JP2018070396A - ブラウンミラーライト型酸化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブラウンミラーライト型酸化物を品質にバラツキを生じることなく効率的に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】製造しようとするブラウンミラーライト型酸化物の組成の各成分をそれぞれ含む2種以上の固体化合物を原料としてブラウンミラーライト型酸化物を製造する方法であり、原料である2種以上の固体化合物を混合する工程Aと、この工程Aを経た混合原料を微粉状に粉砕、好ましくはメジアン粒径0.8μm以下に粉砕する工程Bと、この工程Bで得られた微粉状の混合原料を固相状態で焼成する工程Cを有する。微粉状の混合原料を固相状態で焼成することにより、分子レベルの接触が反応に十分な状態となるため、混合原料全体で合成反応が適切に生じ、均一な品質のブラウンミラーライト型酸化物が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気などの酸素含有混合ガスから酸素を選択的に分離して吸蔵する酸素吸蔵材料として好適なブラウンミラーライト型酸化物の製造方法に関する。
製鉄をはじめとする様々な工業において酸素が大量に使用されている。また、様々な燃焼プロセスにおいては、一般に空気による燃焼が行われているが、燃焼効率の改善や窒素酸化物の発生抑制などの観点から、酸素を用いた燃焼技術の展開が望まれている。このような酸素の需要を満たすためには、酸素を大量かつ安価に製造する技術が必要となる。空気などの酸素含有混合ガスから酸素を分離する技術として、例えば、深冷分離法、圧力スイング吸着法(PSA法)、温度スイング吸着法(TSA法)などが知られている。
深冷分離法は、混合ガス中の各成分の沸点の違いを利用して目的ガス成分を蒸留分離する方法であり、高純度の酸素が得られる反面、超低温が必要であるため大量のエネルギーが必要となる。一方、PSA法やTSA法は、原料ガスをゼオライトなどのような吸着物質に通して不純物または酸素を吸着分離し、所要純度の目的ガスを得るものであり、深冷分離法に比べて酸素の純度はやや劣るものの、吸着物質の性能によってはエネルギーコストを大幅に削減できる可能性がある。
例えば、特許文献1には、La0.3Sr0.7CoO3−δなどのような酸素欠陥を持つ酸化物(ペロブスカイト構造を有する複合酸化物)を酸素吸蔵材料として用い、温度を変化させることにより酸化物の酸素欠陥量を変化させ、その酸素欠陥量の変化に応じて放出された酸素を収集することにより、大気から高濃度酸素ガスを製造する方法が示されている。しかし、この特許文献1に示される酸素吸蔵材料、例えば、La0.3Sr0.7CoO3−δは、レアアースであるLa(ランタン)を含むため高価であり、このような酸素吸蔵材料を使用した方法で製造される酸素は高コストなものとなる。
一方、特許文献2には、酸素濃縮に好適な酸素吸蔵材料として、酸素不定比性を有する特定の金属酸化物(ブラウンミラーライト型酸化物)が開示されている。このブラウンミラーライト型酸化物としては、例えば、Ca、Al、Mnの酸化物により構成されるCaAlMnO5+δがあり、高価なレアアースを使用しないため低コストに製造できる可能性がある。
このブラウンミラーライト型酸化物(CaAlMnO5+δ)の製造方法としては、非特許文献1に示すような液相燃焼合成法が知られている。この方法では、水溶液化した原料(Ca、Al、Mnの硝酸塩)と燃料(アミノ酸)の混合物を脱水してゲル状物質とし、これを加熱することで燃料に着火、反応させ、ブラウンミラーライト型の酸化物が合成される。
特開2006−169070号公報 特開2011−121829号公報
能村貴宏、外2名、「液体燃焼合成製酸素吸蔵物質Ca2AlMnO5の酸素吸脱蔵特性」、材料とプロセス、一般社団法人日本鉄鋼協会、平成25年9月1日、Vol.26、No.2、p.832
