JP2018063998A - 電極用組成物、下地電極の製造方法、電子部品の製造方法及び電子部品 - Google Patents

電極用組成物、下地電極の製造方法、電子部品の製造方法及び電子部品 Download PDF

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Nobutoshi Saijo
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Abstract

【課題】抵抗率が低く、基材に対する密着力に優れ、かつ信頼性の高い下地電極を形成可能な電極用組成物の提供。
【解決手段】リン及び銅を含む金属粒子と、ガラス粒子と、溶剤と、樹脂と、を含有し、絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材上に下地電極を形成するための電極用組成物であり、前記金属粒子、前記ガラス粒子及び前記樹脂の合計含有率が前記電極用組成物の40.0質量%以上である電極用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、電極用組成物、下地電極の製造方法、電子部品の製造方法及び電子部品に関する。
近年、携帯電話等の電気又は電子機器の小型化、高集積化及び高周波化に伴い、小型で表面実装が可能なチップ型の電子部品の需要が急増している。代表的なチップ型の電子部品としては、抵抗器(チップ抵抗器)、インダクタンス素子(チップインダクタ)、コンデンサ素子(チップコンデンサ)等が挙げられる。
チップ抵抗器は一般に、絶縁基板とその上に設けられた抵抗体とを有し、この抵抗体と回路基板とを電気的に接続するために、絶縁基板の長手方向における両端に外部電極が設けられている。
チップインダクタとしては、絶縁体を含む基材に巻線をマウントして全体を樹脂外装して製造されるモールドタイプのチップインダクタ、フェライト若しくはセラミックのグリーンシート又はペーストを利用して導電体と絶縁体とを交互に積層した後に焼成して製造される積層タイプのチップインダクタ、絶縁基板上に螺旋状等の導電体パターンを形成して製造される平面タイプのチップインダクタ等が挙げられる。これらのチップインダクタを回路基板に実装するにあたっては、チップインダクタ内のコイル部に相当する巻線又は導電体部と回路基板とを電気的に接続するために、上記と同様、外部電極が設けられている。
チップコンデンサの中でもセラミック積層チップコンデンサは、近年のCPU周辺での大容量品の需要拡大と、チップコンデンサの製造における誘電体層の薄層化及び多層化の技術革新により、年々生産量が拡大している。セラミック積層チップコンデンサは一般に、高い誘電率を持つことで知られるチタン酸バリウム(BaTiO)を主原料とする材料を用いて形成される誘電体層と電気伝導板(内部電極)とを交互に積層し、薄層化及び多層化し、加圧後に一括焼成することで製造される。その後、内部電極と回路基板とを電気的に接続するために、上記と同様、外部電極が設けられている。
上記の電子部品における外部電極は通常、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、金(Au)、銀(Ag)等の電極膜を、電解めっき、スパッタリング等の手法で成膜することで形成される。このとき、電解めっきを施したい箇所に予め下地電極が形成される場合がある。
下地電極は一般に、絶縁体若しくは誘電体を含む基板又はこれらの積層体(以下、「基材」と呼ぶことがある)の所望の領域に下地電極の材料を含む組成物をスクリーン印刷等により付与し、これを600℃〜900℃の温度で熱処理(焼成)することで形成される。下地電極の材料としては、形成される下地電極の体積抵抗率を下げる等の目的で、銀粉末又は銀を主成分とする粉末が一般的に用いられている。
下地電極の形成に一般的に用いられている銀は貴金属であり、資源が限られており地金自体が高価である。このため、銀に代わる下地電極の材料として、銅を含む電極用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−313744号公報
銅は資源的にも豊富で、地金の価格も銀の約100分の1である。しかしながら、銅は200℃以上の高温で酸化されやすく、得られる電極の体積抵抗率が高くなりやすい。このため、例えば、特許文献1に記載の電極用組成物を用いて電極を形成するためには、銅の酸化を抑制するために窒素等の雰囲気下で焼成するという特殊な工程が必要である。従って、簡便な方法でも酸化が抑制された電極を形成可能な電極用組成物の開発が求められている。さらに、基材に対する密着性に優れる電極を形成可能な電極用組成物の開発が求められている。
本発明は上記事情に鑑み、抵抗率が低く、基材に対する密着力に優れ、かつ信頼性の高い下地電極を形成可能な電極用組成物、並びにこれを用いた下地電極の製造方法、電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>リン及び銅を含む金属粒子と、ガラス粒子と、溶剤と、樹脂と、を含有し、絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材上に下地電極を形成するための電極用組成物であり、前記金属粒子、前記ガラス粒子及び前記樹脂の合計含有率が前記電極用組成物の40.0質量%以上である、電極用組成物。
<2>前記金属粒子はリン含有銅合金粒子を含む、<1>に記載の電極用組成物。
<3>前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜8.3質量%である、<2>に記載の電極用組成物。
<4>前記金属粒子はリン−錫含有銅合金粒子を含む、<1>又は<2>に記載の電極用組成物。
<5>前記リン−錫含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜15.0質量%である、<4>に記載の電極用組成物。
<6>前記リン−錫含有銅合金粒子の錫含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、<4>又は<5>に記載の電極用組成物。
<7>前記金属粒子はリン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を含む、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電極用組成物。
<8>前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜15.0質量%である、<7>に記載の電極用組成物。
<9>前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の錫含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、<7>又は<8>に記載の電極用組成物。
<10>前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のニッケル含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、<7>〜<9>のいずれか1項に記載の電極用組成物。
<11>前記金属粒子の含有率が前記電極用組成物全体の30.0質量%〜94.0質量%である、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の電極用組成物。
<12>前記ガラス粒子の含有率が前記電極用組成物全体の0.1質量%〜15.0質量%である、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の電極用組成物。
<13><1>〜<12>のいずれか1項に記載の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程と、前記基材に付与された前記電極用組成物を熱処理する工程と、を含む下地電極の製造方法。
<14><1>〜<12>のいずれか1項に記載の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程と、前記基材に付与された前記電極用組成物を熱処理して下地電極を形成する工程と、前記下地電極上に外部電極を形成する工程と、を含む電子部品の製造方法。
<15>絶縁体及び誘電体の少なくとも一方を含む基材と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置される下地電極と、を有し、前記下地電極は銅を含有する金属相と、リン及び酸素を含有するガラス相と、を含む、電子部品。
本発明によれば、抵抗率が低く、基材に対する密着力に優れ、かつ信頼性の高い下地電極を形成可能な電極用組成物、並びにこれを用いた下地電極の製造方法、電子部品の製造方法及び電子部品が提供される。
本実施形態のチップ抵抗器の一例を示す概略断面図である。 本実施形態のチップ抵抗器の他の一例を示す概略断面図である。 本実施形態のチップインダクタの一例を示す概略図である。 本実施形態のチップインダクタの他の一例を示す概略図である。 本実施形態のチップコンデンサの一例を示す概略図である。 本実施形態のチップインダクタのコア材の形状の一例を示す概略図である。 本実施形態のチップインダクタの下地電極の形成パターンの一例を示す概略図である。 実施例で作製したチップインダクタの下地電極の厚さを測定した箇所を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
<電極用組成物>
本実施形態の電極用組成物は、リン及び銅を含む金属粒子と、ガラス粒子と、溶剤と、樹脂と、を含有し、絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材上に下地電極を形成するための電極用組成物であり、前記金属粒子、前記ガラス粒子及び前記樹脂の合計含有率が前記電極用組成物の40.0質量%以上である。
本実施形態の電極用組成物は、上記構成を有することで、体積抵抗率が低く、基材との密着力に優れ、かつ信頼性に優れる下地電極を形成することができる。その理由は必ずしも明らかではないが、次のように推測される。
まず、電極用組成物がリン及び銅を含む金属粒子を含有することで、大気中での熱処理(焼成)において金属粒子に含まれるリンが酸化銅を銅に還元するように作用する結果、銅の酸化が抑制されて体積抵抗率(以下、単に抵抗率ともいう)のより低い下地電極が形成されると考えられる。
また、電極用組成物を基材に付与して下地電極を形成する際に、金属粒子の成分に由来するガラス相が合金相と基材との間の界面に生成する。これにより、下地電極と基材との間の密着性が向上すると考えられる。
