JP2018084324A - 転がり軸受装置 - Google Patents

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Hiroki Matsuyama
博樹 松山
和芳 山川
Kazuyoshi Yamakawa
和芳 山川
白井 良昌
Yoshimasa Shirai
良昌 白井
洋嗣 間野
Hiroshi Mano
洋嗣 間野
昌寛 原田
Masahiro Harada
昌寛 原田
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Abstract

【課題】軸受部に給油する給油ユニットを備えている転がり軸受装置において、油滴を軸受部の所望の部位に到達させやすくする。【解決手段】転がり軸受装置10は、内輪21、外輪22、複数の玉23及び保持器24を有している軸受部20と、この軸受部20の軸方向隣りに設けられている給油ユニット40とを備えている。給油ユニット40は、軸受部20に潤滑油を油滴Pとして噴出する噴出口50が設けられているポンプ34を有している。給油ユニット40は、更に、噴出口50から噴出させた油滴Pの通過領域K1を覆う風防部51を有している。風防部51は、噴出口50が開口するポンプ34との間に隙間無く設けられていると共に、軸受部20のターゲットに向かって開口している。【選択図】 図1

Description

本発明は、軸受部と、この軸受部の軸方向隣りに設けられている給油ユニットとを備えている転がり軸受装置に関する。
近年、各種の工作機械では、加工効率及び生産効率の向上のために主軸の高速化が要求されている。主軸が高速で回転すると、これを支持する軸受部において特に潤滑性が問題となる。そこで、軸受部の軸方向隣りに給油ユニットが設けられている転がり軸受装置が提案されている(特許文献1参照)。この給油ユニットは、潤滑油を溜めるタンク、及び、このタンク内の潤滑油を軸受部に供給するためにポンプ等を有している。
特開2004−108388号公報
前記のような転がり軸受装置では、潤滑油を溜めるタンクが、軸受部と共に軸とハウジングとの間の狭い環状空間に設けられることから、タンクの容量は制限される。したがって、長期にわたって給油ユニットを機能させるためには、潤滑油の過剰な供給(無駄な消費)を抑える必要がある。
前記特許文献1に記載の給油ユニットが有するポンプは、ポンプ本体から延びる筒状のノズルの先端より潤滑油を滲み出させる構成である。ノズル先端から滲み出させた潤滑油は、増えることで一つの油滴となりノズル先端に保持される。そして、保持された油滴は、軸受の回転に伴って内輪と外輪との間において発生するエアの流れによりノズル先端から離脱し、更にエアの流れに乗って軸受内部に供給される。しかし、ノズル先端から離脱した油滴は、給油を要する玉や軌道に到達するとは限らず、不要な場所に付着して軸受部の潤滑に寄与しない場合がある。つまり、潤滑油が軸受部の所望の部位に到達せず、潤滑油が無駄に消費される可能性がある。
そこで、他の形態のポンプとして、図7に示すように、潤滑油を油滴Pとして噴出させるポンプ90がある。このポンプ90によれば、油滴Pを軸受部99の所望の部位(例えば、玉98)に到達させることが可能となり、潤滑油の効率的利用の観点で好ましい。しかし、前記のとおり、軸受部99(内輪95)が回転すると、内輪95と外輪94との間の環状空間93でエアの流れが発生し、特に、軸受が高速回転すると、環状空間93におけるエアの流れ(回転)も高速となり、この場合、ポンプ90から油滴Pを飛ばしても、この回転するエアの流れの影響を受けて、油滴Pは所望の部位(玉98)に到達しない可能性がある。この結果、潤滑油が無駄に消費され、給油ユニット100を長期にわたって機能させることができなくなり、メンテナンスの頻度が増え、例えば工作機械の場合には生産効率を低下させてしまう。
そこで、本発明は、油滴を軸受部の所望の部位に到達させやすくする転がり軸受装置を提供する。
本発明の転がり軸受装置は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、前記複数の転動体を保持する保持器を有している軸受部と、前記軸受部の軸方向隣りに設けられ、当該軸受部に潤滑油を油滴として噴出する噴出口が設けられているポンプを有する給油ユニットと、を備え、前記給油ユニットは、更に、前記噴出口から噴出させた油滴の通過領域を覆う風防部を有しており、前記風防部は、前記噴出口が開口する前記ポンプとの間に隙間無く設けられていると共に前記軸受部のターゲットに向かって開口している。
