JP2018062722A - エレクトレット材料およびそれを用いたフィルター、並びにエレクトレット材料の製造方法 - Google Patents

エレクトレット材料およびそれを用いたフィルター、並びにエレクトレット材料の製造方法 Download PDF

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卓也 中澤
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俊克 円城寺
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Abstract

【課題】本発明は、電荷を有する繊維と、有機溶剤との直接的な接触を抑制し、静電電荷の減衰を抑制させたエレクトレット材料を得ることを課題とするものである。【解決手段】静電電荷を付与した担体からなるエレクトレット材料であって、有機溶剤負荷試験後の粒子の透過率の対数と界面活性剤負荷試験後の粒子の透過率の対数との比を百分率で表した性能維持率が110%以上であることを特徴とするエレクトレット材料。【選択図】なし

Description

本発明はエレクトレット材料およびそれを用いたフィルター、並びにエレクトレット材料の製造方法に関する。
従来、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、各種装置において集塵、保護、通気などを目的とし多孔質フィルターが用いられている。
多孔質フィルターのうち、繊維状物からなるフィルターは高い空隙率を持ち長寿命、低通気抵抗という利点を有しており幅広く用いられている。これら繊維状物からなるフィルターは、さえぎり、拡散、慣性衝突などの機械的捕集機構により繊維上に粒子を捕捉するが、実用的な使用環境において捕捉する粒子の空気力学相当径が0.1〜1.0μm程度の場合にフィルター捕集効率の極小値をもつことが知られている。
上記の極小値におけるフィルター捕集効率を向上させるため、電気的な引力を併用する方法が知られている。たとえば、被捕集粒子に電荷を与える、またはフィルターに電荷を与える方法、さらには両者の組み合わせが用いられる。フィルターに電荷を与える方法としては、電極間にフィルターを配置し通風時に誘電分極させる方法や絶縁材料に長寿命の静電電荷を付与する方法が知られており、特に後者の手法は外部電源などのエネルギーを必要としないため、エレクトレットフィルターとして幅広く用いられている。
エレクトレットフィルターには、初期捕集効率を高め、またフィルター加工や保管時における静電電荷の減衰による性能低下を抑制するため、エレクトレット化が可能で耐湿安定性および耐熱安定性に優れたエレクトレット材料が用いられる。
エレクトレット材料の耐熱安定性を高めるために各種添加剤を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。また、フィルターの静電電荷量を向上させ、初期捕集効率を向上させるために、静電電荷強化添加剤を混合した不織布と、液体を接触させることで、電荷量を高める方法が知られている(例えば、特許文献2)。
特開平1−287914号公報 特表2011−522137号公報
しかしながら、静電電荷強化添加剤を混合した場合にはエレクトレット材料の表面張力が増加し、とりわけ表面張力の小さなオイルミストや有機溶剤と接触した場合には、繊維表面が被覆されることで電荷の消失が著しく促進されるという問題を有することを確認した。
すなわち、従来のエレクトレットフィルターは、各種鉱油、植物油、ポリαオレフィン(PAO)、フタル酸ジオクチル(DOP)およびタバコ煙などに代表されるオイルミストや、エタノール、2−プロパノール(IPA)などの有機溶剤の接触に対しては材料特性として十分な撥油性を示さないため、初期捕集効率は高いものの、オイルミストや有機溶剤の接触における耐久性が乏しく、平均捕集効率が低下するという問題があった。
また、エレクトレット材料の静電電荷量を向上させるために静電電荷強化の効果が大きいことで知られるヒンダードアミン系またはトリアジン系添加剤を混合した繊維にフッ素原子を付与した場合において、初期の静電電荷量は高いが、オイルミスト存在下における耐久性が低くなるという問題があった。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされ、静電電荷の減衰を抑制させたエレクトレット材料等を得ることを課題とするものである。
本発明のエレクトレットは前記の課題を解決するために、発明者が鋭意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は下記とおりである。
(1)静電電荷を付与した担体からなるエレクトレット材料であって、有機溶剤負荷試験後の粒子の透過率の対数と界面活性剤負荷試験後の粒子の透過率の対数との比を百分率で表した性能維持率が110%以上であることを特徴とするエレクトレット材料。
