以下、本発明の生理用品をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。図1及び図2は、本発明の生理用品の一実施形態である生理用ナプキン1が示されている。ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有し、着用時に着用者の排泄部(膣口等)と対向する部分即ち排泄部対向部を含む中間部Mと、該中間部Mより前方に位置して着用者の腹側(前側)に配される前方部Fと、該中間部Mより後方に位置して着用者の背側(後側)に配される後方部Rとに区分される。前記排泄部対向部は中間部Mの横方向Yの中央部に位置する。
ナプキン1は、図1に示すように、縦方向Xに長い形状の吸収性本体10と、吸収性本体10における中間部Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部10W,10Wとを有している。ウイング部10Wの非肌対向面には、該ウイング部10Wをショーツ等の着衣に固定するウイング部粘着部(図示せず)が形成されている。ウイング部10Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられる。前記ウイング部粘着部は、その使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
本発明の生理用品における中間部Mは、ナプキン1のように生理用品がウイング部を有する場合には、該生理用品の縦方向(長手方向、図中のX方向)においてウイング部の縦方向Xにおける前方側の付け根と後方側の付け根とで区分される領域であり、ナプキン1を例にとれば、一対のウイング部10W,10Wそれぞれの縦方向Xにおける前方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線が中間部Mの前端、後方側の付け根どうしを結んで横方向Yに延びる仮想直線が中間部Mの後端である。また、ウイング部を有しない生理用品における中間部は、生理用品が個装形態に折り畳まれた際に生じる、該生理用品を横方向(幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折り畳み線について、該生理用品の縦方向の前端から数えて第1折り畳み線と第2折り畳み線とに囲まれた領域を意味する。
吸収性本体10は、液透過性の表面シート2と、該表面シート2よりも着用者の肌から遠い位置に配された裏面シート3と、両シート2,3間に介在配置された積層構造4とを具備する。表面シート2及び裏面シート3それぞれと積層構造4との間は接着剤によって接合されていても良い。吸収性本体10は、縦方向Xにおいて着用者の腹側から順に、前方部A、中間部M及び後方部Cの3つの領域に区分される。縦方向Xは、ナプキン1及び吸収性本体10の長手方向に一致し、横方向Yは、該長手方向に直交する幅方向に一致する。
ナプキン1においては、吸収性本体10の肌対向面即ち表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部に、図1に示す如き平面視において積層構造4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、一対のサイドシート6,6が吸収性本体10の縦方向Xの略全長に亘って配されている。一対のサイドシート6,6は、それぞれ平面視において積層構造4と重なる位置に配されて縦方向Xに延びる線状の接合部7を介して、表面シート2に接合されている。ナプキン1において着用者の肌から最も近い位置に配される部材は、ナプキン1の横方向Yの中央部においては表面シート2、その両側部においてはサイドシート6であり、両シート2,6は着用者の肌に接触し得る。表面シート2、裏面シート3及びサイドシート6は、それぞれ、積層構造4の周縁から延出し、それらの延出部の少なくとも2枚のシートにおける端部にて、接着剤、ヒートシール等の公知の接合手段により互いに接合されてエンドシール部8が形成されている。ナプキン1の肌対向面には、表面シート2と積層構造4を構成する層のうちの少なくとも一部(表面シート2に最も近い隔離層41)とが一体的に凹陥してなる、防漏溝(図示せず)を設けても良い。
本明細書において、「肌対向面」は、生理用品又はその構成部材(例えば表面シート2)における、生理用品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、生理用品又はその構成部材における、生理用品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。尚、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該生理用品の正しい着用位置が維持された状態を意味し、生理用品が該着用位置からずれた状態にある場合は含まない。
表面シート2としては、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができ、経血などの体液を透過し得る液透過性シートであることを前提として、合成繊維又は天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等を用いることができる。表面シート2の一例として、コットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。例えば、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型も含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアスルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。
裏面シート3としては、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができ、液難透過性(撥水性を含む)で、且つ透湿性のものが好ましく用いられる。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔を設けた多孔質フィルムは、裏面シート3として好適に使用できる。サイドシート6としては、裏面シート3として使用可能なものを用いることができる。
積層構造4は、図1に示す如き平面視において縦方向Xに長い形状をなし、その長手方向を縦方向Xに一致させて、表面シート2と裏面シート3との間に配されている。積層構造4は、少なくとも、ナプキン1の着用者の排泄部(膣口等)と対向する部分である中間部Mに配される。ナプキン1における積層構造4は、図1に示すように、中間部Mの縦方向Xの全長にわたって連続し、さらに中間部Mから前方部F及び後方部Rそれぞれに延出しており、吸収性本体10の縦方向Xの全長の大部分を占めている。
ナプキン1においては、積層構造4は図2に示すように、その肌対向面及び非肌対向面それぞれの全域が、積層構造4を構成する各層とは別体の被覆シート5で被覆されている。被覆シート5は、積層構造4に含まれ得る高吸収性ポリマー粒子などの外部への漏れを防止すると共に、積層構造4の保形性を高める役割などを果たす。ナプキン1における被覆シート5は、積層構造4の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続した液透過性シートであり、図2に示すように、積層構造4の肌対向面(隔離層41の肌対向面)の全域を被覆し、且つ積層構造4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、積層構造4の下方に巻き下げられて、積層構造4の非肌対向面(吸収層44の非肌対向面)の全域を被覆している。尚、被覆シート5はこのような1枚のシートでなくても良く、例えば、積層構造4の肌対向面を被覆する1枚の肌側被覆シートと、該肌側被覆シートとは別体で、積層構造4の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側被覆シートとを含んで構成されていても良い。積層構造4と被覆シート5との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。
被覆シート5としては、経血などの体液を透過し得る液透過性シートが好ましく、例えば、合成繊維又は天然繊維からなる紙、織布、不織布等を用いることができる。被覆シート5の0.5g/cm2荷重下における厚みは、特に制限されないが、積層構造4を構成する各層の0.5g/cm2荷重下における厚みに比して小さいのが通常であり、液透過性とシート強度とのバランスの観点から、好ましくは0.01mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは8mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。シートの厚みは、後述する層の厚みの測定方法に準じて測定することができる。
積層構造4は、図2に示すように、表面シート2から近い順に、隔離層41、血球凝集剤層42、凝集促進層43及び吸収層44を具備する。即ち積層構造4においては、隔離層41がナプキン1の着用者の肌に最も近く、吸収層44が着用者の肌から最も遠い。血球凝集剤層42は、その肌面側に位置する隔離層41と、非肌面側に位置する凝集促進層43とそれぞれ隣接している。積層構造4における層間には、これら4層以外の他の層は介在配置されていないことが好ましい。また、ナプキン1においては、積層構造4を構成する4層は、単に重ねられているだけであって、接着剤、融着などの接合手段によって互いに接合されていないが、厚み方向における液透過性を阻害しない範囲であれば、層どうしが互いに接合されていても良い。
ナプキン1においては、積層構造4を構成する4層は、平面視において互いに同形状・同寸法をなし、4層それぞれにおける他の層との対向面の全域が、該他の層によって被覆されている。積層構造4を構成する4層は、それぞれ、当該層を挟んでナプキン1の厚み方向の一方側と他方側とに配された他の2層どうしを、互いに接触させずに該厚み方向に分離し得る。即ち、例えば血球凝集剤層42は、厚み方向において該血球凝集剤層42に隣接する隔離層41及び凝集促進層43どうしを、互いに接触させずに該厚み方向に分離し、また例えば隔離層41は、厚み方向において該隔離層41に隣接する被覆シート5及び血球凝集剤層42どうしを、互いに接触させずに該厚み方向に分離する。尚、本発明の効果を奏するためには、本発明に係る積層構造は、少なくとも一部分においてこのような構成になっていればよく、必ずしもナプキン1のように積層構造4の全体においてこのような構成になっている必要は無い。