この転がり軸受装置によれば、軸受部が回転すると内輪と外輪との間の環状空間においてエアの流れが発生するが、ポンプから噴出させた油滴は風防部によって覆われて前記エアの流れの影響を受け難くなる。特に、風防部は、噴出口が開口するポンプとの間に隙間無く設けられていることから、風防部を通過する油滴は、前記エアの流れの影響をより一層受け難く、油滴を軸受部の所望の部位(ターゲット)に到達させやすくすることができる。
また、前記噴出口から噴出させた油滴を転動体に当てることで、その油滴を内輪、外輪及び保持器と転動体との間の潤滑に用いることができるが、噴出口から飛翔する油滴は、周方向で隣り合う転動体間を通過してしまう可能性もある。そこで、前記噴出口から噴出させる油滴の噴出方向は、前記内輪又は前記外輪において前記転動体が転がり接触する軌道に向かう方向であるのが好ましい。この場合、ポンプから噴出させた油滴が転動体に当たらなくても軌道に当たり、軌道を転動する転動体(玉)に付着することで、潤滑油は軸受部の潤滑に有効に寄与することができる。
この場合において、ストレート状である前記噴出口の入口から出口に向かう方向が、軸受中心線に対して傾いていることによって、前記噴出方向が前記軌道に向かう方向となるのが好ましい。これにより、ポンプから噴出させた油滴が転動体に当たらなくても軌道に当たる構成が得られる。
この場合において、前記風防部における前記油滴が通過する内側領域が充分に広ければ、噴出させた油滴は風防部を確実に通過できるが、広くなくても、前記風防部における前記油滴が通過する内側領域が、前記軸受中心線に対して前記噴出口の入口から出口に向かう方向と同方向に傾いていれば、噴出させた油滴は無理なく風防部を通過することができる。
また、前記風防部は、周方向について部分的に設けられかつ周方向に沿って所定長さを有する弧形状を備えていてもよい。これにより、風防部において油滴を通過させる内側領域の周方向の範囲を広くすることができる。
また、この場合において、前記風防部は、周方向端部に向かうにしたがって径方向寸法が小さくなる形状を有しているのが好ましい。風防部はポンプから軸受部側に突出していることから、前記エアの流れの中に位置することとなるが、前記形状によれば、前記エアの流れを阻害し難くすることができる。なお、前記エアの流れが大きく乱れると、軸受部の振動発生等の原因となる可能性がある。
また、前記給油ユニットは、前記軸受部の軸方向一方側の隣りに設けられており、前記保持器は、前記転動体の軸方向一方側に設けられている環状部と、当該環状部から軸方向他方側に延びている柱部と、を有し、前記風防部の先端は、前記環状部の軸方向一方側の外側面よりも前記転動体側に位置しているのが好ましい。この構成によれば、風防部の先端が、保持器の環状部と、内輪又は外輪の一部(環状部と径方向について対向する面)との間に位置する。このため、転動体に接近した位置まで風防部が設けられ、軸受の回転によって内輪と外輪との間の環状空間(軸受内部)で発生するエアの流れが、直接的に油滴に当たるのを風防部によってほとんどの領域で防ぐことができる。したがって、より一層油滴をターゲットに到達させやすくすることができる。
また、例えば転動体のサイズが小さく、保持器の前記環状部と内輪又は外輪との間に形成される空間が狭く、この空間に風防部の先端が位置する場合、この先端側が環状部等と接触しないようにする必要である。そこで、前記環状部には、前記風防部の前記先端側との間に隙間を形成するための逃げ形状部が設けられているのが好ましい。これにより、風防部の先端が位置する前記空間が狭くても、風防部が保持器(環状部)に干渉しないで、風防部の先端を、環状部の軸方向一方側の外側面よりも転動体側に位置させることができる。
また、この場合において、前記保持器は、第一の前記環状部の他に、前記転動体の軸方向他方側に設けられ前記柱部と繋がる第二の環状部を更に有し、第一の前記環状部と前記第二の環状部との断面形状が対称であるのが好ましい。この場合、第一の環状部に逃げ形状部が形成されているが、第一の環状部と第二の環状部との断面形状が対称となるため、保持器の軸方向一方側と軸方向他方側との量バランスが崩れるのを防ぐことができ、保持器の回転挙動を安定させ、軸受の回転性能を高めることが可能となる。
本発明によれば、ポンプから噴出させた油滴は風防部によって覆われることで、軸受部の回転に伴って発生するエアの流れの影響を受け難くなり、油滴を軸受部の所望の部位(ターゲット)に到達させやすくすることができる。この結果、潤滑油の無駄な消費を防止することが可能となる。
