JP2018104865A - 繊維処理剤、及び該繊維処理剤の使用方法 - Google Patents

繊維処理剤、及び該繊維処理剤の使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】吸放湿性、制電性、好タッチ感、スキンケア効果等の諸特性を安定的に且つ強固に繊維に付与できる繊維処理剤を提供する。【解決手段】成分(a)〜(c)及び界面活性剤を含有する繊維処理剤であって、該繊維処理剤の全質量に対して、前記界面活性剤を0.05〜3.0質量%含有してなる、繊維処理剤及び該繊維処理剤の使用方法。(a)水に不溶であり、平均粒径が0.1〜8μmである、卵殻膜微粉末、(b)リン脂質ポリマー、(c)下記(c1)又は(c2)のいずれか一方又は双方を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。(c1)シリコーン含有ポリアクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂及び非水溶性ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。【選択図】なし

Description

本発明は繊維処理剤、及び該処理剤の使用方法に関する。
市場に流通されている繊維製品は、一般に、綿、麻、羊毛等の天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維、あるいはこれらの複合繊維を製織等してなるものである。また、衣類、家具・車両内装、こと座席素材として使われる人工皮革または合成皮革も、広義には繊維製品の一形態である。
繊維製品は、その種類により求められる特性も多種多様であり、例えば、衣類等の人肌に触れる繊維製品にあっては、吸放湿性、吸水性、制電性、スキンケア効果(肌質改善効果、保湿性の向上、肌柔軟性ないし肌弾力性の向上を総称して呼ぶ。以下同)等の特性が求められている。
しかしながら、繊維製品に対してこれらの特性を確実に発現させるには、前記した繊維自体が有する特性だけでは限界があった。
そこで、繊維や繊維製品に対して、吸放湿性、触感、制電性等の諸特性を付与するために、親水性材料を含有する繊維処理剤が各種提供されている。例えば、ポリウレタン100重量部に対して卵殻膜微粒子を10〜300重量部配合してなる吸湿性に優れたポリウレタン樹脂組成物が提供されている(例えば、特許文献1)。また、水溶性卵殻膜と、反応基を有する反応性有機化合物を含有し、上記スキンケア効果、吸湿性、創傷治療性を備えた繊維処理剤が提供されている(例えば、特許文献2)。更には、平均粒径が7μmである、シルク等の天然有機微粉末とポリアクリル系樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン系樹脂等のエマルジョンからなる繊維処理剤も提供されている(例えば、特許文献3)。
また上記卵殻膜やシルク等の天然有機微粉末以外に、繊維等に対して優れたスキンケア効果を付与することが期待される材料として、リン脂質(MPC)ポリマーがある。リン脂質ポリマーは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体の一つとするポリマーであり、分子骨格中に細胞膜と同じリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)を含有する生体適合性ポリマーである。例えば、上記MPCポリマーを繊維布帛に接触させる処理が提案されている(例えば特許文献4、特許文献5)。
特許第3009499号公報 特開2004−84154号公報 特許第2970794号公報 特許第3485056号公報 特開2002−146676号公報
上述の卵殻膜等の微粒子を含有する繊維処理剤においては、該微粒子の沈降安定性に課題が残り、該繊維処理剤を長時間の連続加工処理に供した際、加工開始時に処理した製品と時間経過後に処理した製品では、繊維への微粒子の付着量が異なるなど、性能のバラつきが生じる問題があった。
また上述のリン脂質ポリマーを接触させる処理では、若干の吸水性・吸湿性の向上は認められるもの、該ポリマーの付着が繊維布帛の表面のみにとどまり、高い吸水性や吸湿性
の獲得は難しく、耐久性についても期待できるものではなかった。
本発明は上記の事情に基いてなされたものであり、吸放湿性、制電性、好タッチ感、スキンケア効果等の諸特性を繊維に対して付与できる繊維処理剤を提供すること、特にこれらの諸特性を安定的に且つ強固に付与できる繊維処理剤を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーとを組み合わせることにより、これまで卵殻膜微粒子の採用において問題とされた沈降安定性が大きく改善されることを見出した。
そしてこれらを組み合わせることにより、上記の諸特性を発現するために十分な量の卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーを繊維に対して強固且つ持続的に安定して付着させることができ、卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーがそれぞれ有するスキンケア効果をはじめとする諸特性を繊維布帛に対して相乗的に付与できることを見出した。
すなわち本発明は、下記成分(a)、成分(b)、成分(c)及び界面活性剤を含有する繊維処理剤であって、該繊維処理剤の全質量に対して、前記界面活性剤を0.05〜3.0質量%含有してなる、繊維処理剤に関する。
(a)水に不溶であり、平均粒径が0.1〜8μmである、卵殻膜微粉末、
(b)リン脂質ポリマー、
(c)下記(c1)又は(c2)のいずれか一方又は双方を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
