JP2018082554A - コイル変形装置及びステータの製造装置並びにステータの製造方法 - Google Patents

コイル変形装置及びステータの製造装置並びにステータの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】整列巻きされたコイルの各辺部における線材の整列性を損なうことなく変形させてスロットに挿入する。【解決手段】コイル変形装置は、コイル12の辺部13a,14aが挿入可能なスリット32a,32bがそれぞれ形成された一対の受け渡し治具32,32と、一対の辺部を挿入可能な平行位置と深さ方向が交差する傾斜位置との間で一対の受け渡し治具を回転させる回転手段33,33と、一対の受け渡し治具を互いに離間させ又は接近させる離接手段34とを備える。ステータの製造装置は、そのコイル変形装置31と、ステータコア11を支持する支持具15と、線材8を巻回してステータコイル12を作製する巻線機20と、コイル変形装置31を移動させる移動手段40と、スリットに挿入された辺部をスリットから押出してスリットが対向するスロット11bに挿入する辺部挿入手段61とを備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、三相交流発電機等の回転電機におけるステータの製造に適したコイル変形装置及びそれを用いたステータの製造装置並びにステータの製造方法に関するものである。
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットに辺部を納めることによりそのコアに組付けられたステータコイルとを備える。このステータコイルの組付けに関しては、ステータコイルをステータコアと別に予め作製し、このコイルの辺部をコアの各スロットに挿入する方法が知られている。
即ち、ステータの製造方法として、図18に示すように、ステータコア2のスロット2aに対応する保持溝3a群が外周に形成された円柱状の挿通治具3を用い、予め巻線された複数のコイル4の一対の辺部4a,4bを保持溝3a群にそれぞれ挿入して各コイル4を挿通治具3の円周に沿って配列し、挿通治具3をステータコア2の内周に挿入して保持溝3aがステータコア2の対応するスロット2aに整合するように位置決めした後、先端に向かうほど幅狭となる板状のプッシャ5を対応する各保持溝3aに先端から挿入し、保持溝3aに挿入された各コイル4の一対の辺部4a,4bを外径側に押出してステータコア2の対応するスロット2aに挿入する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
ここで、ステータコア2と別に予め作製されるステータコイル4にあっては、巻芯に線材を巻回することにより得ることができ、上記方法に用いるコイル4にあっては、保持溝3aに挿通させる互いに平行な一対の辺部4a,4bと、その一対の辺部4a,4bにおける両端部を円弧状に連結するコイルエンド部4c,4dを有するトラック状のものとされる。
即ち、予め作製されるステータコイル4にあっては、トラック状に巻回された巻線に軸方向に新たなトラック状の巻線を積み重ねるように、巻芯に線材を螺旋状に隙間無く巻回するいわゆる整列巻を行って、その積層方向に長くなるような筒状のコイルを得るようにしている。
特開2007−166850号公報 特開2011−229285号公報
しかし、図18に示すように、円柱状の挿通治具3の周囲に形成された保持溝3a群は、ステータコア2のスロット2aに対応させて形成される為に、その周囲から中央に向かうような放射状を成すように形成され、周方向に隣接する保持溝3aが互いに平行に成ることはない。
これに対して、トラック状の巻線が積み重ねられて軸方向に長い筒状を成すコイル4の各辺部4a,4bは、線材が巻軸方向に積層されることから、その巻軸方向において互いに平行なものとなる。
このため、上記従来の製造方法では、線材が巻軸方向に積層されて、積層方向に互いに平行に形成された各辺部4a,4bを放射状を成す保持溝3aに挿入するために、互いに平行に形成された各辺部4a,4bを保持溝3aに挿入し得るように変形させた後でなければ保持溝3aに挿入することができず、その変形させる際に各辺部4a,4bの線材の整列性が失われると、保持溝3aへの挿入が困難になるという不具合が残存していた。
そして、コイル4における各辺部4a,4bの線材における整列性が失われると、巻線の占積率を向上させることが困難となり、発電機やモータの高効率化や小型化などを図ることができないという未だ解決すべき課題が残存していた。
特に、近年では、図16に示すように、巻線の占積率を向上させるために、1つの巻線層を形成するステータコイル12の各辺部13a,14aをそれぞれ複数のスロット11b(図では2つのスロット11b)に挿通させることがある。
このように、ステータコイル12における両側の辺部13a,14aをそれぞれ複数のスロット11bに納める場合、両側における辺部13aを所定の間隔を開けたスロット11bに納める内コイル13と、その内コイル13が納められたスロット11bの外側に隣接するスロット11bに辺部14aが納められる外コイル14から成るステータコイル12を得ることが考えられる。
けれども、この内コイル13と外コイル14から成るステータコイル12が得られたとしても、それらの辺部13a,14aは互いに平行なものとなるので、内コイル13と外コイル14の各辺部13a,14aの平行を保ちながら両側の各辺部13a,14aを放射状を成す各スロット11bに挿入し得るように変形させることは難しく、その整列性を保ちながら各辺部13a,14aをスロット11bに挿入することは更に困難となる不具合がある。
本発明の目的は、整列巻きされたコイルの各辺部における線材の整列性を損なうことなく変形し得るコイル変形装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、コイルの各辺部における線材の整列性を損なうことなく変形させてスロットに挿入し得るステータの製造装置並びにステータの製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、コイルの各辺部をそれぞれ複数のスロットに挿入するために、内コイルと外コイルから成るステータコイルを得た場合であっても、その内コイルと外コイルの各辺部の間隔と線材の整列性を損なうことなく、それらの各辺部を複数のスロットに挿入し得るステータの製造装置並びにステータの製造方法を提供することにある。
本発明は、互いに平行な一対の辺部を有するコイルの辺部が挿入可能なスリットがそれぞれ形成された一対の受け渡し治具と、スリットの深さ方向を平行にして一対の辺部を互いに平行な状態で挿入可能な平行位置とスリットの深さ方向が交差する傾斜位置との間で一対の受け渡し治具のいずれか一方又は双方を回転させる回転手段と、一対の受け渡し治具を互いに離間させ又は接近させる離接手段とを備えたコイル変形装置である。
