知の条件を適宜採用すればよい。
なお、還元雰囲気下で焼成を行った場合、誘電体層を再酸化するため、得られたコンデンサチップ体にアニール処理を施すことが好ましい。
次に、コンデンサチップ体の端面から露出した内部電極の各端縁それぞれに外部電極が電気的に接続するように、コンデンサチップ体の端面上に、本発明に係る電極用ペースト(外部電極用ペースト)を塗布した後、加熱硬化することによって外部電極を形成する。なお、このときの硬化条件は上述の通りであるため、ここでは、詳細な説明は省略する。そして、必要に応じ、外部電極表面に、ニッケルめっき、錫めっき等のめっき処理を行い、被覆層を形成する。このようにして、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
積層セラミック電子部品の一例として上記積層セラミックコンデンサを挙げたが、本発明に係るセラミック電子部品は、これに限定されるものではない。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。以下の実施例においては、特記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味し、各操作は、室温(25℃)で行われた。なお、本発明は以下実施例に限定されるものではない。
<測定>
≪樹脂の重量平均分子量≫
各樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定には、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いる。
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理を行ったものを用いる)を1mL加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45μm〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)装置に注入する。
GPC測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THF(テトラヒドロフラン)を毎分1mLの流速で流し、1mg/mLの濃度の試料を約100μL注入して測定する。
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用する。また、検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器を用いる。
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いる。
≪エポキシ当量≫
JIS K7236:2001に準じて測定した。
<熱硬化性電極用ペーストの作製>
≪実施例1≫
金属粒子としての銅粉末(CUSP40、JOINM社製、平均粒子径:4μmおよび、CFL07、JOINM社製、平均板面径:7μmの混合粉)、熱硬化性樹脂としてのフェノキシ樹脂(ビスフェノールA型二官能フェノキシ樹脂、重量平均分子量22,000)、三官能エポキシ樹脂(TECHMORE VG3101L(以下の式(A)に記載の構造を有する化合物、エポキシ当量210g/eq)、株式会社プリンテック製)、および硬化剤としての2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ−PW、四国化成工業株式会社製、熱硬化性樹脂(フェノキシ樹脂および三官能エポキシ樹脂)の総量に対して1質量%)を、表1に記載の組成比となるように、三本ロールミル(M−80E、EXACT社製)を用いて5パス混練し、熱硬化性電極用ペースト1を調製した。なお、表1において、上記フェノキシ樹脂(または、これに相当する樹脂)を「熱硬化性樹脂1」と、上記三官能エポキシ樹脂を「熱硬化性樹脂2」と、それぞれ記載する。また、表1において、「[熱硬化性樹脂2]/[熱硬化性樹脂1+2]」は、熱硬化性樹脂1および熱硬化性樹脂2の合計質量に対する熱硬化性樹脂2の含有量を示す。また、表1中、「(A)金属粒子の含有量」「熱硬化性樹脂1の含有量」、「熱硬化性樹脂2の含有量」および「(C)硬化剤の含有量」は、それぞれ、導電性ペーストの総質量に対する各成分の含有量(割合)を示す。
また、上記混合時、溶剤としてのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを適当量添加し、熱硬化性電極用ペーストの粘度が10,000〜16,000cP(10〜16Pa・s)の範囲になるように調整した。上記熱硬化性電極用ペーストの粘度は、ブルックフィールドDV−III型粘度計を用いて、10rpmにて室温(25℃)で測定した。
≪実施例2〜5≫
熱硬化性樹脂1の種類を、重量平均分子量が51,000のフェノキシ樹脂(jER(登録商標、以下同じ)1256、三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型二官能フェノキシ樹脂、エポキシ当量7,604g/eq)に変更し、各成分の組成比を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして熱硬化性電極用ペースト2〜5をそれぞれ調製した。
≪比較例1≫
熱硬化性樹脂1として、フェノキシ樹脂の代わりに、重量平均分子量が900の二官能エポキシ樹脂(jER1001、三菱化学株式会社製、ビスフェノールA型二官能エポキシ樹脂)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして比較熱硬化性電極用ペースト1を調製した。
≪比較例2≫
三官能エポキシ樹脂を用いず、各成分の組成比を表1のように変更したこと以外は、実施例2と同様にして比較熱硬化性電極用ペースト2を調製した。
≪比較例3≫