(c1)シリコーン含有ポリアクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂及び非水溶性ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
好適な態様において、前記成分(b)リン脂質ポリマーは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートとのコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)とのコポリマー、及び2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとステアリルメタクリレートとのコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種であることが望ましい。
本発明の繊維処理剤において、好ましくは、前記成分(a)、成分(b)及び成分(c)は、それらの質量比を、固形分換算にて、成分(a):成分(b):成分(c)を10〜80質量部:0.5〜40質量部:10〜89.5質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)にて配合することが好ましい。
また本発明は、前記繊維処理剤の使用方法も対象とする。
すなわち、前記繊維処理剤を繊維布帛に接触させる接液工程、及び、繊維処理剤を接液させた繊維布帛を乾燥させる乾燥工程、を含む繊維処理剤の使用方法に関する。
ここで、前記繊維処理剤の成分(c)が成分(c2)を含む場合には、前記乾燥工程の前に、繊維処理剤を接液させた繊維布帛上で、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)を重合させる重合工程をさらに含むことが好ましく、このとき、繊維処理剤を接液させた繊維布帛の繊維に、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)をグラフト重合させることが好ましい。
本発明の繊維処理剤は、分子内にアニオン基とカチオン基の双方を有するホスホリルコリン基が存在するリン脂質ポリマーが、卵殻膜微粉末の分散安定性向上に寄与することで
、極めて安定な水分散体水溶液となり、これを長時間の連続加工処理に供した際においても、上記の性能を繊維に対して安定的に付与することができる。
また、本発明の繊維処理剤は、平均粒径が0.1〜8μmと粒径の非常に小さい卵殻膜微粉末を用いているため、該微粒子が繊維間に確実に浸透し、そして繊維に確実且つ強固に付着できる。加えて、バインダーとして、エマルジョン又は水溶液の形態にある合成樹脂や、2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を用いることで、卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーとを、さらに強固に繊維に付着できる。
従って本発明の繊維処理剤は、卵殻膜微粉末が有する諸特性である吸放湿性、吸水性、肌柔軟性ないし肌弾力性の向上といったスキンケア効果などと、リン脂質ポリマーが有する角層細胞間脂質の相互作用による角質層の皮膚バリア機能を高める効果、また、界面活性剤や紫外線吸収剤などの皮膚刺激性物質に対する毒性緩和効果など、極めて優れたスキンケア効果などを相乗的に、そして安定的且つ耐久性よく繊維に付与することができる。
そして本発明の繊維処理剤を用いることにより、上述の諸特性を有する繊維布帛を製造することができる。
本発明の繊維処理剤は、繊維表面の処理を行うための繊維処理剤であって、下記の成分(a)、成分(b)及び成分(c)、さらに界面活性剤を含む。
以下、各成分を詳述する。
<成分(a)卵殻膜微粉末>
成分(a)の卵殻膜微粉末は、例えば、ニワトリ、アヒル、ウズラ、ダチョウなどの鳥類の卵の卵殻と卵白の境界に存在する、二重の薄膜である卵殻膜を分離精製して、次いで凍結粉砕、低温粉砕、回転砥石を使い水系で行う粉砕手段(湿式粉砕手段)、あるいはボールミルやハンマーミルを使った衝撃による粉砕手段(乾式粉砕手段)等の公知の粉砕手段により微粉末化したものである。この卵殻膜微粉末は、ケラチンを主成分とする均質な蛋白質よりなり、吸湿性に優れかつ白色ないし淡黄色の微粉末であるため、繊維処理剤の構成成分として使用することにより、処理対象である繊維に対して吸湿性、風合い、吸放湿性、吸水性、制電性、好タッチ感に加えて、保湿性の向上や肌柔軟性ないし肌弾力性の向上といったスキンケア効果などの、卵殻膜微粉末が有する諸特性を付与することができる。
本発明の卵殻膜微粉末は、水に不溶のものを採用する。水溶性の卵殻膜微粉末や当該微粉末を分散した分散液は、メルカプチド誘導体を生成するメルカプト基(−SH)が多量に含まれることとなり、当該メルカプト基特有の臭気が発生するため、例えば、繊維布帛等に浸漬・乾燥処理させたのみでは、臭気が残存し、致命的な欠点となる。一方、本発明では、上記のごとく水に不溶の卵殻膜微粉末を採用することで、メルカプト基に起因する卵殻膜特有の異臭を発することもなく、使用者に不快感を与えることもない。
前述の卵殻膜から水不溶性卵殻膜を選択的に得るには、例えば、ニワトリ、アヒル、ウズラ、ダチョウ等の鳥類の卵の卵殻と卵白の境界に存在する2重の薄膜(卵殻膜)を分離精製し、次いで凍結粉砕、低温粉砕、あるいはボールまたはハンマーを使った衝撃による乾式粉砕等公知の方法により、微粒子化することで得られる。
本発明で使用する水に不溶の卵殻膜微粉末は、その平均粒径が0.1〜8μmであるものを採用する。本発明において平均粒径とはレーザ回折式粒度分布測定装置で測定した50%径(X50、D50ともいう)として得られた値をいう。平均粒径が0.1〜8μmである卵殻膜微粉末を採用することにより、該卵殻膜微粉末が繊維間に確実に浸透し、また繊維に確実かつ強固に付着することが可能となる。これに対して、卵殻膜微粉末の平均粒径が0.1μmより小さいと、粒子自体の製造が困難となり、また凝集しやすくなるなど取り扱いが困難となる。一方、卵殻膜微粉末の平均粒径が8μmを超えると、処理対象