さらに、電極用組成物における金属粒子、ガラス粒子及び樹脂の合計含有率(以後、「固形分含有率」とも称する)が、金属粒子、ガラス粒子、樹脂及び溶剤の合計の40.0質量%以上であることで、電極形成面における電極特性の均一性が向上し、信頼性に優れる下地電極を形成することができる。これは、例えば、以下のようにして考えることができる。
通常、金属、ガラス等の粒子と、溶剤と、樹脂とを含む電極用組成物は、基材に所望の形状(パターン)となるように付与され、熱処理(焼成)される。ここで、熱処理(焼成)での最高温度にて保持する前に、必要に応じて溶剤の蒸散(乾燥)工程、樹脂の燃焼及び熱分解(脱脂)工程等を実施してもよい。
上記乾燥工程では、電極用組成物中の溶剤を蒸散させることで、基材に付与した電極用組成物の流動性を抑制するとともに、基材に付与した電極用組成物の形状(パターン)をそのままの状態に保つことができる。このとき、溶剤が蒸散により失われることで、電極用組成物中で分散していた金属粒子及びガラス粒子は、乾燥工程で互いに接触して電極パターン形成面に沿って収縮が生じる。本発明者らの検討の結果、電極用組成物内の溶剤の割合が大きくなるほど上記収縮が大きくなる傾向にあり、その結果、電極パターンの所望の形状からの変化(収縮する方法)、電極の厚さのばらつき等が生じる場合があることがわかった。この理由について、本発明者らは以下のように推測している。
上述したように、本実施形態の電極用組成物は、金属粒子に含まれるリンによる銅の還元生成反応を利用する。そのため、熱処理(乾燥)後の焼成前に実施される乾燥工程での収縮による電極パターンの形状変化、厚さのばらつき等が生じると、金属粒子に含まれるリンによる酸化銅から銅への還元生成の挙動が、電極形成面内で不均一になると考えられる。
また、電子部品及び基材の種類、並びに電極用組成物を基材に付与する方法によっては、隣接した複数の面に同時に電極用組成物を付与し、熱処理(焼成)する場合がある。このとき、複数ある面のそれぞれで乾燥収縮が生じるため、面と面との間の稜に相当する部分における下地電極の膜厚が他の部分よりも小さくなる傾向がある。乾燥による収縮が過度に進み、熱処理(焼成)後の電極の膜厚が極めて小さくなると、稜を跨いだ複数の面の間の電気伝導性が著しく低下し、後述するめっき処理の均一性が低下する等の不具合が生じ、電子部品としての性能の低下が引き起こされると考えられる。
本実施形態の電極用組成物は上記知見に基づきなされたものであり、溶剤蒸散後の固形分含有率を40.0質量%以上とすることで、熱処理(焼成)後の電極の厚さのばらつきを抑制し、信頼性に優れる下地電極の形成を可能にしている。
電極用組成物の固形分含有率の上限は、特に制限されない。電極用組成物の基材への付与性を充分に確保する観点からは、電極用組成物の固形分含有率は、例えば、95.0質量%以下であってもよい。
電極用組成物の固形分含有率は、パターン形成性及び電極特性の観点から、40.0質量%〜95.0質量%であることが好ましく、42.0質量%〜93.0質量%であることがより好ましく、45.0質量%〜90.0質量%であることがさらに好ましい。
電極用組成物の固形分含有率(N)は、溶剤を蒸散等により除去する前後の電極用組成物の質量変化を測定し、得られた値から以下の式によって算出できる。
={W/(W−W)}×100(%)
ここで、Wは、測定前の室温での電極用組成物の質量(mg)で、Wは、最高温度(180℃)で1min保持した後の電極用組成物の質量(mg)である。
電極用組成物の質量の測定方法は、特に制限されない。例えば、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いることができる。このときのTG−DTAの測定条件は、以下の通りである。
装置:TGA/DTA Analyzer DTG−60(株)島津製作所、容器:アルミナパン、試料の質量:10mg、測定雰囲気:大気(空気)、空気流量:50mL/min、昇温速度:10℃/min、最高到達温度:180℃、最高温度到達後保持時間:1min
(金属粒子)
電極用組成物は、リン及び銅を含む金属粒子(以下、単に金属粒子とも称する)を含む。電極用組成物がリン及び銅を含む金属粒子を含むことで、リンの銅酸化物に対する還元性が発揮されて銅の酸化が進みにくくなり、抵抗率の低い下地電極を形成することができると考えられる。電極用組成物に含まれる金属粒子は、1種のみであっても、組成、形状、粒度分布等の異なる2種以上の組み合わせであってもよい。
本明細書において金属粒子が「リン及び銅を含む」とは、電極用組成物中の金属粒子全体としてリン及び銅を含むことを意味する。従って、個々の粒子がリン及び銅を含んでいても、少なくともリンを含む粒子と少なくとも銅を含む粒子との組み合わせであってもよい。また、金属粒子にはリン及び銅のいずれも含まない粒子が含まれていてもよい。
電極用組成物に含まれる金属粒子の含有率は、特に制限されない。例えば、電極用組成物全体の30.0質量%〜94.0質量%であることが好ましく、35.0質量%〜90.0質量%であることがより好ましく、40.0質量%〜85.0質量%であることがさらに好ましい。
金属粒子の含有率を30.0質量%以上とすることで、下地電極内の空隙部を効果的に低減させ、下地電極を緻密化できる傾向にある。また金属粒子の含有率を94.0質量%以下とすることで、基材に電極形成組成物を付与する際の作業性が向上し、また、金属粒子がリン及び銅のいずれも含まない粒子を含有する場合の下地電極の低抵抗率化、基材への密着力の向上等の効果をより発現させることができる傾向にある。
金属粒子は、リン、銅、並びに該当する場合は錫及びニッケルのほかに、不可避的に混入する他の原子をさらに含んでいてもよい。他の原子としては、例えば、Ag、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、及びAuが挙げられる。
金属粒子が他の原子を含む場合、その含有率は、例えば、金属粒子中に1.0質量%以下とすることができ、耐酸化性及び下地電極の低抵抗率化の観点から、0.5質量%以下であることが好ましい。
金属粒子における各元素の含有率は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)法の定量分析又はエネルギー分散型X線分光(EDX)法の定量分析によって測定することができる。
金属粒子の粒子径は、特に制限されない。例えば、金属粒子のD50%は(粒度分布において小径側から積算した体積が50%となるときの粒子径)、例えば、0.4μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることがより好ましい。金属粒子のD50%を0.4μm以上とすることで、耐酸化性がより効果的に向上する傾向にある。一方、金属粒子のD50%を10μm以下とすることで、下地電極中における金属粒子同士の接触面積が大きくなり、下地電極の抵抗率がより低下する傾向にある。
金属粒子の粒子径(D50%)は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター(株)、LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置)によって測定される。具体的には、溶剤(テルピネオール)125gに、金属粒子を0.01質量%〜0.3質量%の範囲内で添加し、分散液を調製する。この分散液の約100ml程度をセルに注入して25℃で測定する。粒度分布は、溶媒の屈折率を1.48として測定する。
金属粒子の形状は特に制限されず、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等が挙げられる。耐酸化性と下地電極の低抵抗率化の観点からは、金属粒子の形状は、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
金属粒子の製造方法は特に制限されず、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、各成分の含有率が所望の割合となるように調製した金属を用いて、金属粒子を調製する通常の方法により作製できる。例えば、水アトマイズ法により作製することができる。水アトマイズ法の詳細は、金属便覧(丸善(株)出版事業部)等に記載されている。具体的には、例えば、金属粒子の材料となる金属を溶解し、これをノズル噴霧によって粒子化した後、得られた粒子を乾燥及び分級することで、所望の金属粒子を製造することができる。また、分級条件を適宜選択することで、所望の粒子径を有する金属粒子を製造することができる。
金属粒子の好ましい例としては、(1)リン含有銅合金粒子、(2)リン−錫含有銅合金粒子、及び(3)リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子が挙げられる。
(1)リン含有銅合金粒子
リン含有銅合金粒子は、リンを含む銅合金の粒子である。リン含有銅合金粒子を構成するリン含有銅合金としては、リン銅ろう(リン濃度:通常7質量%程度以下)と呼ばれるろう付け材料が知られている。リン銅ろうは、銅と銅との接合剤としても用いられるものである。
電極用組成物が金属粒子としてリン含有銅合金粒子を含有することで、還元された銅の金属相を形成すること以外に、熱処理(焼成)中にリンと酸素とを含むガラス相(Cu−P−Oガラス相)を形成することで、下地電極の基材に対する密着力をさらに向上させることができる。これは、例えば以下のように考えることができる。
リン含有銅合金粒子を含有する電極用組成物を用いた場合、金属組織中にはリンを固溶した銅(Cu相)とリン化銅(CuP相)の混合組織が形成される。このとき、大気中での熱処理(焼成)のうち、200℃付近の比較的低温領域で、前記Cu相は酸化されて酸化銅(CuO相)を形成するが、さらに加熱温度を上げて420℃付近まで達すると、前記CuP相が酸化されてCu−P−Oガラス相が形成される一方、CuO相が再び銅に還元される。このガラス相の存在により、下地電極の基材に対する密着力が向上すると考えられる。
リン含有銅合金粒子のリン含有率は、下地電極の低抵抗率化とCu−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、2.0質量%〜8.3質量%であることが好ましく、2.5質量%〜8.0質量%であることがより好ましく、3.0質量%〜7.5質量%であることがさらに好ましい。リン含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%以上であることで、より優れた耐酸化性を達成できる傾向にある。一方、リン含有銅合金粒子のリン含有率が8.3質量%以下であることで、より低い抵抗率を達成できる傾向にある。
(2)リン−錫含有銅合金粒子
リン−錫含有銅合金粒子は、リンに加えて錫をさらに含む銅合金の粒子である。電極用組成物がリン−錫含有銅合金粒子を含有することで、抵抗率がより低く、基材との密着性により優れる下地電極が形成される傾向にある。
