JP2018103131A - 排ガス浄化用触媒の製造方法および排ガス浄化用触媒 - Google Patents

排ガス浄化用触媒の製造方法および排ガス浄化用触媒 Download PDF

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佑樹 田中
洋 関根
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洋 関根
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和真 中田
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Abstract

【課題】形成後の触媒層に波打ちが生じることを防止して、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された排ガス浄化用触媒を製造することができる排ガス浄化用触媒の製造方法を提供する。【解決手段】ここで開示される製造方法は、基材1を縦置きに配置し、基材1の上側の端部1aに貯留部21を取り付ける工程と、原料スラリーSを貯留部21に供給する工程と、該原料スラリーSを圧力差で基材1内に導入して隔壁4に付与する工程と、焼成処理を施すことによって基材1の隔壁4に触媒層を形成する工程とを備えている。そして、貯留部21に原料スラリーSを供給する前に、基材1の上側の端面1cに水溶性薄膜22を配置し、該水溶性薄膜22によって原料スラリーSを貯留部21内に保持し、原料スラリーSを基材1の流路2に導入する際の圧力差で水溶性薄膜22を破断させて原料スラリーSを基材1内に導入することを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、排ガス浄化用触媒の製造方法および排ガス浄化用触媒に関する。
自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、炭化水素(HC:Hydro−Carbon)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分を浄化する排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気経路に配置されている。かかる排ガス浄化用触媒は、一般に、隔壁によって仕切られた複数の流路(セル)を有するハニカム構造の基材を備えており、かかる基材の隔壁表面(若しくは隔壁内部)に、触媒金属を含む触媒層が形成されている。かかる構造の排ガス浄化用触媒では、基材内の流路に供給された排ガスが触媒層に接触したときに、該触媒層中の触媒金属の作用によって排ガス中の有害成分が浄化される。
上記した排ガス浄化用触媒の触媒層は、触媒金属を含む原料スラリーを基材の隔壁に付与した後に焼成処理を施すことによって形成される。かかる触媒層を付与する方法の一例として、図6に示すようなウォッシュコート法が挙げられる。かかるウォッシュコート法では、先ず、ハニカム構造の基材51を縦置きにし、該基材51の上側の端部51aに貯留部71を取り付けるとともに、下側の端部51bを吸引装置73の台座73aに取り付ける。そして、貯留部71に原料スラリーSを供給した後に、吸引装置73を稼働させ、基材51内の流路52と貯留部71との間に圧力差を生じさせる。これによって、貯留部71内の原料スラリーSが流路52へ導入されて基材51内の隔壁54に付与される(例えば特許文献1〜3)。
特開2006−15205号公報 特表2002−506720号公報 特表2010−521305号公報
しかしながら、上記した製造方法を用いて基材の隔壁に触媒層を形成した場合、基材の筒軸方向における触媒層の長さがばらつく、所謂触媒層の波打ちが生じることがあった。このような筒軸方向における波打ちを有する触媒層が形成された排ガス浄化用触媒では、基材内の流路における排ガスの流れが不均一になって排ガス中の有害成分を浄化する能力(排ガス浄化能力)が低下したり、圧損が増加したりするという問題が生じる虞がある。このため、波打ちが形成されていない均一な触媒層を容易に形成することができる技術の開発が望まれていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、形成後の触媒層に波打ちが生じることを防止して、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を製造することができる排ガス浄化用触媒の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)を提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって以下の構成の排ガス浄化用触媒の製造方法が提供される。
ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法は、隔壁によって仕切られた複数の流路を有するハニカム構造の基材を備え、該基材の隔壁に触媒金属を含む触媒層が形成されている排ガス浄化用触媒を製造する方法である。
かかる製造方法は、複数の流路の一方の開口部が上側、他方の開口部が下側に向けられるように基材を配置し、基材の上側の端部に貯留部を取り付ける工程と、触媒金属を含む原料スラリーを貯留部に供給する工程と、流路内の圧力を貯留部内の圧力よりも低くすることによって貯留部内の原料スラリーを基材の流路に導入し、当該原料スラリーを基材の隔壁に付与する工程と、隔壁に原料スラリーが付与された基材に焼成処理を施すことによって基材の隔壁に触媒層を形成する工程とを備えている。
そして、ここで開示される製造方法は、貯留部に原料スラリーを供給する前に、基材の上側の端面を覆うように水溶性薄膜を配置し、該水溶性薄膜によって原料スラリーを貯留部内に保持し、原料スラリーを基材の流路に導入する際に、流路と貯留部との圧力差によって水溶性薄膜を破断させて原料スラリーを基材の流路に導入することを特徴とする。
本発明者は、上記した課題を解決するために種々の検討を行い、波打ちを有する触媒層が形成される原因が、圧力差によって原料スラリーを基材の流路に導入する前に原料スラリーが自重で基材内に入り込むことにあると考えた。