の繊維布帛が濃色である場合には白浮き部が生じたり、また卵殻膜微粉末が繊維間に浸透できず、繊維から脱落し易くなる。これらの点から、卵殻膜微粉末の平均粒径は、1〜6μmであればさらに好ましい。
<成分(b)リン脂質ポリマー>
本発明で使用する成分(b)のリン脂質ポリマーとしては特に限定されないが、入手のし易さに加え、処理繊維の吸湿性、感触の良さといった効果の点から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン[以下MPCと称する、別名:2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート]をモノマーとして採用し、該MPCの単独重合体や、該MPCと共重合可能なモノマーとの共重合体を挙げることができる。
前記共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物(これら化合物中のアルキル基は分枝していてもよい);メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
上記MPCの重合体、並びにMPCと共重合可能なモノマーとの共重合体は、従来公知の重合法によって、例えば水性媒体中で溶液重合を行うことで、製造できる。
上記水性媒体とは、水と容易に混合可能な溶媒であれば特に制限はなく、水単独;水と有機溶媒との混合物;有機溶媒単独が挙げられ、特に水単独;水と有機溶媒との混合物が好ましい。使用可能な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられ、これらの中の1種以上が使用される。
中でも本発明では、成分(b)のリン脂質ポリマーとして、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートとのコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)とのコポリマー、及び、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとステアリルメタクリレートとのコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を採用することが好ましい。
<(c)エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー>
成分(c)は、前記成分(a)卵殻膜微粉末と(b)リン脂質ポリマーを繊維に強固に付着させるバインダー成分である。
本発明では上記バインダー成分として、(c1)シリコーン含有ポリアクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂及び非水溶性ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー、及び/又は、(c
2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーを用いる。
繊維処理剤において、一般にバインダー成分として、例えば、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、シリコーン含有ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらの一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では、成分(c1)エマルジョン又は水溶液の形態にあるシリコーン含有ポリアクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂、非水溶性ポリウレタン系樹脂を採用することにより、これを繊維処理剤に配合した際、繊維に対して(a)卵殻膜微粉末及び(b)リン脂質ポリマーを多量に付着させることができ、かつ、繊維に対して(a)卵殻膜微粉末(b)リン脂質ポリマーをより強固に付着させることができ、洗濯に対するこれら成分の耐久性(保持性)を向上させることができるため好ましい。
上記シリコーン含有ポリアクリル系樹脂は、シリコーン含有アクリルモノマーであるシロキサン、変成シリコーンをエステル残基に含むアクリレートまたはメタクリレートの重合体や、これらシリコーン含有アクリルモノマーとアクリル系モノマーとの共重合体を使用するようにしてもよい。後者の例として、アクリル系モノマーであるポリエチレングリコール等の親水性基のアクリレートまたはメタクリレート、脂肪鎖アルキルのアクリレートまたはメタクリレート等の重合体が挙げられる。
ポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネートと長鎖ジオール、並びに必要に応じて低分子鎖伸長剤とを反応させて得られるポリウレタン系弾性体樹脂であり、具体的には、有機ジイソシアネートとして、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、又はブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサンイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネートと、長鎖ジオールとして、例えばポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリエーテル系ジオール、ポリエチレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート系ジオール、又はポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル系ジオールと、必要に応じて低分子鎖伸長剤として、例えばエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール等の芳香族ジオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノ酸ヒドラジド等のヒドラジン誘導体とから得られるポリウレタン樹脂である。