しかし、液相燃焼合成法でブラウンミラーライト型酸化物を大量生産しようとする場合、ゲル状物質を作製する際の混錬を均一に行うことが困難であるため、反応が不均一になり、合成されたブラウンミラーライト型酸化物の品質にバラツキを生じる恐れがあり、また、連続操業も困難であると予想される。そのため、液相燃焼合成法によるブラウンミラーライト型酸化物の製造は、未だ実用化には至っていない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、ブラウンミラーライト型酸化物を品質にバラツキを生じることなく効率的に製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、製造しようとするブラウンミラーライト型酸化物の組成の各成分をそれぞれ含む2種以上の固体化合物を混合し、この混合原料を微粉状に粉砕した後、固相状態で焼成することにより、均一な品質のブラウンミラーライト型酸化物を効率的に合成できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]製造しようとするブラウンミラーライト型酸化物の組成の各成分をそれぞれ含む2種以上の固体化合物を原料としてブラウンミラーライト型酸化物を製造する方法であって、
原料である2種以上の固体化合物を混合する工程(A)と、
該工程(A)を経た混合原料を微粉状に粉砕する工程(B)と、
該工程(B)で得られた微粉状の混合原料を固相状態で焼成する工程(C)を有することを特徴とするブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
[2]上記[1]の製造方法において、工程(B)では、混合原料をメジアン粒径0.8μm以下に粉砕することを特徴とするブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
[3]上記[1]又は[2]の製造方法において、Ca、Al、Mnをそれぞれ含有する固体化合物を原料とし、CaAlMnO5+δを製造することを特徴とするブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法で製造された微粉状のブラウンミラーライト型酸化物にバインダーを混合した後、造粒機で造粒し、この造粒物を熱処理して成形体とすることを特徴とする酸素吸蔵材料の製造方法。
本発明は、従来法のようにゲル状物質を作製することなく、固相法でブラウンミラーライト型酸化物を合成するため、ブラウンミラーライト型酸化物を品質にバラツキを生じさせることなく効率的に製造することができる。このため、均一な品質のブラウンミラーライト型酸化物を大量生産することができる。
実施例の製造フローを示す説明図 実施例における混合原料の粉砕前及び粉砕後の粒度分布を示すグラフ 実施例においてメジアン粒径2.1μmの混合原料を焼成して得られたサンプルのXRDチャート 実施例においてメジアン粒径0.8μmの混合原料を焼成して得られたサンプルのXRDチャート
本発明が製造対象とするブラウンミラーライト型化合物とは、一般式A(AはAサイト、BはBサイトを表す)で表される複合酸化物であり、ABO2.5とも表すことができる。この化合物は、ABOで表されるペロブスカイト型化合物に対して酸素が少ない酸素欠損型化合物である。
本発明は、製造しようとするブラウンミラーライト型酸化物の組成の各成分をそれぞれ含む2種以上の固体化合物を原料としてブラウンミラーライト型酸化物を製造する方法であり、原料である2種以上の固体化合物を混合する工程(A)と、この工程(A)を経た混合原料を微粉状に粉砕する工程(B)と、この工程(B)で得られた微粉状の混合原料を固相状態で焼成する工程(C)を有する。
以下、本発明の製造方法の詳細を、ブラウンミラーライト型酸化物としてCaAlMnO5+δ(δは吸蔵酸素を示す)を製造する場合を例に説明する。
CaAlMnO5+δを製造する場合、その構成成分(金属成分)であるCa、Al、Mnをそれぞれ含む固体化合物を原料として用いる。この固体化合物としては、通常、CaCO、Al、MnOが用いられる。
本発明法において、これらの固体化合物を原料とした場合、下記(1)式の反応によりCaAlMnO5+δが合成される。
8CaCO+2Al+4MnO→4CaAlMnO+8CO+O …(1)