これは、例えば以下のように考えることができる。リン−錫含有銅合金粒子を熱処理(焼成)すると、リン−錫含有銅合金粒子中のリン、錫及び銅が互いに反応して、Cu相、Cu−Sn合金相及びSn−P−Oガラス相を形成する。Cu−Sn合金相が形成されると、共晶反応により合金の融点が低下し、Cu相が単体で形成されるよりも下地電極の焼結性が向上し、結果として抵抗率をより低下させることができる。
また、リン−錫含有銅合金粒子の熱処理(焼成)により形成されるSn−P−Oガラス相は、Cu相及びCu−Sn合金相の間、並びにCu相及びCu−Sn合金相と基材との間の界面に存在する。これにより、下地電極自身の強度と、下地電極と基材との間の密着性が向上すると考えられる。
リン−錫含有銅合金粒子のリン含有率は、下地電極の低抵抗率化及びSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、2.0質量%〜15.0質量%であることが好ましく、2.5質量%〜12.0質量%であることがより好ましく、3.0質量%〜10.5質量%であることがさらに好ましい。リン−錫含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%以上であることで、より優れた耐酸化性が達成される傾向にある。一方、リン−錫含有銅合金粒子のリン含有率が15.0質量%以下であることで、より低い抵抗率が達成され、またSn−P−Oガラス相の形成能が向上する傾向にある。
リン−錫含有銅合金粒子の錫含有率は、下地電極の低抵抗率化とSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、3.0質量%〜30.0質量%であることが好ましく、3.5質量%〜27.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%〜25.0質量%であることがさらに好ましい。リン−錫含有銅合金粒子の錫含有率が3.0質量%以上であることで、Cu−Sn合金相を効果的に形成でき、より優れた耐酸化性が達成される傾向にある。一方、リン−錫含有銅合金粒子の錫含有率が30.0質量%以下であることで、Sn−P−Oガラス相の形成能が向上する傾向にある。
(3)リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子は、リンと錫に加えてニッケルをさらに含む銅合金の粒子である。電極用組成物がリン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を含有することで、抵抗率がより低く、基材との密着性により優れる下地電極が形成される傾向にある。
これは、例えば以下のように考えることができる。リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を熱処理(焼成)すると、熱処理(焼成)工程にリン−錫−ニッケル銅合金粒子中のリン、錫、ニッケル及び銅が互いに反応して、Cu相、Cu−Ni合金相、Cu−Sn−Ni合金相及びSn−P−Oガラス相を形成する。
ここで、Cu−Sn合金相は、500℃程度の比較的低温で生成し、そして、形成されたCu−Sn合金相とニッケルとがさらに反応し、Cu−Sn−Ni合金相を形成すると考えられる。このCu−Sn−Ni合金相は、500℃以上の高温(例えば800℃)でも形成されることがある。また、これに伴い、金属相の錫濃度が減少し、Cu−Ni合金相及びCu相を部分的に形成することがある。結果として、より高温での熱処理(焼成)でも耐酸化性を保ったまま低抵抗率の下地電極を形成することができる。
また、リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の熱処理(焼成)により形成されるSn−P−Oガラス相は、リン−錫含有銅合金粒子を用いた場合と同様に、合金粒子中のリン及び錫とが反応して形成されるものである。このSn−P−Oガラス相が、Cu−Sn−Ni合金相、Cu−Ni合金相、及びCu相の間、並びにCu−Sn−Ni合金相、Cu−Ni合金相、及びCu相と基材との界面に存在することで、下地電極自身の強度及び下地電極と基材との間の密着性が向上する。
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のリン含有率は、下地電極の低抵抗率化とSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、2.0質量%〜15.0質量%であることが好ましく、2.5質量%〜12.0質量%であることがより好ましく、3.0質量%〜10.5質量%であることがさらに好ましい。リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%以上であることで、より優れた耐酸化性が達成される傾向にある。一方、リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のリン含有率が15.0質量%以下であることで、より低い抵抗率を達成でき、また、Sn−P−Oガラス相の形成能が向上する傾向にある。
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の錫含有率は、下地電極の低抵抗率化とSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、3.0質量%〜30.0質量%であることが好ましく、3.5質量%〜27.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%〜25.0質量%であることがさらに好ましい。リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子中に含まれる錫含有率が3.0質量%以上であることで、Cu−Sn−Ni合金相を効果的に形成でき、より優れた耐酸化性が達成される傾向にある。一方、リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の錫含有率が30.0質量%以下であることで、Sn−P−Oガラス相の形成能が向上する傾向にある。
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のニッケル含有率は、下地電極の低抵抗率化の観点から、例えば、3.0質量%〜30.0質量%であることが好ましく、3.5質量%〜27.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%〜25.0質量%であることがさらに好ましい。リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のニッケル含有率が3.0質量%以上であることで、Cu−Sn−Ni合金相及びCu−Ni合金相を効果的に形成でき、より優れた耐酸化性が達成される傾向にある。一方、リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のニッケル含有率が30.0質量%以下であることで、下地電極中のCu割合が増加し、下地電極の低抵抗率化がより達成される傾向にある。
(ガラス粒子)
電極用組成物は、ガラス粒子を含有する。ここで、ガラス粒子とは、ガラス(ガラス転移現象を示す非晶質固体)が粒子状になったものを意味する。電極用組成物がガラス粒子を含有することで、形成した内部電極と絶縁基板との密着性が向上する傾向にある。
ガラス粒子は、下地電極の低抵抗率化及び下地電極と基材との密着性の観点から、軟化点が650℃以下であることが好ましい。ガラス粒子の軟化点が650℃以下であることで、軟化(溶融)したガラス粒子が金属粒子を効果的に被覆し、金属粒子の反応が効果的に発現する傾向にある。すなわち、銅を含有する金属相とリン及び酸素を含有するガラス相とが効果的に形成され、下地電極の抵抗率がより低下し、また、下地電極と基材との密着性がより向上する傾向にある。
なお、ガラス粒子が溶融し、その溶融物が基材の表面を均一に覆うことによっても、下地電極の密着性が向上すると考えられるが、本実施形態の電極用組成物を用いれば、熱処理(焼成)中に金属粒子からもガラス相が生成されるため、結果として下地電極と基材との密着性をより向上させることができる。
金属粒子間の反応及び焼結性、並びに金属粒子由来のガラス相形成能の観点から、ガラス粒子の軟化点は550℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましい。ガラス粒子の軟化点は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて通常の方法によって測定される。
ガラス粒子を構成するガラス成分としては、例えば、酸化ケイ素(SiO又はSiO)、酸化リン(P)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化バナジウム(V)、酸化カリウム(KO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化スズ(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化ランタン(La)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化テルル(TeO)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化アンチモン(Sb)、酸化銅(CuO)、酸化鉄(FeO、Fe又はFe)、酸化銀(AgO又はAgO)及び酸化マンガン(MnO)が挙げられる。なお、本明細書において、ガラス粒子を構成するガラス成分は、いずれも酸化物で表記する。
中でも、SiO、P、Al、B、V、Bi、ZnO及びPbOからなる群より選択される少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることが好ましく、SiO、PbO、B、Bi、及びAlからなる群より選択される少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることがより好ましい。このようなガラス粒子の場合には、軟化点がより効果的に低下する傾向にある。また、このようなガラス粒子は、金属粒子に対する濡れ性に優れる傾向にあるため、熱処理(焼成)における金属粒子間の焼結が進み、より抵抗率の低い下地電極が形成される傾向にある。
ガラス粒子の粒子径は特に制限されない。ガラス粒子のD50%は、例えば、0.5μm〜10μmであることが好ましく、0.8μm〜8μmであることがより好ましい。ガラス粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、電極用組成物を調製する際の作業性が向上する傾向にある。一方、ガラス粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極用組成物中でのガラス粒子の分散性がより向上し、下地電極と基材との密着性がより向上する傾向にある。
