JP2018070916A - 銅合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度、高導電性で、耐熱性にも優れた銅合金を提供する。【解決手段】本発明の銅合金は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.20%を含有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金であって、圧延方向と板厚方向を含む面において、前記板厚方向における平均結晶粒径が1.0μm以下であり、且つ、平均KAM値が1.0°以上3.0°以下である。【選択図】なし
Description
本発明は銅合金に関し、詳細には、強度、導電性、および耐熱性の全てに優れた銅合金に関する。
半導体リードフレーム等の電気電子部品には、強度(引張強さ、硬さ)、導電率、耐熱性のいずれにも優れることが要求される。そのため、上記部品の素材として用いられる銅合金にも、これらの特性を兼備していることが要求される。電気電子部品用銅合金として、FeおよびPを含有するCu−Fe−P系銅合金が国際標準合金として汎用されている。Cu−Fe−P系銅合金として、例えばFe:2.1〜2.6質量%、P:0.015〜0.15質量%、Zn:0.05〜0.20質量%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなるCDA194合金が例示される。Cu−Fe−P系銅合金では、母相中にFeまたはFe−P等の金属間化合物を析出させることによって強度、導電性、熱伝導性が高められる。
近年、電気電子機器に用いられる半導体装置の大容量化、小型化、薄肉軽量化、高機能化に伴い、リードフレーム等の電気電子部品の小断面積化が進み、より一層の強度、導電性、熱伝導性が要求されている。これに伴い、上記用途に用いられる銅合金板にも、より一層の特性向上が求められており、種々の技術が提案されている。
例えば特許文献1には、電気電子部品用銅合金板の強度および導電性を高めるため、Feを比較的多く(2.5〜3.5質量%)含有すると共に、Cu母相中に第二相粒子が析出した二相組織とする技術が開示されている。
一方、電気電子部品用銅合金には、高温での熱処理後も高い強度を維持可能な優れた耐熱性も要求される。例えば上記Cu−Fe−P系銅合金板をリードフレーム等へ加工する際、スタンピング加工(プレス打ち抜き加工と呼ばれることもある)により多ピン形状にするのが一般的である。前述したように電気電子機器に用いられる半導体装置の小型化等の要求特性に対応するため、原材料として用いる銅合金板の薄肉化や、リードフレーム等の多ピン化が進んでいる。これに伴って、上記スタンピング加工後の加工品に歪み応力が残留し易くなり、ピンが不揃いになる傾向がある。そこでスタンピング加工して得られる多ピン形状の銅合金板には、通常、歪取り焼鈍等の熱処理を施して歪を除去する。しかし、熱処理を行なうと材料が軟化し易く、熱処理前の強度を維持できない。また、生産性を向上させるため、より高温、短時間での熱処理が求められている。そのため、このような高温熱処理後も高い強度を維持し得る、高い耐熱性が強く求められている。
しかしながら、上記特許文献1では、耐熱性について考慮されていない。また、上記特許文献1のようにFeの含有量が多くなり過ぎると、導電性が却って劣化することがある。導電性を改善するには、例えば、FeまたはFe−P等の析出粒子の析出量を増加させればよいが、析出量の増加に伴い、析出粒子の成長および粗大化を招き、強度や耐熱性が低下することが知られている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高強度、高導電性を有し、耐熱性にも優れたCu−Fe−P系銅合金を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐熱性に優れた銅合金は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.20%を含有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金であって、圧延方向と板厚方向を含む面において、前記板厚方向における平均結晶粒径が1.0μm以下であり、且つ、平均KAM(Kernel Average Misorientation)値が1.0°以上3.0°以下である点に要旨を有する。
上記銅合金は、更に、質量%で、Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上を合計で0.1%以下の範囲で含有してもよい。
本発明によれば、成分組成、板厚方向における結晶粒径、およびKAM値を適切に制御しているため、高強度、且つ高導電性で、耐熱性にも優れたCu−Fe−P系銅合金を提供できる。