具体的には、上記したように、ウォッシュコート法では、基材の上側の端部に取り付けた貯留部に原料スラリーを供給した後、流路内の圧力を貯留部内の圧力よりも低くすることによって原料スラリーを基材内の流路に導入する。しかし、一般的なウォッシュコート法では、流路の一方の開口部が上側、他方の開口部が下側に向けられる、いわゆる縦置きの状態で基材が配置されるため、圧力差による導入を行う前に原料スラリーが自重で流路内に入り込む可能性がある。このような場合、その後の導入工程で基材の隔壁に付与される原料スラリーの量が不均一になり易く、焼成後の触媒層の筒軸方向における長さがばらついて触媒層の波打ちが生じる虞がある。
本発明者は、かかる考察に基づいて、縦置きに配置された基材の上側の端面を覆うように保持部材を配置すれば、自重で原料スラリーが基材内部に入り込むことを抑制することができるため触媒層の波打ちの発生を防止できると考えた。
そして、かかる基材の上側の端面を覆う保持部材として、上記した特許文献2や特許文献3などに記載の部材(多孔質の金属板、焼結金属スポンジ、織布、不織布、合成連続気泡フォーム、穴あきマスクなど)を利用することを検討した。
しかし、上記した保持部材として、例えば、多孔質の金属板や穴あきマスクを用いた場合には、開口部が設けられている箇所で依然として自重による原料スラリーの侵入が生じてしまい、触媒層の波打ちの発生を適切に防止することができなかった。また、焼結金属スポンジ、織布、不織布、合成連続気泡フォームなどを保持部材として用いると、自重による原料スラリーの侵入を一部抑制することはできたが、圧力差によって原料スラリーを基材内部に導入する際のスラリー導入量が不均一になってしまい、均一な触媒層を形成することができなくなった。
さらに、上記した何れの保持部材を用いた場合でも、圧力差による原料スラリーの導入を行った後に、保持部材を取り外して洗浄する必要が生じたため、製造効率の低下という新たな問題が生じた。
そこで、本発明者は、貯留部内に原料スラリーを保持するための保持部材として適切な部材について種々の実験と検討を重ね、水分によって軟化する材料から構成された薄膜(水溶性薄膜)を使用することに思い至った。
この水溶性薄膜には、上記した穴あきマスクのような開口部が形成されていないため、貯留部に供給された原料スラリーを適切に保持して、原料スラリーが自重で基材内に入り込むことを確実に防止することができる。
一方、この水溶性薄膜は、原料スラリー中の水分によって軟化し、原料スラリーを基材内に導入する際の圧力差によって容易に破断させることができるため、上記した焼結金属スポンジなどの保持部材と異なり、原料スラリーを基材の流路内に均一に導入して隔壁に付与することができる。
さらに、水溶性薄膜は、原料スラリーの導入を行った後の焼成処理で焼失するため、上述した種々の保持部材と異なり、保持部材の取り外しや洗浄などを行う必要がなく、製造効率の低下が生じることを防止できる。
以上のように、本実施形態では、基材の上側の端面を覆うように水溶性薄膜を配置することによって、導入工程を行う前に原料スラリーが自重で基材内に入り込むことを確実に防止するとともに、導入工程において原料スラリーを均一に導入させることができるため、波打ちの発生が防止された均一な触媒層を形成することができる。さらに、かかる水溶性薄膜は、焼成処理において焼失させることができるため、取り外して洗浄を行う必要がなく、製造効率の低下を防止することができる。
このため、本実施形態によれば、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を効率よく製造することができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい一つの態様では、水溶性薄膜として、でんぷん、寒天、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンのうちから選択される少なくとも一種以上の水溶性ポリマーからなる薄膜を用いることを特徴とする。
これらの水溶性ポリマーからなる薄膜は、貯留部内の原料スラリーを適切に保持することができるとともに、当該原料スラリーの水分によって適切に軟化させて原料スラリーの導入時の圧力差で容易に破断させることができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい他の態様では、水溶性薄膜として、厚みが10μm以上40μm以下である水溶性薄膜を用いることを特徴とする。
水溶性薄膜の厚みが薄すぎると、原料スラリーを貯留部に供給した際に当該水溶性薄膜が破断して自重による原料スラリーの侵入が生じる虞がある。一方で、水溶性薄膜の厚みが厚すぎると、圧力差によって原料スラリーを導入する際に水溶性薄膜が均一に破断されず、流路内に導入される原料スラリーが不均一になる虞がある。
これに対し、厚みが10μm以上40μm以下の水溶性薄膜を用いた場合には、上記した問題の発生を確実に防止することができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい他の態様では、原料スラリーとして、ずり速度4秒−1における粘度が20mPa・s以上750mPa・s以下である原料スラリーを用いることを特徴とする。
一般に、ずり速度4秒−1における粘度が750mPa・s以下の原料スラリー(以下、「低粘度スラリー」ともいう)は、貯留部などに付着しにくいため製造中の原料ロスが少なくなるという利点を有している一方で、自重で基材内に入り込み易いという問題も有している。
これに対して、ここで開示される製造方法では、上記したように、原料スラリーが自重で基材内に入り込むことを確実に防止できるため、原料ロスが少なくなる低粘度スラリーを適切に使用することができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい他の態様では、原料スラリーを基材の流路に導入する際に、流路内に10m/sec〜80m/secの気流が生じるように流路を吸引することを特徴とする。
原料スラリーを基材の流路に導入するに際して、水溶性薄膜を適切に破断させるためには、貯留部と流路との圧力差を適切に調整することが好ましい。例えば、上記のように、流路内に10m/sec〜80m/secの気流が生じるように流路を吸引することによって、基材の上側の端面に配置された水溶性薄膜が均一に破断するような圧力差を生じさせることができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい他の態様では、基材として、コージェライト、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウムのうちから選択される何れかによって構成されている基材を用いることを特徴とする。