尚、ガラス粒子のD50%の測定方法は、リン含有銅合金粒子の粒子径の測定方法と同様である。
ガラス粒子の形状は特に制限されず、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等が挙げられる。耐酸化性及び下地電極の低抵抗率化の観点から、ガラス粒子の形状は、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
電極用組成物中のガラス粒子の含有率は、例えば、0.1質量%〜15.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜12.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜10.0質量%であることがさらに好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含有することで、より効果的に耐酸化性と、下地電極の低抵抗率化とが達成される傾向にある。さらに、金属粒子間の接触及び反応が促進される傾向にある。
(溶剤及び樹脂)
電極用組成物は、溶剤と、樹脂と、を含有する。電極用組成物が溶剤と、樹脂と、を含有することで、電極用組成物の液物性(粘度、表面張力等)を、基材に付与する際の付与方法に適した範囲内に調製することができる。
溶剤の種類は特に制限されない。溶剤として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素溶剤、ジクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トリオキサン等の環状エーテル溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶剤、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール溶剤、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールモノプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の多価アルコールのエステル溶剤、ブチルセルソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのエーテル溶剤、テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤などが挙げられる。溶剤は、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせてもよい。
溶剤としては、電極用組成物を基材に付与する際の付与性(塗布性及び印刷性)の観点から、例えば、多価アルコールのエステル溶剤、テルペン溶剤、及び多価アルコールのエーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、多価アルコールのエステル溶剤及びテルペン溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
樹脂としては、熱処理(焼成)によって熱分解され得る樹脂であれば、当該技術分野において通常用いられる樹脂を特に制限なく用いることができ、天然高分子化合物であっても、合成高分子化合物であってもよい。樹脂として具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、ポリアクリル酸エチル等のアクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、ひまし油脂肪酸変性アルキド樹脂等のアルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂などが挙げられる。樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂としては、熱処理(焼成)における消失性の観点から、セルロース樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。中でも樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000〜500000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましい。樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、電極用組成物の粘度の増加が抑制できる傾向にある。これは例えば、樹脂を金属粒子に吸着させたときの立体的な反発作用が充分となり、これら樹脂同士の凝集が抑制されるためと考えることができる。一方、樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂同士が溶剤中で凝集することが抑制され、電極用組成物の粘度の増加が抑制できる傾向にある。また樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂の燃焼温度が高くなりすぎず、電極用組成物を熱処理(焼成)する際に樹脂が燃焼されずに異物として残存することが抑制され、より低抵抗率な下地電極が形成される傾向にある。
樹脂の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B、東ソー(株))を用いて3次元で近似する。GPCの測定条件は、以下の通りである。
・装置:(ポンプ:L−2130型[(株)日立ハイテクノロジーズ])、(検出器:L−2490型RI[(株)日立ハイテクノロジーズ])、(カラムオーブン:L−2350[(株)日立ハイテクノロジーズ])
・カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450 + Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成(株))
・カラムサイズ:10.7mm×300mm(内径)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・試料濃度:10mg/2mL
・注入量:200μL
・流量:2.05mL/分
・測定温度:25℃
電極用組成物全体における溶剤及び樹脂の含有率は、電極用組成物中の固形分含有率が40.0質量%以上となる範囲であれば特に制限されず、使用する溶剤及び樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、溶剤及び樹脂の合計含有率は、電極用組成物の全質量中、3.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、5.0質量%〜45.0質量%であることがより好ましく、7.0質量%〜40.0質量%であることがさらに好ましい。
溶剤及び樹脂の合計含有率が上記範囲内であることにより、電極用組成物を基材に付与する際の付与適性が良好になり、所望の幅及び高さを有する電極をより容易に形成することができる傾向にある。電極用組成物における溶剤及び樹脂の含有比は、電極用組成物が所望の液物性となるように、使用する溶剤及び樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
電極用組成物全体における金属粒子及びガラス粒子の含有率は、耐酸化性、下地電極の低抵抗率化及び基材への密着性の観点から、例えば、金属粒子の含有率が30.0質量%〜94.0質量%であり、ガラス粒子の含有率が0.1質量%〜15.0質量%であることが好ましく、金属粒子の含有率が35.0質量%〜90.0質量%であり、ガラス粒子の含有率が0.5質量%〜12.0質量%であことがより好ましく、金属粒子の含有率が40.0質量%〜85.0質量%であり、ガラス粒子の含有率が1.0質量%〜10.0質量%であることがさらに好ましい。
電極用組成物全体における金属粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂の含有率は、耐酸化性、下地電極の低抵抗率化及び基材への密着性の観点から、例えば、金属粒子の含有率が30.0質量%〜94.0質量%であり、ガラス粒子の含有率が0.1質量%〜15.0質量%であり、溶剤及び樹脂の合計含有率が3.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、金属粒子の含有率が35.0質量%〜90.0質量%であり、溶剤及び樹脂の合計含有率が5.0質量%〜45.0質量%であることがより好ましく、金属粒子の含有率が40.0質量%〜85.0質量%であり、ガラス粒子の含有率が1.0質量%〜10.0質量%であり、溶剤及び樹脂の合計含有率が7.0質量%〜40.0質量%であることがさらに好ましい。
(フラックス)
電極用組成物は、フラックスをさらに含有してもよい。電極用組成物がフラックスを含むことで、金属粒子の表面に酸化膜が形成された場合に該酸化膜を除去し、熱処理(焼成)中の金属粒子の反応を促進させることができる傾向にある。また、フラックスを含むことで、下地電極と基材との密着性がより向上する傾向にある。
フラックスは、金属粒子の表面に形成される酸化膜を除去可能なものであれば特に制限されない。例えば、脂肪酸、ホウ酸化合物、フッ化化合物、及びホウフッ化化合物が挙げられる。フラックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フラックスとしてより具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、ステアロール酸、プロピオン酸、酸化ホウ素、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化リチウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化リチウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
中でも、熱処理(焼成)する際の耐熱性(フラックスが熱処理(焼成)の低温時に揮発しない特性)及び金属粒子の耐酸化性の補完の観点から、ホウ酸カリウム及びホウフッ化カリウムがより好ましいフラックスとして挙げられる。
