JP2020041178A - 蒸着マスク、金属箔及び蒸着マスク装置 - Google Patents

蒸着マスク、金属箔及び蒸着マスク装置 Download PDF

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青木 大吾
Daigo Aoki
大吾 青木
村田 佳則
Yoshinori Murata
佳則 村田
謙太朗 関
Kentaro Seki
謙太朗 関
宏樹 古庄
Hiroki Furusho
宏樹 古庄
浩明 中山
Hiroaki Nakayama
浩明 中山
洋 島崎
Hiroshi Shimazaki
洋 島崎
宮谷 勲
Isao Miyatani
勲 宮谷
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Abstract

【課題】密着性及び寸法精度を満たす蒸着マスクを提供する。【解決手段】金属層と、金属層に設けられた複数の貫通孔25とを備え、金属層は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物とを含む鉄合金を有し、金属層の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下であり、金属層の鉄合金は、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物とを含み、金属層は15μm以下の厚みを有する蒸着マスク20。【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着マスク、及び蒸着マスクを備えた蒸着マスク装置に関する。また、本発明は、蒸着マスクを製造するために用いられる金属箔に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が400ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成された蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対向するよう蒸着マスクを配置し、次に、蒸着マスク及び基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料を基板に蒸着させる蒸着工程を行う。
高い画素密度を有する有機EL表示装置を精密に作製するためには、蒸着工程において蒸着マスクを基板に密着させることが好ましい。なぜなら、蒸着マスクと基板との間に隙間が生じていると、有機材料が当該隙間に入り込んでしまい、画素の寸法や位置が設計値からずれるからである。また、基板から浮いた蒸着マスクが、蒸着マスクの法線方向に対して傾斜した方向において飛来する有機材料が基板に付着することを阻害し、この結果、基板に付着する有機材料の分布がばらつくことも考えられる。
蒸着マスクと基板との密着性を向上させる技術として、特許文献1に開示された技術が知られている。特許文献1では、基板の、蒸着マスクと反対の側に磁石を配置し、磁石の磁力により蒸着マスクを基板に密着させる。ここで、蒸着マスクとしては、インバー材(Fe−36Ni)で形成された金属板に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングにより貫通孔が形成されたものを用いている。インバー材は、その熱膨張係数が小さいため、有機材料の蒸着処理が高温雰囲気中で行われる場合においても、インバー材を用いた蒸着マスクの寸法変化は小さくなる。従って、基板上に付着する有機材料の寸法精度が向上する利点がある。
また、蒸着マスクとして、例えば特許文献2に開示されているような、めっき処理を利用して製造された蒸着マスクも知られている。この技術によれば、小さな厚みを有する蒸着マスクを精度よく製造することができる。
特許第5382259号公報 特開2001−234385号公報
蒸着材料を所望のパターンで精度良く基板に蒸着させるためには、蒸着マスクの厚みが小さいことが好ましい。一方、蒸着マスクの厚みが小さくなると、有効磁界強度が小さくなるので、磁化が小さくなり、蒸着マスクと基板との密着性が低下してしまうと考えられる。
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る蒸着マスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、金属層と、前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備え、前記金属層は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、前記金属層の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、蒸着マスクである。
本発明による蒸着マスクにおいて、前記金属層の前記鉄合金は、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含んでいてもよい。
本発明による蒸着マスクにおいて、前記金属層は、15μm以下の厚みを有していてもよい。
本発明による蒸着マスクにおいて、前記金属層は、8μm以下の厚みを有していてもよい。
本発明による蒸着マスクにおいて、前記金属層は、めっき処理によって作製されためっき層であってもよい。
本発明は、金属層と、前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備える蒸着マスクを製造するために用いられる金属箔であって、前記金属箔は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、前記金属箔の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、金属箔である。
本発明による金属箔において、前記鉄合金は、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含んでいてもよい。
本発明による金属箔は、15μm以下の厚みを有していてもよい。
本発明による金属箔は、8μm以下の厚みを有していてもよい。
本発明による金属箔は、めっき処理によって作製されためっき膜であってもよい。
本発明は、基板に蒸着材料を所定のパターンで付着させるための蒸着マスク装置であって、前記基板に対向するよう配置される蒸着マスクと、前記蒸着マスクを支持するフレームと、前記基板の、前記蒸着マスクと反対の側の面に配置された磁石と、を備え、前記蒸着マスクは、金属層と、前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備え、前記金属層は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、前記金属層の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、蒸着マスク装置である。
本発明によれば、蒸着マスクと基板との間の密着性を確保することができる。
