JP2018105138A - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents
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Abstract
【課題】弁座部材の端面に結合されるインジェクタプレートが、プレス成形された金属板で構成される電磁式燃料噴射弁において、インジェクタプレートをプレス成形しても、プレス成形に因り悪化する平面度を矯正し或いは向上させて、平面度悪化に伴う不都合を回避可能とする。【解決手段】インジェクタプレート36の、弁座部材3との対向面36iには、弁孔10から燃料噴孔43に向けて燃料を案内する燃料通路FPが凹設されると共に、その燃料通路FPの、弁座部材3側の開放面が弁座部材3で塞がれており、インジェクタプレート36の前記対向面36iおよび弁座部材3とは反対側の外表面36oのうちの少なくとも一方の面36iには、燃料通路FPよりも外側領域の少なくとも一部において窪み40が設けられる。【選択図】 図3
Description
本発明は、主として内燃機関の燃料供給系に使用される燃料噴射弁に関し、特に、弁座及びその中心部を貫通する弁孔を有する弁座部材と、弁座と協働して弁孔を開閉する弁体と、燃料噴孔を有して弁座部材の外端面に結合されるインジェクタプレートとを備え、弁座部材及びインジェクタプレート間に、弁孔及び燃料噴孔間を連通する燃料通路を設けるようにした電磁式燃料噴射弁に関する。
上記電磁式燃料噴射弁において、弁座部材端面への燃料通路の切削加工を廃止し且つインジェクタプレートの薄肉化及び成形性確保等を図るために、プレス成形された金属板でインジェクタプレートを構成し、そのプレス成形と同時に燃料通路画成用の凹みをインジェクタプレートの一面(即ち弁座部材との対向面)に成形することが知られている(例えば下記特許文献1を参照)。
ところがインジェクタプレートをプレス成形すると、成形後のスプリングバックのためにインジェクタプレートの平面度が悪化する虞れがある。そして、この平面度の悪化は、インジェクタプレートの成形精度を低下させ、延いては、インジェクタプレートの弁座部材端面への接合性悪化や、燃料通路内での燃料の円滑な流れを阻害する等の不都合の要因となる。
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、インジェクタプレートをプレス成形しても、インジェクタプレートの平面度を矯正し或いは向上させて、上記不都合を回避することができる電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、弁座、及び該弁座の中心部を貫通する弁孔を有する弁座部材と、前記弁座と協働して前記弁孔を開閉する弁体と、燃料噴孔を有して前記弁座部材の外端面に結合されるインジェクタプレートとを備え、前記インジェクタプレートが、プレス成形された金属板で構成される電磁式燃料噴射弁において、前記インジェクタプレートの、前記弁座部材との対向面には、前記弁孔から前記燃料噴孔に向けて燃料を案内する燃料通路が凹設されると共に、その燃料通路の、前記弁座部材側の開放面が該弁座部材で塞がれており、前記インジェクタプレートの、前記弁座部材との対向面および前記弁座部材とは反対側の外表面のうちの少なくとも一方の面には、前記燃料通路よりも外側領域の少なくとも一部において窪みが設けられることを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記インジェクタプレートの前記外表面には、前記燃料通路に対応する領域の少なくとも一部において窪みが設けられることを第2の特徴とする。
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記窪みは複数有って、相互に間隔をおいて配置されることを第3の特徴とする。
また本発明は、第1〜第3の何れかの特徴に加えて、前記燃料通路が、前記弁孔との連通部から所定方向に延びる案内通路と、前記案内通路の下流端に接続されて前記弁孔から該案内通路を経て流入した燃料を旋回させ且つ底部に前記燃料噴孔の上流端を開口させた旋回室とを少なくとも有していることを第4の特徴とする。
