JP2018095665A - 繊維強化熱可塑性樹脂シートとその製造方法、金属張積層シート、複合体、および不織布とその製造方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂シートとその製造方法、金属張積層シート、複合体、および不織布とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マトリックス樹脂成分として、熱可塑性樹脂を使用しながらも、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が低減した繊維強化熱可塑性樹脂シートを提供する。【解決手段】熱可塑性のマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に含有されている、長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂シート。【選択図】図5

Description

本発明は、繊維強化熱可塑性樹脂シートとその製造方法、金属張積層シート、複合体、および不織布とその製造方法に関する。
繊維と樹脂を含む複合体(プリプレグ)を加熱加圧成形することによって得られたシートは、繊維強化樹脂シートとも呼ばれ、繊維を含まない樹脂シートと比較して機械的な強度が高いなどの利点がある。非導電性の繊維を含む繊維強化樹脂シートは、絶縁シートとして、例えば、配線板や金属張積層シートの基材として利用されている。
特許文献1には、プリント配線板の基材として、パラ型アラミド繊維を主体とする不織布に熱硬化性樹脂を含浸乾燥したプリプレグの層を加熱加圧成形してなる積層板が記載されている。また、特許文献2には、部品が内蔵されたプリント配線板を構成する絶縁層として、紡織していない繊維と樹脂組成物を含む絶縁材料を用いることが記載されている。この特許文献2には、紡織していない繊維として、ガラス繊維もしくはアラミド繊維が記載されている。
特開2002−69886号公報 特開2011−142364号公報
繊維強化樹脂シートの用途の一つとして、配線板や金属張積層シートの基材(絶縁シート)としての用途が知られている。この用途では、マトリックス樹脂材料としてはエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂が広く利用されている。しかしながら、熱硬化性樹脂は一般に熱可塑性樹脂と比較すると成形性が低い傾向がある。一方、ポリエーテルイミドのように融点や熱分解温度が、一般的なリフローはんだ付けの温度(例えば、260℃)よりも高く、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂が開発されている。このような熱可塑性樹脂は、これまで使用されてきたエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂では実現できなかった低発煙性や低誘電率といった優れた特性を有するものがあり、配線板や金属張積層シートの樹脂材料として使用することができれば好ましい。
しかしながら、本発明の発明者の検討によると、マトリックス樹脂材料として熱可塑性樹脂を使用した繊維強化樹脂シートは、熱硬化性樹脂を使用したものと比較すると、高温環境下においてシートの厚さ方向に熱膨張し易いことが判明した。配線板や金属張積層シートの基材が厚さ方向に熱膨張と熱収縮を繰り返すと、基材から配線(金属箔)が剥がれて断線する要因となるおそれがある。また、複数の配線板を積層した積層配線板では、積層配線板を構成する各配線板が厚さ方向に熱膨張と熱収縮を繰り返すことによって、配線板が剥がれて断線する要因となるおそれがある。従って、配線板や金属張積層シートの基材として利用する繊維強化樹脂シートは、高温環境下での厚さ方向の熱膨張が低いことが望ましい。
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、マトリックス樹脂成分として、熱可塑性樹脂を使用しながらも、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が低減した繊維強化熱可塑性樹脂シート、及びこの繊維強化熱可塑性樹脂シートを用いた金属張積層シートを提供することを目的とする。本発明はまた、上記繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造用材料として用いることができる、熱可塑性のマトリックス樹脂と繊維を含む複合体(プリプレグ)を提供することもその目的とする。本発明はさらに、上記繊維強化熱可塑性樹脂シートの繊維の供給源として用いることができる不織布を提供することもその目的とする。またさらに、本発明は、上記の不織布の製造方法および繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法を提供することもその目的とする。
