図1は本発明を適用した草刈作業機の側面図であり、図2は倒伏カバーの一部を切断した状態の草刈作業機の斜視図であり、図3は草刈装置を作業高さに下降させた状態の草刈作業機の正面図であり、図4は草刈装置を非作業高さに上昇させた状態の草刈作業機の正面図である。これらの図面に示された草刈作業機(刈取作業機)1は、予め定めた範囲又は自動的に認識した範囲内を、草(対象物)を刈取る刈取作業を行いながら自律的に自走する作業ロボットである。
この草刈作業機1は、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)2を有する走行機体(機体)3と、該走行機体3の前側に昇降可能に連結されて刈取作業(草刈作業)を行う草刈装置(刈取装置)4と、草刈装置3側から後方に延出された操向ハンドル(ハンドル)5とを備えている。
上記クローラ式走行装置2は、前後一方側(図示する例では前側)に配置された駆動スプロケット6と、他方側に配置された従動スプロケット7と、この駆動スプロケット6と従動スプロケット7とに掛け回される環状のクローラ8とを備えている。
左右のクローラ式走行装置2,2毎に動力源である電動モータ9(図9参照)が個別に設けられ、この電動モータ9から駆動スプロケット6に伝動される回転動力は、方向切換が可能であって且つ速度も変更可能である。該構成の左右のクローラ式走行装置2,2によれば、走行機体3の前後進、左右旋回、走行速度変更が可能になる。
上記走行機体3は、左右のクローラ式走行装置2,2の非稼働部分の間に架設固定される車台フレーム11と、車台フレーム11の前端部及び後端部からそれぞれ上方に突設された支持フレーム12,13とを備えている。前後の支持フレーム12,13は、正面視で逆U字状に形成されている。
前後の支持フレーム12,13の上部には、板状の設置部材である設置台14,16が取付固定されている。前側の設置台14は、前側に形成されたフラットな下段部14aと、後側に形成されたフラットな上段部14bとを有するように、側面視でクランク状に屈曲形成された板状部材である。後側の設置台16は、水平な板状部材である。
上記草刈装置4は、平面視で前後方向を向いた姿勢で一直線状に延びる円筒状の伝動ケース(支持フレーム)17と、該伝動ケース17の後端側に一体的に設置された動力源である電動モータ18と、前記伝動ケース17の前端側に支持された草刈部(刈取部)19とを有している。
伝動ケース7の内部には、電動モータ18によって発生させた回転動力を草刈部19側に伝動する伝動機構21(図10参照)の少なくとも一部が収容支持されている。
草刈部19は、左右方向に延びる筒状の横筒(横フレーム)22と、該横筒22の左右の各端部から下方に突出形成された縦筒(縦フレーム)23,23と、該左右の縦筒23,23の下端側にそれぞれ回転可能に支持された刈取回転体24,24と、左右の刈取回転体24,24の直上にそれぞれ設けられ且つ該刈取回転体24,24と共に一体で回転作動する搬送回転体26,26と、各刈取回転体24,24の直下に配置形成された接当部27,27と、左右の刈取回転体24,24及び搬送回端体26,26の上方をまとめてカバーする単一の刈取カバー(倒伏体)28と、左右の搬送回端体26,26の真上側にそれぞれ配置され且つ該搬送回端体26,26及びその直下に配置された刈取回転体24を保護してカバーする保護カバー29,29とを有している。
左右の縦筒23,23は横筒22の左右の端部側にそれぞれ一体的に取付固定されている。この横筒22及び左右の縦筒23,23は、正面視でゲート状に成形され、草刈部19のフレームを構成している。各縦筒23の下端側には、ユニット化された刈取回転体24及び搬送回転体26が該縦筒2の軸回りに回転可能に支持されている。
横筒22の内部及び縦筒23,23の内部には、上述した伝動機構21の一部がそれぞれ収容支持されている。この伝動機構21を介して、電動モータ18からの動力が左右の刈取回転体24及び搬送回転体26にそれぞれ伝動され、これらを回転駆動(草刈駆動,刈取駆動)させる。すなわち、該伝動機構21は、電動モータ18で発生させた動力を各刈取回転体24及び搬送回転体26に伝動するように構成されている。
