JP2018066674A - 受発光システム - Google Patents

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Abstract

【課題】受発光システムの小型化、構造の簡素化等を図ること。
【解決手段】対象物体に光を照射し当該光により生じる反射光を用いて当該対象物体を検出する受発光システムであって、複数の光制御部を有する平板状の光制御装置と、少なくとも1つの光制御部に対して光を入射させる入光装置と、光制御部からの出射光を受光する受光装置と、入光装置と受光装置の動作を制御して対象物体を検出する制御装置を含む。光制御装置は、一対の基板間に複数の光制御部を保持する液晶素子、液晶素子を駆動する駆動装置を含む。各光制御部は、例えば、一対の電極、一対の電極の間に配置される高抵抗膜、少なくとも高抵抗膜と重なる領域に配置される液晶層を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、対象物体との距離や対象物体の位置などを検出するための技術に関する。
複数個のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを用いた配光制御可能な受発光システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この受発光システムは、対象物体に対してレーザ光などの光を照射し、それによって生じる反射光を受光することによって、対象物体との距離や対象物体の位置などを検出する。近年では車両の自動運転技術や各種ロボット技術などの進展に伴い、このような受発光システムのニーズも高まっている。
ところで、上記のような受発光システムでは、多くの場合、対象物体から戻る反射光は非常に減衰したものとなる。このため、受光の光量を十分に確保するためには多くのMEMSデバイスを用いる必要が生じてしまい、部品点数の増加によるコストアップを招くという不都合がある。また、多くの場合、複数のMEMSデバイスの間で性能にバラツキがあるため、それらを整合させて所望の状態で受光することが難しいという不都合もある。さらに、反射光学系を用いることから光学系が複雑になり、小型化も難しいという不都合もある。
独国特許出願公告第102011113147号明細書
本発明に係る具体的態様は、受発光システムの小型化、構造の簡素化、低コスト化並びに受光状態の均質化を図ることが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
[1]本発明に係る一態様の受発光システムは、対象物体に光を照射し当該光により生じる反射光を用いて当該対象物体を検出する受発光システムであって、(a)入射光の進行方向を偏向可能な複数の光制御部を有する平板状の光制御装置と、(b)前記複数の光制御部のうち少なくとも1つの光制御部に対して光を入射させる入光装置と、(c)前記複数の光制御部のうち前記少なくとも1つの光制御部以外の光制御部からの出射光を受光する受光装置と、(d)前記入光装置及び前記受光装置の動作を制御し、当該受光装置から出力される前記出射光の状態に応じた信号を用いて前記対象物体を検出する制御装置を含み、(e)前記光制御装置は、一対の基板間に前記複数の光制御部を保持する液晶素子と、前記液晶素子を駆動する駆動装置を含む受発光システムである。
[2]本発明に係る他の態様の受発光システムは、対象物体に光を照射し当該光により生じる反射光を用いて当該対象物体を検出する受発光システムであって、(a)入射光の進行方向を偏向可能な複数の光制御部を有する平板状の光制御装置と、(b)前記複数の光制御部のうち少なくとも1つの光制御部に対して光を入射させる入光装置と、(c)前記複数の光制御部のうち前記少なくとも1つの光制御部以外の光制御部からの出射光を受光する受光装置と、(d)前記入光装置及び前記受光装置の動作を制御し、当該受光装置から出力される前記出射光の状態に応じた信号を用いて前記対象物体を検出する制御装置を含み、(e)前記光制御装置は、入射光を第1方向に偏向可能な複数の第1光制御部を一対の基板間に保持する第1液晶素子と、前記第1液晶素子と重ねて配置されており、入射光を前記第1方向と交差する第2方向に偏向可能な複数の第2光制御部を一対の基板間に保持する第2液晶素子と、前記第1液晶素子及び前記第2液晶素子を駆動する駆動装置を含み、(f)前記複数の光制御部の各々は、前記複数の第1光制御部の何れか1つと、前記複数の第2光制御部の何れか1つとを重ねて構成されている、受発光システムである。
上記構成によれば、受発光システムの小型化、構造の簡素化、低コスト化並びに受光状態の均質化を図ることが可能となる。
図1は、本実施形態の受発光システムに用いられる液晶素子の基本的な構成ならびに動作原理を説明するための模式的な断面図である。 図2は、一実施形態の液晶素子の構成を示す模式的な平面図である。 図3は、一実施形態の液晶素子の構成を示す模式的な断面図である。 図4は、液晶素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である。 図5は、液晶素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である。 図6は、液晶素子を用いて構成される光制御装置の構成を示す模式図である。 図7は、いくつかの条件による配光角と応答速度の計測結果を示す図である。 図8は、液晶素子を用いて構成される光制御装置の他の構成を示す模式図である。 図9は、いくつかの条件による配光角と応答速度の計測結果を示す図である。 図10(A)は、2つの液晶素子を組み合わせた光制御装置の構成を示す模式的な平面図である。図10(B)は、各液晶素子の電極配置について説明するための図である。 図11は、入射する光を二次元方向に走査する様子を示す図である。 図12は、2つの液晶素子を組み合わせた光制御装置を用いた受発光システムの構成を説明するための模式的な平面図である。 図13(A)は、入光装置および受光装置の構成例を示す図である。図13(B)は、入光装置および受光装置の他の構成例を示す図である。図13(C)は、入光装置および受光装置の他の構成例を示す図である。 図14は、対象物体との距離等を求める原理について説明するための図である。 図15は、各光制御領域以外の矩形状領域にブラックマスク(遮光膜)を設けるようにする変形実施例について説明するための図である。 図16は、各光制御領域の大きさ(面積)が各矩形状領域に対して相対的に大きくなるようにする変形実施例について説明するための図である。 図17は、光制御装置の電極構造に関する変形実施例について説明するための図である。