これらは無溶剤で反応させた後極性溶剤中に溶解してもよいし、極性溶剤中で反応させてもよい。また、反応させる方法としては、前記した三者を同時に反応させるワンショット法でも、有機ジイソシアネートと長鎖ジオールとをあらかじめ反応させた後、必要に応じて低分子鎖伸長剤で鎖伸長反応させる方法でもよい。
また本発明では、バインダー成分として(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーを採用することによって、(a)卵殻膜微粉末及び(b)リン脂質ポリマーを繊維に強固に付着させることができる。
上記2官能性単量体としては、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
Figure 2018104865
ここで式(1)中、Rは
Figure 2018104865
−C2n−(ここで、nは1〜6の整数を示す。)のうちいずれかを表す。Zは水素原子又はメチル基を表す。aおよびbはa+bが0〜50の範囲にある正の整数を表し、xおよびyはx+yが0〜30の範囲にある0又は正の整数を表す。また、a+b+x+yは10以上である。
上記少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体の具体例としては、下記一般式で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2018104865
前記a)卵殻膜微粉末及び(b)リン脂質ポリマーと、上記(c)バインダーとして2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を、好ましくは後述するようにラジカル重合開始剤とともに繊維に付着させた後、スチーミング処理することにより、繊維表面にバインダーとして強固に固着したナノレベルの皮膜を形成し、耐久性よく卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーを繊維に固着させることが可能となる。
また成分(a)、成分(b)及び成分(c)は、それらの質量比が、固形分換算にて、成分(a):成分(b):成分(c)=10〜80質量部:0.5〜40質量部:10〜89.5質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)とすることが好ましい。例えば成分(a):成分(b):成分(c)=10〜80質量部:0.5〜10質量部:10〜89.5質量部、あるいは同=15〜75質量部:0.5〜5質量部:20〜84.5質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)などとすることができる。
また例えば、固形分換算にて、成分(a):成分(b):成分(c)=50〜80質量部:1〜10質量部:10〜40質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)とすることができる。
もしくは例えば、固形分換算にて、成分(a):成分(b):成分(c)=10〜40質量部:0.5〜10質量部:50〜80質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)などとすることができる。
あるいは例えば成分(a):成分(b):成分(c)=10〜40質量部:10〜40質量部:20〜80質量部、あるいは同=10〜40質量部:10〜30質量部:30〜70質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)などとすることもできる。
<界面活性剤>
なお、本発明の繊維処理剤には、前記の成分(a)、成分(b)及び成分(c)に加えて、界面活性剤添加することにより、卵殻膜微粉末が繊維内部へ浸透しやすくなり、ひいては繊維の洗濯耐久性を向上させることができる。
界面活性剤の種類としては、特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤といった公知の界面活性剤を使用することができ、具体的には、p−ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシリン酸二ナトリウム等のアニオン界面活性剤や、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド等のカチオン界面活性剤や、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル等のノニオン界面活性剤や、ラウリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらの一種を単独で、または、二種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの界面活性剤は、本発明の繊維処理剤の全質量に対して、前記界面活性剤を0.05〜3.0質量%の割合にて添加することが好ましく、0.5〜1.0質量%の割合にて添加することが特に好ましい。界面活性剤の添加量が0.05質量%より少ないと、卵殻膜微粉末の凝集や該粒子の繊維処理剤からの分離が起こり得、加工時に繊維に浸透しにくくなる場合があり得る。一方、添加量が3.0質量%を超えると、界面活性剤が前述のバインダー成分の機能を阻害し、その結果、卵殻膜微粉末やリン脂質ポリマーが繊維から脱落しやすくなり、洗濯耐久性が低下してしまう場合があり得る。