これらのセラミックス材料は、高温環境下でも破損等が生じ難く、焼成処理の温度を十分に昇温させることができるため、適切に触媒層を形成することができる。
また、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の好ましい他の態様では、基材として、ストレートフロー構造体又はウォールフロー構造体(ウォールスルー構造体ともいう)を用いることを特徴とする。
ここで開示される製造方法は、ストレートフロー構造体とウォールフロー型構造体の何れを基材として用いた場合でも実施することができ、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を製造することができる。
また、本発明の他の側面として、上記した製造方法によって製造された排ガス浄化用触媒が提供される。
かかる排ガス浄化用触媒は、隔壁によって仕切られた複数の流路を有するハニカム構造の基材と、触媒金属を含む触媒層とを備えている。そして、かかる排ガス浄化用触媒は、基材の隔壁に形成されている触媒層の平均厚みを100%としたときの基材の端面に形成されている触媒層の平均厚みが0%〜1%であることを特徴とする。
上記したように、ここで開示される製造方法によって製造された排ガス浄化用触媒は、触媒層に波打ちが生じることが防止されているため、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制されている。
加えて、上記した製造方法では、製造過程において、基材の上側の端面が水溶性薄膜で覆われており、かかる基材の上側の端面に原料スラリーが付着しにくいため、製造後の排ガス浄化用触媒の基材の上側の端面に殆ど触媒層が形成されない。換言すれば、上記した製造方法によって製造された排ガス浄化用触媒では、基材の隔壁に形成されている触媒層の厚みを100%としたときの基材の端面に形成されている触媒層の厚みが0%〜1%となる。
かかる排ガス浄化用触媒は、排ガス中の有害成分を浄化する場である基材内部に触媒層の大部分が形成されているため、高い排ガス浄化能力を発揮することができる。
本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一例を模式的に示した斜視図である。 図1に示す排ガス浄化用触媒の断面構造を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法を模式的に説明する図である。 排ガス浄化用触媒の端面近傍の断面構造を模式的に示す図である。 本発明の他の実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の断面構造を模式的に示す図である。 従来の排ガス浄化用触媒の製造方法を模式的に説明する図である。
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さなど)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、触媒金属や担体の構造等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。
1.排ガス浄化用触媒
先ず、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒について説明する。かかる排ガス浄化用触媒は、種々の内燃機関、特に自動車のディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排気系(排気管)に配置され、当該内燃機関から排出された排ガス中の有害成分(HC、CO、NOx等)を浄化する。
図1は本実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法によって得られる排ガス浄化用触媒の一例を模式的に示した斜視図であり、図2は図1に示す排ガス浄化用触媒の断面構造を模式的に示す図である。なお、図1および図2中の矢印は、排ガス浄化用触媒10を内燃機関の排気系に配置したときの排ガスが流れる向きを示している。すなわち、図1および図2中の左側が排ガス供給方向の上流側であり、右側が下流側である。
(1)全体構成
図1および図2に示すように、この排ガス浄化用触媒10は、円筒状であってハニカム構造を有した基材1を備えている。かかる基材1は、その筒軸方向(排ガス供給方向)に沿って延びた複数の流路(セル)2を備えており、かかる流路2の両端が開放されたストレートフロー構造体である。かかる基材1の流路2は、隔壁4によって仕切られており、隔壁4の表面には触媒層6が形成されている。
かかる構造の排ガス浄化用触媒10に供給された排ガスは、基材1の流路2内を通過し、隔壁4の表面に設けられた触媒層6と接触することによって有害成分が浄化される。例えば、排ガスに含まれるHCやCOは、触媒層6に含まれる触媒金属の作用によって酸化されて水(HO)や二酸化炭素(CO)などに変換(浄化)される。また、例えばNOxは、触媒金属の作用によって還元されて窒素(N)に変換(浄化)される。以下、各構成要素について順に説明する。
(2)基材
基材1は、排ガス浄化用触媒の骨格となる構造体であり、上記したように円筒状であってハニカム構造を有したストレートフロー構造体である。かかる基材1としては、従来この種の用途に用いられる種々の材料を用いることができる。基材1の材料には、例えば、高耐熱性を有するセラミックスを好ましく用いることができる。かかる基材1の材料の具体例としては、酸化アルミニウム(Al)、酸化セリウム(CeO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ケイ素(SiO)、チタン酸アルミニウム(AlTiO))等の酸化物系セラミックスが挙げられる。また、高耐熱性セラミックスの他の材料としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)等の複合酸化物系セラミックスや炭化ケイ素(SiC)等の炭化物系セラミックスなどが挙げられる。あるいは、セラミックス以外の材料としてステンレス鋼等の合金を用いることもできる。
