JP6841650B2 - 医療材料用シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、移植用途や治療用途に使用される医療材料用シートに関する。更に本発明は該医療材料用シートの製造方法に関する。
近年、生体適合性材料を使用した医療材料が利用されるようになっている。特に、他人又は多種の動物の組織を移植する場合の拒絶反応を低減するために、生体由来組織から細胞を除去する脱細胞化処理を施した、脱細胞化組織を利用した脱細胞化材料が開発されている。例えば脱細胞化の方法としては、界面活性剤を使用する方法(特許文献1、2)、酵素を使用する方法(特許文献3)、酸化剤を使用する方法(特許文献4)、高静水圧処理による方法(特許文献5〜7)、凍結融解処理による方法(特許文献8、9)、高張電解質溶液で処理する方法(特許文献10)等が知られている。これら脱細胞化組織のなかでも、シート状の形状をした医療材料用シートは、移植材料や、代用生体膜、手術後の癒着を防止する癒着防止材料、創傷被覆材等としての使用が期待されている。
これら脱細胞化組織を利用した医療用材料シートの原料としては、その形状と原料入手の容易さから哺乳動物の皮膚由来組織が用いられている。
しかしながら、哺乳動物の皮膚には体毛があり、その体毛が残っていると、そこが汚染源となり、細菌やエンドトキシンなどの問題が生じ、衛生面や生体への適合性の点から、それをそのまま使用することはできず、体毛を除去する必要がある。
哺乳動物の皮膚からの体毛の除去方法としては、哺乳動物の皮膚や肉を食用とするときの処理や、皮をなめすときなどに、硫化ナトリウムや石灰、さらには酵素や潤滑油などを用い化学的処理により体毛を除去する方法が知られている。(特許文献11、12)
また機械を使用して毛を挟み込み、物理的に除毛する方法も提案されている。(特許文献13)
特開昭60−501540号公報 特表2003−518981号公報 特表2002−507907号公報 特表2003−525062号公報 特開2004−097552号公報 国際公開第2008/111530号パンフレット 特表2013−502275号公報 特開2005−185507号公報 特開2005−211480号公報 特開2010−221012号公報 特開2001−234128号公報 特開平8−311500号公報 特表2013−539687号公報
しかしながら、特許文献11、12に記載の化学的処理は、皮膚のタンパク質が変成する問題があり、得られるシートの物性に悪影響を及ぼしてしまい好ましくない。また、処理に用いた化学薬品等が残存した場合、たとえ少量でも医療用材料へ使用する場合は大きな障害となる。
また特許文献13に記載の機械を使用しても、哺乳動物の体毛は、太さや長さなどの形状、生えている方向、毛の密集度、本数、毛根の深さなど、種によっても、同じ種でも各個体によって様々であり、その体毛を満足に除去することはできなかった。
従って本発明の目的は、哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであって、体毛が除去され医療用途に好適な医療材料用シートを提供することにある。また本発明の目的は、体毛が除去された医療用途に好適な医療材料用シートの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであり、体毛が除去されており、シートに存在する体毛が、1cmあたりに換算して、0本〜3.00本の範囲内である医療材料用シートを提供するものである。
また本発明は、皮膚由来組織が、真皮由来組織である上記医療材料用シートを提供するものである。
また本発明は、哺乳動物がブタである上記医療材料用シートを提供するものである。
また本発明は、哺乳動物の皮膚由来組織から得られる脱細胞化された医療材料用シートの製造方法であって、皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をする工程を有することを特徴とする製造方法を提供するものである。
また本発明は、皮膚由来組織が真皮由来組織である前記製造方法を提供するものである。
また本発明は、哺乳動物がブタである前記製造方法を提供するものである。
本発明によれば、哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであって、体毛が除去され医療用途に好適な医療材料用シートを提供することができる。また本発明によれば、体毛が除去され医療用途に好適な医療材料用シートの製造方法を提供することができる。