図1は、本実施形態の受発光システムに用いられる液晶素子の基本的な構成ならびに動作原理を説明するための模式的な断面図である。図1(A)に示す液晶素子は、対向配置された一対の基板(透明基板)1、2の間に液晶層8が配置されている。そして、基板1は、その一面側に、一対の電極3a、3bと、これら電極3a、3bの間に設けられてそれぞれと接続している高抵抗膜4と、少なくとも高抵抗膜4の上側領域に設けられた配向膜5を有する。基板2は、その一面側に、少なくとも各電極3a、3bおよび高抵抗膜4と対向する領域に設けられた共通電極6と、少なくともこの共通電極6の上側領域に設けられた配向膜7を有する。
図示の例では、各配向膜5、7は、ラビング処理等の配向処理が施されており一方向への配向規制力を有する垂直配向膜である。また、液晶層8は、誘電率異方性が負の液晶材料を用いて構成されており、各配向膜5、7の配向規制力を受けて一方向(例えば図示の左右方向)へ配向し、電圧無印加時の配向(初期配向)が略垂直配向となる。ここでいう略垂直配向とは、液晶層8のプレティルト角が90°未満であって90°に近い状態(例えば88°〜89.9°程度)であることをいう。
なお、原理的には、各配向膜5、7は、ラビング処理等の配向処理が施されており一方向への配向規制力を有する水平配向膜であってもよい。この場合、液晶層8は、誘電率異方性が正の液晶材料を用いて構成され、各配向膜5、7の配向規制力を受けて一方向(例えば図示の左右方向)へ配向し、電圧無印加時の配向(初期配向)が略水平配向となる。ここでいう略水平配向とは、液晶層8のプレティルト角が0°より大きい状態であって比較的0°に近い状態(例えば2°〜5°程度)であることをいう。
図1(B)に示すように、例えば電極3a、3bの間に電位差Vhが生じるように電圧を印加する。一例として、電極3aに15ボルト、電極3bに0ボルト、共通電極6の電圧に0ボルトの電圧を印加する。印加する電圧は、例えば100Hzの交流電圧とする。これにより、電極3aと電極3bの間が高抵抗膜4を介して導通して両者間に連続的な電圧勾配を生じる。
この電圧勾配により、液晶層8の配向状態が変化する。具体的には、電極3aに近い領域ほど電圧が高いため、この電圧に応じて液晶分子の配向方向が大きく変化する。逆に、電極3bに近い領域ほど電圧が低いため、この電圧に応じて液晶分子の配向方向が僅かに変化する。さらに電極3bに近い領域では液晶分子の配向方向がほとんど変化しない。すなわち、電圧勾配に応じて液晶層8の配向状態は、電極3a、3bの間(高抵抗膜4の存在する領域)において連続的に変化する。
このような状態の液晶素子に対して、レーザ光などの偏光を入射させる。例えば図1(C)に示すように、各配向膜5、7への配向処理方向(液晶層8の配向方向)と偏光方向が平行な光BMを基板1の他面側から入射させる。すると、図示のように液晶層8の配向状態が連続的に変化していることから液晶層8内部の位置によってリターデーションが異なる状態であるため、そこを通過する光BMの通過速度が領域によって異なることになる。このため、ホイヘンスの定理により、液晶層8を通過する光BMの進行方向が変化するものと考えられる。図示の例では、電圧の相対的に高い側の電極3a側へ光BMが曲がって進む。なお、上記と逆に電極3b側が相対的に高い電圧となるように電圧勾配を形成すれば、電極3b側へ光BMが曲がって進むことになる。このように、少なくとも一対の電極3a、3b、高抵抗膜4および液晶層8を含んで光制御領域(光制御部)が構成されており、各電極3a、3bへの電圧印加状態を制御することで、この光制御領域へ入射し、出射する光の進行方向を自在に偏向させることができる。
図2は、一実施形態の液晶素子の構成を示す模式的な平面図である。また、図3は、この実施形態の液晶素子の構成を示す模式的な断面図である。なお、図3に示す断面図は図2に示すIII−III方向の断面に対応している。また、上記した図1と共通する構成については同符号を用いている。各図に示す本実施形態の液晶素子100は、第1基板1、第2基板2、複数の電極3a、複数の電極3b、高抵抗膜4、共通電極6、配向膜5、7、液晶層8、シール材9を含んで構成されている。
第1基板1、第2基板2は、ともに、例えばガラス基板などの透光性を有する基板である。ここでいう透光性とは、液晶素子100による制御対象となる光が透過し得る透過率を有していることをいう。
各電極3a、3bは、第1基板1の一面側に設けられている。これらの電極3a、3bは、例えばモリブデン、アルミニウム、銅、クロムなど、透光性を有しない金属膜をパターニングすることによって形成されている。すなわち、各電極3a、3bは、遮光性を有する。
各電極3aは、例えばそれぞれ平面視において一方向に延びる矩形状に形成されており、かつ各電極3aを一定間隔で並べて櫛歯状に配置されている。同様に、各電極3bは、例えばそれぞれ平面視において一方向に延びる矩形状に形成されており、かつ各電極3bを一定間隔で並べて櫛歯状に配置されている。そして、各電極3aと各電極3bとは、互いの1つずつを交互に配置されており、かつ各電極3aと各電極3bとの間に隙間を設けて配置されている(後述する図4(A)参照)。
また、電極3aは、配線部を介して取り出し電極13aと接続され、電極3bは、配線部を介して取り出し電極13bと接続されている。各取り出し電極13a、13bは、第1基板1の一端側(図示の例では第1基板1の上端側)に設けられている。
高抵抗膜4は、各電極3a、3bの相互間に設けられている。図示の例では、高抵抗膜4は、各電極3a、3bの間を埋め、さらに各電極3a、3bを覆うようにして設けられている。この高抵抗膜4は、各電極3a、3bを構成する材料よりもシート抵抗の高い材料を用いて形成される。例えば、高抵抗膜4は、各電極3a、3bに対して少なくとも10倍以上のシート抵抗を有することが好ましく、10倍〜1010倍程度のシート抵抗を有することがより好ましい。
配向膜5は、第1基板1の一面側において各電極3a、3bと高抵抗膜4を覆って設けられている。この配向膜5としては、液晶層8をどのような初期配向とするかに応じて垂直配向膜または水平配向膜が選択的に用いられる。
共通電極6は、第2基板2の一面側に設けられている。この共通電極6は、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明導電膜をパターニングすることによって形成されている。共通電極6は、少なくとも各電極3a、3bと対向する領域に形成されている。図示の例では、図中の上下方向に延びる矩形状に形成されており、その一部が各電極3a、3bと対向するように配置されている。共通電極6は、配線部を介して取り出し電極14と接続されている。この取り出し電極14は、第2基板2の一端側(図示の例では第2基板2の下端側)に設けられている。
配向膜7は、第2基板2の一面側において共通電極6を覆って設けられている。この配向膜7としても、液晶層8をどのような初期配向とするかに応じて垂直配向膜または水平配向膜が選択的に用いられる。