ナプキン1の主たる特徴の1つとして、積層構造4を構成する4層のうち、血球凝集剤層42は、高吸収性ポリマー(吸水性ポリマー)を含有せずに血球凝集剤を含有し、吸収層44は、血球凝集剤を含有しない点が挙げられる。吸収層44は、高吸収性ポリマーを含有することが好ましく、ナプキン1においてはそのようになされている。高吸収性ポリマーは、経血などの体液を吸収保持する役割を担うもので、ナプキン1の吸収性能の根幹をなす部材であり、通常、水分の吸収及び保持が可能なヒドロゲル材料を含んで構成される。一方、血球凝集剤とは、血液中の赤血球を凝集させることができる剤を意味し、より具体的には、後述する定義に当てはまる化合物である。このように、表面シート2と裏面シート3との間に配された積層構造4において、相対的に着用者の肌に近い血球凝集剤層42に血球凝集剤を配し、相対的に着用者の肌から遠い吸収層44に血球凝集剤を配さず、好ましくは高吸収性ポリマーを配することで、吸収層44に先んじて体液と接触する血球凝集剤層42の血球凝集剤の作用により、吸収層44の液吸収量(吸収層44に高吸収性ポリマーを配した場合は該高吸収性ポリマーの液吸収量)が向上し得る。以下、図3及び図4を参照して、積層構造4における血球凝集剤の作用効果等について説明する。
一般に、高吸収性ポリマーによる水分の吸収速度や吸収量は、水分の種類によって異なり、生理食塩水(尿)と血液とを比較すると、生理食塩水よりも血液の方が吸収速度が遅く、また吸収量も少ない。この理由は以下の理由による。血液は血漿等の液体成分と赤血球等の非液体成分に大別されるところ、高吸収性ポリマーに吸収される成分は血漿等の液体成分である。図3(a)に示す通り、経血11が高吸収性ポリマー14に接触すると、経血11中の液体成分12のみが高吸収性ポリマー14に吸収され、非液体成分13である赤血球は高吸収性ポリマー14に吸収されない。高吸収性ポリマー14への液体成分12の吸収が進行すると、図3(b)に示す通り、高吸収性ポリマー14に吸収されない非液体成分13が、高吸収性ポリマー14の表面に蓄積して被膜15を形成する。この被膜15の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の液吸収阻害が生じ、吸収速度が低下する。また被膜15の形成に起因して、高吸収性ポリマー14の膨潤阻害も生じ、吸収量が低下する。
図3(b)に示す通りの現象が生じることを防止して、吸収性能の低下を阻止するための手段について本発明者が種々検討した結果、経血11中の非液体成分13の大半を占める成分である赤血球を、図4に示す通り凝集させて凝集塊16を生成させることが効果的であることが判明した。赤血球の凝集塊16を生成させることで、凝集塊16の被膜が生成しづらくなり、又は、凝集塊16によって図3(b)に示す如き被膜15が生成したとしても、その被膜15内に液体成分12が透過できる空間が残存するため、液体成分12の吸収阻害が起こりづらくなる。その結果、高吸収性ポリマー14は、吸収性能を十分に発揮することができる。このように吸収性能をより高めるために、赤血球の凝集塊粒径が大きいほど好ましく、凝集塊硬さが硬いほど好ましい。
そして、ナプキン1において、経血中に赤血球の凝集塊を生成させる役割を果たすのが血球凝集剤である。この血球凝集剤は、経血と接触すると、該血球凝集剤が経血中に溶出し、経血に含まれるアニオン性の赤血球を凝集させて血球凝集塊を作ることで経血を変質させる。血球凝集効果によって生じた血球凝集塊は赤血球よりも大きいため、高吸収性ポリマーの表面の一部に血球凝集塊が付着することはあっても、高吸収性ポリマーの表面の大部分が血球凝集塊で覆われるような不都合は起こり難く、そのため、高吸収性ポリマーが本来有する吸収性能が安定的に発揮されることになる。
本発明者の知見によれば、血球凝集剤としてはカチオン性ポリマーが特に有用であり、その理由は次の通りである。赤血球はその表面に赤血球膜を有する。赤血球膜は、2層構造を有している。この2層構造は、下層である赤血球膜骨格と上層である脂質皮膜からなる。赤血球の表面に露出している脂質皮膜には、グリコホリンと呼ばれるタンパク質が含まれている。グリコホリンはその末端にシアル酸と呼ばれるアニオン電荷を帯びた糖が結合した糖鎖を有している。その結果、赤血球はアニオン電荷を帯びたコロイド粒子として扱うことができる。コロイド粒子の凝集には一般に凝集剤が用いられる。赤血球がアニオン性のコロイド粒子であることを考慮すると、凝集剤としてはカチオン性の物質を用いることが、赤血球の電気二重層を中和する点から有利である。また凝集剤が高分子鎖を有していると、赤血球の表面に吸着した凝集剤の高分子鎖どうしの絡み合いが生じやすくなり、そのことに起因して赤血球の凝集が促進される。さらに、凝集剤が官能基を有している場合には、該官能基間の相互作用によっても赤血球の凝集が促進されるので好ましい。血球凝集剤によれば、以上の作用機序によって経血中に赤血球の凝集塊を生成することが可能になる。
ナプキン1においては、斯かる作用効果を奏する血球凝集剤は、前述した通り積層構造4において、血球凝集剤層42に含有されており、高吸収性ポリマーを含む吸収層44には含有されていない。斯かる構成のナプキン1の着用中において、着用者の排泄部から中間部Mに排泄された経血は、表面シート2及び被覆シート5を順次透過して積層構造4に到達し、さらに隔離層41を透過して血球凝集剤層42に到達し、該血球凝集剤層42にて血球凝集剤と接触する。これにより、経血は赤血球と血漿とに分離される。そして、高吸収性ポリマーに吸収され難い赤血球は、凝集塊を形成して血球凝集剤層42に残留し、高吸収性ポリマーに吸収されやすい血漿は、血球凝集剤層42において面方向に拡散しつつ、凝集促進層43を透過して吸収層44に到達し、該吸収層44に含有されている高吸収性ポリマーに吸収保持される。このように、ナプキン1は、高吸収性ポリマーが含有されている吸収層44よりも着用者の肌に近い位置(血球凝集剤層42)にて、そこに含有されている血球凝集剤によって経血を赤血球と血漿とに分離し、その分離された血漿だけを優先的に吸収層44に引き込んで高吸収性ポリマーに吸収保持させるようになされているため、吸収層44は赤血球による吸収阻害を受けずに経血を素早く吸収することができ、延いては、表面シート2のドライ感が大幅に向上し得る。
前述した通り、積層構造4においては主として、血球凝集剤層42と、血球凝集剤を含有せず、好ましくは高吸収性ポリマーを含有する吸収層44とによって、経血などの体液の吸収性能の向上が図られているのであるが、両層42,44だけでは本発明の所定の効果は奏されず、さらに、両層42,44よりも着用者の肌に近い隔離層41と、両層42,44の間に介在配置された凝集促進層43とが必要である。
ナプキン1の使用後に表面シート2側からこれを観察する着用者に対し、ナプキン1の吸収性能に対する安心感を与えるためには、その観察時において、表面シート2に経血の吸収に起因する赤みが少なく、表面シート2本来の色(通常は白色)に近い色を呈していることが重要であるところ、隔離層41は主として、この観察時における赤みを低減させる役割を担う。即ち、血球凝集剤層42には、前述した通り赤血球の凝集塊が生成されるところ、該凝集塊は表面シート2が赤みを帯びる主たる要因であり、該凝集塊の位置が表面シート2に近いほど、ナプキン1の使用後における表面シート2の赤みが強くなり、ナプキン1の見た目が悪化する。そこでナプキン1においては、観察対象とされる表面シート2と、赤色の凝集塊が生成される血球凝集剤層42との間に、繊維を含有し且つ血球凝集剤及び高吸収性ポリマーを含有しない隔離層41を介在させることで、経血との接触によって赤色を呈するようになった血球凝集剤層42の、表面シート2を介しての赤みの程度を低減させ、これによって、ナプキン1の使用後に表面シート2を観察した着用者に対し、経血の吸収に起因する赤みが少ない印象を与え、吸収性能に対する安心感を着用者に与えることを可能にしている。つまり、積層構造4における隔離層41は、文字通り、血球凝集剤層42を表面シート2から隔離する層である。
また凝集促進層43は、血球凝集剤層42における凝集塊の生成を促進し、血球凝集剤による経血の吸収性能の向上効果をより一層高め得る役割を担う。即ち、吸収層44に好ましくは含有されている高吸収性ポリマーの吸収性能を最大限に発揮させるためには、その吸収性能を阻害し得る赤血球などの非液体成分が吸収層44に到達する前に、該非液体成分を凝集させることが重要である。そこでナプキン1においては、血球凝集剤層42と高吸収性ポリマーを含有する吸収層44との間に、繊維を含有し且つ血球凝集剤を含有しない凝集促進層43を介在させることで、血球凝集剤層42の血球凝集剤による経血の凝集時間をかせぐようにし、血球凝集剤の作用効果を最大限に活かして、経血に対して優れた吸収性能を発現し得るようにしている。つまり、積層構造4における凝集促進層43は、文字通り、血球凝集剤による体液中の非液体成分の凝集を促進させる層である。
前述の如き構成の積層構造4を具備するナプキン1によれば、着用者の排泄部に対応する部位及びその周辺部に経血などの体液が滞留し難く、排泄された体液の量が比較的多い場合であってもこれを素早く吸収することができ、また、吸収層44に一旦吸収された体液が表面シート2側に戻るいわゆる液戻りや、体液が吸収されずに表面シート2に残るいわゆる液残りが効果的に防止される。また、血漿などの経血中の液体成分が吸収層44に効率良く吸収されるため、該液体成分の蒸散やそれに起因するムレ、肌カブレ等の不都合の発生が効果的に防止される。その上、ナプキン1をその使用後に表面シート2側から観察した場合に、経血の吸収に起因する赤みが少なく、吸収性能に対する安心感を着用者に与えることができる。
以下、積層構造4を構成する各層について説明する。