また、前記伝動ケース17の前端側には、横筒22の左右方向中央部の背面側が、該伝動ケース17の軸回りに左右回動自在に連結支持されている。すなわち、草刈部19は、伝動ケース17の軸回りに左右回動可能(ローリング可能)に、該伝動ケース17に支持されている。
さらに、この草刈装置4は、側面視で電動モータ18と重複する位置に形成された左右方向の揺動軸Xを支点として、全体が一体で上下揺動可能に走行機体3に支持されている。この揺動軸Xを支点とした上下揺動によって、草刈部19(草刈装置4)が昇降され、刈高さの上下位置調整や、非作業高さへの上昇や、作業高さへの下降が行われる。ちなみに、該上下揺動のための支持構造の詳細については後述する。
なお、重量物である電動モータ18を走行機体3側に位置させたことで、この草刈作業機1全体の前後バランスを良好に保持させることが容易になる。加えて、前記揺動軸Xの前方に配置された草刈部19との前後バランスを保持させるため、走行機体3における該揺動軸Xの後方にバッテリ(バランスウェイト)31が配設され、これによって全体の前後バランスがさらに良好になる。
このバッテリ31は、前記電動モータ18に電力を供給して駆動させることにより、草刈装置4を草刈駆動させる。また、バッテリ31は車台フレーム11における前後の支持フレーム12,13の間に固設されている。
各刈取回転体24は自身の回転中心から放射状に突出形成された刈刃32を複数有し、この複数の刈刃32は、刈取回転体24の回転方向に所定間隔毎に並べて配置され、草刈駆動時に一体回転する。この左右の刈取回転体24,24は、刈刃32の回転軌跡が平面視で重複するように、配置構成されている。
各搬送回転体26は自身の回転中心から放射状に突出形成された搬送部33を複数有している。この複数の搬送部33は搬送回転体26の回転方向に並べて配置され、草刈駆動時に一体回転する。搬送部33は、刈刃32と同数設けられ、対応する刈刃32の真上側にそれぞれ配置されている。この左右の搬送回転体26,26は、直下の刈取回転体24,24の上面に一体的に取付けられてユニット化され、刈取ユニットを構成している。そして、搬送回転体26は、直下の刈取回転体24と共に一体で回転駆動される。すなわち、この左右の搬送回転体26,26も、左右の刈取回転体24,24と同様、互いの間で対象物を後方に掻き込む方向に回転駆動される。
上記接当部27は、刈取回転体24から下方に突出形成され、草刈装置4の所定高さ以下への下降を規制し、回転中の刈取回転体24や搬送回転体26が土を掘ることを防止させる。
上記刈取カバー28は、前記左右の刈取ユニットの真上側及び左右両側方をそれぞれカバーするように正面視で逆U字状に曲げ形成され、複数(図示する例では3つ)の取付ブラケット34によって横フレーム22にそれぞれ取付固定されている。
この刈取カバー28の前端部は側面視で上方に向かって前方に傾斜しており、その上端は倒伏部28aを構成している。前進走行させながらの草刈作業時には、刈取カバー28の倒伏部28aが草の中途部又は上部に接当して該草を前方に倒伏させ、左右の刈取ユニットによる後方への掻込みを促進させる。
上記保護カバー29は、左右の刈取ユニット(刈取回転体24及び搬送回転体26)毎に設けられ、該刈取ユニットの上方及び外側側方をカバーするように平面視で扇状に成形されている。この保護カバー29は、刈取カバー28の直下に位置させた状態で、縦筒23の下部に取付固定されている。
該構成の草刈部19の後方に、該草刈部19によって刈取られて後方に掻込まれた草を、さらに後方に排出する左右方向の排出ロータ36が回転駆動可能に配置されている。この排出ロータ36は左右のクローラ式走行装置2,2の間に配置されている。
この排出ロータ36は放射状に突出し且つ軸方向に延びる羽根36aを複数有し、この複数の羽根36aは排出ロータ36の回転軸37の軸回り方向に所定間隔毎に並べて配置されている。走行機体3の前進走行中、刈取られて後方に掻込まれた草は、回転駆動されている排出ロータ36によって、さらに後方に送られる。
