以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1〜図15を参照して、本実施形態による外殻トンネル用搬送装置100の構成について説明する。
(外殻トンネル用搬送装置の全体構成)
図1および図2に示すように、外殻トンネル用搬送装置100は、地下構造物1の外周に複数の外殻トンネル2を構築するために使用される掘削機(シールド機5)および掘削に必要な資機材6を地下構造物1の周方向(C方向)に搬送する搬送装置である。ここで、地下構造物1の外周とは、鉛直方向に沿う断面(縦断面)における外周を意味し、周方向は縦断面において地下構造物1の周囲を回る方向である。
地下構造物1は、地下に構築される構造物であれば特に限定されない。地下構造物1は、地下において概ね水平方向に拡がる空間として構築される。地下構造物1が構築される空間を防護するために、地下構造物1に沿って概ね水平に延びる外殻トンネル2が、地下構造物1の外周(上下左右)を取り囲むように構築される。
本実施形態では、地下構造物1は、本線トンネル1aおよび支線トンネル1bを含む複数のトンネルである例を示す。この例では、車両や鉄道などの幹線トンネルの合流部(または分流部)を示しており、図1は本線トンネル1aと、他の幹線道路から分岐したランプ道路である支線トンネル1bとの合流部を示している。合流部には、たとえば数百mにわたって加速帯が形成される。本線トンネル1aおよび支線トンネル1bは、施行完了または施工中のものであり、少なくとも後述する円周発進基地3の構築位置では施行が完了している。外殻トンネル2は、本線トンネル1aおよび支線トンネル1bの合流部および加速帯を含む範囲にわたって延びるように形成される。
地下構造物1(本線トンネル1aおよび支線トンネル1b)の外周には、周囲を取り囲むように環状に形成された円周発進基地3が設けられている。円周発進基地3は、特許請求の範囲の「外殻トンネル発進基地」の一例である。円周発進基地3は、地下構造物1の外周を取り囲む円形状(円環状)の縦断面を有する空間部である。円周発進基地3は、支線トンネル1bから横坑4を利用して掘削構築されたものである。また、円周発進基地3は、本線トンネル1aより横坑4を利用して掘削構築されることもある。円周発進基地3は、図示しない発進基地用のシールド掘削機などにより、矩形断面(図1参照)の環状トンネルとして構築される。
外殻トンネル2は、円周発進基地3から掘進が開始され、地下構造物1(本線トンネル1aおよび支線トンネル1b)に沿って延びるように形成されるトンネルである。つまり、外殻トンネル2の掘進方向(E方向)は、本線トンネル1aおよび支線トンネル1bの延びる方向と概ね平行である。外殻トンネル2は、本線トンネル1aおよび支線トンネル1bを包むように円周状に並んで複数構築される外殻トンネル群TGとして構成される。本実施形態では、たとえば最初に先行の18本の外殻トンネル2が構築され、18本の外殻トンネル2の間の位置に、さらに後行の18本の外殻トンネル(図示せず)が構築される。各外殻トンネル2は、円形断面を有し、周方向に等角度間隔で配置されている。各外殻トンネル2は、コンクリートなどが充填されることにより、最終的に地下構造物1の外周防護用の構造体として構成される。なお、以下では、先行の18本の外殻トンネル2の構築についてのみ説明し、後行の外殻トンネルについての説明は同様であるので省略する。18本の外殻トンネル2について、図2に示すように反時計方向に1番〜18番の番号を付して説明する。18番が横坑4の位置に配置されている。
外殻トンネル群TGを構成する各外殻トンネル2は、円周発進基地3を利用してそれぞれの発進位置に周方向に搬送されたシールド機5により構築される。本実施形態の外殻トンネル用搬送装置100は、円周発進基地3に設けられ、外殻トンネル2を掘削するシールド機5、および掘削等工事に必要な資機材6を周方向に搬送する。シールド機5は、特許請求の範囲の「掘削機」の一例である。シールド機5は、掘削断面(ここでは円形)に応じた形状のシールド部を推進させて地盤を掘進するとともに、セグメント7を環状に組み立ててトンネル内壁を構築しながら進行する掘削機である。資機材6は、たとえばセグメント7を含み、シールド機5を駆動するための発動機、油圧ユニット、制御ユニットなどの各種機材を含んでもよい。
本実施形態では、外殻トンネル用搬送装置100は、外殻トンネル2の掘進方向(E方向)に沿って隣接する第1周方向走路11および第2周方向走路12(図1参照)と、第1周方向走路11を走行する複数のシールド用搬送装置21と、第2周方向走路12を走行する複数の資機材用搬送装置22(図1参照)とを備える。シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1搬送装置」および「第2搬送装置」の一例である。なお、以下では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22をまとめて、自走式搬送装置20という場合がある。
上記の通り、外殻トンネル用搬送装置100は、円周発進基地3内に設置されている。第1周方向走路11および第2周方向走路12は、共に、地下構造物1の外周で周方向(C方向)に沿って延びるように形成されている。すなわち、第1周方向走路11および第2周方向走路12は、円周発進基地3の内部で掘進方向に並んで配置され、円周発進基地3に沿って円周状(円環状)に形成されている。本実施形態では、第1周方向走路11が掘進方向(E方向)の前列に配置され、第2周方向走路12が掘進方向の後列に配置されている。
図2に示すように、第1周方向走路11および第2周方向走路12は、それぞれ、周方向(C方向)に延びるレール13を含んでいる。具体的には、第1周方向走路11および第2周方向走路12は、それぞれ、外周側に配置された複数本(ここでは各2本)の外側レール13aと、内周側に配置された複数本(ここでは各2本)の内側レール13bと、を含む。外側レール13aは、円周発進基地3の内部の外周側壁面(セグメント)に設置され、内側レール13bは、円周発進基地3の内部の内周側壁面(セグメント)に設置されている。