このコイル変形装置は、スリットに収納された辺部のスリットからの離脱を防止する防止手段を備えることが好ましく、一対の受け渡し治具のそれぞれにスリットが所定の間隔を置いて複数形成されることも好ましい。
別の本発明は、上記のコイル変形装置と、ステータコアを支持する支持具と、線材を巻回してステータコアのスロットに挿入される互いに平行な一対の辺部を有するステータコイルを作製する巻線機と、一対の辺部がスリットに進入する受け渡し位置と一対の受け渡し治具がステータコアに進入する挿入位置との間でコイル変形装置を移動させる移動手段と、スリットに挿入された辺部をスリットから押出してスリットが対向するスロットに挿入する辺部挿入手段とを備え、コイル変形装置の回転手段は傾斜位置でスリットを一対の辺部を挿入しようとするスロットの角度に合わせ、コイル変形装置の離接手段はスリットの開口部の間隔を一対の辺部を挿入しようとするスロットの間隔に合わせ、移動手段は挿入位置でスリットの開口部を一対の辺部を挿入しようとするスロットの開口部に対向させるように構成されたステータの製造装置である。
一対の受け渡し治具のそれぞれにスリットが所定の間隔を置いて複数形成された場合、巻線機は、筒状の内コイルと、内コイルを外側から所定の間隔を置いて包囲する外コイルから成るステータコイルを作製可能に構成されたものであることが好ましい。そして、支持具がステータコアを回転可能に構成することもできる。
更に別の本発明は、線材を巻回して互いに平行な一対の辺部を有するステータコイルを作製するコイル作製工程と、一対の受け渡し治具にそれぞれ形成されたスリットを平行にして一対の辺部を互いに平行な状態でそれぞれのスリットに挿入させる受け渡し工程と、一対の受け渡し治具のいずれか一方又は双方を回転させてスリットを辺部と共にステータコアの挿入しようとするスロットの角度に合わせるコイル変形工程と、スリットの開口部の間隔を一対の辺部を挿入しようとするスロットの間隔に合わせる治具離接工程と、一対の受け渡し治具をステータコア内に進入させてスリットの開口部をスロットの開口部に対向させる治具挿入工程と、スリットに挿入されたステータコイルの辺部をスリットから押出してステータコアの対応するスロットに挿入する辺部挿入工程とを有するステータの製造方法である。
ここで、コイル作製工程において、内コイルと、内コイルを外側から所定の間隔を置いて包囲する外コイルから成るステータコイルを作製した場合、受け渡し工程において、内コイルの辺部が挿入する内スリットと外コイルの辺部が挿入する外スリットの双方がそれぞれ形成された一対の受け渡し治具の内スリットと外スリットに内コイルの辺部と外コイルの辺部を互いに平行な状態で挿入させることが好ましい。そして、ステータコアを回転させてスリットの開口部が対向するスロットを変更させるコア回転工程を介して各工程を繰り返すこともできる。
本発明のコイル変形装置では、コイルの辺部が挿入可能なスリットがそれぞれ形成された一対の受け渡し治具のいずれか一方又は双方を回転させる回転手段と、それらを離接させる離接手段を備えるので、コイルの辺部を挿入させた状態の一対の受け渡し治具を回転及び離接させることにより、コイルの各辺部における線材の整列性を損なうことなくそのコイルを変形させることが可能となる。
また、本発明のステータの製造装置並びにその製造方法は、このようなコイル変形装置を備えるので、線材の整列性を損なうことなく変形されたコイルの各辺部を、その整列性を損なうことなくコアのスロットの挿入することが可能になる。
ここで、コイルの各辺部をそれぞれ複数のスロットに挿入するために、内コイルと外コイルから成るステータコイルを得た場合であっても、一対の受け渡し治具の内スリットと外スリットに内コイルの辺部と外コイルの辺部を互いに平行な状態で挿入させることにより、その内コイルと外コイルの各辺部の間隔と線材の整列性を損なうことなく、それらの各辺部を複数のスロットに挿入することが可能になる。
本発明実施形態におけるステータの製造装置を示す平面図である。 図1のB−B線断面図である。 図1の矢視C図である。 その巻線機を示す図1のA−A線断面図である。 その巻線機の内巻芯に線材が巻回されて内コイルが形成された状態を示す斜視図である。 その線材が外巻芯に巻回されて外コイルが作製された状態を示す図5に対応する斜視図である。 そのコイルの辺部を受け渡し治具のスリットに挿入させた状態を示す図6に対応する斜視図である。 その受け渡し治具を回転及び移動させてコイルを変形させた状態を示す図7に対応する斜視図である。 その変形させたコイルと共に受け渡し治具をステータコアに挿入した状態を示す図1に対応する図である。 図9のD−D線断面図である。 スリットの開口部をスロットの開口部に対向させた状態を示す図10に対応する断面図である。 図11のE−E線断面図である。 そのスリットにプッシャが挿入された状態を示す図12に対応する断面図である。 図13のF−F線断面図である。 内コイルと外コイルを有するステータコイルの辺部が複数のスロットに挿通されたコアを内側から見た図である。 内コイルと外コイルを有するステータコイルがスロットに挿入された固定子の一部拡大上面図である。 ステータコアに複数のステータコイルが装着された固定子を示す上面図である。 従来のステータコイルの辺部をコアの各スロットに挿入する方法を示す分解斜視図である。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明におけるステータの製造装置9を示す。ここで、互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が水平横方向、Y軸が水平前後方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明におけるステータの製造装置9について説明する。
この本発明におけるステータの製造装置9は、発電機やモータに用いられるステータを製造するものであって、図16及び図17に示すように、ステータ10は、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース11a(磁極)及びその間に開口する複数のスロット11bを有する円筒状のステータコア11と、そのステータコア11に組み付けられたステータコイル12とを備える。
図1に戻って、このようなステータ10を製造する本発明におけるステータの製造装置9は、ステータコア11を支持する支持具15を備える。この実施の形態における支持具15は円筒状を成すステータコア11の中心軸を水平にして(図では中心軸がX軸方向)支持するものであり、その中心軸を回転中心にして回転可能に支持するものを示す。