上記操向ハンドル5は、走行機体3側から後方側斜め上方に延出されている。具体的には、該操向ハンドル5は、平面視で前方が開放されたコの字状に成形され、その左右の前端部が走行機体3の電動モータ18に取付固定されている。該構成によって、この操向ハンドル5は草刈装置4と共に一体で上記揺動軸Xを支点に上下揺動される。
そして、草刈装置4を操向ハンドル5を介して上下揺動駆動(昇降駆動)させる昇降駆動装置38が設けられている。この昇降駆動装置38は、走行機体3における操向ハンドル5後端部の直下に設置されている。
次に、図1、図5及び図6に基づいて昇降駆動装置38の構成について説明する。
図5(A),(B)は昇降駆動装置の側面図及び背面図である。昇降駆動装置38は、背面視でU字状に成形され且つ車台フレーム11上にボルト固定された昇降側フレーム39と、昇降側フレーム39のU字状内に回転自在に支持されたリール41及びリール駆動ギヤ42と、該リール41に巻き掛けられたワイヤー43と、該ワイヤー43のリール41からの繰出し側端部を操向ハンドル5の後端側の水平部分に弾力的に連結する引張スプリング(弾性部材)44と、昇降側フレーム39に取付支持された電動モータ(アクチュエータ)46と、該電動モータ46の回転動力を昇降側フレーム39のU字状内に支持されたリール駆動ギヤ42にギヤ伝動する伝動ケース(ギヤボックス)47を備えている。
電動モータ46を、ワイヤー43がリール41から繰出される側に回転駆動させると、自重によって草刈装置4が下降される一方で、ワイヤー43がリール41に巻取れる側(繰り入れる側)に回転駆動させると草刈装置4が上昇される。ちなみに、この電動モータ46は、バッテリ31からの電力供給によって、駆動される。
図6(A)は草刈装置を作業高さに下降させた状態の側面図であり、(B)は草刈装置を作業高さと非作業高さの間に位置させた状態の側面図であり、(C)は草刈装置を非作業高さに上昇させた状態の側面図である。同図(A)に示す通り、昇降駆動装置38によるワイヤー43の繰出しによって草刈装置4を作業高さへの下降を行う。同図(B)に示す通り、昇降駆動装置38によるワイヤー43の繰出し及び繰入れよって草刈装置4の昇降高さ調整を行う。同図(C)に示す通り、昇降駆動装置38によるワイヤー43の繰入れよって草刈装置4を非作業高さへの上昇を行う。
次に、図7及び図8に基づいて、草刈装置4のローリング構造を詳述する。
図7は草刈装置のローリング構造を示す斜視図である。伝動ケース17の前端部には、該伝動ケース17の軸方向視で上下及び左右方向に延びる十字状の支持プレート48が固設されている。この支持プレート48には横筒22(草刈部19)がローリング可能(伝動ケース17の軸回りに左右回動可能)に支持される他、草刈部19を伝動ケース17に対して予め定めた所定の姿勢(具体的には、左右方向の水平な姿勢)に弾性的に付勢する付勢機構49が設けられている。
付勢機構49は、平面視でT字状をなす板バネ(弾性部材)51から構成されている。板バネ51は、横筒22の左右方向中央部から伝動ケース17側(後方側)に突出した取付部51aと、該中央部から横筒22の左右方向両側に突出して左右一対の作用部51b、51bとを有している。板バネ51は、取付部51aが支持プレート48の上端部に着脱可能にボルト固定され、左右の作用部51b、51bが弾性変形した状態で横筒22の左右両側部分にそれぞれ接当し、草刈部19を左右方向に水平な姿勢に付勢している。
図8(A)は刈取部が左右のクローラ式走行装置に対して左方向に下方傾斜した状態を示す斜視図であり、(B)は刈取部が左右のクローラ式走行装置に対して左右方向に水平な状態を示す斜視図であり、(C)は刈取部が左右のクローラ式走行装置に対して右方向に下方傾斜した状態を示す斜視図である。
草刈部19を左右一方側に回動(ローリング)させた場合、他方側の作用部51bがさらに弾性変形して弾性力が強まるとともに、該一方側の作業部51bが無負荷状態に近い形状に復元して弾性力が弱まり、草刈部19を左右方向に水平な姿勢に復元させる付勢力が作用する(図8(A),(C)参照)。一方、草刈部19が左右方向に水平な姿勢に切換えられている場合、左右の作用部51b、51bが同程度に弾性変形して同様の弾性力が作用し、該姿勢が保持される(図8(B)参照)。