本実施形態では、複数のシールド用搬送装置21は、第1周方向走路11を、周方向(C方向)に互いに独立して走行するように構成されている。同様に、複数の資機材用搬送装置22は、第2周方向走路12を、周方向に互いに独立して走行するように構成されている。図2に示すように、各シールド用搬送装置21は、互いに独立して第1周方向走路11を走行し、シールド機5を1番位置〜18番位置のいずれかの外殻トンネル2に搬送できる。すなわち、複数のシールド用搬送装置21は、掘進方向(E方向)の前列に配置された第1周方向走路11において、それぞれシールド機5を搬送する。各資機材用搬送装置22は、第2周方向走路12を走行し、資機材6を1番〜18番のいずれかの外殻トンネル2に搬送できる。複数の資機材用搬送装置22は、掘進方向の後列に配置された第2周方向走路12において、それぞれ資機材6を搬送する。そして、資機材用搬送装置22は、シールド用搬送装置21と掘進方向に並ぶ位置で資機材6をシールド用搬送装置21に受け渡すように構成されている。
ここでは、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22が4つずつ設けられている例を示すが、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の数は、特に限定されない。また、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の数は同数でなくてよく、たとえば資機材用搬送装置22の方がシールド用搬送装置21よりも多くてもよい。
(自走式搬送装置の構成)
図3は、円周発進基地3内でのシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の側面図(周方向から見た図)を示す。図4(A)および(B)は、それぞれシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の正面図(掘進方向から見た図)である。
シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、共に、搬送対象を載置可能な本体部30と、本体部30を支持してレール13上を走行する支持装置40とを備える。
シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、本体部30の内部に設置した水平維持機構33(図4参照)上にシールド機5または資機材6を搭載し、本体部30に設置した支持装置40により円周発進基地3内の内側レール13b、外側レール13aを支持体として走行移動する。
図4および図5に示すように、それぞれの本体部30は、骨組み構造を有する。本体部30は、中央の骨組み構造の環状構造体31と、環状構造体31から側方(周方向左右)にそれぞれ張り出した骨組み構造の張出構造体32と、を含む。環状構造体31の内部には、水平維持機構33が設けられている。環状構造体31の内側には、水平維持機構33を介してシールド機5または資機材6を搭載することができる。水平維持機構33は、自走式搬送装置が周方向(C方向)の移動により360度姿勢が変化する際に環状構造体31の内周面に沿って相対移動し、搬送するシールド機5、資機材6を水平に保つことができる。
〈水平維持機構〉
水平維持機構33の構成例を図6(A)および(B)に示す。図6(A)において、シールド用搬送装置21の水平維持機構33は、支持ローラ35を備えたシールド架台34を有する。シールド架台34は、円筒状のシールド機5の外周面を支持可能に構成されている。
支持ローラ35は、環状構造体31の内周面に沿って複数配列されている。シールド架台34は、支持ローラ35を介して、環状構造体31の内側で内周面に沿って自由に回転移動することが可能である。なお、支持ローラ35には、スラスト方向(ローラ軸方向)への移動を抑制するためサイドローラ(図示せず)が複数個設置されている。複数の支持ローラ35の列の端部には、ローラ駆動装置36が設けられている。ローラ駆動装置36は、駆動ローラ37を回転駆動して、シールド架台34を環状構造体31の内周面に沿って移動させることができる。即ち、シールド用搬送装置21の各移動位置(図2参照)において、電気制御システム(図示せず)の姿勢計算に基づくローラ駆動装置36の制御によって、水平維持機構33(シールド架台34)が水平になるように維持される。なお、シールド架台34および搬送対象の自重により、水平維持機構33は各移動位置において概ね水平に近い状態に保持される。ローラ駆動装置36は、重心位置のずれなどによってシールド架台34が水平から若干ずれる場合に作動して、水平からのずれを補正する微調整を行う。このように、水平維持機構33は、ローリング方向(掘進方向を回転軸とする回転方向)の姿勢調整機能を有する。
図6(B)に示す資機材用搬送装置22では、シールド架台34に代わり、資機材を搬送できるよう平坦な資機材搬送架台38が設けられている。その他の点は、シールド用搬送装置21と同様である。
〈支持装置〉
図4に示したように、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の支持装置40は、環状構造体31の両側に張出した張出構造体32にそれぞれ設けられている。各張出構造体32において、支持装置40は、外側レール13aおよび内側レール13bに対応して、内周側および外周側にそれぞれ設けられている。図3に示したように、支持装置40は、掘進方向(E方向)前側の外側レール13aおよび内側レール13bと、掘進方向後側の外側レール13aおよび内側レール13bとに、それぞれ設けられている。
支持装置40の構成例を図7(A)〜図7(D)に示す。本実施形態では、支持装置40は、レール13上を回転する車輪42を有する支持部41と、本体部30と支持部41との間でレール13に向かう方向に伸縮可能な伸縮機構43とを含む。支持装置40は、支持部41に設けられた車輪42によって、外側レール13aおよび内側レール13b上を走行することができる。