隔離層41は繊維を含有し、典型的には、繊維集合体からなる。隔離層41における繊維の含有量は、隔離層41の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、100質量%でも良い。隔離層41を構成する繊維集合体としては、経血などの体液を厚み方向に透過可能な液透過性を有するシート状の繊維集合体を任意に採用でき、例えば、不織布、湿式抄紙により得られた紙が挙げられる。隔離層41として使用可能な不織布としては、例えば、エアスルー不織布、エアレイド不織布、サクションヒートボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられる。血球凝集剤層42との距離を保つために厚みを維持する観点から、隔離層41としてはエアスルー不織布が好ましく用いられる。
隔離層41の構成繊維としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。隔離層41の構成繊維は、短繊維でも長繊維でも良く、また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型等の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。
隔離層41は、親水性繊維を主体とすることが好ましい。親水性繊維としては、天然繊維のような本来的に親水性を有する繊維の他に、疎水性繊維(例えば熱可塑性樹脂からなる繊維)に親水化処理を施した繊維を用いることもでき、後者の繊維としては例えば、親水化剤が練り込まれた繊維、繊維表面に親水化剤が付着した繊維、プラズマ処理が施された繊維を例示できる。隔離層41における親水性繊維の含有量は、隔離層41の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、100質量%でも良い。
隔離層41は、前述した通り、血球凝集剤及び高吸収性ポリマーを含有しない。つまり、隔離層41には、血球凝集剤及び高吸収性ポリマーが意図的に含有されることはないが、製造時に意図せずに両者が隔離層41に含有されることはあり得る。その場合、隔離層41における血球凝集剤及び高吸収性ポリマーの含有量がそれぞれごく少量であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば許容される。具体的には、隔離層41における血球凝集剤の含有量が3質量%以下であれば、「隔離層41は血球凝集剤を含有しない」と言える。また、隔離層41における高吸収性ポリマーの含有量が3質量%以下であれば、「隔離層41は高吸収性ポリマーを含有しない」と言える。
血球凝集剤層42は、高吸収性ポリマーを含有せずに血球凝集剤を含有する。ここでいう、「高吸収性ポリマーを含有しない」の意味については、前述した通りである。血球凝集剤については後述する。
血球凝集剤層42は繊維を含有し、典型的には、繊維集合体からなる。血球凝集剤層42を構成する繊維集合体、構成繊維としては、基本的に、隔離層41に使用可能なものを任意に採用できる。血球凝集剤を効率よく含浸させ、また、効率よく溶出させ得る観点から、血球凝集剤層42としてはパルプ繊維集合体が好ましく用いられる。
血球凝集剤層42は、血球凝集剤を含有しない繊維集合体に、血球凝集剤を付与することで製造することができる。血球凝集剤の付与方法は特に制限されず、例えば、血球凝集剤を適当な溶媒(例えばエタノール)に溶解させて塗布液を調製し、該塗布液を、血球凝集剤層42を構成するシート状の繊維集合体の一面又は両面に塗布又は噴霧し、乾燥することで、血球凝集剤層42が得られる。
血球凝集剤層42に含有される血球凝集剤は、血液に溶出して確実に作用することで、大きな凝集塊を形成させる観点から、その含有量は、好ましくは0.01g/m2以上、さらに好ましくは1.5g/m2以上である。また、血球凝集剤層42に含有される血球凝集剤は、液透過性を阻害させない観点から、その含有量は、好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以下である。
凝集促進層43は、隔離層41と同様に、繊維を含有し且つ血球凝集剤及び高吸収性ポリマーを含有しない。ここでいう、「血球凝集剤及び高吸収性ポリマーを含有しない」の意味については、前述した通りである。
凝集促進層43は繊維を含有し、典型的には、繊維集合体からなる。凝集促進層43を構成する繊維集合体、構成繊維としては、基本的に、隔離層41に使用可能なものを任意に採用できる。凝集促進層43の組成は、隔離層41の組成と同一であっても良い。凝集を促進させるために厚みを維持する観点から、凝集促進層43としてはエアスルー不織布が好ましく用いられる。
隔離層41、血球凝集剤層42及び凝集促進層43については、血球凝集剤層42の血球凝集剤による体液中の非液体成分の凝集が促進され、体液中の液体成分が着用者の肌から最も遠い吸収層44に速やかに移行されるよう、密度、厚みなどの特性を制御することが好ましい。
具体的には例えば、隔離層41の密度は、凝集促進層43の密度と同じかそれよりも低いことが好ましい。これにより、隔離層41においては、隔離層41が相対的に低密度即ち構成繊維が疎であり得るために、液透過性の向上が期待できる。また、凝集促進層43においては、凝集促進層43が相対的に高密度即ち構成繊維が密であり得るために、凝集促進層43において液の対流が起こる、即ち経血などの体液が重力によって吸収層44側に向かって一方的に流れるだけでなく、重力に逆らって血球凝集剤層42側に向かって流れ得るようになり、その結果、凝集促進層43での凝集塊の形成が促進されるようになる。
隔離層41の密度と凝集促進層43の密度との比率は、前者/後者として、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、そして、好ましくは0.7以下、さらに好ましくは1以下である。
隔離層41の密度は、好ましくは0.01g/m3以上、さらに好ましくは0.02g/m3以上、そして、好ましくは0.5g/m3以下、さらに好ましくは0.2g/m3以下である。
凝集促進層43の密度は、好ましくは0.01g/m3以上、さらに好ましくは0.02g/m3以上、そして、好ましくは0.5g/m3以下、さらに好ましくは0.2g/m3以下である。
積層構造4における各層の密度は下記方法により測定される。
<層の密度の測定方法>
生理用品において測定対象の層(積層構造)が他の構成部材とホットメルト接着剤などの接着剤によって接合されている場合は、有機溶媒、コールドスプレーなどを用いてその接着剤を無効化した上で、測定対象の層の形状が変形しないように該生理用品を分解し、該層を取り出す。生理用品から取り出した測定対象の層を5cm四方に切断してサンプルとし、その面積25cm2のサンプルの重量(A)を測定すると共に、厚み(X)を後述する方法によって測定し、また、その厚みと面積とから体積(Y)を算出し、次式により当該層の密度(Z)を算出する。 Z(g/cm3)=A(g)/Y(cm3)
また、隔離層41の0.5g/cm2荷重下における厚みは、血球凝集剤層42の0.5g/cm2荷重下における厚みと同じかそれよりも大きいことが好ましい。これにより、血球凝集剤層42に存する体液が、重力に逆らって隔離層41側に向かって流れ、隔離層41中に凝集塊が多量に生成される不都合が効果的に防止される。つまり、隔離層41の0.5g/cm2荷重下における厚みが血球凝集剤層42のそれ以下であることにより、ナプキン1の着用時において、着用者の身体から排泄された経血などの体液が重力により着用者の肌から遠い側へ移行していく過程で、たとえ対流が起きて体液が着用者の肌に向かって移行したとしても、その対流による移行先の隔離層41中の体液の体積は、血球凝集剤層42中の体液の体積以上にはならないため、血球凝集剤層42に体液が十分に滞留するようになり、血球凝集剤層42での凝集塊の生成が促進される。
隔離層41の0.5g/cm2荷重下における厚みと血球凝集剤層42の0.5g/cm2荷重下における厚みとの比率は、前者/後者として、好ましくは1以上、さらに好ましくは1.5以上、そして、好ましくは7以下、さらに好ましくは4以下である。
隔離層41の0.5g/cm2荷重下における厚みは、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上、そして、好ましくは8mm以下、さらに好ましくは5.2mm以下である。
血球凝集剤層42の0.5g/cm2荷重下における厚みは、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは3mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
また、凝集促進層43の0.5g/cm2荷重下における厚みは、血球凝集剤層42の0.5g/cm2荷重下における厚みと同じかそれよりも大きいことが好ましい。これにより、凝集促進層43中の体液の体積は、血球凝集剤層42中の体液の体積以上にはならないため、血球凝集剤層42に体液が十分に滞留するようになり、血球凝集剤層42での凝集塊の生成が促進され、凝集促進層43の存在と相俟って、体液が吸収層44に到達する前までの凝集塊の生成がより一層促進される。
凝集促進層43の0.5g/cm2荷重下における厚みと血球凝集剤層42の0.5g/cm2荷重下における厚みとの比率は、前者/後者として、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1以上、そして、好ましくは10以下、さらに好ましくは4以下である。
凝集促進層43の0.5g/cm2荷重下における厚みは、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上、そして、好ましくは8mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
積層構造4における各層の厚みは下記方法により測定される。
<層の厚みの測定方法>
生理用品において測定対象の層(積層構造)が他の構成部材とホットメルト接着剤などの接着剤によって接合されている場合は、有機溶媒、コールドスプレーなどを用いてその接着剤を無効化した上で、測定対象の層の形状が変形しないように該生理用品を分解し、該層を取り出す。生理用品から取り出した測定対象の層の厚みを、レーザー式厚み計(オムロン株式会社製の2次元CMOSレーザータイプスマートセンサ(型番ZS−LD80))を用いて測定する。その厚み測定の際には、厚み計の先端部と測定対象の層との間に重りを配置して、測定対象の層に対する荷重が0.5g/cm2となるように調整し、斯かる加圧状態の測定対象の層の厚みを測定する。