次に、図9に基づいて、クローラ式走行装置2の構成を詳述する。
図9は、クローラ式走行装置の構造を示す平断面図である。同図に示す通り、クローラ式走行装置2は、上述した駆動スプロケット6、従動スプロケット7及び電動モータ9と、該電動モータ9が収容され且つ主フレームとしても機能する前後方向の収容ボックス(駆動ケース)52とを備えている。
電動モータ9は収容ボックス52内の前側に設置され、該電動モータ9の出力軸9aは収容ボックス52の外側側方に突出している。駆動スプロケット7は、出力軸9aの上記突出した端部に一体回転するように取付けられている。ちなみに、この電動モータ9にはバッテリ31から電力が供給される。
収容ボックス52内における電動モータ9の後方位置には、前記従動スプロケット7の回転軸53を前後位置調整可能且つ軸回りに回転自在に支持する支持機構54が設けられている。収容ボックス52の左右の側面には回転軸53を挿通させる挿通孔52a,52aがそれぞれ穿設され、上述の回転軸53は収容ボックス52を貫通して該左右の挿通孔52a,52aから両側方に突出している。
この支持機構54による従動スプロケット7及び回転軸53の前後位置調整によって、該従動スプケット7と、前記主動スプロケット6とに掛け回されたクローラ8のテンションが適切に維持される。この他、主フレームを収容ボックス52によって構成したので、草をクローラ式走行装置1に巻込まれるような事態も効率的に防止される。ちなみに、このような回転軸53及び従動スプロケット7の前後位置調整を許容するように、上述の挿通孔52aは前後方向に長く形成されている。
なお、上述した排出ロータ36には、左右のクローラ式走行装置2の少なくとも一方の動力が伝動されて回転駆動される。具体的には、電動モータ9の出力軸9aや、回転軸53から回転動力が排出ロータ36に伝動される。
また、この草刈作業機1の重心の前後位置は、左右のクローラ式走行装置1の前後範囲内における前寄り部分(具体的には、10%程度前寄りの部分)に設定されている。このため、坂を登っている際等に走行機体3が後方に倒れることが防止される。
次に、図1、図7及び図10に基づいて、草刈装置4の支持構造及び動力伝動構造について説明する。
図10は、草刈装置の支持構造及び動力伝動構造を示す断面図である。図1、図7及び図10に示す通り、刈取装置4を刈取駆動させる電動モータ18は、モータ本体(本体)56と、該本体56を支持する支持ケース57とを有している。
支持ケース57は、その内部に本体56の少なくとも一部が収容固定され、その前面側に伝動ケース17の後端部が固定されている。電動モータ18の本体56に設けられ且つ発生させた回転動力が出力される出力軸56aは、前記伝動ケース17と同一軸心をなし且つ前記支持ケース57内において該伝動ケース17側を向いた状態になる。
支持ケース57の左右の側部には、揺動軸Xと同一軸心状をなす支持軸58,58がそれぞれ挿通され、各支持軸58は軸受59によって自身の軸回りに回動自在に支持ケース57に取付けられている。一方、上述の支持フレーム12のU字状の左右の支柱状部分には、後方突出する固定ブラケット61,61が溶着されている。
そして、この左右の支持軸58,58の拡径された鍔状の固定部58a,58aを、対応する左右の固定ブラケット61,61にそれぞれ着脱可能に固定することによって、草刈装置4が走行機体3の支持フレーム12に上下揺動可能に支持される。
続いて、草刈装置4の動力伝動構造について説明すると、上述の伝動機構21は、伝動ケース17内に回転自在に支持され且つ上述の出力軸56aと同一軸心となる前後伝動軸(伝動軸)62と、横筒22内に回転自在に支持された左右方向の左右伝動軸(伝動軸)63と、左右の縦筒23,23内にそれぞれ回転自在に支持されて該縦筒23,23と同一軸心をなす刈取駆動軸64,64と、前後伝動軸63から左右伝動軸63に動力が伝動されるように互いに噛合う一対のべベルギヤ66,67と、左右伝動軸63から縦伝動軸64に動力が伝動されるように互いに噛合う一対のべベルギヤ68,69とを備えている。また、前後伝動軸62は、カップリング71によって、出力軸56aに一体回転するように連結固定されている。
