JP2018095897A - 蒸着マスク及び蒸着マスクの洗浄方法 - Google Patents

蒸着マスク及び蒸着マスクの洗浄方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面の洗浄性向上させた蒸着マスクの提供。【解決手段】蒸着マスク20は、複数の貫通孔が形成され、蒸着材料の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスク20であって、被蒸着基板に対面する側の面をなす第1面と、第1面と反対側の面をなす第2面20bとを備え、第2面20bの算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下である蒸着マスク20。【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着材料の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスク、及び、この蒸着マスクの洗浄方法に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が400ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板(有機EL基板)を蒸着装置に投入し、次に、蒸着装置内で有機EL基板に対して蒸着マスクを密着させ、有機材料を有機EL基板に蒸着させる蒸着工程を行う。
蒸着工程では、例えば、るつぼに収容された有機発光材料をヒータで加熱し、気化又は昇華させて、蒸着マスクに形成された貫通孔を介して有機EL基板へ付着させる。この際、蒸着マスクの有機EL基板と反対側(るつぼに対面する側)の表面上にも蒸着材料が付着する。蒸着マスクを蒸着工程で繰り返し使用すると、この蒸着マスクの有機EL基板と反対側の表面上に蒸着材料が繰り返し付着し堆積する。堆積した蒸着材料は、蒸着マスクの法線方向に対して傾斜した方向から貫通孔内に進む蒸着材料の進路を妨げ、これにより、有機EL基板の所望の箇所に十分に蒸着材料が付着しない、いわゆるシャドーを生じ得る。このため、定期的に(例えば所定回数使用されるごとに)蒸着マスクを洗浄し、蒸着マスクの表面上に付着した蒸着材料を除去する(特許文献1参照)。
特開2015−67892号公報
蒸着マスクの洗浄は、蒸着マスクを洗浄液に浸漬し、必要に応じて蒸着マスクに超音波等による振動を与えることにより行われる。しかしながら、蒸着材料が蒸着マスクに強固に付着している場合には、洗浄に時間を要することがある。この場合、有機EL表示装置の製造工程全体に要する時間も増大し得る。また、長時間の洗浄により蒸着マスクがダメージを受け、場合によっては蒸着マスクが破損することもある。したがって、蒸着マスクが比較的短時間で洗浄可能であること、すなわち蒸着マスクの表面が良好な洗浄性を有していることが求められる。
この蒸着マスクの表面の洗浄性について本件発明者らが鋭意検討を行ったところ、蒸着マスクの表面の洗浄性は、蒸着マスクの表面粗度の影響を大きく受けることが知見された。すなわち、蒸着マスクの表面粗度が特定の値よりも小さい場合に、当該蒸着マスクの表面の洗浄性が大きく向上することが知見された。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであって、蒸着マスクの表面の洗浄性を向上させることを目的とする。
本発明の蒸着マスクは、
複数の貫通孔が形成され、蒸着材料の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスクであって、
前記被蒸着基板に対面する側の面をなす第1面と、前記第1面と反対側の面をなす第2面とを備え、
前記第2面の算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下である。
本発明の蒸着マスクにおいて、前記第1面の算術平均高さ(Sa)が、前記第2面の算術平均高さ(Sa)よりも小さくてもよい。
本発明の蒸着マスクの洗浄法は、
上述の蒸着マスクに付着した蒸着材料を洗浄液に接触させて除去する。
本発明によれば、蒸着マスクの表面の洗浄性を向上させることができる。
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例を概略的に示す平面図である。 図2は、図1に示す蒸着マスク装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。 図3は、図1に示された蒸着マスクを示す部分平面図である。 図4は、蒸着マスクの断面形状の一例を示す図である。 図5Aは、蒸着マスクを製造するために用いられるパターン基板の製造方法の一例の一工程を示す図である。 図5Bは、蒸着マスクを製造するために用いられるパターン基板の製造方法の一例の一工程を示す図である。 図5Cは、蒸着マスクを製造するために用いられるパターン基板の製造方法の一例の一工程を示す図である。 図5Dは、蒸着マスクを製造するために用いられるパターン基板の製造方法の一例の一工程を示す図である。 図6Aは、蒸着マスクの製造方法の一例の一工程を示す図である。 図6Bは、蒸着マスクの製造方法の一例の一工程を示す図である。 図6Cは、蒸着マスクの製造方法の一例の一工程を示す図である。 図7Aは、蒸着マスクの製造方法の変形例の一工程を示す図である。 図7Bは、蒸着マスクの製造方法の変形例の一工程を示す図である。 図8は、図7A及び図7Bに示す製造方法によって得られた蒸着マスクを示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図8は、本発明による一実施の形態及びその変形例を説明するための図である。以下の実施の形態及びその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクを例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件及び物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