(2)エレクトレット材料が、静電電荷を付与した繊維状担体にポリテトラフルオロエチレンを0.1〜5g/m担持したものである(1)に記載のエレクトレット材料。
(3)担体が融点320℃以下の熱可塑性樹脂からなるメルトブローン不織布である(1)または(2)に記載のエレクトレット材料。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のエレクトレット材料を用いたフィルター。
(5)繊維状担体に静電電荷を付与する工程と、静電電荷を付与した前記繊維状担体にポリテトラフルオロエチレンを蒸着法で0.1〜5g/m担持させる工程と、を含むエレクトレット材料の製造方法。
本発明により、高い帯電性を有し、性能維持率の高いエレクトレット材料およびフィルターを得ることができる。また、簡便に、高帯電性、撥油性、耐油性に優れたエレクトレット材料およびフィルターを得ることが可能となる。
以下に本発明の実施形態について説明するが、本発明の趣旨に則り用途毎に最適な構成を選択することができる。なお、以下、材料としての低表面張力性能を撥油性、オイルミストに対する効率低下抑制性能を耐油性と記載する。また、本明細書では、撥油性とは低表面張力性能により液体の広がりを抑制する性能を意味するものであり、濡れの原理から鑑みて表面張力値の大きな水に対しての作用(撥水性)も含まれるものである。
本発明のエレクトレット材料は、有機溶剤負荷試験後の粒子の透過率の対数と界面活性剤負荷試験後の粒子の透過率の対数との比を百分率で表した性能維持率が110%以上であるエレクトレット材料である。上記性能維持率が110%未満であると静電電荷が速やかに流出し、エレクトレット材料の寿命が急激に低下する。性能維持率の上限は特に限定しないが、通常は150%以下である。
性能維持率は、粒子の透過率を用いて下記式から算出される。
性能維持率[%]=(ln(有機溶剤負荷試験後の透過率)÷ln(界面活性剤負荷試験後の透過率))×100
ここで、
透過率(−)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数
で表される。有機溶剤負荷試験および界面活性剤負荷試験については、後段の実施例にて説明する。
本発明のエレクトレット材料は、静電電荷を付与した担体からなる。本発明に用いられる担体は所望の特性を有するものであれば特に制限されないが、形状の自由度および素材自身の電荷安定性を考慮し、電気抵抗の高い合成樹脂からなることが好ましい。特に、電荷保持の点から体積抵抗率1014Ωcm以上の材質を少なくとも一種類以上含むことが好ましい。担体が体積抵抗率1014Ωcm未満の材質のみで構成されていれば、電荷が蓄積しにくく、高度に静電電荷を付与することはできない。また、電荷寿命が極端に短くなってしまうという問題が生じる。担体に用いられる具体的な合成樹脂としては、非フッ素系合成樹脂であるポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、環状オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂などがあげられ、なかでも融点が320℃以下の熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン等のポリオレフィンから構成されているのが好ましい。ポリオレフィンからなる場合は、疎水性、電気抵抗、成形性などのバランスが良好であり、実用性に優れたエレクトレット材料が得られる。
担体にフッ素原子を含有した合成樹脂を用いることで撥油性をより高めることも好ましく、例えばポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライドコポリマー(THV)などの合成樹脂が挙げられ、撥油性の観点からはポリテトラフルオロエチレン、FEP、PFA、ETFEがより好ましい。
上記合成樹脂には樹脂自体の劣化を抑制し、さらにはエレクトレット材料の初期電荷量および電荷安定性を高めるために、従来公知の配合剤および配合組成を好ましく用いることができる。たとえば、配合剤としては各種金属塩、酸化防止剤、光安定化剤、アイオノマー樹脂などであり、配合組成としては、異なる樹脂成分を混合することにより得られるブレンドポリマーなどである。エレクトレット材料としての初期電荷量および電荷安定性を考慮した場合、少なくとも1種は、静電電荷が付与可能な合成樹脂であることが好ましい。
上記合成樹脂には静電電荷を向上させるための添加剤として、公知のものを使用することができ、含有量としては、担体に対して0.01〜15.0質量%含まれているが好ましく、0.05〜10.0質量%含まれているのがより好ましい。含有量が0.01質量%未満であると十分な静電電荷向上の効果を付与することができないため好ましくなく、逆に含有量15.0質量%を超えても均一性が著しく悪化するため好ましくない。