図7(A)および図7(B)に示すように、支持部41は、周方向(移動方向)の両端部に、それぞれ車輪42を回転自在に保持している。車輪42は、レール13(外側レール13aまたは内側レール13b)上で回転することにより、支持部41をレール13に沿って移動させる。支持部41の周方向の中央には、支持ピン44を介して張出構造体32に接続されている。支持ピン44により、張出構造体32に対して、支持部41および車輪42が傾斜することが可能である。つまり、レール13(外側レール13aおよび内側レール13b)の湾曲に沿って、支持部41および車輪42が角度を変化させながら移動することができる。これにより、自走式搬送装置20が走行する際に、レール13の表面粗さや撓み、円周発進基地3自体の歪みを吸収することができる。なお、支持装置40には、車輪42のスラスト方向(車輪軸方向)への移動を抑制するためサイドローラ(図示せず)が複数個設置されている。また、サイドローラを設けず、車輪42をつば付き車輪(車輪軸方向の端部に、径方向外側に拡がるつば部を有する車輪)とすることで、同様の効果を得ることも可能である。
図7(C)および図7(D)に示すように、伸縮機構43は、支持ピン44と張出構造体32の取付部との間に配置されている。つまり、伸縮機構43は、一端が本体部30(張出構造体32)に取り付けられ、他端が支持ピン44に取り付けられている。伸縮機構43は、たとえば油圧シリンダにより構成され、油圧によって伸縮可能に構成されている。伸縮機構43は、支持部41(車輪42)を、概ね一定の力で走路側(内側レール13b側または外側レール13a側)に付勢するように油圧制御されている。これにより、車輪42とレール13との接触状態が安定して維持される。
ここで、たとえば円周発進基地3が内径約32m、外径約40m、高さ(内側レール−外側レール間距離に相当)4m程度とした場合、外側レール13aと内側レール13bとを完全な同心円として構成するのは困難であり、周方向位置によってレール間の間隔が変化する。その場合でも、外側レール13aと内側レール13bとの間隔が変化すると、間隔の変化に応じて伸縮機構43が伸縮して、各レール13に対する車輪42の押圧力が一定に維持される。伸縮機構43により、内側レール13b、外側レール13aの設置スパン誤差(内面間距離)を吸収して安定した走行が可能となる。
〈走行駆動機構〉
図8〜図10は、自走式搬送装置の走行駆動機構50の構成例を示す。本実施形態では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、共に、本体部30を周方向(C方向)に駆動する走行駆動機構50を備えている。すなわち、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、自走式の搬送装置として構成されている。シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、それぞれ複数の走行駆動機構50を備えている。なお、図8〜図11では、シールド用搬送装置21の走行駆動機構50について図示しているが、資機材用搬送装置22の走行駆動機構50も同一構成を有するため省略する。
図8に示すように、走行駆動機構50は、外側レール13aおよび内側レール13bの各々と係合するように本体部30の外周側および内周側にそれぞれ設けられている。また、図9に示すように、走行駆動機構50は、複数(2本)の外側レール13aの各々、および複数(2本)の内側レール13bの各々と係合するように、掘進方向(E方向)における本体部30の前側および後側にそれぞれ設けられている。
図8に示したように、走行駆動機構50は、第1周方向走路11または第2周方向走路12と係合および係合解除可能なロック機構51と、本体部30とロック機構51との間で周方向に伸縮可能な駆動シリンダ機構52とを含む。
駆動シリンダ機構52は、たとえば油圧シリンダにより構成されている。駆動シリンダ機構52は、一端(シリンダ側)が本体部30に取り付けられ、他端(ロッド側)がロック機構51を介してレール13(外側レール13aまたは内側レール13b)に係合している。具体的には、環状構造体31の一部に接続架台31aが設けられている。接続架台31aは、駆動シリンダ機構52の本体(シリンダ)を回動可能にピン支持している。駆動シリンダ機構52のロッド先端には、ロック機構51が回動可能にピン支持されている。駆動シリンダ機構52は、ロッドの伸縮によって、ロック機構51を本体部30(接続架台31a)に対して近づけ、または離れさせることができる。
図10に示すように、ロック機構51は、複数のローラ53により走行可能な状態で、外側レール13aまたは内側レール13bに支持されている。外側レール13aおよび内側レール13bは、たとえば、H字状断面を有し、側面に板部材が設けられている。ロック機構51は、レール13の上面の両縁部近傍にそれぞれ配置されたローラ53と、開放された側面側で、上面側のローラ53と対向する反対面側に配置されたローラ54とを含む。上面側のローラ53は、ロック機構51をレール13上で安定して走行させる機能を有し、反対面側のローラ53は、ロック機構51の抜け止めとして機能する。
レール側面の板部材には、ピン穴15が周方向に沿って並ぶように設けられている。各ピン穴15は、駆動シリンダ機構52のストロークと同じピッチで等間隔に配置されている。ロック機構51は、レール側面のピン穴15に係合可能なピンを進退させるロック用シリンダ55を備えている。
ロック用シリンダ55のピン伸縮させることにより、ロック(固定)状態とアンロック(解放)状態とを任意に切り替えることができる。図10(A)に示すロック(固定)状態では、ロック用シリンダ55のピンがピン穴15内に突出することにより、ロック機構51がレール13に係合する。その結果、ロック機構51がレール13(外側レール13aまたは内側レール13b)に対して固定される。図10(B)に示すアンロック(解放)状態では、ロック用シリンダ55のピンがピン穴15から引き抜かれることにより、ロック機構51とレールとの係合が解除される。その結果、ロック機構51がレール13(外側レール13aまたは内側レール13b)上を走行可能となる
ここで、外側レール13aと係合する走行駆動機構50を走行駆動機構50aとし、内側レール13bと係合する走行駆動機構50を走行駆動機構50bとする。図8に示すように、走行駆動機構50aは、本体部30に対して周方向の一方側(時計方向、図8の左側)に接続され、周方向の他方側(反時計方向、図8の右側)に延びるように設けられている。走行駆動機構50bは、本体部30に対して周方向の他方側(反時計方向、図8の右側)に接続され、周方向の一方側(時計方向、図8の左側)に延びるように設けられている。つまり、外側レール13aと係合する走行駆動機構50aと、内側レール13bと係合する走行駆動機構50bとが、互いに周方向の反対方向を向くように設けられている。