本発明者は上記課題を解決するため、強度と耐熱性の向上に影響を及ぼす因子を中心に検討を行なった。その結果、結晶粒径に加えて転位密度も適切に制御することにより、高い耐熱性および導電性を保持したまま、高強度化も達成できることを見出した。
また、このような銅合金は、銅合金の一般的製造工程(工程順に鋳造、均質化熱処理、熱間圧延、1次冷間圧延、1次焼鈍、仕上げ冷間圧延、仕上げ焼鈍の各工程)において、特に熱間圧延のトータル時間、仕上げ冷間圧延の総圧延率および1パス当たりの圧延率の最小値、並びに仕上げ焼鈍温度を適切に制御すれば良いことを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明の銅合金について詳細に説明する。
(成分組成)
まず、本発明の銅合金は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.20%を満足する必要がある。以下、化学成分について、%は質量%を意味する。
まず、本発明の銅合金は、質量%で、Fe:1.8〜2.7%、P:0.01〜0.20%、Zn:0.01〜0.30%、Sn:0.01〜0.20%を満足する必要がある。以下、化学成分について、%は質量%を意味する。
Feは、銅合金の母相中に固溶させるか、Fe系の化合物を生成させることによって、強度と耐熱性を向上させるために必要な元素である。Fe量が1.8%未満では、Feの固溶量または析出量が不足し、強度および耐熱性が得られないため、Fe量は1.8%以上とする。Fe量は、好ましくは2.1%以上である。しかし、Fe量が過剰になると、粗大なFe化合物が生成し、打ち抜き加工時に割れが発生するため、Fe量は2.7%以下とする。Fe量は、好ましくは2.6%以下、より好ましくは2.4%以下である。
Pは、溶湯に混入する酸素を脱酸する作用を有する元素である。更にFeとの化合物を形成して銅合金の強度および耐熱性を向上させる元素である。このような作用を有効に発揮させるため、P量は0.01%以上とする。P量は、好ましくは0.02%以上である。しかし、P量が過剰になると導電率が低下する他、熱間加工性が低下するため、P量は0.20%以下とする。P量は、好ましくは0.15%以下である。
Znは、銅合金に対するはんだの耐熱剥離性改善、および銅合金に対するSnめっきの耐熱剥離性改善に必要な元素である。これらの耐熱剥離性は、例えば銅合金をリードフレームなどに用いるときに要求される特性である。このような作用を有効に発揮させるため、Zn量は0.01%以上とする。Zn量は、好ましくは0.05%以上である。しかしZn量が過剰になると、導電率が低下する他、銅合金に対するはんだの濡れ性が低下するため、Zn量は0.30%以下とする。Zn量は、好ましくは0.20%以下である。
Snは、銅合金の強度および耐熱性を向上させるために必要な元素である。これらの作用を有効に発揮させるため、Sn量は0.01%以上とする。Sn量は、好ましくは0.02%以上である。しかし、Sn量が過剰になると導電率が低下する他、熱間加工性も低下するため、Sn量は0.20%以下とする。Sn量は、好ましくは0.10%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
本発明に係る銅合金の残部は、銅および不可避不純物である。
本発明の銅合金は、更に、Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上の選択成分を、合計で0.1%以下の範囲で含有してもよい。合計とは、Si、Ni、およびCoを単独で含むときは単独の量を意味し、二種以上含むときはこれらの合計量を意味する。
上記元素は、FeまたはPと化合物を形成し、銅合金の強度および耐熱性を向上させる作用を有する。このような作用を有効に発揮させるには、Si、Ni、およびCoの合計量は0.01%以上であることが好ましく、より好ましくは0.03%以上である。しかし、これらの元素を過剰に含有すると化合物が粗大化し、プレス打ち抜き加工時に割れが発生する虞があるため、合計で0.1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下である。
(板厚方向における平均結晶粒径)
本発明の銅合金は、圧延方向と板厚方向を含む面において前記板厚方向における平均結晶粒径が1.0μm以下と、前述した特許文献1に比べて微細であり、これにより、強度(硬さ)が向上する。電気電子機器部品用に用いられる銅合金の重要な特性である強度は、結晶粒径と密接な相関関係を有しており、上記平均結晶粒径が1.0μmを超えると所望とする硬さが得られない。上記平均結晶粒径は小さい程良く、例えば、0.7μm以下が好ましい。なお、上記粒径の下限は特に限定されないが、おおむね、0.1μm以上である。