基材1の寸法についても、一般的な排ガス浄化用触媒と同様の寸法とすることができる。特に限定されないが、基材1の容量(換言すれば、流路2の総体積)は、0.01L以上(例えば0.02L以上、好ましくは0.1L以上)であり、5L以下(例えば3L以下、好ましくは2L以下)とすることができる。また、基材1の筒軸方向の全長は、10mm〜500mm(例えば50mm〜300mm)とすることができる。なお、本実施形態においては円筒形状の基材1を用いているが、かかる基材の形状も特に限定されず、例えば、楕円筒形状、多角筒形状等を採用してもよい。
また、本実施形態に係る製造方法には、排ガス供給方向の上流側と下流側とで流路の径が異なるHAC(High Ash Capacity)構造の基材を用いることもできる。
(3)触媒層
触媒層6は、排ガス中の有害成分を浄化する触媒金属を含んだ層であって、基材1の隔壁4に形成されている。本実施形態においては、基材1の隔壁4の表面に、所定の厚みの触媒層6が形成されており、かかる触媒層6には触媒金属と担体とが含まれている。
(a)触媒金属
触媒金属には、一般的な排ガス浄化用触媒において用いられる触媒金属、すなわち、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属を用いることができる。かかる触媒金属の典型例としては、白金族であるロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等の貴金属が挙げられる。あるいは、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、金(Au)等を使用することもでき、また、これらの触媒金属を合金化したものを用いることもできる。上記した触媒金属の中でも、還元活性の高いロジウム、酸化活性が高いパラジウムや白金を好適に用いることができ、特にこれらを2種以上組み合わせたものを好ましく用いることができる。このような複数の触媒金属を用いることによって、排ガス中の多様な有害成分を効率的に浄化することができる。また、触媒層6には、上記した各種の触媒金属以外の金属元素が含まれていてもよい。
また、触媒金属は、排ガスとの接触面積を高めて浄化効率を向上させるという観点から、粒径が小さな微粒子として使用されることが好ましい。このとき、TEM(Transmission Electron Microscope)観察に基づいた触媒金属の平均粒径は、1nm〜15nm程度、典型的には10nm以下、例えば7nm以下、さらには5nm以下であることが好ましい。
また、触媒層6における触媒金属の含有量は、排ガス浄化用触媒10の用途に応じて異なり得るため特に限定されないが、例えば触媒層6の全質量の0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.3質量%以上、好ましくは0.4質量%以上)であって、3質量%以下(典型的には2質量%以下、例えば1質量%以下)であるとよい。触媒金属の含有量が少なすぎると所望の排ガス浄化性能が得られにくく、有害成分のエミッションが生じることがあり得る。一方、触媒金属の量が多すぎると、触媒金属の粒成長や合金化が進行し、所望の触媒活性が安定的に得られない虞がある。
(b)担体
本実施形態においては、担体についても、一般的な排ガス浄化用触媒と同様のものを使用することができる。かかる担体の具体例としてセラミック体が挙げられる。典型的には、比較的に比表面積が大きく、且つ、優れた耐熱性を有する多孔質セラミック体を好ましく用いることができる。かかる多孔質セラミック体としては、例えば、アルミナ(Al)、セリア(CeO)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、及びこれらの固溶体(例えば、セリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物))、あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
2.排ガス浄化用触媒の製造方法
次に、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。図3は本実施形態に係る排ガス浄化用触媒の製造方法を説明する図である。なお、図3では、説明の便宜上、基材1や貯留部21などの一部の部材については、その断面構造を示している。
本実施形態に係る製造方法は、従来の製造方法と同様に、基材1の上側の端部1aに取り付けられた貯留部21に、触媒層6(図2参照)の前駆体である原料スラリーSを供給し、圧力差によって貯留部21内の原料スラリーSを基材1の流路2に導入して隔壁4の表面に付与した後、基材1に焼成処理を施すことによって隔壁4の表面に触媒層6を形成する。
そして、本実施形態に係る製造方法は、貯留部21に原料スラリーSを供給する前に、基材1の上側の端面1cを覆うように水溶性薄膜22を配置する点が従来の製造方法と異なる。
このように、基材1の上側の端面1cを水溶性薄膜22で覆うことによって、原料スラリーSを基材1の流路2内に導入するまで原料スラリーSを貯留部21内に確実に保持することができるため、原料スラリーSが自重で基材1内部に入り込むことを確実に防止することができる。そして、かかる水溶性薄膜22は、圧力差によって原料スラリーSを導入する際に容易に破断させることができるため、貯留部21内の原料スラリーSを均一に基材1内の流路2に導入して基材1の隔壁4に付与することができる。以下、本実施形態に係る製造方法を具体的に説明する。
(1)基材の準備
図3(a)に示すように、本実施形態に係る製造方法では、先ず、流路2の一方の開口部が上側、他方の開口部が下側に向けられるように(換言すれば、基材1の筒軸方向と重力方向とが略平行になるように)基材1を縦置きの状態で配置する。そして、基材1の上側の端部1aに略筒状の貯留部21を取り付けるとともに、吸引装置23の台座23aに基材1の下側の端部1bを取り付ける。
そして、本実施形態に係る製造方法では、基材1の上側の端面1cを覆うように、水溶性薄膜22を配置する。かかる水溶性薄膜22は、水分によって軟化して強度が低下する材料をシート状に成形した薄膜である。この水溶性薄膜22の材料には、でんぷん、寒天、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンのうちから選択される水溶性ポリマーを用いることができる。また、水溶性薄膜22には、上記した水溶性ポリマーを2種類以上混合したものを用いてもよい。