本発明において、「燃料通路よりも外側領域」とは、インジェクタプレートの板面と平行な投影面で見て、燃料通路とは重ならない、燃料通路より外側の領域をいう。従って、例えば実施形態において、インジェクタプレートの周方向で隣り合う案内通路38,38の相互間に挟まれた領域や、前記周方向で隣り合う旋回室39,39の相互間に挟まれた領域も、当然に「燃料通路よりも外側領域」に含まれる。
また本発明において、「燃料通路に対応する領域」とは、前記投影面で見て、燃料通路と重なる領域をいう。
弁孔から燃料噴孔に向けて燃料を案内する燃料通路がインジェクタプレートの、弁座部材との対向面に凹設される電磁式燃料噴射弁において、インジェクタプレートは、これをプレス成形するとスプリングバックに因り平面度が悪化する虞れがあるが、本発明の第1の特徴によれば、インジェクタプレートの、弁座部材との対向面および弁座部材とは反対側の外表面のうちの少なくとも一方の面に、燃料通路よりも外側領域の少なくとも一部において窪みが設けられており、インジェクタプレートの窪み周辺の塑性変形部分の加工硬化によって、インジェクタプレートの、窪みが設けられる特定領域の剛性アップが可能となる。これにより、インジェクタプレートの平面度を容易に矯正し或いは向上させることができるため、平面度悪化に起因した不都合(例えば、インジェクタプレートの弁座部材端面への接合性悪化や、燃料通路内での燃料の円滑な流れの阻害等)を未然に効果的に防止可能となる。しかも上記窪みの形成領域は、燃料通路よりも外側領域であることから、窪みの特設が燃料通路内での燃料の流れを干渉、阻害して燃料噴霧に影響を及ぼすような虞れはない。
また本発明の第2の特徴によれば、インジェクタプレートの、燃料通路に対応する領域においても、インジェクタプレートの外表面側に窪みを設けたことで、インジェクタプレートの平面度を矯正し或いは向上させることができる。またインジェクタプレートの外表面は、燃料通路に対応する領域であっても上記燃料通路内には臨んでいないため、その外表面に上記窪みを設けても、燃料通路内での燃料の流れを干渉、阻害して燃料噴霧に影響を及ぼすような虞れはない。
また本発明の第3の特徴によれば、前記窪みは複数有って、相互に間隔をおいて配置されるので、各窪みを微小化することで、第1,第2の特徴による効果を確保しつつ窪みの特設に伴うインジェクタプレートの剛性低下を効果的に抑えることができる。
また第4の特徴によれば、燃料通路は、弁孔との連通部から所定方向に延びる案内通路と、案内通路の下流端に接続されて燃料を旋回させる旋回室とを有するので、旋回室で通過燃料にスワールを付与して噴射燃料の微粒化促進に寄与することができる。また、このように案内通路及び旋回室を有することで燃料通路が複雑な通路形態となっても、これをインジェクタプレートにプレス成形で容易に且つ精度よく形成可能である。
本発明の実施形態を、添付図面を参照して、以下に説明する。
先ず、図1及び図2において、内燃機関用電磁式燃料噴射弁Iのケーシング1は、円筒状の弁ハウジング2(磁性体)と、この弁ハウジング2の前端部に液密に結合される有底円筒状の弁座部材3と、弁ハウジング2の後端に環状スペーサ4を挟んで液密に結合される円筒状の固定コア5とから構成される。
環状スペーサ4は、ステンレス鋼等の非磁性金属製であり、その両端面に弁ハウジング2及び固定コア5が突き当てられて液密に全周溶接され、その溶接にはレーザビームが使用される。
弁座部材3及び弁ハウジング2の対向端部には、第1嵌合筒部3a及び第2嵌合筒部2aがそれぞれ形成される。そして第1嵌合筒部3aが第2嵌合筒部2a内にストッパプレート6と共に圧入され、ストッパプレート6は、弁ハウジング2と弁座部材3間で挟持される。その後、第1嵌合筒部3aの外周面と第2嵌合筒部2aの端面とに挟まれる隅部の全周にわたりレーザ溶接又はビーム溶接を施すことにより、弁ハウジング2及び弁座部材3が相互に液密に結合される。
弁座部材3には、それの平坦な前端面即ち外端面に下流端を開口する円錐状の弁座8と、この弁座8の中心部を貫通して弁座部材3の外端面に開口する弁孔10と、弁座8の上流端、即ち大径部に連なる円筒状のガイド孔9とが設けられており、そのガイド孔9は、前記第2嵌合筒部2aと同軸状に形成される。