配合剤としは、ヒンダードフェノール系添加剤、ヒンダードアミン敬添加剤、トリアジン系添加剤、硫黄系安定剤、リン系安定剤、脂肪酸金属塩、結晶核剤等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系添加剤としては、特に限定するわけではないが、具体的には、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox1010、BASF社製)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox1076、BASF社製)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(Irganox3114、BASF社製)、3,9−ビス−{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−[5,5]ウンデカン(スミライザーGA−80、住友化学社製)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系またはトリアジン系添加剤としては、特に限定するわけではないが、具体的には、ポリ〔((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)〕(キマソーブ944LD、チバガイギー社製)、ハコク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(チヌビン622LD、チバガイギー社製)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チヌビン144、チバガイギー社製)、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6ーテトラメチルー4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6ーテトラメチルー4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(キマソーブ2020FDL、チバガイギー社製)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(チヌビン1577FF、チバガイギー社製)などが挙げられる。
硫黄系安定剤として、特に限定するわけではないが、具体的には、ジ−ラウリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル(DLTDP)、ジ−ステアリル−3,3−チオジプロピオン酸エステル(DSTDP)等が挙げられる。
リン系安定剤として、特に限定するわけではないが、具体的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(Irgafos168、BASF社製)、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリストール−ジフォスファイト(PEP−36、ADEKA社製)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA、三光社製)等が挙げられる。
脂肪酸金属塩として、特に限定するわけではないが、直鎖状脂肪酸基を有するものが好ましい。また脂肪酸基は炭素数10〜20のものが好ましい。具体的には、ラウリル酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリル酸マグムシウム、ミリスチン酸マグムシウム、パルミチン酸マグムシウム、ステアリン酸マグムシウム等が挙げられる。
結晶核剤として、特に限定するわけではないが、具体的にはリン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム(NA−10、ADEKA社製)、リン酸2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(NA−11、ADEKA社製)、ロジン系結晶核剤パインクリスタルKM−1500(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
担体の形状としては、射出成型体、フィルム形状、繊維状物、粉末状物、粒子状物等が挙げられるが、本発明の担体の形状としては粒子除去および通気性の観点から繊維状が好ましい。
繊維状の担体(繊維状担体)は、長繊維または短繊維からなる織編物、不織布、綿状物等の繊維状物や延伸フィルムから得られる繊維状物を含むものであり、用途に応じて適当な形状および厚みに成形したものを使用することができる。エレクトレット材料をフィルター用途として利用する場合は、繊維状担体は不織布であることが好ましい。
不織布を得る方法としては、単成分繊維、芯鞘繊維やサイドバイサイド繊維といった複合繊維、分割繊維等の短繊維をカーディング、エアレイド、湿式抄紙法などによりシート化する方法、連続繊維をスパンボンド法、メルトブローン法、エレクトロスピニング法、フォーススピニング法などによりシート化する方法など、従来公知の方法を用いることが可能である。なかでも、機械的捕集機構を効果的に利用する観点から緻密で細繊度を容易に得られるメルトブローン法、エレクトロスピニング法やフォーススピニング法で得られる不織布が好ましく、残溶剤の処理を必要としない観点からメルトブローン法、溶融エレクトロスピニング法や溶融フォーススピニング法で得られる不織布がより好ましい。