液晶層8は、誘電率異方性が負の液晶材料、もしくは誘電率異方性が正の液晶材料を用いて形成されている。この液晶層8は、各配向膜5、7による配向規制力を受けて初期配向状態(電圧無印加時の配向状態)が定まる。例えば、各配向膜5、7として垂直配向膜が用いられていれば初期配向状態が垂直配向状態となり、各配向膜5、7として水平配向膜が用いられていれば初期配向状態が水平配向状態となる。
シール材9は、液晶層8を封止するためのものであり、平面視において第1基板1と第2基板2の間で液晶層8を囲んで枠状に形成されている。シール材9は、その一部(図示の例では左側)が開口しており、この開口部分が液晶材料の注入口として用いられる。
図4及び図5は、一実施形態の液晶素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である。
第1基板1の一面側に各電極3a、3b、配線部および各取り出し電極13a、13bを形成する(図4(A)参照)。例えば、一面側の全体に金属膜が形成されているガラス基板を用意し、金属膜をパターニングすることによって各電極3a、3b等が形成される。各電極3a、3bは、一対の電極3a、3bの相互間に画定される隙間であるスリット部15の幅Lが例えば500μm程度となるように形成される。
次に、第1基板1の一面側において、各電極3a、3bの相互間に高抵抗膜4を形成する(図4(B)参照)。図示の例では、高抵抗膜4は、各電極3a、3bの間を埋め、さらに各電極3a、3bの一部を覆うように形成されているが、少なくとも各電極3a、3bの相互間の隙間を埋めるように形成されていればよい。この高抵抗膜4は、各電極3a、3bを構成する材料よりもシート抵抗が高く、かつ制御対象の光に対して透明な材料を用いて形成される。
上記のような高抵抗膜4としては、例えば各種の金属酸化膜、導電性高分子膜(有機系導電膜)、金などの金属からなる薄膜、金属ナノ粒子や金属酸化膜ナノ粒子の分散膜、絶縁性ナノ粒子に導電性修飾を施したナノ粒子の分散膜などが挙げられる。高抵抗膜4の形成方法としては、例えばスパッタ法や真空蒸着法などの真空成膜法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、バーコート法、スリットコート法などの各種印刷法、スピンコート法やディップ法(ラングミュアブロジェット法を含む)などの成膜法が挙げられる。
上記の通り、高抵抗膜4は、各電極3a、3bに対して少なくとも10倍以上のシート抵抗を有することが好ましく、10倍〜1010倍程度のシート抵抗を有することがより好ましい。一例として、各電極3a、3bを構成する金属膜のシート抵抗が0.5Ω/sq.であるとすると、高抵抗膜4のシート抵抗は1kΩ/sq.程度でもよい。消費電力をより低減するためにはシート抵抗をより高くすることが好ましく、具体的には50Ω/sq.〜500MΩ/sq.程度であることが好ましく、例えば5MΩ/sq.程度に設定される。一例として、スパッタ法により成膜されるZnO膜を高抵抗膜4として用いることができる。
なお、高抵抗膜4の形成範囲については、少なくとも制御対象の光が通過する領域を確保し得る程度であればよいが、各電極3a、3bと接続される各取り出し電極13a、13bの上面には形成しないことが好ましい。また、有機系導電膜など基板への密着性があまり高くない材料を用いる場合には、特にシール材9の形成される領域には高抵抗膜4を形成しないことが好ましい。したがって、高抵抗膜4を形成する際には、マスクスパッタ法や各種印刷法を用いて、必要な領域にのみ選択的に形成することが好ましく、スピンコート法等によって基板全面に成膜した場合には、フォトリソ法等によってパターニングして不要な部分を除去することが好ましい。もしくは、フレキソ印刷等の各種印刷法により各取り出し電極13a、13b上などにレジスト膜を塗布し、その上に高抵抗膜4を成膜し、最後にリフトオフして各取り出し電極13a、13b上のレジスト膜を除去してもよい。
また、高抵抗膜4の上側にパッシベーション膜などの絶縁膜を設けてもよい。これは基板間の短絡防止、光学的な機能向上(透過率向上、液晶層8との屈折率マッチングによる表面反射防止など)の効果が期待できる。この場合の絶縁膜についても各取り出し電極13a、13bの上側やシール材9の形成領域には形成されないことが好ましい。なお、絶縁膜としてフレキソ印刷可能なシリコン酸化膜を用いる場合には、密着性が非常に高いため、シール材9の形成領域に絶縁膜が形成されてもよい。
次に、第2基板の一面側に共通電極6、配線部および取り出し電極14を形成する(図4(C)参照)。例えば、一面側の全体にITO膜が形成されているガラス基板を用意し、ITO膜をパターニングすることによって共通電極6等が形成される。
次に、第1基板1の一面側において、少なくとも各電極3a、3bと高抵抗膜4の形成領域を覆う範囲に配向膜5を形成する(図4(D)参照)。同様に、第2基板2の一面側において、少なくとも各電極3a、3bと高抵抗膜4の形成領域と対向する範囲に配向膜7を形成する(図4(E)参照)。配向膜5、7は、例えばフレキソ印刷法、インクジェット法などで配向膜材料を塗布し、熱処理を行うことによって形成される。
配向膜5、7として垂直配向膜を形成する場合には、例えば、印刷性と密着性に優れ、側鎖に剛直な骨格(液晶性のものなど)を有するタイプの垂直配向膜材料を、フレキソ印刷法によって適当な膜厚(例えば500Å〜800Å程度)に成膜し、その後熱処理(例えば160℃〜250℃で1時間〜1.5時間の焼成)を行う。なお、有機配向膜としては上記タイプのみに限定されない。さらに、無機配向膜、例えば主鎖骨格がシロキサン結合(Si−O−Si結合)で形成されているものなどを用いてもよい。
配向膜5、7として水平配向膜を形成する場合には、例えば、STN用と呼ばれる比較的に高いプレティルト角を得られるタイプの側鎖(アルキル鎖)付きの水平配向膜材料を、フレキソ印刷法によって適当な膜厚(例えば500Å〜800Å程度)に成膜し、その後熱処理(例えば160℃〜250℃で1時間〜1.5時間の焼成)を行う。なお、有機配向膜としては上記タイプのみに限定されない。さらに、無機配向膜(例えばSiO斜方蒸着膜)を用いてもよい。
次に、各配向膜5、7に対して配向処理を行う。配向処理としては、例えば一方向へ配向膜を擦る処理であるラビング処理を行う。その条件としては、例えば押し込み量を0.3mm〜0.8mmに設定することができる。
ラビング処理の方向は、各配向膜5、7が垂直配向膜である場合には、各電極3a、3bの延在方向(図中では左右方向)に対して略直交する方向(図中では上下方向)となるようにすることが好ましい。なお、厳密に直交でなくてもよく、例えば直交方向から0.1°〜5°程度ずれた方向にラビング方向を設定してもよい。