まず本発明の除毛された医療材料用シートについて好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明の医療材料用シートは哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化した組織(「脱細胞化組織」とも称する)からなる。哺乳動物としては特に限定されず、ヒトも含まれるが、入手のし易さから哺乳動物の家畜が好ましい。哺乳動物の家畜としては、ウシ、ウマ、ラクダ、リャマ、ロバ、ヤク、ヒツジ、ブタ、ヤギ、シカ、アルパカ、イヌ、タヌキ、イタチ、キツネ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、ラット、マウス、リス、アライグマ等が挙げられる。これらの中でも、生体への適合性から、哺乳動物の皮膚由来組織としてはウシ、ブタ、ウマ又はヒト由来のものが好ましく、また入手し易く、安全性の観点から、ブタの皮膚由来組織がより好ましい。
一般的に哺乳動物の皮膚は表皮、真皮、皮下組織から構成されるが、本発明で使用される皮膚由来組織は、これら皮膚を構成する組織のいずれかを含んでいればよく、表皮、真皮、皮下組織、さらに他の組織を含んでいてもよい。なかでも、生体適合性とシートにしたときの物性から、真皮を含んでいるものが好ましく、真皮がより好ましい。
本発明の医療用材料シートは、これら哺乳動物の皮膚由来組織を、脱細胞化処理したシートである。脱細胞化処理の方法は特に限定されず、従来公知の方法が挙げられる。脱細胞化処理の例を挙げると、物理的撹拌、超音波処理、凍結融解法、高静水圧法、高張液低張液法、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤等による界面活性剤による処理、蛋白分解酵素や核酸分解酵素等による酵素処理、アルコール溶剤による処理等が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせる場合もある。医療用材料シートとしては、これらのいずれの方法に関わらず、前記の組織から細胞が全て除去されたもののみならず、拒絶反応や免疫反応が防止されるレベルにおいて、細胞が残存していてもよい。細胞が除去されているとは、細胞膜、細胞質及び核酸が全て除去されていることが好ましいが、上述したように、拒絶反応や免疫反応が防止されるレベルにおいて、細胞膜、細胞質及び核酸のうちいずれかが残存していてもよい。脱細胞化処理には、脱細胞化をする工程以外に、脱細胞し易くする前処理工程や、組織から脱細胞した細胞や細胞由来成分を洗浄により除去する洗浄工程などが含まれる。例えば通常、高静水圧法による脱細胞化を行う場合、高静水圧処理工程及びその後の洗浄処理の両方が、拒絶反応や免疫反応が防止された脱細胞化組織を得るために必要である。
また本発明の医療用材料シートは、体毛が除去されており、シートに存在する体毛が、1cmあたりに換算して、0本〜3.00本の範囲内であることを特徴の一つとする。シートに存在する体毛が1cmあたりに換算して、3.00本を超えると衛生面から問題があるため、医療用材料シートとしては不適である。シートに存在する体毛は衛生面の点から、1cmあたりに換算して0本〜2.00本が好ましく、0本〜1.00本がより好ましく、0本〜0.60本がさらにより好ましい。シートに存在する体毛は、既に皮膚から生えていたものが抜けてシート上に戴置されているものは含まれず、体毛の一部、または全体がシートに埋まっている状態のものを指す。シートに存在する体毛の数は、実施例に記載の方法にて測定できる。
体毛の数を測定する際には、体毛が毛根のみである場合も1本としてカウントする。
体毛の除去方法は特に限定されないが、化学薬品を使用する方法や、加熱工程を有する方法は、シート内に化学薬品が残存する恐れや、シートの物性に悪影響を及ぼす恐れがあり、好ましくなく、毛抜き等を用いて手作業で体毛を引き抜く方法は、時間と手間がかかりすぎるため好ましくなく、従来公知の機械を使用して体毛を挟み込み引く抜く方法は、除毛が完全に行われない可能性がある。本発明において、特に好ましい除毛方法としては、下記で述べる、液体中で剛体を皮膚由来組織に衝突させ物理的衝撃を与える方法が挙げられる。
本発明の医療用材料シートの形状は、特に限定されず、使用用途・目的に応じて適宜選択すればよいが、矩形(長方形)、略矩形、正方形、略正方形、菱形、略菱形、円形、楕円形、三角形、その他の四角形、多角形などが挙げられ、取り扱い性の点から、矩形(長方形)、略矩形、正方形、略正方形が好ましい。
本発明の医療用材料シートの大きさ(サイズ)は、特に限定されず、使用用途・目的に応じて適宜選択すればよいが、取り扱い性の点と、原料が個体によって大きさにハバのある哺乳動物の皮膚由来のため製品の均一性の点から、例えば、形状が矩形の場合、縦1.0cm〜25.0cm、横2.0cm〜30cmが好ましく、縦2.0cm〜20.0cm、横6.0cm〜25.0cmがより好ましく、縦4.0〜16.0cm、幅10.0〜22.0cmがさらにより好ましい。シート形状が略矩形、正方形、略正方形、菱形、略菱形、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形である場合も、これに準じて決定することができる。シートの大きさが小さすぎると取扱い性が低下する恐れがあり、大きすぎると取扱い性が低下する恐れや、製品の均一性が崩れる恐れがある。
