JP2018069604A - プリプレグ積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プリプレグを積層して厚肉化したとき、成形性を維持しつつ、強度を向上させることができるプリプレグ積層体及びその製造方法を提供する。【解決手段】積層プリプレグは、補強繊維としてのカーボン繊維よりなる織物に樹脂を含浸させた第1プリプレグ基材12に切込み13を有する切込みプリプレグ14a、14bを8層に積層して構成される。プリプレグ積層体10は、前記積層プリプレグの上下両端面及び積層された8層の切込みプリプレグ14a、14bの中央位置に第2プリプレグ基材15が配置されて構成されている。すなわち、第2プリプレグ基材15は、切込みプリプレグ14a、14bの4層毎に配置されている。この第2プリプレグ基材15は、第1プリプレグ基材12の補強繊維よりも延性を有するガラス繊維に樹脂を含浸させて構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、車載用部材、航空機用部材、工具部材等の成形体を得るための材料として使用され、カーボン繊維等の補強繊維に樹脂を含浸させたプリプレグ基材から形成されるプリプレグ積層体及びその製造方法に関する。
カーボン繊維強化樹脂〔CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)〕は軽量かつ高強度の材料であることから、多方面において利用されている。そのうち、マトリックス材としてポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を使用したカーボン繊維強化熱可塑性樹脂〔CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)〕は、金属と同様にプレス成形でき、優れた機械的特性を発現できるため複合材料として有用である。
しかしながら、カーボン繊維を含む複合材料は繊維方向には伸びがほとんどなく、繊維方向以外の方向には塑性が容易であるという成形の異方性を有していることから、成形性に欠けるという問題がある。このため、CFRTPのカーボン繊維に切込みを形成し、CFRTPの成形性を高める技術が提案されている。
この種のCFRTPのプリプレグが例えば特許文献1に開示されている。このプリプレグは補強繊維の第1と第2の織糸からなる織物と熱可塑性樹脂とを有するプリプレグであって、前記織糸に対して斜め方向に延び、平行に配列された断裂切断線上において断続的に形成された切込みを有している。ところが、このCFRTPのプリプレグを積層し固化一体化したCFRTPは成形性が改善される一方、CFRTPの強度がある程度低下するという問題が生ずる。
この点を改善したCFRTPが非特許文献1に開示されている。これはCFRTPの片面又は両面にガラス繊維強化熱可塑性樹脂〔GFRTP(Glass Fiber Reinforced Thermoplastics)〕を配置したものである。この場合には、CFRTPの成形性の低下を抑制し、強度の改善を図ることができる。
特開2015−163660号公報
第40回複合材料シンポジウム予稿集
前述した非特許文献1に記載されている従来構成のCFRTPにおいては、CFRTPの厚みが薄い場合には成形性と強度とをバランス良く発揮することができる。これは、引張荷重負荷時に、表面にGFRTPがない場合には表面のプリプレグの切込みを起点にして亀裂が進展していくが、GFRTPを表面に張り付けることによって、その進展が抑制されるためである。
しかしながら、プリプレグを複数、例えば4層〜8層に積層して厚肉化したときには、CFRTPの強度が大きく低下するという問題があった。それは積層数が増えると、まずその積層材間でせん断応力によって、縦割れが生じる。そうすると縦割れの表面にプリプレグの切込みが露出し、そこから亀裂が進展するためである。
このため、プリプレグを積層して実使用上有用な厚みとなるように厚肉化したとき、それを加熱及び加圧して成形された成形体は、実用的な強度を発揮することができない。
そこで、本発明の目的とするところは、プリプレグを積層して厚肉化したとき、成形性を維持しつつ、強度を向上させることができるプリプレグ積層体及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明のプリプレグ積層体は、補強繊維よりなる織物に樹脂を含浸させた第1プリプレグ基材に切込みを有する切込みプリプレグを複数積層した積層プリプレグを構成するとともに、前記積層プリプレグの外面及び積層された複数の切込みプリプレグ間の少なくとも1つには、前記第1プリプレグ基材の補強繊維よりも延性を有する繊維に樹脂を含浸させた第2プリプレグ基材を配置したものである。