本発明の繊維処理剤には、さらに溶媒を含み得、このとき用いられる溶媒としては特に制限はないが、水や、アルコール類、ジメチルホルムアミド、アセトン、グリオキサール系樹脂、エポキシ系樹脂等の公知の有機溶媒が挙げられ、これらの一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
この中でも、肌への刺激が小さく生体への影響が小さいことから、溶媒として、水性溶媒を用いることが好ましく、特に、水および/または炭素原子数1〜3の脂肪族低級アルコールを用いることが好ましい。
かかる炭素原子数1〜3の脂肪族低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらは一種を単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
このように本発明の繊維処理剤は、有機溶剤を含まない構成も取れるため、塗布によっても使用環境が好ましい皮膜を繊維上に形成することができる。
また、本発明の繊維処理剤には、前記成分(a)、成分(b)、成分(c)及び界面活性剤、そして溶媒のほか、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、必要に応じて公知の添加剤を適宜添加することができる。このような添加剤としては、分散剤、増粘剤、イオン化剤、防腐剤などが挙げられる。
また後述するように、成分(c)として(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーを採用した場合には、過酸化カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、ターシャリーブチルパーオキシド等のラジカル重合開始剤を添加してもよい。
本発明の繊維処理剤は、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び界面活性剤、そして必要に応じて前記各種添加剤を、溶媒と混合、撹拌して、液体成分中に各成分を分散させることにより、簡便に調製することができる。この場合にあっては、成分(a)、成分(b)、成分(c)及び界面活性剤を同時に溶媒成分に分散、希釈させてもよいし、いずれかの成分を先に分散、希釈させ、その後残りの成分を分散、希釈させるようにしてもよい。
一例として、好適な繊維処理剤の製造方法を挙げると、まず界面活性剤を溶媒と混合し、次いで(b)リン脂質ポリマー、次いで(a)卵殻膜微粉末、次いで(c)マルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーの順に混合し、繊維処理剤を製造する。
なお成分(a)卵殻膜微粉末と成分(c)バインダーは、通常の撹拌程度で混合しただけでは、成分(a)卵殻膜微粉末の分散が悪く、そのため、当該微粉末の凝集物が生じたり、処理後に繊維から脱落を生じやすくなることから、成分(b)リン脂質ポリマーの併用が重要である。
中でも混合成分にボールミル処理を施すことにより、(a)卵殻膜微粉末の分散性に優れたものとなり、また、該微粉末がボールミルによって圧力が加えられることより、(b)リン脂質ポリマー及び(c)バインダーの該微粉末への浸透あるいは密着性が高まり、さらに得られた繊維処理剤の繊維への付着性が向上する。
また、ボールミルにより処理することで、(a)卵殻膜微粉末がより微細化され、(b)リン脂質ポリマーとあいまって風合いの向上にもつながる。
このように、本発明の繊維処理剤を構成する各成分の混合には、ボールミル程度の効果を有する微粉砕混合が望まれ、媒体撹拌ミルなども使用可能である。
本発明の繊維処理剤の処理対象となる繊維としては、特に制限はないが、綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維や、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成繊維、あるいはこれらから選択される複数種からなる混紡繊維や複合繊維等が挙げられる。
対象となる繊維は、繊維自体はもちろんのこと、繊維を織り上げた繊維布帛であってもよい。このような繊維布帛の形態も特に限定されず、織物、編物、不織布等が挙げられる。また、精練、染色、抗菌加工、SR加工、防炎加工、帯電防止加工等の各処理、加工が施されたものであってもよい。また、衣類、肌着等の縫製品や手袋、靴下、寝具(シーツ、カバー、布団側等)の製品に加工したものであってもよいし、加工する前のものであってもよい。
また本発明の繊維処理剤で処理される対象は、繊維ばかりでなく合成皮革等、積層体の
1つの層または積層体の一部として繊維や繊維布帛と合わせた積層状のものも挙げられる。
なお、本発明の繊維処理剤による効果を十分に発揮するために、少なくとも積層体の表面に露出する最外層が本発明の繊維処理剤によって処理されていることが望ましい。
前記は例示であって、これに限定されるものではない。
本発明の繊維処理剤を用いる繊維や繊維布帛の処理方法、すなわち繊維処理剤を繊維や繊維布帛に接触させる接液工程の実施方法としては特に限定されず、任意の方法が適用でき、例えば、コーティング法、浸漬(ディッピング)法、パディング法等を使用できる。コーティング法の例としては、グラビアコート法、ナイフコート法、ロールコート法等がある。浸漬法の例としては、室温静置法、加熱撹拌法等が挙げられる。パディング法としては、パッドドライ法、パッドスチーム法等がある。