まず、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1は、蒸着マスクを含む蒸着マスク装置の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す蒸着マスク装置の使用方法を説明するための図である。
図1及び図2に示された蒸着マスク装置10は、平面視において略矩形状の形状を有する複数の蒸着マスク20と、複数の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられたフレーム15と、を備えている。各蒸着マスク20には、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25が設けられている。この蒸着マスク装置10は、図2に示すように、蒸着マスク20が蒸着対象物である被蒸着基板、例えば有機EL表示装置用の基板(以下、有機EL基板ともいう)92の下面に対面するようにして蒸着装置90内に支持され、有機EL基板92への蒸着材料の蒸着に使用される。
蒸着装置90内で、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面(図2では上面)上に、磁石93が配置される。これにより、蒸着マスク20は、磁石93からの磁力によって磁石93に引き寄せられ、有機EL基板92に密着するようになる。蒸着装置90内には、蒸着マスク装置10の下方に、蒸着材料(一例として、有機発光材料)98を収容するるつぼ94と、るつぼ94を加熱するヒータ96とが配置されている。るつぼ94内の蒸着材料98は、ヒータ96からの加熱により、気化又は昇華して有機EL基板92の表面に付着するようになる。上述したように、蒸着マスク20には多数の貫通孔25が形成されており、蒸着材料98はこの貫通孔25を介して有機EL基板92に付着する。この結果、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98が有機EL基板92の表面に成膜される。図2において、蒸着マスク20の面のうち蒸着工程の際に有機EL基板92と対向する面(以下、第1面とも称する)が符号20aで表されている。また、蒸着マスク20の面のうち第1面20aの反対側に位置する面(以下、第2面とも称する)が符号20bで表されている。第2面20b側には、蒸着材料98の蒸着源(ここではるつぼ94)が配置される。
上述したように、本実施の形態では、貫通孔25が各有効領域22において所定のパターンで配置されている。なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着機をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着機に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料及び青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
なお、蒸着マスク装置10のフレーム15は、矩形状の蒸着マスク20の周縁部に取り付けられている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように蒸着マスク20を張った状態に保持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。
ところで蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15及び有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15及び有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料98の寸法精度や位置精度が低下してしまう。このような課題を解決するため、蒸着マスク20及びフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20及びフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材や、ニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材などの鉄合金を、蒸着マスク20を構成する後述する第1金属層32及び第2金属層37の材料として用いることができる。
なお、蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15及び有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20及びフレーム15の熱膨張係数を有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する後述する第1金属層32、第2金属層37又は金属層27の材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル−コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図1に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20は、後述の金属層を有し、この金属層は、規則的な配列で貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含んでいる。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、有機EL基板92へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。例えば、有機EL表示装置用の有機発光材料の蒸着に用いられる蒸着マスク20においては、有効領域22は、有機発光材料が蒸着して画素を形成するようになる有機EL基板92の表示領域となる区域に対面する、蒸着マスク20内の領域のことである。ただし、種々の目的から、周囲領域23に貫通孔や凹部が形成されていてもよい。図1に示された例において、各有効領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
