JP2018104504A - グルカン含有組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い糖化率が得られるグルカンを、草本系バイオマスから高い収率で取り出すことのできる、グルカン含有組成物の製造方法、及び当該グルカンを用いた糖の製造方法を提供する。【解決手段】〔1〕草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程と、前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程と、前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と、を有し、前記粉砕する工程のニーダーが、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、グルカン含有組成物の製造方法、及び〔2〕〔1〕に記載の方法で得られたグルカン含有組成物を酵素により糖化処理する工程を有する糖の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、草本系バイオマスからグルカンの分離を行う、グルカン含有組成物の製造方法、及び当該グルカン含有組成物を用いた糖の製造方法に関する。
近年、化石資源の枯渇、環境問題への配慮などから、グルカン(C6糖成分を構成単位とする多糖)やキシラン(C5糖成分を構成単位とする多糖)、リグニンを含有する非可食バイオマスの有効活用が注目されている。
このバイオマスを原料として、糖やリグニン由来粗生成物を製造し応用する試みがなされている。
例えば、糖からはバイオ変換又は化学変換にてエタノールや乳酸、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などといった生物由来の化学物質へ変換できることが知られている。
バイオマスから糖を効率よく得るためには、グルカンからの糖化率を高める必要がある。糖化率を向上させる従来の方法として、糖化阻害因子であるリグニンなどを除去するために、熱水での処理や、高温高圧でのアルカリや酸の処理が行われている。
例えば、特許文献1には、振動ミルなどにより微細化したセルロース含有原料にアルカリを用いた2段階処理によるキシラン含有組成物およびグルカン含有組成物の製造方法が開示されている。
特許文献2には、糖化処理の難しい建設廃木材等の木質系バイオマスを対象にして高収率な酵素糖化を達成することを目的として、木質系バイオマスに対してアルカリ溶液中にてせん断力を付加しペースト化する工程と、その後固形分を酵素により糖化する工程とを含む、木質系バイオマスの糖化方法が開示されている。
特許文献3には、樹皮とアルカリを混練しながら物理的に力を加えて微細化する事で小さいエネルギーでリグノセルロースの酵素糖化を促進可能な前処理が開示されている。
国際公開公報2015/072413号 特開2012−170355号公報 国際公開公報2010/050223号
特許文献1では、処理効率の観点から、振動ロッドミルにより粉砕されたバイオマスが用いられている。しかし、振動ロッドミルにより粉砕を行う場合には、粉砕の効率化と粉砕物とロッドとの分離を良好にするために乾燥工程を経て低含水量に調整する必要がある。
特許文献2及び特許文献3では、木質系バイオマスからグルカンを分離し糖化する技術である。草本系バイオマスと木質系バイオマスでは、リグニンの結合形態、硬さ等の物理的性質等、多くの異なる点を有しており、グルカンの分離においても異なる特性を示す。
本発明は、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を、草本系バイオマスから高い収率で取り出すことのできる、グルカン含有組成物の製造方法、及び当該グルカン含有組成物を用いた糖の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、〔1〕及び〔2〕に関する。
〔1〕草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程と、
前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程と、
前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と、
を有し、
前記粉砕する工程のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、グルカン含有組成物の製造方法。
〔2〕〔1〕に記載の方法で得られたグルカン含有組成物を酵素により糖化処理する工程を有する糖の製造方法。
本発明によれば、高い糖化率が得られるグルカンを、草本系バイオマスから高い収率で取り出すことのできる、グルカン含有組成物の製造方法、及び当該グルカン含有組成物を用いた糖の製造方法を提供することができる。
図1は、ニーダー1の概略構成図である。 図2は、固定ブロックブレードの配置を示すニーダーの断面概略図である。 図3は、ニーダー1の概略構成を示す拡大図である。 図4は、3段ニーダーの概略構成図である。
[グルカン含有組成物の製造方法]
本発明のグルカン含有組成物の製造方法は、
草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程と、
前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程と、
前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と、
を有する。
前記粉砕する工程のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである。
本発明の方法によって、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を、草本系バイオマスから取り出すことができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
バイオマスからグルカンを取り出す際には、塩基性化合物によって、キシランやリグニンを水に溶解させ液分として分離する。本発明においては、この処理の前に、粉砕する工程においてニーダーにより、原料である草本系バイオマスを粉砕する。円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーを用いることで、当該ニーダーは原料バイオマスに圧縮、剪断と拡張を繰り返し与え、揉み解しができるため、バイオマス中の繊維が開繊され、塩基性化合物の浸透が促進されるものと考えられる。更に混合する工程において塩基性化合物を添加後にもニーダーを用いることにより、適度な剪断力が加わるため、繊維の裁断が生じて、塩基性化合物が内部組織まで浸透するため、多糖の結晶構造に変化が生じ、部分的に非晶化するものと考えられる。
ここで、グルカンを含有する固形分とリグニンやキシランを含有する液分に分離するが、このようにして得られたグルカンを含有する固形分は、繊維も短く、結晶構造も変化し、部分的に非晶化しているため、酵素による糖化処理により効率的に糖を得ることができるものと考えられる。
本発明のグルカン含有組成物の製造方法は、例えば、
工程(1):草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程(以下、単に「工程(1)」ともいう)と、
工程(2):工程(1)で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程(以下、単に「工程(2)」ともいう)と、
工程(3):工程(2)で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程(以下、単に「工程(3)」ともいう)と、
工程(4):工程(3)で得られたグルカンを含有する固形分を、塩基性化合物に接触させる工程(以下、単に「工程(4)」ともいう)と、
工程(5):工程(4)により得られた液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と
を有する。
以下、工程(1)で得られた草本系バイオマスを「一次処理バイオマス」ともいう。
以下、工程(2)で得られた草本系バイオマスを「二次処理バイオマス」ともいう。
以下、工程(4)で得られた草本系バイオマスを「三次処理バイオマス」ともいう。
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程である。
工程(1)のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである。
当該工程により、草本系バイオマスに圧縮、剪断と拡張を繰り返し与え、バイオマス中の繊維を開繊させ、後述の工程(2)及び(3)の処理効果を高めることができる。
〔草本系バイオマス〕
本発明の方法では、植物系バイオマスとして草本系バイオマスが用いられる。一般的に、植物系バイオマスは、セルロース、へミセルロース、及びリグニン等を含有する。草本系バイオマスに対して、工程(1)の粉砕又は工程(2)の塩基性化合物との混合を行うことでリグニンの脱離効果が得られやすく、セルロースやヘミセルロースを露出しやすく、酵素糖化が進行しやすくなる。
草本系バイオマスとしては、例えば、サトウキビバガス、ソルガムバガス等のバガス、スイッチグラス、エレファントグラス、コーンストーバー、イナワラ、ムギワラ、オオムギ、ススキ、芝、ジョンソングラス、エリアンサス、ケナフ、ネピアグラス、及びパームヤシ空果房が挙げられる。これらの中でも、バガスが好ましく、サトウキビバガスがより好ましい。
草本系バイオマスの含水率は、例えば、野積状態で保管されている草本系バイオマスの含水率の範囲であってもよく、原料調達の容易性の観点から、好ましくは30質量%以上、好ましくは35質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
〔工程(1)のニーダー〕
工程(1)では、草本系バイオマスの裁断と開繊や揉み解し、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を高い収率で得る観点から、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーが用いられる。
ニーダーは、好ましくは内壁に突起物を有するシリンダと、シリンダの長軸方向に配置された回転軸と、回転軸に設けられたニーディングブレードと、回転軸をシリンダ内で回転させる駆動装置とを備える。
工程(1)において、ニーダーのクリアランスの最小値は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
「クリアランスの最小値」とは、ニーダー内の、ニーディングブレード−内壁間、ニーディングブレード−内壁の突起物、ニーディングブレード−ニーディングブレード間等の間隔であって、当該間隙の最小値である。
工程(1)において、ニーディングブレードと突起物とのクリアランスCnb−fbの最小値は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
工程(1)において、ニーディングブレードと内壁とのクリアランスCnb−iの最小値は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
ニーディングブレードは、例えば、スクリュブレード、パドルブレード、リボンブレード、スクレーパブレード、カッタブレード、切欠き円板ブレード、ピンブレード、ブロックブレード等が挙げられる。これらの中でも、草本系バイオマスの裁断と開繊や揉み解し、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を高い収率で得る観点から、ブロックブレードが好ましい。
