JP2018105272A - 冷媒圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材に窒化処理を施すことで基材とDLC−Si膜との密着性を向上することが出来るが、DLC−Si膜はSi含有量により密着性と耐摩耗性は逆比例的に変化するという特性があり、このような単層膜では密着性、耐摩耗性を両立することが出来ないという問題があった。
【解決手段】圧縮要素とモータ要素を密閉容器内に備えた冷媒圧縮機中における、鉄系材料同士で摩擦する摺動部において、いずれか一方の摺動面にDLC−Si膜を備え、前記DLC−Si膜の基材との界面のSi含有量を、摺動面のSi含有量よりも多くした。
【選択図】図5
【解決手段】圧縮要素とモータ要素を密閉容器内に備えた冷媒圧縮機中における、鉄系材料同士で摩擦する摺動部において、いずれか一方の摺動面にDLC−Si膜を備え、前記DLC−Si膜の基材との界面のSi含有量を、摺動面のSi含有量よりも多くした。
【選択図】図5
Description
本発明は、冷媒圧縮機に関する。
冷媒圧縮機は近年、省エネルギー化、小型化、低騒音化が要求され、これに伴って摺動部の使用条件が苛酷化している。
冷媒圧縮機の内部には材料強度の観点から鉄系材料が多く使用され、必然的に摺動部も鉄系材料同士になることが多い。同じ材料同士の摩擦はともがね状態となり、摩擦係数が高い、凝着しやすい等の問題がある。
このような状況の中、摺動部表面に摩擦・摩耗特性の優れるコーティングを施すことで摺動部の摩擦損失を低減し、省エネルギー化に貢献する技術が開発されている。中でも、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜は低摩擦、高耐摩耗性の非晶質炭素系被膜として注目されているが、高硬度であることから基材との密着性が悪いことが問題となっていた。特許文献1は、摺動部へ窒化処理を施し、その上にDLC−Si(ダイヤモンドライクカーボン−シリコン)膜を被膜することで、基材との密着性を向上させつつ、摩擦損失を低減する技術が開示されている。
特許文献1のように基材に窒化処理を施すことで基材とDLC−Si膜との密着性を向上することが出来るが、DLC−Si膜はSi含有量により密着性と耐摩耗性は逆比例的に変化するという特性があり、このような単層膜では密着性、耐摩耗性を両立することが出来ないという問題があった。
上記の課題に対し、本発明では、圧縮要素とモータ要素を密閉容器内に備えた冷媒圧縮機中における、鉄系材料同士で摩擦する摺動部において、いずれか一方の摺動面にDLC−Si膜を備え、前記DLC−Si膜の基材との界面のSi含有量を、摺動面のSi含有量よりも多くした。
本発明により、DLC−Si膜と基材の密着性および摩擦特性を向上し、冷媒圧縮機の長期信頼性を確保することが出来る。
まず、圧縮機の構成について図面を用いて説明する。図1に本実施例の圧縮機の断面を示す。本実施例における圧縮機の圧縮方式はレシプロ方式であり、冷媒としてR600aを用いている。尚、図1には本発明の実施形態としてピストンとコネクティングロッドの連結部について示すが、本発明の適用部位についてはこれに限らない。図1において、1は駆動源(図示せず)に接続されたクランクシャフト、2はシリンダ(図示せず)内を往復するピストン、3はピストン2に接続されクランクシャフト1とピストン2を連結するコネクティングロッド、4はコネクティングロッド3上に作製されたDLC−Si膜である。
コネクティングロッド3のピストン2との接続部はボール状で、ピストン2のコネクティングロッド3との接続部は内球面のボール軸受け構造となっている。ピストン2およびコネクティングロッド3は、強度や耐摩耗性を要することから鉄系材料を用いている。成形性の観点から、鉄系の焼結材を使用する場合もある。
次に、動作について説明する。駆動源によって偏心回転するクランクシャフト1の運動が、コネクティングロッド3を介してピストン2に伝達され、ピストン2が往復することで冷媒等のガスが圧縮される。このとき、ピストン2に加わる圧縮荷重は、コネクティングロッド3を挟んで、ピストン2とクランクシャフト1が押し合うように作用する。このようなレシプロ圧縮機のピストン2/コネクティングロッド3連結部では、コネクティングロッド3の揺動方向が逆転する際に一瞬停止するため、摺動面の一部で流体被膜が形成されずに摺動面同士の直接接触が発生する。
本実施例では、摺動面における金属同士の直接接触を抑制するため、コネクティングロッド3の表面にDLC−Si膜4を備えている。本実施例で用いるDLC−Si膜中のSi含有量が及ぼす摩擦係数、比摩耗量、膜の密着性への効果について検証するため、ブロックオンリング試験機およびスクラッチ試験機を用いて摩擦試験を行った。ブロックオンリング試験機およびスクラッチ試験機の概要をそれぞれ図2および図3に示す。