前記第1プリプレグ基材を構成する補強繊維はカーボン繊維であるとともに、第2プリプレグ基材を構成する繊維はガラス繊維であることが好ましい。
前記積層プリプレグの両外面及び積層プリプレグの中央部に配置された一対の切込みプリプレグ間には第2プリプレグ基材が配置されていることが好ましい。
前記樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。
前記プリプレグ積層体の製造方法は、切込みプリプレグを複数積層して積層プリプレグを形成するとともに、積層プリプレグの外面及び積層された複数の切込みプリプレグ間の少なくとも1つには前記第2プリプレグ基材を配置するものである。
前記第1プリプレグ基材を構成する補強繊維はカーボン繊維であるとともに、第2プリプレグ基材を構成する繊維はガラス繊維であることが好ましい。
前記積層プリプレグの両外面及び積層プリプレグの中央部に配置された一対の切込みプリプレグ間には第2プリプレグ基材が配置されていることが好ましい。
前記樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明のプリプレグ積層体によれば、プリプレグを積層して厚肉化したとき、成形性を維持しつつ、強度を向上させることができるという効果を奏する。
実施形態におけるプリプレグ積層体を分解して示す斜視図。 プリプレグ積層体を示す斜視図。 積層プリプレグを分解して示す斜視図。 切込みプリプレグを示す斜視図。 図4の切込みプリプレグにおける織糸の方向を45°変更した切込みプリプレグを示す斜視図。 第2プリプレグ基材を示す斜視図。 綾織した第1プリプレグ基材を示す平面図。 図7の第1プリプレグ基材に切込みを形成した切込みプリプレグを示す平面図。 実施例、対照例及び比較例におけるプリプレグ積層体の積層構成を示す説明図。 プリプレグ積層体を半球状に成形した状態を示す斜視図。 実施例1のプリプレグ積層体について引張強度を測定した後の状態を示す断面図。 比較例2のプリプレグ積層体について引張強度を測定した後の状態を示す断面図。 本発明の別例のプリプレグ積層体を分解して示す斜視図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、本実施形態における積層プリプレグ11においては、補強繊維よりなる織物にマトリックス材としての樹脂を含浸させた第1プリプレグ基材12に切込み13を形成した切込みプリプレグ14a、14bが複数積層されている。この積層プリプレグ11は、切込みプリプレグ14a、14bが8層に積層されて構成されている。前記補強繊維としては、カーボン繊維、炭化ケイ素繊維等の長繊維が用いられる。この補強繊維としては、引張強度、ヤング率等の特性に優れている点からカーボン繊維が好ましい。第1プリプレグ基材12の厚さは通常0.2〜0.3mm程度であることから、第1プリプレグ基材12を複数積層して積層プリプレグ11の厚さが1〜2mm程度となるように厚肉化される。
図4に示すように、前記切込みプリプレグ14aは、補強繊維による織物を構成する織糸(経糸16及び緯糸17)が互いに直交し、第1プリプレグ基材12(織物)の側縁12aに平行に延び、切込み13が経糸16及び緯糸17に交差する方向に延びている。また、図5に示す切込みプリプレグ14bは、経糸16及び緯糸17が第1プリプレグ基材12の側縁12aに対して45°斜め方向に延びるとともに、切込み13がそれらの経糸16及び緯糸17に交差する方向に延びている。
そして、図1に示すように、4層に積層される切込みプリプレグ14a、14bは、上下両端部に図4に示す切込みプリプレグ14aが配置され、それらの切込みプリプレグ14a間に図5に示す一対の切込みプリプレグ14bが配置される。
図1及び図2に示すように、前記積層プリプレグ11の外面すなわち積層プリプレグ11の上下両端面、及び積層プリプレグ11の中央部に配置された一対の切込みプリプレグ14a間には第2プリプレグ基材15が配置されている。つまり、第2プリプレグ基材15は、切込みプリプレグ14a、14bの4層毎に配置されている。
図6に示すように、これらの第2プリプレグ基材15は、経糸16及び緯糸17が互いに直交するとともに、第2プリプレグ基材15の側縁15aに対して45°斜め方向に延びている。上記のように、切込みプリプレグ14a、14b及び第2プリプレグ基材15が積層されて、図1及び図2に示すプリプレグ積層体10が構成される。