突起物としては、例えば、固定ブロックブレード、固定円柱ブレード等の固定ブレードが挙げられる。これらの中でも、草本系バイオマスの裁断と開繊や揉み解し、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を高い収率で得る観点から、固定ブロックブレードが好ましい。
固定ブロックブレードは、各ニーディングブレードの移動経路の両脇に移動経路を挟み込むように設けられることが好ましい。
工程(1)のニーダーは、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なる。これは、例えば、シリンダの内壁に設けられた突起物の配置によって実現される。例えば、突起物は、回転位相0°以上180°未満までの間に設けられ、回転位相180°以上から360°未満までの間には設けられない。そうすることで、突起物とニーディングブレードにより高い剪断力が付加される領域と、低い剪断力が付加される領域が、シリンダ内の略半分割して形成される。より具体的には、突起物は、例えば、シリンダ内壁の回転位相0°〜180°(好ましくは0°〜135°、より好ましくは0°及び90°)異なる2箇所の位置に設けられる。なお、回転位相0°はシリンダ内壁の任意の位置に設定できる。
ニーダーは、好ましくは、シリンダ及びニーディングブレードを有するニーダーを2以上備えた多段ニーダーである。
多段ニーダーにおいて、ニーダーの数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは4以下であり、更に好ましくは3である。多段ニーダーを用いる場合、例えば2本のシリンダを、直列に配置したり、又は直交するようにL字状に配置することができる。また、例えば3本のシリンダを用いる場合は、ニーダー側面から見て略3角形状に配設し、筒体の一端に供給口を他端に連通部を設け、3本のシリンダを連結して、草木系バイオマスが各シリンダ間を右側から左側に、左側から右側に、更に右側から左側へと流動するように圧送することが好ましい。
以下、図面を用いて一実施形態に係るニーダーの具体例を説明する。なお、ここで説明するニーダーは一具体例であって当該範囲に権利が限定されるものではない。
図1は、ニーダー1の概略構成図である。
ニーダー1は、シリンダ2と回転軸3とニーディングブレード4と駆動装置5とを備える。
シリンダ2は、内壁に設けられた固定ブロックブレード21、原料投入部22と、シリンダ内を通過した処理物が排出される排出口23とを有する。以下、シリンダ2内の原料投入部22側を上流側、シリンダ2内の排出口23側を下流側と称することがある。
回転軸3は、シリンダ2の長軸方向に配置されている。回転軸3は、シリンダ2内に設けられた軸受(図示せず)によって両端が支承され、そのうちの一端は駆動装置5に接続されて回転できるようになっている。駆動装置5としては、例えば、ギャードモータ等が挙げられる。
回転軸3には、ニーディングブレード4が設けられている。ニーディングブレード4は、回転軸3の軸方向に複数設けられる。ニーディングブレード4は、ブロック形状を有しており、回転方向に対して適宜の角度で傾斜させて配置される。隣接するもの同士は、取り付け向きを、180°位相をずらすように交差させて斜めに直交させてニーディングブレード4を設けることが好ましい。
回転軸3には、更に、処理物を運搬する螺旋状旋回翼群のスクリュー6が備えられる。スクリュー6は、回転軸3上のニーディングブレード4よりも、原料投入部22側(上流)に設けられる。
シリンダ2の内壁には、複数の固定ブロックブレード21が設けられる。
固定ブロックブレード21は、ニーディングブレード4の回転軸方向の間に、シリンダ内の円周方向においてニーディングブレード4の回転する位相により付加される剪断力が異なるように配置されている。
固定ブロックブレードについて、図2を用いて説明する。
図2は、固定ブロックブレード21の配置を示すニーダーの断面概略図である。
固定ブロックブレード21は、シリンダ2の内壁の回転位相0°の位置に第一固定ブロックブレード21a、及び、回転位相90°の位置に第二固定ブロックブレード21bが配される。このように配置されることで、ニーディングブレード4が回転軸3を中心に回転すると、シリンダ2内で、処理物に対してニーディングブレード4の回転する位相により異なる剪断力が付加される。すなわち、図2に示すように、シリンダ内の回転位相の相違により、高剪断付加領域Hと、低剪断付加領域Lが形成される。
ニーディングブレード4は、シリンダ2の内壁とのクリアランスCnb−iを有する。図2に示されるように、ニーディングブレード4と内壁とのクリアランスCnb−iは、回転軸の中心から最も離れたニーディングブレード4の端部と、内壁との距離である。なお、当該距離は、回転軸の中心cと当該中心から最も離れたニーディングブレードの端部eとを結ぶ延長線上の内壁の位置と、端部eとの距離である。
図3は、ニーダー1の概略構成を示す拡大図である。
図3に示されるように、固定ブロックブレード21は、ひとつのニーディングブレード4に対して、ニーディングブレード4の回転軌道を挟み込むように両脇に配置される。ニーディングブレード4は、固定ブロックブレード21とのクリアランスCnb−fbを有する。
図3に示されるように、ニーディングブレード4と固定ブロックブレード21とのクリアランスCnb−fbは、ニーディングブレード4と固定ブロックブレード21とが最接近する回転位相における距離である。
ニーダー1において、2種のクリアランスが想定されるが、クリアランスの最小値とは、前述のCnb−iとCnb−fbとの内で最も小さな値を意味する。
前述のニーダー1は、原料投入部22から、草本系バイオマスが投入される。草本系バイオマスは、処理物を運搬する螺旋状旋回翼群のスクリュー6により、回転軸方向から下流側へと搬送され、回転軸の下流に設けられたニーディングブレード4によって、粉砕処理が行われる。
草本系バイオマスは、ニーディングブレード4の回転によって、固定ブロックブレード21により形成された高剪断付加領域Hにおいては、高い剪断が付与され、圧縮される。一方で、草本系バイオマスは、固定ブロックブレード21の形成されていない低剪断付加領域Lにおいては、草本系バイオマスは拡張される。このように、草本系バイオマスが、シリンダ2内でニーディングブレード4の回転により処理されることで、圧縮と拡張を繰り返し、バイオマス中の繊維が開繊され、後述の工程(2)において塩基性化合物の浸透が促進され、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を、草本系バイオマスから高い収率で取り出すことができると考えられる。
ニーダーは、図4に示されるように、複数設けられていることが好ましい。
図4は、3段ニーダーの概略構成図である。
3段ニーダーは、ニーダー1a〜1cを有する。これらの各ニーダー1a〜1cは、前述のニーダー1と同様の構成を有するため説明を省略する。ニーダー1aの排出口23aは、ニーダー1bの原料投入部22bと接続しており、ニーダー1bの排出口23bは、ニーダー1cの原料投入部22cと接続している。
ニーダー1a〜1cは、ニーダー側面から見て略3角形状に配設し、3本の筒体を連結して、草木系バイオマスが各ニーダー間を右側から左側に、左側から右側に、更に右側から左側へと流動するように圧送することが好ましい。
このように多段ニーダーを用いることで、工程(1)の処理を十分に施すことができる、或いは、工程(1)の処理終了後、連続的に、後述の工程(2)の処理を行うこともできる。
前述のニーダーの市販品としては、「E.Gimmick」(株式会社大善製)が挙げられる。
〔工程(1)の粉砕の条件〕
工程(1)の粉砕は、乾式粉砕であっても、湿式粉砕であってもよいが、乾式粉砕であることが好ましい。
乾式粉砕とは、気体雰囲気下の粉砕処理であり、湿式粉砕とは分散媒として用いられる水などの液体雰囲気下での粉砕処理である。
ニーダーの回転数は、裁断と開繊や揉み解しの観点から、好ましくは20rpm以上、より好ましくは30rpm以上、更に好ましくは70rpm以上であり、そして、好ましくは250rpm以下、より好ましくは200rpm以下、更に好ましくは150rpm以下である。
工程(1)における温度は、糖化率の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましく70℃以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは130℃以下、より更に好ましくは100℃以下である。
工程(1)における処理時間は、糖化率を高める観点からは、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、更に好ましくは5分以上であり、そして、好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは25分以下である。
工程(1)における処理圧力は、特に限定されるものでないが、バイオマスの使用量に応じて0.001MPa以上1.0MPa以下の圧力範囲で行われることが好ましく、生産コストの観点から、好ましくは大気圧(0.1MPa)である。必要に応じて窒素等の不活性ガスで希釈した混合ガスを、少量ずつ流通させながら微加圧下で行うことも可能である。
工程(1)における処理物の平均繊維長は、工程(2)の塩基性化合物の浸透させる処理効率の観点から、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下であり、そして、工程(3)の液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程の処理効率の観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。
平均繊維長は、JIS 1級 150mm金尺(シンワ測定株式会社製)と共に撮影した写真を用いて、任意に選択した100本の繊維の長さの数平均値を算出して平均繊維長とする。
<工程(2)>
工程(2)は、高い糖化率が得られるグルカン含有組成物を高い収率で得る観点から、工程(1)で得られた草本系バイオマスと塩基性化合物と水とを、ニーダーにより混合する工程である。工程(2)で用いる草本系バイオマスは、工程(1)で得られた一次処理バイオマスが好ましい。工程(2)により、草本系バイオマスに適度な剪断力が加わるため、繊維の裁断が生じて、塩基性化合物が草本系バイオマスの内部組織まで浸透し、多糖の結晶構造にも変化が生じ、部分的に非晶化させることができると考えられる。
工程(2)で用いられるニーダーは、工程(1)で用いられるニーダーと同一であっても異なっていてもよい。工程(1)及び工程(2)で用いられるニーダーが、多段ニーダーである場合には、工程(1)の裁断と開繊や揉み解し工程と、工程(2)の塩基性化合物及び水の添加混合工程を連続的に行うことができることから好ましい。
〔工程(2)の塩基性化合物〕
塩基性化合物は、経済性及び入手性の観点から、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。塩基性化合物は、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは水酸化ナトリウムである。
工程(2)における仕込み時の塩基性化合物の使用量は、糖化率とリグニン脱離率の観点、及びコストの観点から、草本系バイオマスの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下であり、そして、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上である。
〔工程(2)の水〕