図2において、駆動源に接続されたリング5上に、ブロック6を接触させ、リング5を回転させて摩擦する。リング5は潤滑油7に1/3ほど浸かる状態となっており、回転運動により潤滑油7を引き上げることで摺動面に潤滑油7が供給される。リング5には、Fe、Ni、Mn、Mo系合金であるSAE4620、ブロック6には浸炭焼入れ処理を施したクロムモリブデン鋼であるSCM415、潤滑油7には家電用圧縮機向け冷凍機油として多く用いられているポリオールエステル油(動粘度:5.10mm2/s@40℃)を用いた。ブロック6の表面には、プラズマCVD法によってDLC−Si膜4を約2μmの厚さで作製した。リング5の回転速度は0.183m/sから0.009m/sまで0.018m/sまたは0.009m/s刻みで低下させ、再び同じ間隔で0.183m/sまで上昇させた。各速度におけるサイクル数は100とした。
また、スクラッチ試験については図3において、表面にDLC−Si膜4を作製したブロック6を1°傾けたステージ8に固定し、先端半径10μmのダイヤモンド圧子9を用いて1mm/sの速度で連続的に荷重を変化させながら3mmスクラッチした。試験後のスクラッチ痕を拡大観察し最初に剥離した点を特定し、その点での荷重を臨界剥離荷重として算出した。
まず、DLC−Si膜4中のSi含有量が摩擦係数および比摩耗量に与える影響について検証した。Si含有量0%のDLC膜については、ブロック6上に直接作製することができなかったため、初めにDLC-Si膜を作製し、その上にDLC膜を作製した。今回は摺動面に油膜が形成されにくく最も厳しい潤滑状態である境界潤滑状態での摩擦係数を比較するため,最も低速である0.009m/sにおける摩擦係数とSi含有量の関係を図4上段に示した。また、試験後のSi-DLC膜4上の摩耗痕形状から比摩耗量を算出し、Si含有量との関係を図4中段に示した。
図4より,DLC−Si膜の摩擦係数については、Si含有量との相関は見られず、一定の値を示す。しかし、Si含有量0%のDLC膜では摩擦係数は基材と同等まで上昇した。DLC−Si膜はSiを含有することから摩擦中に潤滑油に含まれる水分と反応し表面にSi−OH基を生成する。Si−OH基が水分子を引き寄せるため境界膜が作られることで、低摩擦を発現すると考えられており、膜中にSiを含まないDLC膜は低摩擦発現効果が見られなかったと推測される。よって、DLC−Si膜4は少なくとも4%のSiが含有されていることが必要であることがわかる。
また、同じく図4より、比摩耗量は摩擦係数とは異なりSi含有量が低下するにつれて低下することがわかり、Si含有量が21%以下のときに基材よりも低下した。また、17%付近を境に摩耗量が急激に増加することから、Si含有量の上限は17%とすることが好ましい。さらに、Si含有量が15%以下であれば比摩耗量を基材の半分以下の値とすることができるため、Si含有量の上限は15%とすることがより好ましい。また、前述したとおりSi含有量0%のDLC膜は、作製している段階で剥離してしまいブロック6上に直接作製することができなかった。この観点からも、少なくとも4%のSi含有量が必要であることがわかる。以上より、鉄系材料同士からなる摺動部において、いずれか一方の摺動面にSi含有量を4〜17%としたDLC−Si膜4を形成することで、摩擦係数および比摩耗量を低減させることが可能であることがわかる。
次に、DLC−Si膜4中のSi含有量が膜の密着性に与える影響について検証した。ブロック6上にDLC−Si膜4を作製し、スクラッチ試験機を用いて基材(ブロック6)とDLC−Si膜4の密着強度を測定した。結果を図4下段に示すが、Si含有量が上昇するに従い臨界剥離荷重も上昇していくことがわかる。図4中において各試験片の摩擦試験を行った際に、試験後のDLC−Si膜4上の摩耗痕内にて剥離が発生したものを×、発生しなかったものを○で示す。Si含有量4%では摩耗痕内の複数個所に渡って大きく剥離している様子が見られた。一方、Si含有量11%、19%および24%では摩耗痕内に剥離は生じていなかった。これは、Si含有量が多いことにより、基材との界面にSi−炭素結合、Si−金属結合が豊富に形成され、界面強度が上昇したためと考えられる。この実験から、摩擦試験後にDLC−Si膜4の剥離が発生する境界は臨界剥離荷重280mN付近にあると考えられ、臨界剥離荷重が280mN以上となるのはSi含有量が約7%以上のときであることがわかる。以上より、鉄系材料同士からなる摺動部において、いずれか一方の摺動面にSi含有量7〜25%としたDLC−Si膜を形成することで、基材との密着性を向上することができ、摺動部の信頼性を向上させることが可能である。