また、水溶性薄膜22の厚みは10μm以上40μm以下(例えば20μm)であることが好ましい。水溶性薄膜22の厚みが薄すぎると、原料スラリーSを貯留部21に供給した際に当該水溶性薄膜22が破断する虞がある。また、厚すぎると、後述する原料スラリーの導入を行う際に、水溶性薄膜22を均一に破断させることができずに、流路2内に導入される原料スラリーSが不均一になる虞がある。これに対し、水溶性薄膜22の厚みを10μm以上40μm以下にすることによって、上記した問題の発生を確実に防止することができる。
(2)スラリーの供給
次に、図3(b)に示すように、基材1の上側の端部1aに取り付けられた貯留部21に原料スラリーSを供給する。このとき、本実施形態においては、基材1の上側の端面1cが水溶性薄膜22によって覆われているため、かかる水溶性薄膜22によって原料スラリーSが貯留部21内に保持され、原料スラリーSが自重で基材1の内部に入り込むことを確実に防止できる。
なお、本工程において貯留部21に供給される原料スラリーSは、触媒層6(図2参照)の前駆体であり、上記した触媒金属と担体とを、水などの水系溶媒に分散させたペースト状の材料である。また、原料スラリーSには、上記した金属触媒と担体の他に増粘剤などの添加物が含まれていてもよい。
また、本実施形態に係る製造方法は、ずり速度4秒−1における粘度が20mPa・s以上750mPa・s以下である低粘度スラリーを用いた場合に、特に好ましい効果を発揮することができる。具体的には、粘度が750mPa・s以下の低粘度スラリーは、貯留部21などに付着しにくいため、製造中の原料ロスが少なくなるという利点を有している一方で、導入工程前に自重で基材1の流路2内へ入り込みやすいため触媒層の波打ちが生じ易いという問題も有している。これに対して、ここで開示される製造方法は、原料スラリーが自重で基材内に侵入することを確実に防止できるため、触媒層の波打ちという低粘度スラリー使用時に頻発する問題の発生を適切に防止した上で、原料ロスの削減という利点のみを得ることができる。
(3)スラリーの導入
次に、図3(c)に示すように、基材1の流路2内の圧力を貯留部21内の圧力よりも低くすることによって貯留部21内の原料スラリーSを基材1の流路2に導入し、当該原料スラリーSを基材1の隔壁4に付与する。
具体的には、基材1の下側の端部1bに取り付けた吸引装置23を稼働させ、基材1の流路2の圧力を低下させて流路2と貯留部21との間に圧力差を生じさせることによって原料スラリーSを基材1の内部に導入する。このとき、本実施形態に係る製造方法では、基材1の上側の端面1cが水溶性薄膜22に覆われているが、かかる水溶性薄膜22は、原料スラリーSの水分によって軟化して強度が低下しているため、流路2と貯留部21との圧力差によって容易に破断させることができる。これによって、貯留部21内の原料スラリーSを流路2内に均一に導入させて隔壁4の表面に付与することができる。
なお、吸引装置23は、流路2内に10m/sec〜80m/sec(好ましくは15m/sec)の気流が生じるように設定することが好ましい。これによって、水溶性薄膜22を適切に破断させて原料スラリーSを均一に導入させることができる。
(4)焼成処理
次に、隔壁4に原料スラリーSが付与された基材1に焼成処理を施すことによって、隔壁4に触媒層6(図2参照)を形成する。具体的には、先ず、吸引装置23を停止させた後に、図3(d)に示すように、貯留部21と吸引装置23から基材1を取り外し、かかる基材1を焼成炉に移して焼成処理を開始する。これによって、基材1の隔壁4の表面に触媒層6が形成される。上記したように、本実施形態に係る製造方法では、原料スラリーが隔壁4の表面に均一に付与されているため、筒軸方向における波打ちが生じていない均一な触媒層6を形成することができる。
なお、このときの焼成処理の条件は、一般的な排ガス浄化用触媒の製造方法における焼成処理と同様の条件に設定することができる。典型的には、大気雰囲気下で50℃〜120℃(例えば60℃〜100℃)の温度域まで昇温して1分〜30分程度保持することによって、基材1の隔壁4に付与された原料スラリーを乾燥させた後、さらに400℃〜1000℃(例えば400℃〜600℃)まで昇温させて30秒以上保持するという二段階昇温で基材1を加熱することが好ましい。
そして、本実施形態においては、図3(d)に示すように、焼成処理を施す前の基材1の端面1cに水溶性薄膜22が付着しているが、かかる水溶性薄膜22は焼成処理によって焼失する。このため、本実施形態に係る製造方法では、水溶性薄膜22を基材1から取り外して洗浄する必要がないため製造効率の低下が生じることを防止できる。
3.本実施形態の効果
以上のように、本実施形態に係る製造方法では、基材1の上側の端面1cを覆うように水溶性薄膜22が配置されているため、貯留部21内の原料スラリーSを圧力差で基材1に導入する前に、当該原料スラリーSが自重で基材1内に入り込むことを防止することができる(図3(b)参照)。
そして、かかる水溶性薄膜22は、原料スラリーSの水分によって軟化するため、原料スラリーSを導入する際の圧力差で容易に破断させることができ、原料スラリーSを圧力差で基材1内に導入する際に、当該原料スラリーSを均一に導入して基材1の隔壁4に付与することができる(図3(c)参照)。
このため、本実施形態によれば、筒軸方向における波打ちが生じていない均一な触媒層を形成することができるため、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を製造することができる。
さらに、本実施形態において用いられる水溶性薄膜22は、焼成処理によって焼失するため、基材1から取り外したり洗浄したりする必要がなく、製造効率を低下させるようなことがない。
また、一般的なウォッシュコート法では、図6に示すように、貯留部71に供給された原料スラリーSが直接基材51の上側の端面51cに接するため、図4(a)に示すように、製造後の排ガス浄化用触媒50では、基材51内部の隔壁54だけでなく、基材51の端面51cにも所定の厚みの触媒層56が形成される。
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、図3に示すように、製造過程において基材1の上側の端面1cが水溶性薄膜22で覆われているため、図4(b)に示すように、製造後の排ガス浄化用触媒10の基材1の上側の端面1cに殆ど触媒層6が形成されない。換言すれば、本実施形態に係る製造方法によって製造された排ガス浄化用触媒10では、基材1の隔壁4に形成されている触媒層6の厚みt1の平均を100%としたときの基材1の端面1cに形成されている触媒層の厚みt2の平均が0%〜1%となる。