なお、第2プリプレグ基材15は、積層プリプレグ11の外面のうち片面のみに配置されていてもよく、また積層プリプレグ11の内部には、積層された複数の切込みプリプレグ14a、14b間の少なくとも1つに配置されておればよい。この第2プリプレグ基材15は、前記補強繊維よりも延性を有する繊維により形成されている。
前記プリプレグ基材12はシート状の複合材料であって、補強繊維の織糸を平織、綾織等の常法により形成された織物にマトリックス材としての樹脂を含浸させることによって形成される。
図7に示すように、例えば補強繊維の経糸16と緯糸17を綾織した場合には、経糸16の延びる経方向に対して緯糸17が90°交差する緯方向に形成されるとともに、緯糸17が経糸16と一度交差したあと1本飛ばしに編み込まれている。なお、平織の場合には、経糸16と緯糸17は1本ずつ交互に編み込まれる。
マトリックス材である樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂又はエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。これらの樹脂のうち、加熱プレス成形が容易で実用的な熱可塑性樹脂が好ましい。樹脂の含浸は、常法に従って補強繊維の織物を樹脂液中に浸漬した後引き上げたり、繊維に樹脂粉末を付着させてそれを溶融含浸させたりすることにより行われる。
図8に示すように、前記切込みプリプレグ14aは、第1プリプレグ基材12に切込み13を設けたものである。この切込み13は、経糸16及び緯糸17に対して斜め方向に延び、平行に配列される断裂切断線18上において間欠的に形成される。この切込み13は、第1プリプレグ基材12に例えばレーザ光を照射することにより形成される。切込み13は、その切込み13の長さを示す切込み長19、切込み13間の間隔を示す切込み間隔20、断裂切断線18の間隔を示す切込みピッチ21及び断裂切断線18と緯糸17(又は経糸16)の角度を示す切込み角度θがそれぞれ所定範囲に設定される。
前記切込み長19は、プリプレグの強度の異方性を低減し、成形を容易にするために、織糸の配列周期である織目ピッチ22の0.5〜15倍が好ましい。切込み間隔20は、プリプレグの成形を容易にし、かつ強度を維持するために、織目ピッチ22の0.25〜7.5倍が好ましい。切込みピッチ21は、プリプレグの成形性と強度のバランスを図るために、織目ピッチ22の0.5〜15倍が好ましい。切込み角度θは、プリプレグの強度の異方性を低減し、成形性を高めるために、20〜70°が好ましい。
前記積層プリプレグ11において、積層される各切込みプリプレグ14a、14bの補強繊維の織糸の配向方向は、積層プリプレグ11の積層方向(上下方向)の中央位置を中心にして対称となるように切込みプリプレグ14a、14bを配置することが好ましい。この場合には、プリプレグ積層体10を加熱、加圧して成形したとき、成形体の意図しない変形を抑制し、成形性を良好にすることができる。例えば、図1に示すように、第2プリプレグ基材15間の4層の切込みプリプレグ14a、14bについて、積層方向の両端部には経糸16及び緯糸17が経方向と緯方向に延びる切込みプリプレグ14aが配置される。それらの切込みプリプレグ14a間には、経糸16及び緯糸17が前記両端部の切込みプリプレグ14aの経糸16及び緯糸17に対して45°斜め方向に延びる一対の切込みプリプレグ14bが配置される。
前述のように、積層プリプレグ11は切込みプリプレグ14a、14bを複数に積層して構成されるが、その積層数は特に限定されない。切込みプリプレグ14a、14bの積層数は、通常4〜12層程度、好ましくは6〜10層に設定され、例えば8層に設定される。この積層プリプレグ11の外面すなわち片面又は両面、或いは複数の切込みプリプレグ14a、14b間の少なくとも1つには、補強繊維よりも伸びる(延性を有する)繊維による第2プリプレグ基材15が配置されてプリプレグ積層体10が構成される。ここで延性とは、ガラス繊維に荷重を加えて伸長させ、破断するまでのひずみが大きいことを意味する。なお、この第2プリプレグ基材15には、切込み13は形成されていない。
前記補強繊維よりも伸びる(延性を有する)繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維等が用いられる。これらの繊維のうち、ヤング率が低く、延性に優れたガラス繊維が好ましい。このガラス繊維に樹脂を含浸して形成される第2プリプレグ基材15は、前述したカーボン繊維による第1プリプレグ基材12と同様にして調製される。