転がり軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。 給油ユニットを軸方向から見た断面図である。 ポンプ、風防部及びその周囲の概略構成を説明するための断面図である。 風防部及びポンプの正面図である。 風防部の他の形態を示す正面図である。 ポンプ、風防部及びその周囲の概略構成を説明するための断面図である。 従来の転がり軸受装置の断面図である。
図1は、転がり軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。図1に示す転がり軸受装置10(以下、軸受装置10ともいう。)は、工作機械が有する主軸装置の主軸(軸7)を回転可能に支持するものであり、主軸装置の軸受ハウジング8内に収容されている。図1では、軸7及び軸受ハウジング8を2点鎖線で示している。なお、この軸受装置10は工作機械以外においても適用可能である。また、以下の説明において、軸受装置10の中心線Cに平行な方向を軸方向と呼び、この軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
軸受装置10は、軸受部20と給油ユニット40とを備えている。軸受部20は、内輪21、外輪22、複数の玉(転動体)23、及び、これら複数の玉23を保持する保持器24を有しており、玉軸受(転がり軸受)を構成している。更に、この軸受装置10は、円筒状である内輪間座17及び外輪間座18を備えている。
給油ユニット40は、全体として円環状であり、外輪間座18の径方向内側に取り付けられており、軸受部20の軸方向について隣りに位置している。給油ユニット40は、軸受部20へ給油を行う機能を有している。給油ユニット40の詳細な構成及び機能については後に説明する。本実施形態では、給油ユニット40(本体部41)と外輪間座18とは別体であるが、これらは一体であってもよい。この場合、給油ユニット40は、給油を行う機能と共に、外輪間座としての機能も有する。
本実施形態では、外輪22、外輪間座18及び給油ユニット40が軸受ハウジング8に回転不能として取り付けられており、内輪21及び内輪間座17が軸7と共に回転する。したがって、外輪22が、回転しない固定輪となり、内輪21が、軸7と共に回転する回転輪となる。
内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材であり、その外周に軌道(以下、内輪軌道25という。)が形成されている。本実施形態では、内輪21と内輪間座17とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。
外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に固定される円筒状の部材であり、その内周に軌道(以下、外輪軌道26という。)が形成されている。本実施形態では、外輪22と外輪間座18とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。外輪22と外輪間座18とが一体であっても、給油ユニット40は固定輪側に取り付けられる。
玉23は、内輪21と外輪22との間に介在しており、内輪軌道25及び外輪軌道26を転動する。保持器24は、環状であり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。玉23及び保持器24は、内輪21と外輪22との間に形成されている環状空間11に設けられている。
保持器24は、全体として環状であり、玉23の軸方向一方側の環状部28aと、玉23の軸方向他方側の環状部28bと、これら環状部28a,28bを連結している複数の柱部29とを有している。環状部28a,28bの間であって周方向で隣り合う柱部29,29の間がポケット27となり、各ポケット27に一つの玉23が収容されている。この構成により、保持器24は、複数の玉23を周方向に間隔をあけて保持することができる。
この保持器24では、軸方向一方側(給油ユニット40側)の環状部28aが外輪22の肩部30と摺接可能となっている。これにより、保持器24は外輪22によって径方向についての位置決めがされる。つまり、この軸受部20では、保持器24が外輪案内(軌道輪案内)される軸受となっている。
保持器24は、樹脂製(例えば、フェノール樹脂製又はPEEK樹脂製)であり、内輪21及び外輪22は、軸受鋼等の鋼製である。玉23は、軸受鋼等の鋼製であってもよく、セラミックス(窒化ケイ素等)であってもよい。