図1、図10〜図14に示すように、支持具15は、水平基板16と、その水平基板16にステータコア11の周方向と軸方向に所定の間隔を開けてそれぞれ設けられたステータコア11が載置される複数対のローラ17と、それら複数対のいずれかのローラ17を回転させてそこの載置されるステータコア11を回転させるモータ18(図10〜図14)と、ステータコア11を軸方向の両側から挟持してステータコア11の回転を禁止する固定具19(図12及び図13)とを備える。
図10〜図14に示すように、この実施の形態におけるモータ18は水平基板16に設けられ、その回転軸18aがベルト18bによりローラ17に連結される。そして、モータ18が駆動してローラ17を回転させると、そこに搭載されたステータコア11を回転させるように構成される。
また、図12及び図13に示すように、固定具19は、水平基板16に設けられてステータコア11の軸方向の一方の端面に当接する当接片19aと、ステータコア11の軸方向の他方の端面に臨むように水平基板16に設けられたアクチュエータ19bとを備え、アクチュエータ19bの出没ロッド19cを突出させて、当接片19aと共にその出没ロッド19cがステータコア11を軸方向の両側から挟持することにより、ステータコア11の回転を禁止するように構成される。
図1に戻って、本発明におけるステータの製造装置9は、線材8を巻回してステータコイル12(図15〜図17)を作製する巻線機20を備える。この実施の形態における巻線機20は、図15に示すように、互いに平行な一対の辺部13a,14aをステータコア11の2つのスロット11bにそれぞれ挿通させる場合に有効なステータコイル12を作製するに適した巻線機20である場合を示す。
このステータコイル12は、1つの巻線層を形成するものではあるものの、それらの辺部13a,14aを隣接する2つのスロット11bにそれぞれ挿通させるものであることから、この実施の形態における巻線機20は、軸方向に長い筒状の内コイル13(図5)と、その内コイル13を外側から所定の間隔t2(図6)を置いて包囲する外コイル14(図6)から成るステータコイル12を作製可能に構成される。
この実施の形態における線材8は被覆導線であって、断面が円形を成すいわゆる丸線が用いられるものとする。なお、この線材8は断面が方形を成すいわゆる角線であっても良い。そして、この実施の形態における巻線機20は、単一の線材8を巻回するものとして説明するけれども、複数の線材8を並列にした状態で巻回するようなものであっても良い。
図4に示すように、この巻線機20は、回転手段21により回転して巻回される線材8によりトラック状の内コイル13(図5)を得る内巻芯24と、その内巻芯24を包囲してその内巻芯24とともに回転し、巻回される線材8によりトラック状の外コイル14(図6)を得る外巻芯25を有する。
内巻芯24は、回転手段21により回転する一対の掛け回し柱22,23の先端の回転半径外側にそれぞれ取付けられた内巻駒24aを有する。即ち、回転手段21は、図5に示すように、互いに平行な状態で鉛直方向に延びる一対の掛け回し柱22,23の中間の鉛直軸Cの周囲にその一対の掛け回し柱22,23を互いに平行な状態で回転可能に構成され、一方の掛け回し柱22と他方の掛け回し柱23のそれぞれの下部に、線材8が掛け回される内巻駒24aが回転半径の外側にそれぞれ取付けられる。
図5に示すように、それらの内巻駒24aの線材8が掛け回される外面は、そこに掛け回される線材8を緩やかに折り返して、略円弧状を形成するように回転半径外側に膨出して形成される。このため、一方の掛け回し柱22と他方の掛け回し柱23を内巻芯24とともに回転させて、それらの内巻芯24に線材8を巻回させると、一方の掛け回し柱22と他方の掛け回し柱23におけるそれぞれの内巻駒24aに掛け回されて円弧状に湾曲する線材8がコイルエンド部13bを形成し、一方の掛け回し柱22と他方の掛け回し柱23との間に掛け渡される線材8が辺部13aを形成するトラック状の内コイル13を形成することになる。
一方、トラック状の外コイル14(図6)を得る外巻芯25は、内巻駒24aを所定の間隔t2を置いて覆う外巻駒25aを有する。図4に示すように、この実施の形態では、外巻芯25が一対の掛け回し柱22,23に移動可能に設けられる場合を示す。そして、図6に示すように、下降した状態で外巻駒25aが内巻芯24における内巻駒24aを回転半径外側から覆う巻位置に至り、図4及び図5に示すように、上昇した状態で内巻駒24aの回転半径外側を解放する待機位置との間を往復移動可能に構成される。
図5及び図6に示すように、外巻駒25aは、その内面が内巻駒24aに掛回された線材8を覆うように湾曲して形成される。また、この外巻駒25aの線材8が掛け回される外面は、そこに掛け回される線材8を緩やかに折り返して、略円弧状を形成するように回転半径外側に膨出して形成される。
このため、図6に示すように、巻位置におけるそれぞれの外巻駒25aに線材8を巻回させると、その外巻駒25aに掛け回されて円弧状に湾曲する線材8がコイルエンド部14bを形成し、一方の掛け回し柱22と他方の掛け回し柱23との間に掛け渡される線材8が辺部14aを形成するトラック状の外コイル14を形成するように構成される。
よって、この実施の形態における巻線機20は、上面視でトラック状を成す筒状の内コイル13と、その内コイル13を外側から所定の間隔t2を空けて包囲する外コイル14から成るステータコイル12を作製可能に構成されたものが用いられる。
ここで、この所定の間隔t2は、図10に示すように、内コイル13の辺部13aと外コイル14の辺部14aを挿入しようとするステータコア11の隣接するスロット11bの周方向の間隔t1と一致するように構成される。
なお、図4の符号26で示すものは、挿通された線材8を繰出す線材操出部材26であり、符号27は、製造装置9におけるテーブル9aに設けられて、その線材操出部材26を3軸方向に移動させる移動手段27を示す。
図1に戻って、本発明におけるステータの製造装置9は、巻線機20により作製されたステータコイル12を変形させるコイル変形装置31を備える。
図1〜図3に示すように、このコイル変形装置31は、スリット32a,32bがそれぞれ形成された一対の受け渡し治具32,32と、一対の受け渡し治具32,32のいずれか一方又は双方をスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸32cを中心に回転させる回転手段33と、一対の受け渡し治具32,32を互いに離間させ又は接近させる離接手段34とを備える。
図3及び図6に示すように、巻線機20が内コイル13と外コイル14から成るステータコイル12を作製するこの実施の形態では、一対の受け渡し治具32,32に、内コイル13の辺部13a,13aが挿入する内スリット32aと外コイル14の辺部14a,14aが挿入する外スリット32bの双方がそれぞれ形成される。