本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を備えた蒸着装置を示す図である。 図1に示す蒸着マスク装置を用いて製造した有機EL表示装置を示す断面図である。 本発明の一実施形態による蒸着マスク装置を示す平面図である。 蒸着マスクの飽和磁化が過小である場合に生じ得る課題を説明する図である。 蒸着マスクの飽和磁化が過大である場合に生じ得る課題を説明する図である。 デントが生じている蒸着マスクの一例を示す平面図である。 蒸着マスクの有効領域を拡大して示す平面図である。 図7の蒸着マスクをVIII−VIII方向から見た断面図である。 図7の有効領域の金属層を拡大して示す断面図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を説明する図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を説明する図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を説明する図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を説明する図である。 有機EL基板に対する蒸着マスクの位置合わせ工程の一例を説明する図である。 有機EL基板に対する蒸着マスクの位置合わせ工程の一例を説明する図である。 蒸着マスクの製造方法の一変形例を説明する図である。 蒸着マスクの製造方法の一変形例を説明する図である。 蒸着マスクの一変形例を示す断面図である。 蒸着マスクと基板の密着性を評価する方法を説明する図である。 実施例1における磁気ヒステリシス曲線を示す図である。 実施例10における磁気ヒステリシス曲線を示す図である。 実施例16における磁気ヒステリシス曲線を示す図である。 実施例21における磁気ヒステリシス曲線を示す図である。 実施例1〜21の評価結果を示す図である。 実施例10、22〜29の評価結果を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図15は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態およびその変形例では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクの製造方法を例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクの製造方法に対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
(蒸着装置)
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、図1を参照して説明する。図1に示すように、蒸着装置90は、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
(蒸着マスク装置)
以下、蒸着マスク装置10について説明する。図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備える。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である基板、例えば有機EL基板92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。以下の説明において、蒸着マスク20の面のうち、有機EL基板92側の面を第1面20aと称し、第1面20aの反対側に位置する面を第2面20bと称する。
蒸着マスク装置10は、図1に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を更に備える。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
図3は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20a側から見た場合を示す平面図である。図3に示すように、蒸着マスク装置10は、平面視において略矩形状の形状を有する複数の蒸着マスク20を備え、各蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向における一対の端部において、フレーム15に固定されている。
蒸着マスク20は、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25を含む。るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を有機EL基板92の表面に成膜することができる。
図2は、図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、有機EL基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。
なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
ところで、蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20を構成する金属材料として、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を用いることができる。蒸着マスク20およびフレーム15を構成する鉄合金におけるニッケルの含有率は、40質量%以上且つ44質量%以下であってもよい。なお、本実施の形態においては、上述のように磁石93を用いて蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させるので、蒸着マスク20を構成する金属材料が磁性体である必要がある。
蒸着マスク20を用いた蒸着工程においては、蒸着マスク20が隙間なく有機EL基板92に密着していることが好ましい。なぜなら、後述するように、蒸着マスク20と有機EL基板92との間に隙間が空いている場合、有機EL基板92に付着した蒸着材料によって形成される蒸着層の形状が、所望の形状からずれてしまうからである。磁石93を用いて蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させる場合、磁力に基づいて蒸着マスク20を有機EL基板92側へ引き寄せる力は、蒸着マスク20を構成する金属材料の飽和磁化が大きいほど高くなる。従って、蒸着マスク20を隙間なく有機EL基板92に密着させるためには、蒸着マスク20を構成する金属材料の飽和磁化が所定の第1閾値以上であることが求められる。
一方、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、後述するように、蒸着マスク20を構成する金属材料の飽和磁化が過大である場合、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させる際に蒸着マスク20に変形が生じ易いことを見出した。従って、蒸着マスク20を構成する金属材料の飽和磁化は、上述の第1閾値よりも大きい第2閾値以下であることが求められる。
以下、図4乃至図6を参照して、蒸着マスク20の飽和磁化が過小である場合に生じ得る課題、及び、蒸着マスク20の飽和磁化が過大である場合に生じ得る課題についてそれぞれ説明する。
蒸着マスク20の飽和磁化が過小である場合、蒸着マスク20に印加する外部磁場を大きくしても、磁石93が蒸着マスク20を有機EL基板92側へ引き寄せる磁力が不十分になる。この結果、図4に示すように、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができず、蒸着マスク20と有機EL基板92との間に隙間99が生じることが考えられる。また、図4に示すように、有機EL基板92に向かう蒸着材料98は、蒸着マスク20の法線方向に沿って移動するだけでなく、蒸着マスク20の法線方向に対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このため、有機EL基板92に付着した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25の位置及び寸法に対応した中央部分98aだけでなく、隙間99において中央部分98aの周囲に形成される周縁部分98bを含む。周縁部分98bは、シャドーとも称される部分である。周縁部分98bの幅が大きくなるほど、有機EL表示装置100の発光効率が低下する。また、隣接する画素の間で混色が生じる恐れも増加する。従って、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させて、周縁部分98bの幅を一定値以下に抑制することが好ましい。