図2は、給油ユニット40を軸方向から見た断面図である。給油ユニット40は、全体として円環形状を有している。給油ユニット40は、タンク42及びポンプ43を備えている。タンク42及びポンプ43は、給油ユニット40が有している環状の本体部41に設けられている。給油ユニット40は、制御部44及び電源部45を備えており、更に、図示していないが、各種センサも備えている。
本体部41は、外輪間座18の内周側に取り付けられており、ポンプ43等を保持するフレームとしての機能を有している。本体部41は円環状の部材であるが中空空間が形成されており、この中空空間にポンプ43、制御部44、及び、電源部45が設けられている。また、前記中空空間の一つがタンク42となっている。これにより、本体部41、タンク42、ポンプ43、制御部44及び電源部45等を含む給油ユニット40は、一体として構成される。
図2において、タンク42は、潤滑油(オイル)を溜めるためのものであり、潤滑油をポンプ43へ流すために配管46を通じてポンプ43と繋がっている。タンク42内には、図示しないが、潤滑油を保持する保持材(多孔質部材)が設けられていてもよい。
ポンプ43は、内部に圧電素子43aを有しており、この圧電素子43aが動作することでポンプ43の油室(内部空間)43bの容積を変化させ、この油室43bの潤滑油を軸受部20の環状空間11に吐出させることができる(図1参照)。油室43bは、ポンプ43において潤滑油を溜める空間である。ポンプ43が有するノズル(噴出口)50は、油室43bと繋がっており、また、軸受部20の内輪軌道25に向かって開口している。ノズル50は、ポンプ43が有するポンプ本体の壁部49(以下、ポンプ壁部49という)に形成されている微小の貫通孔によって構成されている。圧電素子43aが動作することにより、ノズル50から潤滑油が油滴Pとなって初速を有して吐出される。つまり、例えば、印刷技術で用いられるインクジェットのヘッドに形成されているノズル(噴出口)からインクが吐出されるように、ポンプ43のノズル50から油滴Pは飛翔する。
電源部45(図2参照)は、ポンプ43の動作用の電力を供給する。制御部44は、ポンプ43を動作させるタイミングを制御することができる。
以上より、ポンプ43は、タンク42の潤滑油を油室43bにおいて受けると共に、この油室43bの潤滑油をノズル50から油滴Pとして軸受部20のターゲットに向けて噴出させる(飛翔させる)構成となっている。潤滑油の効率的利用の観点から、ポンプ43において1回の吐出動作で定められた量の油滴Pを噴出させ、この油滴Pを軸受部20のターゲットに到達させる。ポンプ43の1回の動作で、ノズル50から数ピコリットル〜数ナノリットルの潤滑油が油滴Pとして噴出される。本実施形態における前記ターゲットは、玉23及び内輪軌道25である。つまり、玉23を直接的にターゲットとしているが、飛翔する油滴Pが隣り合う玉23,23の間を通過してしまう可能性があるため、内輪軌道25もターゲットとしている。
図3に示すように、給油ユニット40は、更に、油滴Pの風防として機能する風防部51を備えている。図3は、ポンプ43、風防部51及びその周囲の概略構成を説明するための断面図であり、転がり軸受10の中心線C(図1参照)を含む断面における図である。本実施形態の風防部51は、ポンプ43から玉23の近傍まで延びるようにして設けられており、内輪21の肩部31と保持器24の環状部28aとの間に位置している。風防部51の先端53は、保持器24の環状部28aの軸方向外側面28cよりも玉23側に位置している。内輪21及び保持器24(環状部28)それぞれと風防部51とは干渉しないように構成されており、これらの間には少なくとも0.1ミリメートルの隙間が設けられている。風防部51(先端53)と環状部28aとが干渉するおそれがある場合には(図6参照)、環状部28aの一部に切り欠き(面取り)60を設ければよい。なお、図6に示す形態については、後で説明する。
図3において、風防部51の基部51aは、ノズル50が開口しているポンプ壁部49の側面49aに密着しており、風防部51はポンプ43との間に隙間無く設けられている。なお、前記側面49aは、ノズル50が開口しているヘッド面である。図3では、風防部51が径方向内側及び径方向外側についてポンプ壁部49との間で隙間が無いことが示されているが、周方向両側においてもポンプ壁部49との間で隙間が無く、ノズル50の出口50bの周囲において全周にわたってポンプ壁部49との間で隙間が無い。つまり、風防部51は、玉23側の先端53でのみ開口しており、その他の部分では閉ざされている。