この第2プリプレグ基材15は、切込みプリプレグ14a、14bの積層数が例えば8層である場合には、切込みプリプレグ14a、14bの3層毎又は4層毎に配置されることが好ましい。このように、積層プリプレグ11の内部に第2プリプレグ基材15を配置することにより、プリプレグ積層体10の成形性を損なうことなく、強度を高めることができる。
次に、前述したプリプレグ積層体10の製造方法について説明する。
まず、補強繊維に樹脂を含浸して得た第1プリプレグ基材12に対し、所定の切込み13を形成して切込みプリプレグ14a、14bを複数枚調製する。続いて、得られた切込みプリプレグ14a、14bを複数層に積層して積層プリプレグ11を形成する。次いで、その積層プリプレグ11の外面すなわち積層プリプレグ11の片面又は両面、及び積層された複数層の切込みプリプレグ14a、14b間の少なくとも1つに第2プリプレグ基材15を配置することにより、プリプレグ積層体10を製造することができる。
例えば、図3に示すように、切込みプリプレグ14a、14bを8層に積層して積層プリプレグ11を構成した場合には、図1に示すように、第2プリプレグ基材15を積層プリプレグ11の上下両端面及び積層プリプレグ11内の4層間に配置する。このようにして、積層プリプレグ11の両面及び積層プリプレグ11内の中央位置に第2プリプレグ基材15が配置されたプリプレグ積層体10を製造することができる。得られたプリプレグ積層体10は、ホットプレス成形法等の成形法により切込みプリプレグ14a、14b及び第2プリプレグ基材15が一体化された所定形状の成形物を得ることができる。
次に、前記のように構成された本実施形態のプリプレグ積層体10について作用を説明する。
さて、図1に示すように、プリプレグ積層体10は、切込みプリプレグ14a、14bが8層に積層されて積層プリプレグ11が構成され、その積層プリプレグ11の両外面及び複数の切込みプリプレグ14a、14b間の中央部には第2プリプレグ基材15が配置されて構成されている。
前記第1プリプレグ基材12の補強繊維はカーボン繊維により形成され、第2プリプレグ基材15の繊維はガラス繊維により形成されている。このため、プリプレグ積層体10は、カーボン繊維により全体として繊維方向に高い強度を発現することができる。一方、切込みプリプレグ14a、14bは、それらの切込み13がカーボン繊維の繊維方向と交差する方向に形成され、カーボン繊維の繊維方向への伸びを容易にさせ、プリプレグ積層体10の成形性を良好にすることができる。
さらに、プリプレグ積層体10の両外面及び内部には第2プリプレグ基材15が配置されている。この第2プリプレグ基材15を構成する繊維はガラス繊維であり、そのガラス繊維はカーボン繊維に比べて延性を有している。言い換えれば、ガラス繊維はカーボン繊維に比べてヤング率が非常に低く、かつ大きな弾性伸びを示す。このため、プリプレグ積層体10が多層の切込みプリプレグ14a、14bにより厚肉化されていても、プリプレグ積層体10の成形時に第2プリプレグ基材15は成形に対する抵抗性が低いことから、プリプレグ積層体10の成形性が損なわれることなく、第2プリプレグ基材15を有しない場合と同様に成形を良好に行うことができる。
加えて、第2プリプレグ基材15により、積層された各切込みプリプレグ14a、14bの切込み13を起点として生ずる層間割れや亀裂伝播が抑制され、切込みプリプレグ14a、14bの破断が抑えられる。その結果、プリプレグ積層体10の強度が十分に維持される。
以上の実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態のプリプレグ積層体10では、前記切込みプリプレグ14a、14bを複数積層した積層プリプレグ11の外面及び積層された複数の切込みプリプレグ14a、14b間の少なくとも1つには、第2プリプレグ基材15が配置されている。この第2プリプレグ基材15を構成する繊維は補強繊維よりも弾性率がかなり低く、大きな弾性伸びを有していることから、プリプレグ積層体10の成形性を低下させることなく、プリプレグ積層体10内における損傷を抑えてその強度を保持することができる。
従って、この実施形態のプリプレグ積層体10によれば、プリプレグを積層して厚肉化したとき、成形性を維持しつつ、強度を向上させることができるという効果を奏する。
(2)前記第1プリプレグ基材12を構成する補強繊維はカーボン繊維であるとともに、第2プリプレグ基材15を構成する繊維はガラス繊維である。このため、カーボン繊維が優れた強度を発揮できると同時に、ガラス繊維が成形性を良好に維持し、かつ強度を十分に向上させることができる。