(実施の形態1)
上記の結果より、本発明における実施の形態1と従来例を比較する。図5に本発明の実施の形態1における摺動部の断面図を示す。図5において、3は鉄系材料基材(図1におけるコネクティングロッド)、4は基材3上に作製されたDLC−Si膜、2はDLC−Si膜と摺動する相手材(図1におけるピストン)である。
上記の結果より、本発明における実施の形態1と従来例を比較する。図5に本発明の実施の形態1における摺動部の断面図を示す。図5において、3は鉄系材料基材(図1におけるコネクティングロッド)、4は基材3上に作製されたDLC−Si膜、2はDLC−Si膜と摺動する相手材(図1におけるピストン)である。
まず、従来例におけるDLC−Si膜4は、Si含有量が10〜25%の単層となっている。この場合、Si含有量が17%を超えているときに摩耗量が異常に増加する可能性がある。よって、従来例では信頼性を向上することができなかった。
そこで、実施の形態1では摺動部の表面にSi含有量を変化させたDLC−Si膜4を形成することで、密着性向上と摩耗抑制効果を両立した。DLC−Si膜4において、基材との界面(第1膜)4aのSi含有量を7〜25%とし、高密着性を付与した。また、摺動面(第2膜)4bにおいてはSi含有量を4〜17%とし、高耐摩耗性を付与した。先に説明した摩擦試験およびスクラッチ試験によれば、界面4aをSi含有量24%とし、摺動面4bをSi含有量4%として2種類のSi含有量の異なるDLC−Si膜の積層構造とした場合、比摩耗量は同等であるが界面4aのない場合よりも臨界剥離荷重は20%向上し、摺動面に剥離は見られなかった。また、摺動面4bのない場合と比較すると臨界剥離荷重は同等であるが比摩耗量は93%低下した。よって、DLC−Si膜4をSi含有量の異なる第1膜と第2膜の積層とすることで、摩擦耗性、密着性の両立を図ることが可能である。また、界面4aから摺動面4bにかけてSi含有量が連続的に減少していく構造を取った場合、界面4aのない場合よりも臨界剥離荷重を50%以上向上することが可能であるため、Si含有量は連続的に変化させることがより好ましい。
(実施の形態2)
図6を用いて実施の形態2について説明する。図6において、DLC−Si膜4の構成以外は図5と同一であるため詳細な説明は省略する。実施の形態2では、DLC−Si膜4の構成として、前述した第1膜4a、第2膜4bに加えてさらにSi含有量の異なる第3膜4cを備えている。ここで、それぞれのSi含有量は、第1膜4aには高密着性を付与するため7〜25%、第2膜4bには高耐摩耗性を付与するため4〜17%、第3膜4cには摩擦係数を低く保ちつつ高なじみ性を付与するため21〜25%とした。先に説明した摩擦試験によれば、Si含有量が21〜25%のとき摩擦係数は基材を下回り、比摩耗量は基材を上回る。この特性を利用し、第3膜4cは運転初期において摩擦係数を低く抑えながら摩耗を促進することにより、摺動面をなじませ摺動状態を境界潤滑領域からよりマイルドな流体潤滑領域へ移行させるなじみ層として機能させるものである。DLC−Si膜は金属元素を含まないことから、なじみ層が摩耗して摩耗粉が生成しても、冷凍機油や冷凍機油が劣化して生じた酸等と反応することがなく、安定である。第3膜4cはなじみを促進するためのものであるから運転初期において摺動面から除去されることが好ましいため、厚みは0.5〜1μmが好ましい。また、実施の形態2においても実施の形態1と同様に4a、4bおよび4cは積層構造であっても傾斜構造であっても良い。ただし、第3膜4cについては運転初期に除去されることが好ましいため、第2膜4b上に積層することが好ましい。
図6を用いて実施の形態2について説明する。図6において、DLC−Si膜4の構成以外は図5と同一であるため詳細な説明は省略する。実施の形態2では、DLC−Si膜4の構成として、前述した第1膜4a、第2膜4bに加えてさらにSi含有量の異なる第3膜4cを備えている。ここで、それぞれのSi含有量は、第1膜4aには高密着性を付与するため7〜25%、第2膜4bには高耐摩耗性を付与するため4〜17%、第3膜4cには摩擦係数を低く保ちつつ高なじみ性を付与するため21〜25%とした。先に説明した摩擦試験によれば、Si含有量が21〜25%のとき摩擦係数は基材を下回り、比摩耗量は基材を上回る。この特性を利用し、第3膜4cは運転初期において摩擦係数を低く抑えながら摩耗を促進することにより、摺動面をなじませ摺動状態を境界潤滑領域からよりマイルドな流体潤滑領域へ移行させるなじみ層として機能させるものである。DLC−Si膜は金属元素を含まないことから、なじみ層が摩耗して摩耗粉が生成しても、冷凍機油や冷凍機油が劣化して生じた酸等と反応することがなく、安定である。第3膜4cはなじみを促進するためのものであるから運転初期において摺動面から除去されることが好ましいため、厚みは0.5〜1μmが好ましい。また、実施の形態2においても実施の形態1と同様に4a、4bおよび4cは積層構造であっても傾斜構造であっても良い。ただし、第3膜4cについては運転初期に除去されることが好ましいため、第2膜4b上に積層することが好ましい。