前記接液工程の後、繊維処理剤を繊維に強固に固着させるべく、乾熱処理(加熱乾燥)、マイクロ波照射処理、電子線照射処理、スチーミング処理(湿熱処理)などが実施され得る。これらは処理対象となる繊維の種類、あるいは要求される処理条件などに基いて、適切な処理方法を適宜選択することができる。
このようにして処理された繊維(繊維布帛、これらの繊維や合成皮革を積層の一部に含む積層体を含む、以下同)は、乾燥工程にかけることにより、水分が好適に除去され、卵殻膜微粉末及びリン脂質ポリマーが繊維等に付着する。乾燥温度は、特に制限はないが、例えば、80〜200℃程度とすればよく、100〜180℃程度とすることが好ましい。
乾燥工程の後、さらに形態安定化、幅出し・幅固定、防縮、シワ除去などを目的として、ヒートセット仕上げ加工が実施され得る。
また本発明は、前記繊維処理剤を繊維布帛に接触させる接液工程、及び、繊維処理剤を接液させた繊維布帛を乾燥させる乾燥工程、を含む、改質繊維布帛を製造する方法も対象とする。ここで接液工程及び乾燥工程は、例えば上述した手順にて実施できる。
特に、前記(c)バインダー成分として、成分(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーを採用した場合には、繊維処理剤を接液させた繊維布帛上で、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)を重合させる重合工程を含むことが好ましく、好適には、繊維処理剤を接液させた繊維布帛の繊維に、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)をグラフト重合させることが好ましい。該重合工程は、スチーミング処理(湿熱処理)、マイクロ波照射処理、電子線照射処理、紫外線照射処理を施すことにより実施され得る。
改質繊維布帛を製造する方法の一例を挙げる。まず接液工程を例えばパディング法で実施する。繊維布帛に繊維処理剤を接触(例えば浸漬)させた後、必要に応じて繊維布帛を絞り、繊維処理剤の付着量を調整する。さらに、必要に応じて50〜130℃程度で加熱乾燥(乾熱処理)する。
前記(c)バインダー成分として、成分(c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含むエマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダーを採用した場合、続いて重合工程を実施する。スチーミング処理を採用する場合には、例えば、水蒸気を満たした90〜140℃程度の雰囲気中にて1〜90分間程度処理する。スチーミング処理することにより、繊維表面にバインダーとして強固に固着したナノレベルの皮膜を形成し、耐久性よく卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーを繊維に固着させることが可能となる。
そして乾燥工程を実施する。所望により、ヒートセット仕上げ加工を施してもよい。
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。
例えば、前記した態様では、卵殻膜微粉末を微粉末化する手段として所定の湿式粉砕手段や乾式粉砕手段を挙げたが、これらには限定されず、他の粉砕手段を使用するようにしてもよい。
その他、本発明の実施における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない
[調製例1:成分(a)水不溶性卵殻膜微粉末の調製]
水不溶性卵殻膜の乾燥品(キユーピー(株)製)を、市販のボールミル装置により粉砕して微粉末化し、平均粒径が5.0μmの水不溶性卵殻膜微粉末を得、以下の実施例及び比較例において、成分(a)として使用した。
[実施例1:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表1に示す割合にて、水、界面活性剤、(b)リン脂質ポリマー、(a)卵殻膜微粉末、(c)水溶性ポリウレタン樹脂の順にボールミルに投入し、混合、撹拌、分散処理することにより、実施例1の繊維処理剤を得た。
Figure 2018104865
常法にて、精練、染色乾燥後のポリエステル加工糸織物(目付:180g/m)を、実施例1の繊維処理剤を5%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ(浸漬前の被処理布に対する付着した処理剤の質量比率、以下同):95%)、130℃で乾燥した後、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[比較例1:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表1に示すように、実施例1の繊維処理剤の処方より(b)リン脂質ポリマーを抜いた処方にて、実施例1と同様の手順で比較例2の繊維処理剤を得た。
常法にて、精練、染色乾燥後のポリエステル加工糸織物(目付:180g/m)を、比較例1の繊維処理剤を5%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ:95%)、130℃で乾燥した後、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[実施例2:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表2に示す割合にて、水、界面活性剤、(b)リン脂質ポリマー、(a)卵殻膜微粉末、(c)2官能性単量体、(c)多官能アジリジン化合物、過硫酸アンモニウムの順にボールミルに投入し、混合、撹拌、分散処理することにより、実施例2の繊維処理剤を得た。
Figure 2018104865