(3)前記積層プリプレグ11の両外面及び積層プリプレグ11の中央部に配置された一対の切込みプリプレグ14a間には第2プリプレグ基材15が配置されている。そのため、これらの第2プリプレグ基材15によりプリプレグ積層体10の成形性を保持できるとともに、プリプレグ積層体10内の中央部に配置された第2プリプレグ基材15により強度の向上を図ることができる。
(4)前記樹脂はポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂である。このため、加熱時における溶融性や流動性が良く、プリプレグ積層体10の成形性や取扱性を向上させることができる。
(5)プリプレグ積層体10の製造方法は、切込みプリプレグ14a、14bを複数積層して積層プリプレグ11を形成するとともに、積層プリプレグ11の外面及び積層された複数の切込みプリプレグ14a、14b間の少なくとも1つには第2プリプレグ基材15を配置するものである。従って、複数の切込みプリプレグ14a、14bを用意し、それらの切込みプリプレグ14a、14bを積層するとともに、第2プリプレグ基材15を積層プリプレグ11の外面及び内部に配置するという簡単な方法でプリプレグ積層体10を得ることができる。
よって、本実施形態のプリプレグ積層体10の製造方法によれば、厚肉化されたプリプレグ積層体10であっても、所定の積層構成に従ってプリプレグ積層体10を速やかに製造することができる。
以下に、実施例、比較例及び対照例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
図7に示すように、補強繊維としてカーボン繊維を用いるとともに、熱可塑性樹脂として熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を用い、常法に従って第1プリプレグ基材12を調製した。この第1プリプレグ基材12は、経糸16と緯糸17による綾織材である。また、繊維としてガラス繊維を用いるとともに、熱可塑性樹脂として熱可塑性ポリウレタン樹脂を用い、常法に従って第2プリプレグ基材15を調製した。この第2プリプレグ基材15も経糸16と緯糸17による綾織材である。
図8に示すように、切込みプリプレグ14a、14bは、第1プリプレグ基材12において、織糸に対して斜め方向に延び、平行に配列される断裂切断線18上において間欠的に形成したものである。前記切込み長19を3.5mm、切込み間隔20を1.5mm、切込みピッチ21を2.5mm及び切込み角度θを45°に設定した。
図3に示すように、これらの切込みプリプレグ14a、14bを8層に積層して積層プリプレグ11を構成した。そして、図1及び図2に示すように、積層プリプレグ11の両外面及び中央部に第2プリプレグ基材15を配置して、実施例1のプリプレグ積層体10を得た。
ここで、実施例1、比較例1、2及び対照例1におけるプリプレグ積層体10の積層構成を図9に示した。この図9において、第1プリプレグ基材12の経糸16及び緯糸17の延びる配向方向を細線で示し、切込みプリプレグ14a、14bの切込み13を太線で示した。また、第2プリプレグ基材15の経糸16及び緯糸17の延びる配向方向を細線で示した。
得られた実施例1のプリプレグ積層体10を200℃でホットプレス成形して一体化したものについて、引張強度を測定した。
引張強度は、(株)島津製作所製のオートグラフAGS−X(最大負荷荷重10kN)を使用し、常温にて引張速度2mm/minの条件で測定した。引張強度を測定する際の荷重方向は、図2の矢印方向である。この引張強度の値は、後述する対照例1のプリプレグ積層体の引張強度を1とした場合の比率(強度比)で示した。
その結果、実施例1のプリプレグ積層体10の引張強度の強度比は0.85であった。このとき、図11に示すように、実施例1のプリプレグ積層体10では、その内部の中央部で層間剥離や縦割れが抑えられ、強度が維持されることが認められた。
また、図10に示すように、プリプレグ積層体10の成形性は、プリプレグ積層体10を直径50mmの半球形状の膨出部23を有するように成形したときの成形性を目視により判断した。すなわち、ホットプレス成形装置を用い、プリプレグ積層体10を250℃に加熱した後、図示しないシリコーンゴム製の雌型とアルミニウム製の雄型とに挟み込んで型締めすることにより行った。
その結果、実施例1のプリプレグ積層体10の成形性は、その内部に第2プリプレグ基材15を配置しない場合(比較例2)と同様に良好であり、成形体の表面に目立った皺や荒れは生じなかった。