一対の受け渡し治具32,32に形成されたスリット32a,32bは、巻線機20により作製されたステータコイル12の互いに平行な一対の辺部13a,14aがそれぞれ挿入可能な幅及び深さに形成される。
具体的に、図6に示すように、受け渡し治具32は、内コイル13を形成する内巻駒24aと外コイル14を形成する外巻駒25aの間L1に進入可能な長さL2を有し、それらコイル13,14の各辺部13a,14a間の所定の間隔t2を超える厚さTを有し、かつ各コイル13,14の軸方向の長さS1を超える幅S2を有する方形の板材である。そして、内スリット32aと外スリット32bの間隔t3は、内コイル13の辺部13aと外コイル14の辺部14a間における所定の間隔t2に一致させ、その幅方向の一方から幅方向に延びて互いに平行に形成され、その深さFは各コイル13,14の軸方向の長さS1を超えて形成される。
図1〜図3に示すように、コイル変形装置31における回転手段は一対の電動モータ33,33であって、一対の受け渡し治具32,32の互いの外側にはスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸32cがL型ブラケット32dを介してそれぞれ設けられる。それらの回転軸32cが、一対の電動モータ33,33のそれぞれの回転軸33aに同軸にそれぞれ設けられる。一対の電動モータ33は一対の受け渡し治具32,32に対応して設けられ、一対の受け渡し治具32,32の双方をスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸32cを中心に回転させるように構成される。
離接手段は、回転手段である一対の電動モータ33,33を互いに離間させ又は接近させる一対のアクチュエータ34,34であって、これらのアクチュエータ34,34は、サーボモータ34aによって回動駆動されるボールネジ34bと、このボールネジ34bに螺合して平行移動する従動子34cとをそれぞれ備える。
この一対のアクチュエータ34,34は、それらのハウジング34dがY軸方向に連続するように並んで可動台35に設けられ、それらの従動子34cに電動モータ33が、それらの回転軸33aがX軸方向に向いて平行になるようにそれぞれ設けられる。そして、一対のアクチュエータ34,34は、一対の電動モータ33,33を離接させることにより、それらの回転軸33aに設けられた一対の受け渡し治具32,32を離接させるように構成される。
また、本発明におけるステータの製造装置9は、コイル変形装置31を受け渡し位置と挿入位置との間で移動させる移動手段40を備える。ここで、受け渡し位置とは、図7に示すように、巻線機20により得られたステータコイル12の一対の辺部13a,14aが、コイル変形装置31の一対の受け渡し治具32,32におけるスリット32a,32bに進入する位置で有り、挿入位置とは、図9及び図10に示すように、その一対の受け渡し治具32,32がステータコア11に進入する位置である。
図1に示す様に、この実施の形態における移動手段40は、コイル変形装置31を3軸方向に移動させる3軸移動手段41とステータコア11を支持する支持具15をステータコア11と共にその軸方向に移動させるコア移動手段51とを備える。
図1〜図3に示すように、この実施の形態における3軸移動手段41は、可動台35をX軸方向に移動させるX軸方向伸縮アクチュエータ42と、そのX軸方向伸縮アクチュエータ42をコイル変形装置31とともにZ軸方向に移動させるZ軸方向伸縮アクチュエータ43と、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ43をY軸方向に移動させるY軸方向伸縮アクチュエータ44を備える。
Y軸方向伸縮アクチュエータ44は、テーブル9aにY軸方向に延びて設けられた一対のレール44dと、そのレール44dに移動可能に搭載された可動台44cと、その可動台44cに螺合してレール44dに沿って設けられたボールネジ44bと、そのボールネジ44bを回転させるサーボモータ44aとを備える。
Z軸方向伸縮アクチュエータ43は、可動台44cに上下動可能に挿通されてZ軸方向に延びる複数のロッド43dと、そのロッド43dの上端に搭載された昇降台43cと、そのロッド43dの下端に取付けられた雌ねじ板43eと、その雌ねじ板43eに螺合してロッド43dに平行に沿って設けられたボールネジ43bと、可動台33cに設けられてそのボールネジ43bを回転させるサーボモータ43aとを備える。
ここで、符号9bは、テーブル9aにY軸方向に延びて形成されて、ロッド43dが貫通してそのロッド43dのY軸方向の移動を許容する長孔9bである。
X軸方向伸縮アクチュエータ42は、回転手段である電動モータ33を移動させる離接手段におけるアクチュエータ34と同一構造であって、従動子42cがX軸方向に移動可能に、そのハウジング42dがX軸方向に延びてZ軸方向伸縮アクチュエータ43の昇降台43cに取付けられる。
このような3軸移動手段41は、コイル変形装置31を移動させて、図7に示すように、巻線機20により得られたステータコイル12の一対の辺部13a,14aを、コイル変形装置31の一対の受け渡し治具32,32におけるスリット32a,32bに進入させることにより、そのコイル変形装置31を受け渡し位置にまで案内することが可能に構成される。
一方、コア移動手段51は、図1,図10〜図14に示す様に、テーブル9aにステータコア11の軸方向(X軸方向)に延びて設けられて水平基板16をその長手方向に移動可能に搭載するレール52と、水平基板16に設けられてそのレール52に沿って移動する移動体53と、そのレール52に平行に設けられたボールネジ54と、水平基板16に設けられてボールネジ54に螺合する雌ねじ体55と、そのボールネジ54を回転させて水平基板16をステータコア11と共にレール52に沿って移動させるモータ56とを備える。
そして、このコア移動手段51は、コイル変形装置31を移動させる3軸移動手段41と協働して、図9及び図10に示すように、その一対の受け渡し治具32,32がステータコア11に進入する挿入位置までステータコア11を移動可能に構成される。
一方、コイル変形装置31には、スリット32a,32bに収納された辺部13a,14aのスリット32a,32bからの離脱を防止する防止手段70が設けられる。
図2に示すように、この実施の形態における防止手段70は、一対の受け渡し治具32の外側の面にその回転軸32cに平行に設けられた軸部材71と、その軸部材71に設けられた複数のフック部材72(図では片側3枚の場合を示す)と、それら複数のフック部材72とともに軸部材71を回転させるアクチュエータ73とを備える。
この実施の形態におけるアクチュエータはモータ73であって、そのアクチュエータ73は、回転手段である電動モータ33の回転軸33aに設けられた取付板74に取付けられ、フック部材72が設けられた受け渡し治具32には、スリット32a,32bの入り口側を横断するような切り欠き32eが形成される。
