本願発明は、(1)波長可変レーザと、エタロンを有する波長検知手段と、を備える波長可変レーザ装置の試験方法であって、前記エタロンの自由スペクトル領域間隔を測定する第1ステップと、前記自由スペクトル領域間隔のトップとボトムとの間に設けられた目標値に、波長をチューニングすることで、駆動条件を取得する第2ステップと、前記駆動条件をメモリに格納する第3ステップと、を含む、波長可変レーザ装置の試験方法である。この構成によれば、エタロンの温度制御の範囲を抑制することができる。
(2)前記駆動条件は、所定値で駆動させる第1駆動条件および前記波長検知手段の検知結果に基づいて、前記第1駆動条件で出力された波長とは異なる波長を出力する第2駆動条件が取得されてもよい。
(3)前記駆動条件は、前記波長検知手段の検知結果に基づいて、第1駆動条件および前記第1駆動条件で出力された波長とは異なる波長を出力する第2駆動条件が取得されてもよい。
(4)前記駆動条件は、自由スペクトル領域の2分の1の整数倍毎に取得される条件であってもよい。
(5)前記駆動条件は、自由スペクトル領域の4分の1の位置での駆動条件であってもよい。
(6)前記第1駆動条件および前記第2駆動条件の少なくとも一方における前記波長可変レーザの出力波長は、ITU−Tグリッドと異なっていてもよい。
他の発明は、(7)波長可変レーザと、エタロンを有する波長検知手段と、前記波長可変レーザの基準周波数およびグリッド間隔からなる制御データ値を格納するメモリと、前記メモリに格納された制御データ値および前記波長検知手段の検知結果に応じて前記波長可変レーザの出力波長を制御するコントローラと、備え、前記コントローラは、入力する基準周波数およびグリッド間隔およびチャネルから求められる要求波長を前記メモリに格納してある前記基準周波数および前記グリッド間隔から演算する演算器を含む、波長可変レーザ装置である。この構成によれば、エタロンの温度制御の範囲を抑制することができる。
図1は、実施例1に係る波長可変レーザ装置に用いることができる半導体レーザ100の全体構成を示すブロック図である。半導体レーザ100は、波長可変レーザである。図1に示すように、半導体レーザ100は、SG−DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)領域Aと、CSG−DBR(Chirped Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域Bと、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)領域Cとを備える。すなわち、半導体レーザ100は、半導体構造内に波長選択ミラーを有するレーザである。
一例として、半導体レーザ100において、フロント側からリア側にかけて、SOA領域C、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域Bがこの順に配置されている。SG−DFB領域Aは、利得を有しサンプルドグレーティングを備える。CSG−DBR領域Bは、利得を有さずにサンプルドグレーティングを備える。
SG−DFB領域Aは、基板1上に、下クラッド層2、活性層3、上クラッド層6、コンタクト層7、および電極8が積層された構造を有する。CSG−DBR領域Bは、基板1上に、下クラッド層2、光導波層4、上クラッド層6、絶縁膜9、および複数のヒータ10が積層された構造を有する。各ヒータ10には、電源電極11およびグランド電極12が設けられている。SOA領域Cは、基板1上に、下クラッド層2、光増幅層19、上クラッド層6、コンタクト層20、および電極21が積層された構造を有する。
SG−DFB領域A、CSG−DBR領域BおよびSOA領域Cにおいて、基板1、下クラッド層2、および上クラッド層6は、一体的に形成されている。活性層3、光導波層4、および光増幅層19は、同一面上に形成されている。SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとの境界は、活性層3と光導波層4との境界と対応している。
SOA領域C側における基板1、下クラッド層2、光増幅層19および上クラッド層6の端面には、端面膜16が形成されている。本実施例では、端面膜16はAR(Anti Reflection)膜である。端面膜16は、半導体レーザ100のフロント側端面として機能する。CSG−DBR領域B側における基板1、下クラッド層2、光導波層4、および上クラッド層6の端面には、端面膜17が形成されている。本実施例では、端面膜17はAR膜である。端面膜17は、半導体レーザ100のリア側端面として機能する。