本発明者は、熱可塑性のマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に含有されている、長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂シートは、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が低減するとの知見を得た。特に、繊維の供給源として、上記のガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とを含む湿式不織布を用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートは、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が顕著に低減することを見出して、本発明を完成させた。上記の繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さ方向への熱膨張が低減する理由は、必ずしも明確ではないが、耐熱性樹脂繊維が熱収縮することによって、熱可塑性樹脂の厚さ方向への熱膨張分が相殺されるためであると考えられる。また、上記の湿式不織布では、長さが相対的に長いガラス繊維は平面方向に配向し、長さが相対的に短い耐熱性樹脂繊維は厚さ方向に配向する傾向がある。厚さ方向に配向した耐熱性樹脂繊維は、厚さ方向の収縮が大きくなる。このため、湿式不織布を用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートは、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が顕著に低減すると考えられる。
従って、上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]熱可塑性のマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に含有されている、長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂シート。
[2]前記ガラス繊維と前記耐熱性樹脂繊維の含有量比が、質量比で50:50〜90:10の範囲にある前記[1]の項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
[3]前記ガラス繊維と前記耐熱性樹脂繊維が不織布を形成している前記[1]または[2]の項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
[4]前記不織布が湿式不織布である前記[3]の項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
[5]前記[1]〜[4]の項のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートと、前記繊維強化熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の表面に貼り合わされた金属箔とを含む金属張積層シート。
[6]長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布、及び熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体を用意する工程と、前記複合体を加熱加圧成形する工程とを有する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
[7]長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布、及び熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体。
[8]前記不織布が湿式不織布である前記[7]の項に記載の複合体。
[9]前記マトリックス樹脂が、前記不織布の少なくとも一方の表面に層状に配置されている前記[7]または[8]の項に記載の複合体。
[10]前記マトリックス樹脂が、前記不織布の内部にビーズもしくは繊維の状態で配置されている前記[7]または[8]の項に記載の複合体。
[11]長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布。
[12]湿式不織布である前記[11]の項に記載の不織布。
[13]長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とが、水に分散されている水性分散液を用意する工程と、前記水性分散液を抄紙する工程と、を有する不織布の製造方法。
本発明によれば、マトリックス樹脂成分として、熱可塑性樹脂を使用しながらも、高温環境下での厚さ方向への熱膨張が低減した繊維強化熱可塑性樹脂シート、およびこの繊維強化熱可塑性樹脂シートを用いた金属張積層シートを提供することが可能となる。また、本発明の複合体は、上記繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造用材料(プリプレグ)として有利に用いることができる。さらに、本発明の不織布は、上記繊維強化熱可塑性樹脂シートの繊維の供給源として有利に用いることができる。さらにまた、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法によれば、上記の繊維強化熱可塑性樹脂シートを工業的に有利に製造することができる。そして、本発明の不織布の製造方法によれば、上記の不織布を工業的に有利に製造することができる。
本発明の一実施形態である不織布の一例の断面図である。 本発明の一実施形態である複合体の一例の断面図である。 本発明の一実施形態である複合体の別の一例の断面図である。 本発明の一実施形態である複合体のさらに別の一例の断面図である。 本発明の一実施形態である繊維強化熱可塑性樹脂シートの一例の断面図である。
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
<不織布>