電動モータ18の出力軸56aから出力された回転動力は、前後伝動軸62→左右伝動軸63→左右の刈取駆動軸64,64と伝動され、草刈部19を草刈駆動させる。
次に、図1乃至図4に基づいて、草刈作業機1を作業ロボットとして機能させるための構成について説明する。
設置台16上にはマイコン等や無線通信手段やGPS等が筐体に内装された制御ユニット(制御部)72が設置され、操向ハンドル5の後端部には取付具73を介して情報端末74が着脱自在に装着され、設置第14の下段部14aの上面側には、可動機構78を介して、LRF76及びカメラ77がセンシング範囲を変更可能に設置されている。
情報端末74と制御ユニット72とは互いに無線通信されて、各部を制御する制御部を構成している。可動機構78上には前方が開放された側面視コの字状の支持部材79が搭載され、該支持部材79のコの字状内に前方を向けた状態でLRF76が設置され、該支持部材79の上端面に前方を向けた状態でカメラ77が設置されている。可動機構76は、LRF76及びカメラ77を支持部材79と共に左右回動させ、そのセンシング範囲を変更させる。
また、各クローラ式走行装置2には回転センサ等から構成された図示しない走行検出手段が設けられ、草刈装置4の上下揺動位置(昇降位置)を検出する上下揺動位置検出手段が、草刈装置4の揺動支点側に設けられたポテンショメータ又はリール41の回転数を検出する回転センサ等から構成されている。
制御部は、上述の走行検出手段で後進走行を検出した場合、草刈装置4を上昇駆動させる。これによって、例えば、バック時の慣性力によって、草刈作業機1の全体が前のめりになり、刈取部19が接地することを効率的に防止できる。
また、制御部は、上述の走行検出手段によって左右旋回を検出した場合にも、草刈装置4を上昇駆動させる。これによって、草刈装置4が接地して高抵抗のまま左右旋回が行われてエネルギー効率が低下することも防止される。
そして、制御部は、これらのセンシング情報を利用して、予め定められた範囲又は自動的に識別した範囲の草刈作業を自動的に行う。ちなみに、制御ユニット72に設けられた位置検出手段であるGPSは必須のものではなく、LRF76やカメラ77からのセンシング情報を利用して自己位置同定を行ってもよい。
一方、情報端末74を用い、該情報端末74と制御ユニット72との無線通信によって、草刈作業機1を遠隔操作させることも可能であり、この場合には、LRF76によるセンシング結果やカメラ77で撮影した画像を情報端末74の表示させ、遠隔操作を行い易くすることも可能である。
以上のように構成される草刈作業機1によれば、走行機体3の前進走行中、左右一対の刈取ユニット(刈取回転体24及び搬送回転体26)によって後方に掻込まれながら刈取られた草は、該刈取ユニットの掻込み及び刈取カバー28の作用により確実に前方に倒伏され、さらに排出ロータ36によって後方に送られる。これによって背に高い草も効率的に刈取ることが可能になる。ちなみに、左右の刈取ユニットよる前倒し作用を高めるため、伝動機構21によって前進走行速度よりも掻込み速度を速く設定している。
また、走行系の動力源としてクローラ式走行装置2,2毎に電動モータ9を設け、作業系の動力源として前記電動モータ9とは別に電動モータ18を設けているため、動力を伝動させる構造はシンプルになる。
また、昇降駆動装置38は、操向ハンドル5を介して、草刈装置4を昇降させるため、昇降駆動装置38と草刈装置4を連結させる部材を別途用意する必要がなくなり、構造をシンプルにできる他、操向ハンドル5は走行機体3の後方及び左右側方をカバーして保護する部材としても機能している。
また、バッテリ31をバランスウェイトとして機能させているため、別途前後バランス調整用の部材を設ける必要がなくなり、部品点数を減らすことが可能になる。