また、ラビング処理の方向は、各配向膜5、7が水平配向膜である場合には、各電極3a、3bの延在方向(図中では左右方向)に対して略平行な方向となるようにする。なお、厳密に平行でなくてもよく、例えば平行方向から0.1°〜5°程度ずれた方向にラビング方向を設定してもよい。
なお、上記の各ラビング方向は一例であり、各配向膜5、7が垂直配向膜である場合においてそのラビング方向を各電極3a、3bの延在方向(図中では左右方向)に対して略平行な方向としてもよいし、各配向膜5、7が水平配向膜である場合においてそのラビング方向を各電極3a、3bの延在方向(図中では左右方向)に対して略直交の方向としてもよい。
次に、いずれか一方の基板、例えば第1基板1の一面側にギャップコントロール材を適量(例えば2〜5wt%)含んだシール材9を形成する(図4(F)参照)。シール材9は、例えばスクリーン印刷法やディスペンサー法によって形成される。また、ここではギャップコントロール材の径を、例えば液晶層8の厚さが10μm程度となるように設定する。
液晶層8の層厚は上記に限定されないが、光の進路が曲がる角度(配光角)をより大きくしたい場合には層厚をより大きくすればよく、液晶層8の電界に対する動作速度(反応速度)を速くしたい場合には層厚をより小さくすればよい。具体的には、液晶層8の層厚は、例えば2μm〜500μmの間で設定することができる。
また、他方の基板である第2基板2の一面側には、ギャップコントロール材が散布される。例えば、粒径10μmのプラスチックボールを乾式散布機によって散布する。もしくは、ギャップコントロールのためのリブ材が形成されてもよい。このときのギャップコントロール材(またはリブ材)の高さは、シール材9に添加されたギャップコントロール材の径とほぼ同等にする。また、各電極3a、3bの間隙(スリット部)にはギャップコントロール材(またはリブ材)が配置されないようにすると更に好ましい。なお、液晶素子の大きさが概ね10mm角程度より大きい場合には本工程を行うことが好ましいが、液晶素子の大きさがそれ以下の場合には本工程を省略してもよい。
次に、第1基板1と第2基板2をそれぞれの一面側が対向するようにして重ね合わせ、プレス機などで圧力を一定に加えた状態で熱処理することにより、シール材9を硬化させる。例えば、150℃で3時間の熱処理が行われる。それにより第1基板1と第2基板2とが貼り合わされる。
図5(A)は、各配向膜5、7として垂直配向膜が形成された第1基板1と第2基板2を貼り合わせて得られたセル(以下「セル1」と称する。)の模式的な平面図である。このセル1では、図中の右下側に矢印で示すように、第1基板1の配向処理方向(図中y方向に沿って上向き)と第2基板2の配向処理方向(図中y方向に沿って下向き)とがアンチパラレル配置となり、かつ配向処理方向のそれぞれが各電極3a、3b間のスリット部15の延在方向(図中X方向)に対して略直交している。上記の通り、スリット部15とは、一対の電極3a、3bの間に画定されるスリット形状の間隙である。
図5(B)は、各配向膜5、7として水平配向膜が形成された第1基板1と第2基板2を貼り合わせて得られたセル(以下「セル2」と称する。)の模式的な平面図である。このセル2では、図中の右下側に矢印で示すように、第1基板1の配向処理方向(図中x方向に沿って右向き)と第2基板2の配向処理方向(図中x方向に沿って右向き)とがパラレル配置となり、かつ配向処理方向のそれぞれが各電極3a、3b間のスリット部15の延在方向(図中x方向)に対して略平行となっている。なお、第1基板1の配向処理方向と第2基板2の配向処理方向とがアンチパラレル配置となってもよい。いずれの配置とするかは上記した配向処理の工程において設定することができる。
次に、セル1、2の各々に対して、第1基板1と第2基板2の間に液晶材料を充填することによって液晶層8を形成する。例えば、シール材9に設けられた注入口を用いて真空注入法により液晶材料を基板間に注入する。セル1には誘電率異方性Δεが負の液晶材料(例えば屈折率異方性Δnが約0.25)を充填する。セル2には誘電率異方性Δεが正の液晶材料(例えば屈折率異方性Δnが約0.2)を充填する。ここではカイラル材が添加されていない液晶材料を用いる。なお、配光角をより大きくするには屈折率異方性Δnがより大きい液晶材料を用いることが好ましい。
各セルへ液晶材料を充填した後、その注入口をエンドシール材によって封止する。そして、液晶材料の相転移温度以上の温度で適宜熱処理(例えば、120℃で1時間)を行うことにより、液晶層8の液晶分子の配向状態を整える。以上により、液晶素子100が完成する。
図6は、液晶素子を用いて構成される光制御装置の構成を示す模式図である。この光制御装置は、上記したセル1に対応する液晶素子100と、この液晶素子100を駆動する駆動装置101を含んで構成されており、例えば光源102から出射するレーザ光の進行方向を自在に偏向(変化)させることができる。図示の例において光源102から出射するレーザ光は、図中x方向に偏光方向を有する偏光である。液晶素子100は、レーザ光の偏光方向に対して各配向膜5、7への配向処理方向(液晶層8の配向方向)が略平行となり、かつスリット部15(図5参照)の延在方向が略直交し、当該スリット部15に対してレーザ光が略垂直に入射するように配置される。駆動装置101は、液晶素子100の各取り出し電極13a、13b、14(図2参照)と接続され、これらの電極を介して液晶層8へ駆動電圧を与える。
例えば、駆動装置101から液晶素子100に対して、各取り出し電極13a等を介して、各電極3aに交流電圧を印加し、各電極3bと共通電極6には基準電位を与える(例えば接地端子と接続する)。電圧の大きさと周波数は適宜設定することができ、例えば15V、100Hzとする。それにより、液晶素子100のスリット部15へ入射したレーザ光は、電圧無印加時の進行方向を基準として、図示のx方向において一方向(例えば右方向)へ進行方向が変化する。また、駆動装置101から各電極3bに交流電圧を印加し、各電極3aと共通電極6には基準電位を与えた場合には、液晶素子100へ入射したレーザ光は、逆方向(例えば左方向)へ進行方向が変化する。
ここで、レーザ光の進行方向を最大値の配光角θで変化させることができる電圧値については、各電極3a、3bの相互間距離、レーザ光のスポット径、液晶層厚などに依存する。同様に、周波数についても各電極3a、3bの相互間距離、レーザ光のスポット径、液晶層厚などに依存するものであるが、周波数が高くなるほど配光角θの最大値が大きくなる傾向が見られる。図7にいくつかの条件による配光角θと応答速度の計測結果を示す。セル1に対応する液晶素子100において、液晶層厚(セル厚)と駆動条件を変えて、その際の配光角θと応答速度を計測した結果である。なお、計測に用いた液晶素子100については、上記した製造方法において例示した条件によって作製された。