先ず初めに、本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートの繊維の供給源として有利に用いることができる不織布について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である不織布の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の不織布10は、ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とを含む。
ガラス繊維11は、長さが3〜25mmの範囲にあるガラス繊維である。ガラス繊維11の直径は、一般に3〜18μmの範囲、好ましくは6〜15μmの範囲、より好ましくは6〜13μmの範囲である。ガラス繊維11のアスペクト比(長さ/直径)は、一般に100〜20000の範囲、好ましくは160〜18000の範囲、より好ましくは200〜15000の範囲である。
耐熱性樹脂繊維12は、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維である。「負の熱膨張係数」とは、温度が上昇すると体積が収縮し、温度が下降すると体積が膨張することを意味する。耐熱性樹脂繊維12の熱膨張係数は、−4×10−6〜−6×10−6cm/cm/℃の範囲にあることが好ましい。また、「260℃以下の温度で溶融および熱分解しない」とは、260℃の温度で10分間加熱したときに溶融および熱分解しないことを意味する。耐熱性樹脂繊維12の長さは0.1mm以上であると、不織布10を抄紙法により製造する際の脱水時に、耐熱性樹脂繊維12が不織布10から脱落しにくく、耐熱性樹脂繊維12を含む不織布10を得やすいため好ましい。一方、耐熱性樹脂繊維12の長さが1mm以下であると、耐熱性樹脂繊維12が厚み方向に配向した不織布10が得られ易く、本発明の効果を確実に得ることができる。
耐熱性樹脂繊維12の材料としては、アラミド樹脂、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)が挙げられる。耐熱性樹脂繊維12は、チョップドストランド状であっても、パルプ状であっても良いが、パルプ状であると、ガラス繊維11との絡み合いが多くなるためより好ましい。耐熱性樹脂繊維12の直径は、一般に0.1〜30μmの範囲であるが、ガラス繊維11との絡み合いが多くなるという観点からは細い方が好ましい。一方、細すぎると繊維自体の強度が低下するため、負の熱膨張係数を有していたとしても厚さ方向の熱膨張係数の抑制効果が低減する。かかる観点から、耐熱性樹脂繊維12の直径は、好ましくは0.0001〜18μmの範囲、より好ましくは0.001〜15μmの範囲である。耐熱性樹脂繊維12のアスペクト比(長さ/直径)は、一般に500〜10000000の範囲、好ましくは2000〜1000000の範囲、より好ましくは2000〜1000000の範囲である。
不織布10内のガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の含有量比は、質量比で好ましくは50:50〜95:5(ガラス繊維:耐熱性樹脂繊維)の範囲、より好ましくは、55:45〜95:5の範囲、特に好ましくは60:40〜90:10の範囲にある。すなわち、ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の合計含有量に対する耐熱性樹脂繊維12の含有率は、好ましくは5〜50質量%の範囲、より好ましくは5〜45質量%の範囲、特に好ましくは10〜40質量%の範囲にある。ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の含有量比が上記の範囲にある不織布を用いると、繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さ方向への熱膨張をより確実に低減させることができる。
不織布10内のガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の含有量比は、例えば、次のようにして求めることができる。
光学顕微鏡を用いて、不織布10を観察し、一つの観察エリアから合計で100個の繊維(ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12を含む)を任意に選択し、その100個の繊維中のガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の個数を数え、各繊維の長さと直径を測定する。測定したガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12のそれぞれの長さと直径の個数平均を得る。得られた平均長さと平均直径を用いて、下記の式よりガラス繊維11の含有量と耐熱性樹脂繊維12の含有量をそれぞれ算出する。そして、算出したガラス繊維11の含有量と耐熱性樹脂繊維12の含有量の比を求める。
ガラス繊維11の含有量=平均長さ×(平均直径/2)×π×ガラス繊維11の密度×100個の繊維中のガラス繊維の個数
耐熱性樹脂繊維12の含有量=平均長さ×(平均直径/2)×π×耐熱性樹脂繊維12の密度×100個の繊維中の耐熱性樹脂繊維12の個数
ガラス繊維11の大部分は、図1に示すように、不織布10の平面方向に対して水平に配向していることが好ましい。ここで、「水平に配向している」とは、平面方向に対する角度θが0度となるように配向している場合のほか、平面方向に対する角度θが±30度以内となるように配向している場合を含む。平面方向に対する角度θが±30度以内となるように配向しているガラス繊維11の量は、ガラス繊維11の全体量に対して80個%以上であることが好ましく、90個%以上であることがより好ましい。ガラス繊維11が上記の角度以内で平面方向に配向している不織布を用いると、繊維強化熱可塑性樹脂シートの平面方向の強度を高め、かつ平面方向への熱膨張を低減させることができる。