また、隔離層41の液保持性は、凝集促進層43の液保持性と同じかそれよりも低いことが好ましい。隔離層41の液保持性が相対的に低いことが、隔離層41での凝集塊の生成の原因となり得る液の対流を防止する上では効果的である。また、凝集促進層43の液保持性が相対的に高いと、凝集促進層43中に経血を効率良く滞留させることが可能となり、それによって凝集塊の生成がより一層促進されるようになる。
隔離層41の液保持性が凝集促進層43のそれ以下である形態の一例として、相対的に液保持性の低い隔離層41が、熱可塑性樹脂を含んで構成されている形態が挙げられる。隔離層41の液保持性を低下させるためには、繊維間距離を広く、且つ経血などの体液と接触してもその広い繊維間距離が維持されることが重要である。従って隔離層41は、濡れても構造変化の起き難い熱可塑性樹脂を含んで構成されていることが好ましく、特に、熱可塑性樹脂からなる繊維(熱可塑性繊維)を構成繊維として含有することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。隔離層41における熱可塑性樹脂(熱可塑性繊維)の含有量は、隔離層41の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、100質量%でも良い。
一方、相対的に液保持性の高い凝集促進層43は、相対的に液保持性の低い隔離層41よりも、熱可塑性樹脂の含有量が少ないことが好ましい。凝集促進層43における熱可塑性樹脂(熱可塑性繊維)の含有量は、凝集促進層43の全質量に対して、好ましくは50質量%以下であり、ゼロでも良い。また凝集促進層43は、液保持性を高める観点から、パルプ繊維を主体とすることが好ましく、パルプ繊維の含有量は、凝集促進層43の全質量に対して、好ましくは50質量%以上であり、100質量%でも良い。
隔離層41、血球凝集剤層42及び凝集促進層43の坪量は、それぞれ下記のように設定することが好ましい。
隔離層41の坪量は、好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは90g/m2以上、そして、好ましくは300g/m2以下、さらに好ましくは250g/m2以下である。
血球凝集剤層42の坪量は、好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは50g/m2以上、そして、好ましくは100g/m2以下、さらに好ましくは70g/m2以下である。
凝集促進層43の坪量は、好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは90g/m2以上、そして、好ましくは300g/m2以下、さらに好ましくは250g/m2以下である。
吸収層44は、血球凝集剤を含有せず、好ましくは高吸収性ポリマーを含有する。ここでいう、「血球凝集剤を含有しない」の意味については、前述した通りである。吸収層44における高吸収性ポリマーの含有量は、好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは30g/m2以上、そして、好ましくは300g/m2以下、さらに好ましくは200g/m2以下である。高吸収性ポリマーの含有量を10g/m2以上にすることで、吸収層44が備えるべき吸収性能を担保することができ、また、該含有量を300g/m2以下にすることで、吸収層44が備えるべき液の透過性を担保することができる。
吸収層44は、繊維及び高吸収性ポリマーの何れか一方のみを含んで構成されていても良く、あるいは両方を含んで構成されていても良い。この高吸収性ポリマーと併用される繊維としては、前記の親水性繊維が好ましく用いられる。吸収層44の典型的な例は、親水性繊維を主体とする繊維集合体と、粒子状の高吸収性ポリマーとを含む形態であり、斯かる形態においては通常、粒子状の高吸収性ポリマーは、湿潤状態の高吸収性ポリマーに生じる粘着力又は別途添加した接着剤若しくは接着性繊維等のバインダーを介して、繊維集合体に保持されている。
吸収層44の一例として、繊維と高吸収性ポリマーとが混合された構成の積繊体が挙げられる。この積繊体からなる吸収層44においては、繊維と高吸収性ポリマーとは均一に分布していても良く、あるいは高吸収性ポリマーが偏在していても良く、あるいは両者の坪量が部分的に異なっていても良い。この積繊体からなる吸収層44の坪量は、好ましくは10g/m2以上、さらに好ましくは30g/m2以上、そして、好ましくは300g/m2以下、さらに好ましくは200g/m2以下である。
吸収層44の他の一例として、シート状の繊維集合体の少なくとも一面に粒子状の高吸収性ポリマーが分布した構成の吸収性シートが挙げられる。この吸収性シートの変形例として、2枚のシート状の繊維集合体の間に、粒子状の高吸収性ポリマーが分布したものが挙げられる。このような吸収性シートは、前記の吸収性材料の積繊体に比して、厚みが薄く低剛性であるため、該吸収性シートを備えた生理用品は、厚みが薄い薄型であり、柔軟で着用感に優れ、またコンパクトに折り畳めてハンドリング性にも優れる。斯かる吸収性シートの特長をより有効に活用し、液拡散性、液保持性を十分に備え装着感の良好な生理用品を得る観点から、高吸収性ポリマーが散布されるシート状の繊維集合体の0.5g/cm2荷重下における厚みは、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.5mm以下である。吸収性シートとしては例えば、特許第2963647号公報、特許第2955223号公報に記載のものを利用することができる。
吸収層44に含有される高吸収性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでも良い。粒子状の高吸収性ポリマーを用いる場合、その形状は球状、塊状、俵状又は不定形のいずれでも良い。高吸収性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられる。ポリアクリル酸塩やポリメタクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸又はメタクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを高吸収性ポリマーの性能を低下させない範囲で共重合させた共重合物も用いることができる。
以下、本発明で用いる血球凝集剤について説明する。本発明で用いる血球凝集剤とは以下の性質を有するものを言う。
即ち、疑似血液に、測定サンプル剤を1000ppm添加した際に、血液の流動性が維持された状態で、少なくとも2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成するとき、この測定サンプル剤を血球凝集剤とする。
前記擬似血液は、B型粘度計(東機産業株式会社製 型番TVB−10M、測定条件:ローターNo.19、30rpm、23℃、60秒間)を用いて測定した粘度が8mPa・sになるように、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト研究所製)の血球・血漿比率を調製したものである。
ここで、「血液の流動性が維持された状態」とは、測定サンプル剤が1000ppm添加された前記疑似血液10gをスクリュー管瓶(株式会社マルエム製 品番「スクリュー管No.4」,口内径14.5mm,胴径27mm,全長55mm)に入れ、該疑似血液を入れたスクリュー管瓶を180度反転した際に、20秒以内で60%以上の体積の該疑似経血が流れ落ちる状態を意味する。
また、「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」しているか否かは、次のようにして判断される。即ち、測定サンプル剤が1000ppm添加された前記疑似血液を、生理食塩水で4000倍に希釈し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製 型番:LA−950V2,測定条件:フロー式セル測定,循環速度1,超音波なし)を用いたレーザー回折散乱法によって、温度25℃にて測定した体積粒径平均のメジアン径が、2個以上の血球が凝集した凝集塊のサイズに相当する10μm以上である場合に、「2個以上の血球が凝集して凝集塊を形成」を形成していると判断する。
本発明で用いる血球凝集剤は、前記定義に当てはまる化合物又はその組み合わせ、さらには化合物の組み合わせによって前記定義を満たす(赤血球の凝集を発現し得る)剤である。つまり、血球凝集剤とは、あくまで前記定義によるところの血球凝集作用があるものに限定した剤のことである。従って、血球凝集剤に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、それを血球凝集剤組成物と表現し、血球凝集剤と区別する。
本発明で用いる血球凝集剤としては、カチオン性ポリマーが好適である。カチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン化セルロースや、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン等のカチオン化デンプンなどが挙げられる。また、本発明で用いる血球凝集剤は、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含むこともできる。本発明において「第4級アンモニウム塩」とは、窒素原子の位置にプラス一価の電荷を有している化合物、又は中和によって窒素原子の位置にプラス一価の電荷を生じさせる化合物を包含し、その具体例としては、第4級アンモニウムカチオンの塩、第3級アミンの中和塩、及び水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンが挙げられる。以下に述べる「第4級アンモニウム部位」も同様の意味で用いられ、水中で正に帯電する部位である。また、本発明において「共重合物」とは、2種以上の重合性単量体の共重合によって得られた重合物のことであり、二元系共重合物及び三元系以上の共重合物の双方を包含する。本発明において「重縮合物」とは、2種以上の単量体からなる縮合物を重合することで得られた重縮合物である。