弁ハウジング2及び環状スペーサ4内には、固定コア5の前端面に対向する可動コア12が摺動自在に収容され、この可動コア12に、前記ガイド孔9に軸方向摺動自在に収容される弁体16が一体的に結合される。この弁体16は、弁座8に着座し得る球状の弁部16aと、ガイド孔9に摺動自在に支承される前後一対のジャーナル部16b,16bと、前記ストッパプレート6に当接して弁体16の開弁限界を規定するフランジ16cとを一体に備えており、各ジャーナル部16bには、燃料の流通を可能にする複数の平坦面17,17…が設けられる。
固定コア5は、弁ハウジング2内と連通する中空部21を有しており、その中空部21に、可動コア12を弁体16の閉じ方向、即ち弁座8への着座方向に付勢するコイル状の弁ばね22と、この弁ばね22の後端を支承するパイプ状のリテーナ23とが収容される。このリテーナ23は、中空部21においてカシメにより固定される。
固定コア5の後端には、パイプ状のリテーナ23を介して固定コア5の中空部21に連通する燃料入口25aを持つ入口筒25が一体に連設され、その燃料入口25aに燃料フィルタ27が装着される。
環状スペーサ4及び固定コア5の外周にはコイル組立体28が嵌装される。このコイル組立体28は、環状スペーサ4及び固定コア5に外周面に嵌合するボビン29と、これに巻装されるコイル30とからなっており、このコイル組立体28を囲繞するコイルハウジング31の一端部が弁ハウジング2の外周面に溶接により結合される。
コイルハウジング31、コイル組立体28及び固定コア5は合成樹脂製の被覆体32内に埋封され、この被覆体32の中間部には、前記コイル30に連なる接続端子33を収容する備えたカプラ34が一体に連設される。
図2に明示するように、弁座部材3の前端面には円板状のインジェクタプレート36が液密に全周溶接wされ、その溶接にはレーザビームが使用される。このインジェクタプレート36は、金属板(例えば、ステンレス鋼板、その他の鋼板)を所定形状にプレス成形して得られるプレス成形品より構成される。インジェクタプレート36には、弁孔10の軸線回りの同一円周上で等間隔おきに並ぶ複数の燃料噴孔43が穿設される。インジェクタプレート36は、その板厚が、例えば0.1mm前後の薄肉の板状である。尚、図面上は、発明を理解し易くするためにインジェクタプレート36の板厚を多少誇張して描いている。
インジェクタプレート36の上面、即ち弁座部材3外端面との対向面36iには、弁孔10から燃料噴孔43に向かう燃料を案内する燃料通路FPとなる浅い凹みが、上記プレス成形により形成される。この燃料通路FPは、通過燃料にスワールを付与して燃料噴孔43からの噴射燃料の微粒化促進に寄与すべく、以下に説明するような複雑な平面形態(本実施形態では花弁状)に形成される。
即ち、燃料通路FPは、弁孔10に直接連通する連通部としての中央油室37と、その中央油室37からインジェクタプレート36の板面に沿う所定方向(本実施形態では弁孔10の中心に対し放射方向)に直線状に延びる複数の案内通路38と、各案内通路38の下流端が接線方向に開口する旋回室39とを備える。その旋回室39は、案内通路38の中心線Lに対し案内通路38の幅方向で一方側(換言すればインジェクタプレート36の周方向で一方側)にオフセット配置される。
そして、旋回室39の底面には、燃料噴孔43の上流端が開口している。尚、燃料噴孔43は、例えばプレス成形後のインジェクタプレート36に対しドリル加工等で形成される。
燃料通路FPの大部分(より具体的には中央油室37の外周部、各案内通路39及び各旋回室39)の、弁座部材3側の開放面は、弁座部材3で塞がれる。またインジェクタプレート36の上面36iの、燃料通路FPを取り囲む領域は、弁座部材3の外端面に密着状態におかれる。そして、燃料通路FPを流れる燃料は、外部に漏れ出すことなく、弁孔10から中央油室37、案内通路38及び旋回室39を順次経て燃料噴孔43まで到達する。
また、旋回室39の周面は、径方向外方側に凸に彎曲した彎曲周面39fとされ、その彎曲周面39fの旋回案内作用により、案内通路38を経て旋回室39に流入した燃料をスムーズに旋回させる。これにより、燃料噴孔43に流入する直前の燃料にスワールを付与することができる。
一方、案内通路38の相対向する両内側面、即ち第1,第2内側面38i,38oは、案内通路38の長手方向(即ち弁孔10の中心に対し放射方向)に直線状に延びる略平面で各々構成される。