耐熱性樹脂繊維12は、図1に示すように、その少なくとも一部が、不織布10の厚さ方向に配向していることが好ましい。ここで、「厚さ方向に配向している」とは、平面方向に対する角度θが90度となるように配向している場合のほか、角度θが60〜120度の範囲内となるように配向されている場合を含む。なお、耐熱性樹脂繊維12の角度θは、耐熱性樹脂繊維12の長さ方向の両端を結ぶ直線の角度である。厚さ方向に配向している耐熱性樹脂繊維12の量は、耐熱性樹脂繊維12の全体量に対して30個%以上であることが好ましく、40個%以上であることがより好ましい。耐熱性樹脂繊維12が、上記のように平面方向に対して垂直もしくはこれに近い方向、即ち、厚さ方向に配向している不織布を用いることによって、繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さ方向への熱膨張をより確実に低減させることができる。
一方、本実施形態において、不織布10を平面視したときのガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の配向方向には特に制限はない。ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12の配向方向はランダムであってもよい。
本実施形態の不織布10は、湿式不織布であることが好ましい。湿式不織布であると、ガラス繊維11は平面方向により配向しやすく、耐熱性樹脂繊維12は厚さ方向に配向しやすくなる傾向がある。次に、不織布10の製造方法について説明する。
<不織布の製造方法>
本発明の一実施形態である不織布の製造方法は、ガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とが分散された水性分散液を用意する工程と、この水性分散液を抄紙する工程とを有する。
水性分散液は、長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とが、水に分散されている分散液である。水性分散液は、ガラス繊維と耐熱性樹脂繊維と水とを混合し、撹拌することによって調製することができる。混合の順番には特に制限なく、水とガラス繊維とを混合した後に耐熱性樹脂繊維を加えてもよいし、水と耐熱性樹脂繊維とを混合した後にガラス繊維を加えてもよいし、水とガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とを同時に混合してもよい。
ガラス繊維の原料としては、質量平均繊維長さが3〜25mmの範囲、好ましくは6〜18mmの範囲、より好ましくは6〜15mmの範囲にあるガラス繊維を用いてもよい。また、耐熱性樹脂繊維の原料としては、質量平均長さが0.3〜1mmの範囲、好ましくは0.3〜0.8mmの範囲、より好ましくは0.3〜0.7mmの範囲にある耐熱性樹脂繊維を用いてもよい。
水性分散液は、ガラス繊維及び耐熱性樹脂繊維の凝集を抑えるために分散剤が添加されていてもよい。また、水性分散液は、増粘剤が添加されてもよい。
水性分散液の抄紙は、一般的な湿式不織布の製造に用いられている公知の抄紙機を用いて実施することができる。抄紙機としては、バッチ式の抄紙機および連続式の抄紙機のいずれも用いることができる。
バッチ式の抄紙機は、原質用容器への水性分散液の供給、抄紙(脱水)による繊維層の形成、繊維層の回収の各工程を一サイクルとして繰り返し行う抄紙機である。バッチ式の抄紙機を用いる場合は、原質用容器内の水性分散液の固形分(ガラス繊維と耐熱性樹脂繊維の合計量)の濃度は、1質量%以下であることが好ましく、0.001〜0.7質量%の範囲にあることがより好ましい。水性分散液の固形分濃度が上記の範囲にあると、水性分散液中での繊維の動きの自由度が高まり、脱水時において十分な脱水速度が得られる。このため、長さが長いガラス繊維は水平方向に配向させ易く、長さが短い耐熱性樹脂繊維は厚さ方向に配向させ易くなる。
原質用容器内の水性分散液の粘度は、前述した増粘剤を添加することで、0.9mPa・s以上3.0mPa・s以下の範囲とされていることが好ましい。水性分散液の粘度がこの範囲にあると、レイノルズ数は同じであってもガラス繊維の分散性に優れ、且つ、ガラス繊維の切れや折れが少ない不織布を高い生産性で製造できる傾向にある。一方、水性分散液の粘度が低くなりすぎると、ガラス繊維および耐熱性樹脂繊維が凝集しやすくなり、ガラス繊維および耐熱性樹脂繊維の分散性が低下するおそれがある。また水性分散液の粘度が高くなりすぎると、脱水抵抗が増大して生産性の低下につながるおそれがある。このため、ガラス繊維および耐熱性樹脂繊維の凝集の抑制と生産性とを考慮して、粘度が設定されることが好ましい。すなわち、水性分散液の粘度が、1.1mPa・sであればガラス繊維および耐熱性樹脂繊維の凝集を抑制することができ、1.0mPa・s以下であれば生産性を向上させることができる。なお、水性分散液の粘度は、水性分散液を、80meshのフィルタ(フルイ)で濾過してガラス繊維および耐熱性樹脂繊維を除去した濾液を採取し、キャノン・フェンスケ粘度計を用いてJIS Z 8803「液体の粘度測定方法」に規定される測定方法に従って測定することができる。