工程(2)においては、草本系バイオマスと塩基性化合物との接触効率の観点から、水を使用する。工程(2)においては、仕込み時の水の使用量は、草本系バイオマスの乾燥質量100質量部に対し、反応性を向上させる観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは250質量部以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である。
〔工程(2)のニーダー〕
工程(2)では、草本系バイオマスを効率よく塩基処理する観点から、ニーダーが用いられる。
ニーダーとしては、ブレードによるニーディング(混練)機構を有する混練機が好ましい。
ブレードとしては、例えば、スクリュブレード、パドルブレード、リボンブレード、スクレーパブレード、カッタブレード、切欠き円板ブレード、ピンブレード等が挙げられる。
ニーダーとしては、連続式ニーダー、回分式ニーダーのいずれも用いることができるが、生産性の観点から、連続式ニーダーが好ましい。
なお、ニーダーとしては、例えば、単軸型ニーダー、複軸型ニーダーが挙げられる。
単軸型ニーダーとしては、リボンミキサー、コニーダー、ボテーター等が挙げられる。
複軸型ニーダーとしては、双腕式ニーダー、バンパリーミキサー等が挙げられる。バイオマスに剪断力を与え、裁断と開繊や揉み解しを行う観点から、コニーダー、スクリュー型ニーダー、双腕式ニーダーが好ましい。
ニーダーは、好ましくは多段ニーダーである。これにより、裁断と開繊や揉み解し工程と、工程(1)の粉砕処理と、工程(2)の塩基性化合物及び水の添加混合工程を連続的に行うことができる。
本発明に用いられるニーダーは、裁断と開繊や揉み解しの観点から、好ましくは螺旋状旋回翼群を有する。螺旋状旋回翼群としては、スクリュー、ヘリカル、スパイラル等が挙げられ、なかでも裁断と開繊や揉み解しの観点から、スクリューが好ましい。螺旋状旋回翼群とは、螺旋の回転数が1以上である旋回翼である。螺旋の回転数は、裁断と開繊や揉み解しの観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、生産コストの観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
ニーダーのブレードは、裁断と開繊や揉み解しの観点から、好ましくはシグマ型、マスチケーター型、Z型、ダブルナーベン型、パドル型である。
これらの中でも、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーが好ましく、工程(1)のニーダーと同じニーダーがより好ましい。
工程(2)のニーダーの市販品としては、「E.Gimmick」(株式会社大善製)、「ラボプラストミル」(株式会社東洋精機製作所)、「卓上ニーダー PNV−1型」(株式会社入江商会製)、「KEXエクストルーダ」(株式会社栗本鐵工所製)、「二軸混練押出機 HK−25D(D41)型」(日本パーカーライジング株式会社製)等が挙げられる。
工程(2)において、ニーダーのクリアランスの最小値は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
(工程(2)の処理の条件)
工程(2)のニーダーの回転数は、裁断と開繊や揉み解しの観点から、好ましくは20rpm以上、より好ましくは30rpm以上、更に好ましくは70rpm以上であり、そして、好ましくは250rpm以下、より好ましくは200rpm以下、更に好ましくは150rpm以下である。
工程(2)における草本系バイオマスの濃度は、糖化率の観点から、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、上記観点及び経済性の観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
工程(2)における塩基性化合物の濃度は、糖化率の観点から、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、糖化率の観点及び経済性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
工程(2)における水の割合は、糖化率の観点から、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、上記観点及び経済性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
工程(2)におけるニーダー内の温度は、糖化率の観点から、好ましくは20℃以上、好ましくは25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは75℃以上、より更に好ましくは80℃以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
工程(2)におけるニーダー内の圧力は、バイオマスの使用量に応じて0.001MPa以上1.0MPa以下の圧力範囲で行うことができ、生産コストの観点から、好ましくは大気圧(0.1MPa)である。必要に応じて窒素等の不活性ガスで希釈した混合ガスを、少量ずつ流通させながら微加圧下で行うことも可能である。
工程(2)におけるニーダーによる処理時間は、例えば、糖化率の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは3分以上であり、そして、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは10分以下である。
〔ニーダー処理合計時間〕
工程(1)及び工程(2)におけるニーダー処理合計時間は、グルカンの残存率と糖化率を高める観点からは、好ましくは4分以上、より好ましくは6分以上、更に好ましくは8分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、更に好ましくは30分以下である。
工程(1)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]は、糖化率を高める観点からは、好ましくは0.010kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.020kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.025kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.50kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.30kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.20kWh/kg−dry以下であり、そして、生産性を高め、グルカンの残存率と糖の収率を高める観点からは、好ましくは0.010kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.07kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.10kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは1kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.5kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.3kWh/kg−dry以下である。
動力原単位は、実施例に記載の方法により算出される。
工程(2)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]は、糖化率を高める観点からは、好ましくは0.003kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.004kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.060kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.045kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.030kWh/kg−dry以下であり、そして、生産性を高め、グルカンの残存率と糖の収率を高める観点からは、好ましくは0.001kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.0030kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.004kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.1kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.05kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.01kWh/kg−dry以下である。
工程(1)及び工程(2)の動力原単位の総和[kWh/kg−dry]は、糖化率を高める観点からは、好ましくは0.01kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.03kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.05kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.30kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.20kWh/kg−dry以下である。
動力原単位及び動力原単位の総和は、実施例に記載の方法により算出される。
さらに、工程(2)において、塩基性化合物の作用によるリグニンの脱離をより促進させ、糖化率を高める観点から、草本系バイオマスに、塩基性化合物、及び水を添加し、ニーダーによる混合後、28℃以上100℃以下で30分以上保持する工程(以下、単に「保持工程」ともいう)を有することが好ましい。なお、保持する際には、静置してもよく、必要に応じて攪拌してもよい。
保持温度は、保持時間を短縮する観点から、好ましくは28℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは80℃以上であり、そして、熱源コストを削減する観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
保持時間は、生産性や保管コスト等の観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、更に好ましくは60分以上であり、そして、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは180分以下である。
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分に分離する工程である。工程(3)は、得られる固形分のグルカンの含有率を高め、糖化率を高める観点から行われる。
工程(3)は、例えば、処理効率の観点から、濾過、遠心分離等により固形分と液分に分離することが好ましく、分離した固形分を水で洗浄することがより好ましい。
濾過に用いる装置としては、フィルタープレス、ベルトプレスなどの濾布などを濾材として用いる装置;スクリュープレス、シリンダープレスなどの金網などを濾材として用いる装置が用いられる。それらの中でも、連続処理における処理効率の観点からスクリュープレス、シリンダープレスが好ましい。
遠心分離に用いる装置としては、デカンター、バスケット式遠心分離機などが用いられる。