〈走行駆動機構による周方向移動動作〉
次に、走行駆動機構50による周方向移動動作の流れを説明する。図8において、まず、走行駆動機構50aのロック機構51をアンロック状態にし、走行駆動機構50bのロック機構51をロック状態にする。
次に、走行駆動機構50aおよび走行駆動機構50bの各駆動シリンダ機構52を、縮側作動(油圧シリンダのロッド側に注油加圧してシリンダロッドを引戻す)させる。走行駆動機構50b側の駆動シリンダ機構52では、ロック機構51が内側レール13bにロック(固定)されているため、接続架台31aを介して本体部30が図8の右側(反時計方向)に引っ張られる。その結果、シールド用搬送装置21は、支持装置40を介して第1周方向走路11を周方向(図8の右方向)に移動する。
一方、走行駆動機構50aのロック機構51はアンロック状態なので、ロック機構51は駆動シリンダ機構52の縮側作動に伴って外側レール13a上を図8の右側(反時計方向)に移動する。ロック機構51はアンロック状態で外側レール13a上を走行するため、走行駆動機構50aの駆動シリンダ機構52は負荷なく所定量だけストロークして縮限に到達する。
走行駆動機構50aおよび走行駆動機構50bの各駆動シリンダ機構52が所定量だけストロークして縮限に到達すると、走行駆動機構50aおよび走行駆動機構50bのロック/アンロック状態を逆転させる。すなわち、走行駆動機構50bのロック機構51をアンロック状態にし、走行駆動機構50aのロック機構51をロック状態にする。上記の通り、外側レール13aおよび内側レール13bのピン穴15は、駆動シリンダ機構52のストロークと同じピッチで施工されているため、係合位置を容易に切り替えることができる。
次に、走行駆動機構50aおよび走行駆動機構50bの各駆動シリンダ機構52を、伸作動(油圧シリンダのヘッド側に注油加圧してシリンダロッドを押出す)させる。走行駆動機構50a側の駆動シリンダ機構52では、ロック機構51が外側レール13aにロック(固定)されているため、ロック機構51からの反力により、本体部30が図8の右側(反時計方向)に押し動かされる。その結果、シールド用搬送装置21は、支持装置40を介して第1周方向走路11を周方向(図8の右方向)に移動する。
一方、アンロック状態の走行駆動機構50bでは、走行駆動機構50bの駆動シリンダ機構52はロック機構51を移動させながら負荷なく所定量だけストロークして伸限に到達する。
以上のように、2つ(2組)の走行駆動機構50aおよび50bのロック/アンロック状態を交互に切り替えつつ、伸縮作動を繰り返すことによって、シールド用搬送装置21は第1周方向走路11を周方向(図8の右方向)に連続的に走行することが可能である。周方向の逆側(図8の左方向)に走行する場合には、ロック/アンロック状態の関係を逆転させればよい。
(シールド用搬送装置の反力支持機構)
次に、図11〜図13を参照して、反力支持機構60について説明する。本実施形態では、シールド用搬送装置21は、外殻トンネル2の掘削に伴う反力を支持するための反力支持機構60を備えている。図11(A)は、円周発進基地3の掘進方向前側に設置され固定されたシールド用搬送装置21から、シールド機5が発進し掘進作業をしている状態を示す。
掘進作業時に、シールド機5は、地盤を掘進して掘進方向に移動するとともに、後部においてセグメント7を組み立てる。シールド機5は、組み立てたセグメント7を内部の油圧ジャッキ(図示せず)により後方に押圧することにより、セグメント7を反力支持体として掘進方向への推進を行う。なお、セグメント7は、トンネル掘削後に坑壁となるブロック体である。シールド機5の推進力反力は、セグメント7を介して円周発進基地3側に伝わることになる。
シールド機5の推進力反力は極めて大きい(一例として、本実施形態では最大1000トンで計画しているものとする)ため、特に掘進初期では、セグメント7が掘進方向後方に移動する可能性がある。そこで、本実施形態のシールド用搬送装置21は、反力支持機構60によって外殻トンネル2の掘削に伴う反力をセグメント7を介して支持し、さらにシールド用搬送装置21自体の移動を抑止することが可能である。
図11の構成例では、反力支持機構60は、反力受架台61を含む。反力受架台61は、シールド機5により組み立てられたセグメント7の後端(掘進方向後端)に当接し、セグメント7を介して伝達される反力を受ける。反力受架台61は、複数の矩形枠状部材を組み合わせて構成(図13(A)参照)されており、本体部30の後部に取り付けられている。すなわち、反力受架台61は、環状構造体31に固定されている。
また、反力支持機構60は、円周発進基地3内の構造物と係合するための反力支持筒62を含む。図12に示すように、環状構造体31から突出する左右の張出構造体32の各々に対して、内周側、外周側のそれぞれに反力支持筒62が設けられている。また、図11に示したように、前面側の張出構造体32および後面側の張出構造体32のそれぞれに反力支持筒62が設けられており、合計8つの反力支持筒62が設けられている。
図11の構成例では、反力支持筒62は、円周発進基地3内の構造物としての第1周方向走路11と係合する。より具体的には、反力支持筒62は、外側レール13aおよび内側レール13bと係合するように構成されている。なお、反力支持筒62の係合対象は、円周発進基地3内のどの部分であってもよい。
反力支持筒62は、一対の可動式ガイド筒の中に油圧ジャッキ63を配置した構造を有し、油圧供給によって張出構造体32から任意に伸縮可能に構成されている。反力支持筒62は、図11(A)のように油圧により伸長して、外側レール13aおよび内側レール13bにそれぞれ機械的に接触(係合)することが可能である。これにより、反力支持機構60は、反力受架台61に伝達されたシールド機5の推進力反力を、本体部30(環状構造体31および張出構造体32)および反力支持筒62を介して、外側レール13aおよび内側レール13bに伝えて支持することができる。
図11(B)のように油圧ジャッキ63を収縮させると、反力支持筒62がレール13とは係合しない位置に退避する。これにより、反力支持機構60の作動状態(図11(A))と、非作動状態(図11(B))とが切り替えられる。
(資機材用搬送装置の反力支持機構)
資機材用搬送装置22にも、反力支持機構が設けられてよい。本実施形態では、図14に示すように、資機材用搬送装置22は、外殻トンネル2の掘削に伴う反力を支持するための反力支持機構70を備えている。