一方、蒸着マスク20の飽和磁化が過大である場合、蒸着マスク20が有機EL基板92にいったん密着すると、有機EL基板92の面方向Aにおいて蒸着マスク20が変位し難い。ところで、蒸着マスク20と有機EL基板92とを組み合わせる際、蒸着マスク20の全体が同時に有機EL基板92に密着するわけでは必ずしもない。例えば、蒸着マスク20の一部が先に有機EL基板92に密着し、その後、蒸着マスク20の残りの部分が有機EL基板92に密着する場合がある。図5は、蒸着マスク20のうち貫通孔25に接する一対のへり部20eが先に有機EL基板92に密着し、その後、へり部20eの間に位置する中間部20fが有機EL基板92に密着した場合を示す図である。蒸着マスク20にたわみが生じている状態で蒸着マスク20が有機EL基板92に密着する場合、図5に示すように、一対のへり部20eの間の中間部20fが有機EL基板92から浮き上がることがある。ここで、蒸着マスク20の飽和磁化が過大である場合、一対のへり部20eが有機EL基板92の面方向Aにおいて変位することができず、中間部20fに、蒸着マスク20の部分的な変形に起因するデント(Dent)20gが形成されてしまう。デント20gの高さは、0.1μm以上且つ5μm以下であり、例えば1μm程度である。
図6は、デント20gが生じている蒸着マスク20の一例を示す平面図である。図6に示すように、デント20gは、蒸着マスク20の面方向に沿って筋状に延びる変形部として現れる。蒸着マスク20の面方向におけるデント20gの長さは、0.05mm以上且つ30mm以下であり、例えば数mm程度である。このようなデント20gが生じると、デント20gの近傍に位置する貫通孔25の寸法や位置が所望の値からずれてしまう。
このような課題に基づいて、本件発明者らは鋭意研究を行い、蒸着マスク20を構成する金属層の飽和磁化の適切な範囲を見出した。具体的には、後述する実施例によって支持されるように、蒸着マスク20を構成する金属層の飽和磁化を、1260mT以上且つ1600mT以下にすることを提案する。これにより、デント20gなどの変形が生じることを抑制しながら、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
(蒸着マスク)
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図3に示すように、蒸着マスク20は、有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。有効領域22は、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る複数の貫通孔25が形成された領域である。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、有機EL基板92へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。ただし、種々の目的から、周囲領域23に貫通孔や凹部が形成されていてもよい。
図3に示すように、有効領域22は、例えば、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。なお図示はしないが、有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、四角形形状以外の形状を有していてもよい。例えば、有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
図3に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向に並ぶ複数の有効領域22を含む。一つの有効領域22は、一つの有機EL表示装置100の表示領域に対応する。このため、図3に示す蒸着マスク装置10によれば、有機EL表示装置100の多面付蒸着が可能である。
蒸着マスク20は、1260mT以上且つ1600mT以下の飽和磁化を有する金属層を含む。例えば、有効領域22は、1260mT以上且つ1600mT以下の飽和磁化を有する金属層と、金属層に設けられた複数の貫通孔25と、を含む。有効領域22の金属層の厚みは、例えば15μm以下であり、より好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは8μm以下である。また、有効領域22の金属層の厚みは、例えば3μm以上であり、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよい。なお、周囲領域23を構成する金属層は、1260mT以上且つ1600mT以下の飽和磁化を有していてもよく、若しくは、有していなくてもよい。また、周囲領域23を構成する金属層の厚みは、15μm以下であってもよく、15μmより大きくてもよい。
以下、蒸着マスク20の有効領域22について詳細に説明する。図7は、有効領域22を拡大して示す平面図であり、図8は、図7の有効領域22をVIII−VIII方向から見た断面図である。図7に示すように、複数の貫通孔25は、有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで規則的に配列される。
以下、貫通孔25及びその周囲の部分の形状について詳細に説明する。ここでは、蒸着マスク20がめっき処理によって形成される場合の、貫通孔25及びその周囲の部分の形状について説明する。
図8に示すように、有効領域22の金属層は、第1面20aを構成する第1金属層32と、第2面20bを構成する第2金属層37と、を備える。第1金属層32には、所定のパターンで第1開口部30が設けられており、また、第2金属層37には、所定のパターンで第2開口部35が設けられている。有効領域22においては、第1開口部30と第2開口部35とが互いに連通することにより、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が構成されている。
図7に示すように、貫通孔25を構成する第1開口部30や第2開口部35は、平面視において略多角形状になっていてもよい。ここでは第1開口部30および第2開口部35が、略四角形状、より具体的には略正方形状になっている例が示されている。また、図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、略六角形状や略八角形状など、その他の略多角形状になっていてもよい。なお「略多角形状」とは、多角形の角部が丸められている形状を含む概念である。また図示はしないが、第1開口部30や第2開口部35は、円形状になっていてもよい。また、平面視において第2開口部35が第1開口部30を囲う輪郭を有する限りにおいて、第1開口部30の形状と第2開口部35の形状が相似形になっている必要はない。
図8において、符号41は、第1金属層32と第2金属層37とが接続される接続部を表している。また符号S0は、第1金属層32と第2金属層37との接続部41における貫通孔25の寸法を表している。なお図8においては、第1金属層32と第2金属層37とが接している例を示したが、これに限られることはなく、第1金属層32と第2金属層37との間にその他の層が介在されていてもよい。例えば、第1金属層32と第2金属層37との間に、第1金属層32上における第2金属層37の析出を促進させるための触媒層が設けられていてもよい。
図9は、図8の第1金属層32および第2金属層37を拡大して示す図である。図9に示すように、蒸着マスク20の第2面20bにおける第2金属層37の幅M2は、蒸着マスク20の第1面20aにおける第1金属層32の幅M1よりも小さくなっている。言い換えると、第2面20bにおける貫通孔25(第2開口部35)の開口寸法S2は、第1面20aにおける貫通孔25(第1開口部30)の開口寸法S1よりも大きくなっている。以下、このように第1金属層32および第2金属層37を構成することの利点について説明する。