上記の方法により、本発明の製造方法における目的物である精製されたグルカン含有組成物が得られる。グルカン含有組成物は、草本系バイオマス由来のグルカンを含有する組成物として得ることができる。グルカン含有組成物は、グルカンを主成分とする組成物である。「主成分」とは、組成物に含まれる主な成分であるグルカン、キシラン、及びリグニンのうち、最も高い濃度の成分を意味する。グルカン含有組成物を、酵素により糖化することで、高い収率及び高い純度で、グルコースを主体とする糖が得られる。
グルカン含有組成物は、少なくともグルカンを含み、キシランとリグニンとを更に含んでもよい。
グルカン含有組成物中のグルカンの含有量(以下、「グルカン含有量」ともいう)は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
グルカン含有組成物中のキシランの含有量(以下、「キシラン含有量」ともいう)は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは23質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
グルカン含有組成物中のリグニンの含有量(以下、「リグニン含有量」ともいう)は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
グルカン含有組成物中のグルカンの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%である。
グルカン含有組成物中のキシランの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
グルカン含有組成物中のリグニンの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。
グルカン含有組成物中のグルカン、キシラン及びリグニンの残存率は、実施例に記載の方法により算出される。
工程(3)後のリグニンの脱離率は、原料バイオマスから脱離したリグニンの割合を表し、工程(3)のリグニンの残存率から算出される。
リグニンの脱離率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
<工程(4)>
工程(4)は、工程(3)で得られたグルカンを含有する固形分(工程(3)で得られた固形分)を、塩基性化合物に接触させる工程である。
工程(4)は、得られる固形分のグルカンの含有率を高め、糖化率を向上させる観点から行われる。
〔工程(4)の塩基性化合物〕
工程(4)の塩基性化合物の使用量は、糖化率の観点、及び収率の観点並びに均一攪拌等の作業性の観点から、工程(3)で得られた固形分100質量部に対し、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、更に好ましくは300質量部以下であり、そして、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上である。なお、工程(4)において用いられる塩基性化合物は、工程(2)で例示したものと同様のものが好ましい。
〔工程(4)の水〕
工程(4)においては、工程(3)で得られた固形分と塩基性化合物との接触効率の観点から、水を使用する。水の使用量は、工程(3)で得られた固形分100質量部に対し、反応性を向上させる観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは500質量部以上、更に好ましくは1,000質量部以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは3,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下である。
工程(4)における、工程(3)で得られた固形分濃度は、工程(4)後に得られる固形分のグルカン含有量及び収率の観点から、工程(3)で得られた固形分、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、工程(4)後に得られる固形分のグルカン含有量、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び経済性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
工程(4)の塩基性化合物の濃度は、工程(4)後に得られる固形分のグルカン含有量及び収率の観点から、工程(3)で得られた固形分、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
工程(4)の水の割合は、キシラン成分を液分へ移行させる観点、及び糖化率の観点から、工程(3)で得られた固形分、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
工程(4)の温度は、キシランを液分へ移行させる観点、及び糖化率の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
工程(4)の接触時間は、キシラン成分を液分へ移行させる観点、及び糖化率の観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは10分以下、より好ましくは8分以下、更に好ましくは5分以下である。
接触方法は、特に限定されない。例えば、次の(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)固形分を塩基性化合物中に浸漬させる方法
(ii)塩基性化合物を固形分に噴霧又は塗布する方法
(iii)塩基性化合物を含有する溶液で常法に従い固形分を洗浄する方法
本発明における接触方法に用いられる装置としては、リファイナー、ディスパが挙げられる。リファイナーの市販品としては、例えば、「KRKディスクリファイナー」(熊谷理機工業株式会社製)、「ラボパルパー(JIS標準離解機)」(熊谷理機工業株式会社製)が挙げられる。ディスパの市販品としては、例えば、「ロボミックス(攪拌形式:攪拌ホモディスパ2.5型)」(プライミックス株式会社製)等が挙げられる。
なお、キシラン成分の脱離率の観点から、これらの装置を2以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、塩基性化合物の作用によるキシランの脱離をより促進させ、糖化率を高める観点から、前述の接触後、5℃以上50℃以下で5分以上保持する工程(以下、単に「保持工程」ともいう)を経た後、工程(5)に供することが好ましい。なお、保持する際には、静置してもよく、必要に応じて攪拌してもよい。
保持温度は、保持時間を短縮する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、熱源コストを削減する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
保持時間は、生産性や保管コスト等の観点から、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは7分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下である。
<工程(5)>
工程(5)は、工程(4)により得られた液分と、グルカンを含有する固形分とに分離する工程である。
工程(5)は、例えば、前述の工程(3)と同様の条件が挙げられる。
工程(5)を経ることでグルカン含有組成物は、グルカンを含有する固形分として得られる。グルカン含有組成物は、少なくともグルカンを含み、キシランとリグニンとを更に含んでもよい。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のグルカン含有量は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下ある。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のキシラン含有量は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のリグニン含有量は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のグルカンの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のキシランの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物のリグニンの残存率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下であり、そして、生産性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
工程(5)で得られるグルカン含有組成物中のグルカン、キシラン及びリグニンの残存率は、実施例に記載の方法により測定される。
工程(5)で得られる液分のキシランの脱離率は、工程(3)で得られた固形分から脱離したキシラン成分の割合を表し、工程(3)及び工程(5)のキシラン成分の残存率から算出される。工程(5)でのキシランの脱離率は、酵素による糖化によって得られるグルコース収率及び純度の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
[糖の製造方法]
<工程(6)>
工程(6)は、上記グルカン含有組成物の製造方法により得られたグルカン含有組成物を酵素により糖化処理する工程である。より具体的には、工程(6)では、工程(3)又は工程(5)で得られたグルカン含有組成物が用いられる。工程(3)又は工程(5)で得られたグルカン含有組成物は、脱リグニン化されているため、酵素で処理することにより、グルコースを主体とする糖を効率よく得ることができる。糖化処理後にエタノール発酵や乳酸発酵に使用する場合などを考慮すると、単糖まで分解することが好ましい。
〔酵素〕
酵素としては、糖化率の向上の観点から、セルラーゼが挙げられる。
セルラーゼとは、セルロースのβ−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解する酵素を指し、エンドグルカナーゼ、エクソグルカナーゼ又はセロビオヒドロラーゼ、及びβ−グルコシダーゼなどと称される酵素の総称である。
セルラーゼとしては、例えば、「CellicCTec2」(ノボザイムズ社製、商品名)、「セルクラスト1.5L」(ノボザイムズ社製、商品名)などのトリコデルマ リーゼ(Trichodermareesei)由来のセルラーゼ製剤;バチルス エスピー(Bacillussp.)KSM−N145(FERM p−19727)株由来のセルラーゼ;バチルス エスピー(Bacillussp.)KSM−N252(FERM P−17474)、バチルス エスピー(Bacillussp.)KSM−N115(FERM P−19726)、バチルス エスピー(Bacillussp.)KSM−N440(FERM P−19728)、バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM−N659(FERM P−19730)などの各株由来のセルラーゼ;トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、アスペルギルス アクレアタス(Aspergillus acleatus)、クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム ステルコラリウム(Clostridium stercorarium)、クロストリジウム ジョスイ(Clostridium josui)セルロモナス フィミ(Cellulomonas fimi)、アクレモニウム セルロリティクス(Acremonium celluloriticus)、イルペックス ラクテウス(Irpex lacteus)、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ混合物;パイロコッカス ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)由来の耐熱性セルラーゼなどが挙げられる。