図14の構成例では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22は、掘進方向(E方向)に並んで連結可能に構成されている。そして、資機材用搬送装置22の反力支持機構70は、連結されたシールド用搬送装置21から伝達された反力を受けて、円周発進基地3の掘進方向後方の壁部(後壁3a)に伝達させるように構成されている。
具体的には、シールド用搬送装置21は、資機材用搬送装置22に接続可能に構成された連結用ジャッキ64を備える。連結用ジャッキ64は、掘進方向と概ね平行に設けられ、油圧により伸縮可能に構成されている。図15(A)に示すように、連結用ジャッキ64は、シールド用搬送装置21の環状構造体31の外周部に8本配置されている。連結用ジャッキ64は、環状構造体31に対する反力受架台61の接続位置(8箇所)の近傍にそれぞれ配置されている。
連結用ジャッキ64のロッドを伸長させることにより、ロッド先端が資機材用搬送装置22の本体部30(環状構造体31)の前面に当接する。これにより、シールド用搬送装置21と資機材用搬送装置22とが掘進方向に連結される。なお、連結用ジャッキ64は、たとえば1本あたり150トンの推力容量を持ち、8本の合計では1200トンとなる。そのため、上記例示したシールド機5の計画最大推力1000トンに対して十分である。連結用ジャッキ64のロッドを収縮させることにより、シールド用搬送装置21と資機材用搬送装置22との連結状態を解除することができる。図14の構成例では、シールド用搬送装置21に連結用ジャッキ64を設けているが、資機材用搬送装置22に設けてもよい。
資機材用搬送装置22の反力支持機構70は、反力伝達ジャッキ71を含む。反力伝達ジャッキ71は、上記の連結用ジャッキ64と同様に、掘進方向と概ね平行に設けられ、油圧により伸縮可能に構成されている。反力伝達ジャッキ71は、資機材用搬送装置22の環状構造体31の外周部に8本配置されている。図14、図15(A)および図15(B)から分かるように、反力伝達ジャッキ71は、各連結用ジャッキ64と概ね掘進方向に沿って並ぶ位置(8箇所)にそれぞれ配置されている。
図14の構成例では、円周発進基地3の後壁3aには、各反力伝達ジャッキ71が当接する反力受架台72(図13(B)参照)が設けられている。反力伝達ジャッキ71のロッドを伸長させることにより、ロッド先端が反力受架台72に当接する。これにより、資機材用搬送装置22の後端が反力受架台72を介して円周発進基地3の後壁3aに連結される。
以上の構成により、連結用ジャッキ64および反力伝達ジャッキ71を伸長作動させると、円周発進基地3の後壁3a、資機材用搬送装置22およびシールド用搬送装置21が各ジャッキを介して掘進方向に連結される。この状態では、セグメント7を介してシールド用搬送装置21に加わる推進力反力は、連結用ジャッキ64、資機材用搬送装置22の本体部30、反力伝達ジャッキ71を介して反力受架台72に伝達され、最終的に後壁3aへ吸収される。
〈反力支持機構の作動〉
シールド機5の反力は、掘進時の推進力反力のみならず、掘進停止時にも掘削地盤から受ける水圧(土圧)反力がある。通常、掘進時の推進反力(たとえば最大1000トン)に対して、水圧反力(たとえば約500トン)は小さくなる。そこで、シールド用搬送装置21の反力支持機構60のみによる反力支持と、シールド用搬送装置21と資機材用搬送装置22との連結状態での資機材用搬送装置22の反力支持機構70による反力支持とを、反力の大きさに応じて使い分けることが可能である。
たとえば、外側レール13aおよび内側レール13bがシールド機5の推進力反力(たとえば最大1000トン)を支持できる構造の場合、シールド用搬送装置21の反力支持機構60(図11参照)のみにより、推進力反力および水圧反力の両方を支持可能である。一方、外側レール13aおよび内側レール13bがシールド機5の推進力反力を支持できない構造の場合、連結状態での資機材用搬送装置22の反力支持機構70(図14参照)による反力支持によって、推進力反力を支持すればよい。この場合、シールド用搬送装置21の反力支持機構60は、水圧反力(約500トン)を支持する用途で使用することができる。
シールド用搬送装置21の反力支持機構60のみによる反力支持では、資機材用搬送装置22はシールド用搬送装置21から独立して第2周方向走路12を走行可能である。そのため、資機材6を自由に搬送することができる。
一方、シールド用搬送装置21と資機材用搬送装置22との連結状態では、資機材用搬送装置22が固定される。そのため、シールド機5による掘進作業中には、連結状態での反力支持を行い、セグメント7の組立作業など、水圧反力のみを受ける状態で連結を解除し、資機材用搬送装置22による資機材6の搬送を行う運用が可能である。もっとも、大きな推進力反力を支持する必要性が高いのは、掘進開始後の初期の掘進時に限られる。シールド機5による外殻トンネル2の掘進がある程度(たとえば100m程度)まで進行すると、セグメント7と周囲の地盤との接触面積が大きくなるため、セグメント7と地盤との間に十分な摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗の増大により、セグメント7の後端で推進力反力を支持する必要がなくなるためである。そのため、掘進がある程度まで進行した後では、反力支持機構60を作動させる必要なく、資機材用搬送装置22を自由に移動させることが可能である。
(シールド用搬送装置の運用例)
次に、図16〜図21を参照して、シールド用搬送装置21により外殻トンネル2を構築する際のシールド用搬送装置21の運用例について説明する。ここでは、18本の外殻トンネル2を、4機のシールド機5により掘削し、シールド用搬送装置21も4台で運用する例について説明する。なお、図16〜図22では、便宜的に、掘進済みの外殻トンネル2にハッチングを付して示している。
図16の構成例では、シールド用搬送装置21およびシールド機5は、既設の支線トンネル1bを利用して地上部より円周発進基地3まで搬送される。搬送時には、シールド用搬送装置21およびシールド機5は、地上および坑内の搬送条件と、坑内での組立条件とに適合するように分割されている。