さらに、上述のローリング構造及び付勢機構49の構成によって、左右傾斜面に対して草刈でも草刈部19を適切な左右傾斜角度に切換えられるため、該左右傾斜面に生えた草も効率的に刈ることが可能になる。
なお、前後の設置台14,16の間にカバー体81を架設し、走行機体3の上方側を保護させてもよい。このカバー81の上面に上述の制御ユニット72を設けてもよいが、このカバー体81を筐体とし、その内部に制御ユニット72を設けてもよい。
また、この草刈作業機1を遠隔操作させる場合には、LRF76は必須ではなく、カメラ77のみで十分であるため、設置台14の下段14aに設置した部材や下段14a自体を省略することも可能である。また、カメラ76は前方を撮影する姿勢でカバー体81の上面前端部に配置してもよい。
また、昇降駆動装置38は、上述した通り、操向ハンドル5を介して、草刈装置4を昇降駆動させるが、この昇降駆動装置38を、揺動軸X側に直接的に設置してもよい。具体的には、揺動軸Xと同一軸心をなし且つ草刈装置4と一体で軸回りに回動する駆動軸を設け、電動モータ46の出力軸を該回動軸に直接連結固定させるか、或いは、ギヤボックス47を介して連結させる。
該構成の昇降駆動装置38によれば、揺動軸X上に各種部材を集中配置できるため、全体をコンパクトに形成できる。
また、制御ユニット72は、左右の走行駆動用の電動モータ9,9の駆動・駆動停止及び駆動スピードも制御可能であるが、前進側又は後進側への直進昇降時、或いは左右旋回時、左右の電動モータ9,9を同時に始動させずに、予め定めた所定の時間、始動タイミングをずれるように制御している。該制御によって、電動モータ9,9の起動負荷の低減を図り、駆動時間を延ばしている。
ちなみに、左右の電動モータ9,9の一方の始動時から他方の始動時までの時間は、走行機体3の進行方向が操作者の意図しない方向に変更されない程度の時間に設定され、本例では0.1秒である。これによって、左右の電動モータ9,9に電力を供給する単一のバッテリ31の最大出力や電力消費を低減できる。これに加えて、旋回時は該旋回外側の電動モータ9を先に駆動させてもよい。
さらに、左右の刈取ユニットは、それぞれ走行機体3の幅方向中心側に向かて後方に変位する側に駆動されるが、これを前方に変位する側に回転駆動させ、刈った草を走行機体3の左右外側に排出するようにしてもよい。
次に、図10及び図11に基づいて、本発明の別実施形態について説明する。
図11は、動力源としてエンジンを採用した構成を示す断面図である。図10及び図11に示されるように、上述の形態では、作業系の動力源18として電動モータを採用したが、本形態では、該動力源18としてエンジンを採用している。
具体的には、このエンジン18は、エンジン本体(本体)82と、上述の支持ケース57とから構成されている。この支持ケース57は、上述したものと同様である。エンジン本体82は、モータ本体56よりはサイズが大きいため、出力軸82aのみを支持ケース57内に収容された状態のエンジン本体82を、取付具83によって支持ケース5に着脱自在に取付けている。ちなみに、この支持ケース57の少なくとも一部は、支持ケース57内に着脱可能に収容されて装着されている。この他、出力軸82aは、前後伝動軸62と同一軸心をなし且つカップリング71によって該前後伝動軸62に一体回転可能に連結固定されている。
該構成によれば、動力源18を電動モータからエンジンに変更する場合でも、支持ケース57は同様のものを利用できるため、汎用性が高い。また、伝動機構21も同様の構成で利用できる。
次に、図12乃至図15に基づき、本発明の別実施形態について、上述の形態と異なる点を説明する。
図12,図13は本発明の別実施形態に係る草刈作業機の斜視図及び背面図であり、図14(A),(B)は図12及び図13に示す草刈作業機が草刈装置を作業高さに下降させた状態と、非作業高さを上昇させた状態とをそれぞれを示す側面図である。上述の形態ではアクチュエータである電動モータ46を備えた昇降機構である昇降駆動装置38を設けたが、本形態では、この昇降駆動装置38からアクチュエータを省いた昇降機構84を設けている。