常法にて、精練、乾燥後のポリエステルスパン織物(目付:110g/m)を、実施例2の繊維処理剤を10%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ:70%)、110℃の飽和水蒸気中で5分間スチーミング処理後、120℃で乾燥し、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[比較例2:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表2に示すように、実施例2の繊維処理剤の処方より(b)リン脂質ポリマーを抜いた処方にて、実施例2と同様の手順で比較例2の繊維処理剤を得た。
常法にて、精練、乾燥後のポリエステルスパン織物(目付:110g/m)を、実施例2の繊維処理剤を10%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ:70%)、110℃の飽和水蒸気中で5分間スチーミング処理後、120℃で乾燥し、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[実施例3:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表3に示す割合にて、水、界面活性剤、(b)リン脂質ポリマー、(a)卵殻膜微粉末、(c)シリコーン含有アクリル樹脂エマルジョンの順にボールミルに投入し、混合、撹拌、分散処理することにより、実施例3の繊維処理剤を得た。
Figure 2018104865
常法にて、精練、乾燥後のポリエステル綿混80:20スパン織物(目付:150g/m)を、実施例3の繊維処理剤を7%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ:65%)、130℃で乾燥後、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[比較例3:繊維処理剤の調製及び繊維布帛の製造]
表3に示すように、実施例3の繊維処理剤の処方より(b)リン脂質ポリマーを抜いた処方にて、実施例3と同様の手順で比較例2の繊維処理剤を得た。
常法にて、精練、乾燥後のポリエステル綿混80:20スパン織物(目付:150g/m)を、実施例3の繊維処理剤を7%水分散液に希釈し、この希釈液に浸漬した後、ロール間圧力が4.0kg/cmのマングルにて絞り(ピックアップ:65%)、130℃で乾燥後、150℃で仕上げセットを行い、供試布を得た。
[試験例1:液安定性試験]
前述の実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例3の繊維処理剤を5%水分散液となるように水で希釈・撹拌し、水分散液を得た。分散液調製直後、並びに、調製後2時間経過後に、これらをポリエステル黒染タフタ目付65g/mを濾過布として用いて濾過し、該濾過布への繊維処理剤の残渣の状態を目視にて確認し、表4に示す評価基準にて液安定性を評価した。得られた結果を表5に示す。
Figure 2018104865
Figure 2018104865
表5に示すように、(b)リン脂質ポリマーを添加した実施例1乃至実施例3の繊維処理剤の水分散液の沈降安定性は、分散液調製後2時間経過後においても安定した状態であり、長時間の連続加工においても安定して生地への加工行うことが可能であることが確認された。
[試験例2:吸湿性試験]
実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例3で調製した供試布に対して、下記方法にて吸湿性試験を実施した。
また何れの例においても、ブランク生地(実施例及び比較例の繊維処理剤による処理を未実施)、調製後即加工(繊維処理剤調製後、直ちに処理を実施):初期(洗濯処理なし)及び20HL(下記の家庭洗濯処理:20回実施)、調製後2時間後加工(繊維処理剤調製後、2時間経過後に処理を実施):初期(洗濯処理なし)及び20HL(下記の洗濯処理:20回実施)の5種の供試布にて、吸湿性試験を実施した。
なお洗濯は、洗濯試験JIS L−0217 103法に基づいて以下のようにして行った。
試験装置の水槽の標準水量を示す水位線まで液温40℃の水を入れ、これに標準使用量となる割合で洗濯用合成洗剤を添加して溶解し、洗濯液とする。この洗濯液に浴比が、1対30になるように試料を投入して運転を開始する。5分間処理した後、運転を止め、試料を脱水機で脱水し、次に洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて、同一の浴比で2分間すすぎ洗いを行う。2分間のすすぎ洗いを行った後、運転を止め、試料を脱水し、再び2分間すすぎ洗いを行い、脱水し、直接日光の影響を受けない状態でつり干しまたは平干しする。その後、必要に応じて素材繊維の適正温度でドライアイロン仕上げを行う。
<吸湿性試験 吸湿質量差(ΔMR)試験>
吸湿率H(%)は下記関係式により算出される。
H(%)={(H−H)/H}×100(%)
:絶乾質量、供試布を120℃で3時間乾燥した後の質量。
:吸湿質量、上記乾燥後の供試布を、上記の所定の温湿度雰囲気下に6時間以上放置して調湿した後の質量。
本試験では、温湿度雰囲気として、衣服内気候に相当する30℃×90%RHと、外気に相当する20℃×65%RHとの2種類の環境を設定し、これら各環境下での吸湿率H(%)より、吸湿質量差ΔMRを算出した。なお、実験回数5回の平均値をもってその測定値とした。
ΔM=(30℃×90%RH環境下に24時間放置したときの吸湿率)−(20℃×65%RH環境下に24時間放置したときの吸湿率)
一般に、未加工ポリエステル布のΔMRは0.1、綿素材の布のΔMRは4.0であり、素材の吸湿性を反映して、ΔMRの値は大きくなる。
得られた結果を表6乃至表8に夫々示す。
Figure 2018104865
Figure 2018104865
Figure 2018104865