図1に示された例において、蒸着マスク20の複数の有効領域22は、蒸着マスク20の長手方向と平行な一方向に沿って所定の間隔を空けて一列に配列されている。図示された例では、一つの有効領域22が一つの有機EL表示装置に対応するようになっている。すなわち、図1に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、多面付蒸着が可能となっている。
次に、図3を参照して、蒸着マスク20の貫通孔25について詳細に説明する。図3は、蒸着マスク20を第1面20aの側から示す拡大図である。
図3に示された例では、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。この貫通孔25の形状などについて、以下に詳細に説明する。ここでは、蒸着マスク20がめっき処理によって形成される場合の、貫通孔25の形状などについて説明する。
図4は、めっき処理によって作製された蒸着マスク20を、図3のIV−IV線に沿って切断した場合を示す断面図である。
図4に示すように、蒸着マスク20は、所定のパターンで第1開口部30が設けられた第1金属層32と、第1開口部30に連通する第2開口部35が設けられた第2金属層37と、を備えている。第2金属層37は、第1金属層32よりも蒸着マスク20の第2面20b側に配置されている。図4に示す例においては、第1金属層32の第2金属層37と反対側の面が蒸着マスク20の第1面20aを構成し、第2金属層37の第1金属層32と反対側の面が蒸着マスク20の第2面20bを構成している。また、図示された例では、第1金属層32及び第2金属層37が、蒸着マスク20の金属層をなす。
本実施の形態においては、第1開口部30と第2開口部35とが互いに連通することにより、蒸着マスク20を貫通する貫通孔25が構成されている。この場合、蒸着マスク20の第1面20a側における貫通孔25の開口寸法や開口形状は、第1金属層32の第1開口部30によって画定される。一方、蒸着マスク20の第2面20b側における貫通孔25の開口寸法や開口形状は、第2金属層37の第2開口部35によって画定される。言い換えると、貫通孔25には、第1金属層32の第1開口部30によって画定される形状、及び、第2金属層37の第2開口部35によって画定される形状の両方が付与されている。
図3に示すように、貫通孔25を構成する第1開口部30や第2開口部35は、平面視において略多角形状になっていてもよい。ここでは第1開口部30及び第2開口部35が、略四角形状、より具体的には略正方形状になっている例が示されている。また図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、略六角形状や略八角形状など、その他の略多角形状になっていてもよい。なお「略多角形状」とは、多角形の角部が丸められている形状を含む概念である。また図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、円形状や、楕円形状等の形状を有していてもよい。また、平面視において第2開口部35が第1開口部30を囲う輪郭を有する限りにおいて、第1開口部30の形状と第2開口部35の形状が相似形になっている必要はない。
図4において、符号41は、第1金属層32と第2金属層37とが接続される接続部を表している。また符号S0は、第1金属層32と第2金属層37との接続部41における貫通孔25の寸法を表している。なお図4においては、第1金属層32と第2金属層37とが接している例を示したが、これに限られることはなく、第1金属層32と第2金属層37との間にその他の層が介在されていてもよい。例えば、第1金属層32と第2金属層37との間に、第1金属層32上における第2金属層37の析出を促進させるための触媒層が設けられていてもよい。
図4に示すように、第2面20bにおける貫通孔25(第2開口部35)の開口寸法S2は、第1面20aにおける貫通孔25(第1開口部30)の開口寸法S1よりも大きくなっている。
図4において、蒸着マスク20の第2面20b側における貫通孔25(第2開口部35)の端部38を通る蒸着材料98の経路であって、有機EL基板92に到達することができる経路のうち、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす角度が最小となる経路が、符号L1で表されている。また、経路L1と蒸着マスク20の法線方向Nとがなす角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。例えば角度θ1を45°以上にすることが好ましい。
上述の開口寸法S0,S1,S2は、有機EL表示装置の画素密度や上述の角度θ1の所望値などを考慮して、適切に設定される。例えば、400ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、接続部41における貫通孔25の開口寸法S0は、15μm以上60μm以下の範囲内に設定され得る。また、第1面20aにおける第1開口部30の開口寸法S1は、10μm以上50μm以下の範囲内に設定され、第2面20bにおける第2開口部35の開口寸法S2は、15μm以上60μm以下の範囲内に設定され得る。
図4に示された例では、金属層の厚さT、すなわち第1金属層32及び第2金属層37の合計厚さTは、例えば2μm以上50μm以下とすることができる。このような厚さTを有する蒸着マスク20によれば、蒸着マスク20が所望の耐久性を有しつつも十分に薄厚化されているので、有機EL基板92に、斜め方向、すなわち有機EL基板92の板面及び当該板面への法線方向の両方に対して傾斜した方向、から向かう蒸着材料の当該有機EL基板92への付着が阻害されることを抑制すること、すなわち有機材料の付着ムラの発生を抑制することが可能になる。これにより、当該有機EL基板92を有する有機EL表示装置において、輝度ムラが生じることを効果的に防止することができる。
