JP2018070671A - 発熱速度が抑制されるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、高度に難燃化された樹脂組成物であって、着火した場合においても、燃焼バリア層となる嵩高で多孔質のチャーを効率よく発生させ、その結果として燃焼時の発熱量と煙発生量を低減することが可能なポリフェニレンエーテル系の樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100質量%に対して、ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、有機酸(E)0〜5質量%と、有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、を含むことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明はポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関し、本組成物の成形品を燃焼させたときに、燃焼バリア層となる嵩高くて多孔質のチャー(炭化物)が効率よく生成することにより、燃焼時の発熱量と煙発生量を低減することができるポリフェニレンエーテル系の樹脂組成物に関する。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、軽量性、耐熱性、機械的物性、成形加工性、耐酸アルカリ性、寸法安定性、電気特性等に優れ、家電OA、事務機、情報機器、自動車分野等に広く用いられている樹脂材料である。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物としては、一般的にポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂とを必要とされる耐熱性や成形流動性のレベルに応じて任意の割合で併用配合し、更に必要に応じて、エラストマー成分や、難燃剤、熱安定剤等の添加剤成分等を配合した樹脂組成物が広く使用されているが、最近ではスチレン系樹脂以外のポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、PPS樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等、様々な樹脂との組み合わせによるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物も提案されている。
近年、鉄道車両、航空機、船舶等の輸送機関、公共の建物等に使用される樹脂製品に対して、火災時の火炎発熱、煙濃度、煙の毒性に対する要求が高まってきている。例えば、欧州の鉄道車両に使用される製品(ケーブルを含む)には、欧州統一規格であるEN45545−2において定められる、延焼性、着火性、発熱性、発煙性、毒性等の火災安全性能が要求されている。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、燃焼時にチャーを形成しやすい性質を有する樹脂であり、例えば、非特許文献1では、ポリフェニレンエーテル系樹脂のチャー形成特性を強化することによって燃焼時の煙発生量を低減化した樹脂素材についての解説がなされている。
特許文献1では、ポリフェニレンエーテルとポリ(アルケニル芳香族化合物)と有機リン酸エステル系難燃剤と特定の官能基ユニットを含むポリシロキサンと、更に有機酸を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、燃焼時の煙発生量を低減させる技術が示されている。しかしながら、最も優れた低発煙効果を与える「クエン酸」を使用するコンパウンド組成物において、樹脂の色調が大きく赤みを増すために樹脂の着色に支障を与える問題があり、更には組成物の発熱速度の低減効果に不安定性があり、急激な発熱速度の増大がしばしば発生する問題がある。
特許文献2では、官能化ポリフェニレンエーテルと有機アミン官能性オルガノポリシロキサンによる溶融押し出しにより得られる共重合体組成物の難燃性が示されており、低発煙の効果について記載があるが、同組成物の発熱量及び発煙量の低減効果は実用性の観点からは効果が不十分である。
特許文献3では、ポリフェニレンエーテルと水添ブロック共重合体のカルボン酸無水物変性物とノンハロゲン系難燃性化合物とからなる樹脂組成物が示されているが、同組成物の低発煙化の作用効果は不十分なものである。
特許文献4では、ポリフェニレンエーテルと、水添ブロック共重合体のカルボン酸無水物変性物と、官能基を含むポリシロキサンと、芳香族リン酸エステル系難燃剤とからなる樹脂組成物が示されているが、同組成物の低発煙効果も十分なものではない。
特許文献5では、ポリフェニレンエーテルとフェニルシロキサン流体とのブレンド物において、「膨張するチャー」を発生させて煙発生を低減させる考え方が示されているが、同組成物の低発煙化効果は十分でなく、更に溶融樹脂流動性が悪く、また成形品の外観不良が起こりやすく、成形性に欠けるという問題がある。
特許文献6にはフェニル基量が特定範囲にあるメチル・フェニルシリコーンを含むポリフェニレンエーテル系樹脂が示されているが、発煙効果についての一層の改良が望まれている。
また、上記に列挙した先行技術では、しばしば成形品にシルバーストリークが発生し、成形品の外観が損なわれることがあった。
特表2010−515803号公報 特開平7−196811号公報 特開平8−41310号公報 特開平8−165423号公報 特公平6−62843号公報 特開2000−297209号公報
砂田、「優れた耐FST特性を実現した低発煙Norly樹脂」、プラスチックス、2008年2月、第59巻、第2号、p.51−57
本発明は、高度に難燃化された樹脂組成物であって、着火した場合においても、燃焼バリア層となる嵩高で多孔質のチャーを効率よく発生させ、その結果として燃焼時の発熱量と煙発生量を低減することが可能なポリフェニレンエーテル系の樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題を達成するために鋭意検討を行い、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100質量%に対して、ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、有機酸(E)0〜5質量%と、有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100質量%に対して、
ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、
スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、
平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と、
芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、
有機酸(E)0〜5質量%と、
有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、
を含むことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[2]
前記ホウ酸亜鉛(C)が無水ホウ酸亜鉛である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[3]
前記ホウ酸亜鉛(C)の平均粒子径が10μm以下である、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[4]
成形体100質量%に対して、
ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、
スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、
平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と
芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、
有機酸(E)0〜5質量%と、
有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、
を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を含み、
ISO5660−1規格に準じて測定される、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の値が200kW/m以下である
ことを特徴とする、成形体。
(但し、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の測定は、輻射熱量を50kW/m、コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離を60mmとし、90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t)の成形体を2枚平行に並べた評価用平板試験片を用いるものとする。)
本発明は、高度に難燃化された樹脂組成物であって、着火した場合においても、燃焼バリア層となる嵩高で多孔質のチャーを効率よく発生させ、その結果として燃焼時の発熱量と煙発生量を低減することが可能なポリフェニレンエーテル系の樹脂組成物を提供することができる。
本実施態様におけるコーンカロリーメーターによる測定に用いたコーンカロリーメーターの一例を示す模式図である。 本実施態様におけるコーンカロリーメーターによる測定結果の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための態様(以下、「本実施態様」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
(樹脂組成物)
本実施態様でのポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100質量%に対して、ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、有機酸(E)0〜5質量%と、有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物である。
本実施態様のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、さらに、任意選択的に、改質剤、その他成分を含んでよい。
本実施態様でのポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、上記成分を2軸押出機に代表される溶融混練装置等を用いて、溶融混練することで得ることができる。その混練方法は、成分(A)〜(F)等の添加成分を同時に混練してしてもよいし、予め上記成分の複数成分のブレンド物を原料として調製して混練してもよく、様々な溶融混練の方法が含まれる。
(ポリフェニレンエーテル(A))
ポリフェニレンエーテル(A)(本明細書において、「成分(A)」と称する場合がある。)は、下記一般式(1)及び/若しくは(2)で表される繰り返し単位を有する単独重合体(ホモポリマー)又は共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
Figure 2018070671
・・・(1)
Figure 2018070671
・・・(2)
(一般式(1)、(2)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子及び水素原子からなる群から選ばれる一価の残基である。但し、R及びR、並びに、R及びRが同時に水素原子である場合を除く。)
上記アルキル基の好ましい炭素数は1〜3であり、上記アリール基の好ましい炭素数は6〜8であり、上記一価の残基の中でも水素原子が好ましい。
ポリフェニレンエーテル(A)中に含まれる、上記一般式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位の数については、ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布により様々であるため、特に限定されない。
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、単独重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、及びポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。