連続式の抄紙機は、インレットへの水性分散液の供給、抄紙(脱水)による繊維層の形成、繊維層の回収の各工程を連続的に行う抄紙機である。連続式の抄紙機の例としては、傾斜型抄紙機、円網抄紙機および長網抄紙機が挙げられる。これらの抄紙機の中では、インレット内の性分散液の固形分濃度を薄くして、急速に脱水することが可能な傾斜型抄紙機を用いることが好ましい。急速に脱水することで、水流によって長さが短い耐熱性樹脂繊維が厚さ方向に配向しやすくなるためである。傾斜型抄紙機を使用する場合、インレット内の水性分散液の固形分濃度は、0.001〜0.5質量%の範囲にあることが好ましく、0.002〜0.3質量%の範囲にあることがより好ましく、0.008〜0.1質量%の範囲にあることがより好ましい。インレット内の水性分散液の固形分濃度を、かかる濃度範囲とすることにより、充分な脱水速度を得ることができるため、耐熱性樹脂繊維を厚さ方向に十分に配向させることができる。また脱水負荷が高くなり過ぎないので、エネルギー効率よく不織布を製造することができる。インレット内の水性分散液の粘度は、上記バッチ式の抄紙機を用いた場合と同様に、0.9mPa・s以上3.0mPa・s以下の範囲とされることが好ましい。抄紙機の濾材としては、目開きが30〜150メッシュの範囲にあるものを使用できる。
次いで、抄紙機から回収された繊維層(ウエットシート)を乾燥することによって、不織布が得られる。ウエットシートの乾燥には、熱風乾燥機などの加熱乾燥機を用いることができる。
以上のようにすることによって、ガラス繊維が平面方向に配向し、耐熱性樹脂繊維の少なくとも一部が、厚み方向に配向した状態で内部に挿入されている不織布を製造することができる。
<複合体>
本発明の一実施形態である複合体は、上述の不織布と熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体である。不織布と熱可塑のマトリックス樹脂の含有量は、質量比で好ましくは50:50〜10:90(不織布:マトリックス樹脂)の範囲、より好ましくは45:55〜15:85の範囲、特に好ましくは45:55〜20:80の範囲である。すなわち、不織布とマトリックス樹脂の合計量に対するマトリックス樹脂の含有率は、好ましくは50〜90質量%の範囲、より好ましくは55〜85質量%の範囲、特に好ましくは55〜80質量%の範囲にある。不織布とマトリックス樹脂の含有量比が上記の範囲にあることによって、マトリックス樹脂の特性(例えば低誘電率・低誘電損失等)と、不織布の特性(例えば、高温環境下での熱膨張の抑制等)とをバランスよく発現させることができる。
熱可塑性のマトリックス樹脂は、不織布の表面に層状に配置されていてもよいし、不織布の内部にビーズもしくは繊維の状態で配置されていてもよいし、さらに不織布の表面と内部の両方に配置されていてもよい。また、熱可塑性のマトリックス樹脂のビーズと繊維を併用してもよい。
図2は、本発明の一実施形態である複合体の一例の断面図である。図2において、熱可塑性のマトリックス樹脂は、不織布10の表面にマトリックス樹脂層20として配置されている。図2において、マトリックス樹脂層20は、不織布10の一方の表面(図2では、上面)に配置されているが、不織布10の両方の表面に配置されていてもよい。マトリックス樹脂層20は、不織布10の表面に積層されているだけであってもよいし、接着されていてもよい。
不織布10とマトリックス樹脂層20とが接着されている複合体は、例えば、不織布と熱可塑性のマトリックス樹脂シートとを積層し、得られた積層体を加熱加圧して、マトリックス樹脂シートを融着させることによって製造することができる。
図3は、本発明の一実施形態である複合体の別の一例の断面図である。図3において、熱可塑性のマトリックス樹脂は、不織布10の内部にマトリックス樹脂ビーズ21として配置されている。マトリックス樹脂ビーズ21の形状は、球体、楕円球体または円柱体であることが好ましい。マトリックス樹脂ビーズ21は、長径の長さで0.1〜2.0mmの範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0mmの範囲にあることがより好ましく、0.4〜0.7mmの範囲にあることが特に好ましい。
図3の複合体は、例えば、例えば、ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とマトリックス樹脂ビーズ21とを含有するマトリックス樹脂ビーズ含有水性分散液を調製し、この調製した分散液を抄紙することによって製造することができる。マトリックス樹脂ビーズ含有水性分散液は、上述の不織布の製造方法において用いるガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とを含有する水性分散液と、マトリックス樹脂ビーズ21とを混合することによって調製することができる。マトリックス樹脂ビーズ含有水性分散液は、固形分(ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とマトリックス樹脂ビーズ21の合計)の濃度は、1質量%以下であることが好ましく、0.001〜0.7質量%の範囲にあることがより好ましい。抄紙は、上述の不織布の製造方法と同様の条件で実施することができる。
図4は、本発明の一実施形態である複合体のさらに別の一例の断面図である。図4において、熱可塑性のマトリックス樹脂は、不織布10の内部にマトリックス樹脂繊維22として配置されている。すなわち、この複合体は、ガラス繊維11、耐熱性樹脂繊維12およびマトリックス樹脂繊維22を含む不織布状の複合体を構成している。マトリックス樹脂繊維22は、質量平均繊維長さが1.0〜30mmの範囲にあって、繊維径が0.1〜100dtexの範囲にあることが好ましい。マトリックス樹脂繊維22の質量平均繊維長さは3.0〜25mmの範囲にあることがより好ましい。また、繊維径は1.0〜3.0dtexの範囲にあることがより好ましい。なお、本明細書において、質量平均繊維長さは、100個のマトリックス樹脂繊維について測定した繊維長さの質量平均値である。