上記した第1,第2内側面38i,38oのうち、特に案内通路38の幅方向で旋回室39中心部寄り(即ち通路中心線Lに対し旋回室39がオフセット配置される側)に位置する第1内側面38iは、それの下流端38ieと、旋回室39の彎曲周面39fの下流側終端39feとが曲面rで滑らかに接続される。尚、第1内側面38iの下流端38ieと彎曲周面39fの下流側終端39feとは、その相互間を例えば曲面rを介さずに直接接続させるようにしてもよい。
また、案内通路38の第2内側面38oの下流端と、旋回室39の彎曲周面39fの上流側始端とは、段差なく滑らかに接続される。これにより、案内通路38から旋回室39へ高圧燃料がスムーズに流入し得るようになっている。
ところでインジェクタプレート36の上面36i、及び下面(即ち弁座部材3とは反対側の外表面)36oのうちの一方の面(本実施形態では上面36i)には、前述の燃料通路FPよりも外側領域のうちの少なくとも一部の領域(本実施形態では略全域)において、多数の微小な窪み40が相互に間隔をおいて設けられる。
一方、インジェクタプレート36には、その上面36i及び下面36oのうち特に下面36oにだけ、燃料通路FPに対応する領域の少なくとも一部の領域(本実施形態では略全域)において、複数の微小な窪み40′が相互に間隔をおいて設けられる。
而して、インジェクタプレート36は、これをプレス成形すると、スプリングバックに因り平面度が悪化する虞れがあるが、平面度が悪化したインジェクタプレート36に対し、平面度を物理的に矯正した状態で上記窪み40,40′を塑性加工により特設すれば、プレス成形に伴い悪化したインジェクタプレート36の平面度を、後述するように矯正し或いは向上させることができる。
上記窪み40,40′は、例えば縦・横辺がそれぞれ0.03mm前後の矩形状に形成され、また窪み深さは、窪み40,40′を設けることで後述するようにインジェクタプレート36の平面度を矯正又は向上させることができる範囲で、適宜に設定される。尚、窪み40,40′を、矩形状以外の形状、例えば円形、楕円形等に形成しても、インジェクタプレート36の平面度矯正・向上効果は達成可能である。
上記窪み40,40′は、後述するように、インジェクタプレート36の一次プレス成形の終了後において、窪み40,40′に対応した形状の小突起を有する二次成形用第1,第2パンチ(図示せず)を用いてインジェクタプレート36を二次プレス成形することで形成される。
また燃料通路FPの対応領域でインジェクタプレート36の下面36oに設けられる窪み40′の相互間隔は、例えば燃料通路FPの最も幅狭部(即ち案内通路38)の幅内に少なくとも2個の窪み40′が形成可能な程度の範囲に設定される。
尚、燃料通路FPよりも外側領域は、燃料通路FPに対応する領域よりも広範囲である関係で、より多数の窪み40を形成可能である。従って、その外側領域でインジェクタプレート36の上面36iに設けられる窪み40の相互間隔は、燃料通路FPの対応領域でインジェクタプレート36の下面36oに設けられる窪み40′の相互間隔よりも広めに設定してもよく、そのような広めの設定の場合でもインジェクタプレート36の平面度矯正・向上効果が十分に期待できる。
尚、本実施形態では、燃料通路FPよりも外側領域に設けられる多数の窪み40については、これらがインジェクタプレート36の上面36iのみに形成されるものを例示したが、上記外側領域に設けられる多数の窪み40をインジェクタプレート36の下面36oのみに形成してもよく、或いは、上下両面36i,36oに各々形成してもよい。
本実施形態において、インジェクタプレート36はプレス成形されるものであり、図4にそのプレス成形工程の一例を示す。インジェクタプレート36の最終製品と同形の円板状に予め加工された金属板よりなるワーク036は、図4(A)に示すように、先ずダイ50上に載置されると共に、パンチガイド52により外周部を抑えられる。次いで、ワーク036は、図4(B)に示すように、ダイ50と、パンチガイド52に沿って下降するパンチ51との間で加圧される。その加圧により、燃料通路FP(即ち中央油室37、案内通路38及び旋回室39)となる凹みがワーク036の一面、即ちインジェクタプレート36の上面36iにプレス成形される。