本発明における繊維状担体が、ポリプロピレンからなるメルトブローン不織布の場合、目付は5〜100g/m2であり、好ましくは10〜60g/m2である。また、本発明における繊維状担体に用いられる繊維の直径は、0.001〜100μmであることが好ましく、0.005〜20μmであることがより好ましく、0.01〜10μmであることがさらに好ましく、0.02〜5μmであることが特に好ましく、0.03〜3μmであることが最も好ましい。繊維の直径が100μmよりも太い場合には実用的な捕集効率を得ることが困難であり、電荷減衰時の効率低下が大きい。繊維の直径が0.001μmよりも細い場合にはエレクトレット材料としての静電電荷を付与することが困難である。
本発明における繊維状担体は単独の製法、素材からなる均一物であってもよく、製法、素材および繊維径の異なる2種以上の素材を用いてなる混合物であってもよい。
本発明における繊維状担体のオイルミストなどの液体粒子に対する耐久性を向上させる方法として、構成繊維の表面張力を下げることで撥油性を与え繊維表面でのミストの広がりや繊維素材内部への吸収拡散を抑制することで電荷の消失を低減させ、捕集されたミストを球体に近づけることで目詰まり効果による機械的捕集効率を向上させる方法が知られている。
具体的には、撥油性を高めるために樹脂内にパーフルオロ基を有した添加剤を混合する方法、熱可塑性フッ素樹脂を溶融紡糸する方法、パーフルオロ基を有したエマルジョン加工剤で表面をコーティング処理する方法、プラズマおよびフッ素ガスなどを用い水素原子を置換することによりフッ素原子を導入する方法等が挙げられる。
しかしながら、フッ素系樹脂やフッ素系低分子添加剤は、熱分解物としてフッ化水素やフッ化カルボニルなどの生成がみられるため溶融紡糸には不適である。また、フッ素ガスやプラズマ処理によるフッ素原子導入では、フッ素ガスの漏洩防止や親水化を抑制するために酸素、水分量管理を厳密に行う必要があり、気密性の高い特殊設備が必要となる。
また、テキスタイル用に開発されたアクリレート系加工剤を使用する方法が挙げられるが、テキスタイル用に開発されたアクリレート系加工剤には乳化剤や製膜助剤が含有され、さらにPFOAならびにPFOS規制に対応させるためC613以下の短鎖パーフルオロ基が側鎖として用いられるために結晶性を失っており、加工剤自身がエレクトレット性を有さないばかりか、低付着量であっても基材となる繊維素材のエレクトレット性を著しく阻害するという問題があり好ましくない。
また、アモルファス化により可溶性と熱可塑性を付与し、エレクトレット性とコーティング性を両立したフッ素系樹脂を使用する方法も知られているが、主骨格として特殊なモノマーを用いる必要があり、製造コストが著しく大きくなるという問題があり好ましくない。
上記の問題を回避すべく、本発明のエレクトレット材料へのフッ素の付与には、フッ素含有物質をガス化させて付与する蒸着法などの手法によりフッ素を付与することが好ましい。
本発明のエレクトレット材料は、担体の少なくとも一部に融点35℃以上320℃以下のポリテトラフルオロエチレンを担持することが好ましく、撥油性が付与されてなる。ポリテトラフルオロエチレンの融点としては60℃以上315℃以下がより好ましく、80℃以上300℃以下がさらに好ましく、100℃以上290℃以下が最も好ましい。融点が上記範囲であれば分子量に分布を有したポリテトラフルオロエチレンでも良いし、単一構造の分子であっても、混合物であっても好ましく用いることができる。
上記融点を有するポリテトラフルオロエチレンを用いる理由としては、(1)融点が320℃を超える高分子量の場合は溶融粘度が高くコーティング困難であること、(2)融点が高いため担体への担持加工温度が高くなると、担体(とりわけ合成高分子)の劣化および耐熱性に問題が生じること、(3)本発明で用いられる低融点ポリテトラフルオロエチレン(最小表面張力13〜17.5mN/m)は一般的なポリテトラフルオロエチレン(最小表面張力17.5mN/m)に比して結晶形やCF3基末端密度により表面張力が小さく撥油性効果が高いこと、(4)エピタキシャル成長を利用した場合、結晶性分子の規則構造により、CF3基が有する平面上分子における最小表面張力(6mN/m)を発現すること、(5)分子量が小さく粉砕処理が可能なこと、(6)実用可能な温度範囲で融点および沸点を有しており、常圧、減圧、真空条件下で加熱することにより物理蒸着処理(PVD処理)が可能なこと、(7)付着成分の分子量や構造制御が困難できないプラズマ処理(炭化フッ素化)と異なりPFOAやPFOS規制の観点から有利であること、(8)常温で固体であり結晶性を有しているため分子配向の変化による撥油性変化が抑制されること、(9)融点を有しているため熱処理により自己接着性を有すること、(10)一般の高融点ポリテトラフルオロエチレンが有していないフッ素系溶剤に対する溶解性があること、などを例示することができる。