セルラーゼの1種であるβ−グルコシダーゼの具体例としては、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来の酵素(例えば、「ノボザイム188」(ノボザイムズ社製)やメガザイム社製β−グルコシダーゼ)やトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、ペニシリウム エメルソニイ(Penicillium emersonii)由来の酵素などが挙げられる。
市販品のセルラーゼ製剤としては、「セルクラスト1.5L」(ノボザイムズ社製)、「TP−60」(明治製菓株式会社製)、「Cellic CTec2」(ノボザイムズ社製)、「AccelleraseTMDUET」(ジェネンコア社製)、「ウルトラフロL」(ノボザイムズ社製)が挙げられる。
酵素は、糖化率向上の観点から、好ましくはトリコデルマ リーゼ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、又はフミコーラ インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼであり、例えば、「Cellic CTec2」(ノボザイムズ社製)、「セルクラスト1.5L」(ノボザイムズ社製)、「TP−60」(明治製菓株式会社製)、「Accellerase DUET」(ジェネンコア社製)、又は「ウルトラフロL」(ノボザイムズ社製)が好ましい。
なお、酵素による糖化処理のpH、温度、時間及び酵素量は、酵素の種類によって異なるが、使用する酵素の種類に応じて適宜選択することができる。
酵素による糖化処理において、pHは、使用する酵素の種類に応じて適宜選択することができるが、糖の収率を向上させる観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上、更に好ましくは4.5以上であり、そして、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下である。
糖化処理の条件を上記pH範囲に維持する観点から、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、例えば、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられる。これらの中でも、酢酸緩衝液が好ましい。
上記pH範囲に調整する観点から、工程(2)又は(4)から持ち込まれる塩基性物質を中和することが好ましい。例えば中和剤としては、公知の酸を用いることができ、例えば、硫酸、塩酸等が挙げられる。
糖化処理における酵素タンパク量は、工程(3)又は工程(4)で得られたグルカン含有組成物の固形分100質量部に対して、糖の収率の観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、コストの観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
酵素タンパク質量は、「DCプロテインアッセイキット」(Bio Rad社製)を使用し、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質とした検量線よりタンパク質量を計算する。
酵素による糖化処理の温度は、上記酵素に応じて糖化が進行すれば、特に制限はないが、酵素活性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
酵素による糖化処理の時間は、糖の収率を向上させる観点から、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上、更に好ましくは24時間以上、より更に好ましくは48時間以上、より更に好ましくは60時間以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下、更に好ましくは96時間以下、より更に好ましくは84時間以下である。
本発明の製造方法により、グルコース等の糖が得られる。
得られた糖からエタノールを製造することができる。エタノールの製造方法としては、例えば、糖を発酵させることでアルコールが得られる。アルコール発酵における酵母の種類、使用量、発酵温度などの各種条件は、使用する酵母に応じて適宜設定することができる。
上記の他にも、糖を用いて、乳酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸を製造することができる。これらの有機酸は、各有機酸を産生する酵母を用いて、糖を発酵させることで得られる。
前述した実施形態に関し、本発明は更に以下の草本系バイオマスの処理方法、グルカン含有組成物の製造方法、及び糖の製造方法を開示する。
<1>草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程(工程(1))と、
前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程(工程(2))と、
前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分と固形分(グルカン含有組成物)とに分離する工程(工程(3))と、
を有し、
前記混合する工程(工程(1))のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、草本系バイオマスの処理方法。
<2>前記分離する工程において、グルカンを含有する固形分(グルカン含有組成物)を得る、グルカン含有組成物の製造方法。
<3>草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程(工程(1))と、
前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程(工程(2))と、
前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分(グルカン含有組成物)とに分離する工程(工程(3))と、
を有し、
前記混合する工程のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、グルカン含有組成物の製造方法。
<4>草本系バイオマスが、好ましくはバガスであり、より好ましくはサトウキビバガスである、<1>〜<3>のいずれかに記載の方法。
<5>草本系バイオマスの含水率が、好ましくは30質量%以上、好ましくは35質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載の方法。
<6>工程(1)のニーダーは、好ましくは内壁に突起物を有するシリンダと、シリンダの長軸方向に配置された回転軸と、回転軸に設けられたニーディングブレードと、回転軸をシリンダ内で回転させる駆動装置とを備える、<1>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7>工程(1)において、ニーダーのクリアランスの最小値は、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である、<1>〜<6>のいずれかに記載の方法。
<8>工程(1)のニーダーが、好ましくは、内壁に突起物を有するシリンダと、前記シリンダの長軸方向に配置された回転軸と、前記回転軸に設けられたニーディングブレードと、前記回転軸をシリンダ内で回転させる駆動装置と、を備え、
前記ニーディングブレードが回転軸方向に複数設けられ、
前記突起物が、前記ニーディングブレードの回転軸の軸方向の間に、前記シリンダ内の円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるように配置された、<1>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9>工程(1)のニーダーの回転数が、好ましくは20rpm以上、より好ましくは30rpm以上、更に好ましくは70rpm以上であり、そして、好ましくは250rpm以下、より好ましくは200rpm以下、更に好ましくは150rpm以下である、<1>〜<8>のいずれかに記載の方法。
<10>工程(1)における温度が、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましく70℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは130℃以下、より更に好ましくは100℃以下である、<1>〜<9>のいずれかに記載の方法。
<11>工程(1)における処理物の平均繊維長が、好ましくは50mm以下、より好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下であり、そして、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である、<1>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<12>工程(2)の塩基性化合物が、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは水酸化ナトリウムである、<1>〜<11>のいずれかに記載の方法。
<13>工程(2)における塩基性化合物の使用量が、草本系バイオマスの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下であり、そして、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上である、<1>〜<12>のいずれかに記載の方法。
<14>工程(2)における水の使用量が、草本系バイオマスの乾燥質量100質量部に対し、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは250質量部以上であり、そして、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは300質量部以下である、<1>〜<13>のいずれかに記載の方法。
<15>工程(2)のニーダーが、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、<1>〜<14>のいずれかに記載の方法。
<16>工程(2)において、ニーダーのクリアランスの最小値が、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上であり、そして、好ましくは15mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である、<1>〜<15>のいずれかに記載の方法。
<17>工程(2)のニーダーの回転数が、好ましくは20rpm以上、より好ましくは30rpm以上、更に好ましくは70rpm以上であり、そして、好ましくは250rpm以下、より好ましくは200rpm以下、更に好ましくは150rpm以下である、<1>〜<16>のいずれかに記載の方法。
<18>工程(2)における草本系バイオマスの濃度が、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、<1>〜<17>のいずれかに記載の方法。