本発明で用いる血球凝集剤が、カチオン性ポリマーとして、第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び/又は第4級アンモニウム塩共重合物及び/又は第4級アンモニウム塩重縮合物を含む場合、該血球凝集剤は、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物のうちのいずれか1種を含んでいても良く、あるいは任意の2種以上の組み合わせを含んでいても良い。また第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。同様に、第4級アンモニウム塩共重合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに同様に、第4級アンモニウム塩重縮合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前述した各種のカチオン性ポリマーのうち、特に、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物又は第4級アンモニウム塩重縮合物を用いることが、赤血球への吸着性の点から好ましい。以下の説明においては、簡便のため、第4級アンモニウム塩ホモポリマー、第4級アンモニウム塩共重合物及び第4級アンモニウム塩重縮合物を総称して「第4級アンモニウム塩ポリマー」と言う。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種用い、これを重合することで得られたものである。一方、第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を少なくとも1種用い、必要に応じ第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を少なくとも1種用い、これらを共重合することで得られたものである。即ち第4級アンモニウム塩共重合物は、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を2種以上用い、これらを共重合させて得られたものであるか、又は第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い、これらを共重合させて得られたものである。第4級アンモニウム塩共重合物は、ランダム共重合物でも良く、交互共重合物でも良く、ブロック共重合物でも良く、あるいはグラフト共重合物でも良い。第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それら縮合物を重合することで得られたものである。即ち第4級アンモニウム塩重縮合物は、第4級アンモニウム部位を有する単量体2種以上の縮合物を用い、これを重合させて得られたものであるか、又は、第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない単量体1種以上からなる縮合物を用い、これを縮重合させて得られたものである。
第4級アンモニウム塩ポリマーは、第4級アンモニウム部位を有するカチオン性のポリマーである。第4級アンモニウム部位は、アルキル化剤を用いた第3級アミンの第4級アンモニウム化によって生成させることができる。あるいは第3級アミンを酸若しくは水に溶解させ、中和で生じさせることができる。あるいは縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化によって生成させることができる。アルキル化剤としては、例えばハロゲン化アルキルや、硫酸ジメチル及び硫酸ジメチルなどの硫酸ジアルキルが挙げられる。これらのアルキル化剤のうち、硫酸ジアルキルを用いると、ハロゲン化アルキルを用いた場合に起こり得る腐食の問題が生じないので好ましい。酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、クエン酸、リン酸、フルオロスルホン酸、ホウ酸、クロム酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、グルコン酸、ギ酸、アスコルビン酸、ヒアルロン酸などが挙げられる。特に、アルキル化剤によって第3級アミン部位を第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ポリマーを用いると、赤血球の電気二重層を確実に中和できるので好ましい。縮合反応を含む求核反応による第4級アンモニウム化は、ジメチルアミンとエピクロルヒドリンの開環重縮合反応、ジシアンジアミドとジエチレントリアミンの環化反応のようにして生じさせることができる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは、その分子量が2000以上であることが好ましく、1万以上であることがさらに好ましく、3万以上であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以上であることによって、赤血球間でのカチオン性ポリマーどうしの絡み合いや、赤血球間でのカチオン性ポリマーの架橋が十分に生じる。分子量の上限値は1000万以下であることが好ましく、500万以下であることがさらに好ましく、300万以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの分子量がこれらの値以下であることによって、カチオン性ポリマーが経血中へ良好に溶解する。カチオン性ポリマーの分子量は、2000以上1000万以下であることが好ましく、2000以上500万以下であることがさらに好ましく、2000以上300万以下であることが一層好ましく、1万以上300万以下であることがさらに一層好ましく、3万以上300万以下であることが特に好ましい。本発明に言う分子量とは、重量平均分子量のことである。また、前述の分子量範囲内で、異なる分子量のカチオン性ポリマーを2種以上組み合わせても良い。カチオン性ポリマーの分子量は、その重合条件を適切に選択することで制御することができる。カチオン性ポリマーの分子量は、東ソー株式会社製のHLC−8320GPCを用いて測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。
カラムとしては、東ソー株式会社製のガードカラムαと分析カラムα−Mを直列でつないだものを、カラム温度:40℃で用いる。検出器は、RI(屈折率)を用いる。測定サンプルとしては、溶離液1mLに対して1mgの測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)を溶解させる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、水に150mmol/Lの硫酸ナトリウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は、溶離液10mLに対して、分子量5900のプルラン、分子量47300のプルラン、分子量21.2万のプルラン、分子量78.8万のプルラン、各2.5mg溶解させたプルラン混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体は流速:1.0mL/min、注入量:100μLで測定する。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、エタノール:水=3:7(体積比)に50mmol/Lの臭化リチウムと1質量%の酢酸を溶解させた溶離液を用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は、溶離液20mLに対して、分子量106のポリエチレングリコール(PEG)、分子量400のPEG、分子量1470のPEG、分子量6450のPEG、分子量5万のポリエチレンオキシド(PEO)、分子量23.5万のPEO、分子量87.5万のPEO、各10mg溶解させたPEG−PEO混合物を、分子量標準として用いる。ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水溶性重合性単量体を含む共重合体以外は流速:0.6mL/min、注入量:100μLで測定する。
赤血球の凝集塊を一層効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーとして第4級アンモニウム塩ポリマーを用いる場合、該第4級アンモニウム塩ポリマーは、その流動電位が1500μeq/L以上であることが好ましく、2000μeq/L以上であることがさらに好ましく、3000μeq/L以上であることが一層好ましく、4000μeq/L以上であることがさらに一層好ましい。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位がこれらの値以上であることによって、赤血球の電気二重層を十分に中和することができる。流動電位の上限値は13000μeq/L以下であることが好ましく、8000μeq/L以下であることがさらに好ましく、6000μeq/L以下であることが一層好ましい。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位がこれらの値以下であることによって、赤血球に吸着した第4級アンモニウム塩ポリマーどうしの電気的反発を効果的に防止することができる。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、1500μeq/L以上13000μeq/L以下であることが好ましく、2000μeq/L以上13000μeq/L以下であることがさらに好ましく、3000μeq/L以上8000μeq/L以下であることが一層好ましく、4000μeq/L以上6000μeq/L以下であることがさらに一層好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、例えば構成しているカチオン性モノマー自体の分子量、共重合体を構成しているカチオン性モノマーとアニオン性モノマー又はノニオン性モノマーの共重合モル比を調整することで制御することができる。第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位は、スペクトリス株式会社製の流動電位測定器(PCD04)を用いて測定することができる。具体的な測定条件は次の通りである。まず市販のナプキンに対して、ドライヤーなどを用いて各部材を接着しているホットメルトを無効化し、表面シート、吸収体、裏面シートなどの部材に分解する。分解した各部材に対して、非極性溶媒から極性溶媒までの多段階溶媒抽出法を行い、各部材に用いられている処理剤を分離し、単一の組成物を含んだ溶液を得る。得られた溶液を乾燥・固化させ、1H−NMR(核磁気共鳴法)、IR(赤外分光法)、LC(液体クロマトグラフィ)、GC(ガスクロマトグラフィ)、MS(質量分析法)、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)、蛍光X線などを複合して、処理剤の構造を同定する。測定対象の処理剤(第4級アンモニウム塩ポリマー)0.001gを生理食塩水10gに溶解させた測定サンプルに対して、0.001Nのポリエチレンスルホン酸ナトリウム水溶液(測定サンプルが負電荷を有する場合は、0.001Nのポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド水溶液)を滴定し、電極間の電位差がなくなるまでに要した滴定量XmLを測定する。その後、下記式1により第4級アンモニウム塩ポリマーの流動電位を算出する。