第1金属層32及び第2金属層37を構成する主要な材料としては、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材や、ニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材などの鉄合金を用いることができる。また、これに限られず、第1金属層32及び第2金属層37を構成する主要な材料として、例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル−コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。なお、第1金属層32及び第2金属層37は、同一の組成を有する材料から構成されてもよいし、異なる組成を有する材料から構成されてもよい。
次に、蒸着マスク20の第1面20a及び第2面20bの表面粗度について説明する。本実施の形態では、蒸着マスク20の第2面20bは、その表面粗度が算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下となっている。
従来、蒸着マスクの洗浄は、蒸着マスクを洗浄液に浸漬することにより行われる。しかしながら、蒸着材料が蒸着マスクに強固に付着している場合には、洗浄に時間を要することがある。この場合、有機EL表示装置の製造工程全体に要する時間が増大するだけでなく、長時間の洗浄により蒸着マスクがダメージを受け、場合によっては蒸着マスクが破損することもある。本件発明者らの研究によれば、蒸着マスクの表面の洗浄性は、蒸着マスクの表面粗度の影響を大きく受ける。すなわち、本件発明者らは、蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度が算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下である場合に、蒸着マスク20の表面の洗浄性が大きく向上することを知見した。
図2を参照して説明したように、蒸着材料98の被蒸着基板(有機EL基板92)への蒸着を行う際には、磁石93の磁力により蒸着マスク20の第1面20aを被蒸着基板に密着させた状態で、被蒸着基板及び蒸着マスク20を蒸着装置90内に配置し、蒸着装置90内において蒸着材料98をヒータ96で加熱し、蒸着材料98を気化又は昇華させて蒸着マスク20の貫通孔25を介して被蒸着基板へ付着させる。このとき、蒸着マスク20の被蒸着基板と反対側に位置する第2面20b上にも蒸着材料98が付着する。蒸着マスク20を蒸着材料98の蒸着に繰り返し使用すると、第2面20b上に蒸着材料98が繰り返し付着し堆積する。このとき、蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度が大きいと、蒸着材料98が第2面20b上の凹凸内に入り込み、いわゆるアンカー効果によって蒸着材料98が蒸着マスク20に強固に付着し、この蒸着材料98の洗浄に時間を要するようになる。すなわち、蒸着マスク20の洗浄性が低下する。これに対して、本実施の形態の蒸着マスク20のように、第2面20bの表面粗度が算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下である場合、第2面20b上の凹凸が小さく蒸着材料98がこの凹凸内に入り込みづらいので、蒸着マスク20の洗浄性が大きく向上する。
ところで、有効領域22には複数の貫通孔25が形成されており、第2面20bの表面粗度を正確に測定できないことがある。この場合、第2面20bの表面粗度の測定は、周囲領域23で行うことができる。すなわち、周囲領域23における第2面20bの表面粗度を測定し、この測定結果から算出された算術平均高さ(Sa)を、当該第2面20bの表面粗度とすることができる。算術平均高さ(Sa)は、例えばキーエンス社製レーザ顕微鏡VK−X250を用いて、ISO 25178に準拠して測定することができる。
算術平均高さ(Sa)は、所定領域内の表面高さの絶対値について算術平均をとったものである。蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度の指標としてこの算術平均高さ(Sa)を用いることにより、安定した測定結果を得ることができ、これにより、蒸着マスク20の洗浄性を安定して評価することができる。
蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度は、蒸着マスク20をなす金属層の形成工程の影響を受ける。したがって、蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度を算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下とするために、例えば、図6A〜図6Cを参照して後述する蒸着マスク20の製造方法における第2金属層37を形成する第2めっき処理工程や、図7A及び図7Bを参照して後述する蒸着マスク20の製造方法の変形例におけるめっき処理工程において、第2めっき液の組成、金属イオン濃度、第2めっき液に含まれる光沢剤の種類、濃度、めっき処理時間、温度を調整することができる。
また、蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度は、蒸着マスク20の金属層を形成するために設けられたレジスト層の除去工程の影響をも受ける。レジスト層の除去工程において、蒸着マスク20の第2面20bはレジスト層の剥離液と接触する。この剥離液の組成、濃度、剥離処理時間、温度等によっては、第2面20bの表面が荒れ、第2面20bの表面粗度が大きくなることがある。したがって、蒸着マスク20の第2面20bの表面粗度を算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下とするために、例えば、図6A〜図6Cを参照して後述する蒸着マスク20の製造方法や、図7A及び図7Bを参照して後述する蒸着マスク20の製造方法の変形例におけるレジストパターン55を除去する除去工程において、剥離液の組成、濃度、剥離処理時間、温度等を調整することができる。