本実施例においてはレシプロ圧縮機内へDLC−Si膜を作製する部位としてボールジョイント部を挙げたが、摺動部が鉄系材料同士であれば他の摺動部でも同様の効果が得られる。また、ピストンとコネクティングロッドの接続方式はピストンピンを介したものでも問題はない。
本実施例の圧縮機では、DLC−Si膜4と基材との密着性を向上させるために、基材に熱処理を施しても良い。例として、基材に窒化処理を施すと、基材表面に微細な凹凸が形成されることによるアンカー効果と表面の硬さが向上することにより上に形成するDLC−Si膜が割れにくくなり、密着性をより向上させることが可能である。
本実施例の効果はDLC−Si膜の作製方法によらないが、このようなDLC−Si膜は、付きまわり性の観点から、炭化水素系およびシラン系の原料ガスを用いるCVD法によって作製されるものが好ましい。この方法によれば、ドロップレットなどの表面の欠陥が少なく均一な膜が作製できることから、他の方法で作製したものに比べ耐剥離性に優れるDLC−Si膜を作製可能である。
本実施例の圧縮機は、冷媒としてR600a(イソブタン)を用いる。R600aは分子中に塩素を含んでいないことから冷媒自身の潤滑性が期待できず、圧縮機の耐摩耗性を低下させる。よって、圧縮機に封入される冷凍機油としては、ポリオールエステル油や極圧添加剤を添加した炭化水素系油等、潤滑性の高いものが好ましい。特に、ポリオールエステル油を用いることで、極圧添加剤の添加無しでも冷媒/冷凍機油混合液の潤滑性を確保できる。前記したポリールエステル油としては、多価アルコールと1価の脂肪酸とから合成され、熱安定性に優れるヒンダードタイプが好ましい。例えば、多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトールがある。1価の脂肪酸としては、ペンタン酸,ヘキサン酸,ヘプタン酸,オクタン酸,2−メチルブタン酸,2−メチルペンタン酸,2−メチルヘキサン酸,2−エチルヘキサン酸,イソオクタン酸,3,5,5−トリメチルヘキサン酸等があり、単独で又は2種類以上の混合脂肪酸にして用いる。特に冷凍機油の基油としては分子中にエステル結合を少なくとも2個保有する式(1),(2)又は(3)で示される脂肪酸のエステル油の群から選ばれる少なくとも1種類が好ましい。
(R1−CH2)2−C−(CH2−O−CO−R2)2 ・・・・(1)
(式(1)中、R1は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は、それぞれ独立して炭素数5〜12のアルキル基を表す)
(R1−CH2)−C−(CH2−O−CO−R2)3 ・・・・(2)
(式(2)中、R1およびR2は、前記と同義である)
C−(CH2−O−CO−R2)4 ・・・・(3)
(式(3)中、R2は、前記と同義である)
冷凍機油の粘度(JIS K2283で測定)に関しては、レシプロ式圧縮機の場合では40℃における粘度が5〜15mm2/sの範囲が好ましい。粘度5mm2/s未満の場合は冷媒が溶解した粘度が低くなってしまい、圧縮機内部での油膜が十分に保持されず潤滑性が保てない。更には圧縮部のシール性も保てない。これに対して粘度15mm2/sを越えると粘性抵抗,摩擦抵抗等の機械損失が増大し、圧縮機効率を低下させる。
(式(1)中、R1は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は、それぞれ独立して炭素数5〜12のアルキル基を表す)
(R1−CH2)−C−(CH2−O−CO−R2)3 ・・・・(2)
(式(2)中、R1およびR2は、前記と同義である)
C−(CH2−O−CO−R2)4 ・・・・(3)
(式(3)中、R2は、前記と同義である)
冷凍機油の粘度(JIS K2283で測定)に関しては、レシプロ式圧縮機の場合では40℃における粘度が5〜15mm2/sの範囲が好ましい。粘度5mm2/s未満の場合は冷媒が溶解した粘度が低くなってしまい、圧縮機内部での油膜が十分に保持されず潤滑性が保てない。更には圧縮部のシール性も保てない。これに対して粘度15mm2/sを越えると粘性抵抗,摩擦抵抗等の機械損失が増大し、圧縮機効率を低下させる。