電極用組成物がフラックスを含有する場合、フラックスの含有率としては、金属粒子の耐酸化性を効果的に発現させる観点及び熱処理(焼成)完了時にフラックスが除去されることで形成される空隙率の低減の観点から、電極用組成物の全質量中、例えば、0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.3質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜3.5質量%であることがさらに好ましく、0.7質量%〜3質量%であることが特に好ましく、1質量%〜2.5質量%であることが極めて好ましい。
(その他の成分)
電極用組成物は、上述した成分に加え、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられるその他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、可塑剤、分散剤、界面活性剤、無機結合剤、金属酸化物(ガラス粒子を除く)、セラミックス、有機金属化合物等が挙げられる。
(電極用組成物の作製方法)
電極用組成物の作製方法は、特に制限はない。例えば、金属粒子、ガラス粒子、溶剤、樹脂及び必要に応じて含まれるその他の成分を分散及び混合することで作製することができる。分散及び混合の方法は特に制限されず、通常用いられる方法から適宜選択して適用できる。
<下地電極の製造方法>
本実施形態の下地電極の製造方法は、本実施形態の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程(付与工程)と、基材に付与された電極用組成物を熱処理(焼成)する工程(焼成工程)と、を含む。下地電極の製造方法は、必要に応じて基材に付与された電極用組成物を乾燥する工程(乾燥工程)、基材に付与された電極用組成物を脱脂する工程(脱脂工程)等を含んでもよい。
(付与工程)
基材に電極用組成物を付与する方法は特に制限されず、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法、ディップ法等が挙げられる。生産性の観点からは、スクリーン印刷法又はディップ法が好ましい。基材の電極用組成物を付与する部分の形状は特に制限されず、所望の下地電極の形状等に応じて選択できる。
電極用組成物を付与する基材は、絶縁体及び誘電体の少なくとも一方を含む。
絶縁体として具体的には、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミ、サイアロン、ステアタイト、フォルステライト等が挙げられる。
誘電体として具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。
電極用組成物を基材に付与する際の作業性の観点からは、電極用組成物は、ペースト状であることが好ましい。ペースト状の電極用組成物は、例えば、20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。尚、電極用組成物の粘度は、ブルックフィールドHBT粘度計を用いて25℃で測定される。
電極用組成物の基材への付与量は、形成する下地電極の大きさ等に応じて適宜選択できる。例えば、電極用組成物の付与量は、3g/m〜120g/mとすることができ、5g/m〜100g/mであることが好ましい。
(焼成工程)
焼成工程で行われる熱処理(焼成)の条件は特に制限されず、当該技術分野で通常用いられる熱処理条件を適用することができる。一般に、熱処理(焼成)温度としては、600℃〜900℃の範囲を用いることができる。熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜選択することができる。例えば、600℃〜900℃の温度範囲では10秒〜2時間とすることができる。
(乾燥工程)
下地電極の製造方法は、必要に応じて、基材に付与した電極用組成物を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。乾燥工程を行うことで、電極用組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部が蒸散して除去され、下地電極中の溶剤の残渣に起因する空隙部の形成を抑制することができる。
乾燥工程の条件は、基材の種類、溶剤の種類、電極用組成物の基材への付与量等に応じて適宜設定することができる。例えば、300℃未満の温度で1秒〜30分間の熱処理を含んでもよい。乾燥工程は、生産性の観点から、280℃以下の温度で2秒〜20分の熱処理を含むことが好ましく、250℃以下の温度で3秒〜15分の熱処理を含むことがより好ましい。乾燥工程における熱処理の温度は、例えば、80℃以上であってよい。
(脱脂工程)
下地電極の製造方法は、必要に応じて、焼成工程の前に、基材に付与された電極用組成物を脱脂する脱脂工程を含んでもよい。
脱脂工程を行うことで、電極組成物に含まれる樹脂の少なくとも一部が熱分解して除去され、得られる下地電極中に樹脂が残渣として残ることが抑制される。そのため、焼成工程において金属粒子同士の反応と焼結が樹脂の残渣により阻害されることが抑制され、より抵抗率の低い下地電極を形成できる。また、熱処理(焼成)中にCu−P−O、Sn−P−O等のガラス相が効果的に生成され、下地電極と基材との密着性がより向上する。
脱脂工程の条件は特に制限されず、脱脂工程の条件は、基材の種類、溶剤及び樹脂の種類、電極用組成物の基材への付与量等に応じて適宜設定することができる。例えば、300℃以上600℃未満の温度で5秒〜3時間の熱処理を含んでもよい。脱脂工程は、生産性及び下地電極の抵抗率の観点から、350℃〜550℃の温度で5秒〜3時間である熱処理を含むことが好ましく、350℃〜500℃の温度で10秒〜2時間である熱処理を含むことがより好ましい。
乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程における熱処理に用いる装置は、電極用組成物を各熱処理の温度に所定の時間加熱できるものであれば特に制限されない。
乾燥工程における熱処理に用いる装置としては、例えば、送風乾燥機、ホットプレート、トンネル炉、及びベルト炉が挙げられる。
脱脂工程及び焼成工程における熱処理に用いる装置としては、赤外線加熱炉、トンネル炉、ベルト炉等が挙げられる。赤外線加熱炉では、電気エネルギーを電磁波の形で熱処理の対象に投入し、熱エネルギーに変換されるため、高効率であり、短時間での急速加熱が可能である。さらに、燃焼による生成物が少なく、また非接触加熱であるため、生成する下地電極の汚染を抑えることが可能である。トンネル炉及びベルト炉は、試料を自動で連続的に入り口から出口へ搬送し、熱処理(焼成)するため、炉体の区分けと搬送スピードの制御によって、熱処理(焼成)のムラを抑制することが可能である。生産性の観点からは、トンネル炉及びベルト炉が好ましい。
脱脂工程と焼成工程とを連続的に行う場合は、トンネル炉もしくはベルト炉を用いることが好ましい。例えば、乾燥のための熱処理を行った後に、基材に付与された電極用組成物をトンネル炉又はベルト炉に入れ、脱脂のための熱処理を行った後、そのままの状態でトンネル炉又はベルト炉の温度等の設定を変更することにより、焼成工程のための熱処理を行うことで、下地電極を形成してもよい。
<電子部品及びその製造方法>
本実施形態の電子部品は、絶縁体及び誘電体の少なくとも一方を含む基材と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置され、銅を含有する金属相と、リン及び酸素を含有するガラス相と、を含む(すなわち、本実施形態の電極用組成物の熱処理物である)下地電極と、を有する。
本実施形態の電子部品の製造方法は、本実施形態の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程(付与工程)と、基材に付与された電極用組成物を熱処理(焼成)して下地電極を形成する工程(焼成工程)と、前記下地電極上に外部電極を形成する工程(外部電極形成工程)と、を含む。
電子部品の製造方法は、必要に応じて基材に付与された電極用組成物を乾燥する工程(乾燥工程)、基材に付与された電極用組成物を脱脂する工程(脱脂工程)等を含んでもよい。
本実施形態の電子部品及びその製造方法において用いられる電極用組成物及び基材の詳細は、上述したものと同様である。また、本実施形態の電子部品の製造方法における付与工程、焼成工程、乾燥工程及び脱脂工程の詳細は、上述したものと同様である。
本実施形態の電子部品及びその製造方法において下地電極上に形成される外部電極の材質及びその製造方法は特に制限されず、公知の材料及び方法から選択できる。例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、金(Au)及び銀(Ag)等の電極膜を、電解めっき、スパッタリング等の手法で成膜してもよい。
本実施形態の電子部品の種類は特に制限されず、チップ抵抗器、チップインダクタ、チップコンデンサ、プラズマディスプレイ素子、アンテナ回路、各種センサー回路、半導体デバイスの放熱材料、太陽電池素子等が挙げられる。中でも、チップ抵抗器、チップインダクタ又はチップコンデンサであることが好ましい。
(1)チップ抵抗器
本実施形態の電子部品としてのチップ抵抗器は、絶縁体を含む基材と、前記基材上に配置される抵抗体と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置される下地電極と、を有する。代表的なチップ抵抗器の一例の概略断面図を図1及び図2に示す。
図1に示すチップ抵抗器は、基材1の上に抵抗体4が設けられている。基材1の抵抗体4が設けられた側の面(以下、表面ともいう)には、抵抗体4と接するように内部電極2(表面電極)が設けられ、基材1の抵抗体4が設けられていない側の面(以下、裏面ともいう)にも内部電極3(裏面電極)が設けられている。内部電極2、3は、それぞれ基材1の両端(通常は、絶縁基板1の長手方向の両端)に2箇所ずつ設けられている。抵抗体4の上には、ガラス保護コート5と樹脂保護コート6がこの順に設けられている。
基材1の側面(通常は、基材1の長手方向の両端)には、表面に設けられた内部電極2と、基材1の裏面に設けられた内部電極3の両方に接するように側面電極7が設けられている。さらに、側面電極7の上に外部電極8と外部電極9がこの順に設けられている。
図2に示すチップ抵抗器では、図1において基材1の表面の一方の端部に設けられた内部電極2と、裏面の同じ側の端部に設けられた内部電極3と、側面電極7とを個別に形成する代わりに、これらが内部電極10として一体的に形成されている。基材1をチップ抵抗器の大きさに裁断した状態で電極用組成物をディップ法等により付与することで、内部電極10を一体的に形成することができる。
チップ抵抗器の基材としては、例えば、アルミナ等のセラミックスを絶縁体として含むものが挙げられる。絶縁性の観点から、基材における絶縁体の含有率は高いことが好ましい。具体的には、基材がアルミナを絶縁体として含む場合、アルミナの含有率は90.0質量%以上であることが好ましく、95.0質量%以上であることがより好ましい。