図8は、液晶素子を用いて構成される光制御装置の他の構成を示す模式図である。この光制御装置は、上記したセル2に対応する液晶素子100と、この液晶素子100を駆動する駆動装置101を含んで構成されており、例えば光源102から出射するレーザ光の進行方向を自在に偏向(変化)させることができる。図示の例において光源102から出射するレーザ光は、図中x方向に偏光方向を有する偏光である。液晶素子100は、レーザ光の偏光方向に対して各配向膜5、7への配向処理方向(液晶層8の配向方向)が略平行となり、かつスリット部15(図5参照)の延在方向も略平行となり、当該スリット部15に対してレーザ光が略垂直に入射するように配置される。駆動装置101は、液晶素子100の各取り出し電極13a、13b、14(図2参照)と接続され、これらの電極を介して液晶層8へ駆動電圧を与える。
例えば、駆動装置101から液晶素子100に対して、各取り出し電極13a等を介して、各電極3aに交流電圧を印加し、各電極3bと共通電極6には基準電位を与える(例えば接地端子と接続する)。電圧の大きさと周波数は適宜設定することができ、例えば30V、100Hzとする。それにより、液晶素子100へ入射したレーザ光は、電圧無印加時の進行方向を基準として、図示のy方向において一方向(例えば上方向)へ進行方向が変化する。また、駆動装置101から各電極3bに交流電圧を印加し、各電極3aと共通電極6には基準電位を与えた場合には、液晶素子100へ入射したレーザ光は、逆方向(例えば下方向)へ進行方向が変化する。
ここで、レーザ光の進行方向を最大値の配光角θで変化させることができる電圧値については、各電極3a、3bの相互間距離、レーザ光のスポット径、液晶層厚などに依存する。同様に、周波数についても各電極3a、3bの相互間距離、レーザ光のスポット径、液晶層厚などに依存するものであるが、周波数が高くなるほど配光角θの最大値が大きくなる傾向が見られる。図9にいくつかの条件による配光角θと応答速度の計測結果を示す。セル2に対応する液晶素子100において、液晶層厚(セル厚)と駆動条件を変えて、その際の配光角θと応答速度を計測した結果である。なお、計測に用いた液晶素子100については、上記した製造方法において例示した条件によって作製された。上記した説明では配向状態としてパラレル配置を説明していたが、アンチパラレル配置とした液晶素子100も作製し、パラレル配置の液晶素子100と比較した。その結果、パラレル配置とした液晶素子のほうが応答速度が速く、他方で配光角が小さくなる傾向が見られた。応答速度が速くなる要因は、パラレル配置の場合には液晶層への電圧印加時に配向モードがスプレイ配向からベンド配向へ遷移し、ベンド配向モードで動作することによるものと考えられる。
液晶素子の駆動方法についてまとめると、本実施形態の液晶素子は、第1基板1に複数の電極3a、3bを有し、第2基板2に共通電極6を有するので、これらを用いて液晶層8を交流駆動することができる。その際、配光角を変化させない場合(配光角θ=0)には、各電極3a、3bを同電位にすればよく、その際、共通電極6の電位は各電極3a、3bと同じにしてもよいし異なる電位としてもよい。ある方向へ配光を変化させる場合には、電極3aと共通電極6に同電位を与え、電極3bに異なる電位を与える。また、逆方向へ配光を変化させる場合には、電極3bと共通電極6に同電位を与え、電極3aに異なる電位を与える。このような駆動方法を用いることで、特定方向(例えば、上下方向または左右方向)に沿って対称に配光制御することができる。
上記のように、1つの液晶素子で光の進行方向を一方向に沿って偏向させることが可能である。そして、このような液晶素子を2つ組み合わせることにより、光の進行方向を二次元的に偏向させることもできる。以下、それを実現するための構成を説明する。
図10(A)は、2つの液晶素子を組み合わせた光制御装置の構成を示す模式的な平面図である。なお、本図では各液晶素子を駆動するための駆動装置については図示を省略している。図10(A)に示す光制御装置は、上記したセル1に対応する液晶素子100aとセル2に対応する液晶素子100bを重ねて配置したものである。
詳細には、液晶素子100aは、図中では手前側に配置されており、かつ一方向に延びた各スリット部15(図5(A)参照)の延在方向がy方向と平行になるように配置されている。なお、液晶層8の配向方向についてはy方向に平行であり、かつアンチパラレル配置である。また、液晶素子100bは、図中では奥側に配置されており、かつ一方向に延びたスリット部15(図5(B)参照)の延在方向がx方向と平行になるように配置されている。なお、液晶層8の配向方向についてはx方向に平行であり、かつパラレル配置である。
図10(B)は、各液晶素子の電極配置について説明するための図である。図示のように、前面側の液晶素子100aは、各電極3a、3bの間隙であるスリット部15の延在方向がy方向(上下方向)と略平行になるように配置される。また、背面側の液晶素子100bは、各電極3a、3bの間隙であるスリット部15の延在方向がx方向(左右方向)と略平行になるように配置される。そして、液晶素子100aのスリット部15と液晶素子100bのスリット部15とが交差(本例では直交)するように配置されている。各スリット部15の重なる領域として画定される複数の矩形状領域のうち、左右方向、上下方向、斜め方向のいずれにおいても1つおきに配置される各矩形状領域20は、制御対象光が入射されるべき領域として用いられる。以下、これらの矩形状領域20を「光制御領域(光制御部)20」と呼ぶ。図中では、各光制御領域20に模様を付けて示している。また、各光制御領域20以外の各矩形状領域21は、制御対象光が入射した場合には光制御領域20とは異なる方向に偏向するため、本実施形態では光制御領域としては用いない。各電極3a、3bはx方向(左右方向)またはy方向(上下方向)において交互に配置されることから、電極3a、3b間の電圧勾配は隣り合うスリット部15において互いに反対方向となるためである。したがって、図示のように、複数の光制御領域20は、xy各方向に沿って1つおきに配列される。図示の例では、各光制御領域20は、4×4個のマトリクス状に配置されている。各々の光制御領域20は、液晶素子100aのスリット部15に構成される光制御領域(第1光制御領域)と、液晶素子100bのスリット部15に構成される光制御領域(第2光制御領域)とを重ね合わせて構成されたものといえる。