図4の不織布状の複合体は、例えば、ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とマトリックス樹脂繊維22とを含有する熱可塑性樹脂繊維含有水性分散液を調製し、この調製した分散液を抄紙することによって製造することができる。マトリックス樹脂繊維含有水性分散液は、上述のガラス繊維不織布の製造方法において用いるガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とを含有する水性分散液と、マトリックス樹脂繊維22とを混合することによって調製することができる。熱可塑性樹脂繊維含有水性分散液は、固形分(ガラス繊維11と耐熱性樹脂繊維12とマトリックス樹脂繊維22の合計)の濃度は、1質量%以下であることが好ましく、0.001〜0.7質量%の範囲にあることがより好ましい。抄紙は、上述のガラス繊維不織布の製造方法と同様の条件で実施することができる。
本実施形態の複合体に含まれる熱可塑性のマトリックス樹脂は、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本実施形態の複合体(プリプレグ)を、配線板や金属張積層シートの絶縁シートの中間体として用いる場合、熱可塑性のマトリックス樹脂は、該熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体を加熱加圧成形した成形体の状態において、はんだ付けのリフロー温度以下の温度で溶融、変形および熱分解しない樹脂であることが好ましい。「はんだ付けのリフロー温度以下の温度で溶融、変形および熱分解しない」とは、はんだ付けのリフロー温度で少なくとも1分間加熱したときに溶融、変形および熱分解しないことを意味する。
熱可塑性である本発明で用いるマトリックス樹脂は、融点がはんだ付けのリフロー温度よりも高いか、融点を持たない非結晶性の熱可塑性樹脂の場合には、ガラス転移温度が十分に高く、上述した成形体の状態において、はんだ付けのリフロー温度で少なくとも1分加熱したときに変形しないものであることが好ましい。マトリックス樹脂の融点又はガラス転移温度は、使用するはんだの種類や実装する部品の種類等の条件によって、はんだ付けのリフロー温度が異なるため一律に定めることはできないが、好ましくは220℃以上、より好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上である。なお、マトリックス樹脂が非結晶性の熱可塑性樹脂の場合、ガラス転移温度がはんだ付けのリフロー温度より低くても、上述した成形体の状態においては、ガラス繊維の補強効果によってはんだ付けのリフロー温度で加熱しても溶融、変形、熱分解しない場合もあり、このような場合、その熱可塑性樹脂は本発明に使用可能である。
なお、マトリックス樹脂の融点又はガラス転位温度は、耐熱性樹脂繊維12の熱分解温度よりも低いことが好ましい。熱可塑性樹脂であるマトリックス樹脂の融点又はガラス転位温度が、耐熱性樹脂繊維12の熱分解温度よりも高い温度である場合、加熱加圧成形時に耐熱性樹脂繊維12が熱分解するおそれがあるためである。例えば、耐熱性樹脂繊維12としてアラミド繊維を含有する場合は、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転位温度は400℃以下であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂の例としては、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。
複合体は、熱可塑性のマトリックス樹脂と不織布との密着性を向上させるために、バインダー樹脂を含有していてもよい。バインダー樹脂は、複合体を加熱加圧成形する際に、マトリックス樹脂と相溶する樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)を挙げることができる。熱可塑性のマトリックス樹脂が不織布の表面に層状に配置されている場合、バインダー樹脂は、マトリックス樹脂の層と不織布の表面との間に層状に配置されていることが好ましい。また、熱可塑性のマトリックス樹脂が不織布の内部にビーズもしくは繊維の状態で配置されている場合、バインダー樹脂は、不織布の内部にビーズもしくは繊維の状態で配置されていることが好ましい。
<繊維強化熱可塑性樹脂シート>
本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、熱可塑性のマトリックス樹脂とガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とを含む。本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シートは、前述の複合体を加熱加圧成形することによって得られる加熱加圧成形体であることが好ましい。
図5は、本発明の一実施形態である繊維強化熱可塑性樹脂シートの一例の断面図である。繊維強化熱可塑性樹脂シート30は、熱可塑性のマトリックス樹脂23と、マトリックス樹脂23中に含有されているガラス繊維11および耐熱性樹脂繊維12とを含む。ガラス繊維11および耐熱性樹脂繊維12は、不織布10の状態での配向性を保持している。すなわち、ガラス繊維11は、繊維強化熱可塑性樹脂シート30の平面方向に配向している。また、耐熱性樹脂繊維12の少なくとも一部は、繊維強化熱可塑性樹脂シート30の厚さ方向に配向している。但し、ガラス繊維11および耐熱性樹脂繊維12の全てが、不織布10の状態での配向性を保持している必要はない。