特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から2,6−ジメチルフェノール90〜70質量%と2,3,6−トリメチルフェノール10〜30質量%との共重合体がより好ましい。
上述したポリフェニレンエーテル(A)は、一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
ポリフェニレンエーテル(A)は、本発明の効果を損なわず、ポリフェニレンエーテル(A)の耐熱性が低下しすぎない程度であれば、上記一般式(1)、(2)以外の他の種々のフェニレンエーテル単位を含んでいてもよい。
一般式(1)、(2)以外の他の種々のフェニレンエーテル単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特開平01−297428号公報又は特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテルの主鎖中にジフェノキノン等に由来する繰り返し単位が少量結合していてもよい。
ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテルを構成する構成単位の一部又は全部を官能化剤と反応(変性)させた官能化ポリフェニレンエーテルを含んでいてもよいし、官能化ポリフェニレンエーテルであってもよい。上記官能化剤としては、例えば、アシル基を含む化合物が挙げられ、アシル基(例えば、カルボキシル基、酸無水物基、酸アミド基、イミド基、カルボン酸アンモニウム塩に由来する基等)と、アミン、オルトエステル基、及びヒドロキシ基よりなる官能基群から選択される1種以上とを含む化合物であってもよい。
上記官能化ポリフェニレンエーテルとしては、ポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は酸無水物との混合物を溶融混練することにより得られる官能化ポリフェニレンエーテルが好ましく、ポリフェニレンエーテルと無水マレイン酸との混合物を溶融混練することにより得られる無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルがより好ましい。上記無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルは、例えば、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜5質量部の無水マレイン酸を二軸押出機に投入し、270〜335℃の温度で溶融混練して得ることができる。
ポリフェニレンエーテル(A)の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、PPE系樹脂組成物の成形加工性の観点から、1.0以上が好ましく、PPE系樹脂組成物の機械的物性の観点から、5.5以下が好ましく、より好ましくは1.5〜4.5、更に好ましくは2.0〜4.5である。
なお、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算分子量から得られる。
ポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、十分な機械的物性の観点から、0.25dL/g以上であることが好ましく、成形加工性の観点から0.65dL/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.27〜0.63dL/gであり、更に好ましくは0.30〜0.55dL/gであり、特に好ましくは0.33〜0.42dL/gである。
なお、還元粘度は、0.5g/dLのクロロホルム溶液を用いて、温度30℃の条件下、ウベローデ型粘度管を用いて測定することができる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(A)の含有量は、燃焼時にチャーの形成を十分なものとし、火炎発熱速度の低下と低発煙性を引き出すために、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の全量に対して、50質量%以上であり、成形加工が容易になる観点から、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは55〜78質量%、更に好ましくは60〜75質量%、特に好ましくは65〜73質量%の範囲である。
(スチレン系樹脂(B))
スチレン系樹脂(B)(本明細書において、「成分(B)」と称する場合がある。)は、スチレン系化合物を含む単量体成分を、ゴム質重合体存在下又は非存在下において重合して得られる重合体である。上記単量体成分には、スチレン系化合物と共重合可能な化合物が含まれていてもよい。
成分(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
スチレン系樹脂(B)としては、スチレン系樹脂(B)100質量%に対してスチレン系化合物に由来する構成単位を60質量%超含んでよく、好ましくは70質量%以上含んでよい。
上記スチレン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。特に原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましく使用される。
上記スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物;等が挙げられる。
スチレン系樹脂(B)としては、成形品の剛性、耐衝撃性、成形時の溶融流動性のバランスに一層優れる観点から、ハイインパクト・ポリスチレン(HIPS)、ゼネラルパーパス・ポリスチレン(GPPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)等を2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
スチレン系樹脂(B)としては、スチレン系樹脂を単一成分で使用することも可能であり、例えば、耐衝撃性を高める目的で、HIPSを用いることも好適な実施態様である。