また、本実施の形態では、蒸着マスク20の第1面20aの算術平均高さ(Sa)は、第2面20bの算術平均高さ(Sa)よりも小さくなっている。
蒸着材料98の被蒸着基板への蒸着を行う際に、蒸着マスク20の第1面20aは被蒸着基板と密着する。この被蒸着基板の蒸着マスク20と対面する面には、塵埃等の異物が付着していることがあり、この異物が蒸着マスク20の第1面20aに付着することがある。蒸着マスク20の第1面20aに付着した異物は、他の被蒸着基板への蒸着材料98の蒸着を行う際に、当該被蒸着基板の表面に接触する。これにより、被蒸着基板の表面に傷等を生じる虞がある。また、蒸着マスク20と被蒸着基板との間に異物が挟み込まれることにより、蒸着マスク20と被蒸着基板との間に隙間が生じ、この隙間に蒸着材料98が入り込むこともある。この場合、被蒸着基板の所望の箇所以外に蒸着材料(有機発光材料)98が付着することになり、製造された有機EL表示装置において混色等の不良を生じ得る。
本実施の形態では、蒸着マスク20の第1面20aの算術平均高さ(Sa)が、第2面20bの算術平均高さ(Sa)よりも小さくなっているので、第2面20bの洗浄性よりも第1面の洗浄性の方が高くなる。この場合、第2面20bに付着した異物がなくなるまで蒸着マスク20を洗浄すれば、第1面20aにも異物が存在しなくなる。したがって、蒸着マスク20の第1面20aに付着した異物をより確実に除去することが可能となり、これにより、被蒸着基板の表面に傷等を生じたり、蒸着マスク20と被蒸着基板との間の隙間に蒸着材料98が入り込んだりすることを、効果的に抑制することができる。
後述する蒸着マスク20の製造方法において、蒸着マスク20の金属層(第1金属層32、金属層27)は、パターン基板50の導電性パターン52(導電層52a)上に、例えば電解めっきにより形成される。導電性パターン52(導電層52a)は、例えばスパッタリングや無電解めっき等により、パターン基板50の基材51上に形成されており、その表面粗度は小さくなっている。この表面粗度の小さい導電性パターン52上に金属層(第1金属層32、金属層27)を形成することで、当該金属層の導電性パターン52に密着した面から構成される蒸着マスク20の第1面20aの表面粗度を小さくすることができる。また、めっきにより形成された表面からなる蒸着マスク20の第2面20bも、小さな表面粗度を有する。
後述する蒸着マスク20の製造方法において、第2金属層37又は金属層27のめっき終了後、蒸着マスク20の第1金属層32又は金属層27が導電性パターン52に密着したまま、レジストパターン55を除去する除去工程が行われる。除去工程は、パターン基板50、金属層(蒸着マスク20)及びレジストパターン55の積層体を、例えばアルカリ系の剥離液に浸漬することにより行われる。このとき、蒸着マスク20の第1面20aは導電性パターン52で覆われている一方、第2面20bはレジストパターン55から露出している。この状態でレジストパターン55の除去工程を行うと、蒸着マスク20の第2面20bは剥離液と接触することにより僅かながら荒らされる。一方、蒸着マスク20の第1面20aは剥離液と接触しないので、荒らされることはない。これにより、蒸着マスク20の第1面20aの表面粗度と第2面20bとの表面粗度との間に差異が生じる。すなわち、蒸着マスク20の第1面20aの算術平均高さ(Sa)が、第2面20bの算術平均高さ(Sa)よりも小さくなる。
次に、蒸着マスク20の製造方法の一例について説明する。ここでは、蒸着マスク20の第1金属層32及び第2金属層37がめっきで形成される例について説明する。
〔パターン基板準備工程〕
はじめに、パターン基板50を作製する方法の一例について説明する。はじめに、基材51を準備する。次に図5Aに示すように、導電性材料からなる導電層52aを形成する。導電層52aは、パターニングされることによって導電性パターン52となる層である。
適切な強度を有する限りにおいて、基材51を構成する材料や基材51の厚みが特に限られることはない。例えば基材51を構成する材料として、金属、ガラス、合成樹脂などを用いることができる。
導電層52aを構成する材料としては、金属材料や酸化物導電性材料等の導電性を有する材料が適宜用いられる。金属材料の例としては、例えばクロムや銅などを挙げることができる。好ましくは、後述するレジストパターン53に対する高い密着性を有する材料が、導電性パターン52を構成する材料として用いられる。例えばレジストパターン53が、アクリル系光硬化性樹脂を含むレジスト膜など、いわゆるドライフィルムと称されるものをパターニングすることによって作製される場合、導電性パターン52を構成する材料として、ドライフィルムに対する高い密着性を有する銅が用いられることが好ましい。
導電層52aは、例えばスパッタリングや無電解めっき等により形成される。導電層52aを厚く形成しようとすると、導電層52aの形成に長時間を要する。一方、導電層52aの厚みは、薄すぎると抵抗値が大きくなり、電解めっき処理により第一金属層32が形成されにくくなる。したがって、例えば導電層52aの厚みは、50nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましい。
次に図5Bに示すように、導電層52a上に、所定のパターンを有するレジストパターン53を形成する。レジストパターン53を形成する方法としては、後述するレジストパターン55の場合と同様に、フォトリソグラフィー法などが採用され得る。レジストパターン53用の材料に所定のパターンで光を照射する方法としては、所定のパターンで露光光を透過させる露光マスクを用いる方法や、所定のパターンで露光光をレジストパターン53用の材料に対して相対的に走査する方法などが採用され得る。その後、図5Cに示すように、導電層52aのうちレジストパターン53によって覆われていない部分を、エッチングによって除去する。次に図5Dに示すように、レジストパターン53を除去する。これによって、第1金属層32に対応するパターンを有する導電性パターン52が形成されたパターン基板50を得ることができる。
〔第1成膜工程〕