前面側に配置された液晶素子100aは、各電極3a、3b、共通電極6を介して駆動装置101から駆動電圧を与えることにより、光源102から出射する光の進行方向を図中のx方向に沿って変化させることができる(図6参照)。また、背面側に配置された液晶素子100bは、各電極3a、3b、共通電極6を介して駆動装置101から駆動電圧を与えることにより、光源102から出射する光の進行方向を図中のy方向に沿って変化させることができる(図8参照)。このため、2つの液晶素子100a、100bを図10(A)に示すように重ねて配置することにより、光の進行方向をx方向とy方向、すなわち上下左右の各方向に変化させることができる。
本実施形態では、前面側の液晶素子100aによる光の偏向方向はx方向に平行であるが、その光の出射先にある背面側の液晶素子100bのスリット部はx方向に略平行となるように配置されていることから、出射した光がx方向に振れても、その光を背面側の液晶素子100bのスリット部15へ容易に入射させることができる。したがって、前面側の液晶素子100aによってx方向に沿った配光制御を行い、さらに背面側の液晶素子100bによってy方向に沿った配光制御を行うことができるので、最終的に液晶素子100bから出射する光の進行方向を二次元的に制御することが可能となる。
また、前面側の液晶素子100aと背面側の液晶素子100bの応答速度に差を設けることにより、図11に示すように、入射する光を二次元方向に走査することもできる。この場合、前面側の液晶素子100aによる配光角θ1と、背面側の液晶素子100bによる配光角θ2によって画定される範囲で光が走査される。例えば、前面側の液晶素子100aとしてセル厚10μmとしたもの(図7に示す表の二段目参照)を用い、背面側の液晶素子100bとしてセル厚100μmのもの(図9に示す表の三段目参照)を用い、液晶素子100aに印加する電圧を300ms周期で15V、0V、15V・・・と繰り返し変化させ、液晶素子100bに印加する電圧を5s周期で50V、0V、50V・・・と繰り返し変化させた場合には、配光角θ1=14.4°、配光角θ2=14.6°で光を走査することができる。
また、レーザ光を連続的に照射せずに間欠的に照射した場合には、各配光角θ1、θ2で画定される領域内の任意の位置にのみ光を照射することができる。さらに、各電極3a、3bのうち高電位側にする電極を交互に切り替えることで逆バイアスをかけてもよく、それにより応答速度を高速化することができる。
図12は、2つの液晶素子を組み合わせた光制御装置を用いた受発光システムの構成を説明するための模式的な平面図である。この受発光システムは、対象物体に対してレーザ光を照射し、それによる反射光を受光することで対象物体との距離や位置などを計測するためのものである。計測原理としては公知のTOF(Time Of Flight)法が用いられる。TOF法とは、概略的にいえば、対象物体にレーザ光を照射し、そのレーザ光よって発生する反射光が戻るまでに要する時間を検出することで、対象物体との距離を検出する方法である。レーザ光としては、例えばフェムト秒オーダーのパルス幅のレーザ光が用いられる。レーザ光の波長については、液晶素子に用いられる液晶材料の光学特性(吸収係数)に合わせて、より吸収の少ない波長を選ぶことが好ましい。別言すれば、用いたいレーザ光の波長が決まっている場合には、それに対応して当該波長において吸収の少ない液晶材料を選ぶことが好ましい。例えば、レーザ光の波長としては赤外光領域の波長を選ぶことが好ましく、905nm、970nm、1050nm等の液晶材料における透明性が高い波長を選ぶことができる。
本実施形態の受発光システムにおいて、前面側の液晶素子100aと背面側の液晶素子100bの2つを組み合わせて構成される光制御装置200は、マトリクス状に配列された複数(図示の例では4×4個)の光制御領域20を備えている。これら光制御領域20のうち、例えばいずれか1つ(図示の例では左下の1つ)の光制御領域20を入光領域として用い、残りの各光制御領域20を受光領域として用いる。各光制御領域20の大きさは、例えば50μm角以上2000μm角以下の範囲で設定することが好ましい。
入光装置300を用いて、入光領域である左下側の1つの光制御領域20に対してレーザ光を入射させる。そして、この光制御領域20を介して対象物体にレーザ光が照射され、そのレーザ光によって反射光が生じるので、受光領域である各光制御領域20を介して受光装置310により反射光を検出する。制御装置320は、入光装置300と受光装置310の動作を制御し、対象物体との間の距離を求める。
図13(A)は、入光装置および受光装置の構成例を示す図である。図13(A)に示す構成例では、入光装置300は、レーザ光を出射する光源301を含んで構成されている。光源301は、光制御装置200の前面側の液晶素子100aが有する1つの光制御領域20に対して、その法線方向にレーザ光を入射させるように配置されている。また、受光装置310は、受光素子311とレンズ光学系312を含んで構成されている。
レンズ光学系312は、例えばフレネルレンズ、マイクロレンズなどの凸レンズを含んで構成されており、光制御装置200の前面側の液晶素子100aが有する複数の光制御領域20の各々の法線方向に出射する光を受光素子311へ集光する。このレンズ光学系312は、各光制御領域20から法線方向以外へ出射する光を受光素子311へ集光しない。受光素子311は、受光面に入射する光の強度に応じた電気信号を出力する。受光素子311と光制御装置200との間隔はレンズ光学系312の焦点距離に応じて定まる。レンズ光学系312のレンズと光制御装置200は密着していてもよいが、相互間に0.7mm以上の隙間を設けることも好ましい。なお、受光素子311として受光面の面積が大きく複数の光制御領域20からの出射光をすべて受光可能なものを用いる場合には、レンズ光学系312を省略できる(以下においても同様)。
図14は、対象物体との距離等を求める原理について説明するための図である。なお、ここでは光の進路を分かりやすくするために、光制御装置200と光源301およびレンズ光学系312の間を離して表現しているが、実際には両者とも光制御装置200と密着していることが好ましい。図示の光源301は、制御装置320によって制御されてレーザ光を出射する。このレーザ光L1の進行方向は光制御装置200によって自在に変えることができるので(図11参照)、単位時間毎にレーザ光L1の進行方向を変えることで、対象物体400の存在する方向をレーザ光L1で走査することができる。
レーザ光L1が対象物体400に照射されることで、その一部成分が反射光L2として戻り、光制御装置200へ入射する。これらの入射した反射光L2は、複数の光制御領域20にそれぞれ入射し、各々の進行方向が変えられ、例えば光制御領域20の法線方向へ進む。光制御装置200から出射した反射光L2は、レンズ光学系312によって集光されて受光素子311へ入射する。受光素子311は、入射した反射光L2の大きさに応じた電気信号を制御装置320へ出力する。