図6に示すように、この実施の形態におけるフック部材72は、L字状を成す平板であって、取付部72aと覆い部72bが形成され、取付部72aが軸部材71に取付けられる。
一方、覆い部72bは、図7及び図10に示すように、軸部材71の回転により切り欠き32eに進入し、スリット32a,32bの入り口側を横断して、スリット32a,32bに収納された辺部13a,14aがそのスリット32a,32bから抜け出すことを防止するように構成される。
そして、コイル変形装置31における回転手段33及び離接手段34は、このように、スリット32a,32bに辺部13a,14aが離脱不能に収納された一対の受け渡し治具32,32を回転させ及び離接させて、図8に示すように、スリット32a,32bの深さ方向が交差する傾斜位置にすることにより、このコイル変形装置31は、その辺部13a,14aを有するステータコイル12を変形可能に構成される。
このステータコイル12の変形時に、コイル変形装置31の回転手段33,33(図1)は、図10に示す様に、回転させた傾斜位置の受け渡し治具32におけるスリット32a,32bの角度α1を一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11bの角度α2に合わせ、コイル変形装置31の離接手段34(図1)は、一対の受け渡し治具32におけるスリット32a,32bの開口部間の間隔d1,d2を一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11b間の間隔D1,D2に合わせられるように構成される。
ここで、巻線機20が内コイル13と外コイル14から成るステータコイル12を作製するこの実施の形態において、辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11bの角度α2は、ステータコイル12の辺部13a,14aを挿入しようとするステータコア11の隣接する二つのスロット11bの中間線における角度α2とされる。
そして、コイル変形装置31を移動させる移動手段40は、その一対の受け渡し治具32,32を更に移動させて、ステータコア11に進入する挿入位置で、図11に示すように、スリット32a,32bの開口部を一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11bの開口部に対向可能に構成される。
また、図1及び図13に示すように、本発明におけるステータの製造装置9は、スリット32a,32bに挿入されたステータコイル12の各辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出して、そのスリット32a,32bが対向するステータコア11のスロット11bに挿入する辺部挿入手段61を備える。
この実施の形態における辺部挿入手段61は、挿入位置の受け渡し治具のスリット32a,32bに対応して配置され先端に向かうほど幅狭となる板状のプッシャ62と、そのプッシャ62を対応するスリット32a,32bに先端から挿入し、そのスリット32a,32bに挿入されたステータコイル12の各辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出してそれぞれ対応するスロット11bに挿入するように構成されたプッシャ移動手段63を備える。
具体的に、プッシャ移動手段63は、コア移動手段51におけるレール52に移動可能に搭載された可動体64と、その可動体64に螺合されてレール52に平行に設けられたボールネジ65と、そのボールネジ65を回転させて可動体64を移動させるモータ66とを備える。
図13に示すように、この可動体64にプッシャ62の基端が設けられ、プッシャ移動手段63は、可動体64を水平基板16に接近させることにより、水平基板16のステータコア11に挿入された受け渡し治具32,32のスリット32a,32bにプッシャ62を幅狭の先端から挿入可能に構成される。
そして、スリット32a,32bに挿入されるプッシャ62は、先端に向かうほど幅狭に形成されることにより、図14に示すように、プッシャ62がそのスリット32a,32bに挿入されると、ステータコイル12の各辺部13a,14aをそのスリット32a,32bから押出して、そのスリット32a,32bが対向するステータコア11のスロット11bに挿入可能に構成される。
次に、本発明のステータの製造方法について説明する。
本発明のステータの製造方法は、線材8を巻回して互いに平行な一対の辺部13a,14aを有するステータコイル12を作製するコイル作製工程と、一対の受け渡し治具32,32にそれぞれ形成されたスリット32a,32bを平行にして一対の辺部13a,14aを互いに平行な状態でそれぞれのスリット32a,32bに挿入させる受け渡し工程と、一対の受け渡し治具32,32のいずれか一方又は双方をスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸を中心に回転させてスリット32a,32bを辺部13a,14aと共にステータコア11の挿入しようとするスロット11bの角度に合わせるコイル変形工程と、スリット32a,32bの開口部の間隔を一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロットの間隔に合わせる治具離接工程と、一対の受け渡し治具32,32をステータコア11内に進入させてスリット32a,32bの開口部をスロット11bの開口部に対向させる治具挿入工程と、スリット32a,32bに挿入されたステータコイル12の辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出してステータコア11の対応するスロット11bに挿入する辺部挿入工程とを有する。
この実施の形態では、上記ステータの製造装置9を用い、そのステータの製造装置9における動作は、図示しないコントローラによって自動制御されるものとする。
以下に各工程を詳説する。
<コイル作製工程>
このコイル作製工程にあっては、線材8を巻回して互いに平行な一対の辺部13a,14aを有するステータコイル12を作製する。
上記ステータの製造装置9を用いるこの実施の形態では、その巻線機20が、図6に示すように、内コイル13と、その内コイル13を外側から包囲する外コイル14から成るステータコイル12を作製するものであるので、このコイル作製工程では、内コイル13を作製する内巻工程と外コイル14を作製する外巻工程を有し、その内コイル13と外コイル14から成るステータコイル12を作製することになる。