HIPSとしては、通常、スチレン系化合物に由来する構成単位70〜99質量%と、ジエンゴムに由来する構成単位1〜30質量%とからなるゴム変性ポリスチレンを好ましく使用することができ、HIPSを構成するジエンゴムとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン系化合物の単独重合体、共役ジエン系化合物と不飽和ニトリル化合物又は芳香族ビニル化合物との共重合体、更には天然ゴム等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、HIPSを構成するジエンゴムとしては、ポリブタジエン、ブタジエン‐スチレン共重合体が特に好ましい。HIPSは、例えば、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合又はそれらの組合せ等の方法により得られる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、PPE系樹脂組成物の全量に対して、0〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜20質量%の範囲である。
スチレン系樹脂(B)は、本実施態様の樹脂組成物において、成形流動性改良と耐衝撃性改良の観点において使用することが好ましいが、40質量%を超えると燃焼時のチャーの形成が不十分となるので、火炎発熱速度の低下と低発煙性を引き出すために40質量%以下とすることが好ましい。
(ホウ酸亜鉛(C))
本発明者は、ホウ酸亜鉛(C)(本明細書において、「成分(C)」と称する場合がある。)をポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合することにより、PPE系樹脂組成物の燃焼時の発熱量と発煙量とを低減することができ、更に、発熱速度の低減過程を安定化することができることを見出した。その作用原理は不明であるが、ホウ酸亜鉛(C)をポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合することにより、PPE系樹脂組成物からなる成形体が着火し燃焼しても、有効な燃焼抑制バリア層となる嵩高で多孔質のチャーを効率的に形成することができ、その結果として、上述する効果を与えることができるものと推察される。
本実施態様において使用されるホウ酸亜鉛(C)として、組成式:2ZnO・3B・3.5HO(酸化物のモル数から「2335型」と呼ばれる)もの、組成式:4ZnO・B・HO(脱水開始温度が415℃であるため「415型」と呼ばれる)もの、組成式:2ZnO・3B(500℃まで安定なので「500型」と呼ばれる)ものが、具体的に挙げられ、本実施態様では約300℃の溶融樹脂温度で溶融混練する際に安定に存在することができる、415型、500型が好ましく、結晶構造中に結合水を含まない無水ホウ酸亜鉛である500型がより好ましい。
本実施態様において、ホウ酸亜鉛(C)の平均粒子径は、0.1〜20μmが好ましく、より好ましくは0.3〜15μm、更に好ましくは0.5〜12μmであり、特に好ましくは0.8〜10μmである。
なお、ホウ酸亜鉛(C)の平均粒子径は、レーザー散乱法で測定することができ、より具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して、測定することができる。
本実施態様の樹脂組成物において、成分(C)の含有量は、PPE系樹脂組成物の全量に対して、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜8質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。0.1質量%以上であれば、燃焼時のチャーの形成促進効果が十分であり、10質量%以下であれば、PPE系樹脂組成物からなる成形体の耐衝撃性や伸び等の機械的物性や成形品外観を十分に確保することができる。
(芳香族リン酸エステル系難燃剤(D))
芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)(本明細書において、「成分(D)」と称する場合がある。)は、非臭素系の難燃剤である。成分(D)にも、PPE系樹脂組成物の燃焼時のチャーを発生させる作用がある。また、成分(D)は、PPE系樹脂組成物の熱安定性を高め、更には溶融流動性を高める機能も有する。
成分(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキシノンビスフェノールホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等のトリフェニル置換タイプの芳香族リン酸エステル類が好適に用いられる。中でもビスフェノールAビスホスフェートがより好適に用いられる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、PPE系樹脂組成物の全量に対して、5〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは8〜20質量%、更に好ましくは10〜17質量%、特に好ましくは11〜15質量%の範囲である。
成分(D)の含有量は、所望とする難燃性を付与するために5質量%以上が好ましく、PPE系樹脂組成物の熱変形温度の保持の観点から、25質量%以下が好ましい。
(有機酸(E))
有機酸(E)(本明細書において、「成分(E)」と称する場合がある。)は、本実施態様の樹脂組成物において、チャー形成を促進させる作用がある。
有機酸としては、広範な種類の酸性を有する有機化合物が挙げられるが、特に効果が高い有機酸として、少なくとも1つのカルボン酸基を含む有機カルボン酸化合物が挙げられる。
有機酸(E)は、一分子あたり複数のカルボン酸基を有するものであってもよく、カルボン酸基以外の他の官能性置換基、例えば、ヒドロキシル基、エーテル基、酸無水物基を有するものであってもよい。