本発明の銅合金は、圧延方向と板厚方向を含む面において前記板厚方向における平均結晶粒径が1.0μm以下と、前述した特許文献1に比べて微細であり、これにより、強度(硬さ)が向上する。電気電子機器部品用に用いられる銅合金の重要な特性である強度は、結晶粒径と密接な相関関係を有しており、上記平均結晶粒径が1.0μmを超えると所望とする硬さが得られない。上記平均結晶粒径は小さい程良く、例えば、0.7μm以下が好ましい。なお、上記粒径の下限は特に限定されないが、おおむね、0.1μm以上である。
本発明における平均結晶粒径は、圧延方向と板厚方向を含む断面における、前記板表面から板厚中心部の結晶粒において、方位差が15°以上の結晶粒をSEM−EBSD(Scanning Electron Microscope−Electron Back Scatter Diffraction Patterns)法により測定したものである。SEM−EBSD法は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[Electron Back Scattering(Scattered) Diffraction Pattern:EBSD]システムを搭載したものであり、汎用される結晶方位解析法である。
ここで、「方位差が15°以上の結晶粒」とは、「方位差が15°以上の粒界(境界)を有する結晶粒」を意味する。よって、例えば15°、20°など、15°以上の方位差を有する結晶粒は全て、「方位差が15°以上の結晶粒」の範囲に含まれる。
具体的な測定方法は以下のとおりである。
まず、板の任意の位置(板の幅方向の略中心位置)から採取した測定試料を3個用意する。各測定試料の表面から板厚中央まで、圧延方向と板厚方向を含む断面が観察面となるように機械研磨した後、電解エッチングして鏡面化する。
次に、SEM−EBSDを用いて、上記観察面における、圧延方向に100μm、板厚方向に60μmの測定範囲(図1を参照)に対して、0.25μmのピッチで電子線を照射する。具体的には、鏡面化した試料をFESEMの鏡筒内にセットし、その表面に電子線を照射してスクリーン上にEBSD(EBSP)を投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって結晶の方位が決定(算出)される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などと共に記録される。このプロセスは全測定点に対して自動的に行なわれるため、測定終了時には、板の断面における数万〜数十万点の結晶方位データが得られる。
本発明では、10μm間隔で、1視野につき9本、板厚方向に線分を引き、線分上で、15°以上の結晶方位差を有する点数をカウントし、合計線分長さ(60μm×9本)を除す(線分長さ÷点の数)ことで、平均の結晶粒径長さを求める。ここで、解析ソフトには、EDAX社製「OIM Analysis Ver.7.1.0」を用いた。同様の操作を合計3個の試料で行い、その平均を板厚方向における平均結晶粒径とした。
(平均KAM値)
本発明の銅合金は、平均KAM(Kernel Average Misorientation)値が1.0°以上3.0°以下であり、これにより耐熱性、更には硬さが向上する。KAM値は、局所的な結晶方位変化に基づくひずみ分布を表しており、結晶粒内のひずみ量と相関する。KAM値が大きいと転位密度が大きいと考えられる。特にKAM値が大きすぎると転位密度も大きくなり過ぎて、その結果、耐熱性が低下する。一方、KAM値が小さすぎると、局所的にひずみが回復した部分を起点として更に回復が進行して強度が低下するため、耐熱性が低下する。平均KAM値は、好ましくは2.0°以下である。
本発明の銅合金は、平均KAM(Kernel Average Misorientation)値が1.0°以上3.0°以下であり、これにより耐熱性、更には硬さが向上する。KAM値は、局所的な結晶方位変化に基づくひずみ分布を表しており、結晶粒内のひずみ量と相関する。KAM値が大きいと転位密度が大きいと考えられる。特にKAM値が大きすぎると転位密度も大きくなり過ぎて、その結果、耐熱性が低下する。一方、KAM値が小さすぎると、局所的にひずみが回復した部分を起点として更に回復が進行して強度が低下するため、耐熱性が低下する。平均KAM値は、好ましくは2.0°以下である。
平均KAM値は、前述した平均結晶粒径と同様、SEM−EBSD法を用いて算出した。KAM値はEBSD解析点1点ごとに算出されるため、本発明では、測定視野全体の平均値を算出した。
本発明の銅合金は、ビッカース硬さ:160Hv以上、導電率:60%IACS以上、450℃で3分間焼鈍後のビッカース硬さ:140Hv以上を満足する。よって、本発明の銅合金は、強度、導電性、および耐熱性に非常に優れている。