本実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂シート30は、高温環境下での厚さ方向に対する熱膨張が低い。このため、配線板や金属張積層シートの基材(絶縁シート)として有利に使用することができる。
金属張積層シートは、繊維強化熱可塑性樹脂シート30の少なくとも一方の表面に貼り合わされた金属箔を含むシートである。金属張積層シートは、複合体の少なくとも一方の表面に金属箔を重ねた状態で加熱加圧成形することによって製造することができる。金属箔の材料としては、銅、アルミニウム、銀、金を挙げることができる。
この金属張積層シートの金属箔をエッチングなどの手法よりパターニングすることによって配線板を得ることができる。
<繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法>
繊維強化熱可塑性樹脂シートは、前述の複合体を加熱加圧成形することによって製造できる。複合体は1枚のみを加熱加圧成形しても、2枚以上を重ねて加熱加圧成形してもよく、成形される繊維強化熱可塑性樹脂シートの用途等に応じて決定できる。加熱温度は、複合体に含まれている熱可塑性のマトリックス樹脂が軟化して可塑性を示すようになる温度以上である。加熱温度は、熱可塑性のマトリックス樹脂の種類や含有量などの条件によって最適な温度範囲が異なるため、一律に定めることはできないが、通常は260〜600℃の範囲、好ましくは280〜450℃の範囲、より好ましくは280℃〜400℃の範囲である。
加圧の圧力は、複合体の厚さや目的とする繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さなどの条件に合せて適宜設定することができる。加圧の圧力は、通常は3〜50MPaの範囲、好ましくは5〜20MPaの範囲である。
加熱加圧の時間は、特に制限はないが、通常は1〜100分間、好ましくは1〜30分間の範囲である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更すことが可能である。
例えば、本実施形態の繊維強化熱可塑性樹脂シートでは、ガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とが不織布を形成している例について説明したが、ガラス繊維と耐熱性樹脂繊維とは不織布を形成している必要はない。但し、この場合は、ガラス繊維は、繊維強化熱可塑性樹脂シートの平面方向に配向し、耐熱性樹脂繊維は、繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚さ方向に配向していることが好ましい。
[実施例1]
(1)ガラス繊維水性分散液の調製
平均繊維長10mm、平均繊維径10μmのガラス繊維を40g計り取り、これを、分散剤0.12g(ガラス繊維に対して0.3重量%)を添加した水20Lに投入し、ラボ用撹拌機を用いて撹拌して、分散させ、ガラス繊維水性分散液を得た。ガラス繊維としては、オーウェンスコーニング社製のガラス繊維チョップドストランド、CS10JAJP195を用いた。分散剤としては、明成化学工業株式会社製、ラッコールALを用いた。ラボ用撹拌機としては、アズワン社製、ウルトラ撹拌機 DC−CHRM25を用いた。なお、ガラス繊維水性分散液は3回調製した。
(2)アラミド繊維水性分散液の調製
含水アラミド繊維(ダイセルファインケム社製、ティアラ)を固形分で20g計り取り、これを、固形分濃度が1.0質量%となるように水と混合し、ディスインテグレーターを用いて10分間解繊して、アラミド繊維水性分散液を得た。得られたアラミド繊維水性分散液に分散されているアラミド繊維は、繊維長が0.1〜1mmの範囲にあり、繊維径は0.05〜0.7μmであった。
(3)混合水性分散液の調製
上記(1)で調製したガラス繊維水性分散液と、上記(2)で調製したアラミド繊維水性分散液とを、それぞれ全量混合して、ガラス繊維とアラミド繊維とが質量比で2:1の割合で水に分散されている混合水性分散液を得た。
(4)複合体作製用分散液の調製
上記(3)で調製した混合水性分散液に、ポリエーテルイミド(PEI)繊維(クラレ社製PEI繊維 繊維径2.2dtex、繊維長15mm)を90g投入し、前記ラボ用撹拌機を用いて撹拌した。次いで、PEI繊維を投入した分散液に、増粘剤の濃度が0.1質量%の増粘剤水溶液を500mL投入し、前記ラボ用撹拌機を用いて撹拌した。増粘剤としては、アニオン性高分子ポリアクリルアミド系増粘剤(MTアクアポリマー社製、スミフロック)を使用した。そして最後に、水を全体量が30kgとなるように投入し、前記ラボ用撹拌機で撹拌した。こうして、ガラス繊維とアラミド繊維とPEI繊維とが均一に分散した固形分濃度が0.5質量%の複合体作製用分散液を調製した。
(5)複合体シートの作製
上記(4)で調製した複合体作製用分散液を1250g(固形分量:6.25g)分取した。分取した分散液を、25cm角の角型手抄きシートマシン(熊谷理機工業株式会社製)の原質用容器に投入し、JIS P 8222に準ずる方法で抄紙を行った。すなわち、原質容器内に水を入れて16Lとなるよう希釈し、原質容器内を撹拌してから脱水し、ウエットシートを得た。そして、得られたウエットシートを160℃の熱風乾燥機で乾燥して、複合体シート(縦25cm×横25cm、坪量100g/m)を得た。
得られた複合体シートの平面と断面とを光学顕微鏡を用いて観察し、ガラス繊維とアラミド繊維の配向方向を確認した。その結果、複合体シートの平面では、ガラス繊維とアラミド繊維ともに、特定の方向には配向しておらず、ランダムに配向していた。一方、複合体シートの断面では、ガラス繊維は90個%が平面方向に対して±30度以内の角度で配向していた。また、アラミド繊維は40個%が平面方向に対して60〜120度の角度で、すなわち厚さ方向に配向していた。