表6乃至表8に示すように、本発明の繊維処理剤による処理を経た実施例の繊維布帛は、未加工ポリエステルのΔMR値:0.1に対して、いずれも高いΔMR値を示し、吸湿性の高い卵殻膜微粉末の固着を反映した結果となった。また20回の洗濯処理を経た後においても高いΔMR値を維持しており、耐久性にも優れる結果となった。
また実施例と比較例のΔMR値を比較すると、繊維処理剤調製直後は近似したΔMR値を示す一方、調製後2時間経過後では、実施例では調製直後とほぼ同じΔMRであったものの、比較例のΔMRは大きく減少する結果となった。これは、リン脂質ポリマーの配合の有無により、調製後2時間経過後の卵殻膜微粉末の沈降分離の差を反映した結果といえる。すなわち、リン脂質ポリマーの配合により、実施例の繊維処理剤では調製後に時間が経過した場合であっても卵殻膜微粉末の分散状態が好適に保たれ、より高い卵殻膜微粉末の固着を示す結果となったといえる。
また(c)バインダーとして2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を用いた実施例2のΔMRが最もブランク生地とのΔMRとの差が大きく、より高い卵殻膜微粉末の固着を示す結果となった。
[試験例3]
試験例2と同様に5種の供試布に対して、下記方法にて繊維表面のリン脂質成分(リン脂質ポリマー)の固着を確認した。
<リン脂質成分量:P/C原子数比>
作製した繊維布帛を1cm×1cmに切断し、アセトンで脱脂処理を行った後、X線光電子分光装置(ESCA3300、(株)島津製作所製)により表面分析を行い、繊維布帛に導入されたリン脂質成分量の評価として、P/C原子数比値を測定した。装置の測定限界は0.03%であった。肌へのスキンケア効果を示すには、0.1%以上が必要とされる。
得られた結果を表9乃至表11に夫々示す。
Figure 2018104865
Figure 2018104865
Figure 2018104865
表9乃至表11に示すように、本発明の繊維処理剤による処理を経た実施例の繊維布帛播、いずれもリン脂質成分(リン脂質ポリマー)の固着が確認でき、また20回の洗濯処理を経た後においても高いP/C原子数比値を維持しており、耐久性にも優れる結果となった。
以上の試験例の結果より、本発明の繊維処理剤が、スキンケア効果を示す卵殻膜微粉末とリン脂質ポリマーを繊維に固定化できる点、特に長時間の連続加工処理に供した際においても安定的にこれらを固定化でき、スキンケア効果を付与することができる点、さらに、高い耐久性をも有している点が確認された。
本発明の繊維処理剤により加工された繊維布帛は、特に肌に直接的に且つ継続的に接触する用途、例えば、肌着、衣服、衣服等の裏地、手袋、靴下、スポーツ衣料、寝具(シーツ、カバー、布団側地等)、タオル等の用途に好適に利用することができる。
これらの用途に利用すれば、肌を保湿する、肌荒れの自然治癒を促す等のスキンケア効果を得ることが期待できる。

Claims (6)

  1. 下記成分(a)、成分(b)、成分(c)及び界面活性剤を含有する繊維処理剤であって、該繊維処理剤の全質量に対して、前記界面活性剤を0.05〜3.0質量%含有してなる、繊維処理剤。
    (a)水に不溶であり、平均粒径が0.1〜8μmである、卵殻膜微粉末、
    (b)リン脂質ポリマー、
    (c)下記(c1)又は(c2)のいずれか一方又は双方を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
    (c1)シリコーン含有ポリアクリル系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂及び非水溶性ポリウレタンからなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
    (c2)2官能性単量体及び少なくとも1つのアジリジン基を含む単量体を含む、エマルジョン又は水溶液の形態にあるバインダー。
  2. 前記成分(b)リン脂質ポリマーが、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートとのコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)とのコポリマー、及び2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとステアリルメタクリレートとのコポリマーからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の繊維処理剤。
  3. 前記成分(a)、成分(b)及び成分(c)は、それらの質量比が、固形分換算にて、成分(a):成分(b):成分(c)=10〜80質量部:0.5〜40質量部:10〜89.5質量部(但し成分(a)、成分(b)及び成分(c)の合計は100質量部)である、請求項1又は請求項2に記載の繊維処理剤。
  4. 請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の繊維処理剤を繊維布帛に接触させる接液工程、及び、
    繊維処理剤を接液させた繊維布帛を乾燥させる乾燥工程、を含む、
    繊維処理剤の使用方法。
  5. 成分(c)が成分(c2)を含む場合、
    乾燥工程の前に、繊維処理剤を接液させた繊維布帛上で、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)を重合させる重合工程をさらに含む、
    請求項4に記載の繊維処理剤の使用方法。
  6. 前記重合工程において、繊維処理剤を接液させた繊維布帛の繊維に、成分(a)、成分(b)及び成分(c2)をグラフト重合させることを特徴とする、
    請求項5に記載の繊維処理剤の使用方法。
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