この場合、燃料通路FPの成形用凸部として機能するパンチ51の先部51aと、パンチ51を摺動可能に嵌合させるパンチガイド52のガイド孔52aとは、燃料通路FPの周面(特に後述する起立面部s)の横断面形状と同じに形成される。またダイ50には、パンチ51の先部51aに対応した成形用凹部50aが形成され、成形用凹部50aの内周面はテーパ面50atに形成される。
而して、上記したプレス成形工程によれば、パンチ51の先部51aによりインジェクタプレート36の対応部位が剪断成形され、その結果、プレス成形後のインジェクタプレート36の上面36iには、燃料通路FPとなる凹み、特に燃料通路FPの平坦な底面から略垂直に起立する起立面部sがパンチ51の先部51a形状に倣うように形成されると共に、起立面部sの上端に連なり且つ上方に向かって徐々に拡開する曲面部d(即ちダレ部分)がパンチ51の先部51aの周囲に形成される。一方、インジェクタプレート36の下面36oには、燃料通路FP(上記凹み)に対応した隆起部41がダイ50の成形用凹部50aに倣うように形成され、その隆起部41の外周面はテーパ面41tに形成される。
次に、前記実施形態の作用について説明する。コイル30を消磁した状態では、弁ばね22の付勢力で可動コア12及び弁体16が前方に押圧され、弁座8に着座させている。したがって、燃料フィルタ27及び入口筒25を通して弁ハウジング2内に供給された高圧燃料は、弁ハウジング2内に待機させられる。
コイル30を通電により励磁すると、それにより生ずる磁束が固定コア5、コイルハウジング31、弁ハウジング2及び可動コア12を順次走り、その磁力により可動コア12が弁体16と共に固定コア5に吸引され、弁体16が弁座8から離座するので、弁ハウジング2内の高圧燃料は、弁体16の平坦面17,17…、弁座8及び弁孔10を順次通過して燃料通路FPに移り、その燃料通路FPの中央油室37から複数の案内通路38に分岐し、放射状に拡散しながら複数の旋回室39に達する。
このとき、高圧燃料が各案内通路38から対応する旋回室39へ高速で接線方向に流入するため、流入燃料は旋回室39を高速で旋回することでスワールを付与され、しかも案内通路38を経て旋回室39に到達するまでの燃料流に急激な屈曲がなく、その流れがスムーズとなるから、燃料の速度損失も少ない。その結果、各旋回室39の燃料噴孔43からエンジンの被噴射部位(例えば吸気ポート)に向けて噴射される噴射燃料の微粒化促進が達成されて、良好な噴霧フォームが得られ、しかも燃料噴射の応答性が良好である。これにより、燃焼室内での燃料の燃焼性が高められ、また燃焼制御が精度よく行われる。
ところでインジェクタプレート36は、前述のようにプレス成形されるものであり、そのプレス成形と同時に、燃料通路FP(即ち中央油室37、案内通路38及び旋回室39)となる凹みがプレート一面に形成されるが、プレス成形後は、スプリングバックに因りインジェクタプレート36の平面度が悪化する虞れがある。
そこで、本実施形態では、インジェクタプレート36の上下両面36i,36oのうちの一方の面(実施形態では上面36i)に、燃料通路FPよりも外側領域において多数の微小な窪み40が相互に間隔をおいて設けられ、さらに燃料通路FPの対応領域において下面36oにだけ複数の微小な窪み40′が相互に間隔をおいて設けられる。この場合、上記窪み40,40′は、インジェクタプレート36の一次プレス成形(図4)の後、インジェクタプレート36を二次プレス成形することで形成される。
その二次プレス成形工程では、図示はしないが、例えばインジェクタプレート36の上面36iに対応した成形面を有し且つその成形面に窪み40成形用の多数の小突起を突設した第1パンチと、インジェクタプレート36の下面36oを受ける第1ダイとの間でインジェクタプレート36を強く挟圧(二次プレス成形)することで窪み40を形成可能であり、一方、インジェクタプレート36の下面36oに対応した成形面を有し且つその成形面に窪み40′成形用の多数の小突起を突設した第2パンチと、インジェクタプレート36の上面36iを受ける第2ダイとの間でインジェクタプレート36を強く挟圧(二次プレス成形)することで窪み40′を形成可能である。尚、成形条件によっては、上記第1及び第2パンチの相互間でインジェクタプレート36を挟圧して同プレート36の上,下面36i,36oに窪み40,40′を同時成形することも可能である。