制御装置320は、光源301からレーザ光が出射した時刻と、受光素子311の電気信号に基づいて検出される反射光の入射した時刻に基づいてTOF法によって対象物体400との間の距離を求める。また、制御装置200と光制御装置200の駆動装置101とを連動させることで、レーザ光L1の出射タイミングにおいて光制御装置200からどの方向へレーザ光L1が出射しているか分かるので、対象物体400の存在する位置・方向も特定することができる。レーザ光L1を走査することで、対象物体400の大きさや形状も特定することができる。また、レーザ光L1による走査を繰り返すことで、対象物体400の移動方向や移動速度についても特定することができる。すなわち、一般的なTOFカメラと同等の機能を実現できる。
図13(B)は、入光装置および受光装置の他の構成例を示す図である。図13(B)に示す構成例では、上記した図13(A)に示す構成例と比較して受光装置310の構成が異なっており、それ以外は同一である。具体的には、本例の受光装置310は、受光素子311と光ファイバ光学系313を含んで構成されている。
光ファイバ光学系313は、光制御装置200の複数の光制御領域20のうち、光源301に対応づけられたもの以外の光制御領域20の各々に対して一対一で対応する数の光ファイバを含んで構成されている。各光ファイバは、各光制御領域20の法線方向に出射する光のみが入光する位置に各々の入光口(端部)が配置されている。このような配置とすることで、各光制御領域20の法線方向以外に出射する光は各光ファイバに入射せず、したがって受光素子311に入射しない。
光ファイバ光学系313の各光ファイバは、光制御装置200の表面に密着させて配置すると迷光も入射してしまうため好ましくない。そのため、図示のように各光ファイバの入光口は、各々に対応づけられた光制御領域20と平面視でほぼ一致する位置に配置されるとともに、光制御装置200の表面から一定距離を離して配置される。それにより、対象物体400からの反射光L2(図14参照)のみを各光ファイバ経由で受光素子311へ入射させ、迷光(外乱光)を入射させないようにすることができる。ここでの一定距離は、各光制御領域20の平面視での大きさ(面積)や出射光の広がり角に応じて定まる。なお、各光ファイバの入光口の大きさ(平面視)は各光制御領域20の大きさ(平面視)とほぼ等しいことが好ましい。例えば、各光制御領域20の大きさを1000μm角とし、広がり角を3°とした場合であれば、光制御装置200の表面と各光ファイバの入光口との間の距離は19mm程度である。
図13(C)は、入光装置および受光装置の他の構成例を示す図である。図13(C)に示す構成例では、上記した図13(B)に示す構成例と比較して入光装置300の構成が異なっており、それ以外は同一である。具体的には、本例の入光装置300は、光源301と光ファイバ光学系302を含んで構成されている。
光ファイバ光学系302は、光制御装置200の複数の光制御領域20のうち、光源301に対応づけられた複数の光制御領域20の各々に対して一対一で対応する数の光ファイバを含んで構成されている。各光ファイバは、各光制御領域20の法線方向に光を入射させる位置に各々の入光口(端部)が配置されている。図示の例では、各光ファイバの入光部は光制御装置200の表面に密着させて配置されている。このような構成とすることで、光源301の出力が大きく1つの光制御領域20のみにレーザ光を入射させることが難しい場合にも対応できる。なお、受光装置310の構成については図13(A)に示すものと同様のレンズ光学系としてもよい。
ここで、再び図14を参照しながら、本実施形態の受発光システムがノイズ光を拾いにくい理由について説明する。上記のように、光源301から出射するレーザ光L1が光制御装置200の表面の法線方向から入射すると、このレーザ光L1は光制御装置200によって進行方向を曲げられて出射する。この出射したレーザ光L1は対象物体400で拡散反射するが、そのうち正反射成分の反射光L2が光制御装置200へ戻る。反射光L2は、光制御装置200に入射してその進行方向が曲げられ、光制御装置200の表面の法線方向へ出射する。この出射した反射光L2は、レンズ光学系312によって集光されて受光素子311へ入射する。一方で、対象物体400からの反射光L2以外の方向から光制御装置200へ入射するノイズ光(迷光、外乱光)については、光制御装置200の表面の法線方向以外の方向へ曲げられて出射する。レンズ光学系312のレンズは法線方向から入射した光のみを受光素子311へ集光する機能を持つレンズであるため、ノイズ光は受光素子311には集光されない。このため、本実施形態の受発光システムはノイズ光を拾いにくい。
以上のような実施形態によれば、液晶素子で構成される平板状の光制御装置を用いた透過光学系によって受発光システムが構成されるので、光学系が単純になり、構造の簡素化、小型化並びに低コスト化が可能となる。また、一対の基板間に一括で各光制御領域(光制御部)を形成することで各光制御領域の間での特性バラツキを少なくすることができるので、受光状態の均質化を図ることが可能となる。
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態の光制御装置に対してさらに1/2波長板(λ/2板)を組み合わせてもよい。この場合には、例えば上記したセル2に対応する液晶素子100bを2つ重ねて配置し、かつ両者間に1/2波長板200を配置するとよい。なお、セル1に対応する液晶素子100aを2つ用いて両者間に1/2波長板を配置してもよい。
また、上記した実施形態の光制御装置において、各光制御領域20の間の隙間を覆うようにしてブラックマスク(遮光膜)を設けるようにしてもよい。この場合には、各電極3a、3bを透明電極で構成することができる。ブラックマスクについては、例えば、少なくとも各電極3a、3bと重なるようにして第1基板1又は第2基板2に設ければよい。
また、図15に例示するように、光制御装置の各光制御領域20以外の矩形状領域21にブラックマスク(遮光膜)を設けるようにしてもよい。図示のように、各ブラックマスク22は、各矩形状領域21と重なるようにして設けられる。各ブラックマスク22は、例えば第1基板1の一面側において各電極3a、3bの間の各矩形状領域21に対応する領域に設けられてもよいし、第2基板2の一面側において各矩形状領域21に対応する領域に設けられてもよい(図3参照)。各ブラックマスク22の具体的な材料、製法方法などについては液晶表示装置の分野等においてよく知られた技術を用いることができる。このような各ブラックマスク22を設けることで、各矩形状領域21に入射するノイズ光を低減することができる。