かかる排ガス浄化用触媒10は、排ガス中の有害成分を浄化する場である基材1内部に触媒層6の大部分が形成されるため、高い排ガス浄化能力を発揮することができる。
4.他の実施形態
以上、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法の一実施形態を説明したが、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記した実施形態に限定されない。
例えば、上記した実施形態では、吸引装置23で基材1の流路2を吸引することによって、原料スラリーSを基材1の流路2に導入しているが、原料スラリーSを導入する方法はこれに限定されない。
例えば、基材の上側の端部に取り付けられる貯留部に加圧装置を設け、該貯留部の内圧を上昇させることによって、相対的に流路の圧力を貯留部よりも低くし、貯留部内の原料スラリーを基材の流路に向けて押し流す、いわゆるエアブローを実施した場合であっても、水溶性薄膜を適切に破断させて、基材の流路に均一に原料スラリーを導入することができる。
また、上記した実施形態においては、図2に示すように、基材1として、流路2の両端が開放されたストレートフロー構造体を使用しているが、図5に示すようなウォールフロー構造体(ウォールスルー構造体)を基材1として用いてもよい。かかるウォールスルー構造体は、ガス流出側の端部が封止部材3aで封止された入側流路2aと、ガス流入側の端部が封止部材3bで封止された出側流路2bとを備え、該入側流路2aと出側流路2bとが、多孔質の隔壁4によって仕切られている。
かかるウォールスルー構造体を基材1として用いた場合には、多孔質の隔壁4の内部に触媒層(図示省略)が形成されるが、ここで開示される排ガス浄化用触媒の製造方法は、このような隔壁4内部に触媒層が形成される排ガス浄化用触媒10aを製造する場合にも使用することができる。そして、このようなウォールスルー型の排ガス浄化用触媒10aを製造する場合でも、原料スラリーを基材内に均一に導入して均質な触媒層を形成することができるため、排ガス浄化能力の低下や圧損の増加が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を製造することができる。
また、図5に示すようなウォールスルー型の排ガス浄化用触媒10aを製造するに際しては、原料スラリーを基材1の隔壁4内に均一に浸透させるために、低粘度スラリーを使用することが好ましい。ここで、本実施形態に係る製造方法は、上記したように、低粘度スラリー使用時に頻発する問題の発生を適切に防止した上で、低粘度スラリーを使用することによる利点のみを得ることができるため、低粘度スラリーを用いてウォールスルー型の排ガス浄化用触媒を製造する場合に特に好ましく用いることができる。
また、上記した実施形態では、一回の導入工程で基材1の隔壁4の全面に原料スラリーSを付与しているが、当該導入工程を行う回数は二回以上であってもよい。導入工程を二回以上設けることによって、基材1内の特定の領域に触媒層6を集中して形成したり、触媒金属の種類が異なる2種類以上の触媒層を形成したりすることができるため、用途に応じた排ガス浄化用触媒を製造することができる。
また、上記した実施形態では、原料スラリーの粘度、水溶性薄膜の厚み、吸引装置による吸引速度、基材の流路の径などの種々の条件を例示したが、これらの条件は種々の要因で変化し得るものであり、ここで開示される製造方法を限定することを意図したものではない。ここで開示される製造方法を用いて排ガス浄化用触媒を製造するに際しては、後述する試験例のように、実験を行って種々の条件について好ましい値を予め特定しておくことが好ましい。
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明するが、以下の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
[実験A]
実験Aにおいては、作製工程を異ならせて3種類の排ガス浄化用触媒(試験例1〜試験例3)を作製し、作製した排ガス浄化用触媒の基材の隔壁表面に形成された触媒層の波打ちの程度を調べた。以下、具体的に説明する。
1.各試験例の作製
(1)試験例1
試験例1においては、上記した実施形態に係る製造方法を用いて排ガス浄化用触媒を作製した。具体的には、基材として、コージェライトからなるハニカム構造のストレートフロー構造体(直径160mm、筒軸方向における全長185mm)を用いた。そして、図3に示すように、かかる基材1の上側の端部1aに貯留部21を取り付けるとともに、当該基材の1の下側の端部1bを吸引装置23に取り付けた後、膜厚20μmのシート状のでんぷんを水溶性薄膜22として、基材1の上側の端面1cを覆うように配置した。
次に、触媒金属(ロジウム:Rh)と担体(アルミナ:Al)と水とを混合した原料スラリー(コーンプレート型粘度計(東機産業:TVE−35H)で測定したずり速度4秒−1における粘度:250mPa・s)を貯留部21に800ml供給した後、吸引装置23を1分間稼働させて基材1内部の流路2に原料スラリーSを導入した。なお、このとき、基材1の流路2内での風速が15m/sになるように吸引装置23を設定した。
そして、貯留部21と吸引装置23から基材1を取り外した後に、当該基材1を75℃で5時間加熱することによって基材1の隔壁4に付与された原料スラリーを乾燥し、その後、500℃で3時間加熱することによって焼成処理を行い、ロジウムとアルミナ担体とからなる触媒層6が基材1の隔壁4の表面に形成された排ガス浄化用触媒を作製した。
(2)試験例2
試験例2では、原料スラリー中の水の量を試験例1よりも少なくして、ずり速度4秒−1における粘度が750mPa・sの原料スラリーを調製したことを除いて、試験例1と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。
(3)試験例3
試験例3では、図6に示すように、基材51の上側の端面51cに水溶性薄膜を配置せずに、貯留部71に原料スラリーSを供給したことを除いて、試験例1と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。
2.評価試験
(1)スラリー保持性