<19>工程(2)における塩基性化合物の濃度が、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である、<1>〜<18>のいずれかに記載の方法。
<20>工程(2)における水の割合が、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、上記観点及び経済性の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、<1>〜<19>のいずれかに記載の方法。
<21>工程(2)におけるニーダー内の温度が、好ましくは20℃以上、好ましくは25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは75℃以上、より更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である、<1>〜<20>のいずれかに記載の方法。
<22>工程(2)におけるニーダーによる処理時間が、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、更に好ましくは3分以上であり、そして、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下、更に好ましくは10分以下である、<1>〜<21>のいずれかに記載の方法。
<23>工程(1)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]が、好ましくは0.010kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.020kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.025kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.50kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.30kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.20kWh/kg−dry以下である、<1>〜<22>のいずれかに記載の方法。
<24>工程(1)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]が、好ましくは0.010kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.07kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.10kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは1kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.5kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.3kWh/kg−dry以下である、<1>〜<22>のいずれかに記載の方法。
<25>工程(2)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]が、好ましくは0.003kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.004kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.060kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.045kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.030kWh/kg−dry以下である、<1>〜<24>のいずれかに記載の方法。
<26>工程(2)におけるニーダー処理における動力原単位[kWh/kg−dry]が、好ましくは0.001kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.0030kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.004kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.1kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.05kWh/kg−dry以下、更に好ましくは0.01kWh/kg−dry以下である、<1>〜<24>のいずれかに記載の方法。
<27>工程(1)及び工程(2)の動力原単位の総和[kWh/kg−dry]が、好ましくは0.01kWh/kg−dry以上、より好ましくは0.03kWh/kg−dry以上、更に好ましくは0.05kWh/kg−dry以上であり、そして、好ましくは0.30kWh/kg−dry以下、より好ましくは0.20kWh/kg−dry以下である、<1>〜<26>のいずれかに記載の方法。
<28>工程(2)において、混合後、28℃以上100℃以下で30分以上保持する、<1>〜<27>のいずれかに記載の方法。
<29>保持温度が、好ましくは28℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは70℃以上、より更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である、<28>に記載の方法。
<30>保持時間が、好ましくは30分以上、より好ましくは45分以上、更に好ましくは60分以上であり、そして、好ましくは300分以下、より好ましくは240分以下、更に好ましくは180分以下である、<28>又は<29>に記載の方法。
<31>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のグルカンの含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である、<1>〜<30>のいずれかに記載の方法。
<32>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のキシランの含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは23質量%以下であり、そして、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である、<1>〜<31>のいずれかに記載の方法。
<33>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のリグニンの含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下であり、そして、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である、<1>〜<32>のいずれかに記載の方法。
<34>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のグルカンの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%である、<1>〜<33>のいずれかに記載の方法。
<35>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のキシランの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下であり、そして、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である、<1>〜<34>のいずれかに記載の方法。
<36>工程(3)で得られるグルカン含有組成物中のリグニンの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下であり、そして、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である、<1>〜<35>のいずれかに記載の方法。
<37>前記分離する工程(工程(3))で得られたグルカンを含有する固形分を、塩基性化合物に接触させる工程(工程(4))を更に有する、<1>〜<36>のいずれかに記載の方法。
<38>工程(4)の塩基性化合物が、好ましくはアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、更に好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは水酸化ナトリウムである、<37>に記載の方法。
<39>工程(4)の塩基性化合物の使用量が、工程(3)で得られた固形分100質量部に対し、好ましくは500質量部以下、より好ましくは400質量部以下、更に好ましくは300質量部以下であり、そして、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上である、<37>又は<38>に記載の方法。
<40>工程(4)において、水を更に添加し、当該水の使用量が、工程(3)で得られた固形分100質量部に対し、好ましくは100質量部以上、より好ましくは500質量部以上、更に好ましくは1,000質量部以上であり、そして、好ましくは3,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下である、<37>〜<39>のいずれかに記載の方法。
<41>工程(4)の塩基性化合物の濃度が、工程(3)で得られた固形分、塩基性化合物、及び水の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である、<37>〜<40>のいずれかに記載の方法。
<42>工程(4)の温度が、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である、<37>〜<41>のいずれかに記載の方法。
<43>工程(4)の接触時間が、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上であり、そして、好ましくは10分以下、より好ましくは8分以下、更に好ましくは5分以下である、<37>〜<42>のいずれかに記載の方法。
<44>工程(4)において、接触後、更に5℃以上50℃以下で5分以上保持する、<37>〜<43>のいずれかに記載の方法。
<45>保持温度が、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下である、<37>〜<44>のいずれかに記載の方法。
<46>保持時間が、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは7分以上であり、そして、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下である、<37>〜<45>のいずれかに記載の方法。
<47>前記接触させる工程(工程(4))により得られた液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程(工程(5))を更に有する、<37>〜<46>のいずれかに記載の方法。
<48>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のグルカン含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下ある、<47>に記載の方法。