また、図16に例示するように、各光制御領域20の大きさ(面積)が各矩形状領域21に対して相対的に大きくなるようにしてもよい。図示のように、例えば各電極3aと各電極3bとの配置間隔を等間隔とせずに、ある一対の電極3aと電極3bとの配置間隔を狭くし、次の一対の電極3aと電極3bとの配置間隔を広くすることで、各光制御領域20の大きさを相対的に大きくすることができる。相対的に小さい矩形状領域21には、図中において横長の矩形状領域21aと縦長の矩形状領域21bがある。このように各光制御領域20の大きさをより大きくすることで、ノイズ光を低減できるとともに受光光量をより大きく確保することができる。
また、2つの液晶素子を用いた光制御装置の構成が異なっていてもよい。例えば、図17に示すように、前面側の液晶素子100aは、図中の上下方向(y方向)に延びる各電極3a、3bの間に、同様に上下方向に延びる2つの電極3cを有している。図示の例では電極3cが2つであるが、さらに多くてもよいし、1つでもよい。各電極3a、3b、3cの左右方向における相互間にはそれぞれ隙間が設けられている。一対の電極3a、3bとそれらの間に挟まれて配置される電極3cとの間は、それぞれの一端側に配置された高抵抗膜4aを介して電気的および物理的に接続されている。なお、各電極3a、3b、3cの一端側に加えて他端側にも高抵抗膜4aが設けられてもよい。ここでいう高抵抗膜4aとは、上記した実施形態における高抵抗膜4と同様の材料からなるものである。背面側の液晶素子100bについても同様の構造であり、各電極3a、3b、3cが図中の左右方向(x方向)に延びるように配置されており、相互間が高抵抗膜4aを介して電気的および物理的に接続されている。このような構造の光制御装置を用いてもよい。この場合、図示のように一対の電極3a、3bとそれらの間の電極3cによって光制御領域20が構成される。図示の例では、各光制御領域20は、3×3個のサブ領域を含む。各光制御領域20では、電極3aと電極3bの間で電圧勾配を生じさせることができるので、各サブ領域を含む全体に対して制御対象光が入射された際には、上記実施形態と同様の光制御機能を得ることができる。
また、上記した実施形態では2つの液晶素子を用いて光制御装置を構成していたが、1つの液晶素子を用いて光制御装置を構成してもよい。その場合には、出射光を一方向に走査して対象物体を検出する受発光システムを構成することができる。
1:第1基板
2:第2基板
3a、3b、3c:電極
4、4a:高抵抗膜
5、7:配向膜
6:共通電極
8:液晶層
9:シール材
13a、13b、14:取り出し電極
15:スリット部
20:光制御領域
21:矩形状領域
22:ブラックマスク
100、100a、100b:液晶素子
101:駆動装置
102:光源
200:光制御装置
300:入光装置
301:光源
302、313:光ファイバ光学系
310:受光装置
311:受光素子
312:レンズ光学系
320:制御装置
400:対象物体

Claims (8)

  1. 対象物体に光を照射し当該光により生じる反射光を用いて当該対象物体を検出する受発光システムであって、
    入射光の進行方向を偏向可能な複数の光制御部を有する平板状の光制御装置と、
    前記複数の光制御部のうち少なくとも1つの光制御部に対して光を入射させる入光装置と、
    前記複数の光制御部のうち前記少なくとも1つの光制御部以外の光制御部からの出射光を受光する受光装置と、
    前記入光装置及び前記受光装置の動作を制御し、当該受光装置から出力される前記出射光の状態に応じた信号を用いて前記対象物体を検出する制御装置、
    を含み、
    前記光制御装置は、
    一対の基板間に前記複数の光制御部を保持する液晶素子と、
    前記液晶素子を駆動する駆動装置、
    を含む、受発光システム。
  2. 前記複数の光制御部の各々は、
    平面視において相互間に間隙を有して配置される一対の電極と、
    前記一対の電極のシート抵抗よりも大きいシート抵抗を有し、前記一対の電極の間に配置される高抵抗膜と、
    前記一対の基板の相互間において少なくとも前記高抵抗膜と重なる領域に配置される液晶層、
    を含む、請求項1に記載の受発光システム。
  3. 対象物体に光を照射し当該光により生じる反射光を用いて当該対象物体を検出する受発光システムであって、
    入射光の進行方向を偏向可能な複数の光制御部を有する平板状の光制御装置と、
    前記複数の光制御部のうち少なくとも1つの光制御部に対して光を入射させる入光装置と、
    前記複数の光制御部のうち前記少なくとも1つの光制御部以外の光制御部からの出射光を受光する受光装置と、
    前記入光装置及び前記受光装置の動作を制御し、当該受光装置から出力される前記出射光の状態に応じた信号を用いて前記対象物体を検出する制御装置、
    を含み、
    前記光制御装置は、
    入射光を第1方向に偏向可能な複数の第1光制御部を一対の基板間に保持する第1液晶素子と、
    前記第1液晶素子と重ねて配置されており、入射光を前記第1方向と交差する第2方向に偏向可能な複数の第2光制御部を一対の基板間に保持する第2液晶素子と、
    前記第1液晶素子及び前記第2液晶素子を駆動する駆動装置、
    を含み、
    前記複数の光制御部の各々は、前記複数の第1光制御部の何れか1つと、前記複数の第2光制御部の何れか1つとを重ねて構成されている、
    受発光システム。
  4. 前記複数の第1光制御部と前記複数の第2光制御部の各々は、
    平面視において相互間に間隙を有して配置される一対の電極と、
    前記一対の電極のシート抵抗よりも大きいシート抵抗を有し、前記一対の電極の間に配置される高抵抗膜と、
    前記一対の基板の相互間において少なくとも前記高抵抗膜と重なる領域に配置される液晶層、
    を含む、請求項3に記載の受発光システム。
  5. 前記複数の第1光制御部と前記複数の第2光制御部の各々は、前記液晶層を挟んで前記一対の電極と対向して配置される共通電極を更に含む、
    請求項3又は4に記載の受発光システム。
  6. 前記受光装置は、
    前記光制御装置からの前記出射光を集光するレンズ光学系と、
    前記レンズ光学系によって集光される前記出射光に応じた電気信号を出力する受光素子と、
    を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の受発光システム。
  7. 前記受光装置は、
    前記光制御装置からの前記出射光を導光する光ファイバ光学系と、
    前記レンズ光学系によって導光される前記出射光に応じた電気信号を出力する受光素子と、
    を含む、請求項1〜5の何れか1項に記載の受発光システム。
  8. 前記一対の電極は、遮光性を有する、
    請求項2又は4に記載の受発光システム。
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