この昇降機構84は、上述の形態の昇降駆動装置38と同様、支持軸58を走行機体3の固定ブラケット61に固定することにより、草刈装置4を揺動軸Xの軸回りに上下揺動可能に走行機体3に支持している。
この草刈装置4の伝動ケース14には取付ブラケット86によって昇降レバー87が取付固定されている。昇降レバー87は、取付ブラケット87から後方に突出形成され且つ前後中途部が下方に屈曲した側面視への字状に成形されている。この昇降レバー87の後端部にはグリップ87aが形成され、このグリップ87aの真下側には解除レバー88が配置されている。
この解除レバー88は、昇降レバー87に上下揺動操作可能に支持され、図示しない付勢部材によってグリップ87aから離間する側である下方側に弾性的に付勢されている。
この解除レバー88を、グリップ87aとまとめて把持するように、付勢部材の弾性力に抗してグリップ87a側(上方)に揺動させると、図示しない係止機構が解除され、草刈装置4を揺動軸Xを支点に上下揺動(昇降)させることが可能なる。一方、この解除レバー88から手は放すと、付勢部材の弾性力によって解除レバー88が下方に揺動され、該係止機構が係止作動し、草刈装置4がその時点での昇降高さで係止される。
また、この草刈装置4は走行機体3の支持フレーム12と昇降レバー87との間に架設された付勢部材であるダンパー90によって上方に付勢され、該草刈装置4を上昇操作する際の操作力を軽減している。
ちなみに、走行機体2における車台フレーム11よりも上方側の部分は機体カバー89によってカバーされている。この機体カバー89から昇降レバー87の後端部のグリップ87a及び解除レバー88を後方に突出している。前記機体カバー89には、草刈装置4の昇降に伴う昇降レバー87及び解除レバー88の揺動軸Xを支点とした円弧状の移動を許容するように、該昇降レバー87及び該解除レバー88が挿通される切欠き部89aが形成されている。
また、この機体カバー89の上面における後方寄り位置には、各部の駆動を停止させる緊急用の停止ボタン91を露出させる操作孔89bが開口形成されている。
該構成の昇降機構84によれば、刈取作業中でも、草刈装置4を無段階で連続的に昇降調整可能になる。
図15は、図12及び図13に示す刈取作業機のクローラ式走行装置の構成を示す斜視図である。上述の形態では、各クローラ式走行装置2において、走行駆動用の電動モータ9は、該クローラ式走行装置2(クローラ8)の幅方向中心に対して、走行機体3の幅方向中心(左右内側)寄り箇所に配置していたが、本形態では、図12、図13及び図15に示す通り、各クローラ式走行装置2において、走行駆動用の電動モータ9と、該電動モータ9からの動力を駆動スプロケット6に減速して伝動する伝動機構が内装された伝動ケース92とを、側面視で環状をなすクローラ8の幅方向中心に対して、走行機体3の左右外側寄り箇所に配置している。この伝動ケース92と電動モータ9とは、ユニット化されている。
この配置構成から、駆動ケース52も、クローラ式走行装置2の幅方向中心に対して、走行機体3の左右外側寄りに配設されている。ちなみに、駆動ケース52は、左右内側に配置された凹状ケースである固定側分割片52aと、左右外側に配置された凹状ケースである着脱側分割片52bとを有している。
固定側分割片52aの凹状内面と、着脱側分割片52bの凹状内面とを対向させた状態で、該着脱側分割片52bを、固定側分割片52aに被せて着脱可能に装着することにより、駆動ケース52内に伝動ケース92及び電動モータ9を収容している。
ちなみに、上述の形態では、クローラ式走行装置2における側面視で環状をなすクローラ8の前寄り位置に駆動スプロケット6を配置し、後寄り位置に従動スプロケット7を配置したが、本実施形態では、この前後の位置関係が逆になるように、駆動スプロケット6及び従動スプロケット7を配置している。
具体的には、クローラ式走行装置2の後寄り位置に駆動スプロケット6を配置し、前寄り位置に従動スプロケット7を配置している。また、これに対応させて、電動モータ9及び伝動ケース92も駆動ケース52内(クローラ式走行装置2)の後寄り位置に配置され、伝動距離が短縮させている。