上記のようにしてインジェクタプレート36の一次プレス成形(図4)の終了後に、平面度矯正用の窪み40,40′をインジェクタプレート36の特定領域に二次成形すれば、一次プレス成形で悪化するインジェクタプレート36の平面度が矯正された状態で窪み40,40′が塑性加工されることになる。その結果、インジェクタプレート36の窪み40,40′周辺の塑性変形部分がそれぞれ加工硬化することで、インジェクタプレート36の、窪み40,40′が設けられる特定領域の剛性が高められ、これにより、一次プレス成形後のスプリングバックが効果的に抑制される。
かくして、上記窪み40,40′の特設によれば、インジェクタプレート36のプレス成形に伴い悪化する平面度を容易に矯正し或いは向上させることができる。これにより、その平面度悪化に起因した不都合(例えば、インジェクタプレートの弁座部材端面への接合性悪化や、燃料通路内での燃料の円滑な流れの阻害等)を未然に効果的に防止可能となる。
また特に本実施形態のように、インジェクタプレート36の特定領域に複数(多数)の微小な窪み40,40′を相互に間隔をおいて配設すれば、同じ特定領域に少数の比較的大きな窪みを設ける場合と比べて、インジェクタプレート36の、窪み特設による剛性低下を抑制できる利点がある。
また本実施形態において上記窪み40の形成領域は、燃料通路FP(即ち中央油室37、案内通路38及び旋回室39)よりも外側領域であることから、窪み40の特設が燃料通路FP内での燃料の流れを干渉、阻害して燃料噴霧に影響を及ぼす虞れはない。
また本実施形態では、インジェクタプレート36の、燃料通路FPの対応領域においても、インジェクタプレート36の下面36o(外表面)だけには複数の微小な窪み40′が設けられており、これら窪み40′によってもインジェクタプレート36の平面度を矯正し或いは向上させることができる。この場合、インジェクタプレート36の下面36oは、燃料通路FPの対応領域であっても燃料通路FP内には臨んでいないため、その下面36oの窪み40′が燃料通路FP内での燃料の流れを干渉、阻害して燃料噴霧に影響を及ぼすような虞れはない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、燃料通路FPにおける案内通路38及び旋回室39の数や配列は、要求される燃料噴霧フォームの本数や形状に応じて適宜選定することができる。例えば、前記実施形態では、燃料通路FPの中央油室37(弁孔10との連通部)から案内通路38を放射状且つ直線状に延ばしたものを例示したが、本発明では、案内通路38を放射方向から周方向に多少傾斜して径方向外方側に延ばしたもの、或いは、案内通路38を多少カーブさせて曲線状に延ばしたものに適用してもよい。また案内通路38及び旋回室39の組の数は、実施形態では6組であるが、それ以外の任意の数、例えば4組でもよい。
また前記実施形態では、噴射燃料の微粒化を特に促進するために、燃料通路FPを複数の案内通路38と、各々の案内通路38の下流端が接線方向に開口する複数の旋回室39とを組み合わせた通路構成としているが、本発明の燃料通路の通路構成は前記実施形態に限定されず、少なくとも弁孔10から燃料噴孔43に向けてスムーズに燃料を案内し得る通路構成であればよい。例えば、前記特許文献1に示されるように、旋回室を省略して複数の案内通路の下流端部底面に燃料噴孔を開口させるような燃料通路においても本発明を適用可能である。
また前記実施形態では、インジェクタプレート36と弁座部材3との結合手段として、レーザビームによる全周溶接wが例示されたが、その結合手段は、溶接手段に限定されない。即ち、インジェクタプレート36と弁座部材3との間を全周に亘り液密に結合し得る結合手段であれば、種々の結合手段を採用可能である。
また前記実施形態では、インジェクタプレート36は、その板厚が例えば0.1mm前後の薄肉の板状であるものを例示したが、本発明は、実施形態よりも厚肉又は更に薄肉の(但しプレス成形で燃料通路FP(案内通路38及び旋回室39)を精度よく成形可能な程度の肉厚の)インジェクタプレートにも実施可能である。
FP・・・・・燃料通路
I・・・・・・燃料噴射弁
3・・・・・・弁座部材