具体的に、内巻工程にあっては、図5に示すように、回転手段21(図4)により内巻芯24を回転させて線材操出部材26から繰出される線材8を内巻芯24の周囲に巻回させて内コイル13を作製する。この内巻芯24の回転とともに線材操出部材26を内巻芯24の回転軸方向に移動させて、線材操出部材26から繰出される線材8を、内巻芯24に螺旋状に整列させて巻回させる。
このようにして、この内巻工程において、内巻駒24aに掛け回される線材8から成るコイルエンド部13bと、一対の掛け回し柱22,23との間に掛け渡される線材8から成る辺部13aを有するトラック状の内コイル13を作製する。
次に、内コイル13とともに内巻芯24を外巻芯25により包囲する。外巻芯25を移動可能に構成した上記巻線機20を用いるこの実施の形態では、外巻芯25を図4に示す待機位置から下方に移動させて、図6に示すように、内コイル13を包囲する包囲位置にまで移動させる。このようにして、その外巻駒25aにより内コイル13のコイルエンド部13bを覆い、その後に外巻工程を行う。
この外巻工程にあっては、内巻芯24とともに外巻芯25を回転させて線材操出部材26から繰出される線材8を外巻芯25の周囲に巻回させて外コイル14を作製する。そして、3軸移動手段27は、外巻芯25の回転とともに線材操出部材26を外巻芯25の回転軸方向に移動させて、線材操出部材26から繰出される線材8を、外巻芯24に螺旋状に整列させて巻回させる。
このようにして、図6に示すように、この外巻工程において、外巻駒25aに掛け回される線材8から成るコイルエンド部14bと、一対の掛け回し柱22,23との間に掛け渡される線材8から成る辺部14aを有するトラック状の外コイル14を作製する。
ここで、外巻芯25における外巻駒25aは、内コイル13のコイルエンド部13bを外側から覆うように構成されているので、この外巻駒25aに掛け回された線材8から成る外コイル14は内コイル13を外側から包囲するような大きさのものとなり、内コイル13と外コイル14のそれぞれの辺部13a、14aにおける間隔t2を、それらの辺部13a、14aが後に挿入されることになるステータコア11の隣接するスロット11bの周方向の間隔t1(図10)と一致させておく。
<受け渡し工程>
この工程では、一対の受け渡し治具32,32にそれぞれ形成されたスリット32a,32bを平行にして一対の辺部13a,14aを互いに平行な状態でそれぞれのスリット32a,32bに挿入させる。
上記ステータの製造装置9を用いるこの実施の形態では、コイル変形装置31における回転手段33において、図6に示すように、一対の受け渡し治具32,32を互いに平行にし、その離接手段34により一対の受け渡し治具32,32の互いの間隔をステータコイル12における辺部13a,14a間の間隔に一致させる。
その後、移動手段40の3軸移動手段41によりコイル変形装置31を移動させて、図7に示すように、その一対の受け渡し治具32,32にそれぞれ形成されたスリット32a,32bに一対の辺部13a,14aを互いに平行な状態でそれぞれ挿入させる。
この実施の形態では、巻線工程において内及び外コイル13,14から成るステータコイル12が得られるので、この受け渡し工程において、内コイル13の辺部13aが挿入する内スリット32aと外コイル14の辺部14aが挿入する外スリット32bの双方がそれぞれ形成された一対の受け渡し治具32,32を用い、その内スリット32aと外スリット32bに内コイル13の辺部13aと外コイル14の辺部14aを互いに平行な状態で挿入させる。
また、スリット32a,32bに収納された辺部13a,14aのスリット32a,32bからの離脱を防止する防止手段70がコイル変形装置31に備えられているので、一対の受け渡し治具32,32にそれぞれ形成されたスリット32a,32bに一対の辺部13a,14aを互いに平行な状態でそれぞれ挿入させた後に、その防止手段70のアクチュエータ73(図2)によりフック部材72とともに軸部材71を回転させて、図7に示すように、フック部材72の覆い部72bを切り欠き32eに進入させ、その覆い部72bによりスリット32a,32bの入り口側を横断させる(図10)。
このようにして、その覆い部72bにより、スリット32a,32bに収納された辺部13a,14aがそのスリット32a,32bから抜け出すことを防止する。
その状態で、移動手段40における3軸移動手段41は、辺部13a,14aが挿入されたステータコイル12と共にコイル変形装置31を更に移動させ、そのステータコイル12を内巻芯24及び外巻芯25から離脱させる。
この内コイル13と外コイル14を内巻芯24及び外巻芯25から離脱させる手順を具体的に説明すると、スリット32a,32bに一対の辺部13a,14aが挿入されて、それらの形状を維持させたならば、次に、線材操出部材26から新たに線材8が繰出されることを禁止し、線材操出部材26から外コイル14に延びる線材8を図示しない切断装置等により切断する。これによりステータコイル12を線材操出部材26から独立させる。そして、形状が維持された内コイル13と外コイル14を、一対の受け渡し治具32,32と共に下方に移動して、一対の掛け回し柱22,23の解放された下端面より下方に抜き出す。
そして、移動手段40により、図1に示す様に、ステータコイル12とともにコイル変形装置31を巻線機20から離間させておく。
<コイル変形工程>
この工程では、一対の受け渡し治具32,32のいずれか一方又は双方をスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸32cを中心に回転させて、スリット32a,32bをそこの挿入された辺部13a,14aと共にステータコア11の挿入しようとするスロット11bの角度α2に合わせる。
上記ステータの製造装置9を用いるこの実施の形態では、コイル変形装置31における回転手段である一対の電動モータ33,33をそれぞれ駆動して、図8に示すように、一対の受け渡し治具32,32の双方をスリット32a,32bの長手方向に平行な回転軸を中心に実線矢印で示すように回転させ、そのスリット32a,32bに挿入された辺部13a,14aと共にスリット32a,32bの深さ方向が交差する交差位置に変更させる。
このようにして、図10に示すように、スリット32a,32bの傾斜角度α1を辺部13a,14aと共にステータコア11の挿入しようとするスロット11bの角度α2に合わせ、そのスリット32a,32bに挿入された辺部13a,14aの積層方向をスロット11bの角度α2に合わせる。
<治具離接工程>
この工程では、図10に示すように、一対の受け渡し治具32,32におけるスリット32a,32bの開口部間の間隔d1,d2をそのスリット32a,32bに挿入された一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11bの間隔D1,D2に合わせる。
