JP2018102491A - 医療材料用シート及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、哺乳動物の皮膚には体毛があり、その体毛が残っていると、そこが汚染源となり、細菌やエンドトキシンなどの問題が生じ、衛生面や生体への適合性の点から、それをそのまま使用することはできず、体毛を除去する必要がある。
また機械を使用して毛を挟み込み、物理的に除毛する方法も提案されている。(特許文献13)
また特許文献13に記載の機械を使用しても、哺乳動物の体毛は、太さや長さなどの形状、生えている方向、毛の密集度、本数、毛根の深さなど、種によっても、同じ種でも各個体によって様々であり、その体毛を満足に除去することはできなかった。
すなわち本発明は、哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであり、体毛が除去されており、シートに存在する体毛が、1cm2あたりに換算して、0本〜3.00本の範囲内である医療材料用シートを提供するものである。
本発明の医療材料用シートは哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化した組織(「脱細胞化組織」とも称する)からなる。哺乳動物としては特に限定されず、ヒトも含まれるが、入手のし易さから哺乳動物の家畜が好ましい。哺乳動物の家畜としては、ウシ、ウマ、ラクダ、リャマ、ロバ、ヤク、ヒツジ、ブタ、ヤギ、シカ、アルパカ、イヌ、タヌキ、イタチ、キツネ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ラット、マウス、リス、アライグマ等が挙げられる。これらの中でも、生体への適合性から、哺乳動物の皮膚由来組織としてはウシ、ブタ、ウマ又はヒト由来のものが好ましく、また入手し易く、安全性の観点から、ブタの皮膚由来組織がより好ましい。
体毛の数を測定する際には、体毛が毛根のみである場合も1本としてカウントする。
しかしながら、少なくとも出願時においては、出願人の技術レベルでは、本明細書で述べた本発明の医療材料用シートの物としての特徴以外に、そのような構造又は特性の存在を確認した上で、具体的に特定することはできなかった。また、そのような特定のためには、著しく過大な経済的支出及び時間を要する。
以上の事情より、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、出願人は、上記の通り、本発明の医療材料用シートが「皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をすることにより製造される医療材料用シート」であることが好ましいことを記載した。
以上の通り、本願出願時においては、皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をすることにより製造される医療材料用シートの構造及び特性を全て特定することが不可能であるという事情が存在した。
本発明の医療用材料シートの製造方法は、哺乳動物の皮膚由来組織のシートに存在する体毛を除去する、いわゆる除毛工程を有することを特徴とする。
本発明での除毛方法は、除毛しようとするシートに、液体中で、剛体を衝突させることで物理的衝撃を与え除毛することを特徴の一つとする。
剛体とは、一般的に、力の作用の下で変形しない物体のことをいうが、本発明での剛体は、除毛工程中に、容易に変形しない物体であればよい。
衝突時の液体の温度は特に限定されないが、温度が高いと、シートが熱変成する恐れがあるため、35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。好ましい温度範囲としては、5〜35℃であり、5〜30℃がより好ましい。
(2)ブタ皮膚を、薄切りし厚さを調節する工程
(3)脱細胞化処理工程
(4)除毛工程
(2)の工程で、シートの厚さを調節する。このときに表皮や皮下組織等の必要のない部分除いてもよい。好ましくは真皮だけとする。厚さの調節や、真皮のみにするカットにはデルマトーム等の機械を使用してもよい。
(3)脱細胞化処理工程には、前処理工程や洗浄工程も含む。
(4)除毛工程は、脱細胞化処理工程の後に行うのが好ましい。また脱細胞化処理を行いながら、除毛処理を行うことも好ましい。
<実施例1:シートNo.1>
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
屠畜場からブタ皮膚を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ皮膚を長さ100mm、幅100mmの正方形に切り出した。切り出したブタ皮膚の体毛をバリカンで刈り、デルマトーム(日本メディスペック(株):MODEL S6)で薄切し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。得られたブタ皮膚シートの膜厚は364μmであった。
〔脱細胞化処理工程〕
得られた皮膚シートは、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)を用いて100〜1000 MPaにて高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素含有洗浄液により洗浄処理した後、アルコール含有洗浄液により洗浄処理し、さらにその後、クエン酸緩衝液により洗浄処理し、脱細胞化ブタ皮膚シートを得た。
〔除毛処理工程〕
250mLの密閉できる容器に、脱細胞化皮膚シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加えた。更に、生理食塩水100mLを加えた後密閉し、振盪機(EYELA、MULTI SHAKER MMS)を用いて、液温6℃にて8の字振盪140rpmを24時間行うことによって、除毛された脱細胞化ブタ皮膚シートNo.1を得た。得られたシートNo.1を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
ブタ皮膚シートの膜厚が405μmであることと、除毛処理工程で用いた剛体がポットミル:Φ19mm(アズワン、ナイロン球)5個であること以外は、実施例1と同様の手順で実施し、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.2を得た。得られたシートNo.2の除毛評価を、実施例1と同様に行った結果を表1に示す。
ブタ皮膚シートの膜厚が492μmであること以外は、実施例1と同様の手順で実施し、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.3を得た。得られたシートNo.3の除毛評価を、実施例1と同様に行った結果を表1に示す。
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