蒸着マスク20の第2面20b側から飛来する蒸着材料98は、貫通孔25の第2開口部35および第1開口部30を順に通って有機EL基板92に付着する。有機EL基板92のうち蒸着材料98が付着する領域は、第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法S1や開口形状によって主に定められる。図8及び図9において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印L1で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて蒸着マスク20の法線方向Nに沿って移動するだけでなく、蒸着マスク20の法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。ここで、仮に第2面20bにおける貫通孔25の開口寸法S2が第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法S1と同一であるとすると、斜めに移動する蒸着材料98が、第2金属層37の壁面36や第1金属層32の壁面31に引っ掛かり易くなり、この結果、貫通孔25を通過できない蒸着材料98の比率が多くなる。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、第2開口部35の開口寸法S2を大きくすること、すなわち第2金属層37の幅M2を小さくすることが好ましいと言える。
図8において、第2金属層37の壁面36及び第1金属層32の壁面31に接する直線L1が、蒸着マスク20の法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。例えば、角度θ1を45°以上にすることが好ましい。
角度θ1を大きくする上では、第1金属層32の幅M1に比べて第2金属層37の幅M2を小さくすることが有効である。また、図から明らかなように、角度θ1を大きくする上では、第1金属層32の厚みT1や第2金属層37の厚みT2を小さくすることも有効である。なお、第2金属層37の幅M2、第1金属層32の厚みT1や第2金属層37の厚みT2を過剰に小さくしてしまうと、蒸着マスク20の強度が低下し、このため搬送時や使用時に蒸着マスク20が破損してしまうことが考えられる。例えば、蒸着マスク20をフレーム15に張設する際に蒸着マスク20に加えられる引張り応力によって、蒸着マスク20が破損してしまうことが考えられる。これらの点を考慮すると、第1金属層32および第2金属層37の寸法が以下の範囲に設定されることが好ましいと言える。これによって、上述の角度θ1を例えば45°以上にすることができる。
・第1金属層32の幅M1:5μm以上且つ25μm以下
・第2金属層37の幅M2:2μm以上且つ20μm以下
・蒸着マスク20の厚みT0:3μm以上且つ10μm以下
・第1金属層32の厚みT1:5μm以下
・第2金属層37の厚みT2:2μm以上且つ10μm以下
上述の開口寸法S0,S1,S2は、有機EL表示装置の画素密度や上述の角度θ1の所望値などを考慮して、適切に設定される。例えば、400ppi以上の画素密度の有機EL表示装置を作製する場合、接続部41における貫通孔25の開口寸法S0は、15μm以上且つ60μm以下に設定され得る。また、第1面20aにおける第1開口部30の開口寸法S1は、10μm以上且つ50μm以下に設定され、第2面20bにおける第2開口部35の開口寸法S2は、15μm以上且つ60μm以下に設定され得る。
図9に示すように、第1金属層32によって構成される蒸着マスク20の第1面20aには、窪み部34が形成されていてもよい。窪み部34は、めっき処理によって蒸着マスク20を製造する場合に、後述するパターン基板50の導電性パターン52に対応して形成される。窪み部34の深さDは、例えば50nm以上且つ500nm以下である。好ましくは、第1金属層32に形成される窪み部34の外縁34eは、第1金属層32の端部33と接続部41との間に位置する。
(蒸着マスクの製造方法)
次に、蒸着マスク20を製造する方法について説明する。図10乃至図13は、蒸着マスク20の製造方法を説明する図である。
〔パターン基板準備工程〕
まず、図10に示すパターン基板50を準備する。パターン基板50は、絶縁性を有する基材51と、基材51上に形成された導電性パターン52と、を有する。導電性パターン52は、第1金属層32に対応するパターンを有する。
絶縁性および適切な強度を有する限りにおいて基材51を構成する材料や基材51の厚みが特に限られることはない。例えば基材51を構成する材料として、ガラスや合成樹脂などを用いることができる。
導電性パターン52を構成する材料としては、金属材料や酸化物導電性材料等の、導電性を有する材料が適宜用いられる。金属材料の例としては、例えばクロムや銅などを挙げることができる。導電性パターン52の厚みは、例えば50nm以上且つ500nm以下である。
なお、蒸着マスク20をパターン基板50から分離させる後述する分離工程を容易化するため、パターン基板50に離型処理を施しておいてもよい。
例えば、まず、パターン基板50の表面の油分を除去する脱脂処理を実施する。例えば、酸性の脱脂液を用いて、パターン基板50の導電性パターン52の表面の油分を除去する。
次に、導電性パターン52の表面を活性化する活性化処理を実施する。例えば、後述する第1めっき処理工程において用いられる第1めっき液に含まれる酸性溶液と同一の酸性溶液を、導電性パターン52の表面に接触させる。例えば、第1めっき液がスルファミン酸ニッケルを含む場合、スルファミン酸を導電性パターン52の表面に接触させる。
次に、導電性パターン52の表面に有機物の膜を形成する有機膜形成処理を実施する。例えば、有機物を含む離型剤を導電性パターン52の表面に接触させる。この際、有機膜の厚みを、有機膜の電気抵抗が、電解めっきによる第1金属層32の析出が有機膜によって阻害されない程度に薄く設定する。離型剤は、硫黄成分を含んでいてもよい。
なお、脱脂処理、活性化処理および有機膜形成処理の後には、パターン基板50を水で洗浄する水洗処理をそれぞれ実施する。
〔第1めっき処理工程〕
次に、導電性パターン52が形成された基材51上に第1めっき液を供給して、導電性パターン52上に第1金属層32を析出させる第1めっき処理工程を実施する。例えば、導電性パターン52が形成された基材51を、第1めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図11に示すように、パターン基板50上に、所定のパターンで第1開口部30が設けられた第1金属層32を得ることができる。
なお、めっき処理の特性上、図11に示すように、第1金属層32は、基材51の法線方向に沿って見た場合に導電性パターン52と重なる部分だけでなく、導電性パターン52と重ならない部分にも形成され得る。これは、導電性パターン52の端部54と重なる部分に析出した第1金属層32の表面にさらに第1金属層32が析出するためである。この結果、図11に示すように、第1開口部30の端部33は、基材51の法線方向に沿って見た場合に導電性パターン52と重ならない部分に位置するようになり得る。また、第1金属層32のうち導電性パターン52と接する側の面には、導電性パターン52の厚みに対応する上述の窪み部34が形成される。
図11において、第1金属層32のうち導電性パターン52と重ならない部分(すなわち窪み部34が形成されない部分)の幅が符号wで表されている。幅wは、例えば0.5μm以上且つ5.0μm以下になる。導電性パターン52の寸法は、この幅wを考慮して設定される。
導電性パターン52上に第1金属層32を析出させることができる限りにおいて、第1めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることはない。例えば、第1めっき処理工程は、導電性パターン52に電流を流すことによって導電性パターン52上に第1金属層32を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第1めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお、第1めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、導電性パターン52上には適切な触媒層が設けられていてもよい。若しくは、導電性パターン52が、触媒層として機能するよう構成されていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、導電性パターン52上に触媒層が設けられていてもよい。