本発明の医療用材料シートの面積としては、特に限定されず、使用用途・目的に応じて適宜選択すればよいが、取り扱い性の点と、原料が個体によって大きさにハバのある哺乳動物の皮膚由来のため製品の均一性の点から、16cm〜480cmが好ましく、36cm〜400cmがより好ましく、50cm〜320cmがさらにより好ましい。
本発明の医療用材料シートの厚みとしては、特に限定されないが、真皮層、または真皮層を含む皮膚を原料とするのが生体適合性や膜の物性の点から好ましいため、原料のブタの個体によってハバがあるが、好ましくは100μm〜3000μm、より好ましくは、150μm〜1500μm、さらにより好ましくは180μm〜800μm、さらにより好ましくは200μm〜450μmである。
本発明の医療用材料シートは、脱細胞化されているため、拒絶反応の心配がなく、また原料由来の毛が除去されているため衛生面でも優れている。医療用材料シートに、体毛が残っている場合、毛そのものや、毛の生えている毛根周辺に、汚れ、菌、ウイルスなどが付着・滞留しやすくなったり、それらの洗浄、消毒、滅菌、滅ウイルスなどの作業が困難となったりするため問題がある。
本発明の医療用材料シートは生体からの拒絶反応の心配がなく、衛生面で優れている点から、移植用材料、生体代用膜、癒着防止材、創傷被覆材、移植細胞用シート、生体用薬物含有シート等に好適に使用できる。
また本発明の医療材料用シートは、後述するように皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をすることにより製造されるものであることが好ましい。本発明者はこの処理により得られた医療材料用シートが、従来の方法により除毛した医療材料用シートに比べて残存する体毛数が少ないことを確認した。本来ならば、この処理による医療材料用シートの構造や特性について、何らかの手段を用いて測定した上で、本願の特許請求の範囲において直接明記することが望ましい。
しかしながら、少なくとも出願時においては、出願人の技術レベルでは、本明細書で述べた本発明の医療材料用シートの物としての特徴以外に、そのような構造又は特性の存在を確認した上で、具体的に特定することはできなかった。また、そのような特定のためには、著しく過大な経済的支出及び時間を要する。
以上の事情より、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、出願人は、上記の通り、本発明の医療材料用シートが「皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をすることにより製造される医療材料用シート」であることが好ましいことを記載した。
以上の通り、本願出願時においては、皮膚由来組織に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をすることにより製造される医療材料用シートの構造及び特性を全て特定することが不可能であるという事情が存在した。
次に、本発明の医療用材料シートの製造方法について説明する。
本発明の医療用材料シートの製造方法は、哺乳動物の皮膚由来組織のシートに存在する体毛を除去する、いわゆる除毛工程を有することを特徴とする。
まず本発明の製造方法における除毛方法を説明する。
本発明での除毛方法は、除毛しようとするシートに、液体中で、剛体を衝突させることで物理的衝撃を与え除毛することを特徴の一つとする。
除毛工程で除毛しようとするシートは、脱細胞化処理工程後のシートでもよいし、脱細胞化処理工程前のシートでもよいが、除毛のし易さから脱細胞化処理工程後のシートが好ましい。ここでいう脱細胞化処理工程とは、脱細胞化のみである場合もあるが、好ましくは、脱細胞化だけではなく、それに付随する前処理や、酵素処理、アルコール等の溶剤や緩衝液、界面活性剤等による洗浄処理なども含まれる。また、脱細胞化処理を行いながら、除毛処理を行うこともできる。
また、本発明の除毛工程の前に、ハサミ、バリカン、機械などを使用して体毛を、ある程度刈っておくことも好ましい。また除毛しようとする皮膚由来組織は、あらかじめ表皮や皮下組織を除いておくことも好ましい。
また、除毛しようとするシートは、除毛のし易さから、真皮が好ましい。
本発明の除毛工程で、剛体を衝突させるときの、液体は、水、食塩水、アルコール等の有機溶剤、これらの混合物等が挙げられるが、除毛効率に優れることから、水、生理食塩水、水とアルコールの混合溶媒が好ましく、水又は生理食塩水がより好ましく、生理食塩水がさらにより好ましい。また、これらの溶媒には、酵素、界面活性剤、塩、洗浄剤等が含まれていてもよい。
本発明の除毛工程で使用される剛体について説明する。
剛体とは、一般的に、力の作用の下で変形しない物体のことをいうが、本発明での剛体は、除毛工程中に、容易に変形しない物体であればよい。