風防部51とポンプ43とは別体であり、ポンプ43が組み込まれている本体部41に風防部51が設けられている。また、本体部41と風防部51とは一体であってもよく、別体であってもよい。本体部41及び風防部51を樹脂製とすることができる。また、図示しないが、ポンプ43の一部であるポンプ壁部49と、風防部51とが一体であってもよい。つまり、給油ユニット40の組み立て完了状態で、風防部51は、ポンプ壁部49との間に隙間無く設けられており、ポンプ壁部49と繋がって連続していればよい。
風防部51は貫通している孔54を有している。この孔54の軸方向一方側(図3では左側)は、ノズル50に向かって開口しているが、ポンプ壁部49により閉ざされており、また、孔54の軸方向他方側(図3では右側)は、内輪軌道25に向かって開口している。孔54の断面積(つまり、油滴Pの通過面積)はノズル50の断面積よりも充分に大きく(10倍以上大きく)、孔54の断面積は油滴Pよりも充分に大きい。このため、ノズル50から噴出させた油滴Pは、孔54を通過して、前記ターゲット(玉23又は内輪軌道25)に到達する。孔54により風防部51の内側領域K2が形成されており、風防部51によって内側領域K2と外側領域K3とが区画されている。内側領域K2は、ノズル50から噴出させた油滴Pの通過領域K1を含む領域である。以上のように、風防部51は、ノズル50から噴出させた油滴Pの通過領域K1を覆うと共に、軸受部20の前記ターゲット側に向かって開口した構成となっている。
図1及び図3に示す形態では、ポンプ43は、軸受装置10の中心線C(図1参照)に対して傾いて設けられており、これにより、ノズル50から噴出させる油滴Pの噴出方向を内輪軌道25に向かう方向としている。つまり、本実施形態のポンプ43は直方体形状を有しており、図1及び図3に示す断面において、ポンプ43の径方向外側の面43cが、中心線Cに対して傾いている。ノズル50は、ポンプ壁部49を直線的に貫通して形成された貫通孔によって構成されており、この貫通方向は前記面43cと平行である。したがって、ポンプ43が全体として傾いていることでノズル50も傾いた状態となる。なお、図1及び図3では、ポンプ43が傾いていることの説明をわかり易くするために、傾き角度を実際よりも大きくして記載している。このように、本実施形態では、ストレート状であるノズル50(図3参照)の入口50aから出口50bに向かう方向をノズル方向とすると、このノズル方向を中心線Cに対して傾けることで、油滴Pの噴出方向を内輪軌道25に向かう方向としている。
油滴Pの噴出方向を内輪軌道25に向かう方向とするために、ノズル方向に沿った仮想線、つまり油滴Pの噴出方向に沿った仮想線が、内輪軌道25の軸方向一方側の端25aから軸方向他方側の端25bまでの範囲と交差するように設定されていればよい。中心線Cに対するノズル方向(前記仮想線)の傾き角度は、例えば、0度よりも大きく10度以下に設定される。
ポンプ43が傾いて設けられているのに併せて、風防部51も同方向に傾いて設けられている。本実施形態では、風防部51の全体が傾いている。これにより、風防部51における油滴Pが通過する内側領域K2は、中心線Cに対してノズル方向と同方向に傾いた構成となり、内側領域K2が特に径方向に広くなくても、噴出させた油滴Pは無理なく風防部51を通過することができる。なお、風防部51を全体として傾けることにより、その先端53が内輪21の肩部31に干渉するおそれがある場合には、図示しないが、風防部51を全体として傾けるのではなく、前記孔54のみを傾けて形成すればよい。
なお、ノズル50から噴出させる油滴Pの噴出方向を、内輪軌道25に向かう方向とすることができるのであれば、ノズル方向を中心線Cに対して傾けなくてもよい、つまり、ノズル方向が中心線Cと平行であってもよい。
仮に噴出させた油滴Pが風防部51(内壁面)に接触したとしても(その接触角は小さいため)内壁面で跳ね返り、風防部51からターゲットに向けて飛翔することができる。
以上のように、本実施形態の転がり軸受装置10によれば、内輪21が回転すると、玉23と共に保持器24が回転し、これにより内輪21と外輪22との間の環状空間11に存在するエアが保持器24に連れられて回転する。特に内輪21が高速回転すると、環状空間11におけるエアの回転も高速となる。このため、仮に風防部51が設けられていない場合、ポンプ43から油滴Pを噴出すると、その油滴Pが回転するエアの流れに運ばれて(流されて)所望のターゲット(玉23、内輪軌道25)に到達しないおそれがある。