基板1は、例えば、n型InPからなる結晶基板である。下クラッド層2はn型、上クラッド層6はp型であり、それぞれ例えばInPによって構成される。下クラッド層2および上クラッド層6は、活性層3、光導波層4、および光増幅層19を上下で光閉込めしている。
活性層3は、利得を有する半導体により構成されている。活性層3は、例えば量子井戸構造を有しており、例えばGa0.32In0.68As0.92P0.08(厚さ5nm)からなる井戸層と、Ga0.22In0.78As0.47P0.53(厚さ10nm)からなる障壁層が交互に積層された構造を有する。光導波層4は、例えばバルク半導体層で構成することができ、例えばGa0.22In0.78As0.47P0.53によって構成することができる。本実施例においては、光導波層4は、活性層3よりも大きいエネルギギャップを有する。
光増幅層19は、電極21からの電流注入によって利得が与えられ、それによって光増幅をなす領域である。光増幅層19は、例えば量子井戸構造で構成することができ、例えばGa0.35In0.65As0.99P0.01(厚さ5nm)の井戸層とGa0.15In0.85As0.32P0.68(厚さ10nm)の障壁層が交互に積層された構造とすることができる。また、他の構造として、例えばGa0.44In0.56As0.95P0.05からなるバルク半導体を採用することもできる。なお、光増幅層19と活性層3とを同じ材料で構成することもできる。
コンタクト層7,20は、例えばp型Ga0.47In0.53As結晶によって構成することができる。絶縁膜9は、窒化シリコン膜(SiN)または酸化シリコン膜(SiO)からなる保護膜である。ヒータ10は、チタンタングステン(TiW)で構成された薄膜抵抗体である。ヒータ10のそれぞれは、CSG−DBR領域Bの複数のセグメントにまたがって形成されていてもよい。
電極8,21、電源電極11およびグランド電極12は、金(Au)等の導電性材料からなる。基板1の下部には、裏面電極15が形成されている。裏面電極15は、SG−DFB領域A、CSG−DBR領域BおよびSOA領域Cにまたがって形成されている。
端面膜16および端面膜17は、1.0%以下の反射率を有するAR膜であり、実質的にその端面が無反射となる特性を有する。AR膜は、例えばMgF2およびTiONからなる誘電体膜で構成することができる。なお、本実施例ではレーザの両端がAR膜であったが、端面膜17を有意の反射率を持つ反射膜で構成する場合もある。図1における端面膜17に接する半導体に光吸収層を備えた構造を設けた場合、端面膜17に有意の反射率を持たせることで、端面膜17から外部に漏洩する光出力を抑制することができる。有意の反射率としては、たとえば10%以上の反射率である。なお、ここで反射率とは、半導体レーザ内部に対する反射率を指す。
回折格子(コルゲーション)18は、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bの下クラッド層2に所定の間隔を空けて複数箇所に形成されている。それにより、SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにサンプルドグレーティングが形成される。SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにおいて、下クラッド層2に複数のセグメントが設けられている。ここでセグメントとは、回折格子18が設けられている回折格子部と回折格子18が設けられていないスペース部とが1つずつ連続する領域のことをいう。すなわち、セグメントとは、両端が回折格子部によって挟まれたスペース部と回折格子部とが連結された領域のことをいう。回折格子18は、下クラッド層2とは異なる屈折率の材料で構成されている。下クラッド層2がInPの場合、回折格子を構成する材料として、例えばGa0.22In0.78As0.47P0.53を用いることができる。
回折格子18は、2光束干渉露光法を使用したパターニングにより形成することができる。回折格子18の間に位置するスペース部は、回折格子18のパターンをレジストに露光した後、スペース部に相当する位置に再度露光を施すことで実現できる。SG−DFB領域Aにおける回折格子18のピッチと、CSG−DBR領域Bにおける回折格子18のピッチとは、同一でもよく、異なっていてもよい。本実施例においては、一例として、両ピッチは同一に設定してある。また、各セグメントにおいて、回折格子18は同じ長さを有していてもよく、異なる長さを有していてもよい。また、SG−DFB領域Aの各回折格子18が同じ長さを有し、CSG−DBR領域Bの各回折格子18が同じ長さを有し、SG−DFB領域AとCSG−DBR領域Bとで回折格子18の長さが異なっていてもよい。