次に、パターン基板50を利用して上述の第1金属層32を作製する第1成膜工程について説明する。ここでは、導電性パターン52が形成された基材51上に第1めっき液を供給して、導電性パターン52上に第1金属層32を析出させる第1めっき処理工程を実施する。例えば、導電性パターン52が形成された基材51を、第1めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図6Aに示すように、基材51上に、所定のパターンで第1開口部30が設けられた第1金属層32を得ることができる。第1金属層32の厚さは、例えば5μm以下になっている。
導電性パターン52上に第1金属層32を析出させることができる限りにおいて、第1めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることはない。例えば第1めっき処理工程は、導電性パターン52に電流を流すことによって導電性パターン52上に第1金属層32を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第1めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお第1めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、導電性パターン52上には適切な触媒層が設けられていてもよい。若しくは、導電性パターン52が、触媒層として機能するよう構成されていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、導電性パターン52上に触媒層が設けられていてもよい。
用いられる第1めっき液の成分は、第1金属層32に求められる特性に応じて適宜定められる。例えば、第1めっき液として、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルや臭化ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸第一鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、様々な添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、ホウ酸などのpH緩衝剤、サッカリンナトリウムなどの一次光沢剤、ブチンジオール、プロパギルアルコール、クマリン、ホルマリン、チオ尿素などの二次光沢剤や、酸化防止剤などが用いられ得る。
〔第2成膜工程〕
次に、第1開口部30に連通する第2開口部35が設けられた第2金属層37を第1金属層32上に形成する第2成膜工程を実施する。まず、基材51上及び第1金属層32上に、所定の隙間56を空けてレジストパターン55を形成するレジスト形成工程を実施する。図6Bは、基材51上に形成されたレジストパターン55を示す断面図である。図6Bに示すように、レジスト形成工程は、第1金属層32の第1開口部30がレジストパターン55によって覆われるとともに、レジストパターン55の隙間56が第1金属層32上に位置するように実施される。
以下、レジスト形成工程の一例について説明する。はじめに、基材51上及び第1金属層32上にドライフィルムを貼り付けることによって、ネガ型のレジスト膜を形成する。ドライフィルムの例としては、例えば日立化成製のRY3310など、アクリル系光硬化性樹脂を含むものを挙げることができる。また、レジストパターン55用の材料を基材51上に塗布し、その後に必要に応じて焼成を実施することにより、レジスト膜を形成してもよい。次に、レジスト膜のうち隙間56となるべき領域に光を透過させないようにした露光マスクを準備し、露光マスクをレジスト膜上に配置する。その後、真空密着によって露光マスクをレジスト膜に十分に密着させる。なおレジスト膜として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
その後、レジスト膜を露光マスク越しに露光する。さらに、露光されたレジスト膜に像を形成するためにレジスト膜を現像する。以上のようにして、図6Bに示すように、第1金属層32上に位置する隙間56が設けられるとともに第1金属層32の第1開口部30を覆うレジストパターン55を形成することができる。なお、レジストパターン55を基材51及び第1金属層32に対してより強固に密着させるため、現像工程の後にレジストパターン55を加熱する熱処理工程を実施してもよい。
次に、レジストパターン55の隙間56に第2めっき液を供給して、第1金属層32上に第2金属層37を析出させる第2めっき処理工程を実施する。例えば、第1金属層32が形成された基材51を、第2めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図6Cに示すように、第1金属層32上に第2金属層37を形成することができる。第2金属層37の厚さは、蒸着マスク20の金属層の厚さTが2μm以上50μm以下になるように設定される。
第1金属層32上に第2金属層37を析出させることができる限りにおいて、第2めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることとはない。例えば、第2めっき処理工程は、第1金属層32に電流を流すことによって第1金属層32上に第2金属層37を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第2めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお第2めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、第1金属層32上には適切な触媒層が設けられていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、第1金属層32上に触媒層が設けられていてもよい。