上記特性を利用し本発明に用いられるポリテトラフルオロエチレンの担体への担持方法としては、(1)粒子化されたポリテトラフルオロエチレン粒子を散布し、担体またはポリテトラフルオロエチレンの融点以上で熱処理を行うことで固定化する方法、(2)ポリテトラフルオロエチレン粒子を気流中に分散させ担体表面および内部に浸透後、担体またはポリテトラフルオロエチレンの融点以上で熱処理を行うことで固定化する方法、(3)ポリテトラフルオロエチレンを融点以上熱分解温度以下の温度で蒸散させ担体上で冷却固化、必要に応じてポリテトラフルオロエチレンの融点以上で熱処理を行うことで固定化する方法、(4)ポリテトラフルオロエチレンをスパッタ法により担体に付着させ、必要に応じてポリテトラフルオロエチレンの融点以上で熱処理を行うことで溶融固定化する方法、(5)ポリテトラフルオロエチレンを溶媒に溶解させ担体に塗布、噴霧、浸漬する、いわゆるコーティング加工した後溶媒を除去し、必要に応じてポリテトラフルオロエチレンの融点以上で熱処理を行うことで溶融固定化する方法、などを例示することができる。
これらの手法は単独でもよいし、組み合わせて用いることもできる。たとえば、粉末状で担持させた後に再加熱を行うことで蒸散再付着させる方法などを用いることで、密着性、分散性、撥油性、耐熱性などの諸特性を向上させることが出来る。
粒子の直接散布または液体もしくは気流中に分散させ付着させる方法においては、ポリテトラフルオロエチレンの粒子径は0.1nm以上10μm以下であることが好ましく、1nm以上1μm以下であることがより好ましく、5nm以上500nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上300nm以下であることが最も好ましい。粒子経が10μmより大きい場合には分散時の均一性や取り扱いが困難となるとともに、コーティングの層厚みが過大となる。一方で粒子経が0.1nm未満であると直鎖からなるポリテトラフルオロエチレン分子としての特性維持が困難となる。とりわけ、担体自身の寸法や形状に特徴がある場合に、均一性と寸法維持の観点から微細粒子であることが好ましい。
上記粒子径を調整する手法としては、(1)乳化重合ならびに懸濁重合の粒子として重合時に調整する方法、(2)衝撃、摩擦などの物理的作用により粉砕する方法、(3)フッ素系溶媒、超臨界二酸化炭素などに溶解させ、噴霧や再析出などの手法により粒子化する方法などがあげられ、目的とする粒子径に応じて好ましい手法を用いることができる。乳化重合や懸濁重合により得られる粒子の場合には、固液混合状態で加工剤としてそのまま用いても良いし、乾燥工程を経て粒子として取り出すことも好ましい。
物理的作用により粉砕する方法としては、湿式または乾式の各種粉砕機を用いることが可能であり、具体的にはボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを例示することができ、粉砕と同時に乳化、懸濁させて用いることも好ましい。
本発明に用いられるポリテトラフルオロエチレンは、熱分解温度となる320℃以下に融点を有しており、融点以上の温度においては明確な揮発蒸散性が確認される。したがって、担体に対して蒸着法で担持させて用いることも好ましい。たとえば常圧(大気中1気圧)における融点に関し、n−C1022からなる場合には融点36℃、n−C1226からなる場合には融点76℃、n−C1430からなる場合には融点103℃、n−C1634からなる場合には融点125℃、n−C2042からなる場合には融点167℃、n−C3164からなる場合には融点219℃を有している。
また、市販混合物として、セントラル硝子株式会社製低分子量PTFEセフラルルーブVにおいては、融点範囲として100〜290℃(ピーク温度270℃)を有しており、融解が開始される温度以上で加熱することにより蒸着源として用いることが可能であり、全体が液状化する290℃以上320℃以下で加熱して用いることも好ましい。
これらのポリテトラフルオロエチレンは、使用時には固体としての安定性を発現し、加熱時には液体および気体としての特性を有し物理蒸着法(PVD法)の素材として好ましく用いることができる。これらは熱分解温度以下で加熱を行うことにより、ポリテトラフルオロエチレンの構造を保持することができるため、分子量や構造の面で不定形なフッ素重合体の生じるプラズマ処理や高分子量ポリテトラフルオロエチレンを原料とした高温での熱分解蒸着法に対し、有利な特徴である。
蒸着加工の手法としては、各種熱源によりポリテトラフルオロエチレンを加熱することで蒸気を発生させ、より低温に保持した担体表面に液滴または結晶として析出させる方法が用いられる。かかる手法は、加工面全体を一度に処理するバッチ法であっても、担体または反応槽を移動させることで、担体の異なる加工面を連続的に処理する方法のいずれであっても好ましく用いられる。
本発明における蒸着加工は加圧、常圧、減圧、真空状態およびその圧力のスイング、大気中および不活性ガスいずれの雰囲気においても好ましく実施することができる。