剛体の材質としては、鉄、ステンレス、銅、銀等の金属又は合金製、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル等の合成樹脂製、セラミック製、ガラス製、又はこれらの複合体が挙げられる。剛体は、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂の内部に磁石などを包含し、磁力によって液体を撹拌できるいわゆる撹拌子(回転子ともいう)なども挙げられる。また磁石そのものでもかまわない。
材質としては、液体中で使用しても変質(錆や溶解、損壊)等の少ない、合成樹脂製のものが好ましく、剛体の表面が合成樹脂やガラスで被覆されているものも好ましい。合成樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン等が好ましい。
剛体の形状としては、特に限定されないが、例えば、球状、楕円球状、ラグビーボール状、俵状、柱状、棒状などの形状が挙げられ、鋭角的な突起や、角が存在すると、シート自体を損傷する恐れがあるため、表面は曲面で構成されるのが好ましく、突起や角が存在するとしても表面が緩やかになっているのが好ましい。具体的には、球状や、楕円球状、ラグビーボール状、俵状などが好ましく、なかでも球状が特に好ましい。
剛体の大きさとしては、除毛しようとするシートの大きさによって、適宜選択すればよいが、除毛に優れる点から、例えば球状の場合、直径が2mm〜30mmが好ましく、4mm〜24mmがより好ましく、5mm〜20mmがより好ましい。剛体の好ましい大きさを体積で表すと、除毛に優れる点から、4mm〜15000mmが好ましく、30mm〜7500mmが好ましく、65mm〜4200mmがより好ましい。
本発明で使用される剛体の具体例としては、ボールミル等で粉砕に使用される粉砕球の使用も好ましく、それらの中でもナイロン球が好ましい。
本発明の除毛工程において、剛体の数は、1個でもよく、複数個同時に使用してもよい。
本発明の除毛工程において、液体中で剛体をシートに衝突させる方法は、シートと剛体の入った液体(例えば生理食塩水)を撹拌して衝突させてもよいし、それらを密閉容器に入れて容器ごと振盪して衝突させてもよい。撹拌、振盪には、攪拌機、振盪機などの機械を使用してもよい。また剛体自身が撹拌子のように動くことによってシートに衝突させてもよい。除毛工程において、液体中で剛体は繰り返しシートに衝突させる。ここでいう繰り返しとは、剛体が複数存在する場合、剛体同士を区別せず、一の剛体がシートに衝突した後に別の剛体が衝突すれば繰り返し衝突することに該当するものとする。除毛工程において、液体中で剛体を繰り返しシートに衝突させる処理は、連続的に行うことが好ましく、例えば当該処理は、0.5時間以上、或いは6時間以上かけて行うことが好ましい。この間、例えば衝突休止期間を一定時間設けてもよく、その場合は、休止時間を除いた各回の処理の時間の合計が上記の下限以上であることが好ましい。
液体の量は特に限定されず、シートと剛体が充分に衝突する量であればよい。衝突させる速度、回数、衝突させる時間等は特に限定されず、除毛が完了するまで適宜選択すればよいが、例えば除毛効率の点から、振盪又は撹拌の速度は、それが回転運動又は往復運動である場合は、20rpm以上900rpm以下が好ましく、40rpm以上450rpm以下であることがより好ましい。
衝突時の液体の温度は特に限定されないが、温度が高いと、シートが熱変成する恐れがあるため、35℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。好ましい温度範囲としては、5〜35℃であり、5〜30℃がより好ましい。
除毛したあとに、抜いた毛をシートから取り去るため、水、溶媒等で洗浄してもよい。洗浄には酵素、界面活性剤、洗浄剤などを使用してもよい。
本発明の脱細胞化された医療材料用シートの製造方法は前記、除毛工程を有することを特徴とする。哺乳動物由来の皮膚から、例えば、ブタの皮膚から真皮由来の脱細胞化された医療用材料シートを得る場合、以下の(1)から(4)の工程を行う製造方法によって作製される。
(1)ブタ皮膚を目的の大きさにカットし、さらにその体毛をバリカン等で刈る工程
(2)ブタ皮膚を、薄切りし厚さを調節する工程
(3)脱細胞化処理工程
(4)除毛工程
(1)の毛を刈る工程では、ある程度の毛が抜ける場合もあるが、短く刈っても毛や毛根は皮膚に残るため、これら除毛工程で除去する。
(2)の工程で、シートの厚さを調節する。このときに表皮や皮下組織等の必要のない部分除いてもよい。好ましくは真皮だけとする。厚さの調節や、真皮のみにするカットにはデルマトーム等の機械を使用してもよい。
(3)脱細胞化処理工程には、前処理工程や洗浄工程も含む。
(4)除毛工程は、脱細胞化処理工程の後に行うのが好ましい。また脱細胞化処理を行いながら、除毛処理を行うことも好ましい。