原料となるCaCO、Al、MnOは粉粒状であり、工程(A)では、これらを化学量論比に従い計量し、均一に混合して混合原料とする。原料の配合比が化学量論比に基づく配合比から大きく外れると、焼成後に未反応の原料が残存したり、CaAlMnO5+δに至らない中間化合物ができてしまうので、化学量論比になるべく近い配合比で配合することが好ましい。具体的には、原料(CaCO、Al、MnO)の相互の配合比が化学量論量の0.9〜1.1倍の範囲になるように配合するのが好ましい。原料の混合は、例えば、配合した原料をダルトンミキサーに投入して5分間程度混錬する、などの方法で行う。
原料を粉砕前に混合するのは、原料により硬さが異なるため、原料毎に粉砕した後に混合すると、混合原料の粒度分布が大きくなり、焼成後に未反応の原料が残存したり、中間化合物ができてしまう恐れがあるからである。
工程(B)では、上記混合原料を微粉状に粉砕するが、粉砕粒度が粗いと焼成後に未反応の原料が残存したり、中間化合物ができてしまうので、メジアン粒径0.8μm以下に粉砕することが好ましい。ここで、メジアン粒径(D50)とは、横軸を対数目盛りで篩目開き、縦軸をその篩を通過する材料の質量百分率としてプロットした累積粒径分布曲線において、質量分率が50%となる粒径(篩目開き)である。なお、微粉状の混合原料の粒度はレーザー法などの公知の方法で測定することができる。
混合原料の粉砕手段としては、ボールミル、ロッドミル、振動ミルなどの任意手段を用いることができるが、なかでもボールミルが好ましく、また、メジアン粒径0.8μm以下まで微粉砕するには、特にボールミルによる湿式粉砕が好ましい。このボールミルによる湿式粉砕は、混合原料を溶媒(例えば、水+有機溶媒)に分散させた状態で粉砕がなされる。
工程(C)では、上記微粉状の混合原料を固相状態で焼成する。焼成温度は1250〜1350℃が好ましく、1300〜1350℃がより好ましい。焼成温度が1250℃未満では、上記(1)式の反応が十分に生じない恐れがあり、一方、1350℃を超えると原料が溶融する恐れがある。焼成時間は24〜120時間程度が好ましい。
焼成手段(焼成炉)は任意であり、例えば、電気炉、キルン炉などを用いることができる。また、大量生産などの観点から特に好ましい焼成炉としては、バッチ式のキルン炉や連続式のトンネル炉などが挙げられる。
また、焼成雰囲気は、窒素などの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。
通常、微粉状の混合原料は容器などに保持された状態で焼成炉に入れられ、焼成される。
以上のように微粉状の混合原料を固相状態で焼成することにより、分子レベルの接触が反応に十分な状態となるため、混合原料全体で上記(1)式の反応が適切に生じ、均一な品質のCaAlMnO5+δを得ることができる。
また、以上述べたような本発明法によれば、CaAlMnO5+δ以外のブラウンミラーライト型酸化物を製造することもできる。
本発明法で製造されるブラウンミラーライト型酸化物は、酸素の吸収・放出機能を有するため、特にPSA法やTSA法などに用いる酸素吸蔵材料(酸素吸蔵剤)として好適であるが、この用途に限定されるものではなく、例えば、排ガス浄化用の触媒材料、酸化還元用の触媒材料、固体酸化物燃料電池の正極材料、セラミック材料などとしても用いることができる。
本発明法で製造されたブラウンミラーライト型酸化物をPSA法やTSA法などの酸素吸蔵材料(酸素吸蔵剤)として用いるには、例えば、製造された微粉状のブラウンミラーライト型酸化物にバインダー(例えば、セルロースや糖蜜などの有機バインダー)を混合した後、造粒機で造粒し、この造粒物を熱処理して成形体とし、これを酸素吸蔵材料とする。
本発明法(固相法)に従いブラウンミラーライト型酸化物(CaAlMnO5+δ)を製造した。製造フローを図1に示す。
原料には、炭酸カルシウム試薬296.3g、酸化アルミニウム試薬75.5g、酸化マンガン試薬128.7gを用いた。これらの原料をダルトンミキサーで混合し、この混合原料をボールミルによる乾式粉砕でメジアン粒径2.1μmと1.1μmに、ボールミルによる湿式粉砕でメジアン粒径0.8μmと0.6μmに、それぞれ粉砕した。図2に、混合原料の粉砕前の粒度分布と、各メジアン粒径に粉砕後の混合原料(a)〜(d)の粒度分布を示す。