減圧または真空状態とすることで、蒸散速度の向上および蒸散温度の低減が可能であり、加圧により蒸散物の析出を促進することができる。また、真空または不活性雰囲気とすることでポリテトラフルオロエチレンや担体の酸化を抑制することが可能であるが、本発明は熱分解温度以下で低温処理が可能であるためコスト面で大気雰囲気を用いることも可能である。
本発明においては、ポリテトラフルオロエチレンの担持条件の調整により目的に応じて好ましい付着状態を得ることができる。とりわけ、繊維状物などの多孔質構造体の場合には真空度が高い場合には、分子の平均自由工程が大きくポリテトラフルオロエチレンは蒸散側の担体表面に偏在し、低真空または常圧、加圧条件の場合には回り込みによる均一性向上が可能となる。付着面を調整するために、同一担体において圧力のスイングや加工面(表裏)を変えた処理なども好ましい方法である。
本発明においては、蒸着加工時または蒸着加工後に担体が60℃以上140℃以下に処理されることが好ましく、70℃以上140℃以下がより好ましく、80℃以上140℃以下がさらに好ましい。かかる処理により担体との接着性向上、低分子量物の除去によるエレクトレット材料の安定化効果や遊離されるVOC成分が低減されるためである。具体的には蒸着加工時には蒸着槽温度、担体の冷却、加熱により調整することが可能であり、加工後には加熱による方法が用いられる。
本発明においては蒸気の状態で付着させた後冷却固化させてもよいし、凝集させた液体や固体粒子として付着させることも好ましい。担体表面へのポリテトラフルオロエチレンの担持を微細な凹凸構造とすることで撥油性を向上させるとともに、担体表面積の増加により総電荷量およびオイルミスト捕集可能な表面積を増加させることができる。
ポリテトラフルオロエチレンの蒸気が存在する雰囲気に凝縮核となる高融点ポリテトラフルオロエチレンや有機、無機粒子を同時に供給する方法も好ましい。
前記微細な凹凸構造としては、捕集対象とする液滴よりも微細であることが好ましい。表面積の増加による濡れ仕事の増加のみならず、付着した粒子と担体の間に空気層が存在することで、Cassie−Baxter理論に沿った高い撥油表面を得ることができるためである。
融点が330℃以上のポリテトラフルオロエチレンは分子量が数万から数十万を有するため炭化水素系、ハロゲン系溶剤いずれにも溶解させることができない。それに対し、本発明に用いられる融点が35℃以上320℃以下のポリテトラフルオロエチレンは、炭化水素系溶剤に不溶である一方、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)および環状フッ素化物、芳香族フッ素化物からなる含フッ素溶媒に可溶であるため、溶剤系のコーティング剤として用いることもできる。
コーティング剤としての使用においては、従来公知の方法を用いることが可能であり、本発明に用いられるポリテトラフルオロエチレンの少なくとも一部を上記溶媒に溶解した状態で塗布、噴霧、浸漬などの手法により担体に付着させた後、必要に応じて熱処理を行うことでコーティング層を得ることができる。
上記のコーティング加工法に関しては担体の形状に応じて好ましい方法が用いられるが、担体が繊維状物や粒子状物などの多孔質形状であれば、平面状での連続加工のみならず、ロール状、積層体などの状態で溶媒を浸漬させ、乾燥させることによっても製造することが可能である。
コーティング層の被覆率ならびに凹凸については、塗布量、塗布濃度で調整することが可能であり、コーティング剤として用いる場合には、予め微粒子による凹凸を有した構造に塗布する方法やコーティング剤として微粒子を含んでなることも好ましい。
コーティング剤として予め配合する微粒子としてはポリテトラフルオロエチレンの未溶解物または40℃以上のガラス転移温度もしくは融点を有する有機もしくは無機材料を用いることができる。粒子直径としては0.1nm以上10μm以下であることが好ましく、1nm以上1μm以下であることがより好ましく、5nm以上500nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上300nm以下であることが最も好ましい。アスペクト比が1を超える粒子の場合には短径側を直径として定義する。
蒸着加工同様に、担体表面へのポリテトラフルオロエチレンの担持を凹凸構造とし、その凹凸構造は、捕集対象とする液滴よりも微細であることが好ましい。表面積の増加による濡れ仕事の増加のみならず、付着した粒子と担体の間に空気層が存在することで、Cassie−Baxter理論に沿った高い撥油表面を得ることができるためである。
本発明においては、コーティング加工時またはコーティング加工後に、好ましくは60℃以上140℃以下、よりこのましくは70℃以上140℃以下、さらに好ましくは80℃以上140℃以下に加熱処理されてなることも好ましい、かかる処理により接着性向上、ポリテトラフルオロエチレン分子の構造安定化、低分子量物の除去により撥油性およびエレクトレット材料の安定化効果と遊離される低分子成分が除去されるためである。