流動電位 = (X+0.190※)×1000 ・・・ 式1
(※ 溶媒の生理食塩水に要した滴定量)
カチオン性ポリマーが、赤血球の表面に首尾よく吸着するためには、該カチオン性ポリマーが、赤血球の表面に存在しているシアル酸と相互作用しやすいことが有利である。この観点から本発明者が検討を推し進めたところ、物質の無機性値と有機性値との比率である無機性値/有機性値の値(以下「IOB(Inorganic Organic Balance)値」という。)を尺度として、シアル酸結合物とカチオン性ポリマーとの相互作用の程度を評価できることが判明した。詳細には、カチオン性ポリマーとして、シアル酸結合物のIOB値と同じか、それに近似した値のIOB値を有するものを用いることが有利であることが判明した。シアル酸結合物とは、生体内でシアル酸が存在し得る形態となっている化合物のことであり、例えばガラクト脂質などの糖脂質の末端にシアル酸が結合している化合物などが挙げられる。
一般に、物質の性状は、分子間の各種分子間力に大きく支配され、この分子間力は主に分子質量によるVan Der Waals力と、分子の極性による電気的親和力からなっている。物質の性質の変化に対して大きな影響を与えるVan Der Waals力と、電気的親和力のそれぞれを個別に把握することができれば、その組み合わせから未知の物質、あるいはそれらの混合物についてもその性状を予測することができる。この考え方は、「有機概念図論」として良く知られている理論である。有機概念図論は、例えば藤田穆著の「有機分析」(カニヤ書店、昭和5年)、藤田穆著の「有機定性分析:系統的.純粋物編」(共立出版、1953年)、藤田穆著の「改編化学実験学−有機化学編」(河出書房、1971年)、藤田穆・赤塚政実著の「系統的有機定性分析(混合物編)」(風間書房、1974年)、及び甲田善生・佐藤四郎・本間善夫著の「新版有機概念図 基礎と応用」(三共出版、2008年)等に詳述されている。有機概念図論では、物質の物理化学的物性について、主にVan Der Waals力による物性の程度を「有機性」と呼び、また主に電気的親和力による物性の程度を「無機性」と呼び、物質の物性を「有機性」と「無機性」の組み合わせでとらえている。そして、炭素(C)1個を有機性20と定義し、それに対して各種極性基の無機性及び有機性の値を、以下の表1に記載のとおり定め、無機性値の和と有機性値の和を求め、両者の比をIOB値と定義している。本発明においては、これらの有機性値及び無機性値に基づき、上述したシアル酸結合物のIOB値を決定し、その値に基づきカチオン性ポリマーのIOB値を決定する。
具体的には、カチオン性ポリマーがホモポリマーである場合、該ホモポリマーの繰り返し単位に基づき無機性値及び有機性値を決定し、IOB値を算出する。例えば後述する実施例1で用いているカチオン性ポリマーであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(日本ルーブリゾール社製の商品名「マーコート106」)の場合、−C−×8=160の有機性値と、Ammo and NH4 salt×1=400の無機性値と、Ring(non-aromatic single ring)×1=10の無機性値と、−Cl×1=40の有機性値及び10の無機性値とを有することから、無機性値の合計は400+10+10=420となり、有機性値の合計は160+40=200となる。したがってIOB値は420/200=2.10となる。
一方、カチオン性ポリマーが共重合物である場合には、共重合に用いられるモノマーのモル比に応じて以下の手順でIOB値を算出する。すなわち、共重合物がモノマーAとモノマーBとから得られ、モノマーAの有機性値がORAで、無機性値がINAであり、モノマーBの有機性値がORBで、無機性値がINBであり、モノマーA/モノマーBのモル比がMA/MBである場合、共重合物のIOB値は以下の式から算出される。
このようにして決定されたカチオン性ポリマーのIOB値は、0.6以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.1以上であることがさらに好ましく、2.2以上であることが一層好ましい。また、カチオン性ポリマーのIOB値は、4.6以下であることが好ましく、3.6以下であることがさらに好ましく、3.0以下であることが一層好ましい。具体的には、カチオン性ポリマーのIOB値は、0.6以上4.6以下であることが好ましく、1.8以上3.6以下であることがより好ましく、2.1以上3.6以下であることがさらに好ましく、2.2以上3.0以下であることが一層好ましい。なお、シアル酸のIOB値は、シアル酸単体で4.25であり、シアル酸結合体で3.89である。前記シアル酸結合物とは、糖脂質における糖鎖とシアル酸が結合したものであり、シアル酸結合体は、シアル酸単体よりも有機性値の割合が高くなり、IOB値は低くなる。
カチオン性ポリマーのIOB値は前述の通りであるところ、有機性値そのものは40以上であることが好ましく、100以上であることがさらに好ましく、130以上であることが一層好ましい。また、310以下であることが好ましく、250以下であることがより好ましく、240以下であることがさらに好ましく、190以下であることが一層好ましい。例えば有機性値は、40以上310以下であることが好ましく、40以上250以下であることがより好ましく、100以上240以下であることがさらに好ましく、130以上190以下であることが一層好ましい。カチオン性ポリマーの有機性値をこの範囲に設定することで、該カチオン性ポリマーが赤血球に一層首尾よく吸着するようになる。
一方、カチオン性ポリマーの無機性値に関しては、70以上であることが好ましく、90以上であることがさらに好ましく、100以上であることが一層好ましく、120以上であることがさらに一層好ましく、250以上であることが特に好ましい。また、790以下であることが好ましく、750以下であることがさらに好ましく、700以下であることが一層好ましく、680以下であることがさらに一層好ましく、490以下であることが特に好ましい。例えば無機性値は、70以上790以下であることが好ましく、90以上750以下であることがさらに好ましく、90以上680以下であることが一層好ましく、120以上680以下であることがさらに一層好ましく、250以上490以下であることが特に好ましい。カチオン性ポリマーの無機性値をこの範囲に設定することで、該カチオン性ポリマーが赤血球に一層首尾よく吸着するようになる。
赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から、カチオン性ポリマーは水溶性であることが好ましい。本発明において「水溶性」とは、100mLのガラスビーカー(5mmΦ)に0.05gの1mm以下の粉末状又は厚み0.5mm以下のフィルム状カチオン性ポリマーを25℃の50mL脱イオン水に添加混合したときに、長さ20mm、幅7mmのスターラーチップを入れ、アズワン株式会社製マグネチックスターラーHPS−100を用いて600rpm攪拌下、その全量が24時間以内に水に溶解する性質のことである。尚、本発明において、さらに好ましい溶解性としては、全量が3時間以内に水に溶解することが好ましく、全量が30分以内に水に溶解することがさらに好ましい。
カチオン性ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。特に第4級アンモニウム塩ポリマーは、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものであることが好ましい。第4級アンモニウム部位は側鎖に存在していることが好ましい。この場合、主鎖と側鎖とが1点で結合していると、側鎖の可撓性が阻害されにくくなり、側鎖に存在している第4級アンモニウム部位が赤血球の表面に円滑に吸着するようになる。尤も本発明において、カチオン性ポリマーの主鎖と側鎖とが2点又はそれ以上で結合していることは妨げられない。本発明において「1点で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの1個が、側鎖の末端に位置する1個の炭素原子と単結合していることをいう。「2点以上で結合している」とは、主鎖を構成する炭素原子のうちの2個以上が、側鎖の末端に位置する2個以上の炭素原子とそれぞれ単結合していることをいう。
カチオン性ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、例えば第4級アンモニウム塩ポリマーが、主鎖とそれに結合した複数の側鎖とを有する構造のものである場合、各側鎖の炭素数は4以上であることが好ましく、5以上であることがさらに好ましく、6以上であることが一層好ましい。炭素数の上限値は、10以下であることが好ましく、9以下であることがさらに好ましく、8以下であることが一層好ましい。例えば側鎖の炭素数は4以上10以下であることが好ましく、5以上9以下であることがさらに好ましく、6以上8以下であることが一層好ましい。側鎖の炭素数とは、該側鎖における第4級アンモニウム部位(カチオン部位)の炭素数のことであり、対イオンであるアニオン中に炭素が含まれているとしても、その炭素は計数に含まない。特に、側鎖の炭素原子のうち、主鎖に結合している炭素原子から、第4級窒素に結合している炭素原子までの炭素数が前述の範囲であることが、第4級アンモニウム塩ポリマーが赤血球の表面の表面に吸着するときの立体障害性が低くなるので好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩ホモポリマーである場合、該ホモポリマーとしては、例えば第4級アンモニウム部位又は第3級アミン部位を有するビニル系単量体の重合物が挙げられる。第3級アミン部位を有するビニル系単量体を重合する場合には、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位をアルキル化剤によって第4級アンモニウム化した第4級アンモニウム塩ホモポリマーとなるか、重合前に及び/又は重合後に、第3級アミン部位を酸によって中和した第3級アミン中和塩となるか、重合後に水溶液中でカチオンを帯びる第3級アミンとなる。アルキル化剤や酸の例は、前述した通りである。