有機酸(E)としては、C3〜C20の脂肪族モノカルボン酸(例えば、ステアリン酸、ブタン酸)、C3〜C20の脂肪族ポリカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸を含む。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アコニチン酸)、芳香族カルボン酸、不飽和ジカルボン酸(例えば、アクリル酸、ブテン酸、メタクリル酸、ペンテン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、リノール酸等)、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸、乳酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、酒石酸、グリコール酸、チオグリコール酸、酢酸、ハロゲン化酢酸(例えば、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、及びトリクロロ酢酸)、プロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、上記の無水物、及びこれらの混合物を挙げることができる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(E)の含有量は、PPE系樹脂組成物の全量に対して、0〜5質量%であり、0.01〜4質量%が好ましく、0.05〜3質量%がより好ましく、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは、0.2〜1質量%である。
(有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F))
本実施態様のPPE系樹脂組成物において用いられる、有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)(本明細書において、「成分(F)」と称する場合がある。)は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に対して燃焼時のチャーを一層効率よく発生させる作用効果を有する。
成分(F)は、前述の有機酸(E)と併用して用いることもできるが、成分(E)を使用せずに成分(F)のみを使用することも可能である。
成分(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(F)を含むと、コーンカロリーメーターによる発熱速度測定(ISO5660−1に準ずる)において、強度があって嵩高い燃焼抑制バリアとして有効に作用するチャーを形成し、発熱速度を低レベルとし、煙発生量を抑制する効果が得られる。成分(F)の存在により、膨張性の高いチャーが形成され、燃焼時に脱ガス反応を高め、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の炭化反応を促進すると推定される。
更に、本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(F)を含むと、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を溶融混練により製造する際に、不要な着色を避けることができ、また、発生する揮発成分も少ないのでコンパウンド作業環境を改善できる利点を有する。
有機スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸が好ましい。
有機スルホン酸アルカリ金属塩としては、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩を好ましく使用することができ、具体例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のアルカリ金属塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のアルカリ金属塩、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。この場合、好適なアルカリ金属は、ナトリウム又はカリウムであり、カリウムがより好ましい。
パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩の好ましい具体例としては、パーフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロエタンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロプロパンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロブタンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロメチルブタンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロヘキサンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロヘプタンスルホン酸アルカリ金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸アルカリ金属塩等が挙げられ、好適なアルカリ金属は、ナトリウム、カリウムであり、カリウムがより好ましい。中でも、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩が好適に用いられる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物において、成分(F)の含有量は、PPE系樹脂組成物全量に対して、0〜5質量%であり、0.01〜5質量%が好ましく、0.03〜0.8質量%がより好ましく、0.05〜0.7質量%が更に好ましく、0.08〜0.5質量%が特に好ましく、0.1〜0.3質量%が最も好ましい。
(改質剤)
本実施態様のPPE系樹脂組成物では、耐衝撃性の改善、成形時の流動性の改善、金型からの離型性の改善、等を目的として、更に必要に応じて、各種の改質剤を使用することができる。
改質剤としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、コア・シェル型グラフト共重合体、オレフィン系エラストマー等のゴム状弾性(エントロピー弾性)を示す高分子材料等、更には、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。
改質剤がスチレン系熱可塑性エラストマーである場合、スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量%に対してスチレン系化合物に由来する構成単位を60質量%以下含んでよく、好ましくは50質量%以下含んでよく、より好ましくは40質量%以下含んでよい。