第1めっき処理工程が電解めっき処理工程である場合、後述する実施例で示すように、導電性パターン52に流れる電流の電流密度に応じて、第1金属層32の飽和磁化が変化する。従って、電解めっき処理工程における電流密度は、第1金属層32を含む蒸着マスク20の飽和磁化が1260mT以上且つ1600mT以下になるよう適切に設定される。なお、蒸着マスク20の飽和磁化は、後述する実施例で示すように、蒸着マスク20の金属層を構成する鉄合金中のニッケルの比率に依っても変化する。従って、電解めっき処理工程における電流密度は、鉄合金中のニッケルの比率を考慮して、蒸着マスク20の飽和磁化が1260mT以上且つ1600mT以下になるよう設定される。
用いられる第1めっき液の成分は、第1金属層32が、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含むよう、定められる。例えば、第1めっき液として、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルや臭化ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸第一鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、様々な添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、ホウ酸などのpH緩衝剤、サッカリンナトリウなどの一次光沢剤、ブチンジオール、プロパギルアルコール、クマリン、ホルマリン、チオ尿素などの二次光沢剤や、酸化防止剤などが用いられ得る。一次光沢剤は、硫黄成分を含んでいてもよい。
なお、第1金属層32中のニッケルの比率は、同一の第1めっき液が用いられる場合であっても、電解めっき処理工程における電流密度に応じて変化する。従って、第1めっき液の成分は、電解めっき処理工程における電流密度、及び、第1金属層32中のニッケルの比率の目標値に基づいて定められることが好ましい。
〔レジスト形成工程〕
次に、基材51上および第1金属層32上に、所定の隙間56を空けてレジストパターン55を形成するレジスト形成工程を実施する。図12は、基材51上に形成されたレジストパターン55を示す断面図である。図12に示すように、レジスト形成工程は、第1金属層32の第1開口部30がレジストパターン55によって覆われるとともに、レジストパターン55の隙間56が第1金属層32上に位置するように実施される。
以下、レジスト形成工程の一例について説明する。はじめに、基材51上および第1金属層32上にドライフィルムを貼り付けることによって、ネガ型のレジスト膜を形成する。ドライフィルムとは、基材51などの対象物の上にレジスト膜を形成するために対象物に貼り付けられるフィルムのことである。ドライフィルムは、PETなどからなるベースフィルムと、ベースフィルムに積層され、感光性を有する感光層と、を少なくとも含む。感光層は、アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレン系樹脂などの感光性材料を含む。なお、レジストパターン55用の材料を基材51上に塗布し、その後に必要に応じて焼成を実施することにより、レジスト膜を形成してもよい。
次に、レジスト膜のうち隙間56となるべき領域に光を透過させないようにした露光マスクを準備し、露光マスクをレジスト膜上に配置する。その後、真空密着によって露光マスクをレジスト膜に十分に密着させる。その後、レジスト膜を露光マスク越しに露光する。さらに、露光されたレジスト膜に像を形成するためにレジスト膜を現像する。以上のようにして、図12に示すように、第1金属層32上に位置する隙間56が設けられるとともに第1金属層32の第1開口部30を覆うレジストパターン55を形成することができる。なお、レジストパターン55を基材51および第1金属層32に対してより強固に密着させるため、現像工程の後にレジストパターン55を加熱する熱処理工程を実施してもよい。
なお、レジスト膜として、ポジ型のものが用いられてもよい。この場合、露光マスクとして、レジスト膜のうちの除去したい領域に光を透過させるようにした露光マスクが用いられる。
〔第2めっき処理工程〕
次に、レジストパターン55の隙間56に第2めっき液を供給して、第1金属層32上に第2金属層37を析出させる第2めっき処理工程を実施する。例えば、第1金属層32が形成された基材51を、第2めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図13に示すように、第1金属層32上に第2金属層37を形成することができる。
第1金属層32上に第2金属層37を析出させることができる限りにおいて、第2めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることとはない。例えば、第2めっき処理工程は、第1金属層32に電流を流すことによって第1金属層32上に第2金属層37を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、第2めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なお第2めっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、第1金属層32上には適切な触媒層が設けられていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、第1金属層32上に触媒層が設けられていてもよい。
第1めっき処理工程の場合と同様に、第2めっき処理工程が電解めっき処理工程である場合、導電性パターン52に流れる電流の電流密度に応じて、第2金属層37の飽和磁化が変化する。従って、第2めっき処理工程の電解めっき処理工程における電流密度も、第2金属層37を含む蒸着マスク20の飽和磁化が1260mT以上且つ1600mT以下になるよう適切に設定される。
第2めっき液の成分は、第2金属層37が、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含むよう、定められる。例えば、第2めっき液として、上述の第1めっき液と同一のめっき液が用いられてもよい。若しくは、第1めっき液とは異なるめっき液が第2めっき液として用いられてもよい。第1めっき液の組成と第2めっき液の組成とが同一である場合、第1金属層32を構成する金属の組成と、第2金属層37を構成する金属の組成も同一になる。
第1金属層32の場合と同様に、第2金属層37中のニッケルの比率も、電解めっき処理工程における電流密度に応じて変化する。第2めっき液の成分は、電解めっき処理工程における電流密度、及び、第2金属層37中のニッケルの比率の目標値に基づいて定められることが好ましい。
なお、図13においては、レジストパターン55の上面と第2金属層37の上面とが一致するようになるまで第2めっき処理工程が継続される例を示したが、これに限られることはない。第2金属層37の上面がレジストパターン55の上面よりも下方に位置する状態で、第2めっき処理工程が停止されてもよい。
〔除去工程〕
その後、レジストパターン55を除去する除去工程を実施する。例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、レジストパターン55を基材51、第1金属層32や第2金属層37から剥離させることができる。
〔分離工程〕
次に、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体を基材51から分離させる分離工程を実施する。これによって、所定のパターンで第1開口部30が設けられた第1金属層32と、第1開口部30に連通する第2開口部35が設けられた第2金属層37と、を備えた蒸着マスク20を得ることができる。