しかし、本実施形態の給油ユニット40は風防部51を備えており、この風防部51は、ノズル50から噴出させた油滴Pの通過領域K1を覆うと共にターゲット側に向かって開口している。このため、風防部51は、油滴Pを、前記環状空間11で回転するエアから防ぎ、内側領域K2を直線的に通過させることで、ターゲットに到達させやすい。
このように、ポンプ43から噴出させた油滴Pは風防部51によって覆われてエアの流れの影響を受け難くすることができるが、特に本実施形態では前記のとおり、風防部51は、ノズル50が開口するポンプ43(ポンプ壁部49)との間に隙間無く設けられている。このため、外側領域K3のエアが風防部51の周りから内側領域K2に侵入せず、風防部51を通過する油滴Pは、前記エアの流れの影響をより一層受け難くなり、油滴Pを軸受部20の所望の部位(ターゲット)に到達させやすくなる。これにより、潤滑油の無駄な消費を防止することが可能となり、タンク42の容量が制限されていても、長期にわたって給油ユニット40を機能させることが可能となる。
また、ノズル50から噴出させた油滴Pを玉23に当てることで、その油滴Pを内輪21及び外輪22と玉23との間の潤滑に用いることができるが、飛翔する油滴Pは、周方向で隣り合う玉23,23間を通過してしまう可能性もある。しかし、前記のとおり、ノズル50から噴出させる油滴Pの噴出方向を内輪軌道25に向かう方向としているため、油滴Pが玉23に当たらなくても内輪軌道25に当たることができ、潤滑油は軸受部20の潤滑に有効に寄与することができる。
図4は、風防部51及びポンプ43の正面図であり、これらを軸方向から見た図である。風防部51は、正面視において、周方向に沿って所定長さを有する弧形状を備えており、この形状は軸方向に沿って変化せず同じである。この弧形状である風防部51の一部(本実施形態では中央部)に前記孔54が形成されており、この孔54の範囲内でノズル50が開口している。孔54は、径方向よりも周方向に長い断面形状を有しており、周方向に沿って湾曲した長円形状を有している。本実施形態の風防部51は、周方向について部分的に設けられているが、全周に設けられ環状であってもよく、その環状の部分の一部に孔54が形成され、ノズル50を開口させる構成としてもよい。
図4に示すように、弧形状である風防部51がポンプ壁部49の側面49a(ヘッド面)の一部を覆うことで、この風防部51がポンプ43との間に隙間無く設けられた構成となる。このように、本実施形態の風防部51は、周方向について部分的に設けられており、かつ、周方向に沿って所定長さを有する弧形状を備えていることから、油滴を通過させる内側領域K2の周方向の範囲を広くすることができる。
図4に示すように、正面視において、風防部51は、周方向端部52a,52bに向かうにしたがって径方向寸法が小さくなる形状を有している。つまり、風防部51は、周方向端部52a,52bに向かって先細りする形状を有している。このように構成することで、軸受部20の回転に起因するエアの流れの影響を低減することができる。つまり、風防部51は(図3参照)ポンプ43から軸受部20側に突出していることから、前記エアの流れの中に位置することとなる。そこで、前記のように(図4参照)周方向端部52a,52bを先細り形状とすることで、前記エアの流れを阻害し難くすることができる。つまり、エアの流れ中に障害物となる風防部51が存在するが、前記形状によってエアを整流させることができる。なお、前記エアの流れが大きく乱れると、軸受部20の振動発生等の原因となる可能性があるが、本実施形態によれば、このような振動を防ぐことができる。
図5は、風防部51の他の形態を示す正面図であり、風防部51及びポンプ43を軸方向から見た図である。図5に示す風防部51は、ポンプ壁部49の一部を覆う被覆部55と、この被覆部55の一部に設けられている短円筒形状の風防本体部56とを有している。被覆部55がポンプ壁部49の一部を覆うことで、風防部51がポンプ43との間に隙間無く設けられた構成となる。図5に示す形態においても、風防部51は、周方向について一部にのみ設けられている。風防本体部56の中央に断面円形の孔57が形成されており、この孔57を油滴が通過する。図5に示す形態では、風防部51は、本体部41と別体であるが、一体であってもよい。