SG−DFB領域Aにおいては、各セグメントの光学長が実質的に同一となっている。CSG−DBR領域Bにおいては、少なくとも2つのセグメントの光学長が、互いに異なって形成されている。それにより、CSG−DBR領域Bの波長特性のピーク同士の強度は、波長依存性を有するようになる。SG−DFB領域Aのセグメントの平均光学長とCSG−DBR領域Bのセグメントの平均光学長は異なっている。このように、SG−DFB領域A内のセグメントおよびCSG−DBR領域Bのセグメントが半導体レーザ100内において共振器を構成する。
SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bそれぞれの内部においては、反射した光が互いに干渉する。SG−DFB領域Aには活性層3が設けられており、キャリア注入されると、ピーク強度がほぼ揃った、所定の波長間隔を有する離散的な利得スペクトルが生成される。また、CSG−DBR領域Bにおいては、ピーク強度が異なる、所定の波長間隔を有する離散的な反射スペクトルが生成される。SG−DFB領域AおよびCSG−DBR領域Bにおける波長特性のピーク波長の間隔は異なっている。これら波長特性の組み合わせによって生じるバーニア効果を利用して、発振条件を満たす波長を選択することができる。
図2は、実施例1に係る波長可変レーザ装置200のシステム全体構成を示す図である。波長可変レーザ装置200は、コントローラ41、温度制御装置42,50、サーミスタ43,51、ビームスプリッタ44,45、受光素子46,47、エタロン48、メモリ49などを備える。
コントローラ41は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、電源などを備える。RAMは、中央演算処理装置が実行するプログラム、中央演算処理装置が処理するデータなどを一時的に記憶するメモリである。メモリ49として、書き換え可能な記憶装置を用いることができる。書き換え可能な記憶装置としては、典型的にはフラッシュメモリが挙げられる。メモリ49は、半導体レーザ100の各部の初期設定値およびフィードバック制御目標値を各チャネルに対応させて記憶している。チャネルとは、半導体レーザ100の各発振波長に対応する番号である。
温度制御装置42は、例えば、半導体レーザ100の全体の温度を制御する装置であり、例えばペルチェ素子を含み、TEC(Thermoelectric cooler)として機能する。サーミスタ43は、温度制御装置42の温度を検出することによって、半導体レーザ100の温度を間接的に検出する。なお、半導体レーザ100、サーミスタ43、ビームスプリッタ44、および受光素子46は、温度制御装置42上に配置されている。温度制御装置50は、例えば、エタロン48の温度を制御する装置であり、例えばペルチェ素子を含み、TECとして機能する。サーミスタ51は、温度制御装置50の温度を検出することによって、エタロン48の温度を間接的に検出する。なお、ビームスプリッタ45、エタロン48、受光素子47、およびサーミスタ51は、温度制御装置50上に配置されている。
コントローラ41は、サーミスタ43の温度を参照し、温度制御装置42の各部品の搭載面の温度を一定に保持する。また、コントローラ41は、サーミスタ51の温度を参照し、温度制御装置50の各部品の搭載面の温度を一定に保持する。コントローラ41は、この状態で、半導体レーザ100に制御データを入力する。それにより、半導体レーザ100は、入力された制御データに基づいた波長にてレーザ発振する。なお、エタロン48の温度は、この波長可変レーザ装置200において必要とされる温度に制御される。すなわち、一定に温度保持される制御のほか、エタロン48の特性を制御することで所望の動作を実現する場合には、その温度は変化することも許容される。
半導体レーザ100の出力光は、ビームスプリッタ44で分岐される。ビームスプリッタ44の分岐によって得られる一方の分岐光は、受光素子46に入射され、他方の分岐光はビームスプリッタ45でさらに分岐される。ビームスプリッタ45の分岐によって得られる一方の分岐光は、エタロン48を介して受光素子47に入射され、他方の分岐光は、外部に出力される。以上の構成により、受光素子46は、半導体レーザ100の出力光強度を測定する。受光素子47は、エタロン48の透過光強度を測定する。なお、エタロン48は、光学的平面をもつ反射鏡,あるいは半透鏡2枚を,ある間隔で平行配置した光学素子である。