以下、分離工程の一例について詳細に説明する。はじめに、粘着性を有する物質が塗工などによって設けられているフィルムを、基材51上に形成された第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体に貼り付ける。次に、フィルムを引き上げたり巻き取ったりすることにより、フィルムを基材51から引き離し、これによって、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体をパターン基板50の基材51から分離させる。その後、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体からフィルムを剥がす。
その他にも、分離工程においては、はじめに、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体と基材51との間に、分離のきっかけとなる間隙を形成し、次に、この間隙にエアを吹き付け、これによって分離工程を促進してもよい。
なお、粘着性を有する物質としては、UVなどの光を照射されることによって、または加熱されることによって粘着性を喪失する物質を使用してもよい。この場合、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体を基材51から分離させた後、フィルムに光を照射する工程やフィルムを加熱する工程を実施する。これによって、第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体からフィルムを剥がす工程を容易化することができる。例えば、フィルムと第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体とを可能な限り互いに平行な状態に維持した状態で、フィルムを剥がすことができる。これによって、フィルムを剥がす際に第1金属層32および第2金属層37の組み合わせ体が湾曲することを抑制することができ、このことにより、蒸着マスク20に湾曲などの変形のくせがついてしまうことを抑制することができる。
ところで、めっき処理によって作製した蒸着マスク20には、めっきに起因する内部応力が生じている。このような内部応力を緩和する方法として、蒸着マスク20をアニール処理することが考えられる。一方、パターン基板50から分離される前の蒸着マスク20にアニール処理を施すと、蒸着マスク20の線膨張率とパターン基板50の基材51の線膨張率との差に起因して、基材51に反りや割れが生じ、蒸着マスク20が損傷してしまうことが考えられる。この点を考慮し、本実施の形態においては、めっき処理によって蒸着マスク20をパターン基板50上に作製した後、蒸着マスク20にアニール処理を施すことなく、蒸着マスク20をパターン基板50から分離してもよい。例えば、めっき処理を実施した後、分離工程を実施するまでの間に、蒸着マスク20の金属層を140℃以上に加熱するような工程を実施しない。これにより、パターン基板50の反りや割れに起因して蒸着マスク20が損傷してしまうことを抑制することができる。もちろん、状況によっては、蒸着マスク20をアニール処理する工程を実施してもよい。
(蒸着マスクの溶接工程)
次に、上述のようにして得られた蒸着マスク20をフレーム15に溶接する溶接工程を実施する。これによって、蒸着マスク20及びフレーム15を備える蒸着マスク装置10を得ることができる。
(蒸着マスクの取付工程)
次に、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20を有機EL基板92に取り付ける取付工程を実施する。まず、図14に示すように、有機EL基板92の面方向Aにおいて、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の位置を調整する位置調整工程を実施する。図示はしないが、有機EL基板92には、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する蒸着材料によって形成される層を駆動するための駆動回路が予め設けられている。位置調整工程においては、有機EL基板92の駆動回路の位置と蒸着マスク20の貫通孔25の位置とが一致するよう、面方向Aにおいて蒸着マスク20の位置を調整する。この際、好ましくは、蒸着マスク20を有機EL基板92側に引き寄せる磁力などの力は生じさせない。例えば、磁石93が電磁石である場合、磁石93への電流供給を停止させておく。これにより、図14に示すように、有機EL基板92と蒸着マスク20との間に隙間が空いた状態で蒸着マスク20を面方向Aに沿って容易に移動させることができる。このことにより、蒸着マスク20との接触に起因して有機EL基板92上の駆動回路が損傷してしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、蒸着マスク20の有効領域22の第1面20aに窪み部34が形成されている。このため、位置調整工程の際に、蒸着マスク20の位置調整の誤差や蒸着マスク20のたわみが生じた場合であっても、有機EL基板92に接触する蒸着マスク20の面積を低減することができる。この点でも、有機EL基板92上の駆動回路が損傷してしまうことを抑制することができる。
面方向Aにおける蒸着マスク20の位置を調整した後、図15に示すように、蒸着マスク20を有機EL基板92側へ引き寄せる力Bを、磁石93を用いて生じさせることにより、蒸着マスク20を有機EL基板92に接触させる接触工程を実施する。その後、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の位置が適切か否かを確認する確認工程を実施する。例えば、蒸着マスク20の所定数の貫通孔25の位置において、有機EL基板92の駆動回路と蒸着マスク20の貫通孔25とが一致しているか否かを確認する。
確認工程が合格であった場合、蒸着マスク20の貫通孔25を介して蒸着材料を有機EL基板92の表面に付着させる蒸着工程を実施する。確認工程が不合格であった場合、蒸着マスク20を有機EL基板92側に引き寄せる磁力などの力を停止させた後、蒸着マスク20を有機EL基板92から取り外して、再び上述の位置調整工程、接触工程及び確認工程を実施する。
本実施の形態において、蒸着マスク20は、上述のように、1260mT以上且つ1600mT以下の飽和磁化を有する金属層を含んでいる。飽和磁化が1260mT以上であることにより、有機EL基板92と、有機EL基板92に取り付けられた蒸着マスク20との間に隙間が生じることを抑制することができる。このため、蒸着マスク20と有機EL基板92との間の隙間において蒸着材料98が有機EL基板92に付着することを抑制することができる。このことにより、蒸着材料によって有機EL基板92上に形成される層の寸法精度を確保することができる。また、飽和磁化が1600mT以下であることにより、磁力を利用して蒸着マスク20を有機EL基板92に接触させる接触工程の際にデント20gなどの変形が蒸着マスク20に生じることを抑制することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(蒸着マスクの製造方法の第1変形例)
上述の本実施の形態においては、蒸着マスク20が、第1金属層32および第2金属層37という、少なくとも2つの金属層を積層させることによって構成される場合について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、蒸着マスク20は、所定のパターンで複数の貫通孔25が形成された1つの金属層27によって構成されていてもよい。以下、図16〜図18を参照して、蒸着マスク20が1つの金属層27を備える例について説明する。なお、本変形例においては、蒸着マスク20の第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25のうち第1面20a上に位置する部分を第1開口部30と称し、貫通孔25のうち第2面20b上に位置する部分を第2開口部35と称する。
はじめに、本変形例による蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