各試験例において、原料スラリーを貯留部に供給してから、吸引装置を稼働させるまで1分間保持した後、貯留部内の原料スラリーが減少しているか否かを調べることによって、原料スラリーが自重で基材の内部に入り込んでいるか否かを確認した。確認方法として、貯留部に供給する前の原料スラリー重量を測定し、続いて供給1分後に貯留部から原料スラリーを取り出して原料スラリー重量を測定した。そして、供給前の原料スラリー重量を100%として、供給後にスラリー重量が95%以上の場合を「良」とし、95%未満の場合を「不可」とした。
(2)波打ち領域の長さ
各試験例において、作製後の排ガス浄化用触媒を筒軸方向に沿って切断し、基材内部の隔壁の表面に形成された触媒層を目視で観察した。そして、基材の筒軸方向において最も長く形成された触媒層の長さ(最大コート幅)と、最も短く形成された触媒層の長さ(最小コート幅)とを測定した。そして、かかる最大コート幅と最小コート幅との差を波打ち領域の長さとして算出した。結果を表1に示す。なお、表1においては、筒軸方向における基材の全長を100%としたときの割合で波打ち領域の長さを示している。
Figure 2018103131
表1に示すように、試験例1および試験例2では、試験例3と異なり、貯留部に原料スラリーが適切に保持されており、波打ち領域の長さが大幅に短くなっていることが確認できた。このことから、原料スラリーを貯留部21に供給する前に、基材の上側の端面を水溶性薄膜で覆うことによって、貯留部に供給された原料スラリーが自重で基材内部に入り込むことを確実に防止して、均一な触媒層を形成できることが確認できた。
また、試験例1および試験例2に示すように、原料スラリーの粘度が異なる場合であっても、水溶性薄膜を用いることによって触媒層の波打ちを防止できることが確認できた。
[実験B]
本実験では、上記した実験Aと異なり、基材にウォールスルー構造体を用い、かかるウォールスルー構造体を基材として用いた場合であっても、波打ちの発生を抑制することができるかを調べた。
1.各試験例の作製
(1)試験例4
図5に示すようなウォールスルー構造体を基材1として用いたことを除いて、上記した試験例1と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、試験例4では、原料スラリーの粘度を250mPa・sとし、水溶性薄膜として、膜厚20μmのでんぷん製の薄膜を使用した。
(2)試験例5
図5に示すウォールスルー構造体を基材として用いたことを除いて、上記した試験例2と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、試験例5では、原料スラリーの粘度を750mPa・sとし、水溶性薄膜として、膜厚20μmのでんぷん製の薄膜を使用した。
(3)試験例6
ウォールスルー構造体の基材として用いたことを除いて、上記した試験例3と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、試験例6では、原料スラリーの粘度を250mPa・sとし、水溶性薄膜を用いずに排ガス浄化用触媒を作製した。
(4)試験例7
粘度が750mPa・sの原料スラリーを用いたことを除いて、上記した試験例6と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、試験例7では、原料スラリーの粘度を750mPa・sとし、水溶性薄膜を用いずに排ガス浄化用触媒を作製した。
2.評価試験
上記した実験Aと同じ手順で、スラリー保持性と波打ち領域の長さを評価した。評価結果を表2に示す。
Figure 2018103131
表2中の試験例4および試験例5に示すように、ウォールスルー構造体を基材として使用し、ウォールスルー型の排ガス浄化用触媒を作製する場合であっても、上記したストレートフロー構造体を使用した場合と同様に、水溶性薄膜を基材の上側の端面に配置して、原料スラリーを貯留部内に適切に保持することによって、均質な触媒層が形成できることが確認できた。
[実験C]
次に、本実験では、上記した実験Aや実験Bで使用した原料スラリーよりも大幅に粘度が低い(粘度:20mPa・s)原料スラリーを用い、かかる原料スラリーを適切に保持できるかを調べた。また、本実験においては、水溶性薄膜の材料や膜厚も異ならせて、様々な態様の試験を行った。
1.各試験例の作製
(1)試験例8〜試験例10
試験例8〜試験例10では、粘度が20mPa・sの原料スラリーを用いるとともに、表3に示すように、でんぷん製の水溶性薄膜の膜厚をそれぞれの試験例で異ならせた。なお、その他の条件は実験Bの試験例4と同じ条件に設定した。
(2)試験例11〜試験例13
試験例11〜試験例13では、粘度が20mPa・sの原料スラリーを用いるとともに、表3に示すように、ポリビニルアルコール(PVA)製の水溶性薄膜を用い、各々試験例で水溶性薄膜の膜厚を異ならせた。なお、その他の条件は実験Bの試験例4と同じ条件に設定した。
(3)試験例14
試験例14は、粘度が20mPa・sの原料スラリーを用いたことを除いて、試験例6と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、試験例14では、水溶性薄膜を配置せずに排ガス浄化用触媒を作製した。
2.評価試験
上記した実験Aおよび実験Bと同じ手順で、スラリー保持性と波打ち領域の長さを評価した。評価結果を表3に示す。
Figure 2018103131
表3中の試験例8〜試験例10に示すように、粘度が20mPa・sという非常に低粘度の原料スラリーを使用した場合であっても、でんぷん製の水溶性薄膜を基材の端面の上に配置することによって、原料スラリーの導入を開始するまで当該原料スラリーを適切に保持して、作製後の排ガス浄化用触媒の触媒層に波打ちが生じることを適切に防止できることが確認できた。
また、試験例11〜試験例13の結果より、水溶性薄膜の材料は、でんぷんに限られず、ポリビニルアルコールのような合成ポリマーを使用できることが確認できた。
さらに、試験例8〜試験例13に示すように、原料スラリーの粘度が20mPa・sの場合、水溶性薄膜の厚さが少なくとも10μm〜40μmの範囲であれば、原料スラリーを適切に保持して、作製後の排ガス浄化用触媒の触媒層に波打ちが生じることを適切に防止できることが確認できた。
[実験D]
上記した実験Cの結果より、ここで開示される製造方法によれば、粘度が20mPa・sという非常に低粘度の原料スラリーを使用した場合であっても、作製後の排ガス浄化用触媒の触媒層に波打ちが生じることを適切に防止できることが確認できた。
かかる実験結果を受けて、低粘度スラリーを用いた場合に得られる効果を調べる実験Dを行った。