次に、本発明に係る銅合金の好ましい製造条件について説明する。前述したように銅合金は一般に、鋳造、均質化熱処理(均熱処理)、熱間圧延、1次冷間圧延、1次焼鈍、仕上げ冷間圧延(2次冷間圧延とも呼ばれる)、仕上げ焼鈍(2次焼鈍とも呼ばれる)の各工程を経て製造される。上記工程のうち、特に熱間圧延のトータル時間、仕上げ冷間圧延の総圧延率および1パス当たりの圧延率の最小値、および仕上げ焼鈍温度を適切に調整することにより、平均結晶粒径および平均KAM値を所定範囲に制御することができる。
まず、成分組成を調整した銅合金を溶解、鋳造する。これらの工程は特に限定されず、常法に従って行なうことができる。
次いで均熱処理する。均熱処理条件も特に限定されないが、その後の熱間圧延の終了温度を好ましくは700℃以上に制御するため、上記鋳塊を800℃以上に加熱することが好ましい。より好ましくは850℃以上である。均熱処理時の加熱温度の上限は特に限定されないが、おおむね、1050℃以下であることが好ましい。より好ましくは950℃以下である。
均熱処理の後、必要に応じて、例えば上記加熱温度の範囲内で一定時間保持しても良い。保持時間は、例えば、10〜240分間である。
均熱処理の後、熱間圧延を行なう。熱間圧延の圧下率は特に限定されず、目的とする板厚および後工程の冷間圧延における冷延率との関係で決定すればよい。なお、熱間圧延は、1回、或いは複数回行なうことができる。
高い強度を得るためには、熱間圧延終了温度を700℃以上に制御することが好ましい。より好ましくは750℃以上である。熱間圧延終了温度の上限は特に限定されないが、例えば、900℃以下であることが好ましく、850℃以下であることがより好ましい。
更に上記と同様の観点から、熱間圧延の熱間圧延のトータル時間を15分間以下に制御することが好ましい。上記トータル時間が長くなると強度が低下する。より好ましくは10分間以下である。なお、その下限は強度との関係では特に限定されないが、圧延機の負荷などを考慮すると、おおむね、3分間以上であることが好ましい。
上記の熱間圧延後、室温まで急冷する。熱間圧延後の冷却速度が小さいと、最終板での強度が低下してしまう。ここで「急冷」とは、空冷を超える平均冷却速度での冷却を意味し、好ましくは20℃/秒以上である。平均冷却速度の上限は特に限定されないが、実操業などを考慮すると、おおむね500℃/秒以下が好ましい。
急冷手段は特に限定されず、例えば、水冷など公知の冷却手段を採用できる。
急冷後、1回目の冷間圧延(1次冷間圧延)を施す。1次冷間圧延における圧延加工率は任意であるが、最終的な板材の板厚および後述する2次冷間圧延における圧延加工率に合わせて調節すればよい。
次いで、1次焼鈍を施す。1次焼鈍は、450〜650℃で30分間〜24時間行なうことが好ましく、これにより、結晶粒径およびKAM値を所定範囲に制御できる。1次焼鈍温度が450℃未満または1次焼鈍時間が30分間未満では、加熱処理不足により、耐熱性が低下する。一方、1次焼鈍温度が650℃を超えると、結晶粒径が大きくなって、強度(硬さ)が低くなる。より好ましい1次焼鈍条件は、500〜600℃で1〜3時間である。
次に、2回目の冷間圧延(仕上げ冷間圧延または2次冷間圧延)により所定形状に成形する。仕上げ冷間圧延により金属組織内に加工歪みが導入され、銅合金板の強度を向上できる。
本発明では、上記仕上げ冷間圧延の総圧延率を60%以上85%以下に制御することが好ましい。仕上げ冷間圧延の総圧延率が60%未満ではKAM値が小さくなって硬さが低下する。一方、仕上げ冷間圧延の総圧延率が85%を超えるとKAM値が大きくなって耐熱性が低下する。より好ましくは65%以上80%以下である。
更に仕上げ冷間圧延における1パス当たりの圧延率の最小値は20%以上に制御することが好ましい。上記1パス当たりの圧延率の最小値が20%を下回るとKAM値が小さくなって硬さおよび耐熱性が低下する。より好ましくは25%以上である。なお、その上限は上記特性との関係では特に限定されないが、圧延機の負荷などを考慮すると、おおむね、50%以下であることが好ましい。
その後、2次焼鈍(仕上げ焼鈍)を施す。仕上げ焼鈍は、仕上げ冷間圧延で導入された歪を取るための焼鈍であり、300〜450℃で10〜500秒間行なうことが好ましい。仕上げ焼鈍温度が300℃未満または仕上げ焼鈍時間が10秒間未満では、KAM値が大きくなって耐熱性が低下する。一方、仕上げ焼鈍温度が450℃を超えるか、仕上げ焼鈍時間が500秒間を超えると、歪の除去が過剰となりKAM値が小さくなって強度および耐熱性が低下する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成を有し、残部が銅および不可避不純物からなる銅合金をコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法で造塊して厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を製造した。