スリット32a,32bの深さ方向に一対の受け渡し治具32,32におけるL型ブラケット32dが設けられたこの実施の形態では、コイル変形装置31の離接手段34により一対の受け渡し治具32,32が設けられた一対の電動モータ33の間隔を接近させることにより、図8の破線矢印で示すように一対の受け渡し治具32,32を互いに近づける。これにより、図10に示すように、スリット32a,32bの開口部間の間隔d1,d2を変更させて、そのスリット32a,32bに挿入された一対の辺部13a,14aを挿入しようとするスロット11bの間隔D1,D2に一致させる。
なお、この治具離接工程は、コイル変形工程と同時に行うことが好ましい。
そして、このコイル変形工程と治具離接工程によりステータコイル12は、図10に示すように、その辺部13a,14aが巻回方向において間隔が異なる(図ではハの字状)ことになる。けれども、コイル12の各辺部13a,14aはスリット32a、32bにそれぞれ挿入されているので、図8に示すように、コイルエンド部13b,14bが主にそれぞれ変形することになる。このため、コイル変形装置31を用いることにより、ステータコイル12を変形させることに際して、その各辺部13a,14aにおける線材8の整列性が損なわれるようなことを防止することができる。
<治具挿入工程>
この工程では、一対の受け渡し治具32,32をステータコア11内に進入させて、図図11に示すように、スリット32a,32bの開口部をスロット11bの開口部に対向させる。
具体手に、この治具挿入工程は、上記ステータの製造装置9における移動手段40により行われ、その3軸移動手段41及びコア移動手段51によりコイル変形装置31及びステータコア11のいずれか一方又は双方を移動させて、図9及び図10に示すように、水平基板16に搭載されたステータコア11に一対の受け渡し治具32,32を進入させる。
このように一対の受け渡し治具32,32がステータコア11に進入した挿入位置で、3軸移動手段41はコイル変形装置31を更に移動させて、図11に示すように、そのスリット32a,32bの開口部をそのスリット32a,32bに挿入された一対の辺部13a,14aを、挿入しようとするスロット11bの開口部に対向させる。
その後、防止手段70におけるアクチュエータ73を駆動させて軸部材71を回転させ、フック部材72における覆い部72bを切り欠き32eから離脱させて、スリット32a,32bの入り口側を解放させておく。
<辺部挿入工程>
この工程では、スリット32a,32bに挿入されたステータコイル12の辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出してステータコア11の対応するスロット11bに挿入する。
上記ステータの製造装置9を用いるこの実施の形態では、その辺部挿入手段61により行われ、図12に示すように、可動体64を水平基板16に接近させることにより、水平基板16に搭載されたステータコア11に挿入された受け渡し治具32のスリット32a,32bにプッシャ62を先端から挿入する。このように、挿入位置の受け渡し治具32のスリット32a,32bに対応して配置され先端に向かうほど幅狭となる板状のプッシャ62を対応するスリット32a,32bに先端から挿入し、図13に示すように、そのスリット32a,32bに挿入されたステータコイル11の辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出してそれぞれ対応するスロット11bに挿入する。
図14に示すように、スリット32a,32bから押出されて対応するスロット11bに挿入された辺部13a,14aは、スリット32a,32bの挿入された線材8の状態を維持しつつ移動して、そのままスロット11bに挿入されることから、その辺部13a,14aにおける線材8が整列巻線されていたならば、その整列巻線された線材8の状態で対応するスロット11bに挿入されることに成り、整列された線材8から成る辺部13a,14bをステータコア11(図16及び図17)のスロット11bにそのまま挿入することが可能になる。
上記ステータの製造装置9における巻線機20では、内コイル13と外コイル14から成るステータコイル12を得るとしており、それらが整列巻線されていれば、その状態のままでコイル12を受け渡すことになり、整列状態の辺部13a,14bをステータコア11のスロット11bにそのまま挿入することが可能になる。
すると、スロット11bにおける線材8の占積率を向上させることが可能となり、このステータ10を用いる発電機やモータの高効率化や小型化などを図ることが可能となる。
また、図15に示すように、内コイル13と外コイル14の辺部13a,14aの間隔D1,D2は異なるので、それらの辺部13a,14bを別々のスロット11bに挿入しても、外コイル14のコイルエンド部14bを超えて、内コイル13のコイルエンド部13bがコア11の端面から突出するようなことはない。このため、その内コイル13のコイルエンド部13bが外コイル14のコイルエンド部14bと重合して、それらコイルエンド部13b,14bの成形が困難になる様な事態を回避することもできる。
なお、ステータ10は、単一のステータコア11に複数のステータコイル12を組み込むことにより製造されるので、ステータコア11を回転させてスリット32a,32bの開口部が対向するスロット11bを変更させるコア回転工程を介して、上記各工程を繰り返すことが好ましい。
このステータコア11の回転は、固定具19によるステータコア11の挟持を解消させた状態で、支持具15におけるローラ17をモータ18により回転させることにより行うことができる。
このように、スリット32a,32bの開口部が対向するスロット11bを変更させた上で、上記各工程を繰り返すことにより、図17に示すように、単一のステータコア11に複数のステータコイル12を組み込むことが可能となる。そして、コイル変形工程から辺部挿入工程の間に、コイル作製工程を行うことにより、ステータ10を製造する時間を短縮させて、生産性を向上させることも可能となる。
なお、上述した実施の形態では、移動手段40として、3軸移動手段41とコア移動手段51とを備えるものを例示したけれども、一対の受け渡し治具32,32を受け渡し位置と挿入位置との間で移動させ得る限り、移動手段40はこれらに限られるものではなく、例えば、コア移動手段51を備えないようなものであっても良い。
また、上述した実施の形態では、プッシャ62を対応するスリット32a,32bに挿入することにより、ステータコイル12の辺部13a,14aを対応するスロット12bに挿入する辺部挿入手段61を説明したけれども、ステータコイル12の辺部13a,14aを対応するスロット12bに挿入し得る限り、辺部挿入手段はこれに限られるものではない。例えば、スリット32a,32bに挿入されたプッシャをステータコア11の径方向に移動させ、それによりステータコイル12の辺部13a,14aをスリット32a,32bから押出す様にしても良い。