チップ抵抗器の抵抗体としては、例えば、金属的な導電性を示す酸化物を含むものが挙げられる。例えば、酸化ルテニウム等のルテニウム酸化物を含むものが挙げられる。
ルテニウム酸化物としては、ルチル型の結晶構造を有する酸化ルテニウム、パイクロア型の結晶構造を有するルテニウム酸鉛、ルテニウム酸ビスマス、ペロブスカイト型結晶構造を有するルテニウム酸カルシウム、ルテニウム酸ストロンチウム、ルテニウム酸バリウム、ルテニウム酸ランタン等が挙げられる。
下地電極は、本実施形態の電極用組成物を用いて形成される。外部電極としては、例えば、銅(Cu)、錫(Sn)、錫(Sn)−鉛(Pb)、錫(Sn)−ニッケル(Ni)、錫(Sn)−ニッケル(Ni)−銅(Cu)、金(Au)−ニッケル(Ni)金(Au)−パラジウム(Pd)−ニッケル(Ni)、銀(Ag)−ニッケル(Ni)、銀(Ag)−パラジウム(Pd)−ニッケル(Ni)等の金属を用いて電解めっき法で形成したものが挙げられる。
(2)チップインダクタ
本実施形態の電子部品としてのチップインダクタは、絶縁体を含む基材と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置される下地電極と、を有する。
チップインダクタとしては、基材に配線を巻き回してなる「巻線タイプ」のチップインダクタ、導電体と絶縁体とを交互に積層して焼成されてなる「積層タイプ」のチップインダクタ、基材に螺旋状の導電体パターンが形成されてなる「平面タイプ」のチップインダクタ等が挙げられる。
代表的な巻線タイプのチップインダクタの一例の概略断面図を図3及び図4に示す。また、巻線タイプのチップインダクタのコア材の構造の一例を示す概略図を図6に、下地電極の形成パターンを示す概略図を図7に示す。
図3及び図4に示すチップインダクタでは、基材11の所望の位置に下地電極10と外部電極8、9とが形成されている。さらに、基材11の周囲に金属配線を巻き回してコイル12が形成され、モールド樹脂14でその上が被覆されている。また、コイル端末13が外部電極8、9に継線されている。外部電極は、図1に示すような2層構造に限られず、1層であっても、3層以上であってもよい。
基材に相当するコア材11としては、フェライト焼結体、金属磁性材料の圧粉体等が挙げられる。例えば、酸化鉄(Fe)を主成分とする原料粉末を用いることでフェライト焼結体であるコア材が作製される。コア材が金属磁性材料の圧粉体である場合の原料粉末としては、Fe粉末、Fe−Ni−Mo合金粉末、Fe−Ni合金粉末、Fe−Al−Si合金粉末、Fe−Co合金粉末等が挙げられる。
コイル12を形成する金属配線としては、銅線の表面をエナメル等で被覆したものが挙げられる。コイル12を被覆するモールド樹脂14は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的には、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
巻線タイプのチップインダクタの下地電極と外部電極は、チップ抵抗器の下地電極と外部電極と同様にして形成できる。
積層タイプのチップインダクタは、導電体と絶縁体を交互に積層して焼成することで製造される。具体的には、コイル用導体パターンを形成したセラミックグリーンシートを複数枚積層し、熱圧着後に焼成される。各シートに形成されたコイル用導体パターンは、別途設けられるスルーホール及びこれに充填された電極によって積層方向で導通し、積層体内でコイルが巻回したような導電経路を形成することができる。
セラミックグリーンシートは、例えば、アルミナ等のセラミック粉末と、有機バインダーと、溶剤等からなるペーストを、ドクターブレード法等を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム上に厚さが均一になるように塗布し、乾燥後はく離することで得られる。コイル用導体パターンは、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)等を主成分とするペーストを用いて形成される。
積層タイプのチップインダクタの下地電極と外部電極は、チップ抵抗器の下地電極と外部電極と同様にして形成できる。
平面タイプのチップインダクタは、基材に相当する絶縁基板上に螺旋状の導電体パターンを形成することで製造される。絶縁基板としては、ガラス基板、アルミナ等セラミック基板などが挙げられる。螺旋状の導体パターンを形成する方法としては、積層タイプのチップインダクタのコイル用導体パターンと同様にペーストを用いて形成する方法、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)等の金属を蒸着又はスパッタすることで形成する方法などが挙げられる。
平面タイプのチップインダクタの下地電極と外部電極は、チップ抵抗器の下地電極と外部電極と同様にして形成できる。
(3)チップコンデンサ
本実施形態の電子部品としてのチップコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に複数積層された積層体である基材(コンデンサ本体)と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置される下地電極と、を有する。
代表的なチップコンデンサの一例を示す概略断面図を図5に示す。図5に示すチップコンデンサは、誘電体層15と内部電極層16とが交互に複数積層された積層体である基材(コンデンサ本体)と、基材の内部電極層16に電気的に接続するように設けられた下地電極10と、下地電極10上に設けられた外部電極8、9とを備える。
基材に相当するコンデンサ本体は、誘電体層15と内部電極層16とが交互に複数積層された積層体であり、コンデンサ本体の積層方向に交差する一方の端面まで延在する第1の内部電極層と、コンデンサ本体2の他方の端面まで延在する第2の内部電極層とが交互に積層された状態となっている。
下地電極10は、コンデンサ本体2の両端部に設けられ、それぞれが内部電極層16と電気的に接続されている。より詳細には、下地電極10は、コンデンサ本体2の両端面から、それぞれ隣接する4つの面の端部にかけて連続的に設けられている。
コンデンサ本体2の両端部に設けられた下地電極10のそれぞれの上には、外部電極8、9が設けられている。外部電極は、図1に示すような2層構造に限られず、1層であっても、3層以上であってもよい。
基材としてのコンデンサ本体は、例えば、誘電体を含むセラミックグリーンシート(誘電体層)の上に、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の金属粒子を含む内部電極用組成物を印刷等の方法で付与し、乾燥したものを積層して加圧することで作製される。セラミックグリーンシートは、例えば、原料となる誘電体の粉末と溶剤、樹脂等を含む誘電体ペーストを所定の厚さになるようにキャリアフィルム等の上に塗布し、乾燥することで作製される。
誘電体としては、チタン酸バリウム(BaTiO)が一般的に用いられる。ここで、BaTiOは還元雰囲気で半導体化し、誘電率の低下を引き起こすことが知られている。このため、セラミック積層チップコンデンサの誘電体として用いる場合は、BaTiO中の原料粉末に、他の原料成分を添加することで、還元雰囲気で焼成しても高い絶縁性と高誘電率を両立させることが好ましい。
BaTiO以外に添加する他の原料成分としては、例えば、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(MnO)、炭酸マンガン(MnCo)、酸化ジスプロシウム(Dy)、酸化ホルミウム(Ho)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(NbO)、酸化タンタル(Ta)及び酸化タングステン(WO)が挙げられる。
中でも、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(MnO)、炭酸マンガン(MnCo)及び酸化イットリウム(Y)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような成分からなる原料粉末を添加することにより、還元雰囲気で焼成しても高い絶縁性と高誘電率を両立でき、またチップコンデンサとしての信頼性が向上する傾向にある。
チップコンデンサの下地電極と外部電極は、チップ抵抗器の下地電極と外部電極と同様にして形成できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
(a)電極用組成物1の調製
93.0質量%の銅と、7.0質量%のリンとを含むリン含有銅合金を常法により調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粒子化した後、乾燥し、分級した。分級には、日清エンジニアリング(株)、強制渦式分級機(ターボクラシファイア;TC−15)を用いた。分級した粒子を不活性ガスとブレンドして、脱酸素処理及び脱水処理を行い、93.0質量%の銅と、7.0質量%のリンとを含むリン含有銅合金粒子を作製した。作製したリン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
二酸化ケイ素(SiO)3.5質量%、酸化ホウ素(B)14.3質量%、酸化ビスマス(Bi)79.3質量%、酸化アルミニウム(Al)2.4質量%、及び酸化リチウム(LiO)0.5質量%からなるガラスを調製し、これを粉砕して、粒子径(D50%)が1.1μmであるガラスG01粒子を得た。ガラスG01粒子の軟化点は415℃であり、形状は略球状であった。
リン含有銅合金粒子とガラス粒子の形状は、(株)日立ハイテクノロジーズ、TM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。リン含有銅合金粒子とガラス粒子の粒子径(D50%)は、ベックマン・コールター(株)、LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラス粒子の軟化点は、(株)島津製作所、DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。具体的には、DTA曲線において、吸熱部から軟化点を見積もって求めた。
作製したリン含有銅合金粒子を67.0質量部、ガラスG01粒子を8.0質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0質量部、及びポリアクリル酸エチル(EPA、藤倉化成(株)、重量平均分子量:155000)を5.0質量部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化して、電極用組成物1を調製した。電極用組成物1におけるリン含有銅合金粒子、ガラス粒子及び樹脂の合計含有率(N値)は、80.0質量%と計算された。