実施例1と同様の手順で、測定試料を準備し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。このシートの膜厚は235μmであった。
(脱細胞化処理及び除毛処理の同時工程)
得られたブタ皮膚シートは、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)を用いて100〜1000 MPaにて高静水圧処理を行った。250mLの密閉できる容器に、高静水圧処理シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加え、洗浄液として、実施例1で使用したのと同じ核酸分解酵素含有洗浄液の同量を用い、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを96時間行い、その後、核酸分解酵素含有洗浄液を、実施例1で使用したのと同じアルコール含有洗浄液の同量に入れ替え、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを72時間行い、その後、アルコール含有洗浄液を、実施例1で使用したのと同じ緩衝液の同量に入れ替え、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを72時間行うことによって、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.4を得た。得られたシートNo.4を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
実施例1と同様の手順で、測定試料を準備し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。このシートの膜厚は310μmであった。
(脱細胞化処理及び除毛処理の同時工程)
250mLの密閉できる容器に、得られたブタ皮膚シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加えた。更に、リン酸緩衝生理食塩水(Ca、Mgフリー)を溶媒とする界面活性剤ドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量%溶液100mLを容器に加え密閉した。これを、実施例1と同じ液温、振盪機にて8の字振盪140rpmを24時間行うことによって、除毛された脱細胞化ブタ皮膚シートNo.5を得た。得られたシートNo.5を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。
ブタ皮膚シートの膜厚が374μmであることと、剛体を使用した除毛処理工程を行わない以外は、実施例1と同様の手順で、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.6を得た。得られたシートNo.6の除毛評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
ブタ皮膚シートの膜厚が213μmであることと、高静水圧処理を行わないこと以外は、実施例4と同様の手順で、ブタ皮膚シートNo.7を得た。得られたシートNo.7の除毛評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。本比較例では高静水圧処理が行なわれていないため、脱細胞化処理工程が完全に行われず、脱細胞化ブタ皮膚シートが得られていない。
ブタ皮膚シートの膜厚が310μmであることと、洗浄処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で、ブタ皮膚シートNo.8を得た。得られたシートNo.8を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。本比較例では核酸分解酵素含有洗浄液、アルコール含有洗浄液及びクエン酸緩衝液による洗浄処理が行なわれていないため、脱細胞化処理工程が完全に行われず、脱細胞化ブタ皮膚シートが得られていない。
ブタ皮膚シートの膜厚が320μmであることと、8の字振盪時に、剛体を使用していないこと以外は、実施例5と同様の手順で、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.9を得た。得られたシートNo.9を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。
ブタ皮膚シートの膜厚が310μmであること、脱細胞化処理工程及び除毛処理工程を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で実施し、ブタ皮膚シートNo.10を得た。得られたシートNo.10を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
得られたブタ皮膚シートNo.1〜No.10それぞれについて、ランダムに3箇所を、拡大鏡(トラスコ中山、フラッシュルーペ、倍率2倍)を用いて観察した。各箇所2.0×2.0cmに存在する毛穴の数と残存する毛の本数をカウントし、その平均値から、1cm2あたりの毛の残存率を算出した。
Claims (6)
- 哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであって、シートに存在する体毛が1cm2あたりに換算して、0本〜3.00本の範囲内である医療材料用シート。
- 皮膚由来組織が、真皮由来組織である請求項1に記載の医療材料用シート。
- 哺乳動物がブタである請求項1又は2に記載の医療材料用シート。
- 哺乳動物の皮膚由来組織から得られる脱細胞化された医療材料用シートの製造方法であって、皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をする工程を有する製造方法。
- 皮膚由来組織が、真皮由来組織である請求項4に記載の製造方法。
- 哺乳動物がブタである請求項4又は5に記載の製造方法。
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JP2016250690A JP6841650B2 (ja) | 2016-12-26 | 2016-12-26 | 医療材料用シート及びその製造方法 |
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WO2022102739A1 (ja) * | 2020-11-12 | 2022-05-19 | 株式会社Adeka | 脱細胞化組織組成物 |
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2016
- 2016-12-26 JP JP2016250690A patent/JP6841650B2/ja active Active
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