コントローラ41は、受光素子46の出力に基づいて、半導体レーザ100の光出力強度を制御する。また、受光素子46が検出する光強度と受光素子47が検出する光強度との比によって示される波長情報に基づき、指定波長を維持する制御(AFC制御:Automatic Frequency Control)を実施する。
図3は、温度制御装置42を用いたAFC制御のフローチャートの一例を表す図である。図3に示すように、コントローラ41は、要求波長に応じて、メモリ49に格納された半導体レーザ100の設定値を選択する(ステップS1)。次に、コントローラ41は、選択した設定値を用いて半導体レーザ100を駆動させる(ステップS2)。
次に、コントローラ41は、サーミスタ43が検出する温度Th1が設定値の許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3で「No」と判定された場合、ステップS3が再度実行される。コントローラ41は、ステップS3と並行して、サーミスタ43が検出する温度Th2が設定値の許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4で「No」と判定された場合、ステップS4が再度実行される。
ステップS3およびステップS4の両方で「Yes」と判定された場合、コントローラ41は、シャッタを開ける(ステップS5)。次に、コントローラ41は、温度制御装置42の温度制御(温度Th1を制御目標とする制御)を終了する(ステップS6)。これに引き続き、コントローラ41は、温度制御装置42によるAFC制御を開始する(ステップS7)。具体的には、コントローラ41は、受光素子46が検出する光強度と受光素子47が検出する光強度との比を制御目標として、温度制御装置42の温度制御を開始する。この制御は、目標値のみを与える方法、所定の許容レンジを目標値として与える方法のいずれであってもかまわない。このようにして温度制御装置42の制御を実行した結果、前記光強度の比が目標値あるいは許容レンジ内に定まったことをもって、コントローラ41は、ロックフラグを出力する(ステップS8)。
ここで、エタロン48を用いた波長制御の詳細について説明する。図4は、エタロン48の光透過特性を表す図である。図4の実線に示すように、エタロン48は、入力された光周波数に対し周期的な透過特性を持っている。したがって、入力光と透過光との光強度比を測定し、当該光強度比を一定にするように制御することで光周波数を安定状態に保つことができる。透過特性のスロープは図4のようになっている。スロープとは、ピークとボトムとの間の正または負の傾きを持った領域である。このスロープの傾きが折り返す(傾きの符号が変化する)ピークおよびボトム付近の値は、ロック点として安定して使用することが困難である。そこで、スロープの傾きが比較的大きい範囲を波長制御可能範囲として用いることが好ましい。
一般的に、各チャネルは、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)のグリッド波長に対応して設定される。
エタロン48は、このITU−Tで規定された特定周波数(191.6THz〜196.2THzの50GHz、25GHz間隔等)での使用を考えた特性周期をもつように設計されている。すなわち、エタロン48のFSR(自由スペクトル領域)の2分の1が、ITU−Tのグリッド間隔となるように設計されている。しかしながら、エタロン48自体の特性ばらつき、実装時の傾き、エタロン温度などのわずかな差で透過特性が変わってくる。そこで、通常、エタロン48の温度を調整することによってスロープをシフトさせることで、ITU−Tグリッドの全てのチャンネルでロック点(フィードバック制御目標値)が波長制御可能範囲に入るように設定されている。例えば、図4の破線で示すように、エタロン48の温度を制御することによって、エタロン48の光透過特性を周波数方向にシフトさせることができる。
例えば、図4の例では、波長制御不可能な周波数領域が約±9GHz、温度によるシフト量が−1.8GHz/℃とすると、9/1.8=5℃補正すれば、ピークまたはボトムを挟んだ左右どちらかのスロープ範囲に引き込むことができる。一方、ITU−Tグリッド間隔の25GHzに対してエタロン周期に誤差があると、周波数の低い端(例えば191THz)でちょうどロック点を調整していても周波数の高い方の端に行くまでの間でITU−Tグリッドがスロープのピークやボトムとなる可能性がある。そこで、ロック点を波長制御可能範囲に戻すため、チャネルごとにエタロン48の温度を変えていく必要がある。