フェノキシ樹脂を用いず、各成分の組成比を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較熱硬化性電極用ペースト3を調製した。
<評価>
上記実施例および比較例で得られた熱硬化性電極用ペーストについて、下記の通り評価した。
≪接着力(引張強度)≫
長さ30mm、幅10mm、厚み20mmのアルミ板に、上記実施例および比較例で得られた各ペーストを、厚さが80μmになるようにして、10mm×10mmの面積に転写塗布を行った。ペーストを塗布しておらず、上記と同形状のアルミ板を、ペーストを塗布した部分(10mm×10mmの範囲)のみが重なるように上から密着させた。その後、オーブン中にて200℃で3時間保持し、ペーストを乾燥し、硬化させ、2枚のアルミ板が接着されてなる試験片を得た。
上記の試験片について、卓上形精密万能試験機オートグラフ AGS−10kNX(株式会社島津製作所製)を用いて、接着力(引張強度)を測定した。具体的には、上記試験片の一方のアルミ板を上部の治具、他方のアルミ板を下部の治具に挟み込み、引張速度10mm/minにて引張強度を測定した。なお、表1では、括弧内に接着力(引張強度)を記載し(単位:MPa)、「1」〜「5」の各数字は、以下の評価基準に基づくランク分けを示す。
−評価基準−
5:引張強度が6.0MPa以上
4:引張強度が5.5MPa以上6.0MPa未満
3:引張強度が5.0MPa以上5.5MPa未満
2:引張強度が4.5MPa以上5.0MPa未満
1:引張強度が4.5MPa未満。
≪tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)およびガラス転移温度(Tg)≫
PETフィルム(SP−PET50C、厚さ50μm、リンテック株式会社製)上に、上記実施例および比較例で得られた各ペーストを、厚さが50μmとなるようにアプリケーター塗布を行った。次いで、オーブンに入れ、180℃で3時間保持し、ペーストを乾燥し、硬化させた。ペーストを硬化させた後のサンプルを、5mm×20mmの大きさに裁断し、PETフィルムから硬化膜を剥がし、フィルム状の硬化物を得た。
上記のフィルム状の硬化物について、粘弾性測定装置 DMA7100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、粘弾性測定を行った。具体的には、フィルム状の硬化物の長辺が引張方向となるようにして測定装置に設置し、周波数1Hz、測定開始温度20℃、昇温速度5℃/分に設定して、粘弾性測定を行った。tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)は、その測定における最大値とし、ガラス転移温度(Tg)はtanδが最大値となる温度とした。
なお、表1では、括弧内にガラス転移温度を記載し(単位:℃)、「1」〜「5」の各数字は、以下の評価基準に基づくランクを示す。
−評価基準−
5:ガラス転移温度が150℃以上
4:ガラス転移温度が140℃以上150℃未満
3:ガラス転移温度が130℃以上140℃未満
2:ガラス転移温度が125℃以上130℃未満
1:ガラス転移温度が125℃未満。
また、表1では、括弧内にtanδの値を記載し、「1」〜「5」の各数字は、以下の評価基準に基づくランクを示す。
−評価基準−
5:tanδの値が1.0以上
4:tanδの値が0.50以上1.0未満
3:tanδの値が0.40以上0.50未満
2:tanδの値が0.30以上0.40未満
1:tanδの値が0.30未満。
≪たわみ強度試験≫
チップ積層コンデンサのセラミック複合体(3216タイプ)の内部電極取り出し面にCu電極(内部電極に連結された第1導体層)が焼付けされたものを用意した。
上述の実施例および比較例で得られたペーストを、マイクロディップコーター(株式会社SDI製)を用いて上記のセラミック複合体端部に均一に浸漬塗布した。その後、140℃で15分間乾燥させ、200℃で3時間保持し、ペーストの硬化を行い第2導体層とし、外部電極を形成した。続いて電解めっきによりニッケルめっきを行い、次いで錫めっきを行い、チップ積層コンデンサを得た。次に、FR−4基板の上にSn−3.0Ag−0.5Cuの組成からなるハンダペーストを印刷し、積層セラミックコンデンサをマウントした後、イン−アウト5分、ピーク温度260℃の条件でリフロー処理を行い、評価用試験片を作製した。
評価用試験片を、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を用い、90mmの間隔を隔てて2点で支持し、FR−4基板側より中央部分を撓ませたときの容量変化を確認した。なお、このとき、R230mmの治具を使用し、変位速度1mm/秒で加圧し、基板を10mm撓ませた。また、評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
〇:初期容量に対する、撓みを与えた後の容量の低下率が10%未満
×:初期容量に対する、撓みを与えた後の容量の低下率が10%以上。
≪総合判定≫
上記各評価に基づき、実施例および比較例に係る電極用ペーストについて、実用的な観点から、ランク分けを行った。表1中の数字が大きいほど良好であることを示す。なお、総合判定では、ガラス転移温度、引張強度およびtanδの各評価におけるランクの合計値が高いものほど高評価とし、当該合計値が同じである場合には、さらに、各評価におけるランクのいずれかにおいて「5」を含むものを高評価とした。
上記表1より、本発明に係る電極用ペーストは、ガラス転移温度が高く、また、硬化時の引張強度およびtanδがそれぞれ高いことが示された。したがって、本発明に係る電極用ペーストは、耐熱性、引張強度および衝撃吸収性がバランスよく向上していることが示された。また、本発明に係る電極用ペーストは、硬化物のたわみ強度もまた優れていることも示された。一方、比較例に係る電極用ペーストは、ガラス転移温度、引張強度および衝撃吸収性のいずれかの評価項目において十分でない結果となった。