まず、所定の導電性パターン52が形成された基材51を準備する。次に図16に示すように、基材51上に、所定の隙間56を空けてレジストパターン55を形成するレジスト形成工程を実施する。好ましくは、レジストパターン55の隙間56を画成するレジストパターン55の側面57の間の間隔は、基材51から遠ざかるにつれて狭くなっている。すなわち、レジストパターン55が、基材51から遠ざかるにつれてレジストパターン55の幅が広くなる形状、いわゆる逆テーパ形状を有している。
このようなレジストパターン55を形成する方法の一例について説明する。例えば、はじめに、基材51の面のうち導電性パターン52が形成された側の面上に、光硬化性樹脂を含むレジスト膜を設ける。次に、基材51のうちレジスト膜が設けられている側とは反対の側から基材51に入射させた露光光をレジスト膜に照射して、レジスト膜を露光する。その後、レジスト膜を現像する。この場合、露光光の回り込み(回折)に基づいて、図16に示すような逆テーパ形状を有するレジストパターン55を得ることができる。
次に図17に示すように、レジストパターン55の隙間56にめっき液を供給して、導電性パターン52上に金属層27を析出させるめっき処理工程を実施する。その後、上述の除去工程および分離工程を実施することにより、図18に示すように、所定のパターンで貫通孔25が設けられた金属層27を備えた蒸着マスク20を得ることができる。
本変形例においても、蒸着マスク20を構成する金属層27の飽和磁化が1260mT以上且つ1600mT以下となるよう、蒸着マスク20を作製する。これにより、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の密着性を確保するとともに、デント20gなどの変形が蒸着マスク20に生じることを抑制することができる。
(蒸着マスクの製造方法の第2変形例)
上述の本実施の形態においては、パターン基板50上に所定のパターンでめっき層を形成することにより、貫通孔25が設けられた金属層を備える蒸着マスク20を得る例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、まず、めっき処理を利用した製箔工程によって、所望の厚さを有するめっき膜からなる金属箔を作成し、その後、エッチング法などを用いて金属箔を加工して貫通孔25を形成することにより、貫通孔25が設けられた金属層を備える蒸着マスク20を得てもよい。製箔工程においては、例えば、めっき液の中に部分的に浸漬されたステンレス製などのドラムを回転させながら、ドラムの表面にめっき膜を形成し、このめっき膜を剥がしていくことにより、長尺状の金属箔をロールトゥーロールで作製することができる。ニッケルを含む鉄合金からなる金属箔を作製する場合、めっき液としては、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、マロン酸やサッカリンなどの添加剤が含まれていてもよい。
めっき処理を利用して金属箔を作製した場合も、上述の実施の形態の場合と同様に、金属箔の飽和磁化が1260mT以上且つ1600mT以下であることが好ましい。これにより、金属箔を加工することによって得られた蒸着マスク20において、有機EL基板92に対する密着性を確保するとともに、デント20gなどの変形が生じることを抑制することができる。金属箔を構成する鉄合金の組成、及び金属箔の厚みは、上述の実施の形態の場合における金属層を構成する鉄合金の組成、及び金属層の厚みと同様であるので、説明を省略する。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
電解めっき処理によって、第1金属層32及び第2金属層37を含む金属層を有する蒸着マスク20を作製した。電解めっき処理工程における電流密度は、2.0A/dmであった。金属層を構成する鉄合金中のニッケルの比率は、33.0質量%であった。ニッケルの比率を分析する装置としては、島津製作所製のマルチタイプICP発光分析装置 ICPE-9820を用いた。
蒸着マスク20の全体の寸法及び各部分の寸法は、下記の通りであった。
・蒸着マスク20の長さ:870mm
・蒸着マスク20の幅:65mm
・有効領域22における貫通孔25の開口率:39%
・接続部41における貫通孔25の開口寸法S0:34μm
・第1面20aにおける貫通孔25の開口寸法S1:29μm
・第2面20bにおける貫通孔25の開口寸法S2:34μm
・第1金属層32の幅M1:20μm
・第2金属層37の幅M2:15μm
・蒸着マスク20の厚みT0:7μm
・第1金属層32の厚みT1:2μm
・第1金属層32の厚みT2:6μm
なお開口率とは、有効領域22全体の面積に対する貫通孔25の面積の比率である。
〔評価1:変形への耐性の評価〕
作製した蒸着マスク20の長さ方向に4N〜8Nの範囲内の、具体的には約6Nの張力を加えた状態で、蒸着マスク20を有機EL基板92に取り付けた。この時、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に磁石93を配置して、磁力を利用して蒸着マスク20を有機EL基板92側へ引き寄せた。この際、蒸着マスク20側の有機EL基板92の表面における磁束密度が30mTとなるよう、磁石93を構成した。磁石93としては、ネオジム磁石を用いた。蒸着マスク20の磁化は、飽和磁化に到達していた。有機EL基板92としては、0.7mmの厚みを有するガラス基板を用いた。続いて、磁力を停止させた状態で、蒸着マスク20を有機EL基板92から取り外した。
蒸着マスク20の有機EL基板92への、磁力を利用した上述の取り付けと、蒸着マスク20の有機EL基板92からの、磁力を停止させた状態での上述の取り外しとを、それぞれ20回繰り返し実施した。その後、蒸着マスク20の表面にデント20gなどの変形が生じているか否かを、蒸着マスク20に光を照射して目視で観察した。結果、2個のデント20gが発生していた。
蒸着マスク20の表面の観察条件は下記のとおりである。
・光の輝度:500lux〜2000lux、例えば1000lux
・光源:三波長蛍光灯
・光の入射角度:15度〜45度
・光源から蒸着マスクの表面までの距離:30cm〜100cm、例えば50cm
・視点から蒸着マスクの表面までの距離:15cm
〔評価2:密着性の評価〕
次に、蒸着マスク20が取り付けられた有機EL基板92に蒸着材料を付着させる蒸着工程を実施した。蒸着工程の条件は、有機EL基板92に付着する蒸着材料98の厚みが40nmになるように設定した。
有機EL基板92に付着した蒸着材料98の形状に基づいて、有機EL基板92に対する蒸着マスク20の密着性を評価した。ここでは、有機EL基板92に付着した蒸着材料98の周縁部分98bの幅を測定し、測定結果に基づいて、密着性の良否を判定した。
具体的には、図19に示すように、はじめに、有機EL基板92に付着した蒸着材料98の最大厚みH1を測定した。次に、最大厚みH1に0.95を掛けた値を、蒸着材料98の所望厚みH2として認定した。次に、蒸着材料98のうち所望厚みH2以上の厚みを有する部分を、中央部分98aとして認定した。また、蒸着材料98のうち所望厚みH2未満の厚みを有する部分を周縁部分98bとして認定した。そして、周縁部分98bの幅Rsを測定した。蒸着材料98の最大厚みH1や周縁部分98bの幅Rsを測定する装置としては、菱化システム製のVertscanを用いた。
800ppi以上の画素密度を有する有機EL表示装置100を作製するためには、幅Rsが5μm以下であることが好ましい。従って、幅Rsが5μm以下である場合、密着性の評価結果を合格と判定した。本実施例において、10箇所において蒸着材料98の幅Rsを測定した結果、幅Rsの平均値は5μm以下であった。
〔飽和磁化の測定〕
めっき処理によって作製した上述の蒸着マスク20のうち、貫通孔25が形成されていない部分を切り出して第2サンプルを採取し、単位重量当たりの磁化[emu/g]を測定した。測定器としては、理研電子株式会社製の振動試料型磁力計を用いた。また、蒸着マスク20を切り出して第3サンプルを採取し、密度[g/cm3]を測定した。測定方法としては、アルゴンガスを利用した気相置換法を用いた。測定器としては、メイクロメリテックス製の乾式自動密度計 AccuPycII1340を用いた。磁界反転条件は、±1kOe(±79.6kA/m)である。測定項目は、I-H曲線、および+1kOe、-1kOeにおける最大磁化である。そして、単位重量当たりの磁化[emu/g]に密度[g/cm3]を掛けることにより、磁化[mT]を算出した。結果を図20に示す。飽和磁化は1744.9mTであった。