(対照例1)
前記第1プリプレグ基材12を8層に積層して対照例1のプリプレグ積層体とした。この対照例1のプリプレグ積層体を引張強度の基準とした。
(比較例1)
図3に示すように、切込みプリプレグ14a、14bを8層に積層して比較例1のプリプレグ積層体とした。この比較例1のプリプレグ積層体について引張強度を測定した結果、強度比は0.3であり、極めて低い強度であった。
(比較例2)
前記実施例1のプリプレグ積層体10において、その内部に配置した第2プリプレグ基材15を省略した以外は実施例1のプリプレグ積層体10と同様に構成して比較例2のプリプレグ積層体とした。すなわち、第2プリプレグ基材15を、積層プリプレグ11の両外面にのみ配置して比較例2のプリプレグ積層体を調製した。
そして、この比較例2のプリプレグ積層体について、引張強度及び成形性を実施例1と同様にして測定した。
その結果、比較例2のプリプレグ積層体の引張強度の強度比は0.45であり、実施例1に比べて引張強度が大きく低下した。このとき、図12に示すように、比較例2のプリプレグ積層体については、プリプレグ積層体内の中央部付近を中心にして大きな層間剥離や縦割れが認められるとともに、亀裂伝播も認められた。
但し、比較例2のプリプレグ積層体の成形性は良好であった。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・図13に示すように、第2プリプレグ基材15を、積層プリプレグ11の上下両端面及び積層プリプレグ11の内部において切込みプリプレグ14a、14bの3層毎に配置してもよい。前記第2プリプレグ基材15間の切込みプリプレグ14a、14bは、上下一対の切込みプリプレグ14a間に切込みプリプレグ14bが配置される。この場合には、プリプレグ積層体10の強度や成形性を良好に維持しつつ、厚肉化を図ることができる。
・第1プリプレグ基材12の厚みと第2プリプレグ基材15の厚みを、プリプレグ積層体10に必要とされる成形性及び強度に応じて変更してもよい。
・前記第2プリプレグ基材15を構成する経糸16及び緯糸17の太さと、第1プリプレグ基材12を構成する補強繊維による経糸16及び緯糸17の太さを、プリプレグ積層体10に必要とされる強度に応じて適宜変更してもよい。
10…プリプレグ積層体、11…積層プリプレグ、12…第1プリプレグ基材、13…切込み、14a、14b…切込みプリプレグ、15…第2プリプレグ基材。

Claims (8)

  1. 補強繊維よりなる織物に樹脂を含浸させた第1プリプレグ基材に切込みを有する切込みプリプレグを複数積層した積層プリプレグを構成するとともに、前記積層プリプレグの外面及び積層された複数の切込みプリプレグ間の少なくとも1つには、前記第1プリプレグ基材の補強繊維よりも延性を有する繊維に樹脂を含浸させた第2プリプレグ基材を配置したプリプレグ積層体。
  2. 前記第1プリプレグ基材を構成する補強繊維はカーボン繊維であるとともに、第2プリプレグ基材を構成する繊維はガラス繊維である請求項1に記載のプリプレグ積層体。
  3. 前記積層プリプレグの両外面及び積層プリプレグの中央部に配置された一対の切込みプリプレグ間には第2プリプレグ基材が配置されている請求項1又は請求項2に記載のプリプレグ積層体。
  4. 前記樹脂は熱可塑性樹脂である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプリプレグ積層体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプリプレグ積層体の製造方法であって、
    前記切込みプリプレグを複数積層して積層プリプレグを形成するとともに、積層プリプレグの外面及び積層された複数の切込みプリプレグ間の少なくとも1つには前記第2プリプレグ基材を配置するプリプレグ積層体の製造方法。
  6. 前記第1プリプレグ基材を構成する補強繊維はカーボン繊維であるとともに、第2プリプレグ基材を構成する繊維はガラス繊維である請求項5に記載のプリプレグ積層体の製造方法。
  7. 前記積層プリプレグの両外面及び積層プリプレグの中央部に配置された一対の切込みプリプレグ間には第2プリプレグ基材が配置されている請求項5又は請求項6に記載のプリプレグ積層体の製造方法。
  8. 前記樹脂は熱可塑性樹脂である請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のプリプレグ積層体の製造方法。
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