具体的には、所望のITU−Tグリッドでロック点を定める際に、エタロン48の温度を調整することによって、ロック点が当該ITU−Tグリッドの波長位置となるように、エタロン48の光透過特性をシフトさせる。このロック点が実現されるように、半導体レーザ100の制御データを調整する。当該ロック点が実現される制御データをメモリ49に記憶する。なお、グリッド間隔は、25GHzで固定とし、グリッド間の周波数は隣のグリッドとの間で半分ずつ分担する。
図5Aは、ITU−Tグリッドの低周波数端におけるエタロン48の光透過特性を表す図である。エタロン48の温度はT0(=45℃)で一定に制御されているものとする。図5Bは、ITU−Tグリッドの高周波数端におけるエタロン48の光透過特性を表す図である。図5Aに示すように、低周波数端でロック点を調整すれば、±5℃の補正でロック点を波長制御可能範囲内に収めることができる。エタロン48の温度をT0に維持したままで、この低周波数端を基準として高周波数端までのロック点を定めると、誤差が大きくなる。図5Bの破線は、誤差が生じた光透過特性である。これを、実線の光透過特性にシフトさせるためには、エタロン48の温度補正が必要となる。例えば、その誤差補正分として、約5℃が必要である。したがって、計±10℃の温度補正が必要になる。
ここで、グリッドレス制御について説明する。グリッドレス制御とは、半導体レーザ100の発振波長をグリッド波長間の任意の波長に調整する制御である。図6は、グリッドレス制御を説明するための図である。図6に示すように、グリッドレス制御においては、要求波長は、グリッド波長と隣接する他のグリッド波長との間の波長である。
このグリッドレス制御を行うためには、ITU−Tグリッドの間の全ての波長を設定する必要がある。したがって、エタロン48の温度を、±12.5GHz分シフト可能とする必要がある。また、ITLAの規格としてファインチューニングという波長シフトを必要とする機能がある。このファインチューニングによる±10GHzを追加して、±22.5GHzの光周波数シフトを行う必要がある。これによるエタロン48の温度のシフト量は22.5/1.8=±12.5℃である。よって、上記誤差補正分の±10℃に、グリッドレス制御の誤差補正分の±12.5℃を足し合わせると、計22.5℃のエタロン48の温度補正が必要となる。
例えば、エタロン48の温度の設計中心値を45℃とすると、22.5℃から67.5℃の非常に広範囲でエタロン48の温度を制御する必要がある。この場合、エタロン48の温度制御に要する消費電力等の負荷が大きくなってしまう。また、ITU−Tグリッド間隔(25GHz)に対してエタロン48のグリッド間隔の誤差が大きくなるほど、引き戻すための温度補正が必要となる。例えば、この温度補正のためのマージンを5℃とする必要がある。しかしながら、誤差が大きくなるとマージンレスとなってしまい、さらに誤差が大きすぎると製品不良が発生し歩留まりに影響する。
そこで、本実施例においては、ITU−Tグリッドに対応した制御データの設定を行わず、エタロン48のエタロングリッド間隔(FSR/2)および中心値を基準とした制御データの設定を行う。具体的には、エタロン48の温度を一定(例えば45℃)に制御する。この状態において、ピークとボトムとの間の各スロープにおけるロック点を定める。例えば、ピークから、または、ボトムからFSR/4の位置をロック点に定める。または、当該ロック点として、透過率=0.55の値を用いることができる。各ロック点を実現するための半導体レーザ100の制御データをメモリ49に記憶する。なお、グリッド間隔は、エタロンごとの個体差に応じて25±αGHzに設定する。グリッド間の周波数は隣のグリッドとの間で半分ずつ分担する。この手法では、各ロック点は、ITU−Tグリッドと必ずしも一致するわけではない。
図7は、本実施例に係る試験方法の詳細を表すフローチャートである。以下の説明では、全ての処理をコントローラ41が行っているが、ユーザがコントローラ41を用いて部分的に手動で行ってもよい。図7に示すように、コントローラ41は、波長制御範囲の低周波数端(一例としてITUT−Tの低周波数端)の周波数f_Lo(例えば191.3THz)が出力されるように、半導体レーザ100の制御データを設定する(ステップS11)。なお、この際には、コントローラ41はエタロン48を用いた波長のフィードバック制御等は行わないので、半導体レーザ100の出力周波数は周波数f_Loと一致していなくてもよい。