(実施例2〜20)
金属層を構成する鉄合金中のニッケルの比率を、35.6質量%〜97.2質量%の範囲で変化させて、実施例1の場合と同様にして、めっき処理によって蒸着マスク20を作製した。例えば、実施例10においては、ニッケルの比率が43.4質量%であった。また、実施例16においては、ニッケルの比率が52.3質量%であった。
また、実施例1の場合と同様にして、密着性の評価、位置精度の評価、熱膨張率の測定、及び磁化の測定を実施した。実施例10における磁化の測定を図21に示す。また、実施例16における磁化の測定を図22に示す。また、実施例2〜20における、評価1(変形への耐性の評価)、評価2(密着性の評価)、及び飽和磁化の測定の結果を、実施例1の結果と併せて図24に示す。
(実施例21)
ニッケルを含む鉄合金の母材を圧延して、厚み10.1μmの金属板を作製した。鉄合金におけるニッケルの比率は、36.0質量%であった。次に、金属板をエッチングして複数の貫通孔25を形成することにより、蒸着マスク20を作製した。
また、実施例1の場合と同様にして、密着性の評価、位置精度の評価、熱膨張率の測定、及び磁化の測定を実施した。実施例21における磁化の測定を図23に示す。また、実施例21における、評価1(変形への耐性の評価)、評価2(密着性の評価)、及び飽和磁化の測定の結果を、実施例1〜20の結果と併せて図24に示す。
図24において、評価1(デント個数)の列の個数は、目視観察で確認されたデント20gの個数を表す。また、評価2(密着性)の列の「A」は、幅Rsが5μm以下であったことを意味し、「B」は、幅Rsが5μmを超えたことを意味する。
図24に示すように、金属層の飽和磁化が1600mT以下である場合、蒸着マスク20の表面にデント20gなどの変形が生じることを抑制することができた。また、金属層の飽和磁化が1260mT以上である場合、有機EL基板92に付着した蒸着材料98に余分な周縁部分98bが生じることを抑制することができた。従って、蒸着マスク20を構成する金属層の飽和磁化に関する上述の「1260mT以上且つ1600mT以下」という条件は、高い画素密度を有する有機EL表示装置100を作製するための蒸着マスク20を提供する上での有用な条件であると考える。
(実施例22〜29)
電解めっき処理工程における電流密度を、0.08A/dm〜8.0A/dm〜の範囲で変化させて、めっき処理によって蒸着マスク20を作製した。蒸着マスク20の金属層中のニッケルの比率の目標値は、実施例10の場合と同等である約43.5重量%とした。なお、仮に、実施例22〜29で用いられるめっき液の成分が同一である場合、形成される金属層中のニッケルの比率は、電流密度に応じて変化する。例えば、めっき液の成分が同一であって、且つ電流密度が1A/dm以上である場合、電流密度が高くなるほど、形成される金属層中のニッケルの比率も高くなる傾向が見られた。一方、めっき液の成分が同一であって、電流密度が1A/dm未満である場合、電流密度が低くなるほど、形成される金属層中のニッケルの比率が高くなるという現象がみられることもあった。実施例22〜29においては、金属層の中のニッケルの比率が43.5重量%になるよう、電流密度に応じてめっき液の成分を調整した。
また、実施例1の場合と同様にして、密着性の評価、位置精度の評価、熱膨張率の測定、及び磁化の測定を実施した。実施例22〜29における、電流密度、評価1(変形への耐性の評価)、評価2(密着性の評価)、及び飽和磁化の測定の結果を、実施例10の結果と併せて図25に示す。
図25に示すように、電流密度が高くなるほど蒸着マスク20の飽和磁化が高くなる傾向が見られた。具体的には、電流密度が0.3A/dm以上である場合、蒸着マスク20の飽和磁化が1260mT以上であり、具体的には1320mT以上であった。また、金属層の飽和磁化が1260mT以上である場合、有機EL基板92に付着した蒸着材料98に余分な周縁部分98bが生じることを抑制することができた。また、電流密度が5.0A/dm以上である場合、蒸着マスク20の飽和磁化が1600mT以上であり、具体的には1570mT以上であった。また、金属層の飽和磁化が1600mT以下である場合、蒸着マスク20の表面にデント20gなどの変形が生じることを抑制することができた。
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
20 蒸着マスク
20e へり部
20f 中間部
20g デント
22 有効領域
23 周囲領域
25 貫通孔
30 第1開口部
31 壁面
32 第1金属層
34 窪み部
35 第2開口部
36 壁面
37 第2金属層
41 接続部
50 パターン基板
51 基材
52 導電性パターン
90 蒸着装置
92 有機EL基板
98 蒸着材料
98a 中央部分
98b 周縁部分
99 隙間
100 有機EL表示装置

Claims (11)

  1. 金属層と、
    前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備え、
    前記金属層は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、
    前記金属層の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、蒸着マスク。
  2. 前記金属層の前記鉄合金は、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む、請求項1に記載の蒸着マスク。
  3. 前記金属層は、15μm以下の厚みを有する、請求項1又は2に記載の蒸着マスク。
  4. 前記金属層は、8μm以下の厚みを有する、請求項3に記載の蒸着マスク。
  5. 前記金属層は、めっき処理によって作製されためっき層である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
  6. 金属層と、前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備える蒸着マスクを製造するために用いられる金属箔であって、
    前記金属箔は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、
    前記金属箔の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、金属箔。
  7. 前記鉄合金は、38質量%以上且つ62質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む、請求項6に記載の金属箔。
  8. 15μm以下の厚みを有する、請求項6又は7に記載の金属箔。
  9. 8μm以下の厚みを有する、請求項8に記載の金属箔。
  10. めっき処理によって作製されためっき膜である、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の金属箔。
  11. 基板に蒸着材料を所定のパターンで付着させるための蒸着マスク装置であって、
    前記基板に対向するよう配置される蒸着マスクと、
    前記蒸着マスクを支持するフレームと、
    前記基板の、前記蒸着マスクと反対の側の面に配置された磁石と、を備え、
    前記蒸着マスクは、金属層と、前記金属層に設けられた複数の貫通孔と、を備え、
    前記金属層は、ニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物と、を含む鉄合金を有し、
    前記金属層の飽和磁化は、1260mT以上且つ1600mT以下である、蒸着マスク装置。
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