<49>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のキシラン含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下であり、そして、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である、<47>又は<48>に記載の方法。
<50>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のリグニン含有量が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり、そして、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である、<47>〜<49>のいずれかに記載の方法。
<51>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のグルカンの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である、<47>〜<50>のいずれかに記載の方法。
<52>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のキシランの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり、そして、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは12質量%以上である、<47>〜<51>のいずれかに記載の方法。
<53>工程(5)で得られるグルカン含有組成物のリグニンの残存率が、グルカン含有組成物の乾燥質量中、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下であり、そして、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である、<47>〜<52>のいずれかに記載の方法。
<54>工程(5)でのキシランの脱離率が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、<47>〜<53>のいずれかに記載の方法。
<55><1>〜<54>のいずれかに記載の方法により得られたグルカン含有組成物を酵素により糖化処理する工程(工程(6))を有する、糖の製造方法。
以下の実施例において、「%」は特に説明のない場合、「質量%」を意味する。
〔グルカン含有量、キシラン含有量の測定〕
サンプル300mg(乾燥質量)に72%硫酸3mLを加え、30℃の水浴中で1時間静置した。その後、イオン交換水84mLを用いて、ガラス製耐圧ビンに移し、120℃1時間、オートクレーブにて加熱処理した。得られた処理液にイオン交換水を加え100mLに調整した。液の一部を取り出し、炭酸カルシウムによってpH5〜6まで中和し、遠心分離により固液分離して上清を取得した。上清中のグルコース及びキシロース量を、高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」ともいう)を用いて下記の条件で定量し、下記式〔1〕、〔2〕よりグルカン及びキシラン含有量を算出した。
なお、オートクレーブ処理によるグルコースの残存率は下記式〔3〕から求めた。すなわち、グルコース0.5g、72%硫酸3mL、イオン交換水84mLのグルコース標準溶液を作成し、半量について上記のオートクレーブ処理を行い、処理前後のグルコース濃度の変化から算出した。式〔2〕中のキシロースの残存率についても、式〔3〕と同様に算出した。
なお、サンプル濃度は0.003(g/mL(0.3g/100mL))である。
グルカン含有量(%)=[{上清中グルコース濃度(g/mL)×グルコース残存率/0.9}/サンプル濃度]×100 〔1〕
キシラン含有量(%)=[{上清中キシロース濃度(g/mL)×キシロース残存率/0.88}/サンプル濃度]×100 〔2〕
グルコース残存率(%)=処理後標準液のグルコース濃度/処理前標準液のグルコース濃度 〔3〕
<HPLC測定条件>
カラム:Transgeomic ICSep ICE−ION−300(TCI社製)
カラム温度:40℃
溶離液:0.0085Nの硫酸水溶液
流速:0.4mL/分
検出器:RI
〔灰分量の測定〕
電気炉「ROP−001」(アズワン株式会社製)で空のるつぼを600℃まで加熱後、デシケーター中で放冷し、るつぼの風袋を秤量した。次にサンプル250mg(乾燥質量)をるつぼに加え、600℃で4時間強熱した。デシケーター中で放冷後、秤量し、風袋質量から増加した質量を灰分量とした。
〔リグニン含有量の測定〕
サンプル300mg(乾燥質量)に72%硫酸3mLを加え、30℃の温浴中で1時間静置した。
その後、イオン交換水84mLを用いて、ガラス製耐圧ビンに移し、120℃1時間、オートクレーブにて加熱処理した。処理後、耐圧瓶内の黒色沈殿をあらかじめ質量を測定しておいたガラス濾過器「1GP16」(柴田科学株式会社製)を用いて吸引濾過した。得られた沈殿物は100℃の熱水約300mL、次いで25℃の冷水約300mLで洗浄後、80℃送風乾燥機中で一昼夜乾燥した。得られた乾燥粉体の灰分量を上記手法により測定し、乾燥粉体質量から灰分量を差し引いた質量を酸不溶性リグニン量とした。ろ液は光路長1mmセルを用いて205nm吸光度を測定した。ブランクの吸光度(72%硫酸とイオン交換水の混合液(3/84v/v)の205nm吸光度)を差し引いて、カバ由来のリグニンのモル吸光係数113L/g・cm(参照 日本木材学会編 木質科学実験マニュアル)を用いて、ろ液中に溶存している試薬リグニン相当量を算出し、その量を酸可溶性リグニン量とした。酸不溶性リグニンと酸可溶性リグニン両者の合計量を用いて、下記式〔4〕から、リグニン含有量(%)を求めた。
リグニン含有量(%)=[{酸不溶性リグニンと酸可溶性リグニン両者の合計(g)}
/サンプル質量(g(0.3g))]×100 〔4〕
〔各成分残存率〕
成分残存率は、原料バイオマス及び工程(3)又は工程(5)で得られた固形分の乾燥品を上記の方法を用いて、グルカン含有量、キシラン含有量、及びリグニン含有量を算出し、下記式(I)〜(III)により求める。
なお、収率とは、工程(3)(工程(4)を実施する場合には、工程(3)及び工程(5))で得られた固形分及び液分の乾燥質量の合計を、原料バイオマスの乾燥質量で除した値である。
グルカン残存率(%)={(グルカン含有量(g))/(原料バイオマス中グルカン含有量(g)×収率)}×100 (I)
キシラン残存率(%)={(キシラン含有量(g))/(原料バイオマス中キシラン含有量(g)×収率)}×100 (II)
リグニン残存率(%)={(リグニン含有量(g))/(原料バイオマス中リグニン含有量(g)×収率)}×100 (III)
〔液分中のリグニン脱離率、キシラン脱離率〕
工程(3)又は工程(5)で得られた液分のリグニン脱離率及びキシラン脱離率を上記〔各成分残存率〕の方法を用いた、キシラン及びリグニンの残存率から下記式により求める。
リグニン脱離率(%)=100−工程(3)のリグニン残存率(%)
キシラン脱離率(%)=工程(3)のキシラン残存率(%)―工程(5)の残存率(%)
〔動力原単位及びその総和〕
各々ニーダーを用いての処理時の運転負荷動力[kW]を処理量[kg−dry]にて除した値Xを求めた。運転負荷動力[kW]は、処理時の全負荷電力量[kWh]を処理時間[h]で除じた値に、無負荷動力[kW]で減じて求めた。なお、無負荷動力[kW]とは、処理物の流入・仕込みを行わず、各々ニーダーの空運転状態であり、各々15分から30分程度の平均値動力を用いるが、空運転開始5分程度は、機械がなじむまでの振れの影響を排除するために、計算から除外した。なお、「kg−dry」とは、処理物の乾燥重量を意味する。
また、各無負荷動力[kW]および、各全負荷電力量[kWh]の測定には、クランプオンパワーハイテスタ3169とクランプオンセンサ9660(日置電機株式会社社製)を用いた。
処理物の各ニーダーにおける値X[kW/kg−dry]に各ニーダーでの処理時間(系内での滞留時間)[h]を乗じた値を動力原単位[kWh/kg−dry]とした。各ニーダーでの算出値の合計を動力原単位の総和[kWh/kg−dry]とした。
〔糖化率〕
工程(6)終了後の糖化液1mLをマイクロチューブに取り、遠心分離「チビタンR」(日立工機株式会社製、遠心力200G、3分処理)によって沈殿物と上清液を分離した。分離後の上清を0.085Nの硫酸水溶液と混合して反応を停止させ、混合液を孔径0.2μmのセルロースアセテートフィルタで濾過し、0.085Nの硫酸水溶液で10倍に希釈し、HPLCを用い、前記条件でグルコース及びキシロース濃度を定量した。下記式〔5〕からグルコースの糖化率を算出した。式〔5〕中、バイオマス試料は、糖化処理を行なったバイオマス試料を意味する。グルコース収率は塩基性化合物処理後に残存しているグルカン収率とグルコースの糖化率の積で算出した。
グルコース糖化率(%)=上清中のグルコース濃度(g/mL)/[{バイオマス試料濃度(g/mL(乾燥質量換算))×グルカン含有量(g/g−バイオマス試料)}/0.9]×100 〔5〕
実施例1
〔工程(1)〕
草本系バイオマス原料として、サトウキビバガス[サトウキビの搾りかす、グルカン含有量38.8%、キシラン含有量24.0%、リグニン含有量22.2%対乾燥原料換算、水分含有率50%対全量]を、多段ニーダー「E.Gimmick D20型」(株式会社大善製、原動機7.5kw仕様 3段)に、前記バガスを乾燥質量0.7kg/分で投入し、1段目及び2段目で乾式粉砕し、一次処理バイオマス(平均繊維長:15mm)を得た。
〔工程(2)〕
前記ニーダーの2段目から3段目への供給部に20%水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を、水酸化ナトリウムの濃度が原料バガスの乾燥質量100質量部に対して16質量部、また、固形分濃度25%となるよう、50℃の温水で希釈しながら定量ポンプで投入し、一次処理バイオマスと水酸化ナトリウム水溶液を前記ニーダーの3段目で湿式混合処理した。
この時の投入時の原料温度は25℃、1段目処理後出口温度は77℃、2段目処理出口温度は98℃、3段目出口温度は75℃であった。
得られた混合物を耐熱袋(エスクリニカパック WL)に約5kg程度ずつに小分けし、恒温槽内で保持温度72℃、保持時間150分にて保持する工程を経た後、二次処理バイオマスを得た。
〔工程(3)〕
次に、工程(2)で得られた二次処理バイオマスを、容量350Lパルパ(株式会社大善製、ランナー翼径180mm、回転数1,460rpm)に入れ、水を添加し、固形分濃度が5%となるように希釈した。次に、SUS316製平織金網400メッシュで濾過により固形分と液分に分離し、濾液の電気導電率が100ms/m以下となるまで、純水で水洗を行い、グルカンを含有する固形分を回収した。成分分析の結果を表2に示す。
〔工程(6)〕
工程(3)で得られたグルカンを含有する固形分(グルカン含有量:55%)を下記に示す方法で糖化処理を行った。
工程(3)で得られた固形分1,500mg(乾燥質量として)を蓋つきスクリュー管(株式会社マルエム製、No.7,胴径φ35×深さ78mm)に投入し、水、1M硫酸及び100mM酢酸緩衝液3mLを添加して合計30mLでpHが5.0となるように調整した。得られた混合液に対し、工程(3)で得られた固形分の乾燥質量当たり、酵素使用量3mg/gとなるよう酵素製剤27mg(酵素タンパク量4.5mg)を加え、振とう攪拌機「BR−21UM」(TAITEC社製、回転数150rpm)にて攪拌しながら50℃で、72時間糖化を行った。酵素製剤は市販の「Cellic CTec2」(ノボザイムズ社製)を用いた。この際、Cellic CTec2のタンパク質量は200g/L、密度1.19957g/mLとして計算した。結果を表2に示す。