支線トンネル1bを搬送されてきたシールド用搬送装置21およびシールド機5は、連絡用の横坑4から円周発進基地3の組立位置に横移動される。本実施形態では、組立位置は外殻トンネル2の18番位置にある。これは組立位置を横坑4の接続位置に合わせたものであるから、横坑4が別の位置に設けられる場合、組立位置も別の位置に配置されてよい。
円周発進基地3の組立位置に搬送されてきたシールド用搬送装置21の分割部材は、組み立位置で組立られる。続いて、シールド機5の分割部材がシールド用搬送装置21のシールド架台34へ搬送され、組立てられる。なお、組立位置を支線トンネル1b内としてもよい。その場合、支線トンネル1b内で組み立てられたシールド用搬送装置21やシールド機5が、横坑4を通って円周発進基地3内に搬送される。
組立てられた1番目のシールド用搬送装置21およびシールド機5は、円周発進基地3の組立位置(18番位置)から時計方向に走行移動し、外殻トンネル2の1番位置(発進位置)に搬送される。搬送されたシールド用搬送装置21およびシールド機5は、水平維持機構33により、位置調整が行われる。
以上の組立位置への搬送、組立、所定の発進位置への移動を繰り返し、シールド機5を搭載した1番目〜4番目のシールド用搬送装置21が、それぞれ外殻トンネル2の1番位置〜4番位置(発進位置)へ搬送される。
図16では、4番目のシールド機5を4番目のシールド用搬送装置21に組立てている状態を示している。1番位置〜3番位置の各外殻トンネル2は、掘削施工中の状態にある。なお、図16中、掘削施工中のシールド用搬送装置21には、便宜上シールド機5が搭載された状態で図示している。
このようにして、1番目から4番目のシールド用搬送装置21およびシールド機5により、1番位置〜4番位置の各外殻トンネル2の施工(1巡目の掘進)が開始される。1番位置の外殻トンネル2を施工した1番目のシールド機5が終点位置に到達して全ての工事が完了すると、1番目のシールド用搬送装置21は時計方向に移動し、円周発進基地3の組立位置(18番位置)に戻る。
支線トンネル1bでは、次の5番位置の外殻トンネル2を施工するためのシールド機5の分割部材が準備されている。そして、円周発進基地3の組立位置(18番位置)へ戻ってきた1番目のシールド用搬送装置21には、シールド架台34へ分割部材が搬送されてシールド機5が組立てられる。
なお、掘削施工が完了したシールド機5は、装置全体を地中に残す場合と、再使用部品(部材)を回収して次のシールド機5に転用する場合がある。再使用部品を転用する場合は、回収した部材をシールド用搬送装置21に積込み、円周発進基地3の組立位置に戻す。再使用部品は、次の外殻トンネル2の施工のためのシールド機5に組み込まれる。
5番位置の外殻トンネル2施工用のシールド機5の組立が完了すると、1番目のシールド用搬送装置21は円周発進基地3を5番位置(発進位置)に時計方向に移動し、シールド機5による掘削が開始される。
続いて、2番位置の外殻トンネル2を施工したシールド機5が終点位置に到達し、全ての工事が完了すると、2番目のシールド用搬送装置21は時計方向に移動して、円周発進基地3の組立位置(18番位置)に戻る。
トンネル施工完了、組立位置に帰還、次のシールド機5の組立、発進位置への搬送(掘進開始)という順序で作業を繰り返すことにより、4機のシールド機5と4台のシールド用搬送装置21による外殻トンネル2の施工が、4本単位で順次実施される。図17は、2順目の施工(5番位置〜8番位置)中の状態を示したものであり、4番目のシールド用搬送装置21での8番位置の施工用のシールド機5の組立中の状態を示したものである。
図18に示すように、3巡目には、9番位置〜12番位置の施工が行われる。図19に示すように、4巡目には、13番位置〜16番位置の施工が行われる。図20は、4順目の施工が終わり5順目の施工を開始した状態を示したものである。本実施形態では、5順目の施工は2本の外殻トンネル2の施工となる。そのため、4順目の施工が完了すると2台のシールド用搬送装置21は撤去される。
詳細には、4順目の施工で最初の13番位置を施工した1番目のシールド用搬送装置21は、施工完了後に円周発進基地3を時計方向に移動し、組立位置(18番位置)に戻る。組立位置で、1番目のシールド用搬送装置21には、17番位置施工用のシールド機5が組立てられる。組立完了後、1番目のシールド用搬送装置21が円周発進基地3を17番位置へ時計方向に移動し、シールド機5による掘削施工が開始される。
4順目の施工で14番位置を施工した2番目のシールド用搬送装置21と、15番位置を施工した3番目のシールド用搬送装置21とは、施工が完了した後、円周発進基地3を時計方向に移動して組立位置(18番位置)に戻ると、順次解体され、支線トンネル1b内へ撤去される。
最後に、4順目の施工で16番位置を施工した4番目のシールド用搬送装置21が、施工完了後に円周発進基地3を時計方向に移動し、組立位置(18番位置)に戻る。組立位置で、18番位置施工用のシールド機5がシールド用搬送装置21内に組み立てられる。組立完了後、その場(18番位置)で掘削施工が開始される。
図21は、5順目に18番位置の外殻トンネル2の施工が完了した状態を示したものである。18番位置の施工に使用した4番目のシールド用搬送装置21は、解体して撤去される。17番位置に配置された1番目のシールド用搬送装置21が、4番目のシールド用搬送装置21の撤去完了後、最後に組立位置(18番位置)に移動して、解体および撤去される。1番目のシールド用搬送装置21が支線トンネル1bへ撤去されることにより、18本の外殻トンネル2の掘削施工が完了する。
(資機材用搬送装置の運用例)
次に、図22を参照して、資機材用搬送装置22の運用例を説明する。図示は省略するが、資機材用搬送装置22(第2周方向走路12)はシールド用搬送装置21(第1周方向走路11)の後列に配置されているので、図22の紙面奥側にシールド用搬送装置21が配置されることになる。
図22では、2巡目(5番位置から8番位置)の外殻トンネル2の施工が実施されている状態を示す。4台の資機材用搬送装置22により、それぞれのシールド機5へ資機材6を供給する例を示す。
資機材用搬送装置22も、シールド用搬送装置21の運用と同じく、支線トンネル1bによって地上部より搬送されてきた資機材6が、クレーン装置などの運搬装置8により、資機材搬送架台38上に積み込まれる。すなわち、円周発進基地3の資機材搭載位置(18番位置)に停止している資機材用搬送装置22の資機材搬送架台38に、横坑4を介して資機材6が搭載される。