これら粉砕された混合原料(a)〜(d)のうちの各10gを、窒素雰囲気の焼成炉において焼成温度1300℃、焼成時間24時間で焼成した。このようにして得られたサンプル(焼成体)について、X線回折による成分分析を行った。図3にメジアン粒径2.1μmの混合原料(a)を焼成して得られたサンプルのX線回折による分析結果(XRDチャート)を、図4にメジアン粒径0.8μmの混合原料(c)を焼成して得られたサンプルのX線回折による分析結果(XRDチャート)を、それぞれ示す。
これによれば、いずれのサンプルもCaAlMnOの生成が認められるが、図3に示すメジアン粒径2.1μmの混合原料(a)を焼成して得られたサンプルでは、中間化合物(CaAl)や未反応原料(MnO)が検出されており、これら不純物を含むブラウンミラーライト型酸化物となっている。これに対して、図4に示すメジアン粒径0.8μmの混合原料(c)を焼成して得られたサンプルでは、図3のような中間化合物(CaAl)や未反応原料(MnO)は検出されず、不純物のない単相のブラウンミラーライト型酸化物となっている。
表1に、メジアン粒径1.1μmの混合原料(b)を焼成して得られたサンプル、メジアン粒径0.6μmの混合原料(d)を焼成して得られたサンプルを含めたX線回折による分析結果(不純物の有無)を示す。この分析結果では、メジアン粒径1.1μmの混合原料(b)を焼成して得られたサンプルでも、図3に示されるメジアン粒径2.1μmの混合原料(a)を焼成して得られたサンプルほどではないものの、不純物(中間化合物、未反応原料)が検出された。これに対して、メジアン粒径0.6μmの混合原料(d)を焼成して得られたサンプルでは、図4に示されるメジアン粒径0.8μmの混合原料(c)を焼成して得られたサンプルと同様、不純物は検出されなかった。以上の結果から、不純物のない単相のブラウンミラーライト型酸化物を得るためには、混合原料の粉砕工程で混合原料をメジアン粒径0.8μm以下に粉砕することが望ましいことが判る。
Figure 2018070396
また、焼成温度の影響を調査するため、メジアン粒径0.8μmの混合原料(c)(10g)を、窒素雰囲気の焼成炉において、焼成温度を1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃とし、焼成時間24時間で焼成し、得られたサンプル(焼成体)についてX線回折による成分分析を行った。その分析結果(不純物の有無)を表2に示す。これによれば、焼成温度1200℃で焼成して得られたサンプルでは、図3に示すような不純物(中間化合物、未反応原料)が検出された。一方、焼成温度1400℃で焼成して得られたサンプルでは、不純物は検出されなかったが、一部に混合原料の溶融が認められた。これに対して、焼成温度1250〜1350℃で焼成して得られたサンプルでは、図4に示されるサンプルと同様、不純物は検出されず、また、混合原料の溶融も認められなかった。以上の結果から、焼成温度は1250〜1350℃が望ましいことが判る。
Figure 2018070396

Claims (4)

  1. 製造しようとするブラウンミラーライト型酸化物の組成の各成分をそれぞれ含む2種以上の固体化合物を原料としてブラウンミラーライト型酸化物を製造する方法であって、
    原料である2種以上の固体化合物を混合する工程(A)と、
    該工程(A)を経た混合原料を微粉状に粉砕する工程(B)と、
    該工程(B)で得られた微粉状の混合原料を固相状態で焼成する工程(C)を有することを特徴とするブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
  2. 工程(B)では、混合原料をメジアン粒径0.8μm以下に粉砕することを特徴とする請求項1に記載のブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
  3. Ca、Al、Mnをそれぞれ含有する固体化合物を原料とし、CaAlMnO5+δを製造することを特徴とする請求項1又は2に記載のブラウンミラーライト型酸化物の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造された微粉状のブラウンミラーライト型酸化物にバインダーを混合した後、造粒機で造粒し、この造粒物を熱処理して成形体とすることを特徴とする酸素吸蔵材料の製造方法。
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