本発明におけるエレクトレット材料およびそれを用いたフィルターは、担体またはポリテトラフルオロエチレンの少なくとも一方に静電電荷が付与されてなる。静電電荷の付与方法は使用時に所望の特性が得られるものであれば特に制限されず、本発明では、ポリテトラフルオロエチレンの担持前に静電電荷が付与される。
ポリテトラフルオロエチレンの担持後に静電電荷を付与する場合は電気力線が遮蔽されないため、エレクトレット効果をより発現させることができるが、有機溶剤の負荷の影響を受け、繊維状物に付与した静電電荷が流出する。その一方で、ポリテトラフルオロエチレンの担持前に静電電荷を付与する場合、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を静電的な引力にて引き寄せることで付着や加工に利点があり、本発明で規定する有機溶剤負荷試験後の粒子の透過率の対数と界面活性剤負荷試験後の粒子の透過率の対数との比を百分率で表した性能維持率が110%以上を満足するエレクトレット材料が得られる。
具体的な静電電荷の付与方法としては、コロナ荷電法、液体接触荷電法、摩擦帯電法、電界荷電法、熱間電界荷電法、電子線照射法といった公知の帯電方法を施すものから任意に選択することができる。
本発明により得られる撥油性に関しては、必要とされる特性(たとえば防水、防汚、撥水、撥油)に応じて調整することが可能であるが、例えば不織布、織布等の繊維状物からなるフィルターとして用いられる場合には、JIS K6768およびAATCC118法により用いられる表面張力試験液において、10秒以内の浸透性を与える表面張力として少なくとも無加工品(たとえばPPメルトブローンにおける代表値としては36mN/m)よりも向上していれば好ましく用いることができる。具体的には31mN/m以下が好ましく、29mN/m以下がより好ましく、27mN/m以下がさらに好ましく、25mN/m以下が最も好ましい。これらは防塵マスクの国家検定オイルミストの試験液体であるDOPが31mN/m、PAO(たとえばEmery3004)が29mN/mであり、実使用における鉱物および植物性オイルミストへの対応を考慮したものである。本発明者らの検討によると、シート形状での撥油性とフィルターとしての耐油性には相関があり、毛管現象により吸収が生じない程度の撥油性が得られていれば、フィルターとしても明確な耐油性(効率低下の抑制)が確認される。これは素材表面の耐油性(接触角)と多孔質体への吸収現象に相関があるためであり、ミスト試験時における繊維表面に捕集されたエアロゾルの接触角や捕集状態との相関がある。また混合物であるタバコ煙自体の表面張力値は明確ではないが、上記液体における浸透性低下とともに、明確な耐久性向上効果が確認される。
本発明のエレクトレット材料およびそれを用いたフィルターは、集塵、保護、通気、防汚、防水などの機能により幅広く用いることが可能であり、とりわけ、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、各種装置の保護を目的としたフィルターとして好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。まず、後述の実施例および比較例で用いた蒸着加工方法、作製したエレクトレット材料に対する各試験方法等を下記に示す。
(蒸着加工)
担体にポリテトラフルオロエチレンを蒸着するために以下の処理を行った、担体を30℃に保った恒温板に張り付け、ステンレス製の反応容器天井に、底部に300℃に加熱した熱板を設置した。容器内を140℃に設定し、C1634からなるポリテトラフルオロエチレンを反応容器内部の金属製ボート上から蒸散させることで、任意の担持量の加工シート(エレクトレット材料)を得た。
(撥油性試験法)
エレクトレット材料の撥油性試験は以下の方法にて実施した。
JIS K6768法においては、JIS K6768に定められた配合にて40から25mN/mの試験液を調製した。
各々の試験法において、各々の試験液を微生物試験用マイクロピペッターにてサンプル表面に対し20μlずつ滴下し、静置10秒後の浸透度合いを観察した。
JIS K6768法では、25mN/mの試験液から順に滴下し、非浸透になった試験液の値を撥油性試験の結果とした。
なお、表裏に差異がある場合には、より撥油性の低い方を試験結果とした。
(有機溶剤負荷試験(2−プロパノール浸漬試験))
エレクトレット材料の有機溶剤に対する負荷試験は以下の方法にて実施した。
72mmφに打ち抜いたサンプルを、2−プロパノール(IPA、ナカライテスク社製)15mLに30秒間浸し、室温にて乾燥した。
(界面活性剤負荷試験)
エレクトレット材料の界面活性剤に対する負荷試験は以下の方法にて実施した。
72mmφに打ち抜いたサンプルを、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸(メガファックF410、DIC株式会社製)0.5%水溶液15mLにシートを含浸・乾燥させ、自然帯電を含む静電電荷が無くなった状態(無帯電状態)とした。