次に、コントローラ41は、エタロン48の温度を固定の設定値(例えば45℃)に制御する(ステップS12)。次に、図8Aに示すように、コントローラ41は、半導体レーザ100の出力周波数を低周波側にシフトさせつつ、受光素子47の検出結果、または受光素子46の検出結果と受光素子47の検出結果との比をモニタすることによって、最も近いエタロン48のピークEtln_f1を探索する(ステップS13)。
次に、コントローラ41は、波長制御範囲の高周波端の周波数f_Hi(例えば196.1THz)が出力されるように、半導体レーザ100の制御データを設定する(ステップS14)。なお、この際には、コントローラ41はエタロン48を用いた波長フィードバック制御等は行わないので、半導体レーザ100の出力周波数は周波数f_Hiと一致していなくてもよい。次に、図8Bに示すように、コントローラ41は、半導体レーザ100の出力波長を低周波側にシフトさせつつ、受光素子47の検出結果、または受光素子46の検出結果と受光素子47の検出結果との比をモニタすることによって、エタロン48のピークEtln_f2を探索する(ステップS15)。
次に、コントローラ41は、下記式(1)および下記式(2)に従って、エタロン48のFSRを算出する(ステップS16)。なお、設計エタロンFSRは、エタロン48のFSRの設計値であり、エタロンFSRは、算出されるエタロン48のFSRである。
エタロンピーク数={(設定チャネル数×設定チャネル間隔)/設計エタロンFSR}−1 (1)
エタロンFSR=|Etln_f1−Etln_f2|/エタロンピーク数 (2)
次に、コントローラ41は、基準周波数f0_memを設定する(ステップS17)。具体的には、コントローラ41は、図8Aに示すように、Etln_f1+FSR/4またはEtln_f1−FSR/4を算出し、周波数f_Loを下回る方を基準周波数f0_memに設定する。次に、コントローラ41は、下記式(3)に従って、真のチャネル数を算出する(ステップS18)。下記式(3)を満たすチャネル数のうち最小のものが真のチャネル数である。
f0_mem+{FSR/2×(チャネル数−1)}+FSR/4≧f_Hi (3)
次に、コントローラ41は、チャネル1からチャネルnに至るまで、fm(m=1〜n(=チャネル数))=f0_mem+FSR/2(m−1)となるように半導体レーザ100の制御データを調整し、駆動条件をメモリ49に格納する(ステップS19)。mが1からnになるまで繰り返すことによって、各チャネルの駆動条件をメモリ49に格納することができる。以上の工程を経て、本実施例に係る試験方法が完了する。
このようなチャネル設定を行うことによって、エタロン48の温度の補正範囲を、一例として±約12.5℃の範囲に抑えることができる。その詳細について説明する。表1に示すように、一例として中心温度を45℃とする。本実施例に係るエタロン48の光透過特性における1つのグリッドで対応する周波数範囲は、±12.5GHzである。エタロン48の温度補正係数C1=−1.8GHz/℃とすると、グリッドレス制御のための設定温度範囲は、±12.5/1.8=±6.94℃(≒7)となる。したがって、表1において、グリッドレス制御における最小温度は38℃であり、最大温度は52℃である。次に、ファインチューニングの周波数範囲は、一例として±10GHzとし、最大設計値を±12.5GHzとする。この場合、ファインチューニングのための設定温度範囲は、±5.55℃であり、最大設計値は±6.94℃となる。図9は、エタロン48の温度を45℃としたときの、各チャネルの周波数範囲を表す。
図10は、本実施例に係る試験方法によってメモリ49に格納された制御データの一例を表す図である。制御データには、各チャネルの駆動条件が含まれている。駆動条件には、初期設定値およびフィードバック制御目標値が含まれている。図10に示すように、初期設定値は、半導体レーザ30の初期温度値(LD温度)、SG−DFB領域Aの電極8に供給される初期電流値DFB、および各ヒータ10に供給される初期電力値DBR1〜DBR3を含む。これら初期設定値は、チャネルごとに定められている。フィードバック制御目標値は、コントローラ41のフィードバック制御を行う際の目標値である。フィードバック制御目標値は、受光素子46が出力する光電流の目標値Im1、および受光素子46が出力する光電流Im1に対する受光素子47が出力する光電流Im2の比の目標値Im2/Im1を含む。制御目標値も、チャネルごとに定められている。また、メモリ49には、エタロン48の温度および温度補正係数C1が格納されている。温度補正係数C1は、エタロン48の周波数変動量/温度変化量[GHz/℃]である。