図22では、1番目から3番目の資機材用搬送装置22は、資機材6を5番位置から7番位置へ搬送した状態となっている。4番目の資機材用搬送装置22は、円周発進基地3の資機材搭載位置(18番位置)で資機材6を運搬装置8により搭載する。資機材6の搭載が完了すると、4番目の資機材用搬送装置22は、円周発進基地3を時計方向に移動し、8番位置のシールド機5へ資機材6を搬送する。
図22に示したように、資機材用搬送装置22は、所定の搬送位置(1番位置〜18番位置のいずれか)に移動すると、前方に停止しているシールド用搬送装置21と掘進方向に並んで配置される。資機材用搬送装置22は、前方に停止しているシールド用搬送装置21に対して位置調整した後、搭載している資機材6を前方のシールド用搬送装置21へ受け渡す。受け渡された資機材6は、シールド用搬送装置21から順次施工中のトンネル坑内へ搬送される。
シールド用搬送装置21において、掘進に伴いシールド機5が前進した後、空になったシールド架台34上には、搬送用レール(図示せず)が敷設される。資機材用搬送装置22は、資機材搬送架台38に搬送用レール(図示せず)を有し、同じレベル(高さ位置)に調節することによって、相互の搬送用レールが連結される。そのため、資機材6を台車に配置し機関車などによりトンネル坑内に送り込むことが可能である。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、外殻トンネル2の掘進方向に沿って隣接し、地下構造物1の外周に周方向に沿って延びる第1周方向走路11および第2周方向走路12を設ける。これにより、第1周方向走路11および第2周方向走路12によって、掘進方向に隣接する複数系統の搬送経路を構築することができる。そして、第1周方向走路11を周方向に互いに独立して走行する複数のシールド用搬送装置21と、第2周方向走路12を周方向に互いに独立して走行する複数の資機材用搬送装置22とを設ける。これにより、複数系統の搬送経路上に、それぞれ独立して走行可能な搬送装置が複数ずつ配置される。その結果、シールド用搬送装置21が第1周方向走路11上の発進位置で固定される場合でも、資機材用搬送装置22が第2周方向走路12を移動して、シールド用搬送装置21に遮られることなく資機材6を搬送することができる。その結果、外殻トンネル2の掘進に伴い走路上で搬送装置が固定される場合にも、資機材6の搬送を円滑に行うことができる。そして、独立して走行可能なシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22がそれぞれ複数設けられるので、複数の外殻トンネル2の掘進を同時並行で実施することができ、工期短縮を図ることができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数のシールド用搬送装置21を、掘進方向の前列に配置される第1周方向走路11において、それぞれシールド機5を搬送するように構成し、複数の資機材用搬送装置22を、掘進方向の後列に配置される第2周方向走路12において、それぞれ資機材6を搬送し、シールド用搬送装置21と掘進方向に並ぶ位置で資機材6をシールド用搬送装置21に受け渡すように構成する。これにより、シールド機5が発進する前列側のシールド用搬送装置21によってシールド機5を搬送し、掘削の進行に伴って必要となる資機材6を後列側の資機材用搬送装置22によって搬送することができる。その結果、効率的な搬送が可能となる。また、資機材用搬送装置22側の資機材6をシールド用搬送装置21に受け渡すことによって、資機材6を掘進箇所まで搬送するためにシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22を掘進方向に移動させる必要がなくなる。そのため、たとえばシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22を周方向にのみ移動可能に構成するなど、移動方向を限定することができるので、搬送装置の構成を簡素化することができる。
また、本実施形態では、上記のように、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22に、本体部30を支持してレール13(外側レール13aおよび内側レール13b)上を走行する支持装置40を設ける。これにより、たとえば地下構造物1の外周に沿った周方向空間の内壁面上を搬送装置が走行する場合と比較して、レール13上で、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22を安定して移動させることができ、掘進方向など周方向以外の方向への位置ずれを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、支持装置40に、レール13上を回転する車輪42を有する支持部41と、本体部30と支持部41との間でレール13に向かう方向に伸縮可能な伸縮機構43とを設ける。これにより、レール13の反りや歪み、周方向走路が形成される空間自体の歪みなどの誤差を伸縮機構43によって吸収することができる。そのため、第1周方向走路11(第2周方向走路12)に誤差を許容するための大きなマージンを確保しなくても、各々のシールド用搬送装置21(資機材用搬送装置22)を円滑に走行させることができるので、外殻トンネル用搬送装置100を容易に構築できるようになる。
また、本実施形態では、上記のように、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22に、本体部30を周方向に駆動する複数の走行駆動機構50を設け、走行駆動機構50に、ロック機構51と、本体部30とロック機構51との間で周方向に伸縮可能な駆動シリンダ機構52とを設ける。この結果、複数の走行駆動機構50によって上記動作を交互に繰り返すことにより、周方向走路に沿って本体部30を連続的に移動させることが可能となる。その結果、たとえばラックアンドピニオン方式のようなギア駆動のように精密な噛み合いや高トルクのモータ(減速機)が要求されることなく、油圧シリンダによって容易にシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の走行駆動機構50を構成することができる。