(b)チップインダクタの作製
主成分として、酸化鉄(Fe)35.0mol%、酸化亜鉛(ZnO)30.0mol%、及び酸化ニッケル(NiO)35.0mol%からなる原料粉末を秤量した。次に、これらの原料粉末をボールミルで湿式混合した後に900℃の温度で2時間加熱し、原料粉末を仮焼した。その後、ボールミルで混合粉砕し、平均粒径が0.3μmの成形前原料粉末を得た。
次いで、得られた成形前原料粉末に、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を添加し、平均粒径が50μmの顆粒を作製した。この顆粒を用いて、図3に示すコア材の形状になるようにプレス成形した。その後、これを大気中で、1000℃の温度で2時間焼成し、コア材を得た。尚、後に形成する下地電極の体積抵抗率測定、下地電極の断面組織観察、下地電極のコア材に対する密着力評価及びインダクタの特性評価用として、4個のコア材を作製した。
4個のコア材のそれぞれに、電極用組成物1を、図3及び図7に示すような電極パターンとなるように付与した(付与工程)。このとき、熱処理(焼成)後の膜厚が30μmとなるように塗布条件を適宜調整した。電極用組成物1が塗布されたコア材を150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた(乾燥工程)。
続いて、トンネル炉((株)ノリタケカンパニーリミテド、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、最高温度650℃で保持時間10秒の熱処理(焼成)を行って(焼成工程)、所望の下地電極を形成した。なお、この工程は、上述した脱脂工程も含んでおり、電極組成物に含まれる樹脂の少なくとも一部が熱分解して除去されていると考えられる。
電極用組成物1を用いて下地電極を形成した4個のコア材のうち1個については、下地電極を形成した箇所にニッケルと錫をこの順で電解めっきし、外部電極5を形成した。その後、直径0.15mmの銅線に3μmの厚さでエナメル被覆した配線をコア材に20回巻回してコイルを形成し、コイル端末を外部電極5に継線して、チップインダクタ1を作製した。
<実施例2>
リン含有率を7.0質量%から6.0質量%に変更し、銅含有率を93.0質量%から94.0質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、リン含有銅合金粒子を作製した。リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
作製したリン含有銅合金粒子を67.0質量部、ガラスG01粒子を8.0質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0質量部、及びポリアクリル酸エチル(EPA、藤倉化成(株)、重量平均分子量:155000)を5.0質量部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化して、電極用組成物2を調製した。電極用組成物2におけるリン含有銅合金粒子、ガラス粒子及び樹脂の合計含有率(N値)は、80.0質量%と計算された。
電極用組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ2を作製した。
<実施例3>
下地電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度700℃で10秒間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ3を作製した。
<実施例4>
実施例1と同様にして、84.0質量%の銅と、6.0質量%のリンと、10.0質量%の錫とを含むリン−錫含有銅合金粒子を作製した。リン−錫含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
作製したリン−錫含有銅合金粒子を67.0部、ガラスG01粒子を8.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0部、及びポリアクリル酸エチル(EPA)を5.0部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化して、電極用組成物4を調製した。
電極用組成物4を用いたこと以外は実施例3と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ4を作製した。
<実施例5>
実施例1と同様にして、57.5質量%の銅と、5.0質量%のリンと、17.5質量%の錫と、20.0質量%のニッケルとを含むリン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を作製した。リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
作製したリン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を67.0部、ガラスG01粒子を8.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0部、及びポリアクリル酸エチル(EPA)を5.0部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化して、電極用組成物5を調製した。
電極用組成物5を用いたこと以外は実施例3と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ5を作製した。
<実施例6>
下地電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度700℃で20秒間に変更したこと以外は実施例5と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ6を作製した。
<実施例7>
下地電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度700℃で30秒間に変更したこと以外は実施例5と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ7を作製した。
<実施例8>
下地電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度750℃で10秒間に変更したこと以外は実施例5と同様にして、コア材に下地電極を形成し、チップインダクタ8を作製した。
<実施例9>
表1に示した組成となるように各成分の含有量を変更したこと以外は実施例5と同様にして、電極用組成物9を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタ9を作製した。
<実施例10>
ガラスの種類をG01からG02に変更し、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は実施例5と同様にして、電極用組成物10を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタ10を作製した。
ガラスG02粒子は、まず、二酸化ケイ素(SiO)1.2質量%、酸化鉛(PbO)66.0質量%、酸化ホウ素(B)を12.5質量%、酸化ビスマス(Bi)18.5質量%、酸化アルミニウム(Al)1.8質量%からなるガラス(以下、「G02」と略記することがある)を調製し、これを粉砕して作製した。ガラスG02粒子の粒子径(D50%)は2.5μmであり、軟化点は405℃であり、形状は略球状であった。
<実施例11>
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の銅含有率を57.5質量%から75.0質量%に変更し、リン含有率を5.0質量%から6.0質量%に変更し、錫含有率を17.5質量%から9.0質量%に変更し、ニッケル含有率を20.0質量%から10.0質量%に変更したこと以外は、実施例5と同様にして、電極用組成物11を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタ11を作製した。
<実施例12>
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の粒子径(D50%)を5.0μmから1.5μmに変更したこと以外は、実施例12と同様にして、電極用組成物12を作製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタ12を作製した。
<実施例13〜15>
リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の成分含有率、粒子径(D50%)及び含有量、ガラス粒子の種類及び含有量、溶剤の種類及び含有量、樹脂の種類及び含有量、並びに下地電極の熱処理(焼成)条件を、表1に示したように変更したこと以外は、上記実施例と同様にして電極用組成物13〜15をそれぞれ調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタ13〜15をそれぞれ作製した。
<比較例1>
銅合金粒子の代わりに銀粒子(純度:99.5質量%、D50%:3.0μm)を用いて、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、電極用組成物C1を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC1を作製した。
<比較例2>
銅合金粒子の代わりに銅粒子(純度:99.5質量%、D50%:5.0μm)を用いて、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、電極用組成物C2を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC2を作製した。
<比較例3>
錫含有率が10.0質量%である銅合金粒子を金属粒子として用い、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、電極用組成物C3を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC3を作製した。
<比較例4>
錫含有率が24.0質量%、ニッケル含有率が18.0質量%である銅合金粒子を金属粒子として用い、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例5と同様にして、電極用組成物C4を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC4を作製した。