(捕集効率および透過率)
エレクトレット材料の捕集効率および透過率は以下の方法にて計測した。
評価粒子:大気塵(0.3〜0.5μmの粒子)
風速 :10cm/s
効率算出:光散乱計数法による0.3〜0.5μmの粒子個数
捕集効率(%)=(1−(下流側個数÷上流側個数))×100
透過率(−)=下流側粒子個数÷上流側粒子個数=1−(捕集効率/100)
(性能維持率)
エレクトレット材料の性能維持率(静電電荷の電荷減衰の度合い)は以下の方法にて評価した。
まず、後述の実施例および比較例で用いた未荷電時のメルトブローン不織布の捕集効率を計測した。次いで、後述の実施例および比較例にて作製したエレクトレット材料の捕集効率(有機溶剤負荷前捕集効率)を計測した。次に、作製したエレクトレット材料に有機溶剤負荷試験を行い、有機溶剤負荷試験後の捕集効率および透過率を計測した。その後、エレクトレット材料に界面活性剤負荷試験を行い面活性剤負荷試験後の捕集効率および透過率を計測した。ここで、界面活性剤負荷試験は、有機溶剤負荷試験を行ったエレクトレット材料に対して行った。
そして、下式にて性能維持率を算出した。
性能維持率[%]=(ln(有機溶剤負荷試験後の透過率)÷ln(界面活性剤負荷後の透過率))×100
なお、静電電荷が消失し、繊維状物としての通気抵抗および捕集効率への影響を与えない方法で帯電寄与を評価することが本手法の趣旨である。
<実施例1〜4>
ヒンダードフェノール系添加剤であるIrganox1010(BASF社製)を0.01重量%含有するポリプロピレンメルトブローン不織布(目付25g/m2、平均繊維直径3μm、厚み0.23mm、担体)を、シリコンシートを敷いたアルミ平板の接地電極上に置き、不織布との1cmの距離から針状電極を用いて電圧20kV、10秒間のコロナ荷電処理を実施し、静電電荷を付与したシートを得た。静電電荷を付与したシートに、蒸着処理を行い、ポリテトラフルオロエチレンの蒸着量(担持量)が0.17〜4.9g/m2の加工シートとしてエレクトレット材料を得た。得られたエレクトレット材料に対して各種試験を実施した。その結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例に用いたポリプロピレンメルトブローン不織布を、シリコンシートを敷いたアルミ平板の接地電極上に置き、不織布との1cmの距離から針状電極を用いて電圧20kV、10秒間のコロナ荷電処理を実施し、静電電荷を付与した加工シートとしてエレクトレット材料を得た。得られたエレクトレット材料に対して各種試験を実施した。その結果を表1に示す。
<比較例2〜5>
実施例に用いたポリプロピレンメルトブローン不織布に対し、蒸着処理を行い、ポリテトラフルオロエチレンの蒸着量が0.17〜4.9g/m2の加工シートを得た。次いで、この加工シートをシリコンシートを敷いたアルミ平板の接地電極上に置き、加工シートとの1cmの距離から針状電極を用いて電圧20kV、10秒間のコロナ荷電処理を実施し、静電電荷を付与した加工シートとしてエレクトレット材料を得た。得られたエレクトレット材料に対して各種試験を実施した。その結果を表1に示す。
表1より明らかなように、実施例1〜4では高い性能維持率を示した。これに対してポリテトラフルオロエチレンを蒸着した後に静電電荷を付与した場合(比較例1〜5)は、実施例1〜4よりも低い性能維持率に留まり、担体に付与した静電電荷の減衰を抑制できないことが確認できた。
本発明により、簡便に、高い帯電性を有し、オイルミストなどの液体粒子に対する静電電荷の維持率を高めたエレクトレット材料およびそれを用いたフィルターを得ることが可能となり、産業界への大きな寄与が可能である。本発明のエレクトレット材を用いたフィルターは、防塵マスク、各種空調用エレメント、空気清浄機、キャビンフィルター、各種装置の保護を目的としたフィルターとして好適に用いることが可能である。

Claims (5)

  1. 静電電荷を付与した担体からなるエレクトレット材料であって、有機溶剤負荷試験後の粒子の透過率の対数と界面活性剤負荷試験後の粒子の透過率の対数との比を百分率で表した性能維持率が110%以上であることを特徴とするエレクトレット材料。
  2. エレクトレット材料が、静電電荷を付与した繊維状担体にポリテトラフルオロエチレンを1平方メートル当たり0.1〜5g/m担持したものである請求項1に記載のエレクトレット材料。
  3. 担体が融点320℃以下の熱可塑性樹脂からなるメルトブローン不織布である請求項1または2に記載のエレクトレット材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレット材料を用いたフィルター。
  5. 繊維状担体に静電電荷を付与する工程と、
    静電電荷を付与した前記繊維状担体にポリテトラフルオロエチレンを蒸着法で0.1〜5g/m担持させる工程と、を含むエレクトレット材料の製造方法。
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