特に第4級アンモニウム塩ホモポリマーは、以下の式1で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
第4級アンモニウム塩ホモポリマーの具体例としては、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。また、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と1点で結合しているものであるポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムメチル硫酸塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルトリメチルアミン4級塩)、ポリ(2−アクリルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチル硫酸塩)、ポリ(3−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド4級塩)、ポリメタクル酸ジメチルアミノエチル、ポリアリルアミン塩酸塩、カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ポリアミジンなどが挙げられる。一方、第4級アンモニウム部位を有する側鎖が、主鎖と2点以上で結合しているホモポリマーの例としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルアミン塩酸塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩共重合物である場合には、該共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を2種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物として、前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマーの重合に用いられる重合性単量体を1種以上と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体を1種以上用い共重合して得られた共重合物を用いることができる。さらに、ビニル系重合性単量体に加えて、又はそれに代えて、他の重合性単量体、例えば−SO2−などを用いることもできる。第4級アンモニウム塩共重合物は、前述した通り、二元系の共重合物又は三元系以上の共重合物であり得る。
特に、第4級アンモニウム塩共重合物は、前記の式1で表される繰り返し単位と、以下の式2で表される繰り返し単位とを有することが、赤血球の凝集塊を効果的に生成させる観点から好ましい。
また、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体としては、カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体を用いることができる。これらの重合性単量体中で、特にカチオン性重合性単量体又はノニオン性重合性単量体を用いることで、第4級アンモニウム塩共重合物内において第4級アンモニウム部位との電荷相殺が起こらないので、赤血球の凝集を効果的に生じさせることができる。カチオン性重合性単量体の例としては、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を有する環状化合物としてビニルピリジンなど、特定の条件下でカチオンを帯びる窒素原子を主鎖に有する直鎖状化合物としてジシアンジアミドとジエチレントリアミンの縮合化合物などが挙げられる。アニオン性重合性単量体の例としては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸、アクリル酸、及び、スチレンスルホン酸、並びに、これらの化合物の塩などが挙げられる。一方、ノニオン性重合性単量体の例としては、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。これらカチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体、又はノニオン性重合性単量体は、それらのうちの一つを用いることができ、あるいは任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。またカチオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、アニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることができ、あるいはノニオン性重合性単量体を2種以上組み合わせて用いることもできる。カチオン性重合性単量体、アニオン性重合性単量体及び/又はノニオン性重合性単量体を重合性単量体として用いて共重合された第4級アンモニウム塩共重合物は、その分子量が、前述の通り1000万以下であることが好ましく、特に500万以下、とりわけ300万以下であることが好ましい(以下に例示する第4級アンモニウム塩共重合物についても同様である。)。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いること、それから得られる第4級アンモニウム塩共重合物を用いて赤血球を凝集させたときに、硬い凝集塊が生じやすくなり、高吸収性ポリマーの吸収性能が一層阻害されにくくなる。水素結合をすることが可能な官能基としては、例えば−OH、−NH2、−CHO、−COOH、−HF、−SHなどが挙げられる。水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアルコール、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。特に、水素結合が強く働く、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ジメチルアクリルアミドなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体として、疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いることもできる。このような重合性単量体を共重合に用いることで、前述した、水素結合をすることが可能な官能基を有する重合性単量体を用いる場合と同様の有利な効果、すなわち赤血球の硬い凝集塊が生じやすくなるという効果が奏される。疎水性相互作用をすることが可能な官能基としては、例えばメチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、アルキルナフタレン基、フッ化アルキル基などが挙げられる。疎水性相互作用をすることが可能な官能基を有する重合性単量体の例としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、スチレンなどが挙げられる。特に、疎水性相互作用が強く働き、第4級アンモニウム塩ポリマーの溶解性を大きく低下させない、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどは、第4級アンモニウム塩ポリマーの赤血球への吸着状態が安定化するので好ましい。これらの重合性単量体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第4級アンモニウム塩共重合物中での、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体と、第4級アンモニウム部位を有さない重合性単量体とのモル比は、該第4級アンモニウム塩共重合物によって赤血球が十分に凝集するように適切に調整されることが好ましい。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物の流動電位が、前述した値となるように調整されることが好ましい。あるいは、第4級アンモニウム塩共重合物のIOBが、前述した値となるように調整されることが好ましい。特に、第4級アンモニウム塩共重合物における第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることがさらに好ましく、32モル%以上であることが一層好ましく、38モル%以上であることがさらに一層好ましい。また、100モル%以下であることが好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましく、65モル%以下であることが一層好ましく、56モル%以下であることがさらに一層好ましい。具体的には、第4級アンモニウム部位を有する重合性単量体のモル比は10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、22モル%以上80モル%以下であることがさらに好ましく、32モル%以上65モル%以下であることがさらに好ましく、38モル%以上56モル%以下であることが一層好ましい。
第4級アンモニウム塩ポリマーが、第4級アンモニウム塩重縮合物である場合には、該重縮合物として、前述した第4級アンモニウム部位を有する単量体1種以上からなる縮合物を用い、それらの縮合物を重合することで得られた重縮合物を用いることができる。具体例としては、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン重縮合物、ジメチルアミン/エピクロルヒドリン重縮合物などが挙げられる。