続いて、得られた初期設定値を用いて要求周波数を実現する計算方法について説明する。図11は、この場合のフローチャートの一例である。まず、コントローラ41は、下記式(4)に従って、入力されたチャネル番号CHNo、基準周波数f0、グリッド間隔Grid等から、要求周波数fを算出する(ステップS21)。
f=f0+(CHNo−1)×Grid (4)
次に、コントローラ41は、下記式(5)に従って、図10のデータを作成した際の、基準周波数f0_memおよびエタロン48のグリッド間隔Grid_memから、図10のチャネル番号CHNo_memを算出する(ステップS22)。なお、小数点以下については切り捨てる。グリッド間隔Grid_memはエタロン48のFSR/2である。
CHNo_mem={(f+Grid_mem/2)−f0_mem}/Grid_mem (5)
次に、コントローラ41は、下記式(6)に従って、図10のチャネル番号CHNo_memの周波数からのズレ量Δfを算出する(ステップS23)。次に、コントローラ41は、図10のデータの中から、CHNo_memのチャネルの駆動条件を読み込む(ステップS24)。
Δf=f−{f0_mem+(CHNo_mem−1)×Grid} (6)
次に、コントローラ41は、下記式(7)に従って、フィードバック制御目標値HTを算出する(ステップS25)。下記式(7)において、HT0は、CHNo_memのチャネルのフィードバック制御目標値である。Slopeは、エタロン48の光波長透過特性の温度変動量の逆数である。なお、コントローラ41は、ファインチューニングを行う場合には、下記式(8)に従って、エタロン48の温度Tetaを変更する。下記式(8)において、Teta0は、CHNo_memのチャネルのエタロン温度Tetalonであり、FTFは、ファインチューニングで変動させる周波数の変動量である。
HT=HT0+Slope×Δf (7)
Teta=Teta0+Slope×(Δf+FTF) (8)
本実施例によれば、予め定められているITU−Tグリッドに対応するチャネルの駆動条件を設定する必要がないため、エタロン温度を一定に維持した状態で各チャネルの駆動条件を設定することができる。この場合、エタロン温度の変更に必要となる補正温度範囲が不要となる。それにより、エタロン温度の制御範囲を抑制することができる。また、温度制御範囲が狭くなることによって、温度制御装置の消費電力が低減される。また、エタロングリッド間隔(FSR/2)をチャネル基準とするため、当該エタロングリッド間隔がITU−Tグリッドの間隔と異なっていても、歩留まりに影響しない。また、エタロンの光透過特性のスロープにおいて、ロック点を任意に設定することができるため、最適な位置(例えばピークまたはボトムからFSR/4の位置)にロック点を定めることができる。それにより、AFC引き込み範囲の最大値を保証することができ、AFCの精度も向上する。
本実施例においては、CHNo_memのチャネルの駆動条件は、測定した基準周波数とグリッド間隔とチャネルを基に形成されている。しかしながら、実際に、レーザを駆動するためのレーザ装置に入力する基準周波数とグリッド間隔は、測定した基準周波数とグリッド間隔と異なる場合がある。この場合には、実際にレーザ装置に入力する基準周波数とグリッド間隔とチャネルを測定した基準周波数とグリッド間隔とチャネルに変換して読み替える。具体的には、測定した基準周波数を191.0300[THz]、測定したグリッド間隔49.0[GHz]とした場合、要求波長として、レーザ装置に入力された基準周波数を191.0000[THz]、グリッド間隔を50.0[GHz]、チャネルをCH2とすると、要求波長は、191.1000[THz]となる。このときの要求波長を本実施例にした場合には、基準周波数を191.0300[THz]、グリッド間隔を49.0[GHz]とすると、チャネルCH2は、191.0790[THz]となり、測定から設定されたチャネルCH2の基本波長と要求波長との波長差分ΔFが21[GHz]となる。この波長差分ΔFから図6のグリッドレス制御によって演算されることで、レーザ装置の駆動条件を求めることができる。以上により、本実施例においては、図示しないが、レーザ装置に入力する基準周波数とグリッド間隔とチャネルから求められる要求波長を測定した基準周波数とグリッド間隔とチャネルから演算する演算器を備えている。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。