また、除毛工程の後に、洗浄工程や乾燥工程などを行ってもよい。さらにカットしサイズを再調整してもよい。
また医療用材料シートとして使用するため、各工程前後に、滅菌工程や滅ウイルス工程等を入れてもよい。滅菌や滅ウイルスには従来公知の方法が使用できる。
以下、実施例により本発明を詳細に示す。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
<実施例1:シートNo.1>
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
屠畜場からブタ皮膚を購入し、冷蔵で搬送した。このブタ皮膚を長さ100mm、幅100mmの正方形に切り出した。切り出したブタ皮膚の体毛をバリカンで刈り、デルマトーム(日本メディスペック(株):MODEL S6)で薄切し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。得られたブタ皮膚シートの膜厚は364μmであった。
〔脱細胞化処理工程〕
得られた皮膚シートは、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)を用いて100〜1000 MPaにて高静水圧処理を行った。処理したシートを核酸分解酵素含有洗浄液により洗浄処理した後、アルコール含有洗浄液により洗浄処理し、さらにその後、クエン酸緩衝液により洗浄処理し、脱細胞化ブタ皮膚シートを得た。
〔除毛処理工程〕
250mLの密閉できる容器に、脱細胞化皮膚シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加えた。更に、生理食塩水100mLを加えた後密閉し、振盪機(EYELA、MULTI SHAKER MMS)を用いて、液温6℃にて8の字振盪140rpmを24時間行うことによって、除毛された脱細胞化ブタ皮膚シートNo.1を得た。得られたシートNo.1を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
<実施例2:シートNo.2>
ブタ皮膚シートの膜厚が405μmであることと、除毛処理工程で用いた剛体がポットミル:Φ19mm(アズワン、ナイロン球)5個であること以外は、実施例1と同様の手順で実施し、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.2を得た。得られたシートNo.2の除毛評価を、実施例1と同様に行った結果を表1に示す。
<実施例3:シートNo.3>
ブタ皮膚シートの膜厚が492μmであること以外は、実施例1と同様の手順で実施し、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.3を得た。得られたシートNo.3の除毛評価を、実施例1と同様に行った結果を表1に示す。
<実施例4:シートNo.4>
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
実施例1と同様の手順で、測定試料を準備し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。このシートの膜厚は235μmであった。
(脱細胞化処理及び除毛処理の同時工程)
得られたブタ皮膚シートは、研究開発用高圧処理装置((株)神戸製鋼所製:Dr.CHEF)を用いて100〜1000 MPaにて高静水圧処理を行った。250mLの密閉できる容器に、高静水圧処理シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加え、洗浄液として、実施例1で使用したのと同じ核酸分解酵素含有洗浄液の同量を用い、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを96時間行い、その後、核酸分解酵素含有洗浄液を、実施例1で使用したのと同じアルコール含有洗浄液の同量に入れ替え、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを72時間行い、その後、アルコール含有洗浄液を、実施例1で使用したのと同じ緩衝液の同量に入れ替え、液温6℃で、実施例1と同じ振盪機を用いて、8の字振盪140rpmを72時間行うことによって、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.4を得た。得られたシートNo.4を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
<実施例5:シートNo.5>
〔原料(ブタ皮膚)の調整〕
実施例1と同様の手順で、測定試料を準備し、真皮を含むブタ皮膚シートを得た。このシートの膜厚は310μmであった。
(脱細胞化処理及び除毛処理の同時工程)