1.各試験例の作製
(1)試験例9
上記した実験Cにおける試験例9と同じ条件で排ガス浄化用触媒を作製した。すなわち、本試験例では、粘度が20mPa・sの原料スラリーを用いるとともに、表4に示すように、膜厚20μmのでんぷん製の水溶性薄膜を用いて、排ガス浄化用触媒の作製を行った。
(2)試験例15
試験例15では、調製後の原料スラリーに増粘剤を1.0wt%添加して、スラリー粘度を1000mPa・sに調整し、上記した試験例6と同様に、水溶性薄膜を配置せずに排ガス浄化用触媒を作製した
2.評価試験
(1)スラリーロスの測定
排ガス浄化用触媒の作製前後における貯留部の重量の差をスラリーロスとして測定した。結果を表4に示す。なお、表4では、貯留部に供給した原料スラリー量(800ml)を100%としたときのスラリーロス量の割合を示している。
(2)圧損上昇率の測定
試験例9および試験例15において作製した排ガス浄化用触媒の圧損上昇率を測定した。具体的には、まず触媒層を形成する前の基材(リファレンス)を準備し、6m/minの風量で空気を流通させたときの圧損を測定した。次に、試験例9および試験例15で作製した排ガス浄化用触媒(触媒層付き基材)を用いて、同様に6m/minの風量で空気を流通させた時の圧損を測定した。そして次式:(排ガス浄化用触媒の圧損/リファレンスの圧損)×100;から圧損上昇率(%)を算出した。算出結果を表4に示す。
Figure 2018103131
表4に示す結果より、低粘度スラリーを使用した試験例9では、試験例15よりもスラリーロスが低減されていた。このことから、ここで開示される製造方法によって使用可能となった低粘度スラリーを用いると、排ガス浄化用触媒の作製後に貯留部に付着するスラリー量を少なくして、製造コストの向上を図ることができることが分かった。
また、低粘度スラリーを使用した試験例9では、試験例15よりも圧損上昇率が低くなっていた。これは、低粘度スラリーは基材の隔壁内部に浸透し易く、均質な触媒層を形成することができるためと解される。このことから、ここで開示される製造方法によって使用可能となった低粘度スラリーを用いると、圧損の上昇が抑制された高性能の排ガス浄化用触媒を作成できることが分かった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1、51 基材
1a、51a 上側の端部
1b、51b 下側の端部
1c、51c 上側の端面
2、52 流路
2a 入側流路
2b 出側流路
3a、3b 封止部材
4、54 隔壁
6、56 触媒層
10、10a、50 排ガス浄化用触媒
21、71 貯留部
22 水溶性薄膜
23、73 吸引装置
23a、73a 台座
t1 隔壁に形成されている触媒層の厚み
t2 端面に形成されている触媒層の厚み
S 原料スラリー


Claims (8)

  1. 隔壁によって仕切られた複数の流路を有するハニカム構造の基材を備え、該基材の隔壁に触媒金属を含む触媒層が形成されている排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
    前記複数の流路の一方の開口部が上側、他方の開口部が下側に向けられるように前記基材を配置し、前記基材の上側の端部に貯留部を取り付ける工程と、
    前記触媒金属を含む原料スラリーを前記貯留部に供給する工程と、
    前記流路内の圧力を前記貯留部内の圧力よりも低くすることによって前記貯留部内の前記原料スラリーを前記基材の流路に導入し、当該原料スラリーを前記基材の隔壁に付与する工程と、
    前記隔壁に前記原料スラリーが付与された基材に焼成処理を施すことによって、前記基材の隔壁に触媒層を形成する工程と
    を備え、
    ここで、前記貯留部に前記原料スラリーを供給する前に、前記基材の上側の端面を覆うように水溶性薄膜を配置し、該水溶性薄膜によって前記原料スラリーを前記貯留部内に保持し、
    前記原料スラリーを前記基材の流路に導入する際に、前記流路と前記貯留部との圧力差によって前記水溶性薄膜を破断させて前記原料スラリーを前記基材の流路に導入することを特徴とする、排ガス浄化用触媒の製造方法。
  2. 前記水溶性薄膜として、でんぷん、寒天、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンのうちから選択される少なくとも一種以上の水溶性ポリマーからなる薄膜を用いることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  3. 前記水溶性薄膜として、厚みが10μm以上40μm以下である水溶性薄膜を用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  4. 前記原料スラリーとして、ずり速度4秒−1における粘度が20mPa・s以上750mPa・s以下である原料スラリーを用いることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  5. 前記原料スラリーを前記基材の流路に導入する際に、前記流路内に10m/sec〜80m/secの気流が生じるように前記流路を吸引することを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  6. 前記基材として、コージェライト、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウムのうちから選択される何れかによって構成されている基材を用いることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  7. 前記基材として、ストレートフロー型構造体又はウォールフロー型構造体を用いることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
  8. 隔壁によって仕切られた複数の流路を有するハニカム構造の基材と、触媒金属を含む触媒層とを備えた排ガス浄化用触媒であって、
    前記基材の隔壁に形成されている前記触媒層の平均厚みを100%としたときの前記基材の端面に形成されている触媒層の平均厚みが0%〜1%であることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。

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