また、本実施形態では、上記のように、シールド用搬送装置21に、外殻トンネル2の掘削に伴う反力を支持するための反力支持機構60を設ける。これにより、掘進の開始後に掘削に伴う反力(シールド機5の掘進に対する反力、地盤からの土圧または水圧)を、シールド用搬送装置21が反力支持機構60によって受け止めることができる。その結果、シールド用搬送装置21によって、敷設済みのセグメント7が移動することを防ぐことができる。また、反力支持によってシールド用搬送装置21が固定される場合でも、第2周方向走路12の資機材用搬送装置22によって、資機材6の供給を継続することができる。
また、本実施形態では、上記のように、資機材用搬送装置22に、外殻トンネル2の掘削に伴う反力を支持するための反力支持機構70を設け、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22を、掘進方向に並んで連結可能に構成する。これにより、掘進開始直後など特に反力が大きくなるタイミングでの反力を、連結したシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の両方によって受け止めることが可能となる。
また、本実施形態では、上記のように、第1周方向走路11および第2周方向走路12を、本線トンネル1aおよび支線トンネル1bを含むトンネル群の周囲を取り囲むように環状に形成された円周発進基地3に設ける。これにより、複数のトンネル群を取り囲む外殻トンネル2を構築する場合でも、第1周方向走路11および第2周方向走路12によって資機材6の搬送を円滑に行うことができ、工期短縮を図ることができる。
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、複数のトンネル(本線トンネル1aおよび支線トンネル1b)からなる地下構造物1の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、地下構造物は、1本のトンネルであってもよいし、トンネル以外の他の構造物であってもよい。
また、上記実施形態では、特許請求の範囲の第1搬送装置の一例として、シールド機5を搬送するシールド用搬送装置21を示し、特許請求の範囲の第2搬送装置の一例として、資機材6を搬送する資機材用搬送装置22を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1搬送装置が資機材を搬送してもよいし、第2搬送装置がシールド機を搬送する構成であってもよい。
また、上記実施形態では、第1周方向走路11と第2周方向走路12との2つの走路を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、さらに第3周方向走路、第4周方向走路、・・・を設けて3つ以上の走路を構成してもよい。
また、上記実施形態では、円環状の円周発進基地3内に、円環状の第1周方向走路11および第2周方向走路12を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1周方向走路および第2周方向走路が円環状である必要はない。たとえば、地下構造物の上側および下側の一方または両方に半円状または扇状の周状発進基地を設けて、第1周方向走路および第2周方向走路を半円状または扇状に構成してもよい。また、第1周方向走路および第2周方向走路は、円弧形状(曲率半径が略一定)でなくてもよい。たとえば外側レール13aおよび内側レール13bの間隔が概ね一定となる走路であれば、シールド用搬送装置および資機材用搬送装置を搬送することが可能であり、各周方向走路を任意の曲線状形状にしてよい。
また、上記実施形態では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の各々に走行駆動機構50を設け、自走可能な構成とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、外部の駆動機構によってシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の各々を走行させてもよい。第1周方向走路11において複数のシールド用搬送装置21が独立して走行可能であり、第2周方向走路12において複数の資機材用搬送装置22が独立して走行可能であれば、駆動方式は問わない。たとえば、牽引ワイヤ、チェーンその他の牽引部材を介して、各搬送装置を走行させてもよい。この場合でも、牽引部材および駆動源を複数系統設けることにより、同一走路上の複数の搬送装置を独立して走行させることが可能である。
また、上記実施形態では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の各々に、レール13上を走行可能な支持装置40を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば支持装置が円周発進基地の内壁面上を走行してもよい。
また、上記実施形態では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の各々に反力支持機構60(70)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、反力支持機構を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、掘削機の一例としてシールド機5を用いる構成を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、どのような掘削機を搬送してもよい。
また、上記実施形態では、本体部を環状構造体と張出構造体とからなる骨組み構造とした構成例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、本体部の構造は特に限定されない。本体部は、搬送対象(掘削機や資機材)を搬送可能であればどのような構造を有していてもよい。
また、図16〜図22に示したシールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22の各運用例は、あくまでも一例である。本発明では、シールド用搬送装置21および資機材用搬送装置22をどのように運用してもよい。