250mLの密閉できる容器に、得られたブタ皮膚シートと剛体としてポットミル : Φ13mm(アズワン、ナイロン球)10個を加えた。更に、リン酸緩衝生理食塩水(Ca、Mgフリー)を溶媒とする界面活性剤ドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量%溶液100mLを容器に加え密閉した。これを、実施例1と同じ液温、振盪機にて8の字振盪140rpmを24時間行うことによって、除毛された脱細胞化ブタ皮膚シートNo.5を得た。得られたシートNo.5を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。
<比較例1:シートNo.6>
ブタ皮膚シートの膜厚が374μmであることと、剛体を使用した除毛処理工程を行わない以外は、実施例1と同様の手順で、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.6を得た。得られたシートNo.6の除毛評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
<比較例2:シートNo.7>
ブタ皮膚シートの膜厚が213μmであることと、高静水圧処理を行わないこと以外は、実施例4と同様の手順で、ブタ皮膚シートNo.7を得た。得られたシートNo.7の除毛評価を、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。本比較例では高静水圧処理が行なわれていないため、脱細胞化処理工程が完全に行われず、脱細胞化ブタ皮膚シートが得られていない。
<比較例3:シートNo.8>
ブタ皮膚シートの膜厚が310μmであることと、洗浄処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で、ブタ皮膚シートNo.8を得た。得られたシートNo.8を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。本比較例では核酸分解酵素含有洗浄液、アルコール含有洗浄液及びクエン酸緩衝液による洗浄処理が行なわれていないため、脱細胞化処理工程が完全に行われず、脱細胞化ブタ皮膚シートが得られていない。
<比較例4:シートNo.9>
ブタ皮膚シートの膜厚が320μmであることと、8の字振盪時に、剛体を使用していないこと以外は、実施例5と同様の手順で、脱細胞化ブタ皮膚シートNo.9を得た。得られたシートNo.9を用いて、下記<除毛評価>を行った。結果を表1に示す。
<比較例5:シートNo.10>
ブタ皮膚シートの膜厚が310μmであること、脱細胞化処理工程及び除毛処理工程を行わないこと以外は、実施例1と同様の手順で実施し、ブタ皮膚シートNo.10を得た。得られたシートNo.10を用いて、下記<除毛評価>を実施した。結果を表1に示す。
<除毛評価>
得られたブタ皮膚シートNo.1〜No.10それぞれについて、ランダムに3箇所を、拡大鏡(トラスコ中山、フラッシュルーペ、倍率2倍)を用いて観察した。各箇所2.0×2.0cmに存在する毛穴の数と残存する毛の本数をカウントし、その平均値から、1cmあたりの毛の残存率を算出した。
表1の結果より、本発明の実施例1〜5は毛の残存率が非常に低く、医療用材料シートとして優れていることがわかる。これに対し、比較例1〜5はいずれも毛の残存率が高く、衛生面で問題が有り、医療用材料シートとして劣っている。

Claims (6)

  1. 哺乳動物の皮膚由来組織の脱細胞化されたシートであって、シートに存在する体毛が1cmあたりに換算して、0本〜3.00本の範囲内であり、皮膚由来組織を脱細胞化する処理の前、同時又は後に、皮膚由来組織に液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織を除毛することにより製造される医療材料用シート。
  2. 皮膚由来組織が、真皮由来組織である請求項1に記載の医療材料用シート。
  3. 哺乳動物がブタである請求項1又は2に記載の医療材料用シート。
  4. 哺乳動物の皮膚由来組織から得られる脱細胞化された医療材料用シートの製造方法であって、皮膚由来組織に、脱細胞化処理を施し、脱細胞化処理の前、同時又は脱細胞化処理の後に、液体中で剛体を衝突させることで物理的衝撃を与えて、皮膚由来組織の除毛をする工程を有し、剛体の材質がポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリアミド及びポリエステルから選ばれる少なくとも一種であり、剛体の形状が、球状、楕円球状、ラグビーボール状又は俵状である製造方法。
  5. 皮膚由来組織が、真皮由来組織である請求項4に記載の製造方法。
  6. 哺乳動物がブタである請求項4又は5に記載の製造方法。
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