第2めっき液としては、上述の第1めっき液と同一のめっき液が用いられてもよい。若しくは、第1めっき液とは異なるめっき液が第2めっき液として用いられてもよい。第1めっき液の組成と第2めっき液の組成とが同一である場合、第1金属層32を構成する金属の組成と、第2金属層37を構成する金属の組成も同一になる。
なお図6Cにおいては、レジストパターン55の上面と第2金属層37の上面とが一致するようになるまで第2めっき処理工程が継続される例を示したが、これに限られることはない。第2金属層37の上面がレジストパターン55の上面よりも下方に位置する状態で、第2めっき処理工程が停止されてもよい。
〔除去工程〕
その後、レジストパターン55を除去する除去工程を実施する。除去工程は、パターン基板50、第1金属層32、第2金属層37及びレジストパターン55の積層体を、例えばアルカリ系の剥離液に浸漬することにより行われる。これにより、レジストパターン55を、パターン基板50、第1金属層32及び第2金属層37から剥離させることができる。このとき、第1金属層32の導電性パターン52と密着した面(蒸着マスク20の第1面20a)は導電性パターン52で覆われている一方、第2金属層37の上面(第2面20b)はレジストパターン55から露出している。この状態でレジストパターン55の除去工程を行うと、第2金属層37の上面は剥離液と接触することにより僅かながら荒らされる。一方、第1金属層32の導電性パターン52と密着した面は剥離液と接触しないので、荒らされることはない。これにより、後に蒸着マスク20の第1面20aとなる第1金属層32の導電性パターン52と密着した面の表面粗度と、後に蒸着マスク20の第2面20bとなる第2金属層37の上面の表面粗度と、の間に差異が生じる。すなわち、第1金属層32の導電性パターン52と密着した面の算術平均高さ(Sa)が、第2金属層37の上面の算術平均高さ(Sa)よりも小さくなる。
〔分離工程〕
次に、第1金属層32及び第2金属層37の組み合わせ体を基材51から分離させる分離工程を実施する。分離工程では、まず、第1金属層32、第2金属層37及びパターン基板50の積層体を、導電性パターン52をエッチング可能なエッチング液に浸漬する。次に、第1金属層32及び第2金属層37の組み合わせ体を基材51から引き剥がして分離させる。その後、第1金属層32及び第2金属層37の組み合わせ体を再度エッチング液に浸漬し、第1金属層32に付着して残存している導電性パターン52を完全にエッチング除去する。これによって、所定のパターンで第1開口部30が設けられた第1金属層32と、第1開口部30に連通する第2開口部35が設けられた第2金属層37と、を備えた蒸着マスク20を得ることができる。なお、蒸着マスク20の第1面20a及び第2面20bが荒らされることを防止する観点からは、エッチング液として、非アルカリ系のエッチング液を用いることが好ましい。なお、これに限られず、エッチング液として、アルカリ系のエッチング液を用いてもよい。この場合、蒸着マスク20の第1面20a及び第2面20bの表面粗度に影響を与えないエッチング液を選択して用いることが好ましい。
次に、第2面20b上に蒸着材料98が堆積した蒸着マスク20の洗浄方法について説明する。蒸着マスク20の第2面20b上に付着し得る蒸着材料98としては、例えば金属錯体を含む有機物を挙げることができる。
まず、第2面20b上に蒸着材料98が堆積した蒸着マスク20を、溶剤、アルカリ水溶液等を含有する洗浄液に浸漬する。この洗浄液としては、一例として、N−メチル−2−ピロリドンを含有する洗浄液を用いることができる。
このとき、蒸着材料98が堆積した第2面20bは、その表面粗度が算術平均高さ(Sa)で0.02μm以下となっている。すなわち、第2面20b上の凹凸が小さく蒸着材料98がこの凹凸内に入り込みづらい。これにより、蒸着材料98が第2面20bに強固に付着することが抑制されている。したがって、蒸着マスク20の洗浄に長時間を要することがない。
その後、純水等によりリンス工程を行い、乾燥工程を経て蒸着マスクの洗浄を終了する。
本実施の形態の蒸着マスク20は、複数の貫通孔25が形成され、蒸着材料98の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスク20であって、被蒸着基板に対面する側の面をなす第1面20aと、第1面20aと反対側の面をなす第2面20bとを備え、第2面20bの算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下である。
従来、蒸着マスクの洗浄は、蒸着マスクを洗浄液に浸漬することにより行われる。しかしながら、蒸着材料が蒸着マスクに強固に付着している場合には、洗浄に時間を要することがある。この場合、有機EL表示装置の製造工程全体に要する時間が増大するだけでなく、長時間の洗浄により蒸着マスクがダメージを受け、場合によっては蒸着マスクが破損することもある。これに対して、本実施の形態の蒸着マスク20によれば、第2面20b上の凹凸が小さく蒸着材料98がこの凹凸内に入り込みづらいので、蒸着材料98が第2面20bに強固に付着することが抑制され、蒸着マスク20の洗浄性が大きく向上する。
本実施の形態の蒸着マスク20は、第1面20aの算術平均高さ(Sa)が、第2面20bの算術平均高さ(Sa)よりも小さい。
このような蒸着マスク20によれば、第2面20bの洗浄性よりも第1面の洗浄性の方が高くなる。したがって、蒸着マスク20の第1面20aに付着した異物をより確実に除去することが可能となり、これにより、蒸着マスク20の第1面20aに付着した異物に起因して、被蒸着基板の表面に傷等を生じたり、蒸着マスク20と被蒸着基板との間の隙間に蒸着材料98が入り込んだりすることを、効果的に抑制することができる。
本実施の形態の蒸着マスク20の洗浄方法は、上述の蒸着マスク20に付着した蒸着材料98を洗浄液に接触させて除去する。
このような蒸着マスク20の洗浄方法によれば、蒸着マスク20の洗浄性が向上された第2面20b上に付着した蒸着材料98を、比較的短時間で除去することができる。したがって、蒸着マスク20がダメージを受けたり、破損したりすることを効果的に防止することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