該構成のクローラ式走行装置2によれば、駆動ケース52がクローラ8から左右内側に突出しなくなるため、草刈作業しながらの前進走行時、刈った草が該駆動ケース52や駆動スプロケット6に引っ掛かることが確実に防止される。言換えると、左右のクローラ式走行装置2に間に、刈った草が引っ掛かることなく通過するスペースSが形成される。
なお、このクローラ式走行装置2では、クローラ8の左右幅を広げることにより、該クローラ8が前後のスプロケット6,7から外れ難くしているため、外れ防止機構を省略可能になる。ちなみに、駆動スプロケット6はクローラ8の幅方向中心側に配置されている。
また、前後のスプロケット6,7の距離を変更してテンション調整を行う調整機構も省略しており、その構成を簡略化させている。
さらに、図13及び図15に隠れ線で示す通り、駆動スプロケット6の真正面側に、所定の間隔を空けて、後方に向かって左右内側に傾斜した防止プレート(防止部材)93を配置してもよい。この防止プレート93は、その少なくとも一部(本例では全部)が、平面視でクローラ8と重複する位置に配置され、該防止プレート92によって、刈った草が駆動スプロケット6に巻付くことが効率的に防止される。なお、防止プレート92は平面視で傾斜した部分の後端部から真後ろ側に延長してもよい。
次に、図16に基づき、本発明の別実施形態について、上述の形態と異なる点を説明する。
図16は、本発明の別実施形態に係る制御ユニットの構成を示すブロック図である。
図示する例では、制御ユニット72の入力側には、上述した各種センサ76、77が接続され、出力側には、左右のクローラ式走行装置2,2にそれぞれ設けられた電動モータ9,9と、草刈装置4を駆動させる電動モータ18とが接続されている。さらに制御ユニット72には、無線通信手段94が入出力可能に接続されている。
また、この草刈作業機1を、無線によって遠隔操作する遠隔操作具96を設け、この遠隔操作具96及び草刈作業機1によって、草刈作業システム(刈取作業システム)を構成している。
この遠隔操作具96がマイコン等から構成された操作側制御部97を備え、該操作側制御部97の入力側には、草刈作業機1を前進走行操作する前進走行操作手段98と、後進走行操作する後進走行操作手段99と、前進時又は後進時に左旋回操作する左旋回操作手段101と、前進時又は後進時に右旋回操作する左旋回操作手段102と、切替操作手段103とが接続されている。また、操作側制御部97には、入出力可能に無線通信手段104が接続され、この無線通信手段104によって、遠隔操作具96は草刈作業機1を無線によって遠隔操作可能になる。
操作側制御部97又は制御ユニット72は、上述した操作手段98,99,101,102の操作通りに草刈作業機1を駆動させる往路モード(通常モード)と、該操作手段98,99,101,102の操作と反対側に草刈作業機1を駆動させる復路モード(反転モード)とを有している。
具体的には、復路モータ時、制御ユニット72が、前進走行操作手段98の操作時に草刈作業機1を前進走行させ、後進走行操作手段99の操作時に草刈作業機1を後進走行させ、左旋回操作手段101の操作時に草刈作業機1を左旋回走行させ、右旋回操作手段102の操作時に草刈作業機1を右旋回走行させる。
一方、復路モータ時、制御ユニット72が、前進走行操作手段98の操作時に草刈作業機1を後進走行させ、後進走行操作手段99の操作時に草刈作業機1を前進走行させ、左旋回操作手段101の操作時に草刈作業機1を右旋回走行させ、右旋回操作手段102の操作時に草刈作業機1を左旋回走行させる。
該構成によれば、操作者から草刈作業機1が遠ざかる往路時、操作者が向く方向と草刈作業機1の前進方向とが一致しているため、操作方向と、草刈作業機1の応答方向とを一致させ、復路ではこれが反転するため、操作方向と、草刈作業機1の応答方向とを逆転させ、操作性を向上させている。
なお、上述した電動モータ9,18に代えて、油圧式等のモータその他のアクチュエータを用いてもよい。