更に、上述した実施の形態では、フック部材72を有する防止手段70を説明したけれども、スリット32a,32bに収納された辺部13a,14aのスリット32a,32bからの離脱を防止しうる限り、この防止手段70はこれに限るものではない。例えば、辺部13a,14aのスリット32a,32bからの離脱が生じないようであれば、防止手段70を設ける必要は無く、設けるとしても、フック部材72を用いないようなものであっても良い。
8 線材
9 ステータの製造装置
11 ステータコア
11b スロット
12 ステータコイル
13 内コイル
13a 辺部
14 外コイル
14a 辺部
15 支持具
20 巻線機
31 コイル変形装置
32 受け渡し治具
32a 内スリット
32b 外スリット
33 電動モータ(回転手段)
34 アクチュエータ(離接手段)
40 移動手段
61 辺部挿入手段
70 防止手段
α2 辺部を挿入しようとするスロットの角度
d1,d2 スリットの開口部の間隔
D1,D2 辺部を挿入しようとするスロットの間隔
t2 内コイルと外コイルの所定の間隔
t3 スリットの所定の間隔

Claims (9)

  1. 互いに平行な一対の辺部(13a,14a)を有するコイル(12)の前記辺部(13a,14a)が挿入可能なスリット(32a,32b)がそれぞれ形成された一対の受け渡し治具(32,32)と、
    前記スリット(32a,32b)の深さ方向を平行にして前記一対の辺部(13a,14a)を互いに平行な状態で挿入可能な平行位置と前記スリット(32a,32b)の深さ方向が交差する傾斜位置との間で前記一対の受け渡し治具(32,32)のいずれか一方又は双方を回転させる回転手段(33,33)と、
    前記一対の受け渡し治具(32,32)を互いに離間させ又は接近させる離接手段(34)と
    を備えたコイル変形装置。
  2. スリット(32a,32b)に収納された辺部(13a,14a)の前記スリット(32a,32b)からの離脱を防止する防止手段(70)を備えた請求項1記載のコイル変形装置。
  3. 一対の受け渡し治具(32,32)のそれぞれにスリット(32a,32b)が所定の間隔(t3)を置いて複数形成された請求項1又は2記載のコイル変形装置。
  4. ステータコア(11)を支持する支持具(15)と、
    線材(8)を巻回して前記ステータコア(11)のスロット(11b)に挿入される互いに平行な一対の辺部(13a,14a)を有するステータコイル(12)を作製する巻線機(20)と、
    請求項1ないし3いずれか1項に記載のコイル変形装置(31)と、
    前記一対の辺部(13a,14a)がスリット(32a,32b)に進入する受け渡し位置と一対の受け渡し治具(32,32)が前記ステータコア(11)に進入する挿入位置との間で前記コイル変形装置(31)を移動させる移動手段(40)と、
    前記スリット(32a,32b)に挿入された前記辺部(13a,14a)を前記スリット(32a,32b)から押出して前記スリット(32a,32b)が対向する前記スロット(11b)に挿入する辺部挿入手段(61)と
    を備え、
    前記コイル変形装置(31)の回転手段(33,33)は傾斜位置で前記スリット(32a,32b)を前記一対の辺部(13a,14a)を挿入しようとする前記スロット(11b)の角度(α2)に合わせ、
    前記コイル変形装置(31)の離接手段(34)は前記スリット(32a,32b)の開口部の間隔(d1,d2)を前記一対の辺部(13a,14a)を挿入しようとする前記スロット(11b)の間隔(D1,D2)に合わせ、
    前記移動手段(40)は挿入位置で前記スリット(32a,32b)の開口部を前記一対の辺部(13a,14a)を挿入しようとする前記スロット(11b)の開口部に対向させるように構成された
    ことを特徴とするステータの製造装置。
  5. 請求項3記載のコイル変形装置(31)を用い、
    巻線機(20)は、筒状の内コイル(13)と、前記内コイル(13)を外側から所定の間隔(t2)を置いて包囲する外コイル(14)から成るステータコイル(12)を作製可能に構成された
    請求項4記載のステータの製造装置。
  6. 支持具(15)がステータコア(11)を回転可能に構成された請求項4又は5記載のステータの製造装置。
  7. 線材(8)を巻回して互いに平行な一対の辺部(13a,14a)を有するステータコイル(12)を作製するコイル作製工程と、
    一対の受け渡し治具(32,32)にそれぞれ形成されたスリット(32a,32b)を平行にして前記一対の辺部(13a,14a)を互いに平行な状態でそれぞれの前記スリット(32a,32b)に挿入させる受け渡し工程と、
    前記一対の受け渡し治具(32,32)のいずれか一方又は双方を回転させて前記スリット(32a,32b)を前記辺部(13a,14a)と共にステータコア(12)の挿入しようとするスロット(11b)の角度(α2)に合わせるコイル変形工程と、
    前記スリット(32a,32b)の開口部の間隔(d1,d2)を前記一対の辺部(13a,14a)を挿入しようとする前記スロット(11b)の間隔(D1,D2)に合わせる治具離接工程と、
    前記一対の受け渡し治具(32,32)を前記ステータコア(12)内に進入させて前記スリット(32a,32b)の開口部を前記スロット(11b)の開口部に対向させる治具挿入工程と、
    前記スリット(32a,32b)に挿入された前記ステータコイル(12)の辺部(13a,14a)を前記スリット(32a,32b)から押出して前記ステータコア(11)の対応する前記スロット(11b)に挿入する辺部挿入工程と
    を有するステータの製造方法。
  8. コイル作製工程において、内コイル(13)と、前記内コイル(13)を外側から所定の間隔(t2)を置いて包囲する外コイル(14)から成るステータコイル(12)を作製し、
    受け渡し工程において、前記内コイル(13)の辺部(13a)が挿入する内スリット(32a)と前記外コイル(14)の辺部(14a)が挿入する外スリット(32b)の双方がそれぞれ形成された一対の受け渡し治具(32,32)の前記内スリット(32a)と前記外スリット(32b)に前記内コイル(13)の辺部(13a)と前記外コイル(14)の辺部(14a)を互いに平行な状態で挿入させる
    請求項7記載のステータの製造方法。
  9. ステータコア(11)を回転させてスリット(32a,32b)の開口部が対向するスロット(11b)を変更させるコア回転工程を介して請求項7又は8記載の各工程を繰り返すステータの製造方法。
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