ここで、スチレン系熱可塑性エラストマーとは、アルケニル芳香族化合物重合体ブロック、好ましくはスチレンブロック(A)とジエン化合物重合体ブロック、好ましくはブタジエン又はイソプレンブロック(B)のAB(ジブロック)型共重合体、及びABA(トリブロック)共重合体、あるいはこれらの水素化又は部分水素化ブロック共重合体を示す。ここで、ジエン化合物重合体ブロックの含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー全体100質量%に対して、40質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。
改質剤の含有量は、PPE系樹脂組成物全量に対して、それぞれの成分として、0.5〜5質量%の範囲、好ましくは0.8〜3質量%、更に好ましくは1〜2質量%の範囲である。
(その他成分)
本実施態様の樹脂組成物においては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や着色剤、離型剤等のその他の成分を、PPE系樹脂組成物全量に対して、0.001〜3質量%の割合で含有することが可能である。上記その他の成分の含有量としては、好ましくは0.001〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%の範囲内である。
更に本実施態様のPPE系樹脂組成物においては、更に無機質充填材を使用することができる。
好ましい無機充填材として、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスミルドファイバー、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸アルミナ、シリカ、マイカ、タルク、クロライト、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト等を使用することができ、PPE系樹脂組成物全量に対して、40質量%以下の使用量が好ましい。
なお、本実施形態のPPE系樹脂組成物は、樹脂組成物の成形品外観をより良好にする観点から、ポリシロキサンを含まないことが好ましい。ここで、含まないとは、樹脂組成物の全量に対して、10質量%以下であることをいう。
含まれないことが好ましいポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン構造を主体とするポリシロキサンが挙げられ、特に、JIS K2283規格で測定される25℃における動粘度が300mm/s以下のポリシロキサンが挙げられる。
(ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造方法)
本実施態様の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、必要に応じて、成分(E)、成分(F)、改質剤、その他の成分を溶融混練することによって、製造することができる。
本実施態様の樹脂組成物を製造するための装置や諸条件については、以下に限定されるものではないが、押出機を用いて製造することが好ましく、特にPPE系樹脂組成物を大量に安定して製造するには、製造効率の観点から二軸押出機が好適に用いられる。
二軸押出機のスクリュー径は、25〜90mmが好ましく、より好ましくは40〜70mmである。
溶融混練時の条件としては、押出機のシリンダー設定温度が260〜330℃、スクリュー回転数が150〜450rpm、押出レートが40〜250kg/hの条件で溶融混練することが、好適な条件として挙げられる。
各種原料の押出機への供給は(A)成分、(B)成分、(C)成分、成分(E)、成分(F)、改質剤、及び/又はその他の成分(但し、無機充填材を除く)を押出機のトップ(上流側)から供給し、成分(D)を押出機の中段又は下流側で液添ノズルを介してギアポンプ等の定量ポンプにより所定量を供給し、混練を行うことが好ましい方法として挙げられる。
本実施態様のPPE系樹脂組成物は、ISO5660−1規格に準じて測定される、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))が、200kW/m以下であることが好ましく、より好ましくは180kW/m以下であり、更に好ましくは150kW/m以下である。
ここで、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の測定は、輻射熱量を50kW/m、コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離を60mmとし、PPE系樹脂組成物からなる90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t))の平板を2枚平行に並べて評価用平板試験片とする。
上記最大発熱速度の測定において、本実施態様のPPE系樹脂組成物の、測定開始から最大発熱速度に到達するまでにかかった時間は、100〜500秒であることが好ましく、より好ましくは200〜450秒である。
本実施態様のPPE系樹脂組成物は、ISO5660−1規格に準じたコーンカロリーメーターによる測定において、測定開始から測定開始後3分までの合計発熱量が、10〜20MJ/mであることが好ましく、より好ましくは12〜16MJ/mである。
なお、測定開始から測定開始後3分までの発熱量におけるコーンカロリーメーターの測定条件は、上述の最大発熱速度と同様の条件とする。
[成形品]
本実施態様のPPE系樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び、圧空成形等の方法が好適に使用され、特に成形品の外観特性及び量産性の観点から、射出成形が好ましく使用される。
本実施形態の成形体は、上述の本実施形態のPPE系樹脂組成物からなるものとしてもよい。
本実施態様の成形体は、ISO5660−1規格に準じて測定される、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))が、200kW/m以下であり、好ましくは180kW/m以下であり、より好ましくは150kW/m以下である。