このようにして得られた鋳塊の表面を面削した後、900℃で1時間保持する均熱処理を行ってから、表2に記載の熱間圧延を行ない、厚さ15mmの熱延板を得た。熱間圧延終了温度はいずれも750℃以上であり、熱間圧延終了後、直ちに水冷により急冷した。
次に、酸化スケールを除去した後、表2に記載の条件で1次焼鈍、仕上げ冷間圧延、および仕上げ焼鈍(仕上げ焼鈍時間は20秒間)を行ない、厚さ0.125mmの銅合金板を得た。
このようにして得られた銅合金板について、前述した方法により結晶粒径およびKAM値を測定すると共に、以下の方法により導電率、硬さ、および耐熱性を評価した。
(導電率)
上記銅合金板をミーリングにより幅10mm×長さ300mmの短冊状に加工した試験片を用い、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定し、平均断面積法により導電率を算出した。本発明では、60%IACS以上を導電性が良好であると評価した。
上記銅合金板をミーリングにより幅10mm×長さ300mmの短冊状に加工した試験片を用い、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定し、平均断面積法により導電率を算出した。本発明では、60%IACS以上を導電性が良好であると評価した。
(硬さ)
島津製作所製のマイクロビッカース硬度計を用い、上記銅合金板に0.5kgの荷重を加えて10箇所で測定し、その平均値を求めて硬さを算出した。本実施例では、硬さが160Hv以上のものを強度に優れると評価した。
島津製作所製のマイクロビッカース硬度計を用い、上記銅合金板に0.5kgの荷重を加えて10箇所で測定し、その平均値を求めて硬さを算出した。本実施例では、硬さが160Hv以上のものを強度に優れると評価した。
(耐熱性)
上記銅合金板を、450℃で3分間加熱保持した後、上記硬さの測定に用いたのと同じマイクロビッカース硬度計を用い、0.5kgの荷重を加えて10箇所の硬さを測定し、その平均値を求めて硬さを算出した。本発明では、140Hv以上を耐熱性に優れると評価した。
上記銅合金板を、450℃で3分間加熱保持した後、上記硬さの測定に用いたのと同じマイクロビッカース硬度計を用い、0.5kgの荷重を加えて10箇所の硬さを測定し、その平均値を求めて硬さを算出した。本発明では、140Hv以上を耐熱性に優れると評価した。
これらの結果を表3に記載する。
表3より以下のように考察できる。
まずNo.1〜15は、本発明の要件を満足する例であり、成分組成、平均結晶粒径および平均KAM値が適切に制御されているため、導電性が良好で、高強度、且つ耐熱性に優れた銅合金が得られた。
これに対し、No.16〜26は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例であり、以下の不具合を有している。
No.16は、熱間圧延のトータル時間が長いため、結晶粒径が大きくなって硬さ(強度)が低下した。
No.17は、仕上げ冷間圧延における総圧延率および1パス当たりの圧延率の最小値が小さい例であり、平均値KAM値が小さくなって、硬さおよび耐熱性が低下した。
No.18は、仕上げ冷間圧延における総圧延率が大きい例であり、平均KAM値が大きくなって耐熱性が低下した。
No.19は、仕上げ冷間圧延における1パス当たりの圧延率の最小値が小さい例であり、平均KAM値が小さくなって、硬さおよび耐熱性が低下した。
No.20は、仕上げ焼鈍温度が低い例であり、平均KAM値が大きくなって耐熱性が低下した。
No.21は、仕上げ焼鈍温度が高い例であり、平均KAM値が小さくなって強度および耐熱性が低下した。
No.22は、Fe量が少ない例であり、硬さおよび耐熱性が低下した。
No.23は、Fe量が多い例であり、導電性が低下した。
No.24、No.25は、P量、Sn量が多い例であり、いずれも導電率が低下した。
No.26は、1次焼鈍の温度が高く時間が短く、且つ、仕上げ冷間圧延における1パス当たりの圧延率の最小値が小さい例であり、平均結晶粒径および平均KAM値が大きくなって、硬さおよび耐熱性が低下した。
Claims (2)
- 質量%で、
Fe:1.8〜2.7%、
P :0.01〜0.20%、
Zn:0.01〜0.30%、
Sn:0.01〜0.20%を含有し、
残部が銅および不可避不純物からなる銅合金であって、
圧延方向と板厚方向を含む面において、
前記板厚方向における平均結晶粒径が1.0μm以下であり、且つ、
平均KAM(Kernel Average Misorientation)値が1.0°以上3.0°以下であることを特徴とする銅合金。 - 更に、質量%で、
Si、Ni、およびCoよりなる群から選ばれる一種または二種以上を合計で0.1%以下の範囲で含有する請求項1に記載の銅合金。
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