上述の図4及び図6A〜図6Cに示す例においては、蒸着マスク20が、第1金属層32及び第2金属層37という、少なくとも2つの金属層を積層させることによって構成される場合について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、蒸着マスク20は、所定のパターンで複数の貫通孔25が形成された1つの金属層27によって構成されていてもよい。以下、図7A〜図8を参照して、蒸着マスク20が1つの金属層27を備える例について説明する。なお本変形例においては、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25のうち第1面20a上に位置する部分を第1開口部30と称し、貫通孔25のうち第2面20b上に位置する部分を第2開口部35と称する。
はじめに、本変形例による蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
まず、所定の導電性パターン52が形成された基材51を準備する。次に図7Aに示すように、基材51上に、所定の隙間56を空けてレジストパターン55を形成するレジスト形成工程を実施する。好ましくは、レジストパターン55の隙間56を画成するレジストパターン55の側面57の間の間隔は、基材51から遠ざかるにつれて狭くなっている。すなわち、レジストパターン55が、基材51から遠ざかるにつれてレジストパターン55の幅が広くなる形状、いわゆる逆テーパ形状を有している。
このようなレジストパターン55を形成する方法の一例について説明する。例えば、はじめに、基材51の面のうち導電性パターン52が形成された側の面上に、光硬化性樹脂を含むレジスト膜を設ける。次に、基材51のうちレジスト膜が設けられている側とは反対の側から基材51に入射させた露光光をレジスト膜に照射して、レジスト膜を露光する。その後、レジスト膜を現像する。この場合、露光光の回り込み(回折)に基づいて、図7Aに示すような逆テーパ形状を有するレジストパターン55を得ることができる。
次に図7Bに示すように、レジストパターン55の隙間56にめっき液を供給して、導電性パターン52上に金属層27を析出させるめっき処理工程を実施する。その後、上述の除去工程及び分離工程を実施することにより、図8に示すように、所定のパターンで貫通孔25が設けられた金属層27を備えた蒸着マスク20を得ることができる。
なお、図8に示す蒸着マスク20を作製するために用いられ得るレジストパターン55が、図7A及び図7Bに示すレジストパターン55に限られることはない。例えば、レジストパターン55が、基材51から遠ざかるにつれてレジストパターン55の幅が狭くなる形状、いわゆる順テーパ形状を有している場合であっても、図8に示す貫通孔25が設けられた蒸着マスク20を得ることができる。この場合、めっき処理工程によって形成される金属層27の面のうち基材51に接する側の面が、蒸着マスク20の第2面20bとなる。
以下、本発明者らが蒸着マスクの洗浄性について確認した結果について説明する。
4種類の蒸着マスク(サンプル1〜4)を作製し、各蒸着マスクの第2面の算術平均高さ(Sa)を測定した。サンプル1〜3は、めっきにより製造された蒸着マスクであり、すなわちめっき材を構成材とする蒸着マスクである。サンプル4は、圧延材にエッチングにより貫通孔を形成した蒸着マスクであり、すなわち圧延材を構成材とする蒸着マスクである。各蒸着マスクの寸法は、長手方向120mm、短手方向65mmとした。算術平均高さ(Sa)は、キーエンス社製レーザ顕微鏡VK−X250を用いて、レーザ波長408nm、対物レンズ150倍、高精度モードダブルスキャンにて測定した。
次に、異物が付着した状態の各蒸着マスクを洗浄した。洗浄工程では、まず純水に浸漬し、次に洗浄液に浸漬し、再度純水に浸漬することにより各蒸着マスクを洗浄した。洗浄液としては、N−メチル−2−ピロリドンを用いた。各浸漬工程において80kHzの超音波を6分間付与した。
表1に、各蒸着マスクの第2面の算術平均高さ(Sa)と、洗浄前に第2面上に付着していた異物数(洗浄前異物数)及び洗浄後に第2面上に付着していた異物数(洗浄後異物数)と、の関係を示す。表1から、蒸着マスクの第2面の算術平均高さ(Sa)が0.02μmより大きいサンプル3及び4では、洗浄後にも第2面上に異物が残留していることがわかる。これに対して、蒸着マスクの第2面の算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下であるサンプル1及び2では、洗浄後には、第2面上に異物が残留していない。このことから、第2面の算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下である蒸着マスクでは、その第2面の洗浄性が大きく向上していることが確認された。
Figure 2018095897
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
20 蒸着マスク
20a 第1面
20b 第2面
22 有効領域
23 周囲領域
25 貫通孔
30 第1開口部
32 第1金属層
35 第2開口部
37 第2金属層
41 接続部
51 基材
52 導電性パターン
55 レジストパターン
56 隙間
90 蒸着装置
92 有機EL基板
93 磁石
98 蒸着材料

Claims (3)

  1. 複数の貫通孔が形成され、蒸着材料の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスクであって、
    前記被蒸着基板に対面する側の面をなす第1面と、前記第1面と反対側の面をなす第2面とを備え、
    前記第2面の算術平均高さ(Sa)が0.02μm以下である、蒸着マスク。
  2. 前記第1面の算術平均高さ(Sa)が、前記第2面の算術平均高さ(Sa)よりも小さい、請求項1に記載の蒸着マスク。
  3. 請求項1又は2に記載の蒸着マスクに付着した前記蒸着材料を洗浄液に接触させて除去する、蒸着マスクの洗浄方法。
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