ここで、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の測定は、輻射熱量を50kW/m、コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離を60mmとし、90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t)の成形体を2枚平行に並べて評価用平板試験片とする。
上記のコーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の測定用の試験片を成形品から得る場合は、成形品を粉砕処理した後に、射出成形、圧縮成形等の手法により得ることができる。
以下、具体的に実施例及び比較例を挙げて本発明を説明する。
実施例及び比較例に示す物性の評価方法、及び原材料を以下に示す。
[測定方法]
(1)コーンカロリーメーターによる測定
(試験片の作成)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを90℃の熱風乾燥機を使用して1時間乾燥した。乾燥後の樹脂組成物を、射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度90℃、射出圧力(ゲージ圧70[MPa])、射出速度(パネル設定値)80%、射出時間/冷却時間=10秒/30秒に設定して、90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t)の平板を成形した。
(コーンカロリーメーターによる測定)
コーンカロリーメーター型式C3(株式会社 東洋精機製作所製)を使用して、実施例及び比較例により製造した樹脂組成物の発熱速度(Heat Release Rate)、煙濃度の経時変化等を評価した。
測定はISO5660−1に準ずるものであり、輻射熱量は50kW/m、コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離は60mmとした。コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離は、通常25mmとするのが標準であるが、本実施態様ではチャーの形成量が多いので60mmとした。
測定は最大で20分間行ったが、必要な測定値が得られた場合には測定時間を短縮したこともあった。
なお、ISO5660−1規格では100mm×100mmの平板が試験片の形状であるが、本願実施例では樹脂組成物からなる90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t)の2枚の平板を、2枚の平板の90mmの辺が向かい合うように、且つ2枚の平板が重ならないように平行に並べて評価用平板試験片とした。
図1に評価に用いたコーンカロリーメーターの模式図を示す。図1において、評価用平板試験片はサンプルホルダー(j)にセットされ、コーンヒーター(h)より、50kW/mの輻射熱で評価用平板試験片が加熱される。コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離は25mmである。燃焼ガスは集煙フード(g)を介して、排気管内に導かれ、発熱速度(HRR)(単位:kW/m)はガスサンプリング装置(e)を経由し、ガス分析装置(f)において酸素消費量より算出される。煙濃度(単位:1/m)はレーザー式煙濃度測定装置(d)により測定する。試験片の質量変化はロードセル(k)により計測される。
(1−1)チャーの嵩高さ
厚み2.5mmの平板を2枚並べてコーンカロリーメーターでの発熱速度試験を行う過程で、20分間の試験中において初期の評価用平板試験片上面から成長したチャーの最大高さを目視観察し、チャーの形成状況を以下の区分で判定した。
○(良好):5cm以上
△(不良):5cm未満
(1−2)測定開始後3分間の合計発熱量(単位:MJ/m
作製した試験片について、コーンカロリーメーターによる測定開始から3分後までの発熱量積算値(T180)(MJ/m)を測定した。T180の測定開始時は試験片の着火時刻とした。T180は初期3分間の発熱量を示すものであり、燃焼バリア層として有効なチャーが形成されるほど数値が小さくなる。
(1−3)最大発熱速度(単位:kW/m)、最大発熱速度に到達するまでの時間(単位:秒)
作製した試験片について、コーンカロリーメーターにより、測定時間20分間内での発熱速度の最大値HRR(max)(kW/m)と、最大発熱速度に到達するまでの時間(秒)とを測定した。
(1−4)低発煙性
コーンカロリーメーターに装備されたレーザー式煙濃度測定装置を用いて、煙濃度(単位:1/m)の最大値を測定し、以下の区分で判定した。
◎(優れる):最大煙濃度が5m−1未満
○(良好):最大煙濃度が5m−1以上6m−1未満
×(劣る):最大煙濃度が6m−1以上
(1−5)成形品外観(シルバーストリークスの発生状況)
コーンカロリーメーターによる測定用に作製した前述の射出成形試験片(90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t))の平板に対して、表面のシルバーストリークスの発生状況を以下の区分で判定した。なお、成形時のゲートは2mm×4mmのタブ状ゲートとし、試験片の短辺部中央に設けた。
○(良好):無し又は軽微
△(不良):多い
×(劣る):激しく多い
[原材料]
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(A−1);還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)が0.51dL/gであるパウダー状のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(PPE)。
<スチレン系樹脂(B)>
(B−1);ペレット形状のハイインパクト・ポリスチレン(HIPS)(商品名:CT60[登録商標]、ペトロケミカルズ社製)。
<ホウ酸亜鉛(C)>
(C−1);粉末上の平均粒子径9μmの無水ホウ酸亜鉛(商品名:ファイヤーブレイク500[登録商標]、リオ・ティント・ミネラルズ社製)
<芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)>
(D−1);粘性液体状のビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(BDP)(商品名:CR741[登録商標]、大八化学社製)。
<有機酸(E)>
(E−1);クエン酸;和光純薬工業(株)製