8・・・・・・弁座
10・・・・・弁孔
16・・・・・弁体
36・・・・・インジェクタプレート
36i・・・・上面(弁座部材との対向面)
36o・・・・下面(外表面)
37・・・・・中央油室(連通部)
38・・・・・案内通路
39・・・・・旋回室
40,40′・・窪み
43・・・・・燃料噴孔
I・・・・・・燃料噴射弁
3・・・・・・弁座部材
8・・・・・・弁座
10・・・・・弁孔
16・・・・・弁体
36・・・・・インジェクタプレート
36i・・・・上面(弁座部材との対向面)
36o・・・・下面(外表面)
37・・・・・中央油室(連通部)
38・・・・・案内通路
39・・・・・旋回室
40,40′・・窪み
43・・・・・燃料噴孔
Claims (4)
- 弁座(8)、及び該弁座(8)の中心部を貫通する弁孔(10)を有する弁座部材(3)と、前記弁座(8)と協働して前記弁孔(10)を開閉する弁体(16)と、燃料噴孔(43)を有して前記弁座部材(3)の外端面に結合されるインジェクタプレート(36)とを備え、前記インジェクタプレート(36)が、プレス成形された金属板で構成される電磁式燃料噴射弁において、
前記インジェクタプレート(36)の、前記弁座部材(3)との対向面(36i)には、前記弁孔(10)から前記燃料噴孔(43)に向けて燃料を案内する燃料通路(FP)が凹設されると共に、その燃料通路(FP)の、前記弁座部材(3)側の開放面が該弁座部材(3)で塞がれており、
前記インジェクタプレート(36)の、前記弁座部材(3)との対向面(36i)および前記弁座部材(3)とは反対側の外表面(36o)のうちの少なくとも一方の面(36i)には、前記燃料通路(FP)よりも外側領域の少なくとも一部において窪み(40)が設けられることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。 - 前記インジェクタプレート(36)の前記外表面(36o)には、前記燃料通路(FP)に対応する領域の少なくとも一部において窪み(40′)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の電磁式燃料噴射弁。
- 前記窪み(40,40′)は複数有って、相互に間隔をおいて配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁式燃料噴射弁。
- 前記燃料通路(FP)は、前記弁孔(10)との連通部(37)から所定方向に延びる案内通路(38)と、前記案内通路(38)の下流端に接続されて前記弁孔(10)から該案内通路(38)を経て流入した燃料を旋回させ且つ底部に前記燃料噴孔(43)の上流端を開口させた旋回室(39)とを少なくとも有していることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の電磁式燃料噴射弁。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016249467A JP2018105138A (ja) | 2016-12-22 | 2016-12-22 | 電磁式燃料噴射弁 |
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JP2016249467A JP2018105138A (ja) | 2016-12-22 | 2016-12-22 | 電磁式燃料噴射弁 |
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JP2018105138A true JP2018105138A (ja) | 2018-07-05 |
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JP (1) | JP2018105138A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2016
- 2016-12-22 JP JP2016249467A patent/JP2018105138A/ja active Pending
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