実施例2
〔工程(1)〕
実施例1と同様の多段ニーダーを用いて、3段目での水酸化ナトリウム水溶液及び希釈水の添加を行わず、3段目まで処理し、一次処理バイオマス(平均繊維長:10mm)を得た。なお、3段目出口温度は98℃であった。
〔工程(2)〕
工程(1)で得られた一次処理バイオマスをZ翼ラボニーダー「卓上ニーダー PNV−1型」(株式会社入江商会製)に入れ、水酸化ナトリウム水溶液と水を、実施例1と同比率となるように添加し、表1に示す混合温度及び時間にて、混合処理した。得られた混合物を表1の保持条件で保持する工程を経た後、二次処理バイオマスを得た。
〔工程(3)〕
次に、工程(2)で得られた二次処理バイオマスを、固形分濃度5%になるように水で希釈し、実施例1と同様の条件で濾過により固形分と液分に分離し、固形分の水洗を行い、グルカンを含有する固形分を回収した。成分分析の結果を表2に示す。
〔工程(6)〕
工程(3)で得られたグルカンを含有する固形分(グルカン含有量:54%)を実施例1の工程(6)に示す方法と同様の方法で糖化処理を行った。結果を表2に示す。
実施例3〜7
実施例2の工程(1)の条件を表1に示すように変更し、工程(2)の水酸化ナトリウム水溶液量を表1に示す濃度となる量に変更した以外は、実施例2と同様にして、固形分と液分に分離し、固形分の回収と糖化処理を行った。工程(1)後の一次処理バイオマスの平均繊維長は、実施例3,6では15mmであり、実施例4,7では25mm、実施例5では10mmであった。
結果を表2に示す。なお、実施例3,6については、工程(1)での処理における運転負荷動力を高める手段として、2段目出口にて排出口を狭く規制し(背圧をかけ)処理を行った。
比較例1〜3
実施例2において、工程(1)を行わず、草本系バイオマス原料及び工程(2)の条件を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして、固形分と液分に分離し、固形分の回収と糖化処理を行った。結果を表2に示す。
比較例4、5
実施例2において、工程(1)を行わず、草本系バイオマス原料及び工程(2)の条件を表1に示す条件に変更した以外は、実施例2と同様にして、固形分と液分に分離し、固形分の回収を行った。結果を表2に示す。なお、工程(3)におけるグルカンの含有量が低かったため、糖化処理は行わなかった。
実施例8
〔工程(4)〕
実施例1の工程(3)で得られた固形分を、ラボパルパーに入れ、固形分量5%、塩基性化合物量12%となるように、48%水酸化ナトリウム水溶液及び水を添加、混合し、その後、リファイナーで処理し、三次処理バイオマスを得た。次に、得られた三次処理バイオマスを表3に示す条件にて保持する工程を経た。
〔工程(5)〕
その後、実施例1と同様の条件で濾過及び水洗を行い、固形分と液分に分離し、固形分を回収した。成分分析の結果を表4に示す。
〔工程(6)〕
工程(5)で得られたグルカンを含有する固形分(グルカン含有量:78%)を実施例1の工程(6)に示す方法と同様の方法で糖化処理を行った。結果を表4に示す。
実施例9〜11及び比較例6
実施例8の処理固形分及び工程(4)の条件を表3に示すように変更した以外は、実施例8と同様にして固形分の回収と糖化処理を行った。結果を表4に示す。
(実施例各条件の説明)
(原料)
未粉砕バガス:サトウキビの搾りかす、グルカン含有量38.8%、キシラン含有量24.0%、リグニン含有量22.2%対乾燥原料換算、水分含有率50%対全量
粗粉砕バガス:上記未粉砕バガスを、一軸式破砕機「UG03−480YG(F)L」(株式会社ホーライ製)にて、繊維長が10mm以下となるように粗粉砕し、粗粉砕バガスを得た。
(ニーダーの装置条件)
<E.Gimmick>
装置概要:株式会社大善製、E.Gimmick D20型
原動機:7.5kW/段
ニーダー段数:3台(3段)
シリンダ径:200mm
ブレード径:185mm
クリアランスの最小値:7.5mm(ニーディングブレード最大径と内壁間)
固定ブロックブレード:位相0°、90°
回転数:100rpm
原料投入速度:バイオマス乾燥質量0.7kg/分
<Z翼ラボニーダー>
装置概要:株式会社入江商会製、卓上ニーダー PNV−1型(双椀ニーダー)
原動機:0.25kW
ニーダー段数:1台(1段)
攪拌翼:Z翼
翼径:70mm
翼幅:19mm
クリアランスの最小値:1.0mm(スクリュー最大径と内壁間)
回転数:30rpm(実施例2〜7)、68rpm(比較例1〜3)
仕込み量:バイオマス乾燥質量0.0188kg/バッチ
<パーカー二軸>
装置概要:日本パーカーライジング株式会社製、二軸混練押出機、HK−25D(D41)型
原動機:15kW
スクリュー径:25mm
クリアランスの最小値:0.5mm(スクリュー最大径と内壁間)
回転数:100rpm
原料投入速度:バイオマス乾燥質量0.0032kg/分
(工程(4)実施例に用いた機器類)
<リファイナー>
装置概要:熊谷理機工業株式会社製、KRKディスクリファイナー
プレート:D
回転数:3,000rpm
先端周速:47.91m/sec
プレートギャップ:ほぼ0、バイオマススラリー1パス通液処理
処理量:バイオマススラリー量2,000mL
<ラボパルパー>
装置概要:熊谷理機工業株式会社製、JIS標準離解機
回転数:1,440rpm
先端周速:6.03m/sec
処理量:バイオマススラリー量2,000mL
混合時間:4分
<ディスパ>
装置概要:プライミックス株式会社製、ロボミックス
攪拌形式:攪拌ホモディスパ2.5型
翼径:38.91mm
回転数:4,000rpm
先端周速:8.15m/sec
処理ポット:800mL(内径91.12mm)
処理量:バイオマススラリー量500mL
表1中、注釈、略語等は以下の意味である。
*1 バイオマスの乾燥質量100質量部に対する添加量(質量部)
*2 動力原単位の総和は、工程(1)及び工程(2)の合計値
<装置>
E−1:E.Gimmick 1段
E−2:E.Gimmick 2段
E−3:E.Gimmick 3段
Z:Z翼ラボニーダー
P:パーカ二軸
上記の各装置の詳細は、前述のとおりである。
表2中、注釈、略語等は以下の意味である。
*1 グルカン収率が低いため工程(6)未実施
表3中、注釈、略語等は以下の意味である。
*1 実施例1の工程(3)で得られた固形分
*2 比較例1の工程(3)で得られた固形分
*3 工程(3)で得られたバイオマスの乾燥質量100質量部に対する添加量(質量部)
<装置>
LP:ラボパルパー
L:リファイナー
D:ディスパ
S:スターラー撹拌
上記の各装置の詳細は、前述のとおりである。
表に示すように、実施例の方法で得られた処理バイオマスはグルカンの糖化率が高く、効率よくグルコース組成物を製造することができる。
1:ニーダー
2:シリンダ
21:固定ブロックブレード
22:原料投入部
23:排出口
3:回転軸
4:ニーディングブレード
5:駆動装置
6:スクリュー
c:回転軸の中心
e:ニーディングブレードの端部

Claims (15)

  1. 草本系バイオマスを、ニーダーにより粉砕する工程と、
    前記粉砕する工程で得られた草本系バイオマスと、塩基性化合物と、水とを、ニーダーにより混合する工程と、
    前記混合する工程で得られた草本系バイオマスを、液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と、
    を有し、
    前記粉砕する工程のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、グルカン含有組成物の製造方法。
  2. 前記粉砕する工程のニーダーの、クリアランスの最小値が、1.5mm以上15mm以下である、請求項1に記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  3. 前記粉砕する工程のニーダーが、内壁に突起物を有するシリンダと、前記シリンダの長軸方向に配置された回転軸と、前記回転軸に設けられたニーディングブレードと、前記回転軸をシリンダ内で回転させる駆動装置と、を備え、
    前記ニーディングブレードが回転軸方向に複数設けられ、
    前記突起物が、前記ニーディングブレードの回転軸の軸方向の間に、前記シリンダ内の円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるように配置された、請求項1又は2に記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  4. 前記混合する工程のニーダーのクリアランスの最小値が、0.5mm以上15mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  5. 前記混合する工程のニーダーは、ニーディングブレードが、内壁に突起物を有するシリンダ内で回転するニーダーであって、前記シリンダ内の突起物によって、円周方向においてニーディングブレードの回転する位相により付加される剪断力が異なるニーダーである、請求項1〜4のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  6. 前記回転軸に設けられた処理物を運搬する螺旋状旋回翼群のスクリューを更に備え、前記スクリューが前記ニーディングブレードの上流に設けられた、請求項3に記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  7. 前記ニーダーが、前記シリンダ及び前記ニーディングブレードを有するニーダーを2以上備えた多段ニーダーである、請求項1〜6のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  8. 前記ニーダーの数が2以上5以下である、請求項7に記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  9. 前記粉砕する工程の粉砕が、乾式粉砕である、請求項1〜8のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  10. 前記混合する工程における草本系バイオマスの濃度が、草本系バイオマス、塩基性化合物、及び水の総量に対して、10質量%以上75質量%以下である、請求項1〜9のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  11. 前記混合する工程におけるニーダー内の温度が110℃以下である、請求項1〜10のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  12. 前記混合する工程後、28℃以上100℃以下で30分以上温度保持する工程を有する、請求項1〜11のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  13. 前記分離する工程で得られたグルカンを含有する固形分を、塩基性化合物に接触させる工程と、
    前記接触させる工程により得られた液分とグルカンを含有する固形分とに分離する工程と
    を更に有する、請求項1〜12のいずれかに記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  14. 前記接触させる工程が、5℃以上50℃以下で5分以上温度保持して行われる、請求項13に記載のグルカン含有組成物の製造方法。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載の方法で得られたグルカン含有組成物を酵素により糖化処理する工程を有する糖の製造方法。
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