本実施例では前記した冷凍機油に、酸化防止剤、酸捕捉剤、消泡剤、金属不活性剤等を添加しても全く問題はない。特にポリオールエステル油は酸化劣化を起こしやすく、吸湿性が高いことから水分持ち込み量が増加してPETフィルム等のモータ絶縁材料の加水分解による劣化が生じる可能性が高く、酸化防止剤,酸捕捉剤の配合は必要である。酸化防止剤としては、フェノール系であるDBPC(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)が好ましい。酸捕捉剤としては、エポキシ系,カルボジイミド系などがあるが、脂肪族のエポキシ化合物が一般的に用いられる。
本実施例の圧縮機に封入される冷凍機油は、冷媒R600aとの二層分離温度が−40℃以下のものが好ましい。冷凍機油は冷媒とともに冷凍サイクル内を循環するため、圧縮機外に持ち出される場合もある。その際、サイクルの低温部で冷凍機油が冷媒から分離し圧縮機に戻らなくなり、圧縮機内の油量が低下し潤滑不良となる可能性がある。よって、冷媒と冷凍機油との二層分離温度は、冷凍サイクルの最低温である−40℃以下とする必要があり、より好ましくは、−45℃以下である。
1…クランクシャフト、2…ピストン、3…コネクティングロッド、4…DLC−Si膜、5…リング試験片、6…ブロック試験片、7…潤滑油、8…ステージ、9…ダイヤモンド圧子
Claims (9)
- 圧縮要素とモータ要素を密閉容器内に備えた冷媒圧縮機中における、鉄系材料同士で摩擦する摺動部において、いずれか一方の摺動面にDLC−Si膜を備え、前記DLC−Si膜の基材との界面のSi含有量は、前記摺動面のSi含有量よりも多いことを特徴とする冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜は、前記基材との前記界面のSi含有量が7〜25%であり、前記摺動面のSi含有量が4〜17%であることを特徴とする請求項1に記載の冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜は、前記基材との前記界面から前記摺動面にかけて連続的にSi含有量が減少していくことを特徴とする請求項1または2に記載の冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜が、Si含有量の異なるDLC−Si膜の積層であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷媒圧縮機。
- 圧縮要素とモータ要素を密閉容器内に備えた冷媒圧縮機中における、鉄系材料同士で摩擦する摺動部において、いずれか一方の摺動面にDLC−Si膜を備え、前記DLC−Si膜は、基材側から順に第1膜、第2膜および第3膜のSi含有量の異なる膜を有し、前記第2膜のSi含有量は、前記第1膜および前記第3膜よりも少ないことを特徴とする冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜は、前記第1膜のSi含有量が7〜25%であり、前記第2膜のSi含有量が4〜17%であり、前記第3膜のSi含有量が21〜25%であることを特徴とする請求項5に記載の冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜は、前記第1膜から前記第2膜にかけて連続的にSi含有量が減少していくことを特徴とする請求項5または6に記載の冷媒圧縮機。
- 前記DLC−Si膜は、Si含有量の異なるDLC−Si膜の積層構造からなることを特徴とする請求項5または6に記載の冷媒圧縮機。
- 前記第3膜は、厚みが0.5〜1μmであり、前記第2膜上に積層されることを特徴とする請求項5または6に記載の冷媒圧縮機。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016254655A JP2018105272A (ja) | 2016-12-28 | 2016-12-28 | 冷媒圧縮機 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020000766A (ja) * | 2018-06-30 | 2020-01-09 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
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- 2016-12-28 JP JP2016254655A patent/JP2018105272A/ja active Pending
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20170104 |