前述した第4級アンモニウム塩ホモポリマー及び第4級アンモニウム塩共重合物は、ビニル系重合性単量体の単独重合法又は共重合法によって得ることができる。重合方法としては、例えばラジカル重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、開環重合、重縮合などを用いることができる。重合条件に特に制限はなく、目的とする分子量、流動電位、及び/又はIOB値を有する第4級アンモニウム塩ポリマーが得られる条件を適切に選択すれば良い。
また、本発明で用いる血球凝集剤は、ポリカチオン(カチオン性ポリマー)以外に、第三成分、例えば、溶媒、可塑剤、香料、抗菌・消臭剤、スキンケア剤等の他の成分を1種以上含んだ組成物(血球凝集剤組成物)の形態で付与されていても良い。溶媒としては、水、炭素数1ないし4の飽和脂肪族一価アルコール等の水溶性有機溶媒、又は該水溶性有機溶媒と水との混合溶媒などを用いることができる。可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブタンジオールなどを用いることができる。香料としては、特開2007−244764号公報に記載されているグリーンハーバル様香気を有する香料、植物の抽出エキス、柑橘類の抽出エキスなどを用いることができる。抗菌・消臭剤としては、特開2004−244789号公報に記載されている抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物、特開2007−097953号公報に記載されているフェニル基を有する重合性モノマーから重合された多孔性ポリマー、特開2006−191966号公報に記載されている第4級アンモニウム塩、活性炭、粘土鉱物などを用いることができる。スキンケア剤としては、特開2004−255164号公報に記載されている植物エキス、コラーゲン、天然保湿成分、保湿剤、角質柔軟化剤、消炎剤などを用いることができる。
前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが一層好ましい。また、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが一層好ましい。前記血球凝集剤組成物に占めるカチオン性ポリマーの割合をこの範囲内に設定することで、生理用品に有効量のカチオン性ポリマーを付与することができる。
図5には、本発明の生理用品の他の実施形態の図2相当図が示されている。後述する他の実施形態については、前述したナプキン1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、ナプキン1についての説明が適宜適用される。
ナプキン1においては、積層構造4を構成する4層全部が被覆シート5で一体的に被覆されていたが、本発明には、積層構造4の一部のみが被覆シート5で被覆された形態も含まれる。図5に示すナプキン1Aは斯かる形態の一例であり、被覆シート5の一部、具体的には隔離層41と凝集促進層43との間に介在配置されている部分が、血球凝集剤層42として機能する部分、即ち高吸収性ポリマーを含有せずに血球凝集剤を含有する部分であり、該部分以外の他の部分(隔離層41又は凝集促進層43の周縁から外方に延出している部分)は、高吸収性ポリマー及び血球凝集剤を含有しておらず、凝集促進層43及び吸収層44を一体的に被覆している。隔離層41は、被覆シート5で被覆されずに、表面シート2と被覆シート5との間に介在配置されている。ナプキン1Aにおける隔離層41は、前述した隔離層としての作用効果に加えてさらに、本技術分野においてサブレイヤーシート、セカンドシートなどとも呼ばれる部材と同様の作用効果を奏し、具体的には、液透過性の向上、液戻りの低減などを奏し得る。ナプキン1Aによっても、ナプキン1と同様の効果が奏される。
以上、本発明について説明したが、本発明は前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明は、経血の吸収に用いられる物品全般に適用することができる。そのような物品の例としては、前記実施形態の如き生理用ナプキンの他に、パンティライナ及びタンポン等が挙げられるが、それらに限られない。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜11及び参考例2〕
下記表2〜表4に示す構成の4層構造の積層構造を作製した。具体的には、4層をそれぞれ別途作製し、作製した4層を、互いに接合せずに単に重ね合わせて積層構造とした。
積層構造における血球凝集剤層の作製は次の手順で行った。即ち、血球凝集剤を脱イオン水に溶解させ、5質量%の希釈液を塗布液として作製し、この塗布液を、血球凝集剤層のベースとなるシート(紙又は不織布)の肌対向面(隔離層との対向面)の全域にスプレーにより塗布し、その後、溶媒を乾燥させることで行った。
積層構造における吸収層としては、粒子状の高吸収性ポリマー(以下、「SAP」ともいう)のみからなる層(以下、「SAP層」ともいう)、又は吸収性シートを用いた。吸収性シートとしては、シート状の繊維集合体として、坪量75g/m2、0.5g/cm2荷重下における厚み0.8mmの市販の生理用ナプキン(花王株式会社製2015年日本製「ロリエスリムガードしっかり昼用羽つき25cm」)からコールドスプレーを用いて取り出した吸収体を用いた。該吸収体は2枚のパルプシートにSAPが挟持された構成であった。
〔参考例1〕
隔離層を有さない3層構造の積層構造を用いた以外は、実施例と同様にして積層構造を作製した。
〔参考例3〕
凝集促進層を有さない3層構造の積層構造を用いた以外は、実施例と同様にして積層構造を作製した。
〔比較例1〕
表面シートに近い順に、血球凝集剤を含有しない紙からなる層と、SAP層との計2層を具備する積層構造を作製した。
実施例及び参考例では、血球凝集剤として、下記剤A〜Dの何れかを用いた。
・剤A:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(日本ルーブリゾール株式会社製のマーコート100)
・剤B:ポリメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムジエチル硫酸塩/ジメチルアクリルアミド共重合体(メタクリル酸ジメチルアミノエチルのジエチル硫酸塩とジメチルアクリルアミドを、前者/後者=56:44のモル比で用い、溶媒であるエタノールに溶解させ、油溶性のアゾ開始剤である2,2’−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬株式会社製のV−65B)を加えて加熱し共重合を行って、水溶性の第4級アンモニウム塩共重合物を得た。)
・剤C:ポリメタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムジエチル硫酸塩/ジメチルアクリルアミド共重合体(メタクリル酸ジメチルアミノエチルのジエチル硫酸塩とジメチルアクリルアミドを、前者/後者=56:44のモル比で用い、溶媒であるエタノールに溶解させ、油溶性のアゾ開始剤である2,2’−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride(和光純薬株式会社製のV−65B)を加えて加熱し共重合を行って、水溶性の第4級アンモニウム塩共重合物を得た。)
・剤D:ポリメタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム硫酸塩(センカ株式会社製のユニセンスFPV1000L)
〔評価試験〕
各実施例、参考例及び比較例の積層構造を用いて下記方法により評価サンプルを作製し、その作製直後の評価サンプルについて、表面白さ(L値)、SAPの吸液量、凝集塊粒径をそれぞれ下記方法により評価した。その結果を下記表2〜表4に示す。
(評価サンプルの作製方法)
評価対象の積層構造を、市販の生理用ナプキン(花王株式会社製2015年日本製「ロリエスリムガードしっかり昼用羽つき25cm」)からコールドスプレーを用いて取り出した表面シートと裏面シートとの間に挟み、その厚み方向の両側から厚さ3mmの2枚のアクリル板で挟み、その状態下に一対のマングルロール間を一往復させた。この一対のマングルロールのクリアランスは85mmに設定した。そして、積層構造を、該積層構造が生理用品に組み込まれた場合に着用者の肌に最も近い位置に配される層(隔離層)が上方、着用者の肌から最も遠い層(吸収層)が下方となるように平坦面上に載置し、ロータリーポンプ(東京理化器械株式会社製 EYELA MP−1000)を用いて、表面シートの上から、前述の疑似血液3gを流速0.125g/秒の速度で注入した後、直ちに表面シート上に800gの錘を載せて該積層構造全体を加圧し、疑似血液の注入から3分経過後に該錘を取り除いた。この3分間にわたる一連の操作(疑似血液3gの注入及びその後の加圧)を3回繰り返し、合計9gの脱繊維馬血を積層構造に注入したものを評価サンプルとした。
<表面白さ(L値)の評価方法>
評価サンプルにおける血液の注入側の面に色差計(日本電色工業株式会社製SPECTRO PHOTOMETER NF333)をあてて測定した。計測は3回行い、その平均値をL値とした。L値が大きいほど、使用後の表面白さに優れることを示す。
<SAPの吸液量の評価方法>
評価サンプルに含まれている湿潤状態のSAPの重量W1を測定した後、そのSAPを105℃で一昼夜乾燥させ、その乾燥状態のSAPの重量W2を測定した。そして、両測定値から次式により、単位重量当たりのSAPの吸液量(g/g)を算出した。このSAPの吸液量が多いほど、血液の吸収性能に優れることを示す。
SAPの吸液量(g/g)=(W1−W2)/W2
<凝集塊粒径の評価方法>
積層構造中に貯留している血液を取り出して容器に移し、生理食塩水で約100倍に希釈した。この血液希釈液を循環させながら、そこに含まれる凝集塊の粒径を、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所のLA−350)を用いて測定した。凝集塊粒径が大きいほど、SAPの吸収阻害要因となる赤血球などの血液中の非液体成分の凝集が促進され、SAPが本来有する吸収性能が発揮されやすくなることを示す。