図6により、保持器24が有する環状部28aの一部に切り欠き(面取り)60が設けられている転がり軸受装置に関して説明する。給油ユニット40は、軸受部20の軸方向一方側の隣りに設けられている。軸受部20が備えている保持器24は、転動体である玉23の軸方向一方側に設けられている環状部28a、この環状部28aから軸方向他方側に延びている柱部29、及び、玉23の軸方向他方側に設けられ柱部29と繋がっている第二の環状部28bを備えている。給油ユニット40は、ポンプ43が噴出した油滴Pの風防として機能する風防部51を備えており、この風防部51の先端53は、環状部28aの軸方向一方側の外側面28cよりも玉23側に位置している。つまり、風防部51の先端53は、前記外側面28cよりも軸方向他方側に位置している。ノズル50から噴出させた油滴Pは、風防部51の内側の空間(前記内側領域K2、孔54)を飛翔して通過する。これらの構成については、図3(図5)に示す形態と同様である。
この構成によれば、風防部51の先端53が、保持器24の軸方向一方側の環状部28aと、内輪21の肩部31(環状部28aと径方向について対向する面)との間に位置する。このため、風防部51が玉23に接近した位置まで設けられ、軸受の回転によって内輪21と外輪22との間の環状空間11(軸受内部)で発生するエアの流れが、直接的に油滴Pに当たるのを風防部51によってほとんどの領域で防ぐことができる。したがって、風防部51の内側を飛翔して通過した油滴Pを、より一層、ターゲット(玉23又は内輪軌道25)に到達させやすくすることができる。
そして、図6に示す形態では、環状部28aの軸方向一方側でかつ内周側の一部に、切り欠き60が設けられている。これは、環状部28aと内輪21の肩部31との間に形成される空間Qが狭くても、風防部51の先端53側が環状部28aと接触しないようにするためである。このように風防部51の先端53側が環状部28aと接触しないようにするための手段として、図6に示す形態では、環状部28aに切り欠き60による逃げ形状部が形成されているが、逃げ形状部はその他の形状であってもよい。例えば、逃げ形状部は、図6に示すような断面直線状である以外に(図示しないが)断面曲線状であってもよい。このように、給油ユニット40側である軸方向一方側の環状部28aにおいて、風防部51の先端53側との間に隙間を形成するための逃げ形状部(切り欠き60)が設けられていることで、風防部51の先端53が位置する前記空間Qが狭くても、風防部51が環状部28aに干渉しないで、風防部51の先端53を、環状部28aの軸方向一方側の外側面28cよりも玉23側に位置させることができる。
図6に示す環状部28aの切り欠き60(逃げ形状部)はテーパ面により構成されている。断面がほぼ矩形である環状部28aの一部に対して面取り(二次加工)することで切り欠き60(逃げ形状部)を構成してもよいが、保持器24は樹脂製であり金型で成型されることから、その金型の一部を逃げ形状部に対応する形とすれば、保持器24の成型と共に環状部28aに逃げ形状部を形成することができる。
更に、図6に示す形態では、保持器24において、第一の環状部28aの前記逃げ形状部と同じ構成を、軸方向他方側の第二の環状部28bは備えている。つまり、第二の環状部28bにも切り欠き60が形成されている。これにより、図6に示すように、中心軸C(図1参照)を含む断面において、保持器24を軸方向一方側と軸方向他方側とに分ける中心線Lを基準として、軸方向一方側の第一の環状部28aと軸方向他方側の第二の環状部28bとの断面形状が対称(線対称)となる。前記のとおり、風防部51が第一の環状部28aに干渉しないようにするために、この環状部28aに逃げ形状部(切り欠き60)が形成されているが、第二の環状部28bにも切り欠き60を設けることで、玉23の軸方向両側に位置する第一の環状部28aと第二の環状部28bとの断面形状が対称となり、保持器24の軸方向一方側と軸方向他方側との重量バランスが崩れるのを防ぐことができる。この結果、保持器24の回転挙動を安定させ、軸受の回転性能を高めることが可能となる。
前記のとおり、保持器24は外輪22によって径方向について位置決めされているが、保持器24は径方向について所定寸法だけ変位可能となっている。この所定寸法は、保持器24と外輪22とが同心状に配置された状態で、環状部28aと外輪22(肩部30)との間に形成される径方向隙間の寸法e1(図6参照)と一致する。そこで、保持器24が(図6では環状部28aが内輪21に接近する側へ)径方向に前記所定寸法e1について変位しても、環状部28aと風防部51とが非接触となるように、これら環状部28aと風防部51との間の径方向の最小寸法e2は設定されている。つまり、環状部28aと風防部51との間の径方向の最小寸法e2は、保持器24が径方向について変位可能となる最大値(前記寸法e1)よりも大きく設定されている。なお、環状部28aと風防部51との間の径方向の最小寸法e2については、図6に示すように、環状部28aに逃げ形状部(切り欠き60)を設けることで、大きくすることができる。