(6)繊維強化熱可塑性樹脂シートの作製
上記(5)で作製した複合体シートを28枚積層して積層体を得た。この積層体を、加熱加圧プレス装置を用いて、300℃、10MPaの条件で10分間加熱加圧成形し、70℃まで冷却したのち、加熱加圧プレス装置から取り出した。得られた繊維強化熱可塑性樹脂シートは、縦25cm×横25cm×厚さ1.8mmであった。
[比較例1]
実施例1の(1)ガラス繊維水性分散液の調製において、ガラス繊維の投入量を60gとしてガラス繊維水性分散液を調製した。また、実施例1(2)アラミド繊維水性分散液を行わず、(4)複合体作製用分散液の調製において、混合水性分散液の代わりに、上記のガラス繊維水性分散液を用いたこと以上のこと以外は、実施例1と同様にして、繊維強化熱可塑性樹脂シートを作製した。
上記実施例1および比較例1で得られた繊維強化熱可塑性樹脂シートについて、平面方向の熱膨張係数と厚さ方向の熱膨張係数を測定した。
平面方向の熱膨張係数は、JIS K 7197に準拠して、引っ張りモードで、昇温速度5℃/分、測定温度範囲30〜210℃の条件で測定した。
厚さ方向の熱膨張係数は、JIS K 7197に準拠し、圧縮モードで、昇温速度5℃/分、測定温度範囲30〜210℃の条件で測定した。
上記実施例1および比較例1で繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造に用いた各材料の配合比率、ガラス繊維とアラミド繊維の配合比(質量比)、繊維強化熱可塑性樹脂シートの熱膨張係数を、下記の表1に示す。
Figure 2018095665
ガラス繊維とアラミド繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂シート(実施例1)は、ガラス繊維含むがアラミド繊維を含まない繊維強化熱可塑性樹脂シート(比較例1)と比較して、厚さ方向の熱膨張係数が顕著に低減することがわかる。
以上の実施例の結果から、本発明の不織布の製造方法を利用することによって、ガラス繊維が平面方向に配向し、耐熱性樹脂繊維の少なくとも一部が厚み方向に配向した不織布が製造することが可能となることが確認された。そして、この不織布と熱可塑性樹脂を含む複合体の加熱加圧成形体である繊維強化熱可塑性樹脂シートは厚さ方向の熱膨張が顕著に低減し、さらに高温環境下での形状安定性が高いことから配線板、特に積層配線板の形成用として有用であることが確認された。
10 不織布
11 ガラス繊維
12 耐熱性樹脂繊維
20 熱可塑性のマトリックス樹脂層
21 熱可塑性のマトリックス樹脂ビーズ
22 熱可塑性のマトリックス樹脂繊維
23 熱可塑性のマトリックス樹脂
30 繊維強化熱可塑性樹脂シート

Claims (13)

  1. 熱可塑性のマトリックス樹脂と、前記マトリックス樹脂中に含有されている、長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含む繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  2. 前記ガラス繊維と前記耐熱性樹脂繊維の含有量比が、質量比で50:50〜90:10の範囲にある請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  3. 前記ガラス繊維と前記耐熱性樹脂繊維が不織布を形成している請求項1または2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  4. 前記不織布が湿式不織布である請求項3に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シート。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートと、前記繊維強化熱可塑性樹脂シートの少なくとも一方の表面に貼り合わされた金属箔とを含む金属張積層シート。
  6. 長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布、及び熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体を用意する工程と、
    前記複合体を加熱加圧成形する工程とを有する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  7. 長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布、及び熱可塑性のマトリックス樹脂を含む複合体。
  8. 前記不織布が湿式不織布である請求項7に記載の複合体。
  9. 前記マトリックス樹脂が、前記不織布の少なくとも一方の表面に層状に配置されている請求項7または8に記載の複合体。
  10. 前記マトリックス樹脂が、前記不織布の内部にビーズもしくは繊維の状態で配置されている請求項7または8に記載の複合体。
  11. 長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とを含有する不織布。
  12. 湿式不織布である請求項11に記載の不織布。
  13. 長さが3〜25mmのガラス繊維と、負の熱膨張係数を有し、かつ260℃以下の温度で溶融および熱分解しない、長さが0.1〜1mmの耐熱性樹脂繊維とが、水に分散されている水性分散液を用意する工程と、
    前記水性分散液を抄紙する工程と、を有する不織布の製造方法。
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