<比較例5>
表1に示した組成となるように各成分の含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用組成物C5を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC5を作製した。
<比較例6>
表1に示した組成となるように各成分の含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用組成物C6を調製し、これを用いてコア材に下地電極を形成し、チップインダクタC6を作製した。

<評価>
(体積抵抗率)
下地電極を形成したコア材について、三菱化学(株)製のLoresta−EP MCP−T360型抵抗率計を用いて、4探針法によって体積抵抗率を測定した。結果を表2に示す。
(下地電極の断面組織)
下地電極を形成したコア材について、図8のA−A部を、リファインテック社製のRCO−961型ダイヤモンドカッターを用いて電極の厚み方向に対して並行に切断した。得られた断面の写真を、走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製、TM−1000型)を用いて得た。また、下地電極内の組織を、SEM(FEIsu/Philips社製、XL−30)付属のエネルギー分散型X線分光(EDX)法を用いて分析し、Cu相、Cu−Sn合金相、Cu−Ni合金相、Cu−Sn−Ni合金相及びSn−P−Oガラス層の有無を調査した。その結果を表2に示した。
尚、比較例1に係る下地電極の組織分析のうち、金属部分については、電極用組成物C1において金属粒子として銀粒子のみを用いたことから調査しなかった。
(下地電極の厚さ)
SEMを用いた下地電極の断面組織観察により、図8のa、b及びcで示される部分における下地電極の厚さをそれぞれ測定した。結果を表2に示す。
(密着性試験)
下地電極を形成したコア材について、コア材に対する下地電極の密着性を評価した。具体的には、下地電極の上にスタッドピン(ピン径;φ1.0mm)を接着剤を用いて接合し、これを180℃のオーブンを用いて大気中で1時間加熱し、常温まで冷却した。その後、薄膜密着強度測定装置(Romulus、QUAD GROUP社)を用いてスタッドピンに引張り荷重を印加し、破断時荷重を評価した。このとき、破断箇所も観察した。尚、評価は各下地電極について2点ずつ行い、その平均値を強度(N)とした。結果を表2に示した。
(チップインダクタの評価)
作製したチップインダクタの外部電極に端子を取り付けた。その後、チップインダクタの特性として、周波数1kHzにおけるインダクタンスを、LCRメータ(エヌエフ回路設計ブロック社製、ZM2371)を用いて測定した。また、チップインダクタのもう一つの代表的な特性としてのQ値を、以下式を用いて算出した。結果を併せて表2に示す。
Q=(2πf)(L)/R・・・(1)
(1)式において、fは周波数(Hz)、Lはインダクタンス(H)、Rは直列抵抗(Ω)である。
尚、比較例2〜4においては、熱処理(焼成)中に下地電極が酸化し、電解めっきにより外部電極が形成されなかったため、チップインダクタとしての評価ができなかった。

表2に示すように、比較例2〜4で形成した下地電極は、体積抵抗率が実施例よりも高かった、これは、電極用形成組成物中の金属粒子がリンを含んでいないため、銅酸化物の銅への還元がなされずに、下地電極が酸化したためと考えられる。なお、下地電極内の金属部分は、酸化銅(CuO)などの銅の酸化物が多く含まれており、分析からはCu相は検出されなかった。また当然ながらリンを含んだガラス相も見られず、電極用組成物に用いたガラスフリットの溶融物が確認された。
一方、実施例1〜15で形成した下地電極は、銀粒子を用いて下地電極を形成した比較例1に比べて高い(最大10倍程度)ものの、1×10−5Ω・cmオーダーの充分に低い体積抵抗率を示した。またいずれの下地電極からも、Cu相が確認され、大気中の熱処理(焼成)工程で銅の還元が効果的に行われたものと考えられる。またリン−錫含有銅合金粒子を用いた場合は、Cu相の他にCu−Sn合金相が、リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を用いた場合は、Cu相の他にCu−Ni合金相及びCu−Sn−Ni合金相がそれぞれ確認された。
さらに、実施例1〜15で形成した下地電極には、リンを含むガラス相(Cu−P−O又はSn−P−O)が、金属相と合金相の間、並びに金属相及び合金相とコア材との界面に形成されていた。
実施例1〜15で形成した下地電極のコア材に対する密着力は、比較例1とほぼ同等であった。これは、熱処理(焼成)工程で生成したリンを含むガラス相がコア材の表面に効果的に濡れ広がって、下地電極のコア材に対する密着力が向上したためと考えられる。比較例2〜4については、電極内が金属酸化物とガラスフリットの溶融物で占められており、コア材にある程度の強度で密着しているものと考えられる。
実施例1〜15で形成した下地電極の厚さは、電極パターンの中央部に相当するb部で最も厚く、a部及びc部の厚さはb部に比べてわずかに薄くなる傾向が見られた。この挙動は、電極用組成物を塗布し、乾燥するときに乾燥収縮によって金属粒子及びガラス粒子が中央部に集中したために、乾燥後の膜厚にばらつきが生じ、これが熱処理(焼成)後の膜厚のばらつきをもたらしたと考えられる。
実施例1〜15で作製したチップインダクタのインダクタンスとQ値は、比較例1とほぼ同等であった。このことは、下地電極の体積抵抗率が比較例1より増加し、また下地電極の厚さにばらつきが生じたものの、その後外部電極を均一に形成できたため、比較例1で電極用組成物に銀粒子を用いた場合と遜色なく、高性能のチップインダクタを製造できることを示していると考えられる。
比較例5及び比較例6で形成した下地電極の体積抵抗率は、実施例1〜15のものに比べて高い(約10倍)値を示した。この理由としては、電極用組成物中の固形分含有率が小さすぎる(溶剤が多すぎる)ために、乾燥時の収縮が大きくなり、電極中の組成が不均一になったことが考えられる。また、断面組織観察では、金属部から、銅の酸化物(Cu−O相)が検出された。このことから、固形分含有率が小さい組成では、リン含有銅合金粒子からの銅の還元生成能及びその後の耐酸化性が低下することが分かった。
比較例5及び比較例6で作製したチップインダクタのインダクタンスとQ値は、比較例1のものに比べ著しく低かった。この理由としては、上述した下地電極の高抵抗化に加え、下地電極の厚さばらつきが実施例1〜15に比べてさらに大きくなっていたことで、外部電極形成が不均一になったことなどが考えられる。
1 絶縁基板
2 下地電極(表面)
3 下地電極(裏面)
4 抵抗体
5 ガラス保護コート
6 樹脂保護コート
7 側面電極
8 外部電極
9 外部電極
10 下地電極
11 コア材
12 コイル
13 コイル端末
14 モールド樹脂
15 誘電体層
16 内部電極

Claims (15)

  1. リン及び銅を含む金属粒子と、ガラス粒子と、溶剤と、樹脂と、を含有し、絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材上に下地電極を形成するための電極用組成物であり、前記金属粒子、前記ガラス粒子及び前記樹脂の合計含有率が前記電極用組成物の40.0質量%以上である、電極用組成物。
  2. 前記金属粒子はリン含有銅合金粒子を含む、請求項1に記載の電極用組成物。
  3. 前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜8.3質量%である、請求項2に記載の電極用組成物。
  4. 前記金属粒子はリン−錫含有銅合金粒子を含む、請求項1又は請求項2に記載の電極用組成物。
  5. 前記リン−錫含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜15.0質量%である、請求項4に記載の電極用組成物。
  6. 前記リン−錫含有銅合金粒子の錫含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、請求項4又は請求項5に記載の電極用組成物。
  7. 前記金属粒子はリン−錫−ニッケル含有銅合金粒子を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電極用組成物。
  8. 前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のリン含有率が2.0質量%〜15.0質量%である、請求項7に記載の電極用組成物。
  9. 前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子の錫含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、請求項7又は請求項8に記載の電極用組成物。
  10. 前記リン−錫−ニッケル含有銅合金粒子のニッケル含有率が3.0質量%〜30.0質量%である、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の電極用組成物。
  11. 前記金属粒子の含有率が前記電極用組成物全体の30.0質量%〜94.0質量%である、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電極用組成物。
  12. 前記ガラス粒子の含有率が前記電極用組成物全体の0.1質量%〜15.0質量%である、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電極用組成物。
  13. 請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程と、
    前記基材に付与された前記電極用組成物を熱処理する工程と、を含む下地電極の製造方法。
  14. 請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の電極用組成物を絶縁体及び誘電体の少なくとも1つを含む基材に付与する工程と、
    前記基材に付与された前記電極用組成物を熱処理して下地電極を形成する工程と、
    前記下地電極上に外部電極を形成する工程と、を含む電子部品の製造方法。
  15. 絶縁体及び誘電体の少なくとも一方を含む基材と、外部電極と、前記基材と前記外部電極との間に配置される下地電極と、を有し、前記下地電極は銅を含有する金属相と、リン及び酸素を含有するガラス相と、を含む、電子部品。
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