図6に示す転がり軸受装置と、図3(図5)に示す転がり軸受装置とにおいて、保持器24の環状部28a(28b)の形態が異なる以外は、同じである。
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の転がり軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では(図3参照)、ポンプ43のノズル50は、内輪21側(径方向内側)寄りの位置で開口しているが、(図示しないが)外輪22側(径方向外側)寄りの位置で開口していてもよく、この場合、油滴Pのターゲットを外輪軌道26としてもよい。この場合、風防部51は、外輪22と保持器24との間に位置すればよく、また、外輪22の肩径の小さいカウンタボア側に給油ユニット40を配置すればよい。つまり、ノズル50から噴出させる油滴Pの噴出方向を、内輪21又は外輪22において転動体(玉23)が転がり接触する軌道に向かう方向とすればよい。
また、前記実施形態では、軸受部20がアンギュラ玉軸受である場合について説明したが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、円すい転がり軸受や、円筒ころ軸受であってよい。また、この転がり軸受装置10を、工作機械の主軸用以外の用途に用いることができる。
10:転がり軸受装置 20:軸受部 21:内輪
22:外輪 23:玉(転動体) 24:保持器
25:内輪軌道 26:外輪軌道 28a:環状部
28b:環状部 29:柱部 28c:外側面
40:給油ユニット 43:ポンプ 49:ポンプ壁部
50:ノズル(噴出口) 50a:入口 50b:出口
51:風防部 52a,52b:周方向端部 53:先端
60:切り欠き(逃げ形状部) C:中心線(軸受中心線)
K1:通過領域 K2:内側領域 P:油滴

Claims (9)

  1. 内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、前記複数の転動体を保持する保持器を有している軸受部と、
    前記軸受部の軸方向隣りに設けられ、当該軸受部に潤滑油を油滴として噴出する噴出口が設けられているポンプを有する給油ユニットと、を備え、
    前記給油ユニットは、更に、前記噴出口から噴出させた油滴の通過領域を覆う風防部を有しており、
    前記風防部は、前記噴出口が開口する前記ポンプとの間に隙間無く設けられていると共に前記軸受部のターゲットに向かって開口している、
    転がり軸受装置。
  2. 前記噴出口から噴出させる油滴の噴出方向は、前記内輪又は前記外輪において前記転動体が転がり接触する軌道に向かう方向である、請求項1に記載の転がり軸受装置。
  3. ストレート状である前記噴出口の入口から出口に向かう方向が、軸受中心線に対して傾いていることによって、前記噴出方向が前記軌道に向かう方向となる、請求項2に記載の転がり軸受装置。
  4. 前記風防部における前記油滴が通過する内側領域が、前記軸受中心線に対して前記噴出口の入口から出口に向かう方向と同方向に傾いている、請求項3に記載の転がり軸受装置。
  5. 前記風防部は、周方向について部分的に設けられかつ周方向に沿って所定長さを有する弧形状を備えている1〜4のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
  6. 前記風防部は、周方向端部に向かうにしたがって径方向寸法が小さくなる形状を有している、請求項5に記載の転がり軸受装置。
  7. 前記給油ユニットは、前記軸受部の軸方向一方側の隣りに設けられており、
    前記保持器は、前記転動体の軸方向一方側に設けられている環状部と、当該環状部から軸方向他方側に延びている柱部と、を有し、
    前記風防部の先端は、前記環状部の軸方向一方側の外側面よりも前記転動体側に位置している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
  8. 前記環状部には、前記風防部の前記先端側との間に隙間を形成するための逃げ形状部が設けられている、請求項7に記載の転がり軸受装置。
  9. 前記保持器は、第一の前記環状部の他に、前記転動体の軸方向他方側に設けられ前記柱部と繋がる第二の環状部を更に有し、第一の前記環状部と前記第二の環状部との断面形状が対称である、請求項8に記載の転がり軸受装置。
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