<有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)>
(F−1);粉体状のパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(KFBS)(商品名:F114[登録商標]、DIC社製)。
<その他の成分>
SEBS;ペレット状の水素化スチレン・ブタジエン・スチレンブロックコポリマー(商品名:クレイトンG1651[登録商標]、クレイトンポリマー社製)。
LDPE;ペレット状の低密度ポリエチレン(商品名:サンテック−LD M2004[登録商標]、旭化成株式会社製)。
ZnO;酸化亜鉛 和光純薬工業(株)製。
ZnS;硫化亜鉛 和光純薬工業(株)製。
CB;着色剤としてのカーボンブラック(#52 三菱化学(株)製)。
シリコーン;25℃の動粘度が40mm/s、アミノ基当量0.4mmol/gである液状アミノ変性シリコーン(アミノ変性シリコーン1)(商品名:TSF4701[登録商標]、モメンティブ社製)。
[実施例1〜5、比較例1〜4]
2軸押出機(ZSK−25、コペリオン社製、L/D=53)を用いて表1に示す組成の溶融混練組成物を調製した。押出機への原料の投入は、表1に示す各成分の中で、成分(D)を除いたものを所定比率で予め機械的に混合し押出機のトップ位置から重量フィーダーを使用して所定速度で投入し、押出機の中段位置より80℃に加熱した成分(D)を、インジェクションノズルを介してギアポンプにて所定量をフィードする。
押出機のシリンダー設定温度を300℃、スクリュー回転数を200rpm、押出レートを20kg/hr、ベント真空度を8kPaの条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の評価結果を下記表1に示す。
Figure 2018070671
表1に示す実施例により、本願発明の樹脂組成物の優れたチャー形成作用、低発熱性、低発煙性が明らかとなった。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いて成形される各種の成形品は、難燃性に極めて優れており、着火した場合においても、燃焼バリア層となる嵩高で多孔質のチャーが効率よく発生し、その結果として燃焼時の発熱量と煙発生量を低減することができる。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、各種成形品への成形加工性に優れるポリフェニレンエーテル系の樹脂組成物であり、鉄道車両、航空機、船舶等の輸送機関に使用される樹脂製品、更には公共の建物に使用おいて要求される延焼性、着火性・発熱性・発煙性・毒性等の火災安全性能に関わる要求に対応できる可能性がある。
また、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、火災時の火炎発熱、煙濃度、煙毒性の低減が要求される、鉄道車両、航空機、船舶等の輸送機関に使用される樹脂製品や、公共の建物に使用される樹脂製品に用いることが期待される。
更に、本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、軽量性、耐熱性、機械的物性、成形加工性、耐酸アルカリ性、寸法安定性、電気特性等にも優れるために、難燃性が要求される、家電OA、事務機、情報機器、自動車分野等にも有用である。
a:流量測定用オリフィス
b:排気温度測定用熱電対
c:排気ブロア
d:レーザー式煙濃度測定装置
e:ガスサンプリング装置
f:ガス分析装置
g:集煙フード
h:コーンヒーター
i:スパーク点火器
j:サンプルホルダー
k:ロードセル

Claims (4)

  1. ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物100質量%に対して、
    ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、
    スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、
    平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と、
    芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、
    有機酸(E)0〜5質量%と、
    有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、
    を含むことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  2. 前記ホウ酸亜鉛(C)が無水ホウ酸亜鉛である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  3. 前記ホウ酸亜鉛(C)の平均粒子径が10μm以下である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  4. 成形体100質量%に対して、
    ポリフェニレンエーテル(A)50〜90質量%と、
    スチレン系樹脂(B)0〜40質量%と、
    平均粒子径20μm以下のホウ酸亜鉛(C)0.1〜10質量%と
    芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%と、
    有機酸(E)0〜5質量%と、
    有機スルホン酸及び/又は有機スルホン酸アルカリ金属塩(F)0〜5質量%と、
    を含むポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を含み、
    ISO5660−1規格に準じて測定される、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の値が200kW/m以下である
    ことを特徴とする、成形体。
    (但し、コーンカロリーメーターによる最大発熱速度(HRR(max))の測定は、輻射熱量を50kW/m、コーンヒーター下辺と評価用平板試験片の上面までの距離を60mmとし、90mm(L)×50mm(W)×2.5mm(t)の成形体を2枚平